2024年7月25日(木曜日)13時30分~15時30分
文部科学省3F1特別会議室 及び WEB会議(Zoomを使用)
スポーツ審議会 健康スポーツ部会(第28回)
2024年7月25日
【渡邉部会長】 皆様、こんにちは。お暑い中、御参列いただきましてありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから第28回スポーツ審議会健康スポーツ部会を開催いたします。皆様、お忙しいところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、14名の委員の方々に御出席いただいております。
なお、勝目委員、塩野委員におかれましては、都合により欠席されております。
スポーツ審議会令第6条第1項及び第3項におきまして、本部会の開催及び議決に当たりましては、委員の過半数の出席が求められております。本日は14名の出席ということで、定数を満たしており、開催とさせていただきます。
スポーツ庁におきましては、7月に人事異動がございました。それぞれ御紹介させていただきたいと思います。スポーツ庁次長として、寺門スポーツ庁次長が御着任いたしました。
【寺門スポーツ庁次長】 寺門でございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】 そして、健康スポーツ課長として、中村課長が就任されております。
【中村健康スポーツ課長】 中村と申します。どうぞよろしくお願いします。
【渡邉部会長】 一言ずつ御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いします。
【寺門スポーツ庁次長】 ただいま御紹介いただきました寺門と申します。
本日は、お忙しい中、部会に御出席賜りまして、誠にありがとうございます。
7月11日付でスポーツ庁次長に着任いたしましたので、この場をお借りして御挨拶させていただきます。
当部会におきましては、スポーツを通じた健康の増進、共生社会の実現、さらには国民の皆様のライフパフォーマンス向上を目指して、熱心に御討議を賜っていると承知してございます。
人生100年時代におきまして、アスリートから得られたスポーツ科学の知見を国全体に普及いたしまして、国民一人一人がスポーツを通じて心身共に健康になることは、大変に重要だと認識してございます。
引き続き委員各位におかれましては、今後とも当庁の施策において御知見・御助言を賜われればと存じますので、御協力のほどどうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。続いて、中村課長、よろしくお願いします。
【中村健康スポーツ課長】 御紹介いただきました中村と申します。7月5日付でスポーツ庁に参りまして、前職は厚生労働省におりました。
この部会は、今後高齢化が進んでいく中で、スポーツをいかに国民に広めていくかということで、委員の皆様方にもお知恵をいただきながら、今後の政策を議論していく場だと理解しておりますので、非常に重要な御検討をいただいているところだと思います。今後とも御協力いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
そのほか、スポーツ庁からは、室伏長官、今村健康スポーツ課障害者スポーツ振興室長に御出席いただいております。さらに、オブザーバーといたしまして、厚生労働省健康生活衛生局健康課からもWEBで御出席いただいております。ありがとうございます。
傍聴に関しましては、一般の方についてはYouTubeでのライブ配信とさせていただいておりますので、御承知おきください。
開催に当たりまして、事務局より諸連絡及び配付資料の確認をお願いいたします。
【中村健康スポーツ課長】 まず、事務的な御連絡をさせていただきます。
今回は、前回と同様に、対面とZoomのハイブリッド開催とさせていただいております。
本日は、対面の御出席者として、渡邉部会長、久野部会長代理、岩田委員、小松原委員、佐々木委員、津下委員、豊岡委員、藤田委員、宮脇委員の9名となっておりまして、他の御出席いただいている委員の方々は、オンラインとなっております。
もしオンライン参加の委員から資料共有等の御希望がございましたら、Zoomの共有機能にてお願いしたいと思います。御不明な点があれば、事務局に御連絡いただければと思います。それから、途中で御退席される場合には、Zoomのチャットにその旨お知らせいただいて御退席いただきますよう、よろしくお願いいたします。
続きまして、資料の確認となります。お手元に議事次第があると思いますけれども、そちらを御覧いただければと思います。本日の議題は4つ用意しておりまして、「障害者スポーツ振興ワーキンググループ最終報告書について」、「「Sport in Lifeガイドブック」の活用について」、「ライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの推進について」、最後に「スポーツを通じた健康増進に係る施策の動向について」ということで、資料は、資料番号1番から6番まで用意させていただいております。それに加えて、参考資料として1から5まで用意させていただいておりますけれど、もし不足などがございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。よろしくお願いします。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
それでは、議事に移りたいと思います。
議題(1)「障害者スポーツ振興ワーキンググループ最終報告書について」、主査を務めていただいております藤田委員より、御報告いただきたいと思います。
【藤田委員】 では、私、藤田より御報告を申し上げたいと思います。
資料1が報告書の概要、資料2が本体になっておりますが、今日は資料1を使って御説明、御報告したいと思います。
令和4年より11回にわたって会議を持ちました。今回、最終報告ということになります。
本ワーキンググループで目指したところという前提が2つございまして、1つは、自律的で持続的な障害者スポーツの推進ができること、それからもう1つが、障害のある方が身近な施設でスポーツをやりたいときにできるようにすると。そういった理念がございまして、そこを目指して何をすべきかというところで討論してまいりました。
3つの柱がございまして、1つが、障害者スポーツセンターの在り方。2つ目に、障害者スポーツを支える人材の在り方。3つ目が、障害者スポーツ団体の他団体や民間企業等との連携を含めた組織基盤強化ということになりますが、1番については中間報告で御報告申し上げております。本日は2番と3番について御報告する形になります。
まず、障害者スポーツを支える人材の在り方についてですけれども、ここは、地方公共団体や都道府県障害者スポーツ協会など様々な主体が関わる障害者スポーツを支える人の活躍の場をつくっていくことが必要だということになっております。
障害者スポーツセンター機能を基盤とした、障害者スポーツ指導者とスポーツ指導者を必要としている場とのマッチングの実施によるネットワークづくり、こういったことをやっていかなくてはいけないと。
それから、障害者スポーツコーディネーターですね。組織があっても、それをつなぐ方がいないとなかなか事業は展開できないということで、そういったコーディネーターのモデル事例を横展開して、人材育成につなげていくということが出されております。
2つ目として、障害者スポーツ指導者の資質向上に向けた研修機会の拡充ということです。現在、日本パラスポーツ協会のパラスポーツ指導員の養成はほぼ対面でやっております関係で、取りたいけれどもなかなか時間がとれないという方が多くいて、量的な増大ということが難しい状況にございます。そこで、オンライン化であるとかオンデマンド化などを利用して、広く受講しやすい環境を整備していく必要があるということ。
それからもう1つが、障害者スポーツセンターの若手職員向けの研修会であるとか情報交換会を開催していく必要があるということが報告されております。
大きな柱の2つ目として、障害者スポーツ団体の基盤強化についてです。
1つ目が、マル1、他団体との連携の取組の促進ということになります。既にある各種連携事例を広く横展開するとともに、連携に当たっての阻害要因を分析して、解決に向けた支援方策について検討するべきだということが出されております。
また、民間企業との連携の更なる促進ということで、単にお金を出してもらう、お金を出す側、出される側、受ける側という関係ではなく、民間企業と共通する社会課題を見極めて、その社会課題を解決していく、共に歩んでいくことを支援したりするような仕組みづくりが必要だという意見が出されております。
さらに、障害者スポーツ団体の基盤強化の促進ということで、登録者数が非常に少ないものですから、その中でリーダーシップをとれるような方をつくっていくというのはなかなか難しいところがあります。そこで、民間企業からの出向者の派遣であるとか、障害者スポーツ団体側の受け入れを促進していく、そういった仕組みを検討すべきではないかという意見が出されております。
最後、スポーツの振興体制についてということで、スポーツを通じた共生社会を実現するという目標の達成に向けて、スポーツ振興の当事者たる国、地方公共団体、そしてスポーツ統括団体等においても、それにふさわしい組織体であることが望まれると。一体的な取組が今後ますます重要になっていくということが出されております。
以上、簡単ではございますが、報告の概要と説明とさせていただきたいと思います。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
質疑については追って行いたいと思いますが、なお、同ワーキンググループメンバーに遠藤委員も御参画いただいておりましたが、遠藤委員、一言、補足的なコメントをいただければと思います。お願いします。
【遠藤委員】 遠藤です。本ワーキンググループに参加させていただきました。
障害者スポーツの専門や関係の皆さんの多岐にわたる御意見を、藤田委員はじめ、皆さんにおまとめいただきまして、本当にありがとうございました。
この報告書は、障害者スポーツの専門の皆さんの御意見がぎゅっと詰まったものでございます。課題も含めて、将来的な展開、こうしたほうがいいなというものも詰まっておりますので、そうしたことが広く一般のスポーツの中に溶け込んでいって、必要なものが盛り込まれて、障害のある方のスポーツ環境が広がるといいなという思いが込められているものでございます。ぜひいろいろな方に御活用いただければなと思います。
おまとめいただきましたスポーツ庁の皆様、本当にありがとうございました。
以上です。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
非常に簡潔に藤田委員からも御説明いただきましたけれども、資料が届いたのもまだ昨日だったんですかね。皆さん、あまり読み込んでいないかもしれないんですが、実際に今の御発表、それから読み込みを通じまして、御質問なり御意見なりございましたら、挙手の上、発言いただきたいと思います。
なお、オンラインで参加されている方もいらっしゃいますので、リアクションボタンから「手を挙げる」ボタンを押していただきますようにお願いします。また、発言が終わりましたら、リアクションボタンから「手を降ろす」ボタンを押していただくようにお願い申し上げます。
皆様、いかがでしょうか。
もし質疑の前に今村室長から補足的なところがあれば、よろしいですか。お願いします。
【今村障害者スポーツ振興室長】 担当室長といたしましては、この提言で示された内容、簡単にできるものもあれば、チャレンジングなものもいろいろございまして、1つでも着実に実行し、社会によい影響を与えられるように、今後、注力してまいりたいと思います。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
それでは、委員の皆様、よろしくお願いします。津下委員、お願いします。
【津下委員】 ありがとうございます。障害者スポーツについては、非常に重要なことと思われながらも、医師とか理学療法士、そういう医療関係者からスポーツを勧められて、スポーツに入られる障害者の方が多いというようなデータはありますけれども、実際にパラスポーツに直接関わっている医師は非常に少ない状況にあります。
