競技力強化のための施策に関する評価検討会(第1回)議事要旨

1.日時

2021年4月19日(月曜日)16時30分~18時30分

2.場所

文部科学省16階 16F3会議室 及び オンライン

3.議題

  1. (1)競技力強化のための施策に関する評価検討会の設置及び運営について
  2. (2)競技力強化のための施策に関する評価検討会の進め方について
  3. (3)「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」に基づく施策の取組状況及び成果、課題について
  4. (4)その他

4.出席者

委員

石野枝里子委員、境田正樹委員、杉田正明委員、田口亜希委員、田辺陽子座長、
三屋裕子委員、大槻洋也委員、尾縣貢委員、久木留毅委員、森岡裕策委員

文部科学省

室伏スポーツ庁長官、藤江スポーツ庁次長、豊岡スポーツ庁審議官、
村尾競技スポーツ課長、馬渡競技スポーツ課課長補佐

5. 議事要旨

(1)競技力強化のための施策に関する評価検討会の設置及び運営について
・事務局から、資料1に基づき、本検討会の設置及び運営について説明があった。

(2)競技力強化のための施策に関する評価検討会の進め方について
・事務局から、資料2に基づき、本検討会の進め方の案について説明があり、原案のとおり了承された。

(3)「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」に基づく施策の取組状況及び成果、課題について
・事務局から、資料3及び参考資料3に基づき説明があったのち、資料3に掲げられている各項目について、それぞれ意見交換がなされた。

<「1.中長期の強化戦略プランの実効化を支援するシステムの確立」について>
・久木留委員から、資料4に基づき、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)における取組について補足説明があった。
・委員からは、以下のような意見及びやり取りがあった。
[協働コンサルテーション(協働コンサル)について]
・協働コンサルは、各競技団体の強化戦略プランを確認し、双方向での意見交換や情報共有ができる貴重な場である。コロナ禍における取組や東京大会以降に向けた考え方についても有意義な意見交換ができている。
・協働コンサルについては、日程調整を含めてかなりの時間と労力を要する側面もあるため、実施方法等を工夫する必要があるのではないか。例えば、しっかり強化戦略プランが策定できているか等を勘案しつつ、競技団体ごとにコンサルに濃淡をつけていくことも考えられるか。
・協働コンサルの時間や労力については、今後、協働コンサルを行う側の体制が拡充されるとよいのではないか。
・パラの競技団体において、事務局の体制が弱いこともあり、強化戦略プランの作成について当初は戸惑った団体も多かったが、協働コンサルを通じて、PDCAサイクルの中で各競技団体が自らを客観的に評価して適切な目標設定ができるようになったり、受けられるアドバイスやサポートが充実したりしたことにより、競技力が上がったことは成果である。
・協働コンサルにおける各競技団体の課題について、どの組織や団体がどのように関与していけば解決できる課題か、といった観点から分析することで、今後のサポートに寄与することもあるのではないか。
・協働コンサルによる各競技団体の評価について、外部有識者を含む評価委員会において改めて評価を受けるという現行の仕組みは、質保証の観点から望ましい。

[協働コンサルを通じて明らかになったコロナ禍の影響について]
・コロナ禍での東京大会延期に伴う各競技団体の課題として、アスリートへのメンタル面や、ラストスパート期が延びたことによる競技団体の意識変容の遅れなどが挙げられる。
・コロナ禍での競技会の中止やトレーニングの制約などにより、競技力の現状・変化についての評価が難しいことや、特に海外往来を伴う国際競技会への参加が容易でないことなどの課題が明らかになった。
・コロナ禍で大会が開催されなかったり、海外の大会に出場できなかったりすることにより、パラ競技については特にクラス分けの問題が明らかになった。クラス分けも含め、競技団体が計画的に取り組んでいくことの更なる重要性も見えてきた。
・パラ競技において、障害のある選手をサポートする方が、密を避けるためにサポートに制約が生じるといった問題も判明した。

