スポーツ審議会(第26回)議事録

1.日時

令和3年4月21日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省第二講堂(旧庁舎6階)

3.議題

  1. (1)第3期スポーツ基本計画の策定について(諮問)
  2. (2)スポーツ基本計画部会の設置について
  3. (3)第3期スポーツ基本計画の策定に向けた意見交換
  4. (4)その他

4.議事録

【早川会長】 それでは、ただいまからスポーツ審議会の第26回総会を開催いたします。皆様、大変お忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日も、新型コロナウイルス感染症予防対策として、事前に希望23いただきました委員の先生におかれましてはウェブ会議形式で御参加いただく形とさせていただいております。
また、報道関係者につきましては、代表幹事社1社のみ御参加いただきまして、一般の方については、ライブ配信での傍聴とさせていただいておりますので、御承知おきいただければと思います。
それでは続きまして、本日の資料の確認を事務局からお願いいたします。

【小畑政策課補佐】 事務局でございます。早川会長からもお話ございましたとおり、今回の会議につきまして、一部の委員につきましてはウェブ会議方式にて御参加いただく形とさせていただいております。
また、本日の会議資料の構成につきましては、議事次第中の一覧に記載のとおりでございます。会議資料につきましては、事前に委員の皆様にもお送りしているところでございます。会議室にお越しの委員の方々には、机上にも配付をさせていただいてございます。不備などあるようでしたら、事務局までお声がけをいただければと思います。
また、ウェブ会議で御参加されている委員の先生におかれましては、議事を円滑に行う観点から、御発言に当たりましては聞き取りやすいようはっきり御発言をいただくということと、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくということで御配慮をお願いできればと思います。
事務局からは以上でございます。

【早川会長】 ありがとうございます。それでは、議事に入ります。本日は、第3期スポーツ基本計画の策定に向けたキックオフの会合となります。議事につきましては、次第にありますとおり、1、第3期スポーツ基本計画の策定について諮問をいただきます。2、スポーツ基本計画部会の設置について、3、第3期スポーツ基本計画の策定に向けた意見交換、以上の3点でございます。
なお、本日の審議会は、後ほど萩生田文部科学大臣に御出席をいただく予定となっております。お越しになられ次第、御挨拶を頂戴することになっておりますので、よろしくお願いいたします。
まず議題1の第3期スポーツ基本計画の策定につきまして、スポーツ庁長官から当審議会に対して諮問がございます。それでは、室伏長官から諮問をお受けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【室伏スポーツ庁長官】 失礼いたします。皆さん、御苦労さまです。第3期スポーツ基本計画の策定について、諮問理由について述べさせていただきます。座らせていただきます。
平成27年10月に発足いたしましたスポーツ庁は、スポーツ基本法の趣旨・理念を踏まえ、スポーツを通じ、国民が生涯にわたり心身共に健康で文化的な生活を営むことのできる「スポーツ立国」の実現を目指し、青少年の健全育成、地域社会の再生、心身の健康の保持増進、社会・経済の活力の創造、国際貢献など、スポーツが国民生活において多面にわたる役割を果たすことができるよう、スポーツ行政を総合的・一体的に推進することを使命としております。
スポーツ庁の発足も踏まえまして、平成29年3月に「第2期スポーツ基本計画」を策定してから4年の月日がたちました。第2期計画では、スポーツで「人生」が変わる、スポーツで「社会」を変える、スポーツで「世界」とつながる、スポーツで「未来」を創るという4つの観点から「スポーツの価値」を提示した上で、4つの政策目標、19の施策目標、具体的施策139を取りまとめるとともに、20の成果指標を設定しております。
第2期計画の策定を踏まえまして、スポーツ庁では、「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」に基づく国際競技力向上に向けた取組を戦略的に進めているほか、「スポーツ実施率向上のための行動計画」、「スポーツ実施率向上のための中長期的な施策」、「スポーツ国際戦略」、「スポーツ団体ガバナンスコード」を策定するなど、その着実な実施に向けた取組を進めております。また、第2期計画に掲げる各施策の進捗状況や成果目標・指標の達成度合い等につきましては、スポーツ審議会の場で定期的に点検を行いつつ、施策の改善につなげております。
一方で、成人・障害者等のスポーツ実施率の伸び悩みや子供の体力の低下傾向など、第2期計画で掲げた数値目標の進捗が十分でないものもございます。また、少子化が進展する中、運動部活動について従前と同様の運営体制では維持が難しくなってきておりまして、学校における働き方改革の視点も踏まえ、運動部活動改革に取り組むとともに、地域における青少年のスポーツ環境の整備を進めていくことが急務の課題となっております。
さらに、第2期計画の期間中は、2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会をはじめとした国際スポーツ大会の自国開催に向けた機運の高まりの中で様々な取組を積み上げてきたところでありますが、「第3期スポーツ基本計画」においては、これまでの成果を、国民生活に根差したレガシーとして、継承・発展させていくことも大変重要な課題だと思っております。
今後とも、スポーツがその役割を果たし、社会の発展に寄与していく上で、社会経済活動や人々の生活に多大な影響を及ぼしています新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応はもとより、デジタル化の進展、少子高齢化・人口減少、地域間格差、持続可能な開発、男女共同参画・共生社会の実現等、国内外の様々な社会的な課題や潮流を的確に捉えつつ、取組の方向性を明らかにしていくことが求められます。
そして、スポーツに関わる全ての人の権利の尊重と安全の確保を図るとともに、スポーツ界への信頼が脅かされるような事態が生じることのないように、引き続き、ハラスメントや暴力・体罰の防止、ドーピング違反の防止、スポーツ団体の健全・適正な運営の確保の徹底を図らなければなりません。
以上のことを踏まえつつ、令和4年度からの第3期計画を策定するに当たりまして、主に次の事項を中心に御審議をお願いしたいと思います。
第一に、スポーツ基本法の理念、スポーツ庁の設立の趣旨、第2期計画の成果と課題、東京大会をはじめとした大規模スポーツ大会の自国開催に係るレガシーの継承・発展、予想される社会の変化を踏まえた来るべき社会像、「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念やユネスコのカザン行動計画等の国際動向等を踏まえつつ、未来社会における生涯を通じた豊かなSports in Lifeビジョン等も含めまして、2030年以降を見据えたスポーツ政策の在り方についてお示しいただければと思います。
第二に、第一の2030年以降を見据えたスポーツ政策の在り方を踏まえた、今後5年間のスポーツ政策の目指すべき方向性及び主な施策の内容についてお示しいただければというふうに思っております。その際、スポーツ基本計画の取組の方向性や具体的施策が、国民生活全般に行き渡り、その実効性を高めることができるようにするため、特に次の6つの点について御検討いただければと思います。
1つ目に、障害者、女性、子供、高齢者等、多様な主体の参画。2つ目に、スポーツ団体、他の行政機関、地方公共団体、大学やUNIVAS等を含む学校、民間事業者、研究機関等との連携・協力。3つ目に、デジタル技術をはじめとした新技術やデータの活用。4つ目に、多様な財源・資源の安定的な確保、戦略的・効果的な活用。5つ目に、各々の政策目標や具体的施策の達成状況に係る検証・評価。6つ目に、地方スポーツ推進計画等の策定に当たっての指針としての活用といった点でございます。
以上の点について、自由闊達な御審議をいただき、今年度中に、第3期計画に盛り込むべき内容として、今後のスポーツ施策の推進についての基本的方針及び諸方策を御提示いただければと思っております。これが今回諮問を行う理由でございます。ありがとうございました。
(諮問文手交)