健康スポーツ医とかスポーツドクターの中でも、パラスポーツに関与しているドクターは非常に少ないので、今回、このワーキンググループ最終報告書を拝見して、どういうところに受け入れてもらえるか、どういう方をどういうところにつなげていけばいいのか、などが医療関係者にも明確にわかるようになるとよいと思いました。医療職は運動したほうがいいよとは言えるんですけど、その先の具体的な紹介先を知らないことが多いし、何をしたらいいかというところまでつながらなくて、言うだけになっているのが実態だと思います。地域の関係者の中にはパラスポーツ医とか医療専門職の話が出ておりますけれども、そこへの普及や、具体的な情報提供をしていただきますよう、引き続きよろしくお願いしたいです。以上です。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
対象者となる方が実施できるパスをどうやってつくっていくかというようなお話だったかと思いますが、ほかの皆様、いかがでしょうか。豊岡委員、お願いします。
【豊岡委員】 お世話になります。ちょっと詳しく読んでないんですけども、もう1回確認させていただければと思いますが、障害者スポーツを何のために振興するのかというところがどこかに書かれていいらっしゃるでしょうかということです。
パラリンピックに出るようなパラスポーツの分野もありますけれども、一般的に障害をお持ちの方というのは大変多いわけでございます。そういう方たちになぜスポーツをやってもらうことが大切なのかということがどの辺に書かれていらっしゃるのかなということを教えていただければと思います。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。藤田委員、いかがでしょう。
【藤田委員】 ありがとうございます。スポーツをやる意義であるとか価値とかというのは、障害があろうとなかろうと、基本、同じなんですね。ただ、障害のある方というのは、なかなか情報がなかったりとか、それからどこに行っていいか分からないとか、そういった状況にある方が非常に多いということで、そういった課題を解決して、障害があろうとなかろうと、皆さんいつでもどこでもスポーツできるようにというところが、この報告書が目指したところです。
それから、先ほど津下委員から出された、医療関係者とのということなんですけども、まさにそのとおりで、個人情報の問題もあって、障害のある方が医療を受けて、その後、その方に情報提供と思うとなかなか難しいところがあるんですが、そこをコーディネーターの方なんかがキャリアをパスしていくということができればなと考えて、この報告書の中で表現させていただいております。以上です。
【豊岡委員】 ありがとうございます。私どもとしては、もちろんパラリンピックに出るような、候補になるような選手もいないわけではございませんけども、一般的には幅広く障害者、障害をお持ちの方たちがいらっしゃいますので、それに加えて御高齢の方たちもたくさんいるわけですね。ですから、そうした障害等の方たちに楽しく暮らしていただきたい、それから健康に暮らしていただきたいという観点で、障害者スポーツの様々な取組を行っているところでございます。
例えばA型の作業所にいて、一生懸命働いて、工賃が1か月に3万円にもいかないぐらいのところでもって働いている人たちは大勢いるわけですね。そういう方たちも、それだけでは全く生きていても楽しくないわけでございますから、障害者スポーツに取り組んでもらって、楽しく暮らしていただいたり、もう一方では、そうした働き方をしながらも健康でいていただきたいという、そのようなことを考えながら私どもの市では障害者スポーツの振興に取り組んでいるところでございますので、また御指導いただければ幸いでございます。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
大きくは、スポーツ権、するためのスポーツ権の話もされたと思いますし、あとは障害の有無に関わらずQOLを向上する、今、市長がおっしゃったように、それがWell-beingにつながるというところの視点で多分まとめてくださっているのかなと認識しておりました。
そのほかの皆様、いかがでしょうか。久野委員、お願いします。
【久野部会長代理】 筑波大の久野でございます。
取りまとめ、御苦労さまでした。先ほど藤田委員より、11回という大変多くの会議でまとめられたこと、本当に敬意を表したいと思いました。
1点、もうきれいにきちんとまとめられている中でどこまで追加が可能なのか、あるいは、多分このタイミングでこれがまとまっていくということは、来年度の概算要求にどのようなものを入れ込んでいくのかという観点で考えさせていただく中で、私の一つの研究テーマで、健康まちづくりというのを10年前から進めている中で、障害者の課題で、10年前ヨーロッパを見に行ったときに、車椅子の方が1人で公共交通のバスに乗れる体制がもうできているんですね。
今年6月にアメリカで同様の施設に行ったときARTやバスに関しても、基本的に車椅子の方が1人でバスに乗れるという話を伺いました。じゃあ、今、日本はどうかというと、地下鉄では駅員の方が渡し板か何か持ってくるし、私が大学に行くとき、バスがあるのですけど、大体いつも1人、車椅子の方が乗られるんですが、運転士さんが降りてきて、スロープを出して、入れるという。だから、どうしても停車時間が長くなるんですね、通常よりは。
その方はバス停まで1人で来られているんですが、バスにはアシストがないと乗れない、また、降りるときも同じ作業がある。やっぱり自由に生活をするという観点の中で、9ページになるんですかね、2番目、地域における障害者スポーツ振興について、障害者スポーツ振興の目指すものというところでしっかりと「どこでも、誰もがスポーツを気軽に楽しめる環境を整備することは重要である。そのためにすべての人が身近なところでスポーツを実施できる環境が必要である」というふうにきちんと示されているんですが、どちらかというと施設の話にというふうに読まれてしまうリスクがあるかなと。せっかく施設があっても、そこに行くのに誰かについていってもらわなきゃいけないという移動の問題があると制限されますし、あるいは、タクシーとか使わなきゃいけないとなるとコストがかかるので、回数が少なくなる。といった移動の問題に関しては、国土交通省の交通部門との連携がないと、スポーツ庁だけでは動かせない部分だと認識しているので、その辺りの政策連携のような方向性が少し入るといいなという感想を持ちました。
あと個人的に、数か月前国交省の交通部門のところからヒアリングを受けた際、今、国交省では公共交通基本計画の見直しをしていて、今年度かけて取りまとめるというふうに聞きました。ぜひ、国交省の基本計画の中にそういう方向性を入れ込んでもらえると、スポーツ庁だけじゃ進まないところが動く可能性もあるのかなと思いました。以上です。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。そのほかの皆様、いかがでしょうか。松永委員、お願いします。
【松永委員】 松永です。今、久野委員がおっしゃったことと少し関連しますが、アクセスビリティーというところで、「する」スポーツだけではなくて、「みる」スポーツについても重要になると思います。6ページの障害者スポーツ振興のところにも「する」「みる」ということで、全く触れていただいていないわけではないのですけれども、障害者の方がスポーツに関わる第一歩としてまず「みる」ことからきっかけを得てスポーツをするということを考えると、「みる」スポーツというところの様々なハード・ソフトの整備が重要になってくると思っています。
まだすべてを読み込めていないのですが、「する」スポーツがもちろん中心になることは全く否定するものではないのですが、「みる」スポーツというところでも、今後また次の段階のところで、アクセスビリティーを含め、検討していただきたいと思います。例えば車椅子一つとっても、昨年度1年間、京セラドームにて車いすエリアの調査をさせていただきましたが、プロ野球観戦者の電動車椅子ユーザーの割合がかなり増えてきていることが分かりました。加えて、例えばセンサリールームなど、日本でも少しずつ増えてきてはいますが、まだまだ諸外国に比べると、多様な障害に寄り添った施設整備や法の整備なども含めて遅れていると感じております。
「みる」スポーツというところについても、今後またさらに課題解決に向けて、検討を深めていただけるとありがたいと思いました。
今回は、委員の皆様に取りまとめをしていただいて、「する」という視点を中心に議論していただき、まとめていただいた内容については深く感謝いたします。
以上です。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。今村室長、お願いします。
【今村障害者スポーツ振興室長】 スポーツ庁から、今回のワーキングの報告書の位置づけといいましょうか、まずそのことを御説明しなければいけないなと思いました。
今回、藤田委員に御報告いただきましたが、スポーツ庁では、障害者スポーツの振興に当たって、いろいろな論点や課題というのはたくさんあるもののうち、特に地域の拠点となる障害者スポーツセンターの在り方について、それから人材、スポーツ振興の主体となる団体の基盤強化、この3点に絞って課題やあるべき施策の方向性を深掘りしていただきたいということでワーキングにお願いをし、今回取りまとめていただいたというものでございます。
他方で、今、委員の皆様から、交通の問題、アクセシビリティーの問題、それから施設、「みる」スポーツで、スタジアム、アリーナ等において備えるべき設備等の問題について御指摘いただきまして、それは、例えばスポーツ基本計画では網羅的に施策をまとめているところで、当然そこには「みる」スポーツの観点も入ってございますので、あくまでも今回の提言にはそういった視点はございませんが、他方で御指摘はごもっともでございますので、また3期計画で示された中にも当然含まれている問題でございますので、引き続きその点については、国交省はじめ、関係省庁とも連携をして、課題の解消に努めてまいりたいと思います。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
松永委員、御理解いただけましたでしょうか、今の説明。
【松永委員】 はい。そうであろうと思っていました。次の段階で、ぜひよろしくお願いいたします。丁寧に御説明いただきありがとうございました。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
それでは、一旦、議題(1)についてはこれにて終了させていただきます。
続きまして、議題(2)「「Sport in Lifeガイドブック」の活用について」に移りたいと思います。
こちらについては、前回の部会におきましても周知方法等御説明いただきましたけども、今回はガイドブックの周知状況に関しまして、事務局より御説明いただきたいと思います。
【中村健康スポーツ課長】 3月に公表しましたガイドブックの、周知・広報を進めていくということで、周知状況をまとめておりますので、資料3を御覧いただければと思います。
周知先ごとに記載しておりますけれども、国民全体としては、スポーツ庁のホームページやSNSでの発信、それから長官による記者向けの発信ということで、3月・4月に取り組んでおります。また、地方公共団体向けということで、スポーツ主管課への通知をするでありますとか、地方公共団体に向けてのメールマガジン、それから長官による講演など、様々なツールを用いて周知・広報してきております。初等中等教育分野にも御協力をいただき、また、JAPAN SPORT NETWORKメルマガでの配信なども御協力をいただいております。
次の3ページ目には、民間事業者向けということで、Sport in Lifeメールマガジン、それからこれは経産省の御協力ですけれども、健康経営会議ホームページへの掲載、その関係のメールマガジンによる配信、健康・体力づくり事業財団の月刊誌に掲載するなどの取組をしております。
スポーツ関連団体に対しては、事務連絡を出すとともに、部会長の御協力もいただき、笹川スポーツ財団ホームページへの掲載や、SPORTECのブースでの配布など、様々な取組をしてきております。
今後さらにということで、最後の4ページ目のところに書いてございますけれども、健康増進ということもございますので、各地方公共団体の健康・福祉・介護部局への通知についても、厚生労働省の御協力を得て、進めていこうと思っておりますし、事業者・団体ということで、日本商工会議所や健康スポーツ産業団体連合会への周知、それから保険者・医療関係ということで、健保連や医師会への周知なども予定しております。
