資料3 第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策(案)

1.スポーツを「する」「みる」「ささえる」スポーツ参画人口の拡大と、そのための人材育成・場の充実
【政策目標】
ライフステージに応じたスポーツ活動の推進とその環境整備を行う。その結果として、成人のスポーツ実施率を週1回以上が65%程度、週3回以上が30%程度となることを目指す。


(1)スポーツ参画人口の拡大
1.若年期から高齢期までライフステージに応じたスポーツ活動の推進
[施策目標]
国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む基盤として、国民の誰もが各々の年代や関心、適性等に応じて日常的にスポーツに親しむ機会を充実する。

[現状と課題]
・平成27年度調査においては、成人の週1回以上のスポーツ実施率は40%程度、週3回以上のスポーツ実施率は20%程度。
・スポーツを行う理由は、健康・体力つくり、楽しみ・気晴らし、仲間との交流など様々。
・スポーツを行わなかった理由は、仕事・家事・育児が多忙、体が弱い・年を取ったなど世代によって異なる。

[具体的施策]
(ア)国は、「する」「みる」「ささえる」スポーツの楽しみ方や関わり方等を分かりやすく提案するとともに、スポーツ未実施者への働きかけやスポーツの継続的実施のための方策等について整理した「ガイドライン」を策定・普及を通じて地方公共団体やスポーツ団体等の取組を促進することにより、誰もがライフステージに応じてスポーツに親しむ機会を充実。
(イ)国は、スポーツ実施に関する調査や顕彰制度等を通じて、民間事業者が行う新たなルールやスタイルによるニュースポーツを開発・普及することにより、適性等に応じたスポーツの機会を提供。
(ウ)国は、高齢者が楽しく継続的に取り組むことができ、健康寿命の延伸に効果的な「スポーツプログラム」を策定し、地方公共団体やスポーツ団体に普及することにより、高齢者のスポーツ参加機会を充実。


2.学校体育をはじめ子供のスポーツ機会の充実による運動習慣の確保と体力の向上
[施策目標]
 学校における体育活動を通じ生涯にわたってスポーツに親しむ資質・能力を育てるとともに、放課後や地域における子供のスポーツ機会を充実する。
その結果として、自主的にスポーツをする時間を持ちたいと思う生徒を80%にすること、スポーツが「嫌い」・「やや嫌い」である生徒を半減(15.5%→8%)すること、子供の体力水準を昭和60年頃の水準まで引き上げることを目指す。

[現状と課題]
・自主的にスポーツをする時間を持ちたいと思う中学生は60%。
・スポーツが好きな子供の割合は、小学5年生と比較し中学2年生が低く、特に中学女子は2割以上が「嫌い」・「やや嫌い」であり、運動習慣が二極化。
・子供の体力は緩やかな向上傾向にあるが、昭和60年ごろのピーク時と比較すると依然として低い水準。
・小学校は学級担任制であり、体育の専科教員の配置は6%にとどまる。
・運動部活動の顧問のうち、保健体育以外の教員で、かつ担当競技の経験がない者が中学校で45.9%、高等学校で40.9%。
・体育活動中の死亡事故は平成24年度までは減少傾向であったが、それ以降横ばい。中学校、高等学校における傷害の発生のほとんどは部活動。

[具体的施策]
(ア)国は、体育・保健体育の学習指導要領の改訂において、運動に対する興味や関心を高め、知識と技能のバランスに配慮した指導内容等に改善することにより、児童生徒のスポーツに親しむ資質・能力の育成やスポーツの習慣化を推進。
(イ)国は、地方公共団体と連携し、武道を指導する教員の研修、指導者の派遣、武道場の整備等を通じて、中学校における武道の指導を充実。
(ウ)国は、地方公共団体と連携し、小学校における体育の専科教員の導入を促進するとともに、運動が苦手な児童生徒への指導など学習指導要領の改訂を踏まえた研修を実施することなどを通じて、教員の採用・研修の充実を図り、学校体育に係る指導力を向上。
(エ)国は、地方公共団体と連携し、全国体力・運動能力、運動習慣等調査により全国的な子供の体力・運動能力等を把握し、その分析結果に基づき、地方公共団体及び学校は、成果と課題を検証し、体育・保健体育の授業等を改善。
(オ)国は、教員、生徒、保護者等を対象とした運動部活動に関する総合的な実態調査や、スポーツ医・科学の観点等を取り入れた運動部活動の在り方に関する調査研究を実施。その結果に基づき、日本中学校体育連盟や全国高等学校体育連盟等と連携し、生徒の発達段階等を考慮した練習時間・休養日の設定や、生徒の多様なニーズに応じた運動部活動の展開など運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインを策定し、地方公共団体及び学校の取組を推進。
(カ)国は、地方公共団体、民間団体等と連携し、スポーツに係る専門性を有し大会引率も可能な部活動指導員(仮称)を制度化し、配置を促進することにより、運動部活動における指導体制を充実。
(キ)国は、地方公共団体及びスポーツ団体等と連携し、幼児期運動指針やこれに基づく指導参考資料を各幼稚園や保護者等に対して幅広く普及し、活用を促すことで、幼児期からの運動習慣づくりを推進。
(ク)国は、地方公共団体及びスポーツ団体等と連携し、指導者や運動遊びプログラムの情報提供等により、放課後子供教室等で多様な運動を体験する機会が提供されることを促進し、小学生の運動経験を充実。
(ケ)国は、日本体育協会(日体協)と連携し、総合型地域スポーツクラブ(総合型クラブ)、スポーツ少年団の活動に関する情報を学校を通じて積極的に発信するなどの取組により、地域における子供のスポーツ機会を充実。
(コ)国は、地方公共団体及び日本スポーツ振興センター(JSC)と連携し、学校体育活動中の重大事故の情報提供や事故防止に関する研修等を充実することにより、学校体育活動中の死亡事故等を限りなくゼロにするという認識の下で学校における事故防止の取組を推進。
(サ)地方公共団体は、国の支援も活用しつつ、耐震化や芝生化など学校体育施設・設備を整備することにより、学校における子供のスポーツの場を充実。