【早川会長】 ありがとうございました。ただいま室伏長官から諮問理由について御説明をいただきましたので、その内容を踏まえまして、今後、第3期スポーツ基本計画の策定に向けた議論を進めてまいりたいと考えております。委員の皆様方におかれましても、どうぞよろしくお願いいたします。
次の議題に移ります。先ほど諮問を受けました第3期スポーツ基本計画の調査審議を行うため、このスポーツ審議会の下にスポーツ基本計画部会を設置いたしまして、議論を進めていきたいと思っております。
資料2を御覧ください。スポーツ審議会令第5条第1項では、「審議会は、その定めるところにより、部会を置くことができる」とされております。また、スポーツ審議会運営規則第3条第1項では、「部会の名称及び所掌事務は、会長が審議会に諮って定める」とされております。
先ほど第3期スポーツ基本計画の策定の諮問をいただきましたので、この計画の在り方について調査審議をするために、資料にありますとおり、当審議会にスポーツ基本計画部会を設置したいと思っております。
なお、部会に属すべき委員につきましては、スポーツ審議会令第5条第2項において、会長が指名するとされておりますので、部会に属すべき委員の皆様方につきましては私に一任いただければ幸いでございます。
また、今後のスケジュールについて、資料3を御覧ください。資料にありますとおり、年内をめどに、部会において中間報告の取りまとめに向けた具体的な検討を行っていただきたいと考えております。これと同時に、スポーツ審議会の総会と部会との合同会議を適宜開催いたしまして、部会の審議状況等について総会の場でも議論をしながら、計画の策定を進めていきたいと考えております。最終的には、令和4年3月の総会において答申案を決定したいと考えております。
以上がスポーツ審議会総会の下に置きます部会の設置及び今後のスケジュールについてでございます。第3期スポーツ基本計画に向けた委員の皆様からの御意見等につきましては、議題3の中で頂戴できればと思っておりますが、取り急ぎ、議題2の部会の設置とスケジュール感につきまして、御出席の委員の皆様方より御意見、御質問等ございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【早川会長】 ありがとうございます。それでは、こちらで第3期計画の策定に向けた審議を進めていきたいと思います。
それでは、議題3に入ります。前回のスポーツ審議会では、現行の第2期計画の検証・評価を議題とさせていただいたところですが、今回は、本スポーツ審議会に対して正式に第3期計画に向けた諮問をいただくとともに、その趣旨や背景、理由等について、今は室伏長官のほうから具体的に御説明をいただいたところでございます。
これを踏まえまして、改めて各委員において、現行の第2期計画の運用における成果や課題、第3期計画の策定に向けた期待、スポーツ基本計画部会において議論を深めていただきたい点等について、忌憚のない御意見を頂戴できればと思います。
御意見がある方は、本日は、羽鳥委員がオンラインで御参加されていますので、羽鳥委員からは挙手ボタンを押していただくようにお願いいたしたいと思います。こちらにいらっしゃる方については、手を挙げていただければと思います。
それでは、御意見いかがでしょうか。手を挙げていただければ、指名させていただきます。
それでは、鈴木美江委員のほうからお願いします。

【鈴木(美)委員】 私のほうは学校現場ということでのお話なんですけれども、前回もお話しさせていただきましたが、学校体育は、生涯にわたって健康を保持増進したり、子供たちに豊かなスポーツライフを実現する資質・能力を育成したりするという観点から重要な教科であると感じております。今、社会は不透明であります。その中で、保健体育という教科が全員の子供たちが学ぶ教科として残っていくということが、この10年、2030年までとても大事なことだと感じております。
スポーツ基本計画の中の大前提として子供たちというのも入っておりますので、日本中の子供たちが学ぶ、ミニマムとしてしっかり教える内容を教科として教えるべきだと思っております。学校体育で活力を見いだしたり、体力向上を行ったり、また、健康と運動といった面でも系統的に子供たちは学んでいます。さらに、公正、責任、健康、安全、協力、共生など、子供たちの人間性も育んでいっているのが体育です。ぜひ教科体育として、ここもう何年もずっと来ていますが、この先も教科体育として子供たちに教えていただきたい教科として残していただきたいと思います。
以上です。

【早川会長】 ありがとうございました。それでは、お願いいたします、結城委員。

【結城委員】 ありがとうございます。皆様の議論の呼び水として発言をさせていただきます。とても重たい、けれども、非常に大きな展望の諮問をいただきました。ありがとうございます。我々もちろん一介の立場から、2030年問題とも言われる、2030年、そして、それ以降の世界・社会というのを見通すのはとても難しいことでございます。ただ、私の拙い考え方として2つのポイントがあり得るのではないかと感じています。
1つは、これから中長期的な未来に向けて、失ってはいけない、失いたくないスポーツの価値とは何か、本質とは何か、そういう視点です。もう一つは、既にもう見えているトレンドが多々ございます。超高齢化社会、そして、ある意味で地球環境というものが限界に近づいていく可能性がある。そういった世界の中で、もしくは身近な私たちの社会の中で、スポーツが持ち得る社会的価値とは何か。その2つが非常に大きな柱になり得るのではないかと思います。
例えば最初の部分でしたら、私見といたしましては、失いたくない価値、やっぱり心、そして、体の健康であったり、違いを超える力であったり、それから、人々の心を触発する、そういった影響力であったり、そういったものがスポーツの本質だろうと感じています。それから、これからの大きなトレンドの中で、例えば少子高齢化、そして、人口減少等の流れが起きてくる。その中で、1つもう分かり始めているのは、社会保障であるとか、医療・介護であるとか、今のまま維持できるとは限らないということです。ある意味で、自分とか家族、心、そして、体というものを自ら守ることがとても大切になっていくのだろうと思います。
先般の御議論で友添委員からもいただいたように、今のコロナ禍の中で私たちが感じ取ったこと、改めて自分の人生の中で生まれた見方、それは恐らく今のような状況が終焉もしくは収束していったとしても残っていくのではないかと感じています。コロナ禍を経て感じ取った必然もしくは自分自身の生き方への思い、それをやはり反映させていくべきであろうと思います。
それは実は今申したところと重なる部分があるのではと感じています。分断であるとか、疎外、人と人のつながりが切れていくような気配であるとか、あとは、デジタル化、働き方の柔軟性、いろいろなものが見えてきています。でも、その中で結局、自分たちの手で自分や家族を守るんだ、そして、心ある人は、社会を守るんだと、そういう流れがやはり見えてきているのではないかと思います。その観点の上で、スポーツというもの、スポーツの、最初に失いたくないと申した本質というもの、それがどのように寄与できるのかという部分に、1つの人々のスポーツへの支持、そして、参画、それから、それを大切に思っていく幾多の産業等も含めたものへの展開、そういった施策の起点があるような気がしています。
以上です。

【早川会長】 結城委員、ありがとうございました。それでは、久野委員、お願いします。

【久野委員】 筑波大の久野でございます。前回の議論も聞かせていただいて私もそう思いましたし、多くの委員の皆様から、改めて第2期の計画の方向性は非常によかったのではないか、スポーツ庁が出来る前と比較しても格段の進歩があったのではないかという意見が出たかと思います。第3期は、政策の実効性、政策効果を確実に得るような仕掛けをどう計画に入れていくのかという視点が非常に重要ではないかと感じています。
逆に、例えば次の5年後に成果があまり出てこないのであれば、計画そのものが間違っていたというのは言い過ぎですが、やはり成果が出るというアウトカムに徹底的にこだわった計画をどうやってつくっていくかという視点が、大事なポイントであると感じました。
これまで1,000人ぐらいの村から政令市までいろいろな地方自治体とやってきた私の経験からしますと、地方によって事情が非常に異なるので、その事情に全部合わせた計画を国が提示することは当然できません。実際に動かす地方の現場が実行できるような仕掛けを第3期スポーツ計画に入れることが大事なポイントではないかと思います。
とはいえ、基礎自治体とお付き合いしておりますと、人材力の限界を非常に感じています。ここをどうするのか。すぐに外部とか企業、官民連携、もちろんいろいろなキーワードは総動員するにしても、やはりこの人材力、つまり教育は基本的に時間がかかるので、一定の投資をしていくような視点は大事ではないかと思います。
今、私は筑波大学ですが、ほとんど茗荷谷で社会人教育に、20年弱リカレントに関わってきて、やっぱり日本の経済というか、世界的に何か負けていると感じるところは多々あって、全国に国立大学、私立大学がありますが、スポーツ人材のリカレントの場を整備していくという発想は非常に重要な視点ではないかと感じています。
そして、最後、3番目なのですが、個人的には何でこんなに今度の東京オリパラに対するアンチの風が吹くのだろうと思っています。ツイッターがあれだけばんばん流れるという状況も果たしていいのかという個人的な思いは多々ありますが、ただ一方で、そこに関して我々は、スポーツの力というものが本当に国民に伝え切れていない、つまり、国民のスポーツの力に対するリテラシーを上げ切れていないという課題がやはりあるのではないかと思います。そこに対して、今度の基本計画の中でどう国民のスポーツの力へのリテラシーを上げていくのか、それは実施率の向上にも当然つながっていくわけですし、いろいろな面での波及効果があるのだろうと、こういう観点も今回の計画では必要ではないかと考えました。
以上でございます。