その他、様々なスポーツ庁関係の会議や学会、イベントなどもございますので、こういった機会を捉えて、引き続き周知をしていきたいと思っております。各委員の皆様のほうでも、何か周知できそうな機会があれば、皆様方に御協力をいただき、周知を図っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
ただいまの説明につきまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。
もしいないようでしたら、次の議題に移りたいと思います。よろしいですか。
それでは、議題(3)「ライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの推進について」でございます。
こちらにつきましても、事務局より説明をお願いいたします。
【中村健康スポーツ課長】 資料4を御覧いただければと思います。
今、部会長からありましたライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの推進ということで、2枚めくっていただきますと、この取組を進めるために研究事業をやっておりまして、その研究事業を計画的に進めるために検討委員会を設けております。
さらに1枚めくっていただきまして、4ページ目に、この検討委員会でどのような取組を行っているかということを簡単にまとめてございますけれども、この委員会での取組として、まず、目的を持った運動・スポーツの実践について、今、実態がどうなっているのかというニーズ調査を進めております。これも後ほど簡単に御紹介させていただきますけれども、それを踏まえつつ、ライフパフォーマンスについて、ハイパフォーマンスで得られた知見を活用していくということで、その知見の収集を進めております。さらにそれをライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの実践プログラムにどう生かしていくかということで、今、検討を進めており、まず今日御紹介させていただくのは、そもそもライフパフォーマンスの向上に向けた取組という、そのライフパフォーマンスというのはどういうふうに定義づけをするのかということ、それから、それと併せて、最初に御紹介したニーズ調査の状況を簡単に御報告させていただきたいと思います。
1枚めくっていただきまして、5ページ目に「ライフパフォーマンスについて」ということで、後ほど長官からも補足いただければと思いますけれども、ライフパフォーマンスについては、図の左側に「観点・要素」と書いてありますけれども、様々な観点・要素があるだろうということで、「スポーツの価値」から「Well-being」、いろいろレベルの違うものとか種類の違うものが並んでおりますが、ライフパフォーマンスを考える上で、ここに書かれているような「スポーツの価値」から「楽しさ」とか「ライフステージ」とか「立ち直る力」とか「生き抜く力」とか、様々なものが観点・要素としては考えられるだろうという議論をこの検討会の中ではしております。特にライフパフォーマンスに関連する要素として重要なのは「適応能力」であろうと。右側の図にございますけれども、様々な情報がライパフォーマンスに関してはある中で、その情報をきちんと感じ取れる能力が重要になってくると。それを踏まえて、それを行動に移していくということがあるのではないかということで右側の図はまとめているものでございます。
こうした様々な観点を踏まえて、定義としてライフパフォーマンスは何なのかということでまとめたのが、赤字のところで書いてございますけれども、「困難な状況に陥ったとしてもそれを乗り越える力であり、それぞれのライフステージにおいて、環境変化や加齢等に心身機能を適応させながら、個々の課題解決や目標達成に向けて発揮できる能力」、これがライフパフォーマンスだろうということでまとめさせていただいております。
ライフパフォーマンスを向上させるということは、当然心身の健康の保持増進ということにはなりますけれども、それだけではなくて、QOLを高めることなど、Well-beingの最大化にも資するものであろうというふうにまとめさせていただいております。
次の6ページ目は、今御説明した内容と若干重複する部分がありますけれども、補足的な説明として、検討委員会の中間まとめから抜粋したものでございますが、ライフパフォーマンスというのは人生100年時代の生活を支える基盤になるということでございまして、その中には、自然・社会の環境変化や加齢等に伴う心身の変化を知覚する能力と、知覚によって得られた情報に応じた、環境変化等への心身の対応・調整・適応能力やレジリエンス、予見行動力が含まれると。先ほど図で触れさせていただいた内容ですけれども、こういったものが含まれる。
ライフパフォーマンスというのは、行動範囲とか活動の量・質、運動器の機能、自己効力感、幸福感、満足度、いろいろなものがございますけれども、こういったものを含めて、複数の指標によって自覚・観察ができるものであろうということで今回まとめさせていただいております。
続いて御説明してしまいますけれども、次の7ページ目を御覧いただきますと、ライフパフォーマンスに関して、一般の方々がどのように実践し、認識しているのかということで、ニーズ調査を行いました。調査自体はもう終わっておりまして、対象者としては18歳から89歳の男女、サンプルとして2万人分の調査をしております。
どういうことを調べているかといいますと、それぞれの方の健康状態であるとか、生きがいとか幸福感をどう感じているのか、それから運動機能チェックを受けているのかとか、それと健康との関係がどうなっているのかといったことに加えて、ライフパフォーマンスと自分の行動はどう関係していると考えているのか、それから目的を持った運動、どういう目的で運動を実施しているのか。そういった事項について調査をしておりまして、現在調査結果の取りまとめ、それから分析を行っているところでございますので、またその結果は、検討会のほうでまとまりましたら、こちらの部会には御報告させていただくことになるかと思います。現状はこういう調査をしておりますという御報告でございます。
それから続きまして、次の8ページ目から、ライフパフォーマンスに向けて、スポーツ庁としてどういう周知・広報をしているかということでございますけども、9ページ目に直近で行っている取組をまとめております。
1つとしては、関係団体・関係省庁と連携しての周知啓発をしておりまして、腎臓学会での長官による講演でありますとか、中央労働災害防止協会の書籍に掲載する、その他SPORTECやEXPO2024での講演・ブース出展などをして、ライフパフォーマンスの向上に向けた運動の取組ということの周知啓発を進めているということでございます。
それから、メディアの活用ということで、記者懇談会での公表、「日曜日の初耳学」という番組での講演などに取り組んでおり、今後も含めてさらに周知を図っていきたいと思っております。私からの説明は以上になります。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
それでは、長官のほうから補足をお願いいたします。
【室伏スポーツ庁長官】 ありがとうございます。こちらに関しては、久野委員、そして津下委員にもたくさん御助言いただいて進んでいるものでございますので、もしこの後、また一言ございましたらお願いしたいと思います。今初めて聞かれた方もおられると思いますが、スポーツ庁には、ハイパフォーマンスで得られた知見というものがあります。例えば選手がけがをした場合、早く復帰して、早く活動しなければいけない、もたもたしていては競技生命とも関係しますので、そういう知見もかなりあります。女性が出産後、早く復帰してメダルを取るみたいなこともそうでしょうし、たくさんそういったハイパフォーマンスの知見というのは活用されるものがあるのではないかということも含め、ライフパフォーマンスという言い方をさせていただいております。国民の皆様がそれぞれのパフォーマンス、人生においての仕事の生産性、Quality of Life、Well-beingなどが向上し、生きがいを持って取り組んでいけるような環境を整えていこうということで、スポーツ庁らしい健康というものを今定義づけようということが、この実態ニーズ調査と、委員の皆様方に集まっていただいて議論していただいているところになります。
委員は、宇宙の研究をされる方であったりとか、スポーツ心理、経済、健康医療経済だったり、こういった方々からも御意見いただいておりますので、取りまとめた結果としては、私としても満足いくものだと、失礼な言い方ですけども、渾身の力を込めたものになるんじゃないかなと思っておりますので、御期待いただきたいと思っております。
アンケートの調査は、かなりブラッシュアップしてまいりまして、こちらも御助言いただいています。健康とWell-beingは関係あるのかという、当たり前だと思っていましたけども、そういう質問なんかも入っています。若い人ほどあまり関係がないと回答していたり、高齢になるほど関係があると回答していたりしています。年代別にそういった調査をしたり、運動の内容も、何を期待して、運動を目的を持ってやっているかという質問に関しては、筋肉や骨を強くしたいと思ってやっている人もいたり、神経系だったり、有酸素が多いとか、どういうニーズがあるかということもかなり分かってきていますので、この辺りもまた良い発表ができますように、また委員の皆様に御尽力をいただきまして、進めてまいりたいと思っております。
【津下委員】 津下です。私もこのライフパフォーマンスの議論に参加して、本当にわくわくする議論になっています。前回の会議では、一般の方がライフパフォーマンスをどう思っているかとか、それからアスリートに対する支援やサポートの中で自分たちが活用したいものは何かみたいな、一般の方向けの調査と、もう一つ興味深かったのは、ハイパフォーマンスセンターの先生方とかの御意見を収集していました。論文や御意見から、どんなことが一般の方に活用できるかというような視点での調査報告がありまして、例えば暑熱環境とか、非常に困難な環境の中でも最大限のパフォーマンスを発揮するにはどうしたらいいのか、水分の取り方を含めて知って、どのようなことをすればパフォーマンスが上がるかとか、メンタルについても、緊張するような事態、睡眠不足とか、いろいろな困難な状況は、スポーツ選手はもちろん極限なんですけれども、私たちも日常の中でそういうことをうまく乗り越えたいなと思うことはいろいろあって、そのときに、そういうハイパフォーマンスでの知見でどういうエビデンスが出ているかということを知ることは、非常に参考になるというか、それを普及しないともったいないなと思いました。
それから、一般の方ですと、トレーニングというと筋骨格系の部分が多くあげられているのが印象的でした。そこも健康とかパフォーマンスに向けて重要なところなんですけれども、けがの防止とか、スポーツ選手が継続するためにどんな工夫をしているかということ、けがをしたらどうリカバリーするとか、その辺りについての関心がまだまだ低いのかなということで、そういう知見も非常に役に立つものが発信できるのではないかなと思います。私はどちらかというと一般目線でこういう情報が役に立つんじゃないかという視点で、御意見を申し上げていきたいなと思っております。
以上です。
【渡邉部会長】 久野委員、いかがですか。
【久野部会長代理】 ありがとうございます。一歩一歩進んできているという印象を持っています。今、長官や津下委員からここでのポイントのお話、もともと、もちろんその前提として中村課長からお話があったんですが、改めて、今日お聞きしながら、今後これをさらによりよい政策化していく観点で、どうやってこれを広げていくのかなと考えておりました。ライフパフォーマンスというキーワードの広がりを求める部分は大事ですが、一方で、我々はこの会議を含め何回も聞いているので、従来の整備されてきたスポーツ医科学の内容と切り口が違うんだと理解できるんですけど、多分うちの大学の先生たちにぱっと話すと、必ずしも、今まで言っていたものじゃないのというようなリスクがあるなと少し感じています。関係者への周知・理解が物すごく大事じゃないかなと、今日の議論、御説明を聞いて、改めて思いました。スポーツ医学系や大学医学会とか日本スポーツ学会、そういうようなところに、積極的にセッションをつくっていただいて、シンポジウムをやったり、特別講演をしたり、健康運動指導士のカリキュラムに、ライフパフォーマンスに関するみたいな、タイトルがついたカリキュラムが何年後には入っているよう仕掛けも考えていくと、横展開していくのにいいんじゃないかななんていうことを考えておりました。以上です。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