3.ビジネスパーソン、女性、障害者のスポーツ実施率の向上と、これまでスポーツに関わってこなかった人へのはたらきかけ
[施策目標]
  官民連携による分野横断的な新たなアプローチにより、ビジネスパーソン、女性、障害者や、これまでスポーツに関わってこなかった人が気軽にスポーツに親しめるようなスポーツスタイルを提案し、成人のスポーツ未実施者(1年間に一度もスポーツをしない者)の数がゼロに近づくことを目指す。

[現状と課題]
・スポーツ実施率(週1回以上)を年代別に見ると、20代及び30代が3割弱と低い。
・20代及び30代のスポーツ実施率(週1回以上)は女性の方が低い。
・障害者のスポーツ実施率は健常者に比べ低い。
・平成27年度調査においては、スポーツ未実施者の割合は20%程度。
・現在スポーツをしておらず今後もするつもりのない層が○%存在。

[具体的施策]
(ア)国は、産業界、地方公共団体等と連携し、通勤時間や勤務時間に気軽にスポーツに取り組める環境づくりを進める企業の表彰・奨励等を通じて、ビジネスパーソンのスポーツ習慣化づくりを推進するとともに、民間事業者における「健康経営」を促進。
(イ)国は、先行事例の情報の提供等を通じて、地方公共団体、民間事業者、スポーツ団体等による連携・協働体制を整備することにより、女性の幼少期から高齢期を通じニーズや意欲に合ったスポーツ機会を提供。(後掲)
(ウ)国は、地方公共団体と連携し、特別支援学校や総合型クラブ等を活用するなど、障害者スポーツの裾野拡大に向けた取組を推進。(後掲)
(エ)国は、スポーツと健康、食、観光、ファッション、文化芸術との融合や、ITを活用したスポーツの魅力向上等の民間事業者の取組を支援することにより、スポーツに関心がなかった人の意欲を向上。


(2)スポーツ環境の基盤となる「人材」と「場」の整備
1.スポーツに関わる多様な人材の育成と活躍の場の確保
[施策目標]
スポーツに関わる人材の全体像を把握しつつ、アスリートのキャリア形成支援や、指導者、専門スタッフ、審判員、経営人材などスポーツ活動を支える人材の充実を図ることにより、スポーツ参画人口の拡大に向けた環境を整備する。

[現状と課題]
・スポーツに関わる多様な人材について、戦略的な政策立案のための活動実態の把握が必要。
・アスリートのキャリア形成支援は各団体が個別に行っているが、支援体制や内容が異なり、サポートが不十分。関係者が連携した支援の強化が必要。
・現場ではスポーツ指導者の育成課程を経ずコーチングしている者も存在している。「モデル・コア・カリキュラム」の普及等を通じ、指導者が資格を有するなど指導者の質を保証することが必要。
・医療、栄養、スポーツ科学など専門知識を生かした支援人材の充実や、審判員が活動しやすい環境整備が必要。
・スポーツボランティアは、活動の希望者に比して実際のボランティア実施率が低く、参加しやすい環境の整備が必要。
・国・地方のスポーツ政策を推進する人材が専門的知識等を習得する機会が少なく、資質向上を図る仕組みの充実が必要。

[具体的施策]
<スポーツ人材の全体像の把握>
(ア)国は、プレイヤーのほか、指導者、専門スタッフ、審判員、スポーツボランティア、サポーター、経営人材などスポーツに関わる人材の数や属性の特徴などの全体像について調査研究を実施し、今後の施策に活用できる情報を明確化。

<アスリートのキャリア形成>
(イ)国は、スポーツ団体や大学と連携し、アスリート経験者のキャリアに関するデータ蓄積を充実するとともに、若手アスリートに対するセミナーの開催や大学での学習支援の充実などを通じてデュアルキャリアの取組の定着を促進。
(ウ)国は、地方公共団体、スポーツ団体、民間事業者等と連携し、引退後のキャリア形成支援として、指導者やスポーツ団体職員等としての雇用のほか、地域での運動指導に関する産業拡大支援等を通じ、引退したアスリートの活躍の場を拡大。また、企業と現役トップアスリートをマッチングする、日本オリンピック委員会(JOC)の就職支援制度「アスナビ」や学び直し支援の充実により企業等での就業を促進。

<スポーツ指導者の育成>
(エ)国及び日体協は、スポーツ指導者養成の「モデル・コア・カリキュラム」を、日体協指導者養成講習会やスポーツに関する人材を育成する大学等へ普及し、指導内容の質を確保。その際、アクセスしやすくオープンなオンラインコンテンツを充実。
(オ)国及び日体協は、スポーツ団体と連携して、競技人口等を踏まえたスポーツ指導者の育成方針を策定し、体系的なスポーツ指導者育成制度を整備。例えば、学校部活動やスポーツ少年団などの指導者の質の向上を図るため、短期間で取得可能な指導者資格を創設するほか、コーチ育成者の養成などにより、コーチが育成過程に応じて継続的に学び続けることのできる仕組みを構築。
(カ)国及び日体協は、地方公共団体やスポーツ団体と連携し、運動部活動に関わる教員などにおける有資格者の増加を図り、児童生徒が適切なスポーツ指導が受けられる取組を推進。
(キ)国は、スポーツ指導者に関する資格取得のためのプログラムや資格取得者の活動状況について整理し、発信することで、スポーツ指導者に優秀な人材を得るとともに、ステップアップを支援。
(ク)国は、地方公共団体、関係団体と連携し、学校・地域・民間スポーツクラブ等における十分なスポーツ指導機会を確保・調整することによりスポーツ指導者が「職」として確立する環境を醸成。

<専門スタッフ、審判員、ボランティア等>
(ケ)国及び日体協は、スポーツ団体・大学等と連携し、医療・栄養・スポーツ科学など専門的な知識・技術を有する支援人材の資質向上と配置を充実し、スポーツをする人の健康管理と競技力向上を推進。
(コ)国は、民間事業者等と連携し、クロスアポイント制度の活用や競技団体への出向期間を勤続年数で通算する等、スポーツ指導者が一定期間指導に専念できる配慮を行うよう要請するなどにより職場の理解を促進。
(サ)JOCは、国及びJSCの支援も活用し、ナショナルコーチアカデミーの充実、審判員、専門スタッフ等の海外研さんの機会の確保など、中央競技団体(NF)におけるスタッフを充実することにより、トップアスリートの強化活動を支える環境を整備。(後掲)
(シ)国は、審判員の多くが兼職している状況を踏まえ、優れた活動を行う審判員の表彰等により所属先の理解を促進。
(ス)国は、2020年東京大会をスポーツボランティア醸成の好機として、大学が進めるスポーツボランティア育成の先進事例の形成を支援することにより、スポーツボランティアの増加を促進。