[強化戦略プランについて]
・現在各競技団体が作成している強化戦略プランは、長いものでも8年間のプランであるが、発掘・育成・強化というプロセスを踏まえると、もう少し長い期間を見通した戦略プランを作成することも考えられるのではないか。
・強化とはやや異なる観点ではあるが、現役引退後のアスリートのセカンドキャリアについての計画を各競技団体がどう考えていくかを盛り込んでいくことも考えられるのではないか。
・強化戦略プランを着実に実行できるかどうかは、競技団体の強化費の確保によっても大きく影響される。競技力強化に関する助成金について東京大会以降の見通しも考慮しつつ、自己財源の充実による強化費の確保の重要性なども含めて考えていくことが必要。
・パラ競技については、東京大会の開催決定以降、助成金の増加やNTCイーストの完成など大きく環境が変わった部分があるが、その流れに乗れた競技と乗れなかった競技がある。
・国際競技力の向上に必要な4つの要因として、アスリート・コーチ・場所・大会が挙げられる。うまく強化ができている競技は、この4つの要因が揃っており、強化戦略プランを適切に策定することを通じて適切にマネジメントできている。これがうまくできていない競技においても、オリ・パラ一体で取組や資源を共有していくことが必要ではないか。

<「6.東京大会に向けた戦略的支援」について>
・委員からは、以下のような意見及びやり取りがあった。
[競技の重点支援について]
・重点支援競技の選定方針について、現時点で異存はない。各競技団体の独自の新たな取組を評価することは重要だが、その取組が成果に結び付いているかという点も評価する必要がある。
・現在は、活躍基盤確立期とラストスパート期を2年ずつの4年周期で行っているが、3年スパンや5年スパンなど柔軟にしていくことも考えられるのか。
→(事務局)競技スポーツにおいてオリンピック・パラリンピックが大きなターゲットとなっている実態を踏まえれば、4年周期を前提としつつ、その中を現在のように2年ずつに区切るのか、それ以外の方法があるのかについては、御意見をいただきたい。
・各競技団体の実態を踏まえると、現在のように、オリンピック・パラリンピックを踏まえた4年周期を前提とし、それを2年ずつに分けるというやり方は適切であると考える。
・重点支援競技のS区分などに指定されている競技については、強化費が加算される分、更に結果を残して当然という考え方もあるが、重点支援競技として指定されない競技に対してのサポートやフォローについてはどのように考えるか。
→(事務局)重点支援競技について配分が加算される一方で、重点支援競技に指定されなかった競技についても、強化費の配分はなされているので、その意味で一定の支援は行っているところ。財源が限られている中で、メリハリをもって配分していくためにどのような仕組みが望ましいかという点については、東京大会の結果も踏まえつつ検討していきたい。
・競技種目によって、強化にかかる費用の相場が異なることから、競技ごとにどの程度の費用をかければ効果が見込めるのか、強化費の効果的な配分を考えていく必要があるのではないか。
→(事務局)競技ごとに一人当たりの強化にかかる費用の相場が異なるという点は御指摘のとおり。競技団体ごとに強化に実際かかる費用の一定割合を補助しているため、強化にかかる費用が高い競技は、その分国からは支援していることになるが、一定の自己負担分があるので、モラルハザードにならず一定程度抑制されるというのが、基本的な補助の仕組みとなっている。

[その他]
・現在のコロナ禍において、合宿のための相部屋にならないような宿泊施設の確保も課題。また、各国の感染状況や政府方針の違いによって、国際大会への参加や海外遠征を含む強化活動ができている地域とそうでない地域で差が生じている。こうしたコロナ禍での課題について、国としてどのような支援が可能か。
→(事務局)アスリートの出入国については、アスリートトラックの仕組みや、停止後はその代替措置により対応している。また、新型コロナウイルスへの感染を診断する検査については、競技力向上事業において、令和3年度は10分の10の割合で補助しているほか、ナショナルトレーニングセンターにおける検査体制の整備なども行っている。このように、既に国としてもできる限りの支援を行っているところではあるが、それでも実際に難しい点については相談をいただければ検討したい。