それでは、もうちょっと時間をとりまして、今まで御説明いただいた内容についての質問あるいは御意見等いただきたいと思いますが、委員の皆様、いかがでしょうか。
宮脇委員、お願いします。
【宮脇委員】 私、昨日からこちらに来ていまして、今日の資料を全然見ないでここに伺っておりまして、失礼なことを申し上げるかもしれませんけれども、ライフパフォーマンスのことに関しましては、例えば自治体では、筋トレ教室もやっているんですが、参加した方が、町長さん、あれはとてもよかった、足腰が曲がっていたのが伸びてきて、歩いたりするのも不自由でなくなったりとか、そういうお話もよく聞きますし、それから、グラウンドゴルフをすれば、股関節が強くなって転びにくくなるというようなこともございます。私、実はこの1月、韓国に行ったときに歩道で転びまして、それで、あばらにちょっとひびが入って、肩をちょっと痛めたりしたんですけど、年を取っていると治るのが遅くなって、湿布薬を貼っていても、そこがかぶれてき出したりして、年とともにやっぱり大変だなと思っていますけども、ある意味、ライフパフォーマンスというのは、年代ごとに応じて、健全で健康な立場で活動できる、そういうものの基を構築するものだと思っておりまして、今、御議論がありましたように、地方公共団体も部分的には取り組んでいるんですけども、そこをみんなに伝えていくことができていないのが、スポーツの限界になっている面もありますから、今日のお話は大変ありがたいお話だと思って伺ったところでございます。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。佐々木委員、お願いします。
【佐々木委員】 御指名ありがとうございます。SPORTECでもライフパフォーマンスついて様々な講演をいただきまして、多くの関係者の方々、御納得いただき、また、非常に感銘を受けた方々も多かったと思います。
私たち、展示会をやっている中で、あと、フィットネス産業協会もしくはテニス事業連盟、様々な方々にスポ団連に加盟いただいていますが、まだまだ、まず一つ、言葉の意味が周知されていないなというのが、先々週の展示会並びに関係者との会合の中で少し聞かれたかなというのが感想でございます。
やはり言葉の定義を1回しっかり、先ほど久野委員からもございましたが、様々な有識者、アカデミアの方々というのもございますし、あと事業者の方々にも、様々な会合、勉強会を通じて、この定義をもう一度示していただくというのも非常に重要かなと思っています。
一部、例えば鹿屋体育大学の先生方の言葉を聞くと、パフォーマンスというと、どうしても非常にハイパフォーマンスというところがひもづいてしまうということがございましたが、しっかり資料を読み解いていくと、日常生活でいかにQOLを高めて、そして日常生活の質をどう高めてというのもございますし、これをどんどんこの1年、2年で広げていくことによって、特に少子化で労働力が2030年で大変大きく損なわれるという資料もございますので、そういった解決にもつながっていくと考えております。
非常に有効な調査結果をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。展示会でも、また、我々団体のほうでも、この言葉の意義を、また、言葉の意味をしっかり伝えていきたいと考えておりますので、引き続き皆様の、我々も御要望をいろいろいただければ、周知徹底してまいります。
ありがとうございました。失礼いたします。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
オンラインの皆様はどうでしょう。北出委員、お願いします。
【北出委員】 ありがとうございます。今、御発表、御説明いただいた、ハイパフォーマンスとライフパフォーマンスの比較というか、対というのはとても分かりやすくて、私たちも常日頃からスポーツ医学を見ていますと、アスリートとかを見ていますと、やはりその知見というのが、一般の人のスポーツ振興もそうですし、健康につながるかなといつも思っております。
ただ、今回少し思ったことは、観点と要素のところが、割とアスリート特有の少し強さというところが強調されていて、それはそれでとてもいいと思うんですけれども、生きがいというのもあると思うんですが、生き抜くとか立ち直るというのは、ちょっと強い意味合いもあって、アスリートならではというところもあると思うんですが、一般的な場合は、例えば先ほど長官がおっしゃったような、病気、けが、出産などを考えますと、復活とかリカバリーという意味合いもあるかなと思いますし、あと、やはりスポーツのメリットの大きいところは、アスリートと違う一般の人で、自己肯定感が高まるといいますか、前向きになって自分を認められるというか、それは人にも優しくできるということかなと思いますので、少しそういう観点も要素に入れていただけると非常にありがたいと思います。
実際、心理のところで、自信とか、そういうこともあったと思うんですけれども、やはり鬱を予防したり自分を好きになるという、そういう部分って非常に、特に妊産婦においても重要なものですから、また御検討いただければと思いました。
ありがとうございました。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
そのほかの方は挙がっていますか。大丈夫ですか。
私個人的に、部会でライフパフォーマンスの話をずっと重ねてきましたので、ここの定義というのはよく分かります。ただ、先ほど宮脇委員がおっしゃったように、障害の有無であるとか、あとは年代であるとか、いろいろな人たちに対応することも当然考えていかなきゃいけないと思うんです。すばらしいまとめだと思うんですが、少し動画とかビジュアルとか、そういったものでライフパフォーマンスというものを理解してもらうというような手段も一つかなと思います。
それと、長官がいろいろな動画を上げていますよね。それとまたリンクできるような、そんな環境が、ホームページの上であったり、あるいは学会とかいろいろなところへ行ってお話しされますけど、そういったときにそういった動画とかビジュアル資料をうまく使われると、より一層理解が促進できるかなと思って聞いておりました。ありがとうございます。
津下委員、お願いします。
【津下委員】 資料4の5ページですか、長官が示されたこの図で、Perceptionという概念があって、パフォーマンスというとどっちかというと出力系というか、どうするかというところに目が向きがちなんですけど、実はスポーツをするとき、周りの環境、自分のコンディション、先ほど年をとったなという年齢の変化とか、体の状態、そういうものを的確に知覚して、どう対応していくか、が重要という事。何も目いっぱい頑張るだけじゃなくて、今の身体の状態でどう出力していけばいいかということを考えていくという意味で、どちらかというと、スポーツするDoではなくて、知覚ということがすごく重要な要素なのかなと思いました。
だから、自分の体のこと、コンディション、外部環境も知覚した上で、どう行動するかを考えるというところが、新しい概念として捉えることができるんじゃないか、と思います。今までの事業だと、こうしたらいいですよって勧められて、それをやっていますという感じのものから、その人自身の体の状態、心の状態、いろいろな社会状況に合わせた取組方とか、そういうことを一緒に考えていきましょうみたいなメッセージにつながるといいかなと思って、検討の中ではこのPerceptionというところがかなり話題になったというように感じています。
これは宮脇委員とか、今、渡邉委員もおっしゃった、その人に合ったということが非常に重要なんだろうと思います。その辺のメッセージがもっと伝わるといいなと感じました。
【渡邉部会長】 長官、お願いします。
【室伏スポーツ庁長官】 津下委員に補足していただいたので、
ライフパフォーマンスという言葉を定着させようという概念みたいな話ではなく、まさに、これ、特に工学の先生なんかが見ると、すぐ、こういうことかと、数式で表しています。
資料4の5ページの図ですが、「環境」と「人」があります。「環境」は、今どういう環境にあるのか。「人」は、年齢、性別、障害の有無など、いろいろな制限があります。その中で、環境と人の間でどう行動(A)を起こしていくかということは、十分なPerception、Informationを得て、今どういう環境にあって、どう行動するのかということです。先ほどの話ですと、バリアフリーがないけれども上に上がらなきゃいけないという環境で、10年かかるバリアフリーを待つわけにいかないということです。その場で2人ぐらいに手伝ってもらってやるとか、下にありますけども、その場で最適な判断で行動を起こすことができるようにすることが、このAイコールですね、ActionはInformation、fがありますが、変数としてありますけども、こういうように、そのためには、右側の人の固有の感覚や人の持っている能力を日頃からできるだけ高めておくということで、Actionも変わってくる。Actionを変えるには、Informationだったり、人の能力を高めておいたり、どういう状況かということを、これは実はスポーツでもとても大事だし、一般の方も大事だと思うんですけども、テニスでグラスコートなのかクレーコートなのか、それによってボールの弾みが変わるため、それにどう適応するか。みんな環境が一緒ではないので、多分初めてこのスポーツ部会で数式が出てきたと思いますが、こういうことを数式化して、共通のものを出そうとしているということです。そうしないとみんなそれぞれの思いをという話になっちゃいますので、うまいこと、このことを、各学会も含めて、SPORTECでも話をさせていただいたりしましたけども、御理解いただいて、これも足りないんだ、あれも足りないんだじゃなくて、今ある環境を最大限にAction、最適な判断をし、行動できる能力は、まさにスポーツの世界。こういったことがアスリートでできない人は結果を残せないのと一緒ですけども、できないのであれば、周りの人が情報をあげたり、こうですよとかいう人も必要でしょうし、この図の理解がもう少し広まっていくように、委員の皆様方のお力添えもいただきまして進めたいと思っていますが、工学の先生も含めて、意図するところは、この間、御理解いただいたと思います。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。藤田委員、お願いします。
【藤田委員】 ライフパフォーマンスとハイパフォーマンスの関係性であるとか、目的を持ってというところで、これまでにない新しさとかが出て、非常に分かりやすいし、いいかと思うんですね。
1点、私の理解不足から来ているんだと思うんですけども、これを、これまでになくちゃんとエビデンスを出してやって、じゃあ、実際にやる人たちは、どうやったらこれを続けられるのかなということなんですね。自分の目標を持って、その目標を少しずつ上げて、それを達成していく。そのこと自体、楽しいことだと思うんですけども、それだけだと、何かちょっと息苦しさというか、休めないとか、何かそういう印象を持ってしまうんですね、私の場合は。
なので、それを皆さんとやると続けられますよねとか、友達がたくさんいる人のほうが健康的であるとか、いろいろなデータも出ていますので、それと、楽しさとか、そういったものを合わせてやっていただけると、こうやっていれば自分のライフパフォーマンスは上がって、しかも楽しいんだなというのが伝わるんじゃないかなと思いました。
以上です。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。岩田委員、お願いします。
【岩田委員】 ありがとうございます。これはまさに室伏長官がこういう話をするのに価値があって、まさにハイパフォーマンスの権化である長官が、ハイパフォーマンスもいいけどライフパフォーマンスもねというところが一番大事なところだと思います。ありがとうございます。