<スポーツ推進委員等>
(セ)国は、地方公共団体がスポーツ推進委員を委嘱するにあたり、総合型クラブと市町村、地域のスポーツ団体等との連携・協働を促進することができる人材の選考と研修の充実を促すことで、地域スポーツの振興をささえる人材の資質を向上。
(ソ)国は、地方公共団体やスポーツ団体と連携し、研修等の海外の最先端のスポーツ政策の動向を学ぶ機会の充実などスポーツ政策を推進する人材の資質を向上。


2.総合型地域スポーツクラブの質的充実
[施策目標]
人口減少・少子高齢化社会において、総合型クラブが、種目を超えてスポーツを楽しみ・支えるという役割を持続的に果たしていくため、従来のクラブ数の量的拡大に重点を置いた施策から、質的な充実に重点を置いた施策に転換を図る。
このため新たな仕組みとして公益的な事業体としての役割を果たす総合型クラブの登録・認証等の制度を構築するとともに、総合型クラブの自立的な運営を促進する環境を整備する。さらに、地域に根ざしたクラブとして定着していくため、総合型クラブによる地域の課題解決に向けた取組を推進する。

[現状と課題]
・総合型クラブは3,550クラブが、全市区町村の約8割に存在。
・総合型クラブの認知度は約3割で、会員数は全国で約130万人。
・自己財源率が50%以下の総合型クラブが約4割、PDCAサイクルが定着しているクラブの割合は約4割。
・行政と連携して地域の課題解決に取り組んでいる総合型クラブの割合は18.4%。総合型クラブが地域から求められる役割を果たし「社会的な仕組み」として定着していくことが課題。
[具体的施策]
(ア)国は、日体協、総合型クラブ全国協議会、JSC、地方公共団体等と協議して、総合型クラブの登録・認証等の制度における枠組みを策定し、これに基づき、日体協は、関係団体と協議して、総合型クラブの登録・認証等の制度を整備(47都道府県)。
(イ) 国は、地方公共団体、日体協、総合型クラブ全国協議会等と連携し、都道府県レベルで中間支援組織を整備(47都道府県)するとともに、PDCAサイクルにより運営の改善等を図る総合型クラブの増加(37.9%→70.0%)に向けた研修会等の開催、好事例の情報発信や広報活動等により、総合型クラブの質的充実や認知度の向上を推進。
(ウ) 地方公共団体は、国等により示された先導的な取組事例を活用して、総合型クラブによる地域課題解決に向けた取組を推進(18.4%→25%程度)。
(エ) 国は、JSC及び日体協と連携し、中間支援組織が主体となり総合型クラブの自立的な運営を促進する事業や地方公共団体が主体となり総合型クラブによる地域課題解決に向けた取組を推進する事業を通じて、総合型クラブの質的な充実を促進。


3.スポーツ施設や広場等のスポーツに親しむ場の確保
[施策目標]
 スポーツができる多様な場を確保するため、オープンスペースなど施設以外のスポーツができる場所の創出を含め、安全なスポーツ施設の確保とストックの適正化を目指す。そのため、スポーツに親しむ地域住民が利用可能な施設の実態を的確に把握し、スポーツ施設に関する計画の策定を進める。

[現状と課題]
・スポーツ施設やスポーツができる場の実態把握が十分でない。
・人口減少、財政難等によるスポーツ施設数の減少。
・スポーツ施設の中には、老朽化が進んだものや耐震診断未実施も多い。

[具体的施策]
(ア)国は、公立や民間のスポーツ施設の実態を定期的に把握するとともにスポーツ施設のストックの適正化に関する優良事例の収集や情報提供等により地方公共団体が行う施設計画の策定を促進。
(イ)学校体育施設の開放について運用の適正化を図りつつ、有効活用を促進。
(ウ)国は、スポーツ施設のバリアフリー・ユニバーサルデザインについて、関連する基準や優良事例等の収集・情報提供等により、障害者や高齢者のスポーツ施設の利用しやすさを向上。
(エ)地方公共団体は、国のガイドラインに基づき、スポーツ施設のストックの適正化を図るため、施設の長寿命化、有効活用、集約化・複合化等を推進。性別、年齢、障害の有無等の利用の特性にも配慮したスポーツ施設の利用しやすさの向上やITの活用等により、利用者数の増加、維持管理コストの低減、収益改善等を推進。
(オ)地方公共団体は、国による優良事例の情報提供や技術的支援等を踏まえ、スポーツ施設の新改築にあたり、コンセッションをはじめとしたPPP/PFI等の民間活力により、魅力や収益力を高め、賑わいを創出。
(カ)国は、国民体育大会や各種競技大会等を開催するための施設の基本的な方向性を示し、これに基づき関係団体が基準等を策定することにより、効率的・効果的な施設整備を促進。
(キ)国は、スポーツ団体等と連携し、体操やキャッチボール等が気軽にできる場としてオープンスペースの有効活用を推進し、施設以外にもスポーツができる場を地域に広く創出。


4.大学スポーツの振興
[施策目標]
 我が国の大学が持つスポーツ資源の潜在力(人材輩出、経済活性化、地域貢献等)を十分に活用するとともに、大学スポーツ振興に向けた国内体制の構築を目指す。

[現状と課題]
・大学のスポーツ資源(学生、指導者、研究者、施設等)の活用は、国民の健康増進に資するとともに、地域・経済の活性化の起爆剤となり得る。
・大学スポーツは「みる」スポーツとしても潜在力がある。
・指導者やボランティアの育成、アスリートのキャリア形成支援など、大学は質の高いスポーツ人材の育成に重要な役割を担っている。
・より多くの学生がスポーツに取り組む環境を整備することが必要。

