スポーツ審議会スポーツ基本計画部会(第4回) 議事録

1.日時

令和3年5月24日(月曜日)14時15分~17時00分

2.議題

  1. (1)関係団体からのヒアリング
  2. (2)その他

3.議事録

【大日方部会長】 皆様、こんにちは。ただいまからスポーツ審議会スポーツ基本計画部会の第4回の会合を開催いたします。皆様、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
今回の会議につきましては、前回同様、新型コロナウイルス感染症の予防対策として、各委員にウェブ会議で御参加をいただく形とさせていただいております。また、報道関係者の方を含めて傍聴の方はYouTubeによるオンライン配信を御覧いただく形となりますので、よろしくお願いいたします。
なお、本日も秋元委員より代理出席の申出が事前にございましたので、これを承認しておりますことを御承知おきください。
本日も前回に引き続き関係団体からのヒアリングを予定しておりまして、今回が最後の団体ヒアリングとなります。
まず、本日の配付資料の確認を事務局からよろしくお願いいたします。
【事務局】 事務局でございます。先ほど部会長より御紹介がありましたとおり、本日は最後の団体ヒアリングの回ということで、本日も各団体発表順に発表資料をまとめまして、配付資料としてございます。委員の皆様方には事前に資料でお配りしているとおりでございます。
事務局からは以上でございます。
【大日方部会長】 それでは早速議事に入ります。
本日も、資料の1に記載されております13の団体より、スポーツ振興に向けた取組状況と成果、抱えられている課題、そして第3期計画において期待することの3点について御意見をお伺いすることになっております。
進め方といたしましては、幾つかの団体をグループごとに分け、まず各団体から8分以内で順次御発表をいただきます。その後、グループごとにまとめて質疑応答の時間を10分程度取らせていただきます。
御質問に当たりましては、恐縮ですが、可能な限りまだ御質問等されてない委員の先生方を優先させていただきたいと思っております。どうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。
それでは早速ヒアリングを始めたいと思います。事務局は、Iグループの団体の入室を確認してください。
(Iグループ 入室)
【大日方部会長】 では、入室が済んだようです。最初のIグループは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、東京都、日本オリンピアンズ協会、日本パラリンピアンズ協会、スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアム、この5団体となります。事前に御案内しておりますとおり、団体の皆様は説明時間8分以内をお守りいただきますようお願いいたします。御協力のほどよろしくお願いします。
それでは、組織委員会、お願いします。
【伊藤(オリパラ競技大会組織委員会)】 すみません。
【大日方部会長】 少しお待ちください。
すみません、ではちょっと順番を変えさせていただいて、先に東京都からの御発表をお願いしたいと思います。東京都様、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
【中澤(東京都)】 本日は東京都のスポーツ施策に関する取組などを御説明させていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。早速説明に入らせていただきます。
まず、初めに資料の表紙をおめくりいただき、26ページを御覧ください。東京都において取り組んでいるスポーツ振興に向けた取組状況と成果についてでございます。
現在東京都は、2018年3月に策定した東京都スポーツ推進総合計画に基づき、スポーツ振興施策を推進してございます。計画期間は2018年度から24年度までの7年間でございます。基本理念は、スポーツの力で東京の未来をつくることでございます。
計画全体の目標値として、スポーツ実施率70%の実現を掲げております。これは計画策定時は56.3%でしたが、2018年調査では57.2%、直近の2020年調査では60.4%になってございます。
また、表に記載してありますとおり、三つの政策目標に対する九つの達成指標を設定しておりますが、おおむね目的に向けて進行しているものと存じます。三つの政策目標ごとに主な取組事例を記載してございます。
1の健康長寿の達成では、大学や企業等と連携し、それぞれが所有するスポーツ施設を都民が利用できるようにしていただく事業を実施しております。現時点では14の大学や企業等から協力をいただいております。
2の共生社会の実現では、都立特別支援学校の体育施設等を活用し、障害の有無にかかわらず参加できるスポーツ体験教室を開催するなどの事業を実施しております。令和3年度は27校で実施していく予定でございます。
3の地域・経済の活性化では、ラグビーワールドカップ日本大会が2019年9月に開催され、多くの都民、国民や海外の方によって、東京はもとより日本全国で盛り上がりました。ラグビーワールドカップは2019年11月に閉幕しましたが、その翌月の12月に新型コロナウイルスが世界で初めて確認され、現在に至るまで新型コロナとの戦いが続いております。また一方で、世界各国でデジタル化の流れが急激に加速している状況もございます。このような環境の変化にスポーツ施策につきましても、今後どのように対応していくかということが現状における課題となります。
続きまして第2に、現状において抱えている課題と今後の方向性についてでございます。
それではページをおめくりいただき、27ページを御覧ください。新型コロナの影響、デジタル化の進展などを背景に、東京都は新たな都政の羅針盤となる長期戦略として、2021年3月に未来の東京戦略を策定いたしました。ここには目指す2040年代の東京の姿として20のビジョンを掲げております。そのうちのビジョン19では、スポーツが日常に溶け込んでいるスポーツフィールド東京を目指す姿として掲げております。先ほど紹介した東京都スポーツ推進総合計画策定後の環境の変化を反映させた、この長期的なビジョンの実現を目指して取り組むこととしております。このビジョンを実現する2030年に向けた戦略を二つ掲げております。一つ目は戦略16、スポーツフィールド東京戦略、二つ目は戦略19、オリンピック・パラリンピックレガシー戦略です。
具体的な内容につきましては、ページをおめくりいただき、28ページを御覧ください。ここには、戦略16、スポーツフィールド東京戦略に係る2030年に向けた政策目標を5点示してございます。
①は都民のスポーツ実施率を70%に向上し、さらに世界最高水準にすることです。②はスポーツをする障害のある都民の割合を50%に向上することです。ほかにも、スポーツ推進認定企業を1,000社にすること等を掲げております。
これらの政策目標を達成するために、主な取組である四つの推進プロジェクトについて、次に御説明いたします。
それではページをおめくりいただき、29ページを御覧ください。
一つ目は、スポーツフィールド・TOKYOプロジェクトでございます。都民の日常にスポーツが溶け込んだまちを創出いたします。具体的には、スポーツ推進企業認定制度の推進などに取り組みます。
二つ目は、スポーツベニュー・レガシープロジェクトでございます。スポーツ施設の新たな魅力を最大限活用し、スポーツを中心に様々な目的で都民が集うことができる拠点として形成してまいります。具体的には、大会後の戦略的な活用策を踏まえたスポーツ施設の運営などに取り組みます。
三つ目は、パラスポーツ・シティプロジェクトでございます。障害の有無を問わず、いつでも、どこでも、いつまでも楽しめる取組を推進いたします。具体的には、先ほども御紹介させていただいた都立特別支援学校体育施設の貸出し、体験教室を引き続き実行するとともに、パラスポーツを支える人材の裾野拡大と質の向上に取り組みます。
四つ目は、スポーツ・ウェルネス・シティプロジェクトでございます。誰もが生き生きとスポーツを親しみ、ウェルネスを実現できるよう、スポーツを核とした新たな価値や魅力を創出します。具体的には、有明アーバンスポーツパークの整備・運営等に取り組みます。
それではページをおめくりいただき、30ページを御覧ください。オリンピック・パラリンピックレガシー戦略の主な取組として、特にスポーツ振興と関連性の強い項目を御説明いたします。
一つ目は、大会の感動を生んだ競技会場を、都民に愛されるスポーツやエンターテインメントのシンボルにすることです。具体的には、世界に誇れるスポーツ拠点を目指すなど、エリアごとに施設の特性を捉え、レガシーとして生かしてまいります。
二つ目は、「スポーツをする・見る・支える」を日常に定着させ、都民の健康増進やクオリティー・オブ・ライフの向上を実現することです。具体的には、都民参加型イベントの開催や身近なスポーツの環境の整備の推進などをレガシーとして生かしてまいります。
三つ目は、パラリンピックに向けた多面的な取組の継承・発展により、パラスポーツを人気コンテンツにすることです。具体的には、東京発のチームでの盛り上げや、パラスポーツをできる場の確保などをレガシーとして生かしてまいります。
四つ目は、大会を契機に被災地の復興の姿を世界に届け、被災地の絆を次代に引き継いでいくことです。具体的には、被災地と東京を結ぶ縦断リレーの実施などをレガシーとして生かしてまいります。
それではページをおめくりいただき、31ページを御覧ください。最後に第3期計画において期待することでございます。
まず、スポーツ振興事業の推進についてでございます。
一つ目は、スポーツ環境の整備・充実として、地域のスポーツ振興の拠点となるスポーツ施設の整備の促進です。二つ目は、競技力向上の推進として、選手の練習の場の確保などです。三つ目は企業に対するインセンティブ制度の構築として、現役のトップアスリートを雇用した企業への支援です。
次に、障害者スポーツの推進についてでございます。
一つ目は、日本代表選手の強化や競技団体の活動拠点、財政面を含めた基盤強化の強力な推進として、より広域で選手の発掘・育成に取り組むための団体への支援です。二つ目は、障害者スポーツの理解促進・普及啓発として、障害者スポーツの理解促進に向けた積極的な情報発信及び普及啓発です。
以上、誠に雑駁ではございますが、説明を終わらせていただきます。
【大日方部会長】 どうもありがとうございます。
それでは次に、日本オリンピアンズ協会様、よろしくお願いいたします。
【横山(日本オリンピアンズ協会)】 日本オリンピアンズ協会(以下、OAJ)の横山と申します。本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。
本日の資料は3枚後用意させていただきました。
まず、簡単ではございますが、本会について説明をさせていただきます。OAJは、日本のオリンピアン相互の理解と親睦を図り、世界オリンピアンズ協会(以下、WOA)の一員としてオリンピックムーブメントを推進し、スポーツを通じた世界平和と国際的友好親善に貢献するとともに、我が国におけるスポーツの振興に寄与することを目的として2003年9月に設立。オリンピアンがこれまで培った経験と知見を大きなムーブメントとして未来につなげるため、事業を展開しております。WOAについては、資料1枚目で活動内容の一部を紹介させていただいております。この数年、WOA、また各国のオリンピアンズ協会の活動も活発になっており、様々な活動が行われておりますので、お時間がございましたらぜひ御確認いただければと思います。
また、オリンピック開催時には、OLYハウスというオリンピアンとその同行者のみが利用できる施設が開かれ、東京大会でも、予定どおりであれば、豊洲の選手村の近くに設置されることになっております。
なお、本会理事会で、アーティスティックスイミングのオリンピアンでございます小谷実可子氏が、昨年開催されたWOA総会内で行われた役員選挙に立候補し、アジア代表枠の女性理事として当選。その後、WOA理事会にて副会長に互選され、現在活動されております。
本会についての説明に戻りますが、資料2枚目を御覧ください。
本会はオリンピアンの会員組織であり、1912年の第5回ストックホルムオリンピックに日本代表選手団が初参加して以来、2018年の平昌オリンピックまで4,000名を超えるオリンピアンが選出されました。そのうち1,553名のオリンピアンに現在会員として登録いただいております。資料は会員の在住分布図となっております。また、昨年度までに、過去の選手団名簿等の資料に基づき、御入会いただいているオリンピアンだけではなく、すべてのオリンピアンの出場大会や成績も含めた情報をまとめ、データベース化いたしました。
続いて、本会の主な事業を御紹介させていただきます。資料3枚目を御覧ください。
設立当初より、全国各地でオリンピアンを講師に迎え、子供たちを対象としたスポーツ教室を開催しており、現在は、「オリンピアン巡回指導事業」という名称でスポーツ振興くじの助成事業として開催しております。当事業はオリンピアンから実技指導や講話を通じて、競技の技術習得だけではなく、オリンピアンと触れ合う中でスポーツの楽しさを伝えることやオリンピックムーブメントへの理解を深めることを目的に、また、夢や希望を持ってもらいたいという思いで開催しており、昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響で全会場中止という形になりましたが、一昨年は、資料記載のとおり10会場で開催、今後も安心して開催できる状況になれば再開したいと考えております。さらに、資料にございませんが、世代や競技を超えたオリンピアンの交流を目的とした「オリンピアンの集い」という懇親会事業を東京と地方で年1回ずつ開催。そのほかにも、全国各地からの講演や大会、イベント等のオリンピアンの派遣依頼に対し、オリンピアンの紹介、派遣などを行っており、東京都オリパラ教育推進校へのオリンピアンの派遣なども行っております。
また、本会の課題ですが、まず一つとして、協会自体やその活動、事業等についての認知度が低い、という点が挙げられると思います。地域によってスポーツ指導者が不足しているということや、東京2020大会の開催決定後には、オリパラ教育でどのようなことを実施するか悩まれている、といったお声を聞くことがございます。資料2枚目で御紹介したとおり、全国各地にオリンピアンがいらっしゃり、老若男女オリンピアンによって、講演・講話・実技指導等、できることは様々ですが、このような活動をしたいと考えているオリンピアンもたくさんいる中、自治体、教育機関、総合型地域スポーツクラブ等との連携不足や、資金不足のため、本来の活動が十分に行われているとは言えません。
オリンピアンの活動ができる場、オリンピアンに活動できることは多々あると思います。第3期スポーツ基本計画の策定に当たり、頭の片隅にも置いていただき、これからの我々の活動というものにぜひ御協力をいただきたいと考えております。以上でございます。
【大日方部会長】 どうもありがとうございました。
それでは次に、日本パラリンピアンズ協会、田口様お願いいたします。
【田口(日本パラリンピアンズ協会)】 日本パラリンピアンズ協会の田口です。本日はこのような機会を設けていただきまして、誠にありがとうございます。
当協会は、パラリンピック出場経験者による選手会で、競技種目や障害の違いを超えた活動を継続し、スポーツを取り巻く環境の整備や社会への貢献・寄与を目的として活動しております。
では、お渡ししております資料5、ページで言いますと61ページから、資料を基にお話しさせていただきます。当協会の、まず、主な活動・取組をお話しさせていただきます。
まずは、会員向け月例勉強会「パラ知ル!カフェ」というのを行っております。こちらは会員の自己啓発や普及を目的とした勉強会でございまして、当初は集まって行っておりましたが、やはりコロナ禍で、昨春からはオンライン形式で行っております。こちらは本来、2020年8月25日にパラリンピック開会式が開催される予定でした。そちらは第3火曜日なんですね。ですので、2016年1月の第3火曜日から毎月第3火曜日に基本的には行っております。こちらにテーマの例を書いておりますが、これ以外にも、コロナ禍で東京大会を目指す選手の悩み事などを聞いたりもしております。
そして二つ目が、奨学金事業「ネクストパラアスリートスカラーシップ」です。NPASと呼んでおります。パラリンピック出場を目指している次世代のリーダーとなるパラアスリートを支援するために、2017年よりパラリンピアンズ協会でお金的な部分とか、あとメンター制度を設けて、次世代のリーダーとなるパラアスリート育成に向けて行っております。
三つ目は講師派遣です。こちらはパラスポーツの理解啓発のための事業として、学校や自治体、団体等から依頼が多くございますので、そちらに講師を派遣します。また、パラリンピアンズ協会が経費を負担して講師を派遣する「パラ知ル!FIT」というのも行っております。こちらは年3回から5回、できるだけ、東京だけでなくて、地方の方々にも知っていただくように活動しております。
続きまして、次のページ、62ページです。パラリンピアンの競技環境調査も行っております。こちらは日本のパラリンピック選手が置かれている状況や課題を整理して、競技環境の改善のための活動に資する基礎資料を得ることを目的として実施しておりまして、夏の大会の前にアンケートを実施しまして、こちらは冬季・夏期、両方ともの選手に行っております。メディアも興味を持っておりまして、問合せ等をよく受けております。また、これ以外にも、NTCイーストが完成する1年前にNTCの周辺のバリアフリー調査などを行いまして、パラアスリートが使いやすい環境をつくろうというので一生懸命頑張っております。
では、第3期スポーツ基本計画への要望、期待、こちらを四つにまとめました。
一つ目が、次世代パラアスリートへの支援充実の必要性です。先ほど御説明しました当協会の奨学金事業であるNPASによって、支援金だけでなくメンターの存在や人のつながりが次世代のパラアスリートを育てていくことが重要であると分かりました。メンターは、期間終了後もアスリートたちの相談に乗ったりしております。こういう状況を踏まえると、現状パラリンピックを目指す次世代アスリートへの支援がほとんど行われていないのですね。ですので、ぜひエリートアカデミーのパラアスリート版の検討を要望いたします。2019年9月にNTCイーストが完成しまして、多くのパラアスリートがNTCイーストを使っておりますので、ぜひパラアスリート版のエリートアカデミーというのも行っていっていただければと思っております。構築していただければと思っております。
二つ目が、パラリンピック教育継続の重要性ですね。東京2020大会に向けてパラリンピック教育が増えまして、パラアスリートが学校を訪問して講演を行ったり、スポーツの実技を行ったりする機会も増えました。また、学習指導要領、教科書にパラリンピックが掲載されまして、子供たちにオリンピック・パラリンピックの教育を行うことの重要性を実感しております。子供たちが知ることによって、パラスポーツだけでなく障害者への理解なども進んでおります。また、よく耳にされていると思いますが、リバースエデュケーション――逆教育ですね、子供たちが家に帰って、それぞれの親御さんたちにそういうお話をされることによって、大人の世代、そういう教育をふだん受ける機会のない大人の世代の方々にも、障害者用駐車場とかトイレ、点字ブロックの使い方をおつたえしており、それによって新たなアイデアが生まれていると思います。東京都はこの東京2020大会でかなり進んでいるのですけど、一方、地方ではまた東京ほど進んでないという差を、先ほど申し上げました「パラ知ル!FIT」で地方に行ったときに感じておりますので、ぜひ大会後も日本全国で学校教育においてパラスポーツを伝えることを要望いたします。
そして三つ目が、体育の授業改革です。普通学校に通う障害のある子供が、体育に参加できず見学したりしているんですね。また、評価基準が健常者に置かれているために、体育を楽しめず、結局スポーツへの苦手意識をつくってしまっておりますので、東京2020大会を契機として、体育の授業改革の転換点になることを期待しております。体育の学習要領を見直し、また、その見直しの際には、当事者を含めた多様な価値観を持つ人材を含めて、ぜひ意見交換を行っていただきたいと思います。また、今よくある「ゆるスポーツ」とか、室伏長官が考案されました「New Mo(ニューモ」、これらのスポーツは全ての人が参加でき、また、参加者がみんなで楽しめて、ちゃんと競い合えるルールを自分たちで考えるということで、子供たちが共生社会を学んでいくことにもつながりますし、障害者のスポーツ実施率の向上にもつながっていくと思います。
そして最後に四つ目です。次のページ、63ページです。東京2020大会をレガシーとして、ワンスポーツ・インクルーシブ宣言というのを行っていただければと思います。