やはりこれ、ハイパフォーマンスとライフパフォーマンスって多分表裏一体というか、包括、包摂しているというか、一緒のことだと思うんですね。これが、レベルがあって、長官のように世界のトップの方の、アスリートのトレーニング、ハイパフォーマンスを狙うというレベルと、私のように800が2分やっと切れる人間が狙うトレーニングという段階、それから、まさにこの定義であるとおり、人生がちょっと苦難に陥ったときに、課題を解決して、目標達成に向けて発揮できる力というのがライフパフォーマンスの標準的なもの。それから、また自分のことを言って申し訳ないんですが、4年前に私、心筋梗塞をやって、そこからまだ、スポーツをやりたいというところなんですけど、医者からは歩くだけにとどめてくださいよというところのトレーニング、それがライフパフォーマンスの一番、ちょっと下の部分ですかね、最低限の体力を維持するためのパフォーマンスというところで、段階的にあるんですけど、これはまさに同じことを言っているんじゃないかなということで、よく分かりました。長官、ありがとうございました。
【渡邉部会長】 もしないようでしたら、一旦この議題は終わらせたいと思います。よろしいですか。オンラインの皆さん、大丈夫ですか。
それでは、議題(4)に移りたいと思います。「スポーツを通じた健康増進に係る施策の動向について」でございます。
前回は久野委員に御説明をいただきましたが、今回は、専門領域におきまして、津下委員、そして小松原委員に御発表いただきたいと思います。
事前に資料も配られているようでございますので、まずは津下委員からよろしくお願いします。
【津下委員】 このような機会をいただき、ありがとうございます。
私に与えられたテーマは、スポーツを通じた健康増進、特に厚生労働省でこれまで進めてきた健康日本21など健康施策について、包括的な話をさせていただければと思います。
では、資料、次のページなんですけれども、まず、我が国における健康づくり、令和6年度から健康日本21(第三次)がスタートしました。この第三次に至るまでの経緯がここの年表に書かれています。
1978年(昭和53年)から、第1次国民健康づくり対策が始まりました。次のページなんですけれども、ここについては、WHOが1946年に、それこそ健康は単に病気ではないとかではなくて、社会的に完全に良好な状態ということ、Well-beingということを1946年に言っておりまして、そして、それを受けて、1978年にアルマ・アタ宣言、1978年に、全ての人に健康をというような宣言が出されました。
それに呼応するように、昭和53年に第1次国民健康づくり対策が始まりまして、我が国では市町村の保健センターが整備されたり、それから栄養・運動・休養の3本柱という言葉が聞かれました。
また、10年後の1988年からは、第2次国民健康づくり対策として、運動指針の策定とか、健康増進施設の設立などがありましたということで、左側に世界の動きがあるんですけれども、世界の健康づくりの運動と呼応しながら、我が国においても健康づくり施策が行われてきました。
2000年からはアメリカでHealthy People2000が始まりまして、ここで目標を建てて、それに向かって健康施策を行うということが広まってきました、第3次国民健康づくり運動では、健康日本21、これは後で第1次になるわけですけれども、行われました。平成15年には健康増進法でその施策の裏打ちがされたということでございます。
次のページをお願いします。第一次、第二次、第三次、およそ10年ずつ進んできたんですけれども、この歩みについて概括したいと思うんですが、次のページをお願いします。
健康日本21(第一次)については、平成12年から24年度に行われました。一次予防の重視ということで、生活習慣病にならない、リスクを減らすということを主眼に、健康づくり支援のための環境整備や目標の設定、そして多様な実施主体による連携のとれた効果的な運動の推進と。これを基本的な方針として進められまして、個人に対して健康づくりを進めるとともに、個人が健康づくりをしやすいような環境づくりとか、周りからの支援を充実させようということで、右側に当時よく使われた大玉転がしの絵がありますが、健康寿命の延伸のために、みんなが協力して行うと進めやすいよということで、どっちかというと健康づくりはつらいことだけど、みんなでやれば怖くないみたいな、そんなニュアンスも伝えられたと思っています。
次のページ、お願いします。第一次で目標になったのが、9つの領域でありまして、赤字で書いたところでございます。健康日本21(第一次)でも、早逝、若年期死亡につながるようながん、脳卒中、心疾患を減らしたいとか、障害を減らしたいということで、そのリスク要因であります糖尿病、歯周病、それから生活習慣、その中に運動というのが第一次のときから位置づけられておりました。
次のページ、お願いします。そして、健康日本21では、基本理念の中に、当初から健康寿命ということが言われていました。ただ、健康寿命の定義が曖昧で、いろいろな指標があって、どの指標をとるかということが研究者でばらばらな時代でありましたので、かちっとした数字ではなく、イメージとして語られていました。
そして、個人を支援する様々なステークホルダーがいるわけですけれども、都道府県に対して健康増進計画を策定義務にすること、また、市町村については、これは努力義務でありまして、つくっていない自治体もあるというのが現在における状況でも見られています。
目標設定をして、それに対して取組をする、そして、中間評価、最終評価をするという枠組みについては、第一次から現在まで変わっておりません。第一次のときにも、身体活動・運動なんですけど、日常生活における歩数の増加というのを目標に立てています。
調査は国民健康・栄養調査を活用していて、毎年やっているということと、国民全体の経年的な変化が見られるということで、この数字を使っていますが、ベースラインの8,202歩が男性、これを1,000歩増やすという目標になっていました。それが平成16年、平成21年と見ていただくとだんだん減っているということでありまして、男女とも有意に減少したというようなことで、男女とも悪くなり、最終評価「D」というようなランクになっています。
このような手法で、主に国民健康・栄養調査という国全体のマスのデータを利用して、国民の身体活動の状況を把握して、よくなっているかどうかということを見るということが行われています。
8ページ、次のページなんですけれども、2011年、第1次の最終評価では、Bに、意識的に運動を心がけている人は増加したんだけれども、日常生活における歩数は悪化しているとか、また、メタボについては、認知している国民は増えたけれども、目標を達したけれども、実際の数は減らないとか、そのような結果が第1次で出されたということであります。
次に、それらの経緯を受けて第二次がスタートしたんですが、私も第二次の策定のときに関わっておりますけれども、そもそも健康づくりのイメージとして、よい子の暮らしじゃないですけど、運動しましょう、食事もきちんとしましょうというような感じに受け取られていました。それをして一体どうなるんだという議論があって、これって本当に国でやらなきゃいけないのかみたいな議論もある中で、第二次の議論が始まったということを記憶しております。
そこで、10ページのところなんですけれども、では、この施策で何が一番重要かということで、平均寿命の延伸ではなくて、健康寿命の延伸ということをきちんと打ち出そうということで、測定方法を決めた。そして都道府県別の健康寿命も出したし、経年的にも追える体制をつくったということで、様々な健康寿命の計算方法があるんですけれど、これがいいだろうという決め打ちをしたと。これは一つ、一番大きな要因ではないかなと私自身は感じています。
その次のページにありますように、決めますと、平均寿命の差が何年あるとか、年々どうなっているのか、今日は出しませんけど、都道府県別のランキングというのが一番話題になりまして、そうしますと、自治体の長がすごく真剣になると思いました。当時、健康寿命日本一を目指すというようなキャンペーンをした自治体がすごくたくさん出たというので、単に健康づくりのセクター、厚生労働省のセクターだけではなく、庁内全体で健康寿命を考えるという機運ができたというのは、健康寿命の延伸ということを最上位に掲げた一つの大きなことではないかと思いますし、同じ方法で測定するということが非常に重要だなと思いました。
10ページに戻っていただいて、それを達成するために、生活習慣病のリスク、それから右側に社会環境の改善ということを出しているんですね。これの目標とか指標を立てましょうということになったんですが、実は左側については、国民健康・栄養調査や特定健診などでナショナルデータベースが徐々に整備されてきましたので、個人のリスクというのは大分分かってきた。だけれども、右側の社会環境の質が改善したかどうかということについては、指標がほとんどなかったというのが第二次のスタート時点だったと記憶しています。ですが、ないから立てないんじゃなくて、暫定的でもいいから、社会環境の質の向上ということを挙げようということで、挙げたものです。
次のページですけれども、各分野において健康寿命延伸に、例えば身体活動・運動分野はどのように貢献できるのかについてエビデンスを整理しつつまとめたものです。これは左下にありますけれども、RCT・メタ解析で証明されているとか、コホート研究でとか、あまりエビデンスが多くないとか、いろいろなことをエビデンスレベルも見ながら、示しています。例えば歩数を1,500歩増加させることで、循環器疾患や特定のがんの発症率を減らすことが期待されるが、それが健康寿命につながるみたいな、エビデンスが割としっかりしているところと、資料のところのように、多分そうじゃないかと推測されるところ、例えば、断面調査しかないというような、エビデンスレベルも示しながら、こういう目標設定を図示したというのが一つ。
それから、これと呼応するように、健康日本21、身体活動を進めるために、身体活動基準、13ページにありますが、健康づくりの運動指針がつくられています。2006年のエクササイズガイドのときには、久野先生、私も参加させていただいて、いろいろ議論してエクササイズガイドができて、それをアクティブガイドという形で、基準といいますか、これぐらいを目指す、このぐらいの運動をしていたら健康寿命が延びるというエビデンスがありますよという数字を出していったということになります。先ほどのライフパフォーマンスのように、個別的にということではなく、国民全体が目指す目標として指標を出しているというところが違いかなと思います。
14ページにありますように、それを具体化するために、分かりやすく伝えるための「アクティブガイド+10」とか、10分増やそうとか、あまり運動ができないと思っている人にも、背中を押すようなものをつくろうということで、つくっています。
ただし、認知度調査については、国民全体の認知度が10%程度までいくかいかないかというところで、認知度を上げるというのが大きな課題だと。これが第三次に引き継がれていると認識しています。
また、次のページにありますように、第二次の期間中に、特定健診のなかに運動習慣に関連して3つ項目があるんですけど、それがナショナルデータベースに取り込まれているので、保険者単位、自治体単位で運動習慣者を経年的に見る、自治体の規模が小さくても自分たちのデータで確認できるということになりました。
次のページを見ていただいて、これは一つの例なんですけど、愛知県で以前、メタボの該当+予備群のランキングのもこうやってマップ化して示し、そうしましたら、下の例ですけども、蒲郡市では、これは大変だと。メタボが県内で1番多かったので、どうしたらいいんだということで、全庁的な取組が行われて、次のページに行きまして、市町村職員の健診データも分析したら、やっぱりメタボが県内1番だったということで、市町村の健康づくりの運動がかなり活性化してきたなという感じがございました。
19ページを御覧ください。国においても、健康日本21を進めていくためのアクションとして、Smart Life Projectが動いています。これはポピュレーションアプローチを特に進めていくということで、適度な運動としてはプラス10。適切な食生活。それから禁煙。健診・検診の受診というようなアクションを進めていくということでプロジェクトを動かしています。このようなホームページの開設、また、Smart Life Project、「健康寿命をのばそう」ということで、アワードとか、いろいろなコンテンツを取りまとめて一括して示しているというようなことをしており、10年以上たっていますということです。
7ページにありますように、アワードとしては、運動に関する取組で、左側はスポーツ庁長官賞なんですけれども……、いろいろな好事例について表彰し、それをアクティベートするような動きについて、スポーツ庁と厚生労働省が一緒になって進めているという状況になります。