[具体的施策]
(ア)国は、全国大学体育連合等の関係団体と連携し、大学スポーツの重要性について大学トップ層はもとより、広く大学関係者全体の理解を醸成することにより、大学スポーツの振興の機運を醸成。また、大学は、国の当該取組を受けて、学内における大学スポーツの重要性についての理解を醸成するとともに、大学の規模やミッションに応じて大学における体育活動やスポーツに係る研究を充実。
(イ)国は、大学におけるスポーツ分野を戦略的かつ一体的に管理・統括する部局の設置や人材*の配置を支援することにより、大学スポーツを振興するための体制を整備。(大学スポーツアドミニストレータを配する大学:0大学→30大学)
(ウ)国は、(1)大学スポーツの振興のための資金調達力の向上、(2)学生アスリートのキャリア形成支援、(3)大学スポーツを通じた地域貢献、(4)スポーツ教育・研究の推進、(5)スポーツボランティアの育成等の大学スポーツの振興に係る先進事例を支援することなどにより大学は取組を積極的に推進。
(エ)国は、大学、学生競技連盟等を中心とした大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)の創設を支援することにより、大学スポーツ全体の魅力向上を推進。




2.スポーツを通じた活力があり絆の強い社会の実現

【政策目標】
 社会の課題解決にスポーツを通じたアプローチが有効であることを踏まえ、スポーツを通じた共生社会等の実現、地域・経済の活性化、国際貢献に積極的に取り組む。


(1)スポーツを通じた共生社会等の実現
1.障害者スポーツの振興等
[施策目標]
  障害者をはじめ配慮が必要な多様な人々が、スポーツを通じて社会参画することを積極的に推進することにより、人々の意識が変わり(心のバリアフリー)、共生社会が実現されることを目指す。
  このため、障害者が健常者と同様にスポーツに親しめる環境をつくることにより、障害者の週1回以上のスポーツ実施率を40%(若年層(7~19歳)は50%)とすることを目指す。

[現状と課題]
・平成27年度調査においては、障害者の週1回以上のスポーツ実施率は21%(若年層(7~19歳)は31.5%)。
・地方公共団体において、障害者スポーツの推進体制は不十分。
・障害者が専用又は優先的に使用できるスポーツ施設は114カ所にとどまり、車椅子での施設利用を拒否されるケースがある。
・障害者スポーツ指導者やボランティアの数は十分でない。
・学校教育における障害児のスポーツ環境は十分でない。

[具体的施策]
(ア)地方公共団体は、国による障害者スポーツの推進体制を構築するための実践研究の成果等を踏まえ、障害者スポーツの所管をスポーツ担当部局に一元化することを含め、スポーツ関係部局・関係団体等と障害者福祉部局・関係団体等との連携・協働体制の構築することにより、障害者が身近でスポーツを行えるための施策づくりを含め、障害者スポーツを総合的に振興する体制を整備。
(イ)国は、地方公共団体と連携し、スロープや多目的トイレの設置などスポーツ施設のバリアフリー化を促進することにより、障害者が利用しやすいスポーツ環境を整備。
(ウ)国は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(差別解消法)の趣旨について周知し、地方公共団体は、施設管理者に対し障害者スポーツへの理解と障害者の不当な差別的取扱の解消を要請することにより、スポーツ施設における障害者の利用を促進。
(エ)国は、地方公共団体と連携し、全ての特別支援学校が地域の障害者スポーツの拠点となることを支援することにより、身近な地域で障害者がスポーツに親しむ環境を整備。
(オ)国は、地方公共団体と連携し、総合型クラブが障害者スポーツを導入するためのガイドブックを普及すること等により、総合型クラブへの障害者の参加を促進(4割→5割)し、健常者と障害者がともにスポーツに参画する環境を整備。
(カ)国及び日本障がい者スポーツ協会(日障協)は、スポーツ団体と連携し、障害者スポーツ指導者の養成を拡充する(2.2万人→3万人)とともに、養成側と指導を必要とする側のマッチングや特別支援学校等での外部指導者の活用等により障害者スポーツ指導者の活用を推進(「活動する場がない」障害者スポーツ指導者の割合を半減させる(14%→7%))。
(キ)国は、地方公共団体及びスポーツ団体と連携し、障害者スポーツの体験会等を支援することなどを通じ、障害者スポーツに対する理解を促進(障害者スポーツの直接観戦経験者5%→20%)するとともに、ボランティアの参画を推進。
(ク)国は、地方公共団体及び大学と連携し、全ての学校種の教員に対する障害者スポーツへの理解を促進するための研修等を推進するとともに、国及び地方公共団体は、特別支援学校等に障害者スポーツ用具等の設備を整備することにより、学校における障害児のスポーツ環境を充実。
(ケ)国は、地方公共団体と連携し、2020年に全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の全国的な祭典を開催することにより、東京大会のレガシーとして地域の共生社会の拠点づくりを推進。
(コ)スポーツ団体は、国による広報活動等の支援を受け、障害のある子供たちの全国的なスポーツイベントの開催を推進することにより、障害のある子供たちのスポーツ活動とその成果を披露する場を充実。


2.スポーツを通じた健康増進
[施策目標]
  健康寿命の延伸に効果的な「スポーツプログラム」の全国展開を図るとともに、地域住民の多様なニーズに応じて、スポーツを通じた健康長寿社会の実現を目指す。

[現状と課題]
・ 国民医療費は年間約40兆円に達している中、様々なスポーツ・身体活動による医療費抑制の取組や研究成果が存在。例えば、運動プログラム開始3年後のスポーツ実施者と非実施者の年間医療費を比較し、年間で一人当たり10万円の医療費抑制効果があるとの調査結果。
・スポーツにより健康増進の効果を獲得及び維持するには、活動を継続することが重要。
・被災地における長期の仮設住宅での生活等で、子供や高齢者を中心に運動不足、精神的ストレスの蓄積等による健康障害が発生。

[具体的施策]
(ア)国は、スポーツによる健康寿命の延伸の効用について、エビデンスを整理し情報発信するとともに、スポーツ医・科学の知見に基づく効果的な「スポーツプログラム」を策定し、地方公共団体やスポーツ団体に普及することにより、スポーツを通じた健康増進を推進。(再掲)
(イ)国は、「ガイドライン」の策定や先行事例の収集・発信等により、地方公共団体が企業、関係団体等との連携・協働体制を整備することを促進し、スポーツの習慣化や健康増進を推進。(再掲)
(ウ)国は、地方公共団体、スポーツ安全協会や日体協等と連携し、種目別や世代別のスポーツ障害、外傷、事故等の情報収集を行うとともに、安全確保に向けた方策をとりまとめ、普及・啓発することにより、スポーツを行う者の安全を確保。
(エ)国は、スポーツ関係団体等と連携し、被災地でのスポーツによる身体的・精神的支援等に関する情報共有や、被災後に必要とされる運動支援に関する研修を充実することにより、スポーツを通じて被災者を支援。