オリンピック・パラリンピック招致活動では、オリンピアン・パラリンピアンの選手同士が一体となって行ってきたレガシー――それまではなかなかオリンピアン・パラリンピアンが触れることがなかったのが、行ってきて、今ではいろんなイベントとか事業とかに出ていますよね。そういうのが生まれました。そして第1期、第2期スポーツ基本計画を通じて、スポーツ界ではダイバーシティーまでは進んできたと思います。ですので、さらにこれをもう一歩、今後は一体化をさらに進めて、オリンピック・パラリンピックの統合的なスポーツ推進を進めていくべきかと思います。将来的な方向としては、オランダのオリンピック委員会、スポーツ連合のように、JSC、JSPO、JOC、JPSA、JPCがワンチームとなりまして、スポーツ推進を一体に進める仕組みに改革する時期が来ていると感じておりますので、ぜひ人材交流を含めて組織の中に多様性を含めてどんどん進めていただければと思います。以上です。ありがとうございました。
【大日方部会長】 田口さん、どうもありがとうございました。
それでは、組織委員会様、よろしくお願いいたします。
【伊藤(オリパラ競技大会組織委員会)】 私ども組織委員会からプレゼンテーションをさせていただきます。
まず、最初にスポーツ審議会委員の皆様には、日頃から東京2020大会の成功へ向けて御指導いただいていることを心から感謝申し上げます。
私どものレガシーということですが、これも御案内のように、私ども自身は時限の組織でございまして、東京大会が終わりましたらおおむね1年以内ぐらいで解散する組織でございます。次の基本計画の中ではなかなかしっかりとした活動がしにくい団体ではあるのですが、ぜひこの東京大会のレガシーというものを各関係者の皆様にお取り組みいただきたいと願っているところでございます。
資料の説明に入りたいと思います。5ページを御覧いただきたいと思います。私どもは東京大会のビジョンとして、スポーツには世界と未来を変える力があるとうたってございます。これは当然スポーツの振興はもちろんですけれども、スポーツの振興のみならず、あらゆる面でオリパラ大会を契機に社会にポジティブな影響を与えていただくきっかけになればと思ってございます。そして具体的にはアクション・アンド・レガシープランということですが、一人でも多くの国民、関係団体の方に参画をしていただき、そしてその成果を未来に継承していただきたいと思ってございます。
次のページを御覧ください。私どもは五つの領域を重点領域として掲げながら、先ほど冒頭で御発言いただきましたが、東京都の皆様、またスポーツ庁をはじめ政府の皆様、経済界、JOC、JPC等、スポーツ団体の皆様に御参画をいただきながら具体的なアクションを起こし、それをレガシーとして後世に残していく取組をしてございます。特にスポーツと健康の分野では、東京都の皆様の御発表がありましたが、スポーツ実施率をはじめそれぞれの指標を定めながら取組を進めていくところでございます。
次の7ページを御覧ください。そうした形で様々なお取組を進めていただいてございまして、現在の時点で15万件以上のお取組を進めていただいてございます。この1年間はコロナでなかなかリアルなイベント、取組が減少してしまったのですけれども、オンラインを活用しながら様々な観点で、スポーツはもちろんですけれども、持続可能性、教育など取組を進めていただいているところです。
具体的なアクションとしたしましては、次のページでございますけれども、特に学校との連携の中では、体育、運動会や体育祭等におけるオリパラに関連した取組に、積極的に各学校にお取組をいただいたり、SDGsの取組、ここら辺とも連携をしながら推進していくこと、また、スポーツの力で復興の姿を世界に発信していく取組などを進めているところでございます。
次の9ページを御覧ください。今申しましたように、私どもは様々な取組を進めてございまして、私どもはいずれなくなってしまう団体なのですが、ぜひこのきっかけというものを将来に継承してもらいたくて、東京都、政府、JOC、JPCはじめ皆様に取り組んでいただけるように、レガシーのガバナンス体制を現在、関係各方面と調整させていただいているところでございます。
次の10ページを御覧ください。レガシー推進に関しては、JOCは当然ですが、日本国内のオリンピックムーブメントを推進する窓口でございます。もちろんJPCもパラリンピックムーブメントを推進する窓口としてお取りまとめいただきたい。また東京都や政府にもそれぞれの役割を担って、大いに推進をしていただきたいと思ってございます。
次のページを御覧ください。そうした各方面にわたるレガシーでございますが、その中でも特に橋本新会長の下、私どもは三つの取組に重点的に取り組んでございます。当然組織委員会ですので、安全・安心な大会運営に取り組むのはもちろんのことでございますが、2番として、ジェンダー平等、多様性と調和の推進、これに力を入れて、今、取り組んでいるところでございます。委員の皆様、御案内のように、森前会長のジェンダーに関する発言が大きな社会問題になる中で、スポーツ団体におけるジェンダー平等の取組が十分ではないのではないか、そういう大きな社会問題になる中で、橋本新会長が誕生いたしまして、理事に多くの女性メンバーに入っていただきながら、今ジェンダー平等の取組を進めてございます。これはジェンダー平等だけではなくて、当然、多様性と調和という観点で様々な取組を進めているところでございます。
次の12ページを御覧ください。従前から様々な多様性の調和という観点では、組織委員会が中心になりながら関係各方面と協力し、取組を進めてきたところでございまして、改めてこうしたものをしっかり発信していきたいと思ってございます。例えばきめ細かなサービスの部分で言いますと、大会史上初めて選手村の診療所の中に女性アスリート科を設置することを計画しておりまして、こうしたこともしっかり発信していきたいと思ってございます。
次のページを御覧ください。心を込めたおもてなし、また、競技の面での女性の活躍、参加の拡充というものも、東京大会の大きな取組の柱として据えてきてございます。これもまた改めて発信をしていきたいと思ってございますが、特にプラスのところ、新しい取組といたしまして、②アスリートへの性的ハラスメント撮影対策、これを東京大会では一つの大きな新しい取組として進めてまいります。これはスポーツ庁様とJOC様、JPC様などと連携をして取り組んでいくこととしてございますが、いわゆる性的なハラスメント撮影に関しては毅然とした態度で、私ども、会場の中では当然禁止をいたしますし、会場の中で注意をし、従っていただけない方に対しては有形力をしっかり行使しながら防いでいきたいと思ってございます。
時間の関係もございますので、2ページ飛んでいただいて、15ページを御覧いただきたいと思います。東京2020宣言という形で、こうした様々な分野での取組というもの、多様性と調和、ジェンダーの平等も含めた様々な取組というものを、私どものみならず、アスリート、競技団体、またパートナー企業、大会ボランティアなど、様々な関係者にお声かけをいただいて、それぞれの組織、個人で、「私の東京2020宣言」を発信していただきながら、これをレガシーとして残す取組を進めてございます。
次の16ページに一つのイメージを描かせていただいてございます。共通の部分、一つの理念のところもありますけれども、点線で囲っている部分はそれぞれの団体・個人がどう取り組んでいくのかという点について、内容をそれぞれの団体・個人にお考えいただきながら、ぜひこの宣言を進めてもらいたいと思っております。
次に、そのレガシーをつなげるという観点では、先ほども申しましたが、国内の関係者はもちろんですが、パリやロスの大会にもこうしたものをつなげていきたいと思ってございます。大会スタッフこそがレガシーになると書いたのは、我々は、国から、東京都から、各自治体から、パートナー企業の皆様から、たくさんの人間が集まっている時限の組織でございますので、それぞれのスタッフがそれぞれの組織に戻った後に、このレガシーというものを継承する主体となる、そういう人こそがレガシーということで取り組んでまいります。
最後に、東京モデルの構築と継承という形について、18ページを御覧いただきたいと思います。今申しましたように、私どもは様々な取組というものをしっかり後世に残していきたいと思ってございます。スポーツ振興基本計画に何を盛り込んでいくのかというのは、その時点において主要なプレーヤーになれない我々が何か言うのは大変口幅ったいことではございますけれども、ぜひこうした様々な大会のレガシーというものを後世につなげていくんだ、こういうことをこの基本計画の中にしっかり位置づけていただきたいと強くお願いをさせていただきます。
私の説明は以上でございます。
【大日方部会長】 伊藤さん、どうもありがとうございました。
それでは最後に、スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアムの和久様、よろしくお願いいたします。
【和久(SFTコンソーシアム)】 スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアム事務局を担当しておりますJSCの和久です。よろしくお願いいたします。
早速ですが、資料6の64ページを御覧ください。まず、スポーツ・フォー・トゥモローでは、東京2020大会の招致に際して、当時の安倍首相が、スポーツの価値とオリンピック・パラリンピックムーブメントを世界に広げることを宣言したプログラムです。東京大会までの間に100か国、1,000万人以上にスポーツの価値を届けることを公約したものです。こうしたプログラムを推進するために設置された官民連携コンソーシアムがスポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアムで、図にありますように14の運営委員会団体と一般会員から構成されております。
次に、主な活動領域です。スポーツを通じた国際交流・貢献、二つ目に国際スポーツ人材の育成、三つ目にアンチドーピング推進体制の強化支援、この三つを主要な活動の領域として取り組んでおります。
続いて65ページを御覧ください。これまでのコンソーシアムの実績に関して、会員数につきましては、本年3月時点で会員団体は458団体であり、スポーツ団体をはじめ民間企業、NGO、NPOなど多様な組織から構成されております。
次に、事業数についてですが、昨年3月時点で6,800件を超える国際貢献事業を展開してまいりました。こういった6,000件を超える国際協力事業の情報が一元的に集約されております。
続いて、裨益者につきましては、昨年3月末の段階で目標値の1,000万人に到達をしまして、現在1,200万人を超えております。
続いて66ページを御覧ください。こちらにはスポーツ・フォー・トゥモロー事業の具体的な事例を幾つか示しております。
上段の左側から、スポーツ・アカデミー形成支援事業という筑波大学にて展開されたもの、そのほかペルーやウガンダ、フィジーなどでの学校体育支援、さらにはラジオ体操の国際展開、下段に移りまして、パラリンピック参加国・地域の拡大支援、女性のスポーツの参加促進のためのワークショップ、さらには学校体育への柔道の導入、アンチドーピングの啓発活動など、広範囲にわたる活動を展開してきたところでございます。
続いて67ページを御覧ください。67ページは、スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアムの一般会員団体の活動実績をまとめたものです。
スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアムでは、一般会員の活動をSFTとして認定しております。昨年3月までの認定事業数は502件で、129万人の裨益者数に到達しております。全体の総裨益者数の10%程度が一般会員団体からもたらされたものとなっています。502件のうち複数の団体が連携した事業については379件となっておりまして、コンソーシアムの趣旨の一つである会員団体間の連携についても促進されたということが言えるかと思います。右側の写真等については、会員団体間の連携の具体的な事例を四つほど示しておりますので、御覧いただければと思います。
続いて68ページを御覧ください。このように、これまでのコンソーシアムの成果としましては、スポーツ国際開発・協力体制としてのコンソーシアムの設立、これは世界的にも非常にユニークなものでして、諸外国からも関心を集めております。したがいまして、スポーツ・フォー・トゥモローを通した東京オリパラの貴重なレガシーの一つと言うことができるかと思います。
また、このコンソーシアムは、多様な団体・組織から構成される大きなネットワークに成長いたしております。こういったネットワークの中で異なる組織間の連携・協働を実現したことも重要な成果の一つと言えるかと思います。
3点目については、世界200か国以上とのネットワークをスポーツ・フォー・トゥモローを通して構築しました。その中で日本のスポーツの良さを世界の多くの方々にお伝えすることができたことが、これまでの大きな成果と言えるかと思います。
続いて69ページを御覧ください。次は、スポーツ・フォー・トゥモローの今後についてですが、このモデルの一つとして考えられるのが、イギリスのグレートキャンペーンであると考えております。こちらのキャンペーンは2012年のロンドンオリパラを契機に開始されたプログラムで、イギリスのイメージを高めて、旅行者を増やし、イギリスの経済成長を目指すというキャンペーンです。オーストラリアやブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、日本、アメリカといった国々の主要都市で広告・宣伝が行われました。英国の国家ブランディング戦略の一つとして展開され、しばらくの間、継続されているものです。こういったものが今後のSFTのモデルとしても考えられます。
最後に70ページですけれども、今後の展望の課題として、まず、このスポーツ・フォー・トゥモローは、日本のスポーツの良さだけではなく、日本や日本人のよさを世界に伝える有力な枠組みとなっています。さらにこの枠組みは日本の国際的信頼の向上や国家ブランディングにも貢献するものでありますので、さらに長期にわたって継続されるべきものだと考えております。こうした上記のことを実現する上では、次のようなことに取り組む必要があります。
まず一つ目は、SFTを通したオリパラレガシーの具体像とその定着化に関しての研究をしっかりと行うこと。2番目として、SFTを通して構築した各国・組織とのネットワークの維持・強化をすること。3点目に、コンソーシアム構成団体会員のさらなる連携を促進させること。四つ目は、コンソーシアムが保有するスポーツのコンテンツのクオリティー、品質をさらに高めていくこと。最後に、このコンソーシアムが将来的に自走できるようにするための準備と支援を行うこと。
スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアムの事務局からは以上です。ありがとうございました。
【大日方部会長】 和久さん、どうもありがとうございました。
それでは、今御発表いただきました五つの団体に対しまして、御質問や御意見を委員の先生方からいただきたいと思います。まとめて質問をし、まとめて回答をいただくというような形で進めます。御発言のある方、挙手ボタンをお願いいたします。
それでは、結城さん、池田さん、渡邉さん、森岡さんの順番でいきましょうか。では、結城さん、お願いいたします。
【結城委員】 機会をありがとうございます。あと、皆様の御説明を非常に興味深く拝聴いたしました。
1点、特に組織委員会と東京都に、そしてもし可能でしたら、オリンピアンズ協会、そしてパラリンピアンズ協会にも伺いたいことがございます。
今、オリンピック・パラリンピックに対して、いろんな形で世論が懐疑的になっていて、非常に我々も心を痛めているところです。スポーツ庁のこれから、そして基本計画というものも、どのようにスポーツを人々の豊かな生き方につなげてもらって、少しでもいい社会、いろんな社会課題への対応も含めて糧にしていただけるかという部分というのが多分軸になると思います。ある意味、その一つの起爆剤として東京オリンピック・パラリンピックが社会に与える影響というものを見てまいりました。ただ、今現在、そういったレガシー、様々な皆様からどういうレガシーを期待する、その効果を未来につなげていきたいというお話をいただきましたが、そのレガシーの基本となるのは、やはり人々の関心であり、スポーツ、それからオリンピック・パラリンピック開催に向けての理解であると感じています。
その意味で、今現在、いろんなビジョンを掲げてきて、それなりに実績をかなり上げていらっしゃることはすばらしいと思います。ただ、コロナ禍になって、人々の感じ方が変わっていく中で、スポーツというのは何だろうと。私たちにとって、それから社会にとって、世界にとってスポーツというのは何だろう。健康維持でも文化の面でも、それから分断の社会を超えるという意味でも、何か新たな価値観というもの、新たな「なぜ開くのか」というもの、それが今なかなか見えにくくて、それによっていろんな問題、課題、懸念が生じている部分がかなりあるやに感じておりますので、それを何らかの格好で皆様のほうで検討なさったり、発信をしようとなさっているのかを問いたいと思います。今回特にレガシーということを考えた場合に、やはりその部分――これからスポーツがどのように見られていくのか、オリンピック・パラリンピックのレガシーというのをどういう基礎に立って構築していくのかというのが非常に大事になっていくかと思います。この辺りをぜひお願いいたします。
あと、ごめんなさい、もう1点、パラリンピアンズ協会の田口さんに伺います。学校体育のいわゆる評価の基準、これが健常者を軸につくられてきたというのは非常に面白い御指摘だと思います。いろんな形で、ゆるスポーツという事例もいただきましたが、その基準については、例えばどのような在り方、方向性が可能なのか、その辺り、もし御意見があれば、お教えください。
【大日方部会長】 ありがとうございます。では、渡邉委員、お願いいたします。
【渡邉委員】 日本財団ボランティアサポートセンターで理事長を務めております渡邉と申します。2020大会の大会ボランティア、都市ボランティアの育成・支援、あるいは機運醸成等のサポートをさせていただいております。
組織委員会と東京都の方に御質問します。
まず、組織委員会の方に関しては、9ページにレガシーガバナンスの全体的な方向性をお示しになっておりますが、今現在、具体的な議論がどこまで進んでいらっしゃるのか、そしてもし決定事項があればお教えいただきたいと思います。
また、東京都におかれましても、準備局というのが時限的な組織になるわけですけども、オリパラレガシーというものを考えたときに、都庁内での継承・発展について、今どういう議論が行われているのか、そこで決定事項があれば、あるいは実施されている事業があれば、お教えいただきたいと思います。以上です。
【大日方部会長】 どうもありがとうございます。では、池田さん、お願いいたします。
【池田委員】 山形県スポーツ協会の池田です。ありがとうございました。
東京都の組織委員会の伊藤さんと、パラリンピアンズ協会の田口さんに質問させてもらいたいと思います。
まず組織委員会の伊藤さんにですけれども、発表ありがとうございました。資料の12ページのところにジェンダー平等の詳細が書かれているかと思いますけれども、ジェンダー平等の目に見える取組の点で質問させてもらいます。女性アスリート科を設置すると記載されているのですけれども、ジェンダー平等とうたっているのに女性だけに限定している理由と背景、多様性と言っている中でキーワードとして女性だけを特筆している理由をお聞かせいただければと思います。
二つ目の田口さんへの質問です。メンターを支援しているとお話しいただいきました。メンターの支援に係る費用の捻出、支援が終了した後もメンターとの継続的なやり取りが発生しているということでしたが、そこに関する金銭的な部分はどのように捻出しているのか。また、世界的に見て、パラアスリートに対するメンターとして、どんな国というか、世界的な取組として成功を収めているような事例などがもしありましたら御紹介いただければと思います。以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。
それでは、あと藤田委員、そして大石委員の手が挙がっておりますので、その順番で行きたいと思います。では藤田委員、お願いいたします。
【藤田委員】 皆さん、発表どうもありがとうございました。
私は1点だけ、パラリンピアンズ協会の田口さんに質問です。ワンスポーツ・インクルーシブ宣言は非常にすばらしいと思いますが、一般の競技団体の方と一緒にやっていこうというときに、今そういう時代だからとか、多様性を重視しなければいけないからというだけでは、なかなかこちらを向いていただけないと思うんですね。田口さんがいろいろと活動される中で、障害のない人たちの競技団体がパラリンピアン、障害スポーツ関係の団体と一緒にやっていくことにどういうメリットがあるのか、どういういいことがあるのか、あれば教えていただきたいと思います。以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。では、大石委員、お願いいたします。
【大石委員】 ありがとうございます。全国で民間のスポーツクラブを運営している大石と申します。
すみません、不勉強でどなたにお聞きしていいのか分からないのですけれども、当社で障害者というと聴覚障害者の方が多いのですが、デフリンピックという別の組織があるとお聞きしました。その聴覚障害者に対する団体との連携で何か考えられていることがあれば教えていただきたいと思います。以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。