22ページ、次のページなんですけれども、健康日本21(第二次)としては、これだけ頑張ったからかなりいい評価を期待するところでございますが、健康寿命は延伸できたんですけれども、右側にありますように、メタボはどちらかというと増えていますし、生活習慣は必ずしもよくなっていないという結果が得られています。
23ページは、特定保健指導を受けた人では、若干体重が減っていて効果があるということを示していますが、24ページを御覧ください。メタボリックシンドローム予備群については、食事・運動などを進めていけば減少することを期待していたんですけれども、増加している、特にコロナ禍、コロナ後にはかなり増加しているという結果になっていて、まだまだ解決すべき課題は多いと感じています。25ページを御覧ください。国際的に見ると、日本の肥満度は、肥満者の割合はかなり下方に抑制されていまして、世界ではBMI25以上の方が7割を超えているという国々が非常に増えてきているという中で、日本では何とか食い止めている状況ではあるんですが、減少には至っていないということになります。
次のページは、健康日本21(第二次)の身体活動・運動分野の平均歩数の年次推移、また、運動習慣のある人の年次推移なんですけれども、平均歩数は変わらないとなっています。でも、数字を見ていただくと、どちらかというと減少傾向にあり、それから運動習慣も、日常生活が便利になったので、運動習慣が増えないと身体活動量を維持できないんですけれども、必ずしも増えていないというような結果でした。
ということで、第三次に今年度から始まりまして、ここからが本題なんですけど、これまでの健康づくり政策によりいろいろな成果が出てきたわけですが、効果が出ていない項目もありますし、まだまだ一部の方がやっていて全体には動いていないというような課題も見えてきました。
そこで、ビジョンの下のほうにありますけれども、SDGsの考え方も広がってきておりますが、持続可能という言葉が入ったということと、誰一人取り残さない健康づくりを展開する、また、より実効性を持つ取組を推進する、この2つをキーワードに、第三次は検討されてきたところになります。
次のページなんですけれども、誰一人取り残さないということで、一律のメッセージではなく、集団や個人の特性を踏まえた、先ほどライフパフォーマンスの話もありましたけれども、特性を捉えて進めていく、また、健康に関心の低い方についても、自然に動くような環境づくりや多様な主体による健康づくりを進めるというのがInclusionでございますし、右側、より実効性を持つ取組としては、目標設定とか、アクションプランをつくるということが重要だ、それからICTの利活用などが触れられています。
基本的な方向性としては変わらないんですけれども、その中で、ライフコースアプローチということで、それぞれの置かれた状況を踏まえた健康づくりを推進するということになっています。
その次の図が、イメージ図ということで、社会環境の質の向上というのが基盤にあります。第二次は横に並んでいたんですけども、第三次では健康づくりの基盤として、自然に健康になれる環境づくりや、誰もがアクセスできる健康増進の基盤整備ということを軸に置いたということになります。
その次のページなんですけど、健康日本21の目標を羅列していますが、赤字で書いたのが、第三次で新たに加えられた、または変更になったものでございます。身体活動・運動はずっと第一次から同じ目標になっています。
次に、社会環境の質の向上のところは、例えば自然に健康になれる環境づくりについては、歩きたくなるまちなかづくりとか、国土交通省の事業なども含めて、それから健康経営なども含めて指標に入って、厚生労働省以外の政策を取り組んだ指標になっています。
そして、健康日本21の研究班で、どのようにアクションプランをつくろうということで、次のページなんですけれども、介入の方法とその効果について整理しています。データをモニタリングしているだけでは意味がなく、啓発とか健康な指導だけでは効果が低いので、より強力な方法も考えていく必要があるのではないかという議論がありまして、一番見ていただきたいのが、「運動習慣者の増加:ロジックモデル」ということで、これは東北大学、辻先生の研究班で、各分野でこのような分野別アウトカムを達成するために、どういう個別施策が必要なのか、そしてアウトプット指標としてはどういうものを見ていけばいいのかということを、研究班の成果として取りまとめたものになります。栄養とか運動とか、いろいろな分野でこれをつくっています。
運動習慣者の増加のために、本人の知識や態度が重要ということや、行動する人、アウトカムとしてはそうなんですけども、左側の個別施策のところを見ていただきますと、厚生労働省健康・福祉部門のほかに、教育・スポーツ部門としてSports in Lifeの推進とか、運動・スポーツ機会の増加、運動施設の整備、総合型地域スポーツクラブの整備、障害者スポーツの振興など、ここの委員会と非常に関係のあることもしっかり取り組んでいかないと、健康日本21の達成は難しいというようなことや、職域や保険者、学校、そして関連団体のそれぞれの施策がそれぞれ有効に行われることが必要ということを記載しています。
Sports in Lifeやアワード参画の自治体数や企業数が増えること、スポーツ庁、運動・スポーツ習慣化促進事業などがしっかり行われることということも、研究班内部でこういうことが進んでいくといいよねということで、省庁横断的な取組の必要性ということを挙げています。
次のページなんですけれども、先ほど介入のはしごということで、選択を制限するとか、かなり強力な方策を打てる分野もありますけれども、運動については、せいぜいインセンティブをつくるとか、環境を変えるとかいう辺りが中心にはなりますが、こういうそれぞれのレベルに合った、より有効なアクションプランが実行されることを推進していくということになっています。
その一つとして、次のページにありますけれども、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」ということで出ておりますが、今回、新しいこととして、高齢者版とか、慢性疾患を有する人の身体活動のポイントとか、働く人が職場で活動的に過ごすとか、様々な安全のポイントとか、いろいろなガイドを出したというのが新しいところではないかと思っています。
もう時間もないので後ははしょりますけれども、例えば後期高齢者においては、フレイル予防などの動き、そして身体機能が低下した人も、誰でもが参加できるような運動プログラムの実施を推奨していますし、その次のページですけれども、運動資源マップなどの作成によって、身体的なリスクのある方についても安心して運動ができる場づくり、情報連携なども必要だということで、これは日本医師会とスポーツ庁とで協力しながら進めているところなんですけれども、様々な動きをしつつ、より実効性のある方向へ検討していく、また、省庁横断的な取組が増えてきたというのが、この健康づくり施策のこれまでの歴史ではないかなと思います。
20年間を振り返りましたので、ちょっと時間がかかりました。よろしくお願いします。
【渡邉部会長】 津下委員、ありがとうございました。
国の健康増進に係る施策の動向ということだったんですが、続いて、小松原委員、今度は健保組合におけます動向について、御説明いただければと思います。
【小松原委員】 健保連の小松原です。本日は大変貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。私からは資料6を基に、「健保組合における保健事業を取り巻く環境と健康増進施策の動向について」特に運動・スポーツを中心にお話させていただきます。
まず冒頭、我が国の医療保険制度について、資料の2ページになりますが、我が国は、国民皆保険制度ということで、国民全員が何かしらの保険に加入しています。本日お話しするのは、その中の健康保険組合の部分になります。
数多くの医療保険者がある中で、健康保険組合というのは、皆さん御存じのように、大企業が中心となって設立をしています。例えばトヨタ自動車やJRなど、企業立の健康保険組合には、全国に2,900万人ほどの加入者がいます。
資料の右隣が協会けんぽですが、こちらは旧社会保険庁が管掌している健康保険になっており、主に中小企業が加入しています。
その右側が、共済組合で、公務員等の加入者が900万人ほどいます。
この3つを職域保険と呼んでいます。
職域保険以外は国民健康保険ということで、市町村が運営運用しておりますが、特に自営業者を中心に2,700万人ほどが加入し、75歳までの方がこれらいずれかの保険に入るという形になっています。75歳になりますと、これらの保険を、卒業いたしまして、後期高齢者医療制度という形で別立てになり、1,800万人ほどいるという実態となっています。
本日は、職域保険の保険組合の話だということでお聞きいただければと思っています。
ページめくっていただきまして、3ページです。その中で、私が所属しています健康保険組合連合会というのはどのような組織なのかと申しますと、1943年に設立された公法人で健康保険法の中で設立が明記されている団体になっています。全国に約1,380ある健保組合の連合組織として、健保組合制度の充実と発展を目指して活動しています。
健保組合には大きく分けて2種類の保険者があります。1つは、先ほど申し上げましたトヨタやJR企業1つで設立している単一型の健康保険組合。もう1つは、同業種の業界団体が設立する、これは総合健保組合と呼ばれていますが、同じ業界団体が集まる、例えば東京都の電気工事業が集まり健康保険組合をつくる、そういった形の健保組合となっています。
単一の保険者が1,125、総合型が255で、圧倒的に単一型の保険者が多いのですが、事業所数を見ていただくと、総合型が約8割ということで、中小企業が多く加入しています。
先ほど協会けんぽが中小企業中心という話をさせていただきましたが、協会けんぽの加入者構成を見ると、約8割が9人以下の事業所になっています。ほとんど零細企業が中心という形になっていまして、皆さんがイメージするような中小企業は、総合型の健保組合に属しています。
4ページですが、健保組合の組織基盤です。協会けんぽは先ほど申し上げたとおり、旧社会保険庁によって設立されており、国による設立になっていますが、健保組合は自主的な設立であり、企業立の保険者ということで、厚労省に認可申請をして、健保組合の設立をしています。
健保組合の特徴ですが、自主的な民意の反映が非常にしやすいということで、ここに書いてありますように、大体加入者560人に1人当たりの議員を出しています。一方、協会けんぽになりますと、280万人に1人ぐらいの意見を聞けるという形になっておりまして、企業に近い健保組合ということで、いろいろな事業を機動的にできるというメリットがあります。
また、加入者の特性やニーズ、働き方が近しい人たちが加入していますので、その特性に合わせた事業選択が可能になっています。
健保組合の事業というのは何かと申しますと、大きく分けて2つあります。1つは、皆さん御存じのとおり、保険給付事業ということで、これは医療費の支払や傷病手当金の支払い、出産手当金の支払いなど、こういう給付的なものが健保組合の事業の1つになっています。
もう1つ大きなものは何かと申しますと、保健事業と記載しておりますが、これは予防健康づくりの部分になっていまして、加入者の健康の保持・増進に係る取組となっています。
この2つの大きな事業を健保組合で一生懸命実施しているのですが、近年、高齢者医療費の拠出金が増大しており、健保組合の財政状況は非常に厳しい状況となっています。
この厳しい財政状況を、6ページのところで、個々の人の立場に立ってみたらどのようなイメージになっているのかというものを記載しました。
資料は平均的モデルで計算しています。保険料として従業員が半分保険料を納め、企業が半分保険料を納めています。月給30万円の方ですと、保険料としては月2万7,600円いただきますが、その半分を企業、その半分を御本人が負担しています。
ただ、この支出の内訳を見ていただきたいのですが、自分たちの医療費に使えるのは実は50%しかなく、残りは何に使っているかというと、40%は高齢者への医療費、仕送りとして拠出しています。要は現役の皆様方のお給料から保険料を頂いているのですが、保険料の4割が高齢者の医療費に使われているということで、これが財政を非常に圧迫している1つの要因になっています。