【早川会長】 ありがとうございました。それでは、友添委員、お願いします。

【友添委員】 ありがとうございます。各論まで入っていいのか、総論でお話をしたほうがいいのか随分迷うところですけれども、多分各論のほうは部会のほうで御議論いただけるということで、少し総論のところでお話しさせていただこうと思います。
諮問文は非常によく出来ていて、と申し上げるとお叱りを受けそうですが、第2期の基本計画をさらに発展させようという意図が感じられました。
スポーツ基本計画を書くときに、言葉を変えて言えば政策立案で一番大事なのは、全体を貫徹する柱をどう理論的に位置づけるのかということだと思います。つまり、中核に何を置くのかということがやはり非常に大事になってくると思います。諮問文にMINEPS6のカザンの行動計画が触れられていますが、これは日本語で訳すと体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章という国連のユネスコのものを背景に発展させ提言されてきたものだと思います。
この中で大事な点は、スポーツとか身体活動は基本的人権だということをはっきり打ち出していること。これは日本の場合、スポーツ基本法にも明記されています。その次に、このカザンの行動計画は、発展途上国をかなり意識しているので、いわゆるスポーツとか身体活動が社会にとっての恩恵や便益に供するということを明確に打ち出していることだと思います。それはいわゆるソーシャルキャピタル論に立って、体育、身体活動、スポーツがいまという時代や社会にとってかけがえのない重要なものだとの考えがあるのだと思っています。そういう意味でいうと、次期の基本計画を含めて言うと、社会資本としてのスポーツという立場を全面的に打ち出していくことが大事ではないかと思います。第2期でそのところまで踏み込むというのはなかなか難しかったと個人的には思ったところもありました。スポーツをソーシャルキャピタル論、つまり、スポーツや身体活動を社会資本として位置付けるという発想や考えは、多分、久野先生が提言されている健康で幸せなまちづくりの実践の基盤に位置づいているように思いますし、ソーシャルキャピタルをどうつくっていくのかという実践的試みでもあるのではないかとも思っています。ソーシャルキャピタルとしてのスポーツという考え方、つまりこれを基本計画の根幹になる理論背景としていくと、多分、学校体育や高齢者スポーツから、スポーツ参画の問題、スポーツによる街づくり、コミュニティー形成の問題、ハイパフォーマンススポーツのあり方までも含んで、うまく整合性が取れる計画になるように思います。そのときに、次に大事になってくるのは、スポーツ推進なのか、スポーツ振興なのかということだろうと思います。
言葉の問題で、大した問題ではないと思われるかもしれませんが、多分、プロモーションでいくのか、ディベロップメントでいくのかはやはり大きな違いがあると思います。つまり、上から言わば振興してあげるのか、そうではなく、国民のほうが主体となって推進していくのか。多分この辺りの使い分けはあまりこれまで意識しないで、スポーツ振興とかスポーツ推進という言葉が使われてきたのだろうと思いますが、言葉の問題よりも、むしろどちらの立場に立っていくのかというところが、やはり非常に大事になってくるだろうと思います。つまり、そういう意味で言うと、スポーツ推進という立場に立ったほうが、国民の主体性に基づいて計画がなされるという意味で、やはり第3期としては、少し前進という形が取れるのではないかと思います。
カザンの行動計画もよく見てみますと、特に青少年のスポーツとか、運動とか、学校体育の充実というのは非常に強く打ち出しています。特に第3期の場合は、日本もここに手をつけていく必要が出てくる。もう少しはっきり言うと、総合型の地域スポーツクラブの問題だとか、あるいは学校運動部だとか、地域だとか、学校の子供の、あるいは発達段階にある子供たちの運動・スポーツをどうするのかということが主要な問題になってきますし、学校と地域をスポーツという媒体でどうつなぎ新しい形をどう創っていくのかということが、少子高齢社会の日本のこれからの在り方までも決めていくだろうと思っています。
そういう意味で言うと、運動学的な理論に依拠することも大切だと思います。これは、長官の御専門だと思いますが、ベベーグングスレーレという学的領域に立って言えば、スポーツの発達段階では小学校の四~六年生が非常に重要な時期だと言われております。ところが日本の場合、この時期の学校以外でのスポーツ教育が行える体制が十分ではありません。また、中学校年代の地域のスポーツ活動では、いわゆる運動部活動以外では、例えば、地域のクラブが大会に出られないという状況がずっと続いてきました。中学校の枠組みと高校の枠組みという校種別で、大会をやっていくのが本当にこれからもいいのかどうかまで、抜本的に見直さなければいけない時期がきていると思います。つまり、青少年のスポーツの推進をやっていく上では、今までスポーツ教育の階梯を校種別で考えてきましたが、そうではない新しいスポーツの発達論に立った、言わば青少年スポーツの再編が必要な気がしています。
その中で言えば、中体連、高体連の発展的改組も含んで見直しつつ、そこにUNIVASも繋げながら、地域スポーツクラブとの連携の中で議論されていくことがあってもいいように思います。そこに指導者論が入ってくるし、あるいはどこでやるのか、学校でやるのか、地域でやるのか、あるいは、どういう施設でやるのか、こういう問題も実は入ってきます。こういう問題が入ってくるからこそ、あえてここのところにも議論の焦点を当てていくことが大切で、例えば、小学校から高校卒業まで、4・4・4制の4年ごとに大会のくくりを置くような、ディビジョン制を校種にとらわれず、考えたり議論の俎上に上げていくということが問われてくるだろうと思います。
あまり引っ張るつもりはありませんが、例えば共生の問題でも、LGBTQの問題まで入っていかないと本来の問題の所在にまで到達しませんし、男女共生という発想で本当にいいのかという段階に来ていると思います。そうなってくると、例えば性、年齢、障害の有無を問わないユニバーサルスポーツという新しい概念をより精緻にしていくことも求められ、新しい概念に立ったスポーツが開発されていくべきだし、こういうスポーツをどういうふうに位置づけていくのかということも、第3期では課題になってくるだろうなと思います。
以上、感じたところをお話しさせていただきました。

【早川会長】 友添委員、ありがとうございました。
山下委員、お願いします。

【山下委員】 第2期スポーツ基本計画、これは私も大変よくできていると、こういうふうに思っておりますけれども、しかし、これはまだまだこの目標達成していくためには、かなりの時間、あるいは労力というものを要するのではないかと思っています。同時に、我々JOCはじめもっとスポーツ関係団体も、このことに対して真剣に向き合って、関わっていく必要があったと、こういうふうに思っています。
第2期スポーツ基本計画において、JOCが特に関わっているところは、国際競技力の向上、インテグリティの向上、アスリートのキャリア支援、そういうところに限定されていました。我々が限定していたのかもしれません。ただ、JOCの掲げている理念に、「全ての人々にスポーツへの参画を促し、スポーツを通じて健全なる精神と肉体を持つ人間を育て、オリンピックムーブメントを推進する」と書かれています。国際競技力の向上、オリンピック等で活躍すればよいということだけではありません。ということは、やっぱりこういうことに対して、もっともっと我々もしっかり関わっていくべきであろうと思います。
ですから、オリンピズム、これを広げる、浸透させることを通しながら、やはりスポーツの価値を高める。あるいは、スポーツを通して社会課題の解決、このことに対してJOCとしても、各競技団体を巻き込んで、しっかり取り組んでいかなければならないと思っています。
前回のこの会議の後に、結城委員と雑談をさせていただいたときにお聞きしたのですが、IOCはジャック・ロゲ会長の頃は、できるだけほかの団体と関わらないようにしていたとのことです。自分たちを守っていき、自分たちの純化というのですかね。しかし、ジャック・ロゲ会長からトーマス・バッハ会長に替わったら、これが大きく変わった。いろんな団体と連携しながら、世界が抱える問題に対して、スポーツを通して解決していこうと。積極的にいろんな団体と、国連やWHOも含めて、一緒になって取り組んでいこうとされていると。思ったのは、我々が考えている、目指していることは間違ってないなということです。
ですから、もう1回言いますけど、スポーツを通して社会問題の解決、できることは限られているかもしれませんけれども、できることを、各関係組織と一緒になって取り組んでいきたいと思っています。
3点述べさせていただきます。1点目。ここにも触れられていますけれども、東京2020大会のレガシーの継承です。組織委員会の橋本新会長は、差別の根絶、共生社会の実現と多様性の確保、ここのところを前面に出されました。組織委員会は、オリンピックが終わりますと、1年後に解散します。それをスポーツ団体、そしてさまざまなステークホルダーがあとを受け継いで、そういう社会になるよう、これを必ずレガシーとして残していってほしいと思います、と会長が熱く語られました。もちろん我々JOCをはじめスポーツ界も、これに向けて全力で取り組んでいきますけれども、第3期スポーツ基本計画の中でも、スポーツ庁としても、全面的にこれを出していただければありがたいと思います。スポーツ界が変わり、スポーツ界がほんの僅かでも、こういった社会問題の課題の解決に取り組んでいければと思っております。
それからもう一つ、2点目ですけど、スポーツを通じた国際貢献活動。これは、東京2020大会招致の際に、「SPORT FOR TOMORROW」として、当時の安倍総理からの発言もございました。規模は縮小しても、やはりスポーツを通じた国際交流、国際貢献活動、これはぜひスポーツ庁として続けていただきたいと、こう思っております。これを続けていくことは、日本の国際社会におけるプレゼンスを高めていく上でも非常に有効であろうと思っています。
JOCも、昨年の8月にJICAと協力協定を結びました。外務省ともいろんな形で協力させていただいています。これからも、JOCだけでできることは限られていますけど、積極的にスポーツを通した国際交流、国際貢献、それから、そのための人材の育成、これは長官からもいろいろ御指摘、JOCの足りないところをいただきましたけど、そういうところについて、我々にできることを一生懸命取り組んでいきたいと思っております。スポーツを通じた国際貢献活動、大事にしていただければありがたいと思っております。
3点目です。JOCでは、東京2020大会に向けて、「GOAL & ACTION FOR TOKYO 2020」を策定しました。これは、東京2020大会を通して、JOCが果たすべき3つの役割と、その目標達成に向けた戦略を策定して、これを広く周知、公表しました。東京2020大会の前と後にアンケート調査も行い、その成果を検証して、今度は2022年度からの3年間の中期計画を策定しようとしています。ですから、JOCが進める中期計画と、スポーツ庁の第3期スポーツ基本計画、我々としては、関われるところはできるだけ関わってリンクしながら、そして、いろんなスポーツ団体と一緒になって、スポーツの価値を高める。スポーツが様々な社会課題の解決に役立つ、そういうことに向けて汗をかいていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。以上です。

