資料9 スポーツ実施率向上のための新たな制度改正も視野に入れた中長期的な施策について(方向性)

スポーツ実施率向上のための新たな制度創設・制度改正も視野に入れた
中長期的な施策について(方向性)

2019年2月12日
スポーツ庁

「スポーツ実施率向上のための行動計画」においても示されたように、今後、新たな制度創設・制度改正も視野に入れた中長期的な施策について取りまとめを行うこととしている。
健康スポーツ部会における議論、各委員からの意見及びヒアリング等から、中長期的な施策の方向性について、以下のとおり整理した。

1.地域におけるスポーツの環境づくり
(1)総合型地域スポーツクラブの質的充実
・現在、3,599(平成30年7月1日現在、創設準備中も含む)の総合型地域スポーツクラブが存在しており、全国の市区町村の80.8%に設置されている。しかし、クラブの活動実態や運営形態、ガバナンス等の状態は様々な状況にある。
・また、総合型地域スポーツクラブは、地域コミュニティの核として、地域スポーツ環境の充実やスポーツを通じた地域課題解決などの公益的な取組を通じて、地域住民から求められる役割を果たしていくことが期待されているが、現状、必ずしも十分に機能しているとはいえない。
・今後、総合型地域スポーツクラブがこれらの役割を担っていくために、さらなる認知度の向上とともに質的充実を図ることが必要である。

(2)スポーツ推進委員制度の新たな枠組
・スポーツ推進委員は、全国に約5万人が存在し、スポーツ基本法において、スポーツの推進のための事業の実施に係る連絡調整並びに住民に対するスポーツの実技の指導その他スポーツに関する指導及び助言を行うものとするとされている。
・スポーツ推進委員には、総合型地域スポーツクラブやスポーツ団体等との連携・協働を促進する役割も期待されており、さらなる資質向上を図っていく必要がある。
・そのためには、個々のスポーツ推進委員が自らの役割を認識し、必要となる知識等を着実に身に着けられること、スポーツ推進委員の知名度向上を図り、地方自治体や関係機関との連携により、活躍の場をさらに広げることが必要である。


(3)スポーツをする場の確保
・スポーツを実施できない理由として、「時間」とともに挙げられるのが、「場」がないということである。その際、財政難の中では、既存施設の活用、特に、交通至便な場所にあるという理由から学校施設(校庭・体育館等)の利用が考えられる。しかし、利用手続等が一般にわかりにくい、利用するための条件が厳しいといった声も聞かれる状況にある。また、学校施設に限らず、施設の老朽化等により安全面で課題を抱える施設が増加していくことも想定される。
・学校施設をスポーツの場として気軽に利用できるようにしていくこと、また、公園や道路等の公共の場も含めて、あらゆる空間を活用してスポーツをしやすい環境を整備していくことが必要である。
・今後、民間との連携を一層図りながら効率的にスポーツ施設の整備・管理運営を進めることが必要である。


2.スポーツに関わる関係団体との連携
(1)医療機関等との連携の促進
・運動・スポーツは生活習慣病等の予防のみならず、治療中においても効果があると示されている例もある。しかし、医療機関等においては、国民が安全・安心に運動・スポーツを継続するために必要な情報について、スポーツ関係者との間で共有が進んでいないことも多い。
・このため、今後、医師等から生活習慣病の指導等を受けた者や病気療養(治療及び養生)中の者に対して、運動・スポーツに関する情報が共有され、運動・スポーツをしようというきっかけづくりが促進されることが必要である。
・また、医療機関等と運動・スポーツ施設や指導者等との連携・情報共有を図り、個々人のリスクに応じた適切な運動・スポーツプログラム等の提供や連携・危機管理体制の構築を図ることが必要である。

(2)スポーツ実施率向上に向けた推進体制の構築
・スポーツ実施率の向上を通じた健康増進の取組については、国のみならず、地方自治体、企業・団体等の関係機関が連携して取り組んでいく必要があるが、現状は、それぞれの主体が独自にその取組を実施しているという状況にある。
・このため、各主体がスポーツの実施に関する意識を向上させ、有機的な連携を構築するために、あと1年半後に迫った2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等を契機とした推進体制の構築を図っていく必要がある。

(3)企業における従業員のスポーツ実施の促進
・従業員の健康を企業の経営課題として捉え、健康確保対策に取り組む企業が増加しているなか、国において必要な環境整備を行うとともに、これらの取組について関係機関・団体等との連携を図り、一層の促進を図ることが求められている。
・そして、健康確保対策の一つとして運動・スポーツの必要性が経営者層にも理解され、企業内で従業員のスポーツの実施が促進されていくことが必要であることから、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(THP(トータルヘルスプロモーションプラン)指針)が改正されることも契機とし、従業員が運動・スポーツを実施しやすい環境整備を事業者に促していくことが必要である。


3.障害者スポーツの推進
・地域のスポーツクラブへの障害者の参加・受入れが十分でなく、運動部活動・クラブがある特別支援学校が約6割にとどまる等の状況の中で、行動計画では、特別支援学校の体育施設の活用促進やそれらを拠点としたクラブの設置を掲げているところ、施設設備の在り方や備えおくべき用具の基準など制度的な面についても、あわせて対応が必要である。
・また、地域で障害者スポーツのコーディネートを行う人員の担当地域が広域にわたり、目配りに限界があるとの指摘があるほか、スポーツを実施する側にとっても、スポーツ実施に当たっての経済的負担が重いため、これらの負担を軽減するための方策を講じる必要がある。
・このほか、重度障害者でもスポーツ実施が可能となるよう、医療・福祉との連携をより促進するための仕組みを構築する必要がある。


4.エビデンスに基づく健康スポーツ政策の取組の促進
(1)地方自治体における現状の「見える化」
・現在、我が国全体のスポーツ実施率については、スポーツ庁が実施している「スポーツの実施状況等に関する世論調査」において把握しているが、地方自治体においては、その把握状況がまちまちとなっている。
・このため、地方自治体において、スポーツ実施率を把握し「見える化」することで、スポーツ実施率向上策のPDCAサイクルの構築を図るため、簡易な方法でスポーツ実施率の調査が可能となる仕組みを構築することが必要である。

(2)スポーツに関する研究の充実・調査研究成果の利用促進
・スポーツを通じた健康増進施策のさらなる推進のためには、複数年にわたる「スポーツが健康に及ぼす影響(効果)等に関する研究」や「運動・スポーツの習慣化等のための行動変容等につなげるための方策等についてコホート的なアプローチを含めた調査研究」の必要性等について指摘を受けているところである。
・また、スポーツ庁内で過去に実施した調査・研究のデータについて、公表されていてもローデータがないと活用しづらいなどの指摘も受けている。
・このため、スポーツに関する研究の充実を図り、調査研究成果の利用促進を図るための環境整備が必要である。


お問合せ先

スポーツ庁健康スポーツ課

(スポーツ庁健康スポーツ課)