資料1 健康スポーツ部会(第3回)での主な御意見

【障害者に対する取組について】
○先天的障害者が通う学校は、特別支援学校、普通学校の特別支援学級、通常学級とさまざまであり、把握が難しく、必要なところに必要な情報がいかない。

〇後天的障害者が、障害を持つ前にスポーツをやっていたかどうか、それがプラスに作用しているかどうかを聞くと、85.2%がプラスに作用したと回答している。

〇後天的障害者が障害を持ってからどのくらいでスポーツを始めたかの調査では、保険でリハビリテーションができる半年未満は5.1%、平均では3.7年。リハビリを終えてからスポーツを始めるまでの期間がかなりあり、溝となっている。

〇医療関係者、教員、健康運動・スポーツ・諸事業の指導者が障害者スポーツの知識、情報を持つこと。そして、親や家族が、どこに行けばスポーツができるという情報を持つこと、障害者自身がどうやって情報を得るかが鍵である。

〇ポイントとして三点。一点目は障害のある人のスポーツに関する様々な情報の共有と連携。地域で医療・福祉・教育・スポーツをコーディネートする人が必要。

〇二点目はスポーツ施設やクラブなど受入側での体制整備。子供のスポーツ用車椅子は持ち運びが大変であり、置いてあればそこで障害のある子がスポーツを楽しむことができる。そして、施設を使っている他の利用者の理解が進むことも必要。

〇三点目は障害者の行動変容。具体的なロールモデルを示し、体育館にはこう行くと一人で行ける、こうするとスポーツできるといった丁寧な実践的説明が必要。

〇体育教員免許を取るのに、障害者スポーツの授業を必修にするのはどうか。現在は、ほとんど選択制である。

〇障害のある人自身がどのように情報を取っていくか。身体障害者も精神障害者も在宅の方が多い。情報の提供のあり方を考えていく必要がある。今スポーツをやっている人に1人連れてきてもらう「友達作戦」も考えられる。

〇自分の障害と同じような障害を持っている人たちがこういうふうにスポーツをやっているというのがわかるような情報提供の仕方が重要。「Specialプロジェクト2020」を学校だけでなく地域でも実施できないか。

〇障害のない子供は、学齢期に成長・発達段階で、体育の授業や遊びの中で様々な身体活動を経験する。しかし、障害児、特に先天性の障害児はそうした経験が少なく、そのような指導の場が整備されていくことが必要である。

【子供に対する取組について】
〇幼少年期の運動・スポーツは2つの意味がある。一つは発育・発達途上にある子供を対象として、育つ子供達に、豊かな心や健やかな体の育みをもたらすもの。

○もう一つは、成人期以降の運動・スポーツの習慣化につながるものであること、だからこそ、幼児期には遊びが大事。

○発達・教育の中では、認知的なもの、情緒・社会性のもの、身体運動と大きく3つに分かれる。子供の運動・スポーツは、この3つが満遍なく発揮できる。

○体育や保健体育(小学校から高校までの12年間)の学習指導要領は、6・3・3ではなく4・4・4という考え方であり、発達の段階に沿って成り立っている。

○最初の4年間は様々な基本的な動きを身に付け、次の4年間は様々なスポーツを経験し、最後の4年間は少なくとも1つの運動を選び継続することができる、という形になっている。

○今回の学習指導要領改訂で、小学校低学年では「体つくり運動」という領域が「体つくりの運動遊び」となった。低学年では運動遊びが中心になっていく。

○幼少期は一生のうちで一番動きを身に付けやすい時期である。動きの身に付け方には二通りあり、一つは「動作の多様化」。これは、動きのレパートリーの増大とバリエーションの拡大である。

○運動神経がよくなる36の動作を十数年前に提唱した。「ブンバ・ボーン」という踊りを監修しており、36の動作全部ではないが、動きを取り入れている。

○もう一つは「動作の洗練化」。これは、だんだん、ぎこちなさとか力み過ぎがなくなって、滑らかな運動経過になったり、動きと動きが結合していったりすること。この点は、これまであまり理解されなかったところ。

○学校段階で学びや運動を終わらせず、子供の頃からの経験が生涯にわたって生活の中に位置づいていく「持ち越し効果」が重要である。研究によれば、面白く、心地よく、自ら学んでいったということが重要であるといわれている。

○1980年代前後は、都心でも、空き缶でのボウリングのような遊びやゴム跳びなどをしていた。運動場や体育館がなくても、身近な道路が遊び場だった。でも「道路で遊んではいけません。」という標語を勝手に作ってしまった。
○ロンドンでは、子供達を元気にしようということで、子供達が遊びだしたら車を入れないということをやっている。わが国でも、朝のスクールゾーンに対して、夕方にプレイゾーンとして車を入れないということもあるのではないか。