大変失礼しました。森岡委員の手が挙がっておりますね。よろしくお願いいたします。
【森岡委員】 組織委員会の伊藤局長に2点JSCの和久部長に1点質問があります。
まず、伊藤局長にお聞きします。1点目は、オリンピック・パラリンピックが1年延期となった中で、レガシー構築に向けて、延期がレガシー構築に向けてどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
2点目が9ページにあるレガシーガバナンスです。この言葉はあまり聞きなれないのですが、具体的に、どのようなことを意味するのか教えていただければと思います。
次にSFTに関して質問です。既に200か国、1,200万人以上の裨益者がいる中で、大変すばらしいプロジェクトだと認識しております。説明の最後に、自主的運営に向けた準備・支援、あるいは自走すべきだとおっしゃっております。全く同感なのですが、現時点でどのように自走すべきとお考えなのか教えていただければと思います。以上です。
【大日方部会長】 たくさんの御質問をいただきました。それでは順番にまとめてお答えをいただきたいと思います。発表の順番でいきましょうか。それでは、東京都の中澤さんから回答をお願いできますか。
【中澤(東京都)】 御質問ありがとうございます。私のほうは、結城委員と渡邉委員から御質問を受けたと認識しております。オリパラの開催理解に向けて、あるいはスポーツの意味あるいはレガシーについて、庁内でどういったことが議論され、決定されているのかということだと思います。
オリパラにつきましては、我々は今現在、安全・安心を確保しながら準備をしている段階でございます。オリパラは、確実に実施していきたいというふうに認識しております。それで、いろいろと意味はございますけれども、例えばこの資料の42ページにも詳細を書いてございますので後ほど御覧いただきたいのですが、東京都は2度目の夏季パラリンピックを開催する世界初の都市として、パラスポーツの魅力を多くの人々に伝え、あらゆる面でバリアを取り除き、多様性と包摂性にあふれるまちを築き上げていくというようなレガシーをかなえていくということや、1年延びたことをプラス1ということにして万全の準備を進めておりまして、大会に向けてこれまで進めてきたハード・ソフト両面にわたる多面的な取組に加えて、感染症対策などの危機管理の取組も都市のレガシーとして発展させて、最終的には都民生活の向上をもたらしていくことを期待してございます。
オリパラ全体に関しましては、オリパラ準備局だけではなくて、右側の安全・安心、まちづくり、参加・協働、文化・観光といった九つのテーマに全庁を挙げてただいま取り組んでおり、それらは全体的に都民の生活に向上をもたらしていくということで、今現在いろいろと庁内で検討しているところでございます。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございました。では、オリンピアンズ協会、横山さん、レガシーについて結城委員から御質問があったと思いますが、何かありますでしょうか。
【横山(日本オリンピアンズ協会)】 レガシーというよりも、むしろ御質問はスポーツとは何だ、ということのほうが強いのかな、というように思います。結局スポーツが今、スポーツそのものよりも、スポーツを取り巻く方々の都合によって色々なことが行われているというのがスポーツ界の現状ではないかと思います。。
今、色々な話の中に出てくるように、スポーツをこういうふうにやったら支えられるとか、こうやったらいい大会ができるよというのは、みんなスポーツそのものではなく、周りの考え方なんですね。スポーツというのは何かというと、やることがスポーツです。見るのはスポーツでも何でもないんです。ただ見ている、テレビを見ているのと一緒ですよね。ですから、スポーツというのは、やることが一番重要だということです。
それに基づいて、じゃあスポーツとは何だと、いったときに原点はどこなのか、様々なことを聞きますが、本当はどこなのか分かりません。いろんな人間の理想として掲げられているフェアプレーというものが理想であるということだったら、フェアプレーをやる、それがスポーツなんだ、という方向へ進んでいかないといけないんじゃないか、と私個人は思っています。
そういう面で、これからOAJの中でもそういう議論をより深めていき、オリンピアンが何をやるのかといったときに、オリンピアンのレガシーというのは古くなれば古くなるほど、フェアプレーというものに対する気持ちが強い人が非常に多いです。そういう面で、フェアということ、それからモラルといったらいいのか、そういうことを高めるためにスポーツをやるという方向へ進めていかない限り、スポーツのこれからの発展はないと思っています。
答えになっているかどうか分かりませんが、スポーツというのはそういう方向へ行くべきではないかと思っていますし、OAJとしてそのあたりも議論していければと考えております。
【大日方部会長】 ありがとうございます。それでは、パラリンピアンズ協会、田口さん、お願いいたします。
【田口(日本パラリンピアンズ協会)】 ありがとうございます。まず、結城様からとても難しい質問をありがとうございます。スポーツって何だろう、このコロナ禍でオリパラをなぜ開くのだろうというのは、私たちも私個人としても日々変わっています。こんな状況でいいのかなと思ってしまったり、でも、やっぱりやることにとか、私もパラリンピアンですので、やったことによっての結果を自分たちが見たからこそ思っていることはたくさんあるんですね。
そういう意味では、まずコロナ禍だからというのか分からないんですけれども、例えば東京2020大会が決まって、リオ大会のときにメディアの取上げ方が以前にも増して大分増えたんですね。そのときに私も同僚に、見てどうだったかと聞いたときに、今までこんなふうに日本でやっているのを見たことがなかったと言われたんですね。日本ではまちなかで障害者に会うことがほとんどなく、リオパラリンピックを見て、こんなにいろんな障害の種類があることが分かった、また、障害があるのに普通にスポーツができている、またパラ選手がそれぞれ工夫をして活躍を見せてくれて、自分たち健常者にとってもそのすごさは驚きになったし、また障害者にとっては励みになったと思うと言っていたんですね。
そして、こんなに障害者がいっぱいパラリンピックにいるのに、日本ではほとんどまちなかで見かけることもない、絶対世の中にはもっとたくさんいるはずなのにどこにいるんだろうと。なので、自分たちがもっと障害者が外に出れる環境をつくっていかなければいけないと思ったと言われたんですね。テレビで見るだけでそれだけのものを与えるということは、本来なら観客の方に現場に来てもらえたら、もっと息遣いとかを感じてもらえるのになと私は思いました。
すみません、これは答えになっているか分からないんですけど、そう思っていますので、パラリンピックにはもう一度考えたりいろんなことをする力があるのではないかと思いました。
あと、障害者の体育の評価基準という部分に関しましては、とても難しいです。私自身も車椅子に乗っておりますが、同じように車椅子に乗っていても全然違うんですね。部会長さんをされている大日方さんもそうなんですけど、私と大日方さんでも持っている力は全然違うと。でも、そういう中で、例えば「ゆるスポーツ」とか、あと先ほど申し上げた室伏長官が考案された「New Mo」とかは、池田めぐみさんも一緒にしていただいたんですけど、例えば皆さんの中に私が入りまして、私も公平に戦えるルールは何だろうと、それを考えるんですね。そいうふうに考えることによって共生社会とかも生まれると思いますし、反対に私のほうが有利になってしまうときもあるんですね。そしたら今度私が、「いや、私には有利だからもうちょっとこうやってみてはどうですか」という、体育の授業は私たちオリンピアン・パラリンピアンと違って、まずはスポーツを楽しむことであって、そこにはみんなで考えていく力というのが必要だと思います。
カナダで小学校の先生をしている知人が言ったのが、カナダでは障害のある子供が自分のところにいたら、体育の授業のときに、例えば「田口さんが車椅子に乗っています。今日はバレーボールをします。じゃ、みんなで公平にできるルールを決めましょう」と言って子供たちに議論させるそうなんですね。そういう仕組みがあれば、もっとみんなで楽しめるし、考える力もつくのではないかと思います。
結城さん、これでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
池田さん、ありがとうございます。メンターに係る費用ということですけど、実はこのメンターは、パラリンピアンズ協会の理事それぞれがみんなで担っています。ですので、無料といったら変ですけど、自分らで特に何も。ただ、それが本当に正しいかは分からないんですね。不勉強で申し訳ないんですけれども、世界的に見ていて、パラリンピアンが私たちのような仕組みかというのが、すみませんが私は分からないですが、ただやっぱりそういうシステムをつくることは大切だと思うんですね。協会とかがそういう制度をつくる、それはパラリンピックに出た選手なのか、もしくは心理的な人をつけるのかというのも含めてこれから日本もパラリンピックにどんどん強くなっていくべきだと思いますので、そういう仕組みづくりも一緒に考えさせてもらえればなと思います。
よろしいですか。ありがとうございます。
藤田さん、ありがとうございます。障害のない団体の人たちが障害のある団体というか、パラの人たちと連携してどういうメリットがあるのかという部分なんですけれども、障害のない団体にはいろんな団体があると思うんですね。大中小とか、あとプロというかトップを目指しているとか、いろいろあると思うんですけれども、私が感じることは、障害のない団体の人たちも、これから高齢者の人たちが増えてくると思うんですね。そういうときに、その人らをどうするか考えるのではなくて、今からそういうパラの人とか障害のある団体と組むことによって、施設をバリアフリーに考えるとかいうこともできることによって、多分障害のない団体の人たちの会員数も増えてくると思いますし、まずはもちろんスポーツの団体ですので技術とか競技性もありますけれども、まず人の心をつくっていけるのではないかと思いますので、ぜひにと思います。
ちゃんとした答えになっていないかもしれないですけど、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
【大日方部会長】 ありがとうございます。聴覚障害の方との連携というお話もありましたけれども、パラリンピアンズ協会は何かありますか。
【田口(日本パラリンピアンズ協会)】 すみません、聴覚障害の団体の方と直接、パラリンピアンズ協会の連携というのは行っておりません。ただ、JPSAとかJPCの会議とかで、聴覚障害方々の意見もお聴きしているという形になりまして、今具体的に連携して何かイベントをということは行っていないです。
でも、これからやっぱり一緒になって、先ほど申し上げたワンチームとして行っていければというふうには思っています。
【大日方部会長】 ありがとうございます。では、組織委員会、伊藤さん、お願いいたします。
【伊藤(オリパラ競技大会組織委員会)】 組織委員会でございます。四つほど御質問、御意見をいただきました。
まず、結城委員からの御指摘でございます。ぜひ私も、結城委員からこの点を御指導いただきたいと思っております。今、コロナ禍で大変厳しい状況の中で、私どもの発信が上手に国民の皆様に届いていない、響いていないということは痛感をしているところでございます。もちろん、御案内のとおり、コロナ禍の中でつながりが様々絶たれる中、各地で分断が起きている。そういう中で一つの同じ場面、同じ時間を共有し、そして感動を分かち合うオリンピック・パラリンピックというものは、コロナ禍においても大変今まで以上に大きな意義を持つものだと感じてございます。他方、その言葉自身を組織委員会が発信しても、非常にむなしく空虚に響いてしまっているところもあるかと思ってございます。
やはり、私ども事務方が発信をするよりも、多くのアスリートの皆さんがオリンピック・パラリンピックの意義についてどう考えているのか、そして東京大会の意義についてどう率直に感じているのかということを、今私どものアスリート委員会とJOC、JPCのそれぞれのアスリート委員会、3団体が一緒に合同で議論をして、その声を集めていただいているところでございます。
もちろん、現役のアスリートが今その発言をしていくとバッシングをされてしまうという非常に嫌な状況になってございますので、その点については細心の注意を払わなければいけないと思っておりますが、やはりスポーツの価値、そしてオリンピック・パラリンピックの価値、意義において、これに命をかけ闘っているアスリートの皆様の声は大変重いと思ってございますので、ぜひそうした声というものも御協力を集めながら、我々としても改めてこの東京大会を行う意義というものを発信してまいりたいと思ってございます。
次に、レガシーに関しまして、渡邉委員と森岡委員から御質問をいただきました。まず、渡邉委員の御質問でございますが、実は今日御説明をした資料9ページで取組をつくっていかなければいけないと、そして10ページで各主体の役割というところまでは書いたんですけれども、まだ現時点で実はここまででございます。先週、IOCとの調整委員会であるCOCOMが開かれる中で、さらにもう一段、このガバナンス体制というものをしっかり構築するように、これから大会本番を迎えるわけですけれども、大会が終わるまでの間にはそれぞれの役割というもの、そしてどの分野はどこが責任主体となって、中心となって取り組んでいくのかを明確化しろという宿題をいただいてございます。
10ページにございますように、我々JOCも東京都も政府も、それぞれがまさに主体としてお取組をいただかなければいけないんですけれども、どこか一つの団体がこれを取りまとめていくというのも、それぞれの役割がございますのでなかなか難しい分野かなと思ってございますが、その結果、「ポテンヒット」が出たり、責任体制が曖昧になるということは適切ではないと思ってございますので、これから、残された時間は短いですが、JOCや東京都、政府、スポーツ庁の皆様ともよく話を進めていきたいと思ってございます。
また、森岡委員のレガシーガバナンス、これは確かに新しい言葉でございまして、オリンピックの中でもレガシーというものに力を入れるようになったのは、実はこの二、三大会ぐらいでございます。レガシーガバナンスというものを明確に示せと言われているのは、ある種、東京大会からではないかと思っております。これは、やはり何となくのレガシーは今までも残っていたんですけれども、組織委員会が解散してしまうと、どこを窓口にどういう問合せをすれば、ばらばらの取組を統一できるのかということがIOCサイドでも大きな問題になっていたと聞いてございまして、我々組織委員会が存在する間にしっかりとこの先10年、20年先にレガシーに関してどこが窓口になり、どこが連携をしながら取り組んでいくのかというのを、計画をしっかり出すようにということを言われてございます。何分新しい取組なものですから、私ども自身も手探りの中で実施してございます。JOC、東京都ともに大変積極的ではあるんですけれども、やはり全ての責任主体となると、自分たちの役割を少し超えてしまっている部分もあるということで、今そこのところを丁寧に話を進めさせていただいているところでございます。
最後に、池田委員から「女性アスリート科」について、なぜ女性だけなのかという御質問をいただきました。御指摘のとおりだと思っておりますが、同時にこれまでの選手村は、徐々に女性アスリートが増えてきたといっても、やはり割合として女性がずっと少数派であったという長い歴史がございます。そうした中で、今この東京大会は49%まで女性アスリートが増えるわけでございますが、全体として、これは日本社会もそうなのかもしれませんが、男性が多かった中でいろいろ構築をされてきたシステムが随所に残ってございます。そうしますと、やはり女性の目線、女性の視点から見ると、今までできているものがあえて差別している、区別をしているわけでは必ずしもないのかもしれませんが、どうしても使い勝手が悪いとか、いろいろ相談がしにくい面があるんだという声も寄せられている中で、女性アスリート科というものをあえて設けていこうということでございます。これはまさにアファーマティブ・アクションの中で言うと議論がある部分なのかもしれませんが、これまでの長い歴史を振り返ると、私どもは一歩ここの部分を踏み込んで、いずれは、男女を特別に、男性向け、女性向けみたいな話がなくとも、一人一人の状況に応じて相談しやすい環境をつくることが使命だと思ってございますが、まずその第一歩としてこのような取組を進めさせていただいているところでございます。
以上でございます。
【大日方部会長】 ありがとうございます。では、スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアム、和久さん、お願いいたします。
【和久(SFTコンソーシアム)】 御質問ありがとうございました。まず、自立的運営についての議論はまだ運営委員会でも開始されておりませんので、個人的な見解ということになります。今後、グレートキャンペーンのようにインバウンドにつながっていく道筋なり見通しが立ってきたときには、民間企業からのスポンサーといったことも考えられるかと思います。さらに、二つ目としては、昨今SDGsへの投資が増えている状況を考えますと、SDGsとの関係の中で寄附金を集めていくことも方策の一つかと思います。
また、コンソーシアムのそもそもの趣旨からすると、メンバーシップフィーであったり、人材資源の相互活用といったことについても、今後、自走のための取組として考えていかなければならないと感じているところです。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございました。
それでは御回答いただきましたので、こちらでIグループの終了いたします。皆様、大変お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。ヒアリングに御協力いただいた団体の皆様、退室をお願いいたします。
(グループI、J入替え)
【大日方部会長】 本日も大分時間が超過しておりますけれども。それではJグループの団体に入室いただいたようです。
それでは、Jグループ、日本中学校体育連盟、日本学校体育研究連合会、日本体育・スポーツ・健康学会、健康・体力づくり事業財団となります。事前に御案内をしておりますとおり、8分以内で団体の皆様、説明をお願いいたします。時間が押しておりますので、時間厳守でお願いいたします。
ではまず、日本中学校体育連盟様、よろしくお願いいたします。
【新宮領(日本中学校体育連盟)】 皆さん、こんにちは。日本中学校体育連盟事務局長の新宮領でございます。本連盟につきましては、御存じのように、運動部活動の全国中学校体育大会を運営する団体でございます。
まず初めに、お手元に資料があるかと思いますけれども、我々の取り組んでまいった状況・成果ということで御報告いたします。
中学校におけるスポーツ体育活動の充実・発展及び活性化等に努めてまいりました。特に、体力の維持向上に果たしてきた運動部活動の役割は大きかったと思っております。また、競技力向上に果たしてきた役割、あるいは子供たちの非認知能力を高める上での役割、健全育成に果たしてきた役割等についても成果として現れていると考えております。
今、スポーツ庁のほうから提案されておりました部活動指導員につきましては、初年度、平成30年度は全国で約1,000名の部活動指導員がおりましたが、令和元年度におきましてはその3.56倍ということで3,600名ほど、そして令和2年度におきましては5,858名ということで、各都道府県中体連等を含め、行政と一緒になって部活動指導員については増加の傾向にございます。
今後についても増やしていこうということで進んでいると思いますけれども、ただしやはり課題も多くて、地方に行けば行くほどなかなかその数が増える方向にないという情報も聞いているところでございます。
外の東海大学体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科に、全国大会において調査をしていただきました。2018年度全国中学校体育大会中国ブロックでの大会での調査結果として、夏季大会は16競技ございますけれども、そのうちの8競技について調査をかけていただき、約700名の競技役員、これは一般の先生方となりますけれども、大会を評価していただきました。
その結果、「本大会は日本のスポーツ振興に貢献していると思うか」とお聞きしたところ、96.3%の競技役員の方が「そう思う」と答えております。また、「本大会は地域のスポーツ振興に貢献していると思うか」とお聞きしたところ、91%の競技役員の方がそう答えていらしたという調査結果が出ております。そうした結果から見ても、全国大会の意義というのは大きいのではないかと考えている次第です。
二つ目に参ります。現状、団体において抱えている課題でございますが、やはり一番大きいのは少子化、そして気候変動でございます。3点目に働き方改革ということがございますが、少子化、気候変動につきましては、(4)にございます全国中学校体育大会の在り方にも大きな影響があり、課題も多くなっております。