3.スポーツを通じた女性の活躍促進
[施策目標]
 女性の「する」「みる」「ささえる」スポーツへの参加を促進するための環境を整備することにより、スポーツを通じた女性の社会参画・活躍を促進する。

[現状と課題]
・中学生の女子の2割以上が、スポーツが「嫌い」・「やや嫌い」であり、運動習慣が二極化。
・20代~30代の女性のスポーツ実施率が特に低い。
・スポーツ指導者は女性の割合が低い。
・スポーツ団体における女性役員の割合が低い。

[具体的方策]
(ア)国は、地方公共団体、スポーツ団体等と連携し、女性スポーツに関する調査研究を行い、女子の運動習慣を含め女性特有の課題を整理するとともに、これまでトップアスリートを対象に蓄積してきた研究や支援成果も活用しつつ、トップアスリートを含め女性がスポーツに参画しやすい環境を整備。
(イ)国は、先行事例の情報提供等を通じ、地方公共団体、民間事業者、スポーツ団体等による連携・協働体制を整備することにより、女性の幼少期から高齢期を通じ、女性のニーズや意欲に合ったスポーツ機会を提供。
(ウ)地方公共団体は、国が示すスポーツ施設のバリアフリー・ユニバーサルデザインに係る基準や優良事例等を踏まえ、女性等の利用に配慮したスポーツ施設の利用しやすさの向上を促進。(再掲)
(エ)国及び日体協は、スポーツ団体と連携して、女性のスポーツ参加の拡大を図るため、指導者講習や研修において、あらゆるハラスメントの防止や女性特有の課題に取り組むとともに、女性の指導者資格取得を促す方策を実施。
(オ)国は、第4次男女共同参画基本計画に掲げる30%目標を踏まえ、スポーツ団体における女性の役員登用による効果や、女性部会の設置など女性のスポーツ参画拡大のための取組の紹介等を通じてスポーツ団体における女性登用等の促進を図るとともに、スポーツ団体において女性登用等の取組状況について発信するよう要請。
(カ)国は、女性特有の課題に着目した調査研究や医・科学サポート等の支援プログラム、戦略的な強化プログラムやエリートコーチの育成プログラム等を実施し、得られた知見をNFなどに展開することにより、女性トップアスリートの競技力向上を支援。(後掲)
(キ)国は、スポーツ団体等と連携し、スポーツ・フォー・トゥモロー事業等を通じて好事例を各国と共有するなどにより、国際的な女性のスポーツ参加を促進。


(2)スポーツを通じた経済・地域の活性化
1.スポーツの成長産業化
[施策目標]
  スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の改善に還元し、スポーツ参画人口の拡大につなげるという好循環を生み出すことにより、スポーツ市場規模5.5兆円を2020年までに10兆円、2025年までに15兆円に拡大することを目指す。

[現状と課題]
・スポーツ市場規模は2002年当時の7兆円から2012年時点では5.5兆円となっており、減少傾向にある。
・プロスポーツの市場規模は欧米と比較して極めて小さく、とりわけ、国内の主要なプロスポーツである野球、サッカーにおいては、世界のトップリーグと比べて、20年前はその差は小さかったものの、現在ではそれぞれ約3倍、約5倍といった差が生じている。
・近年、政府の成長戦略におけるスポーツの成長産業化の位置づけや、各種大規模国際大会の開催を背景に、スポーツを有望産業と捉え、プロスポーツリーグの活性化、スタジアム・アリーナへの投資、健康・体力つくり志向の産業拡大などに向けた関心が高まっている。

[具体的施策]
(ア)国は、地方公共団体が中心となって取り組むスタジアム・アリーナ整備に関して検討すべき項目を示すガイドラインを策定し、地方公共団体や民間事業者に対する専門的知見の提供や、地域における関係者間での協議の促進を通じて、スポーツの成長産業化、地域活性化を実現する基盤としてのスタジアム・アリーナを実現。
(イ)国は、プロスポーツを含めた各種スポーツチームと連携した新たなビジネスモデルの開発の支援を通じ、地方公共団体、民間事業者等によるスタジアム・アリーナ改革を通じたまちづくりや地域スポーツ振興のための取組を促進。
(ウ)国は、スポーツ経営人材の育成・活用のための仕組みを構築することにより、スポーツ団体のガバナンスや収益性を向上。
(エ)国は、スポーツ団体における中長期の経営ビジョン・事業計画の策定やアマチュアスポーツ大会へのビジネス手法の導入への支援等を通じて、スポーツ団体の組織基盤の強化を促進。これらを踏まえ、スポーツ団体は、団体の経営力の向上に向けてスポーツ経営人材を積極的に育成・登用、新たな収益事業を創出。
(オ)国は、スポーツ市場の動向調査等を行い、結果を広く共有することにより、民間事業者による新たなスポーツビジネスの拡大や、IT等を活用した新たなメディアビジネスの創出を促進。これらを踏まえ、地方公共団体や民間事業者は、地域のプロスポーツをはじめとする各種スポーツ団体等と連携し、新たなスポーツビジネスを創出。
(カ)国は、スポーツ市場規模の算定手法を構築することにより、スポーツ市場の分析を的確に実施するとともに関係省庁・スポーツ団体・民間事業者等との継続的な議論の場を設け、好事例となる新たな取組の共有や、ニーズ・課題の抽出等を行い、民間事業者と国及び地方公共団体との連携を促進。これらの取組を通じて、国は、民間事業者の、スポーツビジネスの拡大に向けた取組はもとより、企業スポーツの振興、スポーツの場の充実、スポーツ実施率の向上に資する取組等を推進し、民間事業者・スポーツ団体等の収益がスポーツ環境の充実、スポーツ人口の拡大に再投資される好循環を実現。