<「2.ハイパフォーマンスセンターの機能強化」について>
・委員からは、以下のような意見及びやり取りがあった。
[アスリート・データの整備について]
・身体の強さやばね、関節の可動域、メンタル、食事など様々な要素が合わさって、最高峰のパフォーマンスができるのだとすれば、各競技のトップ選手について、睡眠や栄養、筋力などのデータを集め、世界のトップを目指すために必要なトレーニングやサポートの方法を蓄積・開発していくことが必要ではないか。それを競技団体が中心となって、例えば大学や高校・中学の指導者にも展開していくような取組を、5Gやデジタル、IoTなどの技術によって実現していくことが考えられるのではないか。
・アスリート・データの活用については、①個人情報の取扱いや、②所属選手のデータの広汎な共有に関して競技団体から理解・同意を得ることが必要である。競技団体に丁寧に説明しながら、アスリート・データの活用に向けた取組を進めているところ。
・アスリート・データの共有に関する抵抗感の低減のためには、競技団体との関係で、選手へのメリットや、ジュニア育成を含む競技の発展への貢献といった点を丁寧に説明していくことが重要ではないか。
・競技団体においてタレント発掘・育成は非常に重要であるため、トップアスリートのデータをHPSCにおいて収集し、タレントの発掘・育成に生かせるよう、競技団体に提供いただけるとありがたい。
・技術発展によって以前よりも様々なデータがリアルタイムで把握できることになると、各競技団体においても、情報工学の専門家やデータサイエンティストが必要になってくるのではないか。競技力向上事業より、情報・科学スタッフなどの配置も支援対象となるので、そうした人材を育成するとともに人材流動性を高めていくことが重要ではないか。

[競技用具の開発について]
・HPSCにおいて、障害のタイプに合わせた技術開発が行われているが、今後、民間のノウハウも取り入れることでより良い開発につながるのではないか。

[スポーツ・インテリジェンスについて]
・競技団体のマンパワーが足りない中で、HPSCにおけるスポーツ・インテリジェンス機能は非常に助かるので、積極的に進めていただくとともに、競技別強化拠点にもその知見を還元していただきたい。

[今後HPSCに求められる機能について]
・パラ競技におけるクラス分けについては、医・科学的な見地も大きく関わってくる。また、国際クラシファイヤーについては、医師又は理学療法士の資格が必要であるとともに、そのための研修の受講や国際認定の取得が求められる。HPSCにおいて、障害の状態に応じたクラス分けについての助言や診断、国際クラシファイヤーの育成などの機能を設けていくことをぜひ検討していただきたい。

[地域や大学・研究機関との連携、HPSCの知見の還元について]
・競技別強化拠点は地方にあるために、特に医・科学サポートが不十分な部分があり、各地域において、メディカルチェック等、HPSCに近い水準の医・科学サポートができるような仕組みが望まれる。
・東京大会以降において、雇用や予算の問題をクリアしながら課題を解決していくために、地域の大学や医・科学センターなどとのネットワーク化による既存資源の有効活用が重要になってくるのではないか。
・HPSCの機能強化を通じて競技団体に不足している部分を補っていくことが可能であり、そのために産官学・地域の連携をいかに行っていくかが重要。現在、JISSを中心に大学等との連携を行っているが、それをより強化していくべきではないか。
・データサイエンティストなどを含めて、大学等との連携により、クロスアポイントメントなども活用していくことで、既存の人材・資源を既存のシステムでうまく回していく方法を考えることが望ましいのではないか。

[NTC競技別強化拠点について]
・機能強化ディレクターについて、副業人材を配置してみて現れた課題としてはどのようなものが挙げられるか。また、国からの財源も限られている中で、オリパラ後を見据えて自ら資金調達をしていくための経営を行っていく必要があるという認識を持っている競技団体について、機能強化ディレクターの配置はそうした経営面での改善にも資すると思うが、今後どのような方向性を考えているか。
→(事務局)コロナ禍で当初の想定通り活動ができなかった部分はあるが、機能強化ディレクターを配置した5つの拠点それぞれに対応した課題の解決に向けて活動し、その中には資金調達をテーマとしていた拠点もあった。配置した意味は確実にあったと考えており、今後さらに配置を拡充していきたい。
・機能強化ディレクターの配置により、地域との連携や医・科学サポートが大きく進んだ部分はあるので、こういった体制は今後も進めていくべき。
・現在の国内の競技別強化拠点について、オリンピック競技とパラリンピック競技でシェアして利用している例もあるが、海外を拠点としている選手も増えている中で、日本として海外に拠点を持って複数の競技団体がシェアして使うような仕組みも考えられるのではないか。