アーバンスポーツツーリズム研究会(第1回)議事要旨

1.日時

2020年10月12日(月曜日)14時00分~17時00分

2.場所

文部科学省16階第3会議室

3.出席者

委員

  原田座長、日比野委員、橋本委員、文平委員、針谷委員、長谷川委員、中下委員、坂光委員(リモート出席)

4. 議事要旨

■検討会開催の目的など主旨説明要点(資料3に基づき事務局より説明)
・スケートボード、BMXフリースタイル、3人制バスケットボールが東京オリンピックの正式種目に加えられ、アーバンスポーツは大きく注目されている。アーバンスポーツの特徴は、ファンもアスリートも概して若いこと、スポーツの側面を越えた都会的な文化要素が強いことが挙げられ、新たな文化創出の可能性も秘めている。
・そこで、本研究会は東京オリンピック・パラリンピック以降のレガシー継承と発展を見込んだスポーツツーリズムの新しい分野の創出のため、アーバンスポーツの現状と課題を把握するとともに今後の可能性を検討する。

■アーバンスポーツに関わる委員からの発表
議題1「アーバンスポーツの定義とアーバンスポーツツーリズムの可能性について」
(資料5に基づき橋本委員より説明)
(要旨)
<アーバンスポーツの定義>
・アーバンスポーツの定義は、一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会の針谷専務理事の著書にある「エクストリームスポーツの中で、都市での開催が可能なものがアーバンスポーツである」がベースになると考える。

<アーバンスポーツツーリズムの可能性>
・エクストリームスポーツでは、「する」が大会・合宿、「見る」がアーバンスポーツイベントの観戦、「ささえる」が地方都市でのスクール開催、展示会の出展などに該当する。
・優れた巨大なアーバンスポーツ施設が各地に存在するため、「する」に関しては充実していると言える。新潟県村上市スケートパークは2019年に新潟県村上市に完成し、スケートボードのストリート、パーク両方の世界大会が開催可能な巨大施設である。静岡県の東静岡アート&スポーツ/ヒロバは2017年に建設され、屋外にも非常に広いパークで雨でも中止にならない巨大な屋内施設を兼ね備える。福井県のふくい健康の森のスケートボード施設は2019年に建設された素晴らしい施設である。

<今後のアーバンスポーツツーリズムについて>
・日本各地の巨大施設の運営・管理や経営状況を把握することで、ステークホルダーとの関係性を良好に保ち、一過性の流行に終わらないための施策づくりをすることが必要である。
・小規模でも身近で安全に取り組める練習場所の確保が需要拡大に必要である。
・アーバンスポーツは複数のスポーツが集まることでシナジー効果が高く、それぞれのスポーツのバックグラウンドやローカリズムを理解し、推進することが重要である。

議題2「アーバンスポーツ振興活動とFISEワールドシリーズ広島のご紹介」
(資料6に基づき針谷委員より説明)
(要旨)
<一般社団法人アーバンスポーツ支援協議会の概要と活動>
・同法人では、「若者に人気のある都市型スポーツ」をアーバンスポーツとし、競技種目を限定するのではなく、あらゆる競技が入ってくることを前提としている。
・2017年6月にIOC調整委員会が記者会見でアーバンクラスターという名称を紹介した。クラスターとは、未だメジャーでない競技が集まって、その集まり自体をメジャーにするという狙いである。
・アーバンスポーツは雨に弱く、本来は屋内イベントに適しているが、より注目を集めることが可能な屋外等、見て面白いと思ってもらえる場所でクラスターとして開催をすることが重要。
・同法人は2017年12月に、東京オリンピック・パラリンピック競技大会でアーバンスポーツが成功することを目的として設立され、2018年4月に「FISE WORLD SERIES HIROSHIMA 2018」を開催した。
・デジタルネイティブである若者のスポーツ離れは非常に顕著であるが、アーバンスポーツの特徴として、競技中にスポーツと音楽を融合させていることが挙げられる。
・アーバンスポーツは大きな枠としてはカルチャーに帰属する。
・2020年7月から9月にE-FISE、デジタルFISEという大会があり、オンラインで実施した。プラットフォームをサイト上に作り、選手は自分の演技を投稿し、それに対して一般のファンが投票する仕組みを作った。
・E-FISEは地元の公園を使って演技を撮影する。今後、このような部分を国や自治体が許可していく流れになれば、アーバンスポーツは全国に普及すると考える。