【早川会長】 山下委員、ありがとうございました。
それでは、続けて御意見を頂戴したいと思います。それでは、河合委員のほうからよろしくお願いします。

【河合委員】 ありがとうございます。今回の第3期に向けてということで、第2期、皆さんからもありましたように、大変よく進んできたと思います。方向性もすばらしかったなと思います。特に障害者のスポーツ、パラリンピックに関する部分についてですけれども、まさに第1期のときは、厚生労働省から文部科学省に移り、スポーツ庁になってくるという意味で、統合に向かってきたと思います。分かれていたものがこうなってきたという状況から、この第2期において、まさに今で言うとダイバーシティというか多様性、オリパラ一体、こういう言葉がなじみ、進んできたというふうに感じております。
そうなったときにこれからどうするのかというと、まさにインクルージョン、インクルーシブなスポーツ界をどうつくるかという視点が、これから重要かなと思います。アメリカの民族多様性を提唱している方が使っているダイバーシティとインクルージョンの事例ですけれども、ダイバーシティというのはダンスパーティに誘うことであって、インクルージョンというのはダンスを一緒に踊ろうということなのだと思います。まさにこの段階に、これからスポーツ界が率先して入っていくという計画になることが、2030年を見据えて進んでいく大きな方向性ではないかなと考えています。
日本障がい者スポーツ協会も、先月2030年ビジョンというものを出し、その中に、JPCの戦略計画というものも入れて、2030年を見据えた歩みをスタートさせたところです。ここでも活力ある共生社会の実現というものを目指して方向性を定めているところですけれども、今回の諮問の理由の中にも共生社会の実現という言葉が入っており、全く同じ方向性を向いて進んでいけることをうれしく思っているところです。
前回の会の際にも、私から発言をさせていただいた中で、まさにこの多様性、D&Iのところも含めてですけれども、特に取り組むべき6つの項目の中の最初に、女性とか子供とかいろいろある中で、障害者を一番最初に置いていただいているところにすごく御理解をいただきながら、さらに進めていただけるというふうにも感じておりますし、特に、地域のスポーツ推進計画のところにも反映されない限り、我々が国でつくっていく基本計画が、しっかりと国民の皆さんに伝わっていくところまではなかなか伝わらないのだということをお話したことも反映していただいたというふうに受け止めて、大変うれしく思っております。
その中で3点お話しいたしますが、1点目ですね、やはり学校教育。先ほど鈴木委員からもありましたけれども、改めて学校の体育や運動部活動をどう進めていくのか。インクルーシブな状態にするにはどうするのかというところを、丁寧に計画に落とし込んでいけるとよいなと思います。小学校の段階で、本当にナショナルレベルのチャンピオンシップが必要なのかどうなのか。スポーツの強豪国と言われている国で、そういった大会をやっていない国もあります。そういったことも踏まえて、学校体育や運動部活動、先ほど友添委員からもありましたが、そもそもどうあるべきなのかということも含めて、そして、障害のある子供たちの体育の参加率を100%にするということを目指して、どう取り組めるかという具体のところも見ていければというふうに思います。
2点目は、先ほどお話ししたように地域の問題ですので、ここに反映できるような仕組みを、今回の計画でもぜひ取り入れながら、民間のスポーツ施設やそういったところでも自由に障害のあるなしを超えて、誰もが楽しめる環境を整えることが重要かと思っております。
最後3点目ですけれども、やはりハイパフォーマンススポーツと、グラスルーツのスポーツとの好循環が重要かと思っております。レガシーの1つかと思っているのですが、残念ながら、ここを評価する仕組みもないというのが1つの課題ではないかと思っています。
例えば、ハイパフォーマンススポーツにおいては、メダルの数とかMPAの数がどうというところが1つの指標になりながらも、そこで得られた知見等を、グラスルーツの様々なところにこのように反映されたことが、国としても、地方としても、民間としても、評価されていくようなものも示していかない限り、なかなかそういったところに力を注ぐことが難しい現状なのかなというふうに受け止めておりますので、今後もオリンピックもパラリンピックも続きますし、様々な機会で、国民の皆さんとともにスポーツの価値を伝えていく、1つの大きなエポックメーキングだと思っているので、こういった場を生かすためにも、こういったグラスルーツの好循環を生み出せる仕組みを、何とか計画に盛り込んでいけるとよいかなと思っております。以上です。

【早川会長】 河合委員、ありがとうございました。
議事の途中ではございますけれども、萩生田大臣にお越しいただきましたので、ここで一言御挨拶を頂戴したいと思います。

【萩生田大臣】 皆さん、こんにちは。文部科学大臣の萩生田光一です。3時から皆さんに熱心に御議論いただいて、中途半端な時間にお邪魔して本当に申し訳ないのですが、今日は衆議院の委員会や、また、コロナ対応の様々な会議が重なっておりまして、この時間にお邪魔しました御無礼をお許しいただきたいと思います。
第26回のスポーツ審議会総会を開催するに当たりまして、委員の皆様方におかれましては、日頃よりスポーツ政策の推進に御協力いただいておりますこと、改めて感謝申し上げたいと思います。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まった当初、多くのスポーツ活動が中止や延期となったわけですけれども、その後、関係者の御尽力によりまして、感染症対策を講じながら、様々なスポーツ活動が再開されることになりました。改めてスポーツに触れる機会に接して、スポーツは私たちの生活に必要不可欠なものであるということを強く感じると同時に、このコロナ禍において、スポーツの力はますます大きくなっていると確信しております。
本日は、東京大会後の、そしてポストコロナ・ウィズコロナのスポーツの政策の基本的な方向を示す、第3期スポーツ基本計画の策定に向けたキックオフの会になると思います。今後約1年間かけまして議論を深めていただく形となりますが、委員の皆様方におかれましては、どうぞ忌憚のない御意見をいただきますようにお願いを申し上げて、御挨拶にしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【早川会長】 大臣、ありがとうございました。
大臣は公務のため、ここで退席されます。どうもありがとうございました。

(萩生田大臣退席)