2.スポーツを通じた地域活性化
[施策目標]
  スポーツツーリズムの活性化とその推進主体であるスポーツコミッションの設立を促進し、スポーツ目的の訪日外国人旅行者数を250万人程度(2015年:約138万人)、スポーツツーリズム関連消費額を3,800億円程度(2015年:約2,204億円)、スポーツコミッションの設置数を70(2015年:38)に拡大することを目指す。

[現状と課題]
・定住人口の減少傾向により、交流人口の拡大をもって人口減少分の経済消費を補うことが必要とされ、各地で国内外からの観光客誘致が図られている。
・訪日外国人数は2012年以降急増(2015年:約1,974万人)しており、近年では国内での体験による「コト消費」にシフトしている。
・地方自治体とスポーツ団体、観光産業等の民間企業が一体となった組織である「地域スポーツコミッション」は、スポーツツーリズムの開発、イベントの開催や大会・合宿の誘致等により、交流人口の拡大と地域コミュニティの形成・強化を目指す活動を行っている。
・地域で並立する様々なスポーツ関連組織の中には、補助金等に依存しなくても存続可能な経営的に自立した事業体が誕生している。

[具体的施策]
(ア)国は、旅行・運輸・流通・スポーツ用品・アパレル・健康産業等、スポーツツーリズムに関連する企業・団体と連携したプロモーションを行い、地域の観光資源開発や、関連産業の商品開発等の取組意欲を高めることによりスポーツツーリズムの需要喚起・定着を推進。
(イ)地方公共団体は、国のスポーツツーリズムに係る消費者動向やスポーツコミッションの優良な活動事例に係る調査結果等を活用し、地域スポーツコミッションの設立や、地域独自の自然や環境等の資源とスポーツを融合した取組を持続的に推進。
(ウ)国(スポーツ庁、文化庁、観光庁)は、スポーツと文化芸術を融合させて観光地域の魅力を向上させるツーリズムを表彰・奨励することにより、外国人旅行者の関心も高い体験型観光資源の創出を促進。
(エ)地方公共団体は、総合型クラブ、地域スポーツコミッション等と連携し、国による優良事例の収集と普及、奨励を通じて、住民の地域スポーツイベントへの参加・運営・支援や地元スポーツチームの観戦・応援などにより、スポーツによる地域一体感の醸成と非常時にも支え合える地域コミュニティの維持・再生を促進。
(オ)国は、国内外の「経営的に自立したスポーツ関連組織」について、収益モデルや経営形態、発展経緯等を調査研究し、その成果を普及啓発することで、スポーツによる地域活性化を持続的に実現できる体制を構築。


(3)スポーツを通じた国際社会の調和ある発展への貢献
[施策目標]

 国際社会においてスポーツの力により「多様性を尊重する社会」「持続可能で逆境に強い社会」「クリーンでフェアな社会」を実現するため、国際的な政策・ルールづくりに積極的に参画し、スポーツを通じた国際交流・国際協力を戦略的に展開する。

 ラグビーワールドカップ2019及び2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(2020年東京大会)を歴史に残るものとして成功させ、その後のレガシーとしてスポーツ文化を継承する。

[現状と課題]
・国際競技団体における日本人役員は22名(平成28年11月現在)で先進諸国に比べ少なく、また、国際的な情報収集能力及び戦略的な情報発信能力が不足。
・スポーツを通じた国際交流・協力に関して、国内関係機関の連携が十分ではない。また、スポーツ団体の国際業務体制も十分に整っているとは言えない。スポーツに関する国際的な動向と国内の施策の連携が十分でない。

[具体的施策]
(ア)国は、スポーツ団体と連携し、国際人材の発掘、ロビー活動支援、職員派遣・採用の増加等を通じ、国際スポーツ界の意思決定に積極的に参画。(国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、国際競技団体(IF)等の国際機関における役員数(延べ数)22人→○○人)。
(イ)国は、国際競技大会や国際会議の積極的な招致、開催を支援することにより、国際的プレゼンスの向上及び地域スポーツ・経済の活性化を推進。
(ウ)国は、ユネスコのスポーツ会合等への積極的な参画や、アジアを中心とした政府間会合を積極的に開催することを通じて国際的なスポーツ政策づくりに貢献するとともに、二国間協定・覚書を戦略的に締結することにより、計画的な対外アプローチを推進。
(エ)国は、地方公共団体、スポーツ団体等の関係機関と連携し、スポーツ・フォー・トゥモロープログラム(SFT)等により、計画的・戦略的な二国間交流や多国間交流・協力を促進。(SFTによる裨益者100か国1,000万人)
(オ)国は、スポーツによる国際交流・協力をSFTが終了する2020年以降も継続できる仕組みを構築することにより、スポーツの価値の持続的な共有を推進。
(カ)国は、地方公共団体及びスポーツ団体等と連携し、諸外国におけるスポーツに関する情報を戦略的に収集・分析・共有するとともに、地方公共団体・スポーツ団体等における国際業務の体制の強化及び国内の関係機関との効果的な連携体制の構築を実現。
(キ)国は、ラグビーワールドカップ2019及び2020年東京大会について、政府の基本方針に基づき、開催都市や各組織委員会による円滑な開催を支援することにより、両大会の成功に貢献。また、両大会後に開催される2021年関西ワールドマスターズゲームズの円滑な開催についても支援。
(ク)国は、新国立競技場について、整備計画に基づきJSCの整備プロセスを点検し、2020年東京大会のメインスタジアムとして着実に完成。また、同大会後の運営の在り方や手法を検討し、スポーツ事業を主とした利用率の向上や維持管理費の抑制を推進。
(ケ)国は、組織委員会、東京都と連携を図りつつ、スポーツやオリンピック、パラリンピックの意義を普及啓発するオリンピック・パラリンピック教育を推進することにより、スポーツの価値を全国各地に拡大。




3.クリーンでフェアなスポーツの推進によるスポーツの価値の向上
【政策目標】

 2020年に向けて、我が国がスポーツの「インテグリティ(高潔性・健全性)」の保護や選手の権利保護の面で真のチャンピオンとなり、クリーンでフェアなスポーツの推進に一体的に取り組むことを通じて、スポーツの価値の一層の向上を目指す。


1.コンプライアンスの徹底、スポーツ団体のガバナンスの強化及びスポーツ仲裁等の推進
[施策目標]