例えば、今現段階で本連盟におきましては、今年度より全国大会組織の在り方改革プロジェクトということで組織を組みまして、その段階で今後、少子化が進んで果たしてこれまでどおりの競技種目をやっていけるのかどうかの検討に入る予定です。また、在り方については、開催日数を今現在、3.5日という会期の中で全国大会を行っておりますけれども、それも短くする必要があるのではないか、あるいは部活動が実際にその学校にないにもかかわらず、いわゆる地域クラブでやっていることを大前提とした全国大会というものがあっていいのか、教育活動の一環としての部活を大前提とするといかがなものかという改革が、少子化において行われているところでございます。
そしてまた、気候変動もかなり大きなウエイトを占めておりまして、今、サッカー協会などからは、夏の大会でサッカーはどうなのか、冷涼地でやったらどうか、あるいは夏の大会ではなく冬に持ってきてはどうかということも示唆されております。
さらには、もちろん少子化にも含まれますけれども、総合型地域スポーツクラブとの連携についても、今後しっかりと連携をしていく必要があるであろうと。これはもちろん働き方改革、部活動改革の一環として必要なものであると考えております。様々大きな課題を抱えているといます。
三つ目になります。第3期に期待することを2点挙げさせていただきました。第2期のこれまでの取組の結果として御指摘されている内容が、運動部活動改革と地域における青少年のスポーツ環境の整備が急務であるとございました。したがって、私どもが考えているのは、総合型地域スポーツクラブ、現状全国に3,500と聞いておりますけれども、ほぼ中高生がその中に入っておらず、これに中高生を含めるという話になりますと、相当な時間と相当な労力がかかるのではないかと捉えております。したがって、郡市町村の体育・スポーツ協会と自治体が一致して運動部活動を支援していくような仕組みづくりに強く期待いたしております。
二つ目に、引き続き、ハラスメントや暴力、体罰の防止の徹底を図ります。そのことから、持続可能な開発目標SDGsの視点から、スポーツを通じてどんなことに取り組むことが可能なのかということをできれば提言していただくと幸いでございます。私どもが考えている中には、1から17までの中で七つか八つの項目は何かしらで活用し、かつ、それを通してやっていけると考えておりますが、ぜひ提言していただけると幸いでございます。
以上、日本中体連でございました。
【大日方部会長】 ありがとうございます。では、日本学校体育研究連合会様、よろしくお願いいたします。
【細越(日本学校体育研究連合会)】 では、よろしくお願いいたします。ただいまより、公益財団法人日本学校体育研究連合会、通称学体連の紹介をさせていただきます。私は理事長を仰せつかっております細越淳二と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
資料8、本日の資料でいきますと72ページからとなります。よろしくお願いいたします。
まず、学体連の紹介でございます。学体連は、昭和22年、日本体育指導者連盟として発足し、昭和25年に財団法人化をいたしました。昭和37年、財団法人日本学校体育研究連合会へと名称を改め、平成25年に現在の公益財団法人化をいたしまして、現在に至っております。資料73ページには、本財団の組織図それから監督省庁との関連の図が載せてございますので、お目通しいただければと存じます。
続きまして、74ページです。本財団の主要な事業4点について御紹介申し上げます。
まず第1に、全国学校体育研究大会の開催でございます。各県の持ち回りで2日間にわたり開催をし、初日は基調提案、教科調査官による解説、シンポジウム等をその内容とする全体会を実施しております。2日目は、各園校における分科会です。研究事業の公開と研究協議等を行っております。全国大会には毎回約1,500名の皆さんが御参加くださっております。
第2は、文部科学大臣賞を含む学校表彰、個人表彰からなる表彰事業、第3は各園・校種における講習会事業となります。講習会事業では、学習指導要領の趣旨を周知するとともに、子供たちの健康実態の改善を目的としたJASPE足育推進事業も進めております。そして第4は、会報の発行、体育の研究資料、メールマガジンの配信などを主とする広報事業となります。各都道府県学体連の取組の発信もここで随時積極的に行っております。
なお、本会の運営は、各都道府県学体連からの分担金と、今回の趣旨に賛同する企業からの賛助金で賄われております。
75ページに進みます。次に、体育科・保健体育科の現状と課題についてであります。小学校では昨年度から、中学校では今年度より新学習指導要領が全面実施となっております。全国の学校の現状を見ますと、新要領の趣旨を踏まえ、体育科・保健体育科において育成を目指す三つの資質能力の具体化と、主体的・対話的で深い学びを通した授業づくりが積極的に進められているところではございますが、まだ全面実施になったばかりの時期でありますので、引き続きより良質な授業の実現に向けて、丁寧な情報発信が求められると考えております。
このほか、中学校、高等学校における男女共習授業の普及、新型コロナウイルス感染症に配慮した授業づくり、体育のデジタル化を促進させるための具体的な指導法や、それに関する情報発信、そして運動中の重大事故を未然に防ぐための情報の共有と研修体制の一層の充実等、ここに挙げました事項等を今後の課題として捉えております。
76ページに参ります。また、第2期スポーツ基本計画では、自主的にスポーツをする時間を持ちたいと思う中学生の割合を80%に、それからスポーツが嫌い、やや嫌いであると回答する中学生の割合を8%に半減させることが施策目標に掲げられておりましたが、令和元年度時点では、前者が65.2%、後者が20.9%であり、いまだ達成されているとは言えない現状にございます。このことから、授業改善はもとより、生徒の運動の習慣化に向けた一層の取組が喫緊の課題であるということが言えます。
また、このほど学習評価の考え方が改まったことを受けまして、児童・生徒の学習状況の見取りに関する具体的な事例や情報を、より丁寧に収集・発信していくことも併せて現状の課題として捉えております。
77ページに参ります。次に、第3期スポーツ基本計画への期待と要望です。令和元年度の全国体力運動・能力、運動習慣等調査では、小中学校ともに体力合計点が低下し、その要因として生活環境の変化や肥満傾向の児童・生徒の増加が指摘されておりました。この状況改善に向けては運動の習慣化が必須であり、これについては幼児期からの対応も必要となります。図2からも分かるとおり、幼児期の外遊びは非常に重要です。幼児期から運動を行う習慣を身に付けさせていくためには、楽しく運動できる経験と、そのための環境が必要だろうと考えます。幼児・児童・生徒の運動の習慣化を促進させるための、より良質な環境整備、指導者養成、関係機関との連携等を進めることを求めてまいりたいと思っております。
また、次の78ページにもありますが、現在小学校におきましては、体育専科教員の配置の比率は高学年が高くなっております。ただ、運動習慣や動きの習得状況の低下の改善に向けては、幼児期や小学校第4学年までの体育授業の質保障に向けた取組を進めることが効果的だと考えます。専科教員を低学年に手厚く配置する措置はその一つになります。しかし、現状ではこのための教員養成システムは存在しておりません。今後は、幼児や小学校中学年までの体育専科教員の養成システムの検討・構築もぜひ求めてまいりたいと考えます。
こうやって専科教員の配置が充実されると、校内での体育授業の質改善に向けた共同体制の構築を促進させることにもつながっていくと思います。ただ、この共同体制の構築の肝になるのが教科書だと考えます。小学校体育においては、教科書が存在いたしませんけれども、小学校体育の教科書を位置づけることで専科教員と学級担任、児童と教師、さらには保護者の皆さんとの連携も深めていく、かなり強力なツールとなることを期待しているところでございます。
最後の79ページです。最後は、運動部活動に関する要望について述べさせていただきます。運動部活動は、生徒の自発的な参加により行われ、学校教育の一環として学習指導要領に位置づけられた活動でございます。教師の負担軽減の観点から、令和5年度以降、休日の運動部活動の段階的な地域移行を図る地域運動部活動が始まろうとしております。御承知のように、我が国の運動部活動は、中高の保健体育科教員がその主要な担い手として活動を牽引してまいりました。このたびの改革に際しては、休日の部活動を望まない教師はそれに従事しないこととされていると聞いております。しかし、特に地方の地域の指導者不足の現状を鑑みますと、授業を本分とする保健体育科教員が地域運動部活動の指導に当てられ、負担が一層増えることも懸念されます。ぜひとも授業に支障を来すことがないよう御配慮いただければ幸いです。
二つ目に、これからの改革に伴いまして、地域運動部活動が受益者負担の原則の下、進むと伺っておりますが、その場合には、部活動に参加することに伴う財政的負担が今以上増えることなく、また特に経済的な困窮状態にある生徒への公的援助等を可能であればぜひお願いいたしたいと考えます。
終わりになりますが、運動部活動の改革が生徒の運動機会の減少となることなく、より一層生徒のスポーツ権を保障する改革となるようお願い申し上げまして、我々のプレゼンを終わらせていただきます。ありがとうございました。
【大日方部会長】 ありがとうございました。それでは、日本体育・スポーツ・健康学会様、よろしくお願いいたします。
【深代(日本体育・スポーツ・健康学会)】 体育・スポーツ・健康学会会長の深代です。
本学会は、70年の歴史があり、会員数約6,000名の学術団体です。研究分野は、人文社会から自然科学までほとんどの研究分野を網羅しており、それが特徴になっていますが、その一方で研究領域ごとの縦割りが強いという傾向がありました。この課題を解決するために学会が取り組んできたこと、その成果とスポーツ基本計画に期待することを述べたいと思います。
それでは、配付資料の81ページを御覧ください。
①ですが、本学会で第2期への政策提言のための特別委員会を2008年に設置しました。目標としたのは、エビデンスに基づいた政策立案が挙げられます。特別委員会では、1年半にわたりスポーツ振興の在り方に関する広範な議論を行い、その成果を①提言2010にまとめました。
次に、②学会改革をテーマとした本部企画シンポジウムの一覧を御覧ください。毎年学会大会を開いておりますが、この学会大会で改革をテーマにした七つのシンポジウムを開催し、専門領域を超えて広く会員との議論を交わしてきました。
次に、82ページの2)学会の名称及び定款の変更を御覧ください。これまでの提言2010あるいはシンポジウムの成果を踏まえて、2019年に学会名称を日本体育学会から、日本体育・スポーツ・健康学会へと変更いたしました。定款の目的に、個人の幸せと公平かつ公正な共生社会の実現に寄与することを明示いたしました。
加えて、資料の新旧対照表の趣意書にありますが、社会のための学術へとシフトすることを学会としては会員に訴えてきました。
次に、配付資料の3)組織・事業改革特別委員会の設置を御覧ください。学会改革のために、二つの委員会を設置いたしました。一つは組織・事業改革特別委員会です。3)の左側ですが、専門領域別シンポジウムや研究発表という縦割りを解消して、右側にある社会的な課題に応える応用研究部会別へと改正をいたしました。これからは、専門領域を超えた研究成果を政策エビデンスとして提示することを目指しています。
次に、83ページを御覧ください。本学会の中に、政策検討・諮問委員会を設置して、これについて検討を行ってきました。これについては、この委員会の委員長であります日大の水上先生から説明をお願いします。
【水上(日本体育・スポーツ・健康学会)】 ここからは、私、水上のほうから説明を申し上げたいと思います。
82ページ、4)政策検討・諮問委員会の設置のところを御覧ください。上段のところの、この委員会の目的、任務、業務内容は、規程の第3条に示してあるとおり、学会の研究成果を体育・スポーツ政策や実践現場に還元することを目的としています。そして、この委員会の成果の一つが82ページの図となります。学会員の膨大な研究成果をどのようにすればEBPMへつなげることができるのか、さらには身体活動基準や運動指針の策定、政策の検証評価までを想定し、学会としてエビデンスをどのように収集、蓄積するのかを図示したものとなります。図の左側に示しているとおり、エビデンスを「つくる」「つたえる」「つかう」という三つのフェーズごとに具体的方策を提言しています。今後、この仕組みの限界と可能性を検証しながら、広く社会へ還元できるエビデンスの提示を目指す考えです。
それでは、83ページを御覧ください。ここからは第3期計画において期待することを述べさせていただきます。
まず、①の評価できる点についてです。黒丸の1から3となります。一つ目は、第2期計画において、政策目標、施策目標、具体的施策の別に目標から施策の体系化を図ったことです。また、二つ目として数値化された成果指標が第1期の8から第2期の20に増えたことで、政策の検証、評価の基準が明確になったことです。そして最後の三つ目は、スポーツ庁が関係省庁の中核となって取り組む施策に、障害者スポーツやスポーツの産業化の促進を加えたことでございます。
次に、②の課題点についてです。黒丸の4から8を御覧いただきたいと思います。第2期計画の検証・評価の結果を広く国民に分かりやすく伝えて、より多くの目で検証ができるようにすること、これが一つ目です。そして二つ目は、施策数の整理と施策の優先順位の必要性です。第2期計画では、139に及ぶ具体的施策が提示されていました。このため、地方のスポーツ行政では、これらの施策から選ぶという実態があり、国が策定した基本計画の切り貼りになっていたと考えられます。次に、7です。ダイバーシティーや多様性の視点に女性と障害者の記述だけでは不十分であるということです。人種やLGBTなど、その多様性の視点は今後より広く捉える必要があると思います。そして、最後の8は実施率データの扱いについてですが、成人のスポーツ実施率のうち、平成28年度の結果は評価の対象外とすべきではないかと考えます。平成29年度と異なる調査項目が採用されているため、厳密には平成28年度から29年度への経年変化に言及することは避けたほうがよいと考えております。
そして最後に、2)の今後の期待・提案についてです。黒丸の9から12を御覧ください。一つ目の9は、地方のスポーツ行政の主体性の確保についてです。既に、地方のスポーツ行政の政策立案や検証・評価に深く関わっている学会員が多数存在しております。主体性の確保のためにも、今後一層、本学会員を地方のスポーツ行政に活用していただくことを提案いたします。次に、10の第3期の成果指標に質的指標を加えることを提案いたします。それらのエビデンスとして、先ほど申し上げました応用研究部会の下で議論される研究成果の活用を提案いたします。次に、11のポスト・オリンピックのスポーツプロモーションの在り方についてです。特にイベント中心の施策ではなく、Sport in Lifeや共生社会を実現する、スポーツプロモーションの方策を議論できることを期待いたします。
配付資料、84ページを開いてください。最後の12となります。これまで、競技力向上のための支出に公的資金の配分比率を使ってまいりましたけれども、Sport in Lifeへ移行することを提案いたします。また、Sport in Lifeのための環境整備や、モデル施策を、関係省庁や関連施策とより一層融合させながら推進することを提案いたします。
前半部分でも会長が申し上げたとおり、本学会ではエビデンスに基づく政策立案のための学会改革を進めてまいりました。そして、既に学会員の研究成果は確実にEBPMの開発に向けて蓄積されつつあると確信しております。
これをもちまして、日本体育・スポーツ・健康学会からの報告を終了いたします。ありがとうございました。
【大日方部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、次に、健康・体力づくり事業財団様、よろしくお願いいたします。
【増田(健康・体力づくり事業財団)】 健康・体力づくり事業財団の増田でございます。
まず、当財団の一番大事な仕事というのは、国が言っております健康寿命を延伸することでございまして、主に運動、身体活動を通して国民の健康寿命を延ばそうということで、いろいろな普及・啓発を行っている公益財団法人でございます。
事業としては、まず、正確な健康情報やイベントによる啓発、それから、健康・体力づくりに関する調査・研究、それから、健康に関する運動指導者の養成並びに養成した指導者の資質向上の3本柱で仕事を進めているところであります。
次の87ページを御覧ください。現在、当財団が養成をしております健康運動指導士と健康運動実践指導者の数がそこに書いてございます。昭和63年度より養成をしているところでございます。健康運動指導士は、そこにございますように、運動に関する知識だけではなくて、生活習慣病やメンタルヘルス等の医療に近い知識を持ってもらって、ハイリスク者でも安全・安心に運動できるよう指導する者でございます。また、健康運動実践指導者は、集団に対して楽しく効果的に運動指導のできる指導者でございます。現在では、フィットネスクラブ等運動施設以外に、病院や老健施設、介護施設等でも活躍をされております。
1ページおめくりください。さて、当財団からは二つの要望をさせていただこうと思っております。まず一つは、スポーツ・運動・身体活動に関する専門職の登用を制度として整備すること、もう一つは、専門の運動指導者を地域で活用することにより、スポーツや運動、医療、介護との連携を推進することでございます。
ページをおめくりください。具体的には、地域のスポーツの拠点として活動されております総合型地域スポーツクラブと、ハイリスクの者でも安心して楽しくスポーツ・運動を指導できる指導者のマッチングを提案いたします。
また、2点目には、地域では医療から介護まで地域の輪の中で解決していこうとする地域包括ケアシステムが、現在厚労省の主導で進められておりますが、当財団の調査によりますと、高齢者の身近にあることから、総合型地域スポーツクラブが自治体の介護予防事業を受託する動きが散見されております。また、自治体の保健衛生分野には保健師という専門職がおりますが、スポーツの分野にも同様の専門職を配置することで、長期にわたるビジョンに基づき効果的に施策を進めていくことができると考えております。
また、特に乳幼児期における運動の体験というのは、生涯にわたる生活習慣を形成する上で大変重要だと言われております。彼らに接する指導者に、スポーツ・運動に関する専門知識を受けていただくことを推奨します。
ページをおめくりください。このスライドは、高齢化に伴うハイリスク者の増加を示しております。心臓リハビリ、COPD、糖尿病の透析、内部障害者はこの20年で2倍に増加をしております。また、薬を服用されている方々も数多くいらっしゃいます。このような方々に、安全・安心に運動していただくには、運動指導者の方々にやはり医学的な基礎知識が必要であると考えております。
ページをおめくりください。皆さん御存じのように、我が国は超高齢社会を迎えております。高齢化率は、65歳以上の方が28.4%で、約3,600万人いらっしゃいます。そのうちの約650万人の方が要支援、要介護の認定を受けております。要介護の原因を見てみますと、高齢による衰弱、骨折、転倒など身体機能によるものが4分の1を占めておりまして、これらを予防するには運動が大いに貢献できると考えております。
次をおめくりください。当財団では、高齢者の方々に楽しく簡単にできる運動を身につけていただこうということで、前鹿屋体育大学学長の福永先生が開発をされました貯筋運動というものを推奨しております。立つ、歩くといった動作を行うのに必要な筋量、大体全部の筋量は年齢とともに低下していきます。特に50歳を過ぎると、1年で0.5から1%萎縮していくと言われております。しかし、運動習慣者の方々は、年齢に伴い低下はしますが、80歳でもまだ寝たきりラインよりも全員が上にいるということであります。お金をためる貯金と同じく筋肉をためるということで、福永先生は貯筋運動と言われております。
自重による筋力トレーニングでありまして、簡単に何も道具がなくてもできるということでありまして、当財団ではこの貯筋運動ステーションを全国に展開していくということで、貯筋運動プロジェクトを推進しているところでございます。平成22年度よりこのプロジェクトを開始いたしまして、現在40都道府県、約135クラブでモデル事業を実施しているところでございます。
ページをおめくりください。最終的には、今後、総合型地域スポーツクラブは、地域包括ケアシステムシステムの輪の中に参加をし、貯筋運動を推進して医療介護の一端を担い、地域の健康度を引き上げていくことに期待をしております。
以上でございます。ありがとうございました。
【大日方部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、今発表いただきました四つの団体様に対しまして、委員の皆様からの御質問、御意見をお願いいたします。