【早川会長】 それでは、引き続き議論を続けたいと思います。
山田委員、お願いいたします。

【山田委員】 ありがとうございます。第3期のスポーツ基本計画、いよいよ始まるわけでありまして、私も第2期のスポーツ基本計画、非常によくできているのではないかなというふうに思っております。人生が変わる、社会を変える、世界とつながる、この方向というのは、やっぱり変わらないのではと思っておりますけれども、2030年を見通して、これから考えていくわけですけれども、そのときに、もう一つ考えなくてはいけないのは、2030年を考えるのであれば、まず1つは、その先も見ていかなくてはいけないだろうということです。2040年はどうなるのだろうか。そして逆に、それが鳥の目とすると虫の目ではありませんけど、今どうなのだろうという、2つの視点が要るのではないかなというふうに思います。
その点でいくと、私も地方行政にずっと携わってきたのですが、地域の状態というのは、大変これから厳しい形を迎えざるを得ません。2040年に、今、1,790ある市区町村、このうち消滅可能性都市というのが、前のときは800台だったのですが、今、推計しますと927まで増えています。つまり、半分以上が消滅可能性都市になってくる。ここにおいて、学校というものがどういう位置づけになってくるのだろうかということを考えていかないといけないと思います。しかも、ハイパー高齢化社会になって、この1,798のうち、637の市町村区は、一番多い年齢構成が90以上の女性になります。そういった社会というものを見通して、地域のスポーツの在り方をどうやっていくのかということを考えていかないといけないと思います。
そして、今度は逆に今の時代を、現在を見ると、今大臣もおっしゃいましたように、ウィズコロナ・ポストコロナというものに対して、一番スポーツがやりづらい状況が生まれてきている。こうした時代だからこそ、スポーツというものをしっかりと我々は進めていかなくてはならないという位置に、この第3期のスポーツ基本計画は立つのではないかなと思います。
そうした目で諮問を見ると、私はもともと役人ですから、裏読みをしてしまうところがありまして、まさに多様な主体の参画というのは、社会が多様化しているので、今までだったら学校は学校でやればいいではないか、障害スポーツは障害スポーツでいけばいいのではないかと言っていたのが、多様化することによって、そういう区分ではもはやできなくなりつつあるのではないかと思います。そして、各関係機関の連携と協力というのは、もう今までのような分けた形で、それを連携・協力というよりは、一体化して社会全体がスポーツに向かって新しいプラットフォームをつくっていく必要が出てきているということを端的に表していると思います。
そして、デジタル技術については、今までとは違いこのコロナ禍におきましても、ユーチューブを見て、みんな教えてもらったり、また一緒になって運動したりする、こういった時代が来ているわけでありますし、多様な財源、資源の安定的確保というのは、裏から読めば間違いなく社会保障が急激に増えていく中で、スポーツ財源自身というものが、枯渇化しかねないという状況を端的に表しているというふうに思っております。
そうした点から申しますと、やっぱり地域において、学校スポーツや障害スポーツが、今の基盤でいけるのだろうか。今年はついに、各シンクタンクの予想では、出生数が80万人を切るのではないかと言われております。これは予想よりも9年から10年ぐらい早く少子化が来てしまうという形になっています。そうしたときに、小学校の、今までよりもスケールが小さくなって、そこで団体スポーツをはじめとして、地域スポーツをはじめとして、どれだけのことが確保できるのだろうか。人材面も含めて、これはもう喫緊の課題になってくるのが、第3期の大きな役割ではないかと思います。
そして、その中で連携と協力という在り方も変えていかなくてはならないと思います。特に財源については、やっぱり新しい財源の確保の仕方を考えるべきだと私は思います。この間、ふるさと納税やふるさと企業納税やクラウドファンディングなど、新しい形で財源の確保が出てきているわけでありますので、こうしたものを積極的に取り組んでいって、それによって、スポーツの在り方というものを変えるべきだと思っています。
私はやっぱり特に地域においては、定住人口が減り、そして、地域の活力が衰える中で、先ほどお話ありましたけれども、交流人口を増やしていかなくてはならないと思っています。その点からすると、スポーツを通じて交流人口を増やしていき、ソーシャルキャピタルを高めていくということは、これからの一番大きな狙いになりますし、やっぱりスポーツの経済効果というものは、地域に間違いなく力を与える。そうしたものをつくり上げていく新しいプラットフォーム、人材問題も含めてつくり上げていくという点では、まさに今、やらなければならないと思います。逆に言うと、次の5年では遅いという話が、次の5年というかその次の5年ですね、2027年からだと遅いということをしっかりと我々は頭に入れて、危機感を持ってやっていかないといけないと思います。
さらにこの中では出てきてないのですが、安心安全をどう確保するのかというのは、このウィズコロナの時代において、スポーツをやる者にとってみんな大きな課題になっていると思いますので、その点にもどこか触れていただけたらありがたいなというふうに思います。以上です。

【早川会長】 山田委員、ありがとうございました。
それでは、いかがでしょうか。伊藤委員、お願いいたします。

【伊藤委員】 少し違った視点で話をしたいと思います。
私たちの社会生活は、年々止まっていません。いつも生活は大きく変化しています。スポーツも、変化し続けています。長い年月かけて、スポーツは変化している。これからはオリンピック・パラリンピックの力で、さらに次の大きな変化があると思います。スポーツの動きの未来を、我々は考えていくことが大変大事だと思います。
具体的な話を、第3期基本計画に対して少し話したいと思います。少年から青年、成人、そして高齢者まで、生涯を通じて、より多くの人々が楽しさ、喜び、そして体を動かし、競い合い、また新しい発見や感動をし、スポーツを長く生活の中に組み込むため、我々はさらに何ができるのか。そして、スポーツをする人々を見る、応援することで、新しい発見や感動を得るのにどのような貢献ができるのか。さらに、これらを支えるコーチなどの人々を増やし、育成し、技量を向上させることも含めて、スポーツの発展に関わる人々の集合体を進化する時代に合わせて発展させることを、日本スポーツ協会の使命として政策方針を打ち出していきたいと考えております。
特に,年齢に沿って、年代ごとにスポーツを楽しみ、仲間をつくり、そして生涯の長い一生全てにおいて年代に合わせてスポーツを楽しむことができる仕組みをつくりたいと思います。具体的には、現在、当協会では、国民体育大会、スポーツ少年団、スポーツマスターズの3つのスポーツイベントが、それぞれ独立して運営されています。一つ一つの大会が連動して、よりスポーツ活動を楽しむことができる仕組みを考えていきたいと思っています。
2024年、国民体育大会は、国民スポーツ大会へ名称が変わります。現在、これを契機として、スポーツがこれまで以上に楽しい、面白い、魅力的で、より多くの方々が、する、見る、支える人をはじめ、新たな形で関わっていくスタイルを構想しているところです。
例えば、既に一昨年から、国体チャンネルの名称で、各競技をネット配信するトライアルを始めています。これを例えば、47都道府県の皆さんが、地元の選手やチームを、1回戦から決勝まで追いかけて応援できる新しいデジタル技術の活用などは、着手できる取組です。都道府県ごとに、子供も高齢者も、1県1県それぞれの県民が、開催地と離れた場所で、地元の代表選手の活躍を予選から決勝まで目の前で応援できることにより、日本中で各県の皆さんが競い合って盛り上がるができます。これ以外にも、スポーツファンが喜ぶ新しい施策をさらに次の新しい時代に拡大していきたいと思います。
我々は、今のプランを次の10年、2030年ぐらいのスポーツの未来を見据えて、その10年のスポーツの進化の方向や概念を定めた上で、バックキャストとしてプランニングしようとしております。また、プロ野球やBリーグなどの世界では既に導入が進んでいますが、スポーツを中心としながら、食や音楽、芸術などのアミューズメント性を付加させて、スポーツとアミューズメントが融合した複合的なスポーツに関わることでスポーツの魅力をさらに引き上げることや、我々の重要な施策の1つでもありますが、協会自らが収益を上げる方策についての研究も進めていきたいと考えています。
2024年から、つまり3年後ですけれども、国民スポーツ大会は、英語名称を今までのナショナル・スポーツ・フェスティバルから「ジャパンゲームス」に変えることに決めました。現在、日本スポーツ協会が関わる全国的なスポーツイベントは、年代の若い順に、スポーツ少年団、国民体育大会、日本スポーツマスターズ、3つがありますが、どれも生涯を通じてスポーツを楽しむために重要なタッチポイントであると意識しています。将来的に統一したブランドの下で、マスターズの発展、スポーツ少年団の再拡大をすることで、生涯にわたって切れ目なくスポーツに親しみ、スポーツの価値を高める、それは周りにある日常の生活とともにベストバランスを実現できるようなイベントに発展させることを目指して、今後、具体的な検討を始めていきます。
最後に、日本スポーツ協会では、直近の問題としては、学校運動部会の改革、総合型クラブやスポーツ少年団の充実、子供の運動遊びの定着、不適切な指導の根絶、指導者の資質能力の向上など、こういうことを重点的に対応しながら、今申し上げたことを実際にやっていくことに向かっています。
ありがとうございました。

【早川会長】 伊藤委員、ありがとうございました。
それでは、ここで今日オンラインで御参加いただいております羽鳥委員のほうから御意見を頂戴したいと思います。よろしくお願いします。

【羽鳥委員】 第2期の答申、人生を変える、社会が変わる、そして世界につながる、この3つは大変すばらしい提言だったと思います。そして第3期のダイバーシティの問題、デジタルトランスフォーメーション、そして、財源を様々なところで求める、そして、いわゆるスポーツのソーシャルキャピタルとしての概念を高めていく、そして安心安全を目指す、これはとても大事なことだと思います。日本医師会の理念であります、1に運動、2に食事、3に禁煙、そして最後に薬というのが日本医師会の基本的な考え方でありますので、まさにスポーツ庁の主張されていることと全く一致しているというふうに考えております。
今期、日本医師会における健康運動スポーツ委員会の中では、テキストブックの改正を20年ぶりに行うんですが、その中で1つ大きなテーマとして、いわゆる、今までは運動をすることが禁忌であると考えられていた、例えば慢性腎不全、透析の方、ぜんそく、そして、いわゆる肺気腫の方、それからさらに認知症、心不全の方などについても、今までの糖尿病肥満、高血圧などの方々と同じように、運動について親しんでもらおうということでテキストブックの改正を目指して、1年後ぐらいに発行する予定であります。
そして、今日のお話の中にも障害者スポーツのことが触れられておりまして、障害者スポーツは医師会として積極的に関わっていくべきことだろうなというふうにも考えております。医師会の役目として、学校医、産業医、そしてかかりつけ医とありますが、この健康スポーツ医の資格もぜひ皆様方に活用していただきたいと思います。各都道府県に必ず委員会がございますので、そういう方々と連絡を取り合って、いろいろな場面で出動するように、いろいろな施策を組んでいただければありがたいなというふうに思います。
先ほどの障害者のことに関して言うと、いわゆる先天的に障害を受けてお生まれになった方もおられる、そういう障害者の方もおられますが、中途で障害者になる、例えば脳卒中を起こされて片手片足の状態がよくないとか、そういう方もおられるわけですので、そういう方たちを、いわゆる地域包括ケアとかそういうところでしっかり運動に親しんでいただく、そういうことが結果としては活力ある社会をつくることにつながることだと思いますので、ぜひそういう意味では、我々医師も活用していただけたらというふうに思います。
今日の皆さんの格調高いお話に本当に深く感銘しましたので、第3期をできるだけ成功させていただきたいと思います。皆さんもおっしゃっていましたが、いわゆる2030年問題、2040年問題というのはそんなに遠い話ではなくて、今しっかり骨格をつくっていくことがとても大事だと思いますので、ぜひ、今期、いい方向に向かえるよう、私も努力しますけど、皆様方と一緒に活躍していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【早川会長】 羽鳥委員、ありがとうございました。それでは、田中委員、お願いいたします。

