資料3 中間まとめ骨子案

スポーツ国際戦略中間まとめ骨子(案) 2018年1月29日


1. 「スポーツ国際戦略」を策定する意義:
   平成29年3月、「第2期スポーツ基本計画」が策定された。本計画に基づいて、今後、その中の基本方針の一つである「スポーツで世界とつながる」の一環として、スポーツの国際交流・国際協力についても戦略的に展開することとされている。具体的には、「スポーツに係る国際的動向を国内施策へ還元すること」と、「国内のスポーツに関する取組事例を国際社会へ紹介すること」、つまり総称して「スポーツの国際展開」を実施することによって、「世界とつながる」ことの達成を掲げている。
   我が国は、今後、2019ラグビーワールドカップや2020東京オリンピック・パラリンピック大会等、数年間で多くの国際競技大会を控え、スポーツ分野での国際的プレゼンスを向上する上で、またとない絶好の機会を迎える。
   この絶好の機会において、スポーツの国際展開を進めるにあたって、現在、スポーツ庁をはじめとした中央省庁や、スポーツ関係団体、競技団体、また地方公共団体等は、それぞれの目的に基づいて活動している状態にあるが、限られた時間の中で人的資源・物的資源・金銭的資源を効率的・効果的に活用するためには、関係機関間での連携が不可欠である。それぞれの関係機関が自律的に活動する際に、合意された方針に沿って連携しながら活動することで、団体の自律性を尊重しつつ、日本として一貫性のある施策を打ち出すことができる。これが、本戦略を策定する理由である。

2. スポーツ国際戦略の主なビジョン:
   我が国は、人口減少期でありかつ少子高齢化社会の中で、「高齢化社会における健康長寿」・「人口減少期におけるソーシャル・キャピタルとヒューマン・キャピタルの向上」・「成熟社会における経済振興及び地方活性化」・「国際社会におけるプレゼンスの向上」等の諸課題を抱えている。
これら諸課題の解決に向けて、第2期スポーツ基本計画の「世界とつながる」というコンセプトにおいては、スポーツの力を活用して、「多様性を尊重する社会」、「持続可能で逆境に強い社会」及び「クリーンでフェアな社会」を実現することが提示されている。これら3つの方向性は、平成29年7月のユネスコのスポーツ大臣会合(通称「MINEPS・Ⅵ」)の成果文書である「カザン行動計画」の方向性とも合致している。
   この3つの方向性の実現に関し、第2期スポーツ基本計画では「『スポーツ参画人口』を拡大し、他分野との連携・協力により『一億総スポーツ社会』の実現に取組む」と掲げられている。このため、今回のスポーツ国際戦略に基づくスポーツの国際展開においては、この3つの方向性の実現に向けて、「人々の社会参画や社会的連帯を強化すること」及び「個々人の健康増進と能力開発等に貢献すること」を通じて貢献していくことをビジョンとしたい。

   このビジョンの実現に向けて、短期的には、「2021年までに第2期スポーツ基本計画に掲げるビジョンと施策の達成を図ること」を目指すとともに、中長期的には、「2030年までに国際連合の「持続可能な開発目標」(以下「SDGs」)に掲げる社会課題の解決に対してスポーツが貢献していくこと」を目指すこととしたい。

3. スポーツ国際戦略のミッション:
   スポーツ基本法においては、スポーツの国際展開を通じて、1 国際的な地位の向上、2 国際相互理解の増進及び3 国際平和への貢献等を図ることを目的(=「国際的目的」)とするとともに、スポーツを通じた1 国民の心身の健全な発達、2 健康長寿社会及びバリアフリーの実現等の明るく豊かな国民生活の形成、3 地方創生・地域社会の再生への寄与、4 経済発展等を通じた活力ある社会の実現及び5 国際的競技力の向上等を図ることをも目的(=「国内的な目的」)としている。