では、菊先生、お願いいたします。菊委員、尾縣委員、遠藤委員、益子委員、國土委員――いっぱい挙がっていますね、石塚委員、この順番で。では、こちらまでとさせてください。皆様、手短にお願いいたします。
【菊委員】 ありがとうございました。筑波大学の菊と申します。学識経験者の立場から、中体連さんと日本体育・スポーツ・健康学会さんにお尋ねしたいと思います。
中体連さんに対しては、先ほどの学体連さんの発表にもありましたように、学習指導要領に部活の在り方についての記述があり、先ほどの発表でも望ましい大会規模を検討しているんだというお話でしたけれども、やはり部活を活性化させたり、子供たちが中学生から高校生にかけて継続して運動していくときの非常に重要な部活の在り方というのがあると思います。その辺りの大会の今後の在り方について、どういう方向性を持っておられるのか、その点をお聞かせいただければと思います。
それから日本体育・スポーツ・健康学会さんについては、6,000人規模の学術研究団体ということで、大変大きな学術団体なわけですけれども、こういう国のいわゆるスポーツ政策、あるいは基本計画に対して、今後学会としてどういうスタンスといいますか、関わり方をしていきたいと思っておられるのか、大まかな点でもいいですし、細かい細部の点でも構いませんので、お答えいただければと思います。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。では、尾縣委員、お願いします。
【尾縣委員】 御発表ありがとうございました。私からは、中体連さんと学体連さんに質問がございます。
まず、中体連さんですけれども、菊先生の御質問にかなり重なるところがあります。運動部活動というのは、当然ながら指導要領の総則に述べられています。教科との関連を図ったり学校教育の一環ということが言われておりますが、土日に移すときに運動部というのは、学校のものを地域で行うという考え方なのか、あるいはこれを独立してクラブとして行うという考え方なのか。いろんな考え方があると思うんですが、子供たちのニーズを考えると、土日のクラブだけに参加したいというのも出てくると思います。そういったときに、中学の体育大会、全国大会に、地域のクラブからも参加できないと子供たちのニーズは満たせないと思うんですが、その辺りの全国大会の考え方についてどうお考えかということです。
そして、細越先生には、76ページの資料を基に質問がございます。女子生徒の運動したいという気持ちというのは男子に比べて低いと。もっと言うと、週に何回運動しているか、あるいはしていないかという調査だと、女性はもっと低いんじゃないかと思うんですね。私が過去に女子学生に調査をしたときに、スポーツ好きの体育嫌いがたくさんいることに気づきました。恐らく、体育の何かが体育嫌いをつくっていると思うんですけれども、そういったところをどう分析されているのか、そしてそれを基に今後体育の授業はどうあるべきなのかをお聞きしたいと思います。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。遠藤委員、お願いいたします。
【遠藤委員】 発表ありがとうございます。中体連さんに質問ですが、普通学校の支援学級に通学する障害者のうち、体育の授業を見学するというのが多い中、まれに普通学校、普通学級に通学する中学生で、運動部活動に競技者として所属している障害のある生徒がいます。そうした生徒の中には、地区の中体連に過去出場が認められなかった事例などもございます。
当時、近県の中体連の関係者に御意見をお聞きしたところ、障害のある生徒の中体連の出場については、各県、各競技団体によって出場の可否が異なるという状況でした。理由を聞きましたら、同様・同種の障害など競えるだけの競技人口がいない、1人しかいないということですね、そういった意味で競技不成立という競技特性の問題を理由にするところもありましたし、障害のための施設環境の未整備、バリアフリーでないなどのすぐに改善できない、工夫も困難な施設環境があるという環境の理由もありました。あとは、毎年障害のある選手が出場するわけではないので、まれに出場しても間が空いてしまって10年後、15年後、障害のある生徒に対応したことがないということで、その年は出場できたけど、10年後は出場しないというように判断が分かれたこともありました。
ということで、普通学校、普通学級に通学し、部活動に取り組む生徒というのは、一緒に活動する意欲・意志のある中学生であり、障害のない生徒も一緒に部活動に取り組んで同じ時間を過ごしています。中学生の育成の精神として、部活動に取り組む全ての中学生が対象になるべきだと思います。各県・地区に出場の可否について判断のばらつきがあるようなので、こうしたことも踏まえて今後どのように対応していかれるのか、もしまだお考えでない場合は、今後お考えいただけるのかをお聞きしたいと思いました。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。益子委員、お願いいたします。
【益子委員】 発表ありがとうございました。時間がないので手短に質問させていただきます。中体連さんと学体連さんに質問させていただきます。
まず、中体連さん、部活動の指導員に関して、資料の最後にどんなことに取り組むことが可能か提言していただきたいとあったんですけれども、これまでにパワハラの指導に関して、どんなことに取り組んでどんな成果があったのか、できれば具体的に教えていただければうれしいです。あと、部活動の指導員を導入してからパワハラ指導の報告が減ったのかどうかもお聞かせください。
学体連さんには、資料のほうに運動部活動改革に伴う生徒の財政的負担というのがあったんですけれども、具体的にどのぐらいの負担が生徒たちにかかっているのか教えていただければありがたいです。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。國土委員お願いします。
【國土委員】 まず、学体連さんに1点、先ほどの尾縣先生の質問ともかぶるんですけれども、76ページのところ、スポーツが嫌いな率が多い原因を分析されていたら教えていただきたいと思います。あるいはスポーツ実施率が上がらなかった原因も含めてお願いします。
それから、日本体育・スポーツ・健康学会に質問なんですけれども、実際に施策をスリム化したほうがいいということも御提言されていまして、競技スポーツからSport in Lifeに移行するということ、それから質的な評価をしたらどうかということもありましたけれども、もう少しこの辺、具体的な資料とか御提言がありましたら教えていただけたらと思います。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。では、石塚委員、お願いいたします。
【石塚委員】 ありがとうございます。石塚でございます。私のほうからは中体連さんに御質問が3点ございます。
1点が、先ほど来、大会の在り方ということで改革プロジェクトが進んでいることを御発表いただいたかと思うんですけれども、具体的に大会に地域のスポーツクラブが参加するに当たって、条件の改革ですとか変更というものの議論が進んでいくと思いますけれども、実際に令和5年に対して土日の段階的な移行というものが進んでいる中で、あと1年半ぐらいでその期日が来てしまうことから、具体的に現状、この辺、どのような形で大会の参加が進んでいるのかを少し伺えればと思います。
あと、大会の運営に関してなんですけれども、土日に移行するとなると、教員の皆様が参画しない、部活動は地域の方が担うということになると思いますが、そうなった場合、大会へ具体的に外部の方がどのように関わっていけるのかについて、現段階での議論がもしあれば教えていただければと思います。
あと3点目なんですけれども、アンケートにありましたが、実際に大会に参加している教員の皆様、700名の競技役員の方が大会の進行に貢献しているということでありましたけれども、具体的にアンケートの中で逆に負担に感じられているようなアンケートの調査項目があったのかどうか、もしあったのであれば、その内容も教えていただければと思います。
以上、3点でございます。
【大日方部会長】 それでは、諸橋委員、森岡委員の順番でお願いいたします。
【諸橋委員】 ありがとうございます。ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションの諸橋でございます。学校体育研究連合会の方に御質問させていただきます。
コロナ禍で安全・安心な体育授業とか、より質の高い教育をする上で、GIGAスクール構想の中でデジタル化というものが、国、地方においては非常に重要になってくると思います。この辺のデジタル化促進に関し、現状どのような状況にあるか、地域、特に地方に関してお知らせいただければと思います。
以上です。
【大日方部会長】 では、森岡委員お願いします。
【森岡委員】 2点質問があります。
全国中学校体育大会の改革プロジェクトが進んでいるとお聞きしております。そのゴール設定をどのようにお考えなのでしょうか。2点目はそれに関連したところですけれども、総合型はもとより、市町村体育・スポーツ協会と自治体とも連携していくということですが、具体的にどのような連携をお考えになっているかをお聞かせください。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。それでは、順番にお答えをいただければと思います。
中体連、新宮領さん、お願いいたします。
【新宮領(日本中学校体育連盟)】 ありがとうございました。中学校体育連盟でございます。
まず初めに、全国大会の在り方です。幾つか質問が重なっておりましたので、まずそのことから申し上げます。
全国大会の在り方の大きな改革のプロジェクトの趣旨は、先ほど申し上げたように、少子化という問題からは目を外せないということで、これまでどおりの全国大会であってはならないということが大前提になっております。したがって、学校教育の一環と言いつつも、例えばですが、今冬季大会でスキーをやっておりますけれども、実際にスキー部のある学校というのはどれだけあるのか、今年そのデータを取り始めております。そういったこと、あるいは、水泳の全国大会がございますが、水泳部が全国でどれだけの部活動として成り立っているのかという問題、あるいは相撲、柔道、新体操、体操、こういった部活動が実際にどこまであるのかというデータを取りつつ、その中から果たして学校教育の一環として全国大会が成立するのかどうか、こういった問題を検討していくということです。
したがって、先ほどいつということをおっしゃいましたが、この改革については相当なハレーションが起きると予測しております。もちろん競技団体の皆様におかれましても、それは困る、底辺というか裾野を切られてしまうということもございますので、簡単にはいかないと思っております。
この議論を尽くすためには、私どもの捉え方としては、令和3年から3年間かけてやるつもりでおります。そして、次の3年間で移行についての周知徹底を図り、そして令和9年の全中大会近畿ブロックから、この改革の中身について決定した事項を進めていくというふうに考えております。これがタイムスケジュール的なものになります。
それから、全国大会と地域の関係、または部活動と地域との関係ということで幾つか御質問があったかと思います。地域に部活動が移行することについては、非常に時間がかかるのではないかと予測しております。先ほども令和5年度からとおっしゃっていただいておりまして、働き方改革からすれば非常に重要な部分も占めているわけですけれども、地域に移行することが大変難しいという声が各方面からこちらに入ってきております。それではどうやってということで、先ほど申し上げましたけれども、総合型地域スポーツクラブだけではなく、やはり各競技団体と一緒になって、休日部活だけではなく、平日部活も含めて何かしらの手だてを考えていく必要があるだろうということで、まずは私どもの関係からは、各都道府県の中体連が、各都道府県の行政の関係者とともに、その細かい議論を尽くしていくことになっております。
また、先ほど普通学校、普通学級というお話がございましたけれども、おっしゃるとおりでございます。それは、私ども全国大会におきましては、各都道府県から選出された代表者の中に、障害を持つお子さんであろうとなかろうと、全国大会のほうは全くそれは条件には入りません。したがって、都道府県中体連から選出された障害をお持ちのお子さんについては、そのまま全国大会も当然ながら参加できる形になっておりますので、その辺のことについては今後、情報収集をしてまいりたいと思っております。もし、出られなかったといった情報があるとすれば、それは修正していかなければいけないと考えますので、そのように情報収集を進めてまいりたいと考えました。
それから、暴力、体罰、セクハラについてです。平成25年にスポーツ界における暴力行為根絶宣言というものを共々に日本中体連も加わってやらせていただきましたけれども、それ以降にも本連盟独自で、例えば平成30年には「学校体育大会及び日々の運動部活動の練習における指導者の暴力行為の根絶に向けて」という発信をさせていただいております。さらには、同じく平成30年には、「暴力、体罰、セクハラ等の禁止について」という通知を出させていただいています。それから、その前の平成29年には、日本中体連としては、暴力、体罰、セクハラに対する対応ということで、基本的には、本来であればその自治体の教員の懲戒とか懲戒処分といったことについては自治体の教育委員会が進めるわけですけれども、日本中体連としてもやはり同じようなスタンスで、もし顧問の部活動の練習時において暴力、体罰、暴言等々があって懲戒処分を受けているようなことがあれば、日本中体連としては顧問としては認められない、あるいは2度目をやったときには永久追放といった文言を出させていただいています。
部活動指導員が増えたことによって、体罰、暴力等が少なくなったかということについては少しデータが不足しておりまして何とも申し上げられませんが、基本的には全体の中身からすると減っていることは間違いありません。しかし、なおかつあるという事実も当然ございます。そんなところで御容赦いただければと思っております。
あと、答えていないことはございましたでしょうか。
【大日方部会長】 ありがとうございます。
それでは、学校体育研究連合会様、お願いいたします。
【細越(日本学校体育研究連合会)】 御質問、ありがとうございました。
まずは、尾縣委員と國土委員からの御質問に対してですけれども、「スポーツ好きの体育嫌い」ということを従来から耳にすることがありまして、残念ながらそう答える生徒さんが一定程度まだいるのだろうと思います。全国的な調査を我々がしているかといいますと、国の調査結果等々を見ながら、あるいは全国大会を開催するに当たりまして各地の情報をすり合わせながら、より子供たちが運動好きになる、体育好きになるような方法ということで授業づくり、実践それから振り返りをやっておりますけれども、生徒さんが学びをなかなか実感できないんだろうということは反省も含めて感じるところであります。
スポーツ庁の調査結果でありますけれども、「週に60分も運動をしない」と回答する中学校2年生女子が約20%となっておりますが、このうち、概ね7割前後の生徒さんは「本当に全然しません」と答えています。ですので、本当にしない群と一生懸命運動をしてくれる生徒さんの群と、この二極化がかなり極端になっております。別の調査結果では、新体力テストのうち、一つでも平均を上回るものがある子たちは、何もない子たちよりも運動好きだと答えてくれる。それが二つ三つと増えるに従って、もっと運動好きだと答えてくれるという結果もございます。我々としましては、全国大会を開催しながら、あるいは研修事業でそういったことを取り上げながら、子供たちが自分と運動の関係に気づいて、あるいはこれまでの話の中でもあったかもしれませんけれども、多様な個性・特性のある仲間と一緒に学びをつくるような、そんな活動をこれから展開する中で、体育嫌いの子たちをすべからく運動好きに、一歩でも前に進めるように導いてまいりたいと思っているところでございます。
これからの全国の研修事業、講習会につきましては、この後、全国の都道府県学体連を対象に調査を行い、適切な内容と、各地の現状と課題を捉えまして、これからの研修、講習に反映させるということで動いておりまして、その結果を踏まえて、より効果的な研修を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
また、益子委員から御質問いただきました運動部活動の財政面のことにつきましては、我々のほうでここまでの段階でエビデンスを取ったわけではございません。ただ、運動部活動の形がこれから変わっていきますと、これまでは自分の学校でできていた活動がどこかに拠点が移るといった場合、移動費のこともありますし、それから場所の使用料等々、施設、用具の関係も含めて受益者負担という方向が明確になってくるのかなと思います。そういった際に経済的に困窮しているのでやりたいことができないという子が出てきかねません。今の子供たちはいろんな生活の選択肢を持っておりますけれども、その中で部活をやりたいという子をぜひ運動に近づけてまいりたいということでお願い申し上げた次第です。このような回答で、今日は御容赦いただければと思います。ありがとうございます。
最後に、諸橋委員から御質問いただきました地方の授業のデジタル化の問題でございますけれども、GIGAスクール構想等を進めていただいておる関係から、各地の子供たちにタブレット等は行き渡って、動画を撮影してお互いにこの動きがどうなったかということで相談するようなケースは増えてきたように思います。これは地方を問わずやはり教師が使うICTというものと、子供たちが使っていくICTの使い方というものと、この2方向をやはり整理していかなければいけないと、これは私が考えるところでありますけれども、思っております。
そういう意味では、子供たちがデジタル教具を使って、分かった、認識した、これならできそうな気がすると思った時に、教員がそれが実際にできた実感につながるような直接的な指導・アドバイスにどうつなげていけるかというのが、まさにこれからの課題でありまして、デジタルの端末につきましては、どんどん普及してはいますけれども、その使い方、それを使った全体的な授業の流し方、進め方については、またエビデンスを取りながら進めていきたいと思っております。
現状そんなところになります。よろしいでしょうか。
【大日方部会長】 ありがとうございます。
では、体育・スポーツ・健康学会様、よろしくお願いいたします。
【深代(日本体育・スポーツ・健康学会)】 体育・スポーツ・健康学会の深代です。菊先生の質問に対して、私、深代がお答えして、國土先生の質問に対しては水上先生にお願いしたいと思っています。
本学会は70年の歴史があり、和文誌と英文誌の学術誌をずっと出してきているので、エビデンスに関してはたくさんの蓄積があります。ただ、私たちの反省としまして、そういったエビデンスを情報発信してこなかったということがあるので、これからはこういうことをまとめて社会に情報発信していきたいと考えています。発信をするときに、これまでは個人で行っていたのですが、これからは、学術団体としてスポーツ庁あるいは文科省と連携を組んで発信していきたいと考えております。
國土先生の質問に関しては、水上先生、お願いします。
【水上(日本体育・スポーツ・健康学会)】 水上です。御質問ありがとうございました。
スリム化ということでございますけれども、現在、第2期計画では139の具体的施策がございます。国の策定した施策をそのまま地方でもコピー・ペーストするだけという実態が3月30日のスポーツ審議会の場でも指摘をされていたかと思います。そうではなくて、グランドデザインを描いて地方のスポーツ行政がいろんな人たちと自ら基本計画を立案し、それをしっかりと地方の人材を使って検証、そして評価・改善をしていくといった地方の主体性をしっかりと確保していかなければいけません。139という具体的な施策を出し過ぎると依存状態が起こってくるのではないかということでございました。
それから、Sport in Lifeと質的なエビデンスということでございますけれども、今会長が申し上げましたとおり、Sport in Lifeや質的なエビデンスに関しては大変数多くのエビデンスが蓄積され収集されておりますけれども、それをちょうど82ページの政策・検討諮問委員会が設置した図を御覧いただくと、例えば学術論文として発表したものが和文、英文ございまして、これを学会内へアウトリーチするというわけではなくて、図の右側に社会という枠、こちらに対してしっかりとアウトリーチする、社会向けの記述言語を使ってアブストラクトも一般向けの記述言語に修正して発信するということ、こうしてSport in Lifeだとか質的なエビデンスとなるような好事例をしっかり発信していく、社会に対して学術の成果を発信していくことが必要だろうと思っています。
それから、先ほどの地方の主体性ということで言えば、現在国のほうではJAPAN SPORT NETWORKというものを創設されて、地方の様々なスポーツの好事例を情報交換するためのネットワーク組織ができていますので、そういったところに質的なエビデンスだとかSport in Lifeの好事例を科学的根拠に裏づけた形で提供する、それを個人ではなくて組織としてやっていくということを今後の学会の課題にしつつ、可能性を探ってまいりたいと思っております。