【田中ウルヴェ委員】 ありがとうございます。スポーツ政策の在り方についてお示しいただきたいということが、室伏長官からも御発言がありましたので、そもそもスポーツ庁というものは、スポーツを広めるのだよねということを考えて、その観点から、スポーツの光と影の部分で、室伏長官がスポーツ庁にいらっしゃるのであれば、室伏長官でしかできないことは何だろうというふうに勝手に考えて発言をします。
まず1つ目、スポーツという言葉は人それぞれ感じ方が違うはずだなというふうに考えます。つまり、自分自身も元選手でした。そして長官も元選手でいらっしゃいましたので、競技という目線でのスポーツのことを考えておられることが多いというふうに推察をします。その点で、スポーツをする上で、私たちは、競技をする選手たちはどんな価値を得たのかということを、もしも御質問したら、どのようなお答えになるのだろうかということを、何か政策の中に入れていくことは大事なのではないかと考えました。例えば、スポーツで、特に競技で力を発揮するときに必要な幾つかの側面があります。身体面、技術面、戦術面、これらはいわゆる身体のほうです。しかし、もう一つよく見えない価値というふうに表現をされる部分が2側面あります。心理面と、つまりサイコロジカルという領域と、もう一つ、日本語にするとなかなか難しいスピリチュアリティという部分があります。スピリチュアルという言葉がどうしても日本語ではちょっと奇妙なほうにいきますが、競技をやってきた極めている選手は特に感じるであろう、メンタルではないスピリチュアリティの部分の価値というものをどのように示していくかということは、言葉では非常に難しい。しかし、政策にするときには言葉にしなければいけない。でも、選手が感じているであろう何かというものを、何か言葉にしていかないと、結果的に、スポーツは心身両面にとってよいのだということを政策に持っていくことができない。この辺りは、長官はどのようにお考えになるのかなということは大変興味を持ちましたので、まず、これが光という部分です。どんな価値があるから私たちはスポーツを広めるのかということを1点。
もう一つ、影の部分です。特に私の勝手なイメージとしては、長官はインテグリティということに対しての非常に大事な価値観をお持ちであると勝手に推察をします。やっておられた競技という面でもです。その点では、世界に広める、なぜ日本人は、そして、なぜインテグリティは大事なのか。例えばドーピングをすれば、私たちは絶対にばれない薬があったら、これをすればメダルを取れると言われたときに、じゃ、なぜやらないのか。でもやってしまう人がいる。そんなところを、室伏長官だったら、なぜインテグリティという、インテグリティはいろいろな側面がありますけれど、でも、それをなぜ高めないといけないのか。そして、どう高めることが人間の成長発達によいのか。それでも、我々はどうしても人間なので、例えばドーピングにしても、ドーピングをやってしまった人に対しての救済措置というものはなぜ必要で、救済をした上でのその人の人間としての成長発達というのは、やはりスポーツの中で何か大切な得るものがあるのではないかとか。室伏モデルというふうに勝手に考えましたけれど、特にインテグリティの面では、表層的なものだけでなく、本当にお感じになったことを政策にしていただくということは重要な点かとは勝手に考えました。
以上です。

【早川会長】 田中委員、ありがとうございました。それでは、鈴木秀典委員、お願いいたします。

【鈴木(秀)委員】 鈴木でございます。私のほうからは、3点、自分の関わっておりますアンチドーピング活動という視点から発言させていただきますけれども、私の視点からも多くの委員が今まで話されたことは非常に多く関係するなというふうに感じております。
まず1点目は、国際貢献、レガシーの承継ということですけど、これは山下委員からも先ほど出ましたけれども、第2期のスポーツ基本計画にございまして、国際スポーツ戦略、この取組によって非常に多くの国際貢献に対する成果が認められたというふうに感じております。特に、我々に関するものだけでも、スポーツ・フォー・トゥモローの裨益国、あるいは裨益者数などは十分達成できていると思います。やっぱりこういった成果をきちんと残すべきではないかというふうに思っておりまして、この点で、特にアジア地域のスポーツの振興に対しては大きな貢献ができたのではないかなというふうに思っておりまして、しかしながら、これも先方のニーズを十分踏まえて、今後、レガシーとして提供していくべきではないかというふうに考えております。
また、さらにスポーツ界の意思決定に積極的に参加するということも重要でして、これは今後を見据えて広く関連する団体のポジションの獲得、それから今後関係が出てくるであろうこれらとの関係の構築ということを、やはり戦略的に進めるということが必要であるというふうに感じております。
それから2点目は、先ほど田中委員のほうから出ました、競技としてのスポーツですけれども、我々の分野では、さきにお話ししましたとおり、世界アンチドーピング機構から教育の国際基準が出ました。それから、昨年はアスリート憲章もできました。こういった状況を考えますと、アスリートの権利という視点に立った施策というのが盛り込まれてもいいのではないかというふうに思っております。実際に、自分たちの活動の中で考えてみますと、新しいスポーツ、あるいはパラリンピック種目を含む障がい者スポーツなどでは、競技団体さんの規模が非常に小さいところが多くて、ドーピングコントロールという我々のそういった手続だけを取り上げても複雑化している現状、これに対応ができないではないかというふうに感じているときもあります。同様に、ハラスメントなどのほかのスポーツインテグリティに関わるような事案でも同様ではないかというふうに拝察をいたします。そうしますと、アスリートの権利、そしてアスリートをまさに近くで支える方、指導者等、こういった方々を巻き込んだ、あるいはこういった方々を同時にインテグリティの確保につながるような教育、こういったことを行うことも重要ではないかなというふうに考えております。
それから3点目ですけども、これは多くの委員の方々から教育の重要性、それからスポーツの価値とは何かということの、もう1回問い直すこと等が出ましたので、まさに我々のところでもそのとおりでございまして、スポーツの価値を基盤とした教育というものを、初等教育から大学を含んだ高等教育まで一貫して充実させていくということが必要だということを改めて申し述べさせていただきます。
以上です。

【早川会長】 ありがとうございました。それでは、斎木委員、お願いいたします。

【斎木委員】 斎木でございます。ありがとうございます。
3点申し上げたいと思います。
まず1点目は、「人間力の向上なくして競技力の向上なし」であります。これはJOCを筆頭にいろいろなスポーツ競技団体が掲げている重要な標語といいますか、目的といいますか、テーマであります。これをさらに別の角度から光を当てて言い換えてみますと、スポーツを通じて人間性を高めることが大切だということになるのではないかと思います。
そういう観点で、先ほど河合委員のほうからハイパフォーマンススポーツとグラスルーツスポーツとどのようにつなげていくのだろうかという問題提起がございましたけれども、まさにスポーツを通じて、それぞれの立場から、一人ひとりが自らの人間性を高めていくことの重要性をいま一度、社会に対し、私たちとして訴えていくということは意味のあることではないかと考えております。
2点目でございますが、コロナ禍で外国との交流は言うに及ばず、国内におけるスポーツ交流も極めて困難な状況が続いています。しかし、そういうときこそ、スポーツの持つ力について、しっかりと考えたいと思います。すなわち、国籍ですとか、人種ですとか、年齢ですとか、ジェンダーですとか、そういった表層的差異、あるいは価値観や文化といった深層的な差異が存在しますが、こういった様々な違いをスポーツの力で超えることができるという点であります。それは、国境あるいはその他の壁を、スポーツを通じることによって乗り越えて、人は他の人とつながっていけるということでありまして、この点も、あまりにも当たり前のことかもしれませんけれども、しっかりと念頭に置いて、3期の基本計画を皆様と一緒に議論してまいりたいと考えております。
それから3点目です。今日長官から諮問いただきまして、今後5年間のスポーツ政策の目指すべき方向性及び主な施策の内容について、特に以下の6点について検討いただきたいということでございました。その2番目のところに、スポーツ団体、他の行政機関、地方公共団体、学校、民間事業者、研究機関等との連携・協力と挙げていただいています。前回のときにも申し上げましたので、若干の繰り返しになりますけれども、私は、第3期のスポーツ基本計画の審議・策定に当たりましては、何といっても多様なステークホルダー間の連携と協働が重要だと確信をしております。この辺りの理念と、プラスしてそれをどういう形で具体的な政策、施策及び措置に落とし込んでいけるかということも、十分な時間をとって、また皆様の知恵を結集して、考えていきたいというふうに思います。
どうもありがとうございます。