 スポーツ関係者のコンプライアンス違反や体罰、暴力等の根絶を目指すとともに、スポーツ団体のガバナンスを強化し、組織運営の透明化を図る。

[現状と課題]
・近年、スポーツ選手等による違法賭博や違法薬物、スポーツ団体での不正経理、スポーツ指導者による暴力等の問題が生じている。
・これまで、教育・研修の実施、コンプライアンス等に関する規程整備、相談窓口の設置等が進められてきた。
・しかしながら、各団体におけるノウハウや体制は不十分。インテグリティ保護の取組に対するモニタリングや評価の仕組みは不十分。
・スポーツ仲裁の自動応諾条項の採択状況は日体協・JOC・日障協及びその加盟・準加盟団体全体で半数以下。(2016年10月現在)。

[具体的施策]
(ア)国は、スポーツ団体と連携し、スポーツ団体、スポーツ選手等がフェアプレーの精神や、注意すべき事項等に関するガイドブックを作成して、関係者が主体的・能動的に取り組む教育研修プログラムを推進し、インテグリティの保護の基盤を整備。
(イ)国は、スポーツ団体と連携し、インテグリティの保護に関する国際的な動向を把握し、その意思決定に参画するとともに、国内関係機関に情報提供することにより、国内のインテグリティ保護の質を向上。
(ウ)国及び日体協は、暴力に依らない指導の実施や、ドーピング、不法行為等から選手を守ることのできるスポーツ指導者を養成するための「モデル・コア・カリキュラム」を基準カリキュラムとして位置付け、日体協指導者養成講習会やスポーツに関する人材を育成する大学等へ普及。(再掲)
(エ)国は、スポーツ団体と連携し、スポーツ団体の組織運営に係る評価指標を策定するとともに、必要な体制を整備して継続的にモニタリング・評価し、取組が十分でない団体に対し必要な助言・支援を実施することを通じて、インテグリティの保護に一体的に取り組む体制を強化。
(オ)国は、スポーツ団体における不適切な事案が発生した場合の対応手順等の整備や組織運営の基盤である人材や財務等の強化に関する支援を通じ、関係法規を遵守した透明性の高い健全なスポーツ団体の組織運営を促進。
(カ)国は、スポーツ関係者に対するスポーツ仲裁・調停制度の理解増進及びスポーツに関する争に関する専門的人材の育成を推進することで、全てのスポーツ団体において、スポーツ仲裁自動応諾条項の採択等により、スポーツに関する紛争解決の仕組みが整備されることを目指し、スポーツ仲裁制度の活用によるスポーツに関する紛争の迅速・円滑な解決を促進。また、日体協、JOC及び日障協においては、上記の国の取組と連携しつつ、加盟・準加盟団体におけるスポーツ紛争の予防及び迅速・円滑な解決に向けた取組を推進。


2.ドーピング防止活動の推進
[施策目標]

 クリーンなアスリートを守り、スポーツ競技大会における公正性を確保するため、また、我が国で開催するラグビーワールドカップ2019及び2020年東京大会をはじめとするスポーツ競技大会をドーピングのないクリーンな大会にするために、ドーピング防止活動を質と量の両面から強化する。

[現状と課題]
・ 我が国におけるドーピング防止規則違反確定率は国際的にみて低く、世界ドーピング防止機構(WADA)の規程等を遵守した活動を着実に実施。
・ 我が国はWADA創設以来の常任理事国として国際的なドーピング防止活動に貢献し、特にアジア地域においてリーダーシップを発揮。
・ 大規模国際競技大会において国際的な対応ができる人材が不足しており、ラグビーワールドカップ2019や2020年東京大会に向けて、ドーピング検査員をはじめとする人材育成が急務。
・ 毎年数件のドーピング防止規則違反が発生していることから、アスリートやサポートスタッフに対する教育・研修活動の更なる充実が課題。
・ 巧妙化するドーピング技術を見極めるため、新たな検査技術の開発など研究活動の強化が必要。
・ ドーピング検査では捕捉できないドーピングに対し、関係機関間の情報共有体制の構築が課題。

[具体的施策]
(ア)国は、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)等と連携し、国際対応ができるドーピング検査員をはじめ、必要な体制を整備することにより、ラグビーワールドカップ2019や2020年東京大会等の競技会の公平性・公正性を確保。
(イ)国は、JADA及びJSC等と連携し、ドーピング防止活動に係る情報を共有できる仕組みを構築することにより、ドーピング検査だけでは補足しきれないドーピングを防止。
(ウ)国は、JADA等と連携し、アスリートやサポートスタッフ、医師や薬剤師等の幅広い層に対する教育研修活動を推進することにより、意図しないドーピングを防止。
(エ)国は、JADA及び大学等と連携し、最新の検査方法等の開発について研究活動を支援することにより、巧妙化・高度化するドーピングの検出やアスリートの負担軽減を実現。
(オ)国は、WADAをはじめとする関係団体と連携し、アンチ・ドーピング教育の国際展開やアジア地域における人材育成など、国際的なドーピング防止活動に貢献。 



4.国際競技力の向上に向けた強力で持続可能な人材育成や環境整備
【政策目標】

 国際競技大会等において優れた成績を挙げる競技数が増加するよう、各中央競技団体(NF)が行う競技力強化を支援する。
日本オリンピック委員会(JOC)及び日本パラリンピック委員会(JPC)の設定したメダル獲得目標を踏まえつつ、我が国のトップアスリートが、オリンピック・パラリンピックにおいて過去最多の金メダル数を獲得する等優秀な成績を収めることができるよう支援する。


1.中長期の強化戦略に基づく競技力強化を支援するシステムの確立
[施策目標]

 各中央競技団体が行う中長期の強化戦略に基づいた自律的かつ効果的な競技力強化を支援するシステムを構築するとともに、そのシステムの不断の改善を図る。これにより、シニアとジュニア(次世代)のトップアスリートの強化等を4年単位で総合的・計画的に進めることができるよう支援する。

[現状と課題]
・我が国は、安定的にメダルを獲得できる競技が固定的かつ少数。
・NFにおいて2大会先のオリンピック・パラリンピックにおける成果を見通した中長期の強化戦略を策定することが必要。