   スポーツ国際戦略のミッションとしては、「スポーツの国際展開」の実行において、単に国際的な目的の達成を図るのみならず、国内的な目的の達成にも貢献するため、1 国際的な側面と国内的な側面との効果的な連携・接続を図るための具体的な方策を特定化すること、2 限られたリソースを効率的かつ効果的に投入するためのターゲットの明確化を行うこと、及び3 関係団体がそれぞれの活動を行う上で共有すべき「(日本としての)共通のメッセージ」を設けることが必要である。

4. スポーツ国際戦略のミッション達成に向けた基盤整備:

   上記のビジョン及びミッションの達成に向けて、本戦略では、以下の5つの観点で具体的方策を実施する上での基盤整備を行うこととしたい。


(1)スポーツの国際展開における共通のメッセージ・スローガン:
   国際社会において日本が打ち出したい強み(例:規律、他者への尊重、礼儀、ルール順守、団体活動への参画等)の特定化を行い、その言葉を国際的にも通用するような形にする(例:「SDGsへの貢献」)とともに、誰にでもビジョンが理解しやすい端的なスローガン(例:「Sport for Tomorrow」等)を掲げることが必要。そのスローガンの下で、それぞれの関係団体の活動が「チーム・ジャパン」として一体感のあるメッセージとなる工夫が必要。

(2)国際スポーツ界への積極的な参画とそれを促す仕組み:
 国際的な動向を把握し国内に還元するためにも、我が国の好事例を世界に共有し国際的プレゼンスを向上させるためにも、様々な段階でのスポーツの国際会議等の国際コミュニティに積極的に参画し、又は自ら開催し、国際的なスポーツ政策の策定に貢献する必要がある。
その一環で、スポーツの国際コミュニティにおいて有力なポストを獲得するとともに、国際競技団体等の国際機関に日本人役員・スタッフをより多く派遣することで、国際スポーツ界の意思決定に積極的に参画する必要がある。
また、スポーツに関する国際会議や国際競技大会等の招致や開催支援を戦略的に行い、他分野にその開催効果が波及するような工夫行うことも重要である。

(3)国内外のネットワークの構築:
スポーツに関係する省庁・地方自治体・スポーツ関係団体間のネットワークを構築し、それぞれの活動について相互に情報共有し連携することで、限られたリソースの中で、効率的かつ効果的な業務遂行を図ることができる。 
加えて、国がイニシアティブを取って、スポーツに関する国際機関や諸外国のスポーツ担当省庁等とのネットワークを構築し、国際的動向について把握・展開する必要がある。
また、我が国はこれまで多くの国とスポーツに係る2国間覚書を締結してきたが、今後はより一層計画的・戦略的に締結することが必要である。

(4)スポーツの国際展開のための体制整備と人材育成:
  現在、国内関係機関では、スポーツの国際展開に対応できる体制が十分に整っていない上に、国としてもスポーツに関する海外拠点も少ない状況であるが、限られたリソースの中では、「量的拡大」の方向での対応策は限界がある。このため、スポーツの国際展開に関係する機関の既存の枠組みや海外拠点等のリソースを活用して、スポーツの国際的潮流を国内の諸施策に反映したり、国内の好事例を国際的に展開したりするための環境整備(*海外拠点の整備や情報収集・共有のプラットフォーム等)が必要である。
加えて、中長期的な視野で計画的かつ意識的にスポーツに係る国際的業務に対応できる人材を育成していくこともまた重要である。

(5)スポーツの国際展開の効果の他分野への拡大に向けた対話枠組み:
  スポーツの国際展開の効果を、社会発展・開発、経済活性化又は地域振興等の多様な分野に拡大するような仕組みを意識的に設定するとともに、そのための関係者の特定と具体的なプロジェクト形成に向けた対話枠組みを構築する必要がある。

5. 具体的方策を実施する際の工夫・取組:

   今後、スポーツの国際展開をするための具体的方策を実施する上で、以下のとおり、1 ターゲットの特定化、2 事業の継続性の確保、3 多様な関係者の特定化と連携、4 対象者のニーズ把握と現地関係者との対話枠組みの構築、5 指標作り・評価活動を含むモニタリングと評価枠組みの設定、6 スポーツ国際展開の価値の拡大等について、留意する必要がある。