【早川会長】 斎木委員、ありがとうございました。続けて、境田委員、お願いします。

【境田委員】 境田でございます。実は、第2期のスポーツ基本計画の立案にも関わらせていただきました。そのときのメインテーマの一つは、大学スポーツ改革でした。そして、大学スポーツには、統括団体がないということで、ここをきちんとガバナンスを効いた形に持っていこうということで、約3年の議論を重ねて、2019年にUNIVASができました。もう一つのメインテーマは、スポーツ団体のガバナンス構築でした。この5年間にも、多くのスポーツ団体に不祥事やコンプライアンス問題などが起きましたが、スポーツ団体のガバナンスをきちんと構築しようということで、スポーツ庁スポーツ審議会のもとに、新たにインテグリティ部会というのもができ、2019年にはスポーツ団体ガバナンスコード策定いたしました。
スポーツ団体ガバナンスコードができ、その後、スポーツ庁、統括団体、競技団体が力を合わせることにより、スポーツ界全体のガバナンスはかなり確立できてきたのではないかと思います。また、大学スポーツに関しましても、スポーツ庁のリードのもと、高等教育局にも協力いただけたことにより、かなり良くなったのではないかと思います。そういう意味で、また、次の第3期のスポーツ基本計画が大切だろうと思います。
第二期以降の5年間で、社会全体、経済全体では何が起きたかというと、先ほどからありますように、やはりデジタルトランスフォーメーションという大きな流れだと思います。実は東京大学の理事をしておりました2016年に、学内にスポーツ先端科学研究拠点という研究横断組織を新たに作りました。この研究拠点には、もともとスポーツ科学を専門にやってこられたバイオメカニクスや運動生理学等の専門家に加えて、AIの専門家、ロボティクスの専門家、それからバーチャルリアリティ・ARの専門家、IoTの専門家、量子技術の専門家など、もともとスポーツ科学に関わりのなかった研究者も多数加わりました。そしてそれら研究者とともに、今後、社会に対し、科学の力により、どのような貢献ができるのか、スポーツ界全体に対してどのような貢献ができるのかという議論を始めました。そうすると、研究者が単独ではできない大きな社会貢献が、様々な分野の研究者が力を合わせることにより実現できるということに気がついたわけです。その後、恐らく100社ぐらいの会社の方々とも、産学連携についてのいろいろなお話し合いをさせていただきましたけれども、やはりスポーツを通じて社会貢献したいという会社の経営者もすごくたくさんいらっしゃることがわかりました。ただ、このデジタル社会の実現というのは、デジタルの掛け声だけで実現するものではないと考えています。ここに必要な要素は3つあると思っています。まず必要なのは、事業開始にあたり、コンソーシアムをきちんと結成し、当事者間で事業内容の骨格についてきちんと話し合いをしておくことです。デジタル・プロジェクトは大きな収益も産み出す反面、当然リスクも伴います。スポーツ団体、行政機関、地方公共団体、学校、民間事業者、研究機関など、コンソーシアムを組成する団体間で、プロジェクト開始前に、きちんとプロジェクトの骨格、プロフィットシェア、リスクマネジメントなど重要な論点についての話し合いをしておくことが極めて重要です。
次に重要なのは、事業デザインです。デジタルの時代というのは、大規模なデータがリアルタイムで全て入手できる時代です。センサー機能付き測定機器とかセンシング機能付きスーツとか、様々なデバイスをうまく活用するということが重要です。そこで集積された大規模データを、データサイエンティストやAIの専門家等の知見を得て、リアルタイムでどのように解析をするのかという解析技術の手法も重要です。さらに、そこから得られたデータを、利用者に対し、どのような形でフィードバックするのか。ここにはロボティクスの専門家、バーチャルリアリティの専門家、栄養学とか生理学とかいろんな専門家の知見が必要となります。そういった事業デザインをどのように構築するのかということも重要です。
3つ目に重要なことがデータガバナンスです。デジタル技術を用いてデータをいくら集めたとしても、結局、使いものにならなかったとか、あとは目的外利用や情報漏洩が発覚してしまい、事業自体が潰れてしまったというケースも、世の中ではかなりあります。したがいまして、このデータガバナンス、具体的には個人情報保護の問題、プライバシー保護の問題、セキュリティー確保の問題、このような問題をきちんとクリアした形で、データガバナンスを構築する必要があります。
この3つを、きちんとデザインしたうえで、今後、スポーツ界にデジタルトランスフォーメーションを導入すれば、スポーツ界に大きな変革をもたらすことができます。トップアスリートからグラスツールへの技術展開も、デジタルの技術を使えば、リアルタイムでオンラインでもできるようになりますし、それから、今、スポーツ団体に存する様々なマネジメント上の課題も、解決を図ることができるようになります。東京オリパラ大会後はスポンサー収入も減る可能性があります。そうなれば新たな収益源を探さなければいけません。そうすると、人員削減、経費削減で事業自体がマイナスのスパイラルに入る可能性もあります。そうならないためには、このデジタルトランスフォーメーションの流れをうまく活用して、自分たちの協会のみならず、地方協会、傘下の連盟にも、この流れを結びつけていくという必要があります。
第3期スポーツ基本計画では、このデジタルトランスフォーメーションという技術を軸に新しいスポーツ界の価値を生み出していく、こういうことが重要であろうというふうに思っております。
以上でございます。


【早川会長】 境田委員、ありがとうございました。それでは、渡邉委員、お願いします。

【渡邉委員】 渡邉でございます。今日は2点お話をさせていただきます。
まず1点は、報告、進捗状況ということになるのですが、先ほど基本計画策定についての諮問がなされました。また、それに基づいて基本計画部会が設置されることになったのですが、実はもう一方で、健康スポーツ部会というのが既に設置されております。これは、第2期スポーツ基本計画をつくったときに、成人の週1回以上のスポーツ実施率65%程度、障害をお持ちの方は40%程度といった政策目標ができたのですが、実施率の飛躍的な向上方策について調査審議するという目的で2017年度7月に健康スポーツ部会が設置されました。その後、数多くの審議を経まして、2018年9月には、スポーツ実施率の向上のための行動計画を策定しました。また、1年後の2019年8月には、スポーツ実施率の向上のための中長期的な施策が策定されたわけです。しかしながら、先ほど来、皆さんから報告あるように、なかなか目標が達成できていないというのが現状であります。
前回の基本計画でも、つくり方はすばらしいものの、なかなかアウトカムを獲得するところまでいってないという話がありました。実は、この行動計画等々についても同じことが言えようかと思います。したがって、本年の1月18日に、この新しいスポーツ審議会の下に、新たな健康スポーツ部会が再度立ち上がりました。委員の構成は若干変更されておりますけれども、あらためて私が部会長を任され、継続して審議を行っております。
具体的には、前回のスポーツ部会の取組の振り返り、それから、状況がコロナ禍ということで、皆さんから御指摘のとおり、いろんな課題が今山積しておりますので、今後、スポーツ実施率をどう高めていくかといった議論をこれからも進めてまいります。そして、その議論というのが、結果的には基本計画部会での議論と合わせて第3期のスポーツ基本計画につながっていくと、そんな状況になっております。
続いて2点目ですけども、前回の審議会の中で、今泉課長のほうから、4つの論点が示されました。1つはロジスティクスの問題、1つはリソースの配分、拡大の問題、そしてもう一つがエビデンスに基づいた取組、それに伴う適切な数値目標の設定についてということで言及されたと思います。前回、私、総論的なことを言いましたので、ちょっと今日は健康スポーツ部会に絡めて各論的な話をさせていただきたいと思います。
現在のスポーツ庁のスポーツ実施率等の世論調査というのは、データを見ると昭和54年から行われております。具体的には、実施種目と実施頻度、これは日数についての結果が示されます。健康スポーツ部会を開催しますと、必ず厚生労働省のほうから、健康局保険課の課長、もしくは課長補佐の方が出席をされます。羽鳥先生も委員として活躍されているので、多くの方御存じだと思いますけども、健康づくりのための身体活動量基準というのがございまして、ここでは、身体活動を運動と生活活動に分けて基準が示されています。そして、その基準というのは、運動の強度、時間、そして頻度、これをもって構成されております。年齢によっても異なってまいります。現在のスポーツ庁のスポーツ実施率という捉え方は、先ほど申し上げましたように、週1日以上とか3日以上とか、そういった指標で示される場合が多いですけども、先般久野委員のほうでしたか、発言があったと思いますが、健康が維持されるようなレベルのスポーツをやっている人、これをどれだけ増やすのかが重要だといったお話があったと思うんです。今のスポーツ庁が、やっている調査、その結果というものが、本当にどれだけ健康づくりに結びついていくのか。ここのところが実は分かっているようで分かっていないのかなというのが私の見解であります。
私が所属する笹川スポーツ財団では、1992年から日本のスポーツライフの実態調査を成人と子供青少年、隔年で行っております。実は昨年の調査の中では、WHOの身体活動量基準、これを測るための調査項目を活用して調査を行いました。具体的には、運動に加え、生活活動として、仕事、移動、あるいは余暇活動、こういったところでの身体活動、あるいは座位時間を聞き出すような調査項目となっています。やってみて分かったのですが、実はスポーツ実施率というのは、スポーツ庁の調査も笹川スポーツ財団の調査も、年代が上がるにつれて実施率が今高まっているのです。週1回とか週1日というところで見ますと。ところが、WHOの身体活動量調査の指標に基づいた調査によると、若い人のほうがその基準を満たしている、比率が高いのです。つまり、運動に加えて、生活活動の中での身体活動ということを考えると、高齢者の方よりも若い人のほうがその基準を満たしている、その比率が高かった。これは、新しいスポーツ基本計画をつくるに当たって、しっかりとしたエビデンスを獲得する、そのエビデンスに基づいた政策を立案するというところにつながってくるかなと、そんなふうに思います。
私も健康スポーツ部会の部会長を務めておりますので、こういった視点を、私自身も医学的な、自然科学的な知見がまだまだ乏しいので、いろんな方々に御教示いただきながら、そういった視点を持って、どんな調査をしてエビデンスを獲得したらいいのか。そして、その獲得されたエビデンスに基づいて、どういう施策を展開したら、スポーツ実施率が高まるだけではなくて、先ほどから出ているように、健康長寿社会の形成につながるのか。あるいは、スポーツの価値を通じた共生社会の形成につながるのか。こんなことを考えていきたいと思います。ありがとうございました。