○イギリスにはプレイワーカー、ドイツにはプレイリーダーという言葉があり、オーストラリアでは特に低体力や運動嫌いな子供の取組として、プレイ・デリバラーを養成している。スポーツ庁のプレイリーダー養成は重要である。

○プレイリーダーは子供達に遊びを届けて、その遊びの中で成長していくのを見ながら少しずつ消えていくことが大事。いつまでもいると子供の遊び文化にならない。

○よく、「時間」「空間」「仲間」が必要というが、今はこれが揃っても子供達は遊ばない。なぜかというと「遊び」そのものが消えてしまっているから。

○アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)は、子供達が様々な運動遊びを通して、楽しく積極的に体を動かす中で、動きの量と質を引き出すためのプログラム。

○2010年に小学校1年生から4年生を対象にACPを作り、2015年により低い年齢の子供を対象とする幼児期からのACPを作成した。また、少年団は今まで小学生ばかりであったが、今年から、3歳児から登録できるようにしている。

○現代の子供は遊びそのものを知らない。親・教員も遊びを知らない世代になりつつある。「時間」「空間」「仲間」に加え、遊び方を伝える「手間」が必要となる。

○親子の会話において、運動・スポーツのことを話題にするだけで、子供の身体活動量に影響を及ぼし、結果として体力テストのスコアが高いという調査結果もある。

○大人に対するアプローチが全て子供に通じるわけではないと考える必要がある。運動・スポーツを行うことは、健康・体力のためだけではなく、運動・スポーツをすることが格好いい、楽しいということをアピールしていく必要がある。

○日本体育協会では、「子どもの身体活動ガイドライン」として、1日にトータルで60分以上、体を動かすことを提案している。この身体活動には、スポーツはもちろん、体を使った遊びや掃除など家の手伝いを含む。

○ACPでは、大人が子供に対する指導を通じて何を提供するべきかを提案している。様々な運動遊びについて、遊び方の紹介のほか、発達段階に応じた遊びの展開例や活用法について解説をしている。その多くは、特別な道具を必要としない遊び、スキンシップや仲間づくりの効果が期待できる遊び。

○運動遊びには大きな可能性があるが万能ではない。どのように指導するかが重要。ACPでは、指導法・指導技術について詳しく解説している。

【意見交換における意見】
○小児科の先生がACPの動きをどれだけ知っているか、例えば、保健師さんはどうか、健診のときにそういった知識があればよいと思う。また、プレイリーダーによる子供の親や祖父母などへのアプローチも必要と思われる。

○子供と親は一緒に遊ぶだろうというのが、最近はそうでもなくて、面倒くさい、専門の人に任せておけばよいと考えていて、親子遊びの会などでも、かなりしつこく一緒にやりましょうと言わないと入ってこない。そういう習慣ができてしまっている。

○中学や高校の運動部で総体やインターハイが終わると引退することになるが、「引退」というのがおかしい。競技的な部分は終わっても、何かしら継続できるような仕組みが必要ではないかと思う。

○大学では競技のサッカー部には人が集まらなくても、多くのフットサルクラブがあったりする。楽しく体を動かして、おいしいものを食べに行こうということもある。また、部活で運動部ではなくても週1回は運動しようといったことも大事。運動部、文化部、帰宅部と、大人が分けてしまったところもある。

○教員養成課程における障害者スポーツの必修化は、現実には、コストパフォーマンス的に不可能に近いと感じる。何をプライオリティとして考えるのかが重要。

○現場で障害者スポーツを積極的に教えている方は、必ずしも体育の教師ではなかったりすることもある。そういった観点から、必ずしも体育に限定しない形で、障害者スポーツを積極的に皆が学んでくれたらと思う。

○子供のことを考えた時に、スポーツをしない子供の原因は何かを究明する必要がある。中高年では無関心層が7割くらいいるということだった。原因を見つけて、どういった対策を打っていくかを考えていくことが必要。

○親のリテラシーを高めていくことは必要。また、一つではなく、いろいろなスポーツをやっていくことが大事。そこから競技に向かう子、そうじゃない子も出てくる。

○幼児の運動能力について、物理的環境や親などの心理社会的環境も関係するといわれている。例えば、運動能力は、バス通園よりも徒歩通園の子の方が高い、集合住宅よりも一戸建てに住んでいる子の方が高い、集合住宅では高層階よりも低層階の子の方が高いといわれる。ただ、「では一戸建てに引っ越そう」とはいかないので、そういう状況を知り、なるべく子供が動ける工夫をしていく必要がある。

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