(1)「ターゲット及び日本の強み(=セールスポイント)の特定化」:
   以下のように、限られたリソースの効率的かつ効果的な活用に向けて、「スポーツ国際戦略におけるターゲット」を特定化する必要がある。
【論点】
・地域的なターゲットの設定
・戦略的な2国間交流の仕掛け(例:仏、露、印等)
・スケジュール的なターゲットの設定
・ターゲット競技の設定:(例:武道、ウィンタースポーツ、パラスポーツ等)
・オリンピックソリダリティの動きとの連携

(2)「事業の継続性の確保」:
   国際的プレゼンスを維持しつつ信頼性を損なわないためには、事業の継続性を確保が必要不可欠。一方、官の限られたリソースにおいて事業の継続性を確保することは困難な場合が多く、民の活力を活用した事業の持続性の確保に向けた連携が不可欠である。そのためにも、スポーツの国際展開の価値を他分野にも拡大し、民間企業等の関与を促すようなインセンティブの設定とビジネスモデルを構築する必要がある。
 【論点】
・民間活力の活用に向けたインセンティブの創出とビジネスモデルの構築
 ・ポストSFT事業の検討

(3)「多様な関係者の特定化と連携」:
   スポーツの国際展開の具体的な活動においては、政府機関・独立行政法人・スポーツ関係団体・地方公共団体のほかに、民間企業、NGO、大学、学会等の多様な関係機関が関与しうるものであり、それらを特定化し、スポーツ国際戦略の拡大が図れるような連携の構築とそのためのネットワークの構築が必要である。
 【論点】
・SFTコンソーシアムにおける多様な関係者のネットワークの維持
・JSCの「ジャパン・スポーツ・ネットワーク」の活用
・スポーツのネットワークの他分野(外交、産業振興、地方振興等)との連携

(4)「スポーツの国際展開の事業対象者のニーズ把握と協働」:
   効果的な事業実施のためには、海外の現地関係者や地方自治体関係者等を含めたスポーツの国際展開における事業対象者のニーズ把握、スポーツ国際戦略の関係者・団体の持っているリソースとのマッチング、及び現地コミュニティやNGOや現地の日系法人・企業等との協働が必要であり、そのための対話枠組みの構築が必要である。
【論点】
 ・在外公館、現地関係機関、国際NGO、政府機関等からのニーズ把握
 ・関係者間の対話枠組みの創設
 ・双方向的な交流プログラムの創設
 
(5)中長期での計画的な人材育成の推進:
   スポーツ国際戦略の海外で行う活動においては、事業対象となる人々の人材育成の仕組み作りを意識した活動が必要である。
【論点】
 ・計画的な人材育成プログラムの検討
 ・国際NGO等との連携
 ・大学及びスポーツ・アカデミーとの連携(*学位プログラムとの連携)

(6)指標作り・評価活動を含むモニタリングと成果評価の枠組み構築:
   スポーツ国際戦略の活動が、ビジョンの達成にどのくらい効果があったのかについて、その成果をモニタリングし、評価するための指標作りや評価活動のための枠組みの構築が必要である。
【これまで出た意見】
【論点】
・KPIの設定
・PCM手法やPDM手法等の検討

(7)スポーツ国際戦略の実施に必要な基盤形成:
   以上の留意点に加え、スポーツ国際戦略の諸活動を下支えするため、限られたリソースであることを念頭に置きつつ、ソフト・ハード両面の基盤整備が必要である。
【論点】
 ・「スポーツ国際戦略連絡会議」(中央レベルの関係機関ネットワーク)の活用
・スポーツに関する海外拠点の整備・拡充(JSCの海外拠点の充実・強化はもとより、NFで共同利用できる海外拠点の設置の検討)
・スポーツの国際展開に係る研究活動の促進(他国の国際戦略の情報等)
・最先端のスポーツ科学やデジタルデータの活用・分析
・スポーツ団体のガバナンス強化
・スポーツ国際戦略に係る諸活動の広報活動

(以上)

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