[具体的施策]
(ア)NFは、中長期の強化戦略を日常的・継続的に更新しつつ実践し、自律的かつ計画的に競技力を強化するとともに、各種事業を執行するJSC並びにNFを加盟団体とするJOC及びJPCは、相互に連携しNFと十分なコミュニケーションを図った上で、NFの強化戦略におけるPDCAサイクルの各段階で多面的に支援。
(イ)国及びJSCは、JSC、JOC及びJPCが相互に連携して得た知見を、ターゲットスポーツの指定や各種事業の資金配分に関するNF評価に活用。
(ウ)国は、NFのニーズ等を踏まえつつ、競技力強化に関して卓越した知見やノウハウを有し強化にあたるナショナルコーチやスタッフを配置するなどにより、NFが行う日常的・継続的な強化活動を支援。
(エ)JOCは、国及びJSCの支援も活用し、ナショナルコーチアカデミーの更なる充実、審判員、専門スタッフ等の海外研さんの機会の確保などNFにおけるスタッフを充実することにより、トップアスリートの強化活動を支える環境を整備。
(オ)国は、女性特有の課題に着目した調査研究や医・科学サポート等の支援プログラム、戦略的な強化プログラムやエリートコーチの育成プログラム等を実施し、得られた知見をNFなどに展開することにより、女性トップアスリートの競技力向上を支援。
(カ)国は、JSC、JOC、JPC、日体協、NF及び海外のコーチ育成関係機関等と連携し、競技ルールの策定や国際的なコーチ講習会等で講師を担うことができる人材、世界トップレベルのコーチの育成を支援。


2.次世代アスリートを発掘・育成する戦略的な体制の構築
[施策目標]

 多様な主体の参画の下、新たな手法の活用も進めつつ、地域に存在している将来有望なアスリートの発掘を行うとともに、当該アスリートをNFの本格的な育成・強化パスウェイに導くことで、オリンピック・パラリンピック等において活躍が期待されるアスリートを輩出する。

[現状と課題]
・アスリートの適性や競技特性を考慮した将来有望なアスリートの発掘・育成に関する手法が確立しているとは言えない状況。
・特にパラリンピック競技については、スポーツ団体との連携などの仕組みの確立が急務。

[具体的施策]
(ア)国は、JSC、地方公共団体、JOC、JPC、日体協、日障協、NF、医療機関及び特別支援学校を含む諸学校等と連携し、地域ネットワークを活用したアスリートの発掘や、種目転向の促進支援等により、全国各地の将来有望なアスリートの効果的な発掘・育成を支援するシステムを構築。
(イ)国は、JSC、JOC、JPC及びNFと連携し、将来メダルの獲得可能性のある競技や有望アスリートをターゲットとして、スポーツ医・科学、情報の活用や海外派遣などを通じて、集中的な育成・強化を支援。
(ウ)国、日体協及び開催地都道府県は、国内トップレベルの総合競技大会である国民体育大会にオリンピック競技種目の導入を促進することなどにより、アスリートの発掘・育成を含む国際競技力の向上に一層資する大会づくりを推進。


3.スポーツ医・科学、技術開発、情報等による多面的で高度な支援の充実
[施策目標]

 ハイパフォーマンスに関する情報収集、競技用具の機能向上のための技術等の開発、アスリートのパフォーマンスデータ等の一元化等を戦略的に行う体制として、ナショナルトレーニングセンター(NTC)や国立スポーツ科学センター(JISS)を包含する「ハイパフォーマンスセンター」の機能を構築する。
こうした体制も活用し、トップアスリートに対するスポーツ医・科学、技術開発、情報などにより多面的で高度な支援の充実を図る。

[現状と課題]
・トップアスリートに対するスポーツ医・科学、技術開発、情報などによる多面的で高度な支援は国際的にますます充実する傾向。
・NFの強化戦略を支援するためには、「ハイパフォーマンスセンター」の機能を強化し、中長期的観点から競技力強化を行う基盤整備が必要。

[具体的施策]
(ア)JSCは、国の財源措置も活用しつつ、諸外国のメダル戦略や選手の情報等を収集分析する体制、競技用具の機能向上や技術開発等を行う体制、アスリートの各種データを一元管理するシステムを整備するなど、「ハイパフォーマンスセンター」の機能を強化することにより、中長期的観点から国際競技力を強化する基盤を整備。
(イ)国及びJSCは、強化合宿や競技大会におけるスポーツ医・科学・情報等を活用したトップアスリートへの支援、大規模な国際競技大会におけるトップアスリートやコーチ等の競技直前の準備に必要な機能の提供により、トップアスリートを多方面から専門的かつ高度に支援。
(ウ)JSCは、国の財源措置も活用しつつ、JOC、JPC及びNFと協働して、国の他の機関や地域スポーツ科学センター、大学等との連携を強化することによりスポーツ医・科学・情報等を活用したトップアスリートの強化・支援を充実。


4.トップアスリート等のニーズに対応できる拠点の充実
[施策目標]

 「ハイパフォーマンスセンター」や競技別の強化拠点をはじめとして、トップアスリート等のニーズに対応できる拠点の充実を進める。これにより、トップアスリートが同一の活動拠点で集中的・継続的にトレーニング・強化活動を行える体制を確立する。

[現状と課題]
・NTCは、オリンピック・パラリンピックの共同利用化を推進。東京都北区西が丘のNTC(NTC中核拠点)では対応が困難な競技は競技別の拠点を設置。
・2020年東京大会に向けNTCの利用者数増が予想される中、NTCの狭隘化が強化活動に支障を及ぼさないようにする必要。

[具体的施策]
(ア)国は、NTC中核拠点の拡充棟を2020年東京大会開催の約1年前までに整備することにより、オリンピック競技とパラリンピック競技の共同利用化を実現し、2020年東京大会等に向け、競技力強化を支援。
(イ)国は、NFによるNTC競技別強化拠点の活用を推進することにより、2020年東京大会等に向け、競技力強化を支援。その際、NTC中核拠点のみでは対応が困難な冬季、海洋・水辺系、屋外系の競技等については、従来の拠点設置の考え方に留まることなく、海外における活動の在り方を含め、あらゆる可能性の中で検討。

お問合せ先

スポーツ庁政策課

(スポーツ庁政策課)