【早川会長】 渡邉委員、ありがとうございました。それでは、諸橋委員、お願いします。

【諸橋委員】 ありがとうございます。私、この3期からこちらのほうに来させていただきまして、第2期基本計画を見て、特に知る、見る、支えるスポーツの参画人口の拡大に関して、非常に発展的に進まれたなと思って感じておりました。今回、長官の諮問を受けまして感じるところとしましては3つございますが、まさに今緊迫している学校教育、そして部活動問題、これをもう今すごい危機的状況にあるということで、やはり小学校、中学校、高校生、それぞれ年代によって、それぞれに必要な経験だったり体験だったり得るべき知識というものを、より一層、2期以上に3期は細分化した詳細なところまで踏み込んでいく必要があるのではないか、ついては、先ほど委員の方々からもお話ございましたが、地域間によって本当に違います。より質の高い教育を、少子化だからこそ受けることによって、どこまで地域格差を埋めていけるのか。そしてまた、子供たちにおいては、経済格差の問題をカバーするために、どのような施策で彼らの環境をつくっていくのか。このことに関しましては、私が2点目に申し上げたいスポーツ産業の拡大、こちらが必須になってくると思います。実効性を高めるために、より具体的な施策を出せるような形にすることによって、結果、行政機関とか民間事業者、スポーツ団体が同じ目線で、やはり横串がきちっと刺せる状態で発展させることによって、この見る、支えるという、例えばスポーツに対して、スポーツをしない、もしくは興味を持っていない方々に対しての呼びかけが非常に発展的になるのではないかと思います。
そしてその結果、3番目のポイントとしては、スポーツ産業の拡大が循環型となって、また、地方を支え、教育の質を高めるということにつながっていくことで、確実な、多様な財源の資源の安定的な確保につながるのではと思っております。
以上です。

【早川会長】 ありがとうございました。それでは、大日方会長代理のほうからお願いします。

【大日方会長代理】 大日方でございます。先ほどの諮問をいただきまして、まず思ったことを、1つ目の第1にというところのこの理念含めて、どういうふうに、2030年以降を見据えた政策の在り方を示すと、非常に重要なことだなというように感じました。
今私たちが、ここで非常に困難に直面している状況の中で常々話題になることというのは、やはり分断しやすい社会なのではないかなという、その方向性だと思います。この分断を、スポーツを通じて、ではどのように分断を少なくしつなげていくことができるのかというところをしっかり示していく必要があるのだろうというふうに思いました。私も2期の基本計画の策定にも携わらせていただいて、スポーツの価値というものについて非常に多くの議論をさせていただきました。この人生が変わる、社会を変える、世界とつながる、未来をつくる、これは、そういう意味ではとてもすばらしい計画だったなというふうに思いますが、自分自身の反省を込めて言うならば、もっとこれを、言葉を尽くしていかないと、どう人生が変わるのだろう、社会をどのようにスポーツを通じて変えることができるのかということを理解していただける国民の方々、皆さんに理解いただけるという、こういうことが必要なのだろうなというように感じました。
例えば、スポーツ実施率を高める、先ほど渡邉委員からもありましたけれども、何のために高めるのだろう。私たちスポーツの関係者というは、そこをある意味、言わなくても分かっていると思いがちだけれども、実はそこはしっかりと説明をしていくこと、基本計画の中にその目的を落とし込んでいくというようなこと。あるいはスポーツイベントの開催の意義ということについても、しっかりと伝えていること、伝えていくこと、分かりやすい言葉で伝えていけること、それがつまりスポーツの価値ということを、将来を通じて伝えていく、こういった社会課題ができる、解決できるのだということを、もっともっと分かりやすく伝えていく必要があるのだろうというふうに理解をいたしました。
2つ目の具体的な、この以下の点についてということで6点挙げていただいたところにつきましても、皆様方の御意見も、御発言も踏まえて非常に私としては問題あるなというか、課題が大きいなというふうに感じたのは、枠の中で議論してはいけないということです。学校という枠、障害者スポーツという枠、そういったこれまでの考え方というものを取り払って議論をしていくことというのを、この諮問の中では求められているのだなということを強く感じました。これまでの枠をどう取り払っていくのかということ、そして新しいつながりというものを3期の計画ではどのように示していくのかということが重要だなというように皆様からも教えていただいた気がします。どうもありがとうございます。

【早川会長】 ありがとうございました。委員の皆様から大変多くの貴重な御意見をいただきました。課題も多いですし、チャレンジが待っているわけですけども、室伏長官から諮問いただきました第3期の基本計画の策定に十分に生かしていきたいというふうに思います。
私個人としては、2030年以降を見据えたスポーツ政策の在り方という観点で、先ほど友添委員からもお話ありましたけれども、SDGsの理念ですとかカザンの行動計画等の国際動向を強く意識した共生社会とか格差のない社会に向けたスポーツの在り方というか、スポーツ・フォー・オールみたいな、やっぱりスポーツ立国になるためのいろんな取組というものが非常に重要だというふうに思っています。
多くの競技スポーツの中では、アスリートがセカンドキャリアをどうするかということが非常に話題になりますけども、これはもうしっかりやっていくために何ができるかと。加えて、指導者ですとか審判だとか、競技によってはマネージャーとかトレーナーとか通訳、たくさんの支える方たちがいるわけですけども、こういった方が安心してサステナブルに活動できる環境の整備といったものも非常に重要になってくるのだろうというふうに思っています。
本日の御議論、本当にありがとうございました。
それでは、そろそろ時間になりますので、この辺りで閉めさせていただきたいというふうに思います。頂戴しました先生方の御意見等も踏まえまして、次期の第3期スポーツ基本計画の検討に臨んでいければというふうに考えております。
最後に、室伏スポーツ庁長官から一言御挨拶を頂戴したいと思います。長官、お願いいたします。
【室伏スポーツ庁長官】 皆さん、御多忙の中、またお時間をいただきまして、ありがとうございます。大変貴重な御意見を数々いただきまして、これをまたさらに深掘りをして、何度かまた皆様の御意見も伺うことになるかと思いますけども、今、なかなかいいニュースが世の中にない中、皆さんのアドバイスを今お聞きしても、本当に希望が見える内容のものばかりだったと思います。本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
また、2040年問題、30年ということで我々は今諮問でお話ししましたけど、確かにその先の2030というところも見据える、山田委員からもお話ありましたけど、地方が駄目になってしまえば学校教育もどうなるのだということで当然ございますし、大変大きなところからも様々な御意見をいただき、本当に感謝申し上げます。
引き続き、今後も第3期スポーツ基本計画の策定に向けて忌憚のない御意見等をいただければというふうに思います。
個々いろいろお話ししたいことはあるのですけども、ちょっと時間の都合がございます。またぜひ御議論をお願いしたいと思います。本当に皆さんありがとうございます。

【早川会長】 長官、ありがとうございます。
それでは、この辺りで意見交換は終了したいと思います。委員の皆様におかれましては、円滑な議事運営に御協力いただきまして、ありがとうございました。
最後に、次回のスポーツ審議会総会の日程等につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

【小畑政策課補佐】 事務局でございます。次回のスポーツ審議会総会につきましては、会長より御説明のございました資料3にもございますが、6月上旬を目途に予定をしているというところでございます。準備ができ次第、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。
事務局からは以上でございます。

【早川会長】 ありがとうございました。本日はこれにて終了とさせていただきます。皆様、どうもありがとうございました。

── 了 ──
 

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スポーツ庁政策課

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