<FISEワールドシリーズ広島の概要>
・FISEワールドシリーズ広島は2019年に2回目を実施し、39か国からトップ選手528人が参加(うち日本人296名)した。来場者は2018年が8万6000人、2019年が10万3000人となっており、今年開催できれば15万人を期待していた。
・広島は国際的な平和都市として世界に知れており、海外でも広島ピース&スポーツという高評価を得ている中での開催となった。
・来場者内訳としては、県外からの来場者は約20%、総来場者においては男性56%、女性41%、10代が約30%、30代までが約70%と若い傾向にある。
・ボルダリングやBMX、スラックライン、パルクール、トランポリン、スケートボード、バトントワリング、けん玉などの体験を実施。併せてe-sportsも実施し、ネットやAbema TVでの配信も行った。
・アプリを使って入場者情報の記録をデータベース化している。
・広島県の経済波及効果は約6億8000万円と推計している。
・東京オリンピック・パラリンピック後、IOCが主催してアーバンスポーツの世界リーグを立ち上げるために「アーバンリーグ構想」を進めている。

■自由討議
●橋本委員発表への関連
・この分野では、パルクールの17歳以上の年齢制限を除き、中高生が中心となっており、インカレなど大学生が競い合う状況の必要性は低い。スケートボードは年々若年齢化している状況にある。
・スケートボード施設は大学にはないが、スポーツクライミングに関しては2年ほど前から大学クライミング協会ができて、大会も開催されている。
●針谷委員発表への関連
・一過性のものとして考えずに地域全体の経済を考え、継続することが重要である。
・イベント開催毎に発生するイニシャルコストを継続的に開催することにより、ランニングコストとして計上できるように検討している。
・広島県では、1)国際認定を受けた総合練習場の設置、2)裾野の拡大と選手の育成、3)国際・国内大会の実施の3つを連動させ、どのように収入の確保を図っていくかを検討している。
・広島県外及び海外からの誘客が最大のテーマ(課題)である。
・国内における3つの商圏、近隣県、東京中心エリア、離れたエリアに対応したマーケティング、情報発信を行っている。
●「する」「見る」からツーリズムへの展開
・「見る」はイベントなどを各種開催しているが、「する」はまだ不足している。「する」はスポーツではなく、日常のお出かけや遊びという領域の一つにできれば、年代などに関わらず提供できる機会が増える。それは「見る」人だけでなく「する」人が増え、「する」人が増えると「見る」人の増加に繋がる好循環が生まれるため、「する」「見る」の連動が重要である。
・FISEワールドシリーズ広島では「する」人が16.7%、「見る」人の増加は「する」人の裾野拡大につながる。練習場所やスクールで低学年からの体験が重要である。
・初心者や子供が来て、気軽に練習できる場所が身近に整備されることが需要拡大には必要である。
・キャラバン型の体験教室の開催も有効である。
・「する」競技体験と世界大会に世界のトップが来るのを見たいというのは別のジャンルである。
●アーバンスポーツの需要拡大
・アーバンスポーツは日本各地に競技者、施設があるが、知名度が低い。身近でできる施設をサイトで紹介し、「見る」人、「する」人に、身近で利用できる場所をマッチングして新しい一歩につながる仕組みづくりが必要である。
●海外との違い
・アメリカでは子供が移動手段のひとつとしてBMXやスケートボードを使用し、道を行く中でストリートスポーツが始まる。日本ではチャレンジする場所がなく、自ら習いに行かないと始められないという文化背景の違いがある。
●障がい者等への対応
・キメラユニオンではバリアフリーという言葉は使わず、誰もが参加できることを前提でイベントを行っている。健常者も車いすに乗っている人も同じ競技をし、障がい者も特別視をしないルールである。
・FISEに関しては車いす席の配置だけとなっており、参加については、まだ検討の段階で、「世界のトップを見せよう」というコンセプトにとどまっている。
・東京都足立区が日本初の障がい者向けサッカーフィールドの建設に着手している。
・バスケットボールでは、体育館が車いす利用で傷がつくという課題に取り組んでおり、障がい者を区別しなくてもできるフィールドの整備が進展しつつある。
●アーバンスポーツの今後の展開
・アーバンスポーツは、各種目、各大会が地域の協力に守られているカテゴリーであり、日本全体が繋がれるような展開とアイデアが必要である。
・各アーバンスポーツがE-FISEに倣ってオンライン大会を計画し、開始している。コロナ禍の時代に、オンラインを使って広げ、敷居を高くせず、始めたばかりの人も参加できるような仕組みを作ることで、地元で遊んでいることがそのままアーバンスポーツ体験に繋がることが可能である。
・スケートボードを駅前で堂々とスポーツの練習としてできる社会環境づくりが重要である。
・パルクールをはじめとするアーバンスポーツは周囲の支援に恵まれ、アーバンスポーツ全体の進展に期待が持てる。
●施設活用
・各大学にクライミングボードの施設やバーチカルと呼ばれるスケートボードの施設も増加している。
・パークマネジメント、廃校、倉庫、プールなどの転換にアーバンスポーツを活用することで、地域の活性化に結び付く。
・使用頻度の低い施設は、他用途での使用などストックの活用が施設不足をカバーできると考える。
・今後、スポーツ施設の建設時には、可動式の設備を含め複合的な施設を作ることも必要である。

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