【大日方部会長】 どうもありがとうございます。
健康・体力づくり事業財団様、何かございますでしょうか。特に御質問いただいたことはないかと思いますので、特段なければ。はい、ありがとうございました。
それでは、こちらのグループのヒアリングを終了させていただきます。今日は各団体様、御参加いただきましてありがとうございました。オンライン会議のほうの御退室をお願いいたします。
委員の皆様は、短い休憩で恐縮ですけれども、45分から再開させてください。どうぞよろしくお願いいたします。
( 休 憩 )
【大日方部会長】 皆様、お戻りになられていますでしょうか。
では、Kグループの皆様のヒアリングを始めさせていただきます。全国スポーツ推進委員連合、日本スポーツ仲裁機構、日本政策投資銀行、日本スポーツツーリズム推進機構の皆様です。事前に御案内しておりますとおり、各団体の御説明は8分以内でお願いいたします。大幅に時間が超過してしまっております。大変皆様もお待たせしておりまして、申し訳ありません。
それでは、全国スポーツ推進委員連合様から、御発表のほど、よろしくお願いいたします。
【柳沢(全国スポーツ推進委員連合)】 公益社団法人全国スポーツ推進委員連合の専務理事の柳沢です。本日はスポーツ基本計画部会のヒアリングにお招きいただきましてありがとうございます。
御存じのように、本法人は、昭和36年のスポーツ振興法に規定されました体育指導委員制度からスタートしています。実は昭和32年から文部事務次官の通達でスタートしておりまして、既に64年たつ制度でございます。
これまで地域スポーツ振興に関しまして、ニュースポーツ、あるいはこれからスポーツを始めようとする人たちを対象にいろんな指導をしてきて活躍いただいている団体です。現在、約5万人ほどのスポーツ推進委員が委嘱されて、全国で活動しています。
本日は、簡単ですけれども、昨今の取組の状況、これからの課題、そして基本計画への期待についてお話をさせていただきます。
104ページから少し資料をまとめてありますので、それを御覧ください。本法人は、大体五つぐらいのカテゴリーの事業をしております。一つは公益事業ということで、公益法人化した平成24年から、ファミリー健康体力向上事業ということで、家族単位で体力測定をして、その後、いろんな体力向上事業に参加してもらうという事業をリードしていくアドバイザーを養成して、各都道府県に戻っていただいて事業を展開してもらうという公益事業をやっております。
多いのは2番目の研修事業で、全国スポーツ推進委員研究協議会を年に1回開催しています。昨年はコロナの関係で中止になりましたけれども、全国研究協議会あるいは地区研修会、そしてこれからの推進委員をリードしていただけるスポーツ推進委員リーダー養成講習会、あるいは都道府県の研修会とか初任者研修会、そういった研修事業をやっております。
三つ目の事業は、推進委員の資質向上のための出版事業です。機関雑誌の『みんなのスポーツ』は、Sports for All運動がヨーロッパで起こった頃、粂野豊先生がスタートさせた機関誌で、既に45年にわたって毎月出版している雑誌でございます。昨今では、スポーツ推進委員の資質向上のためのハンドブックを作って共通理解による資質向上を図っております。
4番目に、表彰事業ということで、頑張っていただいている推進委員を表彰するという事業でございます。
最後に、5番目の事業としまして、スポーツ関連事業への協力で、生涯スポーツ・体力づくり全国会議とか、Sport in Lifeのコンソーシアム等、関連事業へ協力をしております。これが現在の事業活動ですけれども、研修会等はコロナの関係で大分中止になっている現状がございます。
本法人が抱えている今の課題としましては、そこに幾つか挙げておりますが、認知度が上がらないという大きな問題がございます。地域住民のために、いろんな教室とかイベントに協力しているんですけれども、なかなか住民への認知が広まらないこともありますし、場合によっては市町村の行政職員自体が理解していないこともあります。
2番目の問題は人材不足で、成り手が不足し、現委員が高齢化していることが大きな課題になっております。したがいまして、定員に満たない市町村も出てきています。
三つ目の問題は資質向上です。これまで体育指導委員時代から資質向上が必要だという指摘や、適任者が選ばれていないという指摘がございますけれども、これはある意味、委嘱する行政側にも問題があると思っています。
そして、成り手がいないことについて、インセンティブな問題もあろうかと思います。そこにありますように、全国の平均でしますと、年間の報酬額が1年間で4万7,000円ぐらい、約40%の市町村は年間2万円から4万円ぐらいの報酬で、皆さん仕事をしながらスポーツ振興のお手伝いをしています。金銭的なインセンティブだけではなくて、彼らの活動をしっかり評価いただくことがこれから大事かと思います。
それから、先ほど言いましたように、行政担当者の資質向上もこれからは非常に大事かと思います。基本法にスポーツ推進委員には連絡調整が求められると規定されているんですが、推進委員単独で連絡調整をするのは非常に難しくて、行政が一緒になって連絡調整の機能を果たさなければならないんですが、推進委員に丸投げしてしまうような担当者、あるいは教育委員会がありますので、そういった市町村の推進体制にも問題があろうかと思っています。
それと、7番目にありますように、全国スポーツ推進委員連合の事務機能をもっと整備しなければならないという問題があります。今、事務局長1人、事務員1人で約5万人の普通会員を相手に事務をやっておりますけれども、事務機能を整備できるだけの財源を何とか捻出しなければならないと思っています。スポーツ振興法や基本法に規定されているんですが、非常に財政的な支援が乏しくて、5万人の会員から1人年会費500円を頂いて事業を展開しています。そういった意味で、事業を拡大していくことが非常に難しいことが今の課題だと考えています。
そして、第3期の計画に期待することですけれども、これからのスポーツ実施率の向上、あるいはSport in Lifeの実現にとって、5万人の推進委員の活動というのは欠かすことのできないものであり、きちんとした人的資源であることを明確に位置づけてほしいと思いますし、これまで計画の中に総合型地域スポーツクラブ育成の中心的役割を果たすという規定がありましたけれども、そういった推進委員が多々いることに対する評価もきちんとしていただきたいと思います。
そして、彼らの資質的充実をめぐって、いろんな国からの支援が必要ですし、都道府県の先ほどの行政的な支援も必要かと思います。
大事なのは、成り手不足のところで話しましたけれども、スポーツ推進委員の選任とか委嘱については、行政が責任を持って適任者を人選してほしいと思います。地域のスポーツ団体や自治会に丸投げして人を上げてくる自治体が多いんですけれども、行政が責任を持って適任者を人選してほしいと思っております。あるいは、その下の(f)にありますように、資質向上のための研修の機会を行政担当者と共に企画・運営していくような取組が必要かと思いますし、市区町村の基本計画にスポーツ推進委員の役割を明確に規定してほしいと思います。
それと、都道府県の行政には、都道府県としての市町村への指導と、広域的事業や専門的事業に対する市町村推進委員協議会との共同企画とか開催といったことも一緒にやっていただきたいと思います。
スポーツ推進委員は市町村の委嘱ということで、都道府県はそれに関わらなくてもいいのではないかという認識の都道府県の行政担当職員もいらっしゃいますが、実は市町村への指導や広域的な事業、あるいは専門的な事業に対する責任は都道府県にございますので、ぜひとも都道府県の行政にも市町村の協議会に対する支援をしていただきたいと思っているところでございまして、そういったことも計画の中に書き込んでいただければと思っています。
以上、雑駁ですが、そのようなことを協会としては考えています。
以上です。よろしくお願いします。
【大日方部会長】 説明ありがとうございました。
それでは、日本スポーツ仲裁機構様、よろしくお願いいたします。
【髙杉(日本スポーツ仲裁機構)】 日本スポーツ仲裁機構の理事事務局長の髙杉です。それでは、私のほうから説明をさせていただきたいと思います。
私どもの団体は、資料の108ページにありますように、例えば日本代表の選考でありますとか選手、指導者の処分、そういうスポーツにおける紛争を中立的な第三者による仲裁や調停で解決することを中心的に行っている団体です。それとともに、そもそもスポーツ紛争が起こらないように、団体のガバナンス、コンプライアンスの充実を図るという活動をもう一つの柱としております。
このスポーツ紛争の解決につきましては、スポーツ基本法でもスポーツに関する紛争の迅速かつ適正な解決に努めるということが規定され、また第1期、第2期の基本計画においても取り上げられているところです。
私どもが今現在行っている事業を通じて、これからの第3期の計画に考慮していただきたいという事項について説明をさせていただきます。
まずは、大きな柱でありますスポーツの仲裁、調停に関することです。近年、スポーツの仲裁の申立てにつきましては、109ページにございますように、申立て件数で言いますと年間10件程度となっております。この10件程度では、この制度が必ずしも十分に活用されていると言えないのではないかと私どもは考えています。したがって、これからスポーツ紛争の迅速で公正な解決のために、この制度の利用を進めるに当たって、私どもが考えなければいけないこと、それから取り組まなければいけないことについて御説明をさせていただきます。
まず、この109ページのアにありますけれども、まずは仲裁・調停制度の周知が必要だと思っております。このコンプライアンス、それからガバナンスの関係で、私どもはメンターの派遣を中央競技団体それから地方競技団体等に行っておりますけれども、そもそもスポーツ仲裁とかスポーツ調停というのは何かというところから説明をしなければいけない状況もあるわけです。したがいまして、スポーツ仲裁、それから調停制度の関係者へのさらなる啓発がまず必要だろうと思っております。
それと、イに書いてありますが、このスポーツの仲裁と調停というものは、いわゆる申立人と被申立人、つまり選手・指導者等とスポーツ団体ですけども、この両者に仲裁や調停で解決を図るという合意があって初めて行われるものです。裁判のように、訴えがあれば取り上げられるというものではなく、両者の合意がないとできません。このため、私どもは申立てがあれば、それは仲裁として解決をするんですという、いわゆる自動応諾条項の採択を進めております。
1ページめくっていただいて110ページになりますけれども、その採択状況を表に記載をさせていただいております。これを見てみますと、統括団体のJOC、JSPO、それから障害者の団体、それから都道府県の体協・スポーツ協会という、いわゆる我が国のスポーツの中心を担うような団体での採択率が76.2%ということで、4分の3となっています。地方の団体へ行けば、さらにその採択率は激減します。
110ページに不応諾件数というのがございます。仲裁というのは、いわゆる相手方の合意があって仲裁を申し立てる、それから合意がなくても仲裁を申し立てて、私どもの団体が相手方のスポーツ団体に合意をしますかと確認するという二つのやり方があります。ここで出ているのは、仲裁の合意がなくて出てきて、それで不応諾になった件数であります。したがって、これより前にそもそも合意ができずに仲裁に持ち込めない件数も相当数隠れていると思っています。ここを見ていただきますと、近年、不応諾が15件あるわけですけれども、そのうちの12件がいわゆる地方のスポーツ団体です。中央競技団体のほうは先ほど申しましたように約4分の3が応諾いただいていますが、地方においてはこういう制度があっても活用できる体制が整っていないということが言えます。したがいまして、今後、地方公共団体を含む全てのスポーツ団体が自動応諾条項を制定して採択をすることが必要であると考えています。
それから111ページに調停制度の利用促進ということが書いてあります。調停という制度は、調停人という第三者の力を借りて、両者が合意を形成して解決を図っていくという制度ですけれども、これについても周知と応諾を進めていくことが必要です。このような制度利用について、これから第3期の計画で取り上げるべきであろうと考えています。
さらに、実施をする側、私どもの側の課題の一つとして、エに仲裁や調停を行う人材の育成とスポーツ法基礎研究の必要性と書いてあります。この仲裁人というのは、私どもは約200名の仲裁人の候補者リストを持っておりまして、原則としてその候補者リストの中から選ぶことになりますけれども、件数が先ほど申しましたように10件程度ということであまり多くないこと、それから1回につき5万円ということで、ほぼボランティアということもございますので、どうしても一部の者に集中する傾向が見られております。したがって、今後この制度を普及し、十分に活用していくためには、候補者の資質の向上と待遇の改善が必要であると考えております。
もう一つの柱として、紛争予防のための取組の強化ということがございます。これが112ページに書いてあるわけですけれども、私どもは今までメンター派遣ということで、団体の要望に応じて様々な中央競技団体それから地方公共団体を指導する機会を設けました。その中では、そもそも地方の場合はガバナンス体制が非常に脆弱であるということ、それからそもそもガバナンスコードとは何かということ、何のために定められたのかということ、そこから説明をしなければいけないことも相当数見られます。したがって、第3期に当たっては、県のスポーツ協会とか体育協会と私どもの団体がきちんと連携して、ガバナンスの強化とかコンプライアンスの徹底に取り組む体制をつくることが重要であると考えております。それが112ページです。
それからここに3と書いてありますけれども、国際的な関係機関との連携。これはドーピングを例にしてもらうと非常に分かりやすいんですけれども、ドーピングは国際的な広がりを持って国際的な基準で裁かれる、また今、日本のスポーツの紛争でも、いきなり国際的な判断機関、CASと言っていますけれども、そこに持ち込まれるような場合もあるということでございまして、関係の海外の機関との連携が適切な解決を図っていく上で重要になっています。
それから4として、さらに暴力関係についても、一部の団体ではその対応かきちんとできていないということで、私どもがその団体から委託を受けて調査・処分に当たるという制度の構築についても検討することが必要ではないかと考えております。
最後になりますけれども、安定的な紛争解決を行う体制整備です。実は私ども、独立した中立的な機関です。それがまた求められているということで、裁判所と同様、収益を上げるための事業も持っていません。また、民間からの対価性がある収入も期待できないという極めて厳しい収支構造の下に活動しています。したがって、今後、私どもが安定的に事業実施を進めていくためには、運営に対してより多くの援助が必要であると考えておりますし、お願いをしたいと思っています。つまり、公的な資金による管理経費を含めた支援の拡充まで考えていただけないでしょうか。
以上、簡単ですけれども、基本計画の検討に当たってご参考いただきたくお話をさせていただきました。どうもありがとうございます。
【大日方部会長】 ありがとうございます。
それでは、日本政策投資銀行様、よろしくお願いいたします。
【矢端(日本政策投資銀行)】 日本政策投資銀行で地域企画部担当部長を務める矢端と申します。本日はこのような機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
私ども日本政策投資銀行は、10年ほど前よりスポーツの持つ産業としての成長可能性、あるいは地域活性化への貢献、あるいはまちづくりの核となるスタジアムアリーナがどのような機能を持つべきかといった点に関しまして、海外の先進事例調査を含む様々な調査活動や企画提言活動、あるいは金融機関としての投融資業務等を行ってきました。また、昨今、コロナ禍に直面する中で、これまで述べてきたようなスポーツの多様な価値という経済的な側面の部分に加えまして、元気づけるとか地域への貢献といった社会的価値にも着目しています。
このような弊行のこれまでの歩み、取組と、今回の基本計画に向けて期待する部分なども含めまして、これから御説明をさせていただきたいと思います。詳細は課長の桂田より御説明させていただきます。よろしくお願いします。
【桂田(日本政策投資銀行)】 皆さん、よろしくお願いいたします。日本政策投資銀行地域企画部の桂田と申します。簡単な資料で恐縮ではございますが、弊行の資料は114ページ以下となっておりますので、簡単に御紹介、御説明をと思います。
弊行におけるスポーツの取組ということで、115ページに今、矢端が申し上げましたここ10年ぐらいの取組を記載しております。最初、私どもは2013年からスポーツ分野における、特にスタジアムアリーナを生かしたまちづくりに主眼を置いて、調査・研究を進めておりました。その中で、PPPやPFIの官民連携手法の提言を行ってきたところです。
もう1本の私どもの次の柱としましては、2015年の2ポツのところにスポーツ産業経済規模シリーズという名前がございますが、我が国のスポーツ産業の経済規模、ちょっと前まで市場規模で捉えておりましたが、今はGDPベースでのスポーツ経済規模という産業の経済規模を、スポーツ庁様、経済産業省様の御監修・御協議もいただきながら、ほぼ毎年発表を続けております。2年遅れでの発表でございまして、今回は2018年時点の数字を間もなく出させていただきたいと考えております。次のページに既に掲載をしております。
そのほか、3番のところ、2020年のところにございますけれども、スポーツの社会的価値の定量化にチャレンジをするということを3項目めの取組として行っております。スポーツ産業は、ある意味、独立したプロフィットセンターとしての産業を目指していますので、このストーリーとは若干矛盾するのかもしれませんが、逆に10年間この分野の調査をやらせていただきましたからこそ、大変申し上げにくいんですが、スポーツ産業は現時点では残念ながら自主独立、高い収益率を誇る産業にはまだなり得ていないという認識です。
その中でも、スポーツ産業を将来の成長曲線の中で描いていただく成長産業化のためには、完全に民の力だけで頑張ってくださいという突き放した状況では残念ながら成長曲線はなかなかうまくいかないと思っております。であるならば、スポーツチームから例を取ってスポーツの社会的価値について何とか定量化・可視化を試みまして、スポーツは地域のエコシステムの中の一つとして、地域住民の皆様、地域行政の皆様、そして地域企業の皆様の日常に受け入れていただくという、官民連携の中での地域のエコシステムの一つとしてスポーツ、スポーツ産業を捉えていただくことが、現時点ではスポーツ産業の成長産業化への近道ではないかと考えております。あわせまして、幾つかの出融資案件を弊行でも出させていただいております。
116ページを御覧ください。これが先ほど申し上げました我が国のスポーツ産業の経済規模推計値です。一番右側の2018年のみは、詳細を来月頃に公表予定ですが、速報値として合計値のみ御案内を申し上げています。これを見ますと、2012年にスポーツ産業経済規模、GDPベース、端的に言いますと、スポーツ産業の営業利益プラス人件費金額でいきますと、2012年時点の約7.1兆円から、2018年時点では8.7兆円まで来ております。これをもう少し市場規模と言われる数字、よく言う売上高の積上げとか生産額の積上げという利益ベースではない数字で申し上げますと、教育とか公営競技を入れて――入れてと申し上げましたのは、当社のスポーツ市場規模、国のスポーツ市場規模というのはそこが入ってなかったということですが、2012年時点の9.8兆円から、2018年は12.3兆円まで順調に成長しています。
この観点から見た場合に、二つ懸念があると思っております。一つは、ここまでは順調にきておりましたが、2年後に出る2020年時点の数字はどう見ても下がると見ております。手前どもの担当のほうで試算した数字ですと、恐らく20%近い下落を2020年は見込んでいます。15%前後でしょうか。これは実は外食産業並みの落ち幅です。スポーツ産業は、申し上げにくいんですが、宿泊・飲食とかの国からの御支援を多大にいただかれている産業と同じ落ち幅であるにもかかわらず、産業に対する直接の御支援というのはほぼ期待できない状況であると認識しております。なので、落ち込んでいる中スポーツ産業の業界の企業の皆様は、自力、独力で何とか乗り切ろうとしている状況と理解をしております。ないしは、プロスポーツチームのように、自力では支えきれず親会社等にサポートをして何とか生き延びているという状況なので、2年後の数字を非常に懸念しております。
二つ目には、これはちょっと細かい掲載になるんですが、このオレンジの棒グラフに対する折れ線のオレンジを御覧ください。大体の感覚でいうと、上が売上高で下が粗利プラス人件費なので、ざっくりした粗利率というので見ていきますと、計算、おおよそですが、2012年時点ではこれが72%ぐらいです。ところが2018年時点では70%に減っています。つまり、仮説ですが、スポーツ産業というのは生産規模、売上規模は伸びているものの、実は収益率はむしろ落ちている産業になっている懸念がございます。これは、もしかしたらスポーツ産業の値決め、要するに単価が、むしろ安めにたたかれていると。代表的には、自治体様の指定管理料等が更新のたびに安くなって、実は全然儲からないビジネス、全然うまみのない産業になっているというのが一例かと思います。スポーツ業界では往々にしてこういう産業構造が起きていると懸念しております。すみません、長くなりましたが116ページでございました。
117ページです。そこから2例、私どもなりの解釈で、こういうスポーツファシリティーであれば弊行も御縁を持てましたし、こういうのもスポーツファシリティーの一つの姿ではないかという例を御紹介しております。
一つが、ゼビオグループ様に御縁をいただきましたXSM FLAT八戸で、八戸市での民設民営のアリーナですが、ここのポイントは、行政、地域住民、地元チームの理解の下で、自治体も資金を出しながら民設民営のアリーナ構造を支えています。先ほど申し上げましたように勝手に民設民営をするということではなくて、行政も一定程度コミットした民設民営アリーナを実現している例です。
118ページは愛知県新体育館です。こちらも私どもは出資をさせていただきましたが、「BT+コンセッション」ということで、これも実は建設費400億円のうち200億円ほどは愛知県が出しています。完全に民間の運営コンセッションだけにするのではなく、官民連携でのアリーナにしつらえているということです。
ここから申し上げたい2点は、世の中には純粋な民設民営アリーナとかスタジアム構想もございますが、これは、よほどオーナー企業に思い入れがあったり、スポーツチームを我がもののようにかわいがっている企業が親会社にいる案件しか成り立たなくて、要はスタジアムアリーナが地域のまちづくりに必要とスタジアムアリーナ改革の下で国から御提言をいただいておりますが、それが汎用的に展開できるものではありません。純粋に民設民営化だけ突き放しているだけでは、思いのある案件がぽつぽつとスポット的にできるだけにとどまっていて、まちづくりのコンテンツとしてスタジアムアリーナを見ていただくのであれば、官民連携のモデルをどんどんスポーツ庁様としてもおさえて、これを御理解いただきたいと思っている次第です。
最後になりましたが、119ページです。今まで申し上げたことに加えてかいつまんで申し上げますと、その中で見えてきた点です。
①は当たり前に申し上げました。②はいま一度申し上げますが、スポーツ産業、スポーツ事業というのは実は市場規模は伸びていても、収益率はそんなに高くなくて、要するに民間事業者からすると魅力のない産業に映る可能性があるのではないか。手前どものような金融機関も、収益率が取れない業界では利回りが取れないので勇気を持って参入しにくい可能性が今後ございます。
③ですけれども、したがってということで、先ほどのXSM FLAT八戸様とか愛知県の新体育館で御覧いただいた案件でいうと、完全に民設民営で突き放すのではなくて、自治体も一定の財政支出を伴った官民連携スキームでないと、普遍的にスポーツ事業、特にスタジアムアリーナのような多額の資金を伴う事業は広がっていかないのではないかという懸念を持っております。
それは、スポーツだからこそ言える理由だと思いますが、スポーツには経済的価値だけではなく、社会的価値があるからです。だからこそ、弊行のほうでも社会的価値をエビデンスとして、スポーツの価値を改めて地域の皆様に御理解いただくような情報発信をまずは続けてまいりたい。それによって、自治体にも財政支出をより一層御理解いただきたいと思っております。
最後に、第3期基本計画に期待することですが、ここに具体的な資金スキームを書くわけにいかないと思います。毎年の成長戦略であれば書くこともできるんでしょうが、基本計画に細かくは書けませんし、さりとてスポーツ産業は日本の新しい産業であり、可能性のある産業であることを、ぜひ第3期基本計画でも引き続き御明記いただきたいと思っております。
二つ目には、この産業については利益率を危惧しておりますので、デジタル化等、売上げとか新しいチャレンジをする案件だけではなくて、ぜひスポーツ庁様には、第3期基本計画に限らず、収益率を高めるようなスポーツ事業の取組を世の中に御紹介、お示しをいただきたいと思っております。
4番目ですが、スポーツ産業が安定軌道に乗るまでは、このようなコロナ禍だからこそ分かったところですが、外食、宿泊産業と同じぐらい、一番最初に世の中から売上げがはがされて苦戦する産業であることも分かってまいりました。こういうときに、この産業を勇気づけるようなセーフティーネットの存在として、スポーツ庁様、国様や自治体様の御存在を第3期基本計画に御明記いただいて、この産業で頑張っておられる事業者の皆様に安心していただけるようなメッセージをぜひ発していただきたいと思っております。
細かく言ったら、スポーツ業界の資金の流れをどうしましょうかとか、ファイナンスをどう考えたらいいでしょうとか、申し上げたいことは多々あるんですが、ちょっと細かくなろうかと思いますので、この辺りで御説明を終わらせていただきたいと思います。以上です。
【大日方部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、最後に日本スポーツツーリズム推進機構様、よろしくお願いいたします。
【原田(日本スポーツツーリズム推進機構)】 それでは、与えられた時間が8分ということなので、てきぱきといきたいと思います。資料は121ページで、皆様の御手元にあるということですので、それに沿ってお話をさせていただきます。
JSTAという組織は、2012年の4月に誕生した、観光庁からスピンオフした初めての公益法人です。その後、事業の大半をスポーツ庁と今連携しながらやっております。