少し右のほうにある予防費、保健事業のことですが、5%しか使えておらず、先ほど保険料2万7,600円と説明しましたが、予防のために使えるお金は月々1,380円しかない状況になっています。
次の7ページですが、この予防費を使った事業をどのような形で健保組合は実施しているかと申しますと、健康保険法の150条の中に大きく2つ明記されています。1つは、法定の義務になっています特定健診保健指導です。これはメタボ健診とも呼ばれていますが、これは法律上の実施義務になっています。
もう1つは、加入者の健康管理等の自助努力の支援で、こちらは努力義務になっていますが、人間ドックやがん検診を実施するなど、様々な体力づくり事業を展開する形で、2本柱となっています。
8ページですが、予防健康づくりの予算の使い方がどうなっているかということで、内訳を円グラフで示しています。平成元年と令和元年2つを比較しています。
平成元年というのは、バブルの絶頂期の頃です。令和になって、どういう形でお金の使い方が変わってきたかと申しますと、実は健保組合は先ほど申し上げたとおり、企業立の保険者になっていますので、バブルの頃は企業の求めは何かというと、福利厚生の代行的な役割という側面が非常に強くありました。それが令和の時代に入り、どのように変化したかというと、健康経営のパートナーとしての保険者と大きく変わってきています。
使われるお金も、疾病予防、要は健診や保健指導ですが、47%だったものが、今や80%近くになっています。
一方、すごく残念なのが、体育奨励費でして、ここが8%、あったのが、今は2%まで細ってしまっています。これをいかに増やしていくかが非常に大事なところだと思っています。
次の9ページです。先ほど津下委員のお話にもありましたが、健康寿命の延伸が国策としてうたわれています。これは、アベノミクスの第三の矢の民間投資を喚起する新たな成長戦略として、当時、健康寿命の延伸ということで、保険者に対しては、レセプトと健診データを基にした保健事業の推進、データヘルスの推進をおこない、企業に対しては、健康投資の推進ということで、健康経営がうたわれ、これを両輪で支えて、健康寿命の延伸を目指しましょうと言われたわけです。
10ページのところになりますが、この2つの円をばらばらにそれぞれやるのではなく、コラボヘルスという形で実施していくということで、それぞれガイドラインがつくられ、厚労省・経産省が合同でプレスリリースしています。
このプレスリリースは、すごく画期的だと思っていまして、経済産業省はどちらかというと規制を壊す省庁で、逆に厚労省は規制をつくる省庁なのですが、両者が一緒になってやっていきましょうということで発表したというのは、すごく画期的だったと思っています。
次のページですが、なぜコラボヘルスが叫ばれているかと申しますと、企業から見たら従業員、保険者から見たら加入者という呼び方になるのですが、どちらにもアプローチしていくときに、被ってしまう事業が数多くあります。企業でいえば、受動喫煙対策でたばこ対策をいろいろ実施しているのですが、保険者もたばこ対策をメタボ対策の中で実施しています。また、企業はストレスチェックも実施しますし、保険者はメンタル対策を実施しているわけで、支援内容がかなり重複しています。
特に健診の場での重複というのは非常に多く、今月胃カメラを飲んだのにまた翌月、健保組合から人間ドックで胃カメラを飲まなきゃいけないといったような、無駄な健診を実施していたということもあり、ここをよく相談をして、分担して実施していこうというのがコラボヘルスになっています。
このコラボヘルスができている医療保険者を健保連で調査すると、医療費を見ても低い数字が出ているような状況になっています。
そういった足元の中で、昨年の夏、13ページになりますが、保健事業指針が一部改正されました。健保組合に求められる新たな保健事業ですが、何が追加されたかというと、女性特有の健康課題に対する対策とロコモ対策です。
今日はこの2つについて、特に運動・スポーツに関わる部分をお話しさせていただきたいと思うのですが、14ページのところ、現在、企業あるいは健保組合の大きな課題になっているのは、今後の労働人口減少にどう対応していくかということです。2030年の労働人口の人手不足は644万人と言われています。また2040年、団塊ジュニア世代が70歳に入り、1,000万人強の労働力が足りなくなるということで、これをどう補っていくかというふうになると、下に書いてありますように、「働く女性を増やす」ということと、「働くシニアを増やす」、その右側の「生産性を向上する」という事になります。
生産性の向上をどう上げるかというのは健康経営のところで実施していく部分だと思うのですが、左側の部分の「働く女性を増やす」と「働くシニアを増やす」というところは医療保険者として支援をしていく必要があります。特にここで運動・スポーツという意味でどういう形で関与していくかということを考えていかなければならないと思っています。
次のページ、前回、久野委員の資料にもございましたが、特に若い女性において、昨今、問題になっている痩せでございます。OECDのデータにもありますように、日本の女性の痩せというのは非常に多くなっています。特に20代の痩せというのが非常に多く、この痩せ対策をしていかないと、実はお子さんにも影響するということが言われており、ここを何とか健保組合としても対応していかなければならないと思っています。
もう1つは、16ページの就労人口の高齢化のところです。これは内閣府のデータですが、65歳以上でも働きたいと回答しているのは9割以上に上っている状況で、昨今、定年延長あるいは定年レスというような話が出てきている中で、それによって健保組合の加入者が高齢化していきます。ここに対してどう対策を打っていくかということを考えているところです。
そういった中で、今企業の中で一番の課題になっているのが、ロコモです。職場での労働災害なのですけど、右側の「転倒」のところを見ていただくと、女性の転倒事故というのは男性に比べて約16倍もあります。これが先ほど言いました、特に若いときに体力がついていなかった、あるいは栄養をしっかり取っていなかった、要は骨が弱い状況など、様々なことが影響し、現在、転倒による骨折等が労働災害の中で一番の事故になっています。
そういった意味で、ロコモ対策というものが非常に重要だということで、18ページにありますように、皆様御存じのとおり、特に30代・40代の運動実施率が非常に低いところをいかにして上げていくかということを保険者として一生懸命やっていく必要があると考えています。
19ページになりますが、こちらは危険因子に関連する非感染症疾病と外因による死亡数ということで、津下委員の御説明があったように、現在、健保組合ではメタボ対策を中心に実施しています。メタボ対策ですと、飲酒や肥満あるいは食塩の摂取、こういったことに対策を打っていくのですが、これを見ていただくと、運動不足が実はかなり死亡原因として高く出ています。こういうものも事業主に説明をし、運動・スポーツも予防・健康づくり事業に取り入れていきたいと考えているところです。
20ページですが、社会環境の変化に伴う保健事業の組替えを、現在、考えています。メタボ対策ですが、40歳を起点として、現在、一生懸命保険者は実施しています。メタボ対策は、保健師や管理栄養士が保健指導のタイミングで介入するのですが、中心は食事指導になっています。この食事中心の指導に運動の要素を加えることによって、メタボ対策からロコモ対策にシームレスでつながっていくような支援ができないかということを考えています。
そういった中で、次の21ページなのですが、健保組合の保健事業の実施状況を見ると、予算的には少ないのですが、体育推奨事業を実施している保険者というのが83.2%もあります。
そういう地場があるということと、22ページのところになりますが、その中で何が一番多いかというと、ウォーキング大会などの歩くことを中心とした施策が非常に多くなっています。一方で、フィットネスクラブとの法人契約も55%ほどありまして、こういったチャネルを使って何かできないかと考えています。
赤のグラフで書いてあります体力測定ですが、実はまだ10%ぐらいしかできていません。ここを健保連のほうで、健診と同じように年1回測定できるような機会を提供できないかということで、現在、FIAさんと連携させていただいて、模索しているところです。
23ページになりますが、これはFIAの「全国カラダ年齢測定」です。この6項目の部分、これは文科省、スポーツ庁が実施する新体力テストに準拠した形で体力測定を現在つくっていただいておりまして、LINEアプリを使って、例えば筋力が足りないのか、持久力が足りないのか、柔軟性が足りないのか、どこの部分が欠落していることかというのをしっかりと知ることができるというような体力測定になっています。
次のページのところですが、FIAは、全国100社ほどのフィットネスクラブが加盟している業界団体で、全国3,924の店舗があります。このFIAの体力測定は、結果データのフォーマットが統一化されており、北海道のクラブで受けようが、沖縄のクラブで受けようが、データ連結ができることが非常に魅力的だと思っています。先ほどお示ししたとおり、各健保組合とも法人契約をフィットネスクラブとかなりされていますので、そのチャネルを使って、体力測定を普及していこうと思っています。
最後のページになりますが、ますファーストステップとして、我々の全国を通じ支部のロコモ対策を企画する担当者に対して、体力測定を体験していただいて、プロモーションしていきたいということで、いろいろな支部に声をかけたところ、今年度だけでも、15の地域から手が挙がっている状況になっています。将来、47の各地域に広まるように普及啓発していきたいと考えているところです。
【渡邉部会長】 ありがとうございました。
津下委員からは国の政策の動向ですよね。そして小松原委員からは、健保組合における具体的な施策の動向について、お話しいただきました。
残り時間も大分少なくなってきたんですけども、委員の皆さんから、御意見というよりも御質問ですかね、ありましたら、挙手の上、発言をお願いいたします。
北出委員、お願いします。
【北出委員】 ありがとうございます。津下委員にお聞きしたいと思います。私も詳しく知らなかったんですけど、健康日本21は、一次からこれだけ進んで、進捗もすばらしいというのはとてもびっくりしましたし、勉強になりました。
今、成人のプログラムに関してはほとんどパーフェクトかなと思うんですけれども、やはり子供の頃から思春期にかけて、子供の肥満というのも今問題になっていますし、先ほど小松原先生がおっしゃった、女性の中では食べないけど運動もしないという、そういうような痩せが、骨ですとか次の世代に問題があるということも分かってきたと思うんですが、若い世代というのは、小学校教育からこういうことをしっかりと周知しないと、今の成人だけは追いつかないのではないかなということで、久野委員とさせていただいているSIPでもそういうようなことの取組もあるんですが、実際、健康日本21で、そういう教育ですとか、栄養教諭がいるところもあると思うんですけど、栄養の観点の指導みたいなものがもしあれば、教えていただきたいと思います。
【津下委員】 ありがとうございます。子供については、ライフコースアプローチとして、子供の運動・スポーツとか子供の適正な体重の割合とか、そういうのをずっと経年的に見ているところになります。
ただ、子供について、これは省庁横断的に取り組めるかどうかにかかっています。学校の場面における健康づくりとか、市町村でいうと教育委員会と市の関係で、保健行政とがコラボできるかどうか。先日、三島市にお邪魔して、本当にそこが一体的に取り組まれているところでは、市の健康行政の中に子供の健康というのがすっぽり中に入っていくんですけれども、そこがなかなか一緒に動けない自治体もあったり、また、政策的にもなかなか子供のことを厚生労働省の健康日本21の中にどこまで書けるかというのが議論になったりしています。
ただ、子供については、「健やか親子21」、健康日本21子供版とタイアップして進めているところで、かなり具体的な指標を見ながら進めていらっしゃるので、それを健康日本21のほうにもマージしていくというような状況になっています。