次のページに行きます。スポーツツーリズムというのは、「スポーツ×観光」で、簡単に定義すると、スポーツで人を動かす仕組みづくりという意味を持っています。すなわち、アクティビティを造成することで、あらゆる場所を観光資源化することが可能です。その下に写真があります。美しいビーチがあるんですが、ここからは経済価値は全く生まれません。そこに、サップやシーカヤックといったアクティビティを入れることによって、都会から人が来て、食べて飲んで泊まってお土産を買って帰るという仕組みが生まれます。地元にお金が落ちるわけです。
次のページに参ります。我々は、スポーツツーリズムこそがスポーツの未来的役割を担っていると考えています。2015年にスポーツ庁ができて、大きなスポーツ政策のパラダイムシフトがありました。それは、スポーツの振興からスポーツによる振興(地域の発展)すなわち、スポーツを触媒(Catalyst)としながら、地域の課題解決に向かおうという動きです。去年から今年にかけてのコロナ禍で何が起きたかというと、一番大きな影響は人口減が加速化したことです。これまで2053年に日本の人口が1億人を切ると言われていたんですが、それが2049年、4年前倒しになると予想されています。何が起きるかというと、人口減でまさにスポーツ関連予算も含めてあらゆるものが縮減していくということです。
ということで、現在の行政が行うスポーツサービスを維持するためには、スポーツ自体が稼ぐ仕組みをつくらないと、多分スポーツ行政自体が縮減していく、これは間違いありません。そういうことで、自ら稼ぐ仕組みを内包した地域スポーツのエコシステムをつくるというのが我々の最大のミッションです。誰がやるんだということなんですけど、それはこの後説明いたします。
そういうことで、スポーツによる地域の活性化、スポーツ、健康、まちづくり、そして人口減に備えた自ら稼ぐ力を備えたスポーツ政策、そういうことが柱にあります。
次のページに参ります。最新の事例を御紹介したいと思います。名古屋市です。名古屋市は昔から、教育委員会の中で全てのスポーツ振興をやっていたんですが、2年前にスポーツ部局を首長直轄の組織に変えて、スポーツ局スポーツ戦略室をつくりました。それに並行して、2026年にアジア大会をやることが決まっていますので、それに向けて名古屋ビジョンをつくりました。
その名古屋ビジョンをベースに、現在、「名古屋市スポーツ戦略」をつくっております。両方とも私が委員長を務めまして、今年の9月に名古屋市スポーツコミッションが、まだ仮称ですが、誕生する予定です。やることはコーディネート、人材育成、調査・研究、情報発信等々ですが、基本はこれで稼ぐ仕組みをつくります。さらに、アジア大会の後も国際大会の誘致を行おうということで、現在は世界弓道選手権の招致をほぼ決めております。こういった新しい地域スポーツの振興というのが重要になります。
次のページに参ります。『コロナで都市は変わるか』という本が出版されていますが、その中で、ソーシャルディスタンスを守りながら都市を再構築しよう、さらに内部免疫力を高め、回復する力(Resilience)を高めるようなまちづくりがこれから重要だろうと。その先に幸福の社会づくりというのが出てくるわけです。それと先ほどの桂田さんの話にもありましたスポーツとまちづくりというのがことさら重要になってまいります。
次のページに参ります。これは令和3年のスポーツ庁の地域振興の事業で行っているスポーツによる地域の価値向上プロジェクトです。これに我々の組織も深く関わっておりまして、私もプロジェクトの委員長をしておりますが、その中で重要なのは、密を避けたアウトドアスポーツツーリズムが出てくる、あるいは日本古来の伝統資源を活用した武道ツーリズム、さらにアーバンスポーツツーリズム、あるいはスノースポーツツーリズム、こういった分野をさらに活性化しながら、稼ぐ仕組みを内包した事業をこれから展開していきます。
次のページに参ります。「スポーツ×文化×観光」という具合に領域拡大をしようと。スポーツ施設は有限です。どこにでも5万人のスタジアムとか1万人のアリーナはないわけです。でも、そういうところは、海、山、川、道路、雪、森、あらゆる場所が活用可能です。すなわちスポーツ環境、資源は無限です。有形の文化資産は有限ですが、例えばユネスコの無形文化遺産なら、沖縄空手、相撲、柔道、流鏑馬など無形の文化資産は無限にあるわけです。ということで、どこの地域でもスポーツツーリズムを展開できる可能性があるということです。
次のページに参ります。スポーツによる地域振興というのは、地域住民が自治体に税金を払います。自治体がスポーツ事業、イベントや施設への投資を行う、そこでイベント開催、合宿、大会誘致が行われる。すると、域外からのビジターが増えるわけです。すると、地域に消費誘導効果が起きて、地域の収入増と雇用が生まれ、そこに新たな地域イノベーションが生まれます。問題なのが真ん中にある担い手の問題です。じゃあ、誰がやるのかということになります。
次のページに参ります。そこにスポーツコミッションというのがあります。今、地域スポーツコミッションが全国に誕生しています。二つ仕事があって、一つが地域資産形成型の政策です。これは従来どおりで、スポーツ実施率を向上し、参加型スポーツイベントをやり、部活動、健康増進、成人病予防を図る、これはこれまでやってきたわけです。それに加えて域外交流振興型の政策、アウターと呼ばれています。スポーツコミッションはまさにここをやります、観戦型・参加型のスポーツイベントの実施、スポーツ合宿の誘客等です。理想的には、アウターで稼いでインナーでそれを実施する。例えば出雲スポーツ振興21というNPO団体は、地域の指定管理を全部引き受けながら、地域の体育協会の運営をそこで担っているわけです。なので、体協の運営に税金は使われていません。そういういい仕組みをこれからつくっていくのも重要と思います。
次のページ、全国に地域スポーツコミッションが誕生しています。2020年で目標値の170に近い159団体が生まれています。
最後のページです。あと1分です。地域スポーツコミッションの数は急速に増えましたが、今後、質の向上が課題になります。そのためには、場づくりと仕組みづくりを担う専門人材の育成が求められます。なので、一応スポーツコミッションの数はかなり増えましたけれども、次はそこを担う人材養成を考えております。
例えば総務省が行う地域おこし協力隊のスポーツ版、あるいは、まさに大学と連携した地域人材の養成事業等が有望です。今後は、できれば大学のカリキュラムなどにそういった人材養成の仕組みを設けていきたいと考えております。
私の発表は以上になります。どうもありがとうございました。
【大日方部会長】 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明がありました四つの団体につきまして御質問、御意見等ありましたら、委員の皆様、プッシュボタンを押してください。先ほどと同様、まとめて質問、まとめて回答という形でお願いいたします。
それでは、大塚委員、藤田委員、結城委員、菊委員の順番で行いたいと思います。大塚委員からお願いします。
【大塚委員】 ありがとうございます。日本トライアスロン連合の大塚です。日本スポーツ仲裁機構様と、日本スポーツツーリズム推進機構へ質問があります。
まず、日本スポーツ仲裁機構さんからCASの話が大分出てまいりました。国際機関との連携における具体的な施策をこれからという部分があったと思いますが、もし具体的なものが既にあるようでしたら、ぜひともお示しください。
それから日本スポーツツーリズム推進機構への御質問ですけれども、これからの中心的役割となるスポーツコミッションと地方自治体、行政との連携、こういった部分で、さらにスポーツコミッションを日本全国に増やしていくために、地方自治体など、また地方自治体の中にあるスポーツ機関などとの連携や期待することがありましたら、ぜひともお知らせいただければと思います。
以上です。ありがとうございます。
【大日方部会長】 ありがとうございます。では、藤田委員、お願いいたします。
【藤田委員】 私は、全国スポーツ推進委員連合さんに質問させていただきたいと思います。日本福祉大学の藤田と申します。
私は、障害者スポーツを推進していくに当たって、障害者スポーツ関連の人々、組織、それから障害のない人のスポーツ関連の人々あるいは組織との連携というのは非常に重要だと思っているんですが、そのコーディネートの役割をスポーツ推進委員の方々にやっていただけるんじゃないかと思って非常に期待しています。先ほどの御発表の中では、なかなかその連絡調整機能がうまく働いていないような御発表があったかと思いますが、どの程度今、スポーツ推進委員さんが調整機能を果たされているのか、もし十分じゃないとしたらどういったところが原因なのか教えてください。
以上です。
【大日方部会長】 それでは、結城委員、お願いいたします。
【結城委員】 非常に興味深く皆様の発表を伺いました。ありがとうございます。私からは、日本政策投資銀行さんのほうに質問させていただきます。もしも原田先生に補足いただけるようなことがあれば大変幸甚です。
今日の御発表の中で、飲食それから宿泊並みの落ち込みがあるにもかかわらず直接の支援が期待できないこと、それから売上げが伸びても収益率が落ちていることを非常に興味深く伺いました。そのからくり、それから内情というもの――なぜ支援が期待できないのか、それからどうして収益率が落ちてしまうのか。私の拙い理解では、世界を見たときには恐らく欧米に牽引されてではございましょうけれども、スポーツ産業は少なくとも堅調に成長し、コロナ禍でかなりへこんだと拝察いたしますけれども、ある意味での逆境での強さ、レジリエンスというものを持っているように、少なくとも過去は分析されていたと思います。今の2点について、これは日本特有の現象なのか、だとしたらスポーツはただでやるものとか、卑近な言葉で申し上げますが、社会のスポーツの捉え方というものに起因しているのか、これを1点目として伺います。
それから、もう1点だけ。地域に社会的価値、エビデンスとしてもっと理解をしてもらえるように発信したい、するべきというお話でございました。非常に共感いたしますが、社会的価値の中には恐らく無形の価値がございますね。人々がスポーツを行う、運動を行うことでの心身健康への寄与であるとか、楽しみであるとか、つながりであるとか、こういった無形の価値というものが本当に目に見えるデータとして、エビデンスとして計上され、それが経済的な価値に換算できたらスポーツは非常に強いんだろうと思っておりますが、この辺りについて、御所見でも結構ですので、お考えがあればお教えください。
【大日方部会長】 それでは、菊委員、お願いいたします。
【菊委員】 どうもありがとうございました。筑波大学の菊です。全国スポーツ推進委員連合の柳沢先生にお伺いします。3点あります。
これは、世界に冠たる非常勤公務員制度だと私はいつも思っておりますけれども、長い歴史の中で委員の構成といいますか、メンバーの中で特に若い人たちがこういう運動といいますか、委員にどの程度関心を持っておられるのかをお聞きしたいです。
それから二つ目に、全国的なレベルでは市町村に量的なばらつきがあるということですが、それにどう対処すればいいのか、どういう仕組みづくりが必要なのかということについて、これが2点目です。
3点目は、昨今の部活動改革の一環で総合型との関連が出てきておりますけれども、スポーツ推進委員としてはこれにどう関わっていくのか、基本的な考え方があればお聞かせください。
それから、日本スポーツ仲裁機構様に二つほどお伺いします。1点目は、東京2020におけるプロボノ活動について、何か具体的なアクションが今あるのかないのか分かりませんけれども、そういう計画や予定があるのかどうかについて教えてください。
二つ目は、日本のスポーツ団体の場合、4分の1がまだ自動応諾してくれていないということですが、海外のスポーツ団体との比較等においてこれをどう考えたらいいのか教えていただければありがたく思います。
以上です。
【大日方部会長】 では、森岡委員、お願いします。
【森岡委員】 日本政策投資銀行の桂田さんに質問です。
スポーツには経済的価値のみならず社会的価値があり、そのエビデンスとして無形の価値があります。社会的価値を測る評価基準についてどのようなお考えがあるのか教えていただければと思います。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。
では、皆様から順に回答をいただきたいと思います。
まず、スポーツ推進委員連合、柳沢さん、お願いできますでしょうか。
【柳沢(全国スポーツ推進委員連合)】 まず、藤田委員からの質問で、組織間の連携、コーディネートが期待されているけれども、それが十分か否か、原因は何かということです。エビデンスがあるわけではありませんけれども、個人的な感覚では十分ではないと認識しております。
それは一つは、先ほど触れましたけれども、行政の担当者が十分そのことを理解をしていないきらいがあるということです。数年で異動する方が非常に多いわけで、推進委員のことを十分理解されないまま仕事をされている方もいらっしゃるので、なかなか連携等について理解が進んでないということ、それが1点と、もう一つは体制の問題で、スポーツ振興関係を教育委員会から首長部局に移管している自治体が増えていて、地域課題はそういった総合的な行政が必要なんですが、従来の教育委員会の枠の中でやっていると、そういった連携がなかなか表に出てこないという問題があると思います。障害者の問題でも観光の問題でもそうでしょうけれども、総合的な連携のために総合行政ができる体制がないとコーディネートというのはなかなか難しいと思います。
そして、推進委員に連携、連携と言っているんですが、推進委員だけでは連携できません。例えば、菊委員のお話にありましたけれども、部活動改革とどう関わるかといっても、推進委員独自で学校に入っていくわけにいかないわけです。教育委員会等の行政が一緒になって連携の仕組をつくっていかないといけません。進委員が連携しなければならないから推進委員がやりなさいという関わり方では駄目で、しっかり行政が関わることが大事かなと思います。それが大きな原因かなと思っています。
そして菊委員から三つ質問ありまして、若手の関心はどうなのかということなんですが、残念ながら若い人たちの推進委員に対する認識は十分ではありません。推進委員の中でよく話が出てくるのは、仕事をしながら空き時間とか自分の休みのときにいろんな事業をやるわけですけれども、生活のほうが優先でなかなかそちらまで手が回らない状況になってきているというのが恐らく若手の多くの認識だろうと思います。中には、危機感を持って協力されている若手もいるんですけれども、なかなか入ってこないというのが現実です。
それと、自治体によって推進委員の成り手にばらつきがあるというんですが、これは先ほど言いました行政担当者の熱意だと思います。行政がしっかり責任を持って適任者を探す必要があって、自治会や体育団体に任せて人を出せと言っているような状況ではなかなか十分な人材確保ができないと思います。
それと部活動改革も今の段階では、推進委員が部活に関わっていくというのは非常に難しいと思っております。個人的にはそういう方がいらっしゃるかと思いますけれども、組織的に関われるかということになると、これもやはり行政と一体になって学校と一体になって仕組みをつくっていかないと、外部指導者として組織的な対応というのは恐らくできないと思います。推進委員を活用していただくのは構わないんですけれども、それをサポートする体制がないと、地域の人材の有効活用というのは恐らく立ち行かなくなると思います。部活動を総合型に出したり推進委員に任せるという段階には至ってないという認識です。よろしいでしょうか。
【大日方部会長】 ありがとうございました。
それでは、スポーツ仲裁機構様、よろしくお願いいたします。
【髙杉(日本スポーツ仲裁機構)】 スポーツ仲裁機構の髙杉です。
まず一つは、国際機関との連携の話で、これはCASとかWADA、そのほかにそれぞれの国が仲裁機関を持っております。私ども、今までそういうところに研修のため職員を派遣して、関係をつくる、それから情報を収集するという取組、それから、私どもの仲裁候補者の研修会、そこにCASの担当者や関係機関の担当者を招聘いたしまして、そこで情報を私どものほうにいただくということ、それからCASなどの会議に私どもの職員を派遣してきましたけれども、いずれもアドホック的に行われています。今後はやはり、組織的に継続的に、国際的な機関との関係を図っていく取組が求められると思っております。これが第1点目です。
第2点目、2020の東京オリパラに対する、いわゆる法律家のプロボノ活動ですけれども、これについては実施をする予定でございまして、現在準備を進めております。具体的には、今までプロボノに協力をしてくれる先生方に対して、いろいろ研修会を実施して、そこで資質の向上を図ってきました。現在は、7月に迫った東京オリパラ2020を念頭に置きまして、いわゆるローテーションリストの作成でありますとか、手順の確認、それから場所など実際の活動の準備を組織委員会と連携を取りながら現在進めています。
自動応諾条項の海外との比較についてはオガワ専門員のほうから。
【オガワ(日本スポーツ仲裁機構)】 事務局のオガワと申します。よろしくお願いします。
カナダにおいては、連邦レベルについては、スポーツカナダという日本のスポーツ庁に該当する機関が、補助金支出の要件としてスポーツ仲裁の自動応諾条項を採択しないと補助金を出さないということになっています。また、アメリカにつきましては、代表選手選考につきまして連邦法がありまして、紛争についてはスポーツ仲裁を使うことが決められています。これは全てのスポーツということになります。また、オーストラリアでは、強化指定選手等のリストに上がるときに、競技者と競技団体、オーストラリアオリンピック委員会との契約の中に仲裁条項を入れてあるということです。ですので、全てのスポーツにおいて、スポーツ仲裁が利用できるようになっております。
以上です。ありがとうございます。
【髙杉(日本スポーツ仲裁機構)】 以上です。
【大日方部会長】 どうもありがとうございます。それでは、日本政策投資銀行様、よろしくお願いいたします。
【桂田(日本政策投資銀行)】 結城委員様、森岡委員様、御質問いただきましてありがとうございました。順番にお答えさせていただきたいと存じます。
まず、結城様から御質問いただきました飲食・宿泊業に近いダメージを受けているにもかかわらず、どうしてスポーツ業界というのは飲食・宿泊ほどの支援がない状況――私はそうだと思っていますが、そういう印象であるのかというところでいくと、政治力とかは脇に置くしかないんですが、一つスポーツ業界が飲食とか宿泊に比べると遅れている部分として、横串を刺したような統計情報の開示の仕方が弱いというところにあるのかなと思っています。
飲食とか宿泊業界は、経済産業省様とか各外食の業界団体から統計等の数字が出ておりますが、スポーツもフィットネス系の団体様とかは経済産業省のサービス動態統計とかがありますが、これが一体となってここのサイトから見れば分かるとかはありません。何せスポーツの各業界の皆様等も御自身のエリアの中でどういうことが起きているかを集めた統計、数字がないために、どうしてもコロナ禍のお願い等も主観的なお願いにならざるを得ないのではないかと思っております。なので、統計とか数字のエビデンスというところの整理を国様に今後御検討いただけたら幸いです。既にあるものを整えていただくということかなと思います。
二つ目が、売上げと収益率みたいな関係ですが、ここは結城様、申し訳ございません、私もヨーロッパとかをこれから調べなくてはいけませんが、逆から申し上げると、収益率が低い業界では、当然ながらそこで働かれる方のお給料も低くならざるを得ないと思います。これは仄聞でございますが、アメリカ等々でもやはりスポーツ産業に従事されている方というのは、同じ年齢の同じようなサラリーマン、ほかの業種に比べて給料が高いという認識はございませんが、海外の場合、上の肩書、部長級とかになっていくとスポーツ団体のお給料は劇的に跳ね上がると聞いたことがあります。
日本のスポーツ団体とかスポーツ組織の場合は、地位が上がってもあまり上がらなかったり、逆に申し上げにくいですが非常勤の方が多かったりするという印象が若干ありまして、海外の場合も決して収益率の高くはないかもしれませんが、恐らく日本よりは収益率が高く、かつその収益率から高い報酬を得られる幹部の方がおられるのであれば日本より夢があるかもしれないと推察しております。
三つ目の、結城委員と森岡委員の両名からいただきました社会的価値の定量化です。普遍的な社会的価値の出し方というのは、まだ世界的に整っていないと私は理解をしております。社会的価値があるだろうと思われる活動、例えば子供たちを喜ばせるスポーツ教室とか、そういう活動を何とか金銭価値化してサンプル的に集めながらエビデンスを集めていく。そのサンプルを今後増やしていくことによって、ある程度普遍的なエビデンスが集まってくると思っておりますので、当行自身としましてもここはエビデンス材料を集めて、何とか皆様を御説得できるような数字を出せるように考えていけばいいのかなと思っていますし、そこにおいては、またスポーツ庁様とも議論できればありがたいと弊行は考えています。
御提案ですけれども、最後にスポーツ産業の収益率の低さのもう一つの理由としましては、スポーツ産業に従事される事業には、ボランティアとか実証実験という類いのものがすごく多いと理解しております。もちろんこれは崇高ですし、やりがいがあるからこそ実証実験であり、ボランティアというものが発生していると思いますが、逆に言うと労働しても対価を得られない産業であるということの一つの証左であると思っておりまして、この点に関しましては今後こういうものが広がっていけばと思っておりますが、やはり得た成果に対してすぐお金をくださいというわけにはいかないと思いますが、国で最近PPP、PFIの分野で議論されているような、Social impact BondとかPay For Successという成果報酬連動型の補助金とか交付金、助成金が整備されてくれば、頑張っただけ得られる、でも最初からたくさんお金をもらえるような甘えたものにはなっていないという傾向が、今後スポーツ業界でも広まってくるべきではないかと思っている次第です。
以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございます。それでは、スポーツツーリズム推進機構、原田さん、お願いいたします。
【原田(日本スポーツツーリズム推進機構)】 私がもらった質問は二つですね。大塚委員と結城委員の質問にお答えします。
まず、スポーツコミッションは、今後地方自治体と連携を強めていかなければならないんですが、現時点でスポーツコミッションの大半がトップダウン、すなわち行政主導、もっと言えば首長主導でつくられたケースが非常に多くなっています。これが非常にいいのは、例えばイベントで道路の使用許可を取る場合、警察、消防、そういったものと密接に連携していますのでイベントをつくりやすいということです。ただし、今後、地域が100あれば100の課題をこれから解決していくということなので、多様なスポーツコミッションが出てくると思います。
先ほどの名古屋に加え、例えば札幌市は2030年の冬のオリンピック招致を目指してグローバルスポーツコミッションを立ち上げ、これから様々な国際イベントを誘致していこうという明確な目標を持ってやっています。あるいは、1人2人でやっている地域のスポーツコミッションもあるということなので、多様なコミッションがスポーツの未来を描き、自ら稼げるようなシステムをつくっていくというのが日本の将来にとっては重要かと思います。
二つ目の結城委員から御質問のあった社会的価値ということなんですが、これは非常に見える化が難しいし、無理に数値化する必要は全くないと私は考えています。今、スポーツマネジメント研究の中で、この社会的価値というのが一つのブームになっています。具体的に言うと、イベントをやった後、ソーシャルキャピタルが高まるとか、社会的連携が強まるとか、住民が誇りを持つとか、いろいろな成果が得られているわけですけれども、重要なのは長い期間その効果が得られると。よくレガシーと言われますけど、私的にはそのレガシーをレバレッジするような考え方を、イベントをする前につくろうということをよく言っています。それをやると、レガシーが今度はヘリテージになって、我々の生活の中に定着します。
よく最近取材を受けるんですけれども、2020年東京オリパラのレガシーというのは、今コロナのせいでリセット状態になっています。これは仕方ないですよね。ただ、レガシーは1回つくったら終わりではなく、再構築が十分に可能だと思います。どういったオリンピックなるか分かりません。無観客なのか、一部入れるのかどうか分かりませんけれども、でも片肺飛行になってしまったオリパラからも、レガシーをつくることは十分に可能です。それを我々は知恵を絞って考えなければならない。サステナビリティの高い社会をつくっていく、さらに例えば脱炭素みたいなカーボンフリーの社会をつくるために、どうスポーツイベントを描くかということも重要になります。
最後に、結城委員からありました日本のスポーツの利益率が低いというのは全くそのとおりです。要は最大公約数的なスポーツ振興しかやらないんですね。令和のスポーツ振興は多分付加価値をどうつくるかだと思います。その一つのキーワードがホスピタリティです。例えば、沖縄に今度できた8,000人のアリーナには、スカイボックスと言われるホスピタリティルームをたくさんつくっています。付加価値をつくって高額チケットを売るわけです。そういった仕組みが、公共団体主導でやってきたスポーツ振興の中では、まだまだ開拓の余地があるのかなと思いますので、付加価値をつくりながらスポーツ産業をさらに大きくしていく、そういう令和のスポーツ振興の戦略というのが必要になると考えています。
私からは以上です。
【大日方部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、こちらでKグループのヒアリングを終了いたします。各団体の皆様、大変遅い時間になってしまいまして申し訳ありません。また、マイクの調子が悪くて御迷惑をおかけしましたことをおわび申し上げます。
それでは、御退室をお願いいたします。どうもありがとうございました。
(グループK 退室)
【大日方部会長】 委員の皆様も大変お疲れさまでした。大幅に時間が超過してしまいまして、3回の中で最大の超過時間になってしまいました。皆様のおかげで、大変貴重な意見、そして意見交換ができたと思っております。時間がありませんので、皆さんの意見交換もできない状況ですけれども、今回資料の15としまして、全国体育系大学学長・学部長会様より書面提出で御意見を頂戴いたしております。後ほど御覧ください。
それでは、事務局より次回の日程につきまして御連絡をお願いいたします。
【事務局】 事務局です。次回の日程につきましては、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。また、本日の意見交換の中で、お時間の都合上、御質問いただけなかった内容につきましては、後ほど事務局より紹介をさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
【大日方部会長】 ありがとうございました。それでは、本日こちらで終了いたします。皆様、長時間にわたりまして、ありがとうございました。

―― 了 ――


また、会議後に委員の先生方から頂戴しました質問等及び質問等に対する各団体の回答につきまして、以下のとおり掲載させていただきます。

【池田委員】
①団体名:公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
アスリートの権利に関してIOCアスリート憲章や、Anti-Doping Athlete Right ACTなどに象徴されるように、アスリートの権利にまつわるものが出てくる時代となりました。そこで質問なのですが、国内外においてアスリートが権利の侵害など訴えるなど「アスリートの権利」に係る仲裁事例は起きていますでしょうか?ありましたら教えてください。そしてアスリートの権利に関し、仲裁機構ではどのように捉えていらっしゃるかご意見があれば教えてください

(回答)
スポーツ仲裁裁判所の仲裁事例では、競技団体の規則の適用がアスリートの人権を侵害するかという観点が争われた事例が出てきています。 (注1)
また、CASのスポーツ仲裁に関しては、欧州人権裁判所においてスポーツ仲裁手続きが「公正な裁判を受ける権利」との関係で争われた事例があります。 (注2)

当機構の過去の仲裁事例では、「アスリートの権利」が正面から争われたといえる事例はありませんが、中央競技団体の会員登録を無期に渡り認めない事とする処分の当否が争われた事例において、スポーツ仲裁パネルが、当該処分について「日本において当該スポーツを統轄・代表する団体については、当該団体に所属できるか否かが当該競技の活動を行うために事実上必須であることとの関係で、競技者の権利に十分な配慮がなされる必要がある。」と指摘したことがあります(JSAA-AP-2018-008,011号事案)。

当機構は、アスリートに対する処分の当否など個々の競技者と競技団体等との間の紛争の解決を行なっており、広い意味でアスリートの権利に関する仲裁や調停を行っていると考えています。

②団体名:公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
スポーツ仲裁自動応諾条項について、地方の体育協会・スポーツ協会において採択が進まない理由をどうお考えかお聞かせください。
(回答)
地方の体育協会・スポーツ協会においては、スポーツ仲裁・調停制度、スポーツ仲裁自動応諾条項の意義や内容に関する理解が進んでいないことがその要因として考えられます。
スポーツ仲裁自動応諾条項については、既にスポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>原則11でその意義や内容が説明されており 、当機構も7年以上前からスポーツ自動応諾条項のモデル規程等を公表しているなど 、スポーツ仲裁自動応諾条項の理解に至る上での資料を整えています。

また、日本スポーツ協会も県段階の体育協会・スポーツ協会については、中央競技団体向けのガバナンスコードに基づいた運営を行うよう指導していると承知しています。
したがって、県段階の体育協会・スポーツ協会の自動応諾条項の採択は、進んでいくと考えています。
さらに、今後は、県の体育協会・スポーツ協会と連携協力して、地方の競技団体や市町村の体育協会・スポーツ協会に対して、スポーツ仲裁自動応諾条項の意義や内容を理解するための取り組みを更に深め、自動応諾条項が採択されるよう働きかけていくことが重要だと考えています。

③団体名:公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
調停制度に関して、調停に申し立てをしたい人が、調停後に不利益を被ってしまう可能性を懸念して、利用しないことはありますか?
ご存知の通り、ドーピング通報窓口では「通報者の保護」がありますが、これは通報者が不利益を被らないようにするために定められています。
調停申立人とドーピング通報は同じではないですが、申立人が結果的に「訴えるだけ損」と申立を行わない可能性があるとお考えであれば、今後どのような対策が必要か教えてください。

(回答)
一般的な問題として、裁判の提起や仲裁・調停を申し立てることによって、他の場面における不利益を被る可能性を懸念して、これを利用しないことがあるとの指摘は既になされています。
確かに、ドーピング通報窓口と同様に、競技団体の規則中に、スポーツ仲裁機構に対し、仲裁若しくは調停申立てをしたことをもって、不利益に扱わないことを明確に規定することは一案と考えられます。
また、救済を求める権利は、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」25から31でも記載されている重要な人権であり、「報復の恐れ」という救済にアクセスする上での障壁は取り除かれるべきであるとされています(同原則31)。
加えて、日本スポーツ仲裁機構における不服申立ては、既にスポーツ団体ガバナンス・コード<中央競技団体向け>の原則11に記述があるとおり、わが国のスポーツ界で制度的に保障されているものです。
このような救済を求める権利の意義や、日本スポーツ仲裁機構の日本のスポーツ界における位置づけを踏まえて、日本スポーツ仲裁機構における不服申立てを利用したからといって、申立者の権利や利益に影響があってはならないという理解をすべての関係者が持つことが必要であり、競技団体の役職員、その他スポーツに携わるすべての者の間が共通認識とし持つように啓発活動を行っていくことが必要と考えています。


【大石委員】
①団体名:東京都
説明資料P28に示していただいた、①都民のスポーツ実施率を世界最高水準にの資料ですが、現在の世界最高水準はどのくらいでしょうか?また、今後どのように推移していくと予想されているのでしょうか?

(回答)
東京都が把握しているデータによれば、スポーツ実施率70%程度が世界最高水準と考えられます。
また、東京都としては、健康志向の高まりなど、今後スポーツ実施率は向上していくものと想定しています。

②団体名:東京都
開催について賛否両論ある中、こういったレガシーや万全な新型コロナ対策について、改めて周知する策は講じられていますでしょうか?(できれば国民の理解を深めるために早期に広く知らしめていただきたいのですが。)

(回答)
参考資料「未来の東京」戦略(p.42~56)において示した、レガシーや万全な新型コロナ対策について、今後も引き続き、様々な機会を捉えて丁寧な説明に努めてまいります。

③団体名:日本中学校体育連盟
競争する「大会」ではなく、「フェスティバル」や「発表会」のような交流に重きを置いた施策の事例があれば教えてください。

(回答)
日本中学校体育連盟は全国中学校体育大会を運営する組織ですので、基本的には「大会」となります。あえて言うのなら、毎年、5,000名の開催地生徒役員がこの大会に携わっており、全国から参加してくる選手との交流も全中大会の目的の一つになっています。

④団体名:日本中学校体育連盟
資金調達について、クラウドファンディングのような仕組みを検討されたことはありますか?

(回答)
本連盟としての仕組みについては、今後検討する価値があると考えております。令和3年度においては、8月開催の全中大会に向け、相撲とサッカーの2競技がクラウドファンディングを活用している状況です。相撲は、日本中学校体育連盟相撲競技部として、サッカーは、山梨県サッカー協会第3種委員会中体連として取り組んでいます。相撲は現在のところ詳細は不明ですが、サッカーは5月30日現在、支援総額1,939,500円、支援者100人となっています。

⑤団体名:日本学校体育研究連合会
中学校、高校において、生徒たちが自主的に活動する部活動を推進されている事例などがあれば教えてください。

(回答)
この度の第3期スポーツ基本計画策定に係る関係団体ヒアリングでは、たいへんお世話になりました。また弊会へのご質問をいただき、ありがとうございました。
いただいたご質問についてですが、あいにく弊会は、定款の定めるとおり、全国の幼稚園の健康領域、小学校、中学校、高等学校等の正課の保健体育授業に関する調査研究を行うことを目的とした団体であり、お尋ねの中学校及び高等学校等の運動部活動の研究調査を行っているわけではございません。先日のヒアリングにおける説明では、保健体育科教員の働き方改革、そして全ての生徒のスポーツ権を保障し豊かなスポーツライフの確立を目指すこととの兼ね合いから、運動部活動への期待について言及した次第です。
たいへん恐縮ですが、ご質問に関するより具体的な情報につきましては、日本中学校体育連盟、全国高等学校体育連盟、もしくはスポーツ庁学校体育室にお尋ねになられるのがよろしいのではないかと存じます。
以上、ご回答申し上げます。

⑥団体名:全国スポーツ推進委員連合
「みんなのスポーツ」や「スポーツ推進委員ハンドブック」が現在どのようなところにどのくらい頒布されているのか、また頒布を促すために講じられている策などがあれば教えてください。

(回答)
「みんなのスポーツ」は年に10号発刊している(1・2月号、8・9月号は合併号)。年間購入の販売方法を取っており、約7,500部契約購入されている。頒布促進の方法は、各種研修会にて告知している。歴史が長いので、多くの推進委員や行政担当者には認知されていると思う。

「スポーツ推進委員ハンドブック」(平成26年度版:過去2回の改定を行い現在3版目)は、約8,000部印刷して販売してきた。現在、在庫がなくなっているが、改訂版を作成中。販売促進は、「みんなのスポーツ」にて告知したり、各種研修会にて直接販売している。さらに、研修会のテキストとして使用するよう、全国の会長に依頼している。

その他に、毎年、スケジュール管理や基礎的情報を掲載した「スポーツ推進委員手帳」を販売している。市町村単位で購入し、推進委員に提供しているケースが多く、年間約22,000冊ほど購入されている。

【大塚委員】
①団体名:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
アクション&レガシーの部分におけるITデジタル活用(チケット購入のID登録データ・キャストID登録データなどの活用(非商業的)など)が参画してくれる国民や社会にスポーツ界からフイードバックされるような施策はないだろうか?

(回答)


②団体名:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
ジェンダー平等/多様性と調和の推進の部分の施策を示して頂き、具体的な活動が多岐に渡り素晴らしいと思いますが、今後の長期的な社会活動への貢献を考えると教育的な活動が足りないように感じます。JOCやJPCとのムーブメント推進活動の中でEDI教育などを取り組んで行くことがスポーツから社会への変革提案として必要ではないか?

(回答)


③団体名:東京都
スポーツフィールド東京戦略の中で「スポーツフィールド・TOKYO」プロジェクトにおける「国際大会誘致」の具体的な施策、「参加型スポーツイベントによりスポーツを身近」具体的な施策や競技種目などに関して中央競技団体(NF)との連携・企画参加等は可能ですか?(各NFも同様のプランにングを考えていますのでより連動が必要)

(回答)
「国際大会誘致」について、東京のスポーツ振興及び都市のプレゼンスの一層の向上を図るため、都内で国際スポーツ大会の開催を目指す団体に対し、誘致活動及び大会の開催を支援する事業を実施しています。
また、「参加型スポーツイベントによりスポーツを身近に」について、TOKYOウォーク、スポーツの日記念行事などをはじめとした都民が気軽に参加・観覧できるスポーツイベントを実施しています。
これらについて、競技団体との連携等を図ってまいります。

④団体名:東京都
「スポーツベニュー・レガシー」プロジェクトは、『東京2020大会に向けて都が新たに整備した競技施設をはじめ、スポーツ施設の新たな魅力を最大限発揮し、スポーツを中心に様々な目的で都民が集うことができる拠点として形成』と謳われていますが、恒久施設に限定されており、仮設施設など東京都や組織委員会が整備した会場も有効活用しなくては、真のレガシーとは言えません。(特にお台場海浜公園とお台場海域、潮風公園などは、複数のオリンピック・パラリンピックの競技種目が開催されており、今後の国際大会の誘致や身近なスポーツエリアにも繋がります。)新しい東京の魅力発信(パラスポーツ・シティにも)となると考えられます。再度、仮設競技会場を対象に盛り込むことを検討ください。

(回答)
東京の各地域にスポーツを核とした新たな価値や魅力にあふれるエリアの創出を目指して、東京2020大会の競技会場等の活用や多様な主体との連携等を進めてまいります。

⑤団体名:東京都
「スポーツ・ウェルネス・シティ」プロジェクトを有明エリアだけでなく、葛西臨海公園・お台場海浜公園・潮風公園・海の森市場競技場などの各エリアも対象にすることが出来ないか?(より効果を求められることから段階的にも検討できないか?)
オリンピック・パラリンピックレガシー戦略において、「大会の感動を生んだ競技会場を、都民に愛されるスポーツやエンターテインメントのシンボルに」プロジェクトも前記同様に仮設競技会場もその対象に出来ないか?

(回答)
東京の各地域にスポーツを核とした新たな価値や魅力にあふれるエリアの創出を目指して、東京2020大会の競技会場等の活用や多様な主体との連携等を進めてまいります。

⑦団体名:株式会社日本政策投資銀行
新たな財務の角度からのスポーツ産業の分析が示されていますが、スポーツを成長産業にする場合のスポーツコンテンツビジネス成長で参加型スポーツの成長性が期待できると思いますが、いかがでしょうか?また他に期待できるスポーツビジネスがあるかどうか?(スタジアムなどの有形ではなく、無形財産ビジネスなどで)

(回答)
大塚様、ご質問下さいましてありがとうございました。
コロナ禍の現状下、「観るスポーツ」から「するスポーツ」へとスポーツコンテンツの世の中の関心が少々すると考えております。
従いまして参加型スポーツ、特に個人で出来るスポーツ(ウォーキング、ヨガ、ランニング等)やアウトドア型スポーツにチャンスがあるのではないかと考えております。
その他では、自宅からオンラインで参加できるスポーツビジネスにもチャンスがあると思っております。

【藤田委員】
①団体名:東京都
「戦略19 オリンピック・パラリンピックレガシー戦略 主な取り組み」のうち、障害の有無にかかわらず、パラスポーツを楽しむための取組の推進の中にパラスポーツをできる場の確保という項目がありますが、具体的にどのような施策を考えておられるのでしょうか?

(回答)
東京都では、現在、身近な場所でスポーツ・運動が楽しめるよう、都立特別支援学校の体育施設活用、施設のバリアフリーに関する情報やソフト面で工夫をして障害者の施設利用を進める対応事例の発信のほか、区市町村が実施する障害者等が参加するスポーツの取組への財政支援を行っています。
今後、区市町村が地域のスポーツ・医療・福祉・教育分野等の機関と連携して取り組む障害者スポーツ事業を後押しするほか、東京スタジアム内の室内施設をパラスポーツ練習拠点として活用する検討を行っていきます。

②団体名:東京都
地方では施設の管理や教員の勤務形態等の関係で学校側の協力が得られにくく、特別支援学校の体育施設の貸し出しがうまく進んでいないところもあるようです。東京都では特別支援学校体育施設の貸し出しに際し、工夫をされているのでしょうか?

(回答)
東京都では、平成28年度から、都立特別支援学校の体育施設を、学校教育活動に支障のない範囲で貸し出す事業を、事業所管のオリンピック・パラリンピック準備局と教育財産を管理する教育委員会が連携して実施しています。
具体的には、体育施設の利用受付や安全管理など施設貸出に係る業務はオリンピック・パラリンピック準備局が実施しており、できる限り学校側の負担を減らした事業運営とすることで、体育施設活用に向けて学校の協力が得やすい仕組みとしています。


以上
 

お問合せ先

スポーツ庁政策課