女性については、今回、女性の健康ということで、女性の痩せ、骨粗鬆症検診受診率、それから女性の飲酒者が増えたことが悪化した項目として注目されていますので、そこに重点を置いた取組を進めていかなければいけない。かなり具体的なアクションが進みつつあるところだと思っておりますが、例えば職域もそうですし、高校・大学とか、なかなか自治体の健康政策が及びにくいところについてどうしていくかというのは、課題感が大きいのかなと思っております。多様な主体と一緒になって取り組めるというのがこれから必要ですし、それから、データの共有とか、そういうところも重要な観点かなと思っております。
北出委員、よろしいでしょうか。
【北出委員】 ありがとうございます。確かに今、成長曲線をしっかりと小学校教育に取り入れるという話もあるみたいで、私たちもまた教育委員会の壁がとても大きいので、どうなのかなと思ってお聞きしたんですけど、非常に勉強になりました。ありがとうございます。
【渡邉部会長】 久野委員、お願いします。
【久野部会長代理】 お二人とも大変ありがとうございました。非常に勉強になりましたし、津下委員にぜひうちの学生の前で講義していただきたいと強く思いました。
逆にお二人に特に津下委員に簡単に、コメントをいただければと思います。厚生労働省の1つの柱に、医療費を下げるという意味で、いわゆる保健部門の専門職、保健師の方とか、ハイリスクアプローチのほうが分かりやすいし、何をやればいいかがはっきりしていると。
それに対して、スポーツ庁の政策というのはポピュレーションアプローチなので、対象が広いし、レベルも違う。専門職からすると、どのようなアプローチや政策の組み立て方をしたらいいのか。実はトレーニングをあまり組み立てられていなくて、保健部門の方々がポピュレーションアプローチを今考えていて、さらに苦手で、そのポピュレーションの政策化の人材育成とか、あるいはアカデミア側もそこを具体的に政策提示があまりできていないような気がして、今日聞いていて改めてその辺をやらないといけないなと思ったんですけど、その辺、いかがでしょうか。
【津下委員】 ありがとうございます。効果を求める保健事業ということで、短期的なアウトカムを求めるとしたら、ハイリスクアプローチは、短期的に悪い人をよくするということで、結果が出やすいし、透析を予防するとか、非常に見えやすいというのはあるんですよね。なので、そこに行きがちなんですけど、10年、20年のスパンを考えたときに、その予備群というか、健康な人に対するアプローチもおこなうポピュレーションアプローチは非常に重要と思います。これからは、ビッグデータの時代に入ってきているので、変化が期待されています。今までは、ポピュレーションアプローチというと手挙げで参加したい人は参加してになると、むしろローリスクアプローチだともいわれています。健康に関心が高い人だけが市町村の健康づくりの事業に参加して、本当に参加してほしい人は参加してくれないんだよねというまま来ていて、来た人は知識もあって、事業をする意義というのが少し薄れていた部分もあったと想うんですけど、今、市町村でビッグデータの中で、例えば医療も健診も何も受けていない健康状態不明者という方を見ていくと、本当に何もつながっていない人たちを発見できて、通いの場につなげたりができます。そういうビッグデータの活用で、本当にアプローチしていかなきゃいけない層はどこなのかということを見える化できる時代になってきたし、それから、75歳以上は後期高齢者医療制度に加入しますので、ほぼ全住民分のデータを自治体が持っていることになります。それまではいろいろな保険者があって、それぞれのいろいろな取組があって分からないんだけど、結果として75歳時点で全ての住民のデータを自治体が持てるわけです。
だから、そこの時点で、何がどんな状態で、何が課題か、また、それからどうするかということを、戦略を立てられる時代にようやくなってきたのかなと思いますので、やはりポピュレーションアプローチの質の向上というのが第三次の一番大きなテーマになるんじゃないかなと思います。
それから費用対効果もあるので、より安価に広げるかということも必要になってくるし、ボランティアを育成して、波及効果を広げるとか、いろいろな戦略でもってポピュレーションアプローチの質の向上を図るというのが、第三次。第二次はハイリスクアプローチの時代で、第三次はポピュレーションアプローチの質の向上の時代かなと思っています。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
よろしいですか。ここにいらっしゃる皆さんも大丈夫ですか。豊岡委員、お願いします。
【豊岡委員】 75歳になって全部のデータが集まっても、手後れなわけですよね。
ですから、私どものところは、そもそものスポーツ行政を、教育委員会じゃなくて行政のほうに持ってきまして、ですから、幼稚園・保育園、もっともっと下の1歳半からずっとスポーツに親しんでもらうという取組を始めて、健康づくりとそれをリンクして、30代・40代の女性のスポーツ実施率を高めたり、いろいろ、久野委員の御指導もいただきながら、ポピュレーションアプローチもしながら、先ほどの女性特有の課題の中での、やはり痩せのことにつきまして、ちょっと残念なのは、市町村レベルですと、中学生で終わっちゃうわけです。高校生がすごく大事だと思いますけれども、そこは県の役割なものですから、そうしたところともしっかりと国からもアプローチしてほしいなと願っているところでございます。
いずれにしましても、市町村におきまして、やはり健康行政とスポーツ行政一体として、そして健保組合、それから共済組合等とリンクしながら、総体的にスポーツ・運動による健康づくりを進めていかなければならないなと日頃考えながら取り組んでいるところでございますので、また御指導いただければ幸いでございます。
【渡邉部会長】 ありがとうございます。
議論が尽きないところでございますが、ちょうど時間にもなりましたので、本日予定していた議題につきましては、これにて終了とさせていただきたいと思います。
今日も熱い議論がいろいろあったわけなんですが、最後に室伏長官から一言いただければと思います。
【室伏スポーツ庁長官】 ありがとうございます。本日はお忙しい中、第28回健康スポーツ部会に御出席いただきまして、ありがとうございます。
まず、最初の障害者スポーツ振興ワーキンググループの最終報告書につきまして、スポーツ庁としましては、第3期スポーツ基本計画や本報告書も踏まえまして、障害者スポーツ振興を通じた共生社会の実現に向けて、障害者スポーツの振興を更に進めていくべく、必要な取組を行ってまいります。
Sports in Lifeガイドブックにつきましても、委員の皆様には多大なる御協力を賜りまして、すばらしいものができてまいりましたので、引き続き活用促進に向けて周知を図ってまいります。
ライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの推進につきましても、今日もたくさん御意見いただきましたので、しっかりと定着するように、進めてまいります。
記者懇談会でライフパフォーマンスとは、高齢者であれば、寝たきりにならず家事や外出、社会参画をすることができるなど、生活活動の機会を維持・向上できる能力、また、働く世代・子育て世代であれば、元気に通勤し、家事・子育てをきびきび行うことができるなど、仕事と家事を両立し、人間関係の構築を図りながら活躍し続ける能力と説明させていただきました。イメージも、具体的に示していくと、分かりやすくなると思います。
さらに、スポーツを通じた健康増進に係る施策の動向につきまして、本日は津下委員、小松原委員より貴重な御発表をいただきました。津下委員におきましては、今回、1期から3期までの流れも大変勉強になりました。将来に向けて、スポーツ庁もどのように厚生労働省とも連携して取り組んでいくかという点、また、私もよく国民保険制度の話をさせていただいておりますが、国民保険制度が充実している国というのは、世界中見渡してあるわけではなく、ライフパフォーマンスというわけじゃないですけど、自分自身で体の管理や体調管理をする能力を高めていかない限りは、国民保険の将来の高齢者への負担が膨らんでいくという話がありましたけど、自分の投資も併せて個人の投資も、不健康になってしまうと増えていく。個人にも係るんだと思っていないところもあるので、こう見ると、自分のことではないなと思うところもあるので、個人にも、若いときから運動習慣があるほうが将来、医療費とは違うことに使うことができる等、個人に係るようなところに意識が来るとさらに良いなど、皆様もアイデアがあるかと思いますけども、大変勉強になりました。ありがとうございます。
本日は、現委員で開催する最後の部会になります。これまで様々な御意見、御知見も賜りまして、改めまして感謝申し上げます。ありがとうございます。
スポーツ庁が掲げる、スポーツを通じた健康増進やライフパフォーマンスの向上、共生社会の実現は道半ばですので、今後とも委員の皆様におかれましては、それぞれのお立場からまた御協力を賜れればと思います。
本日はありがとうございました。
【渡邉部会長】 長官、ありがとうございました。それでは、事務局より補足があれば、お願いしたいと思います。
【中村健康スポーツ課長】 本日もいろいろ貴重な御意見をありがとうございました。
前半の議論でも、ライフパフォーマンスをいかに国民に分かりやすく正しく伝えていくかという、スポーツ庁にも課されたミッションかなと思っております。我々もいろいろ、委員の皆様のお知恵もいただきながら、工夫していきたいと思っていますし、後半の議論でも、どう実践していくのかということも非常に重要だと思いますので、地方公共団体の皆様とか、保健事業とも連携しながら、どういうことができるか考えていきたいと思っております。
最後に、私のほうから一つ、皆様に参考情報としてお伝えさせていただきたいことがありまして、本日の資料で、参考資料4としてお配りしておりますけれども、医薬品の不適正使用防止についての取組ということでございまして、トップアスリートだけではなくて、最近、医薬品の不適正使用が一般の方にも蔓延しているということで、それを防止する取組として、先日の7月9日に、スポーツ庁と日本製薬団体連合会とで共同宣言をしております。今後、これを広く周知していくということで、裏面に、ポスターをつくっておりまして、まず第1弾の取組として、筋肉増強剤の不適正使用について周知していくということでございます。
この取組も、ハイパフォーマンスで得られた知見を一般の方に広めていくということで、啓発活動をしていこうということでございますので、委員の皆様方もこういう動きがあることは御承知おきいただければと思います。
【室伏スポーツ庁長官】 ありがとうございます。私のほうから補足で、これはスポーツ庁と日本製薬団体連合会が参与したもので、なぜこういうことを行っているかというと、アンチ・ドーピングの精神では、トップアスリートのみならず、医薬品は体、病気、けがを治すものにもかかわらず、これが不適切使用されていることは大きな社会的な問題であります。スポーツ産業界のほうも、ジムやそういったところもそうですけども、インターネットから簡単に手に入ったり、自分が意図しなくても摂取してしまうことも含めて大きな問題で、下流で締める、気をつけましょうでは無く、上流で出てくる、医薬品を製造する元とコラボレーションし、絶対に許すことはできないという声明を出したものです。
今回は、筋肉増強剤で行っていますけども、今後も第2弾とか展開していこうと思うのですが、これはオーバードーズ問題も当てはまります。腰痛・肩こりなどの運動機能の痛みで、痛み止めを使い続けてしまっているのは、皆さん御存じのとおりだと思いますが、東川町のスポーツ庁の取組では、腰痛・肩こりは運動によって改善することが分かっています。そういった観点でも、不適切な使い方ではなく、薬の効果も、やはり運動と同時にすることで効果があることも分かっていますし、こういった薬との付き合い方は、本当にアンチ・ドーピングの精神から、今後も一緒にコラボレーションしていこうという話をしております。薬局で運動を行うところも増えてきているわけであって、今後の薬との付き合い方について、産業にとっても適切に使用されていることはいいことであるものの、不適切に使用することで健康を害することは製薬業界も大変大きく懸念しているところで、これは日本医師会からも賛同いただいていますし、世界アンチ・ドーピング機構の会長からもメッセージをいただいて、国でこういうことをやっているところはなかなかないということで言っていただきました。
ぜひこういったことをまた今日御紹介させていただき、広めていきたいと思っております。
【渡邉部会長】 長官、ありがとうございました。
それでは、本日の部会はこれにて終了させていただきます。
委員の皆様、どうもありがとうございました。
―― 了 ――
スポーツ庁健康スポーツ課