参考4 スポーツ基本計画部会(第5回)議事録

スポーツ審議会スポーツ基本計画部会(第5回)議事録
平成28年9月29日


【友添部会長】  おはようございます。本日もよろしくお願いします。ただいまからスポーツ基本計画部会第5回を開催いたします。本日は本当にお忙しい中、御出席を頂きまして、まことにありがとうございます。本日は、第2期スポーツ基本計画における主要課題について御議論いただく予定でございます。
なお、本日は、スポーツ審議会総会から、山脇会長、大日方委員、田邉委員にも御出席を頂いております。
議事に入ります前に、まず、本日の配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
【澤川スポーツ庁政策課長】  失礼いたします。それでは、資料の確認をさせていただきます。お手元「議事次第」以下、資料をお配りしておりますが、資料1「スポーツを通じた健康増進」から資料6「スポーツ人材の育成確保」まで6点ございます。これらは、本日の議事にて事務局より説明させていただく基礎資料でございます。あと、参考資料1でございますが、これが「当面の進め方」ということで、前回の会議でお配りさせていただきましたが、今回並びに次の回の進め方の概要でございます。あと、参考2といたしまして、「リオデジャネイロ・パラリンピック競技大会の結果について」という資料でございます。参考3は前回の議事録となってございます。
あと、久住委員並びに桑田委員から資料の御提供がございました。机上に配付してございます。これらの中身につきましては、後ほどの意見交換の中でそれぞれの委員の先生方から御紹介いただければと思っております。不足等ございましたら、事務局までお申し付けください。
以上でございます。
【友添部会長】  ありがとうございます。
それでは、議事に入ります。本日は、次第にありますとおり、第2期スポーツ基本計画における主要課題であります、1、スポーツを通じた健康増進、総合型地域スポーツクラブの在り方。2、子供の体力向上、学校における体育活動の充実。3、国際競技力の向上、スポーツ人材の育成・確保。それぞれにつきまして、御審議、御議論いただきたいと思います。
なお、本日、報道関係者から、会議の撮影、録音を行いたい旨の申出がありました。許可しておりますので、御承知おきいただければと思います。
それでは、第2期スポーツ基本計画における主要課題の1、スポーツを通じた健康増進、総合型地域スポーツクラブの在り方につきまして、資料1、2に基づいて、事務局から御説明いただいた後、各委員から御意見を頂くことにしたいと思います。
それでは、井上健康スポーツ課長、お願いします。
【井上健康スポーツ課長】  それでは、私から資料1及び資料2に基づきまして御説明をさせていただきます。
まずは、資料1、スポーツを通じた健康増進について、御説明いたします。現状と課題でございますけれども、スポーツを通じた健康増進を図っていくためには、スポーツの参画人口を拡大していくことが不可欠と考えております。今のところスポーツ実施率が減少しておるところもございます。あと20代、30代のスポーツ実施率が低くなってございますので、この辺りをいかに高めていくかということが課題だろうと考えております。
また、国民医療費を考えますと、どんどん40兆円を超えるようなことになってございますので、こういったところを、スポーツを通じて抑制を図ることも、1つ課題だろうと考えております。
こういったスポーツの実施率を高めていくためにも、国民のだれもがいつでもどこでも、いつまでもスポーツに楽しむことができるような環境整備が必要だろうということで、だれもが運動、スポーツを開始して継続的に実施することが必要だろうと考えております。
施策の方向性としまして、まずはスポーツ参画人口の拡大を図ることは1つあろうかと思っております。これまでの計画にもございましたけれども、成人の週1回以上のスポーツ実施率を現状の40.4%から、21年までに65%に向上することを目指したいということでございます。おめくりいただきまして、スポーツを全くされない方がゼロに近づくようにということも1つあろうかと思っています。
それから、スポーツを通じた健康増進施策とか、地域におけるスポーツ活動の推進といったことも図ってまいる必要がございますので、効果的な運動、スポーツプログラムの策定であるとか、スポーツを通じた健康増進を図っていくために、地方自治体における体制整備を構築していく。それから、スポーツに無関心な方にいかに興味を持ってスポーツ実施のきっかけを作っていくかという取組。それから、ライフステージに応じて幼児期であるとか、学生時代、20代、30代、40代、50代、60代以上というところで、スポーツを継続的にどういうふうに実施していただくかということの取組を進めることが方向性としてあろうかと思っております。
具体的にはということでございますけれども、まず、スポーツの未実施者への働きかけであるとか、継続的実施のための方策、それから、スポーツを行う方々の安全の確保。いくら健康にいいと言っても、逆にけがをされたり、障害をおったりという方もいらっしゃいますから、そういったことがないような安全の確保について整理をしたような運動、スポーツガイドラインのようなことを厚生労働省などとも連携して策定してはどうかと考えております。それを基に、地方自治体あるいはスポーツ団体の方で取組を進めていただく。
それから、スポーツ医科学の知見を通じて、効果的な運動・スポーツプログラムを策定する。それの全国展開を図ることも必要かと考えております。
先ほども申し上げましたけれども、スポーツを行う者の安全確保に向けた方策、なかなかまだデータがたくさんあるというわけではございませんので、そういった調査研究なりを進めて、方策の普及を図ることも1つあろうかと思っております。
地方自治体においての対策でございますけれども、地方自治体の方は、まだスポーツの部局、健康の福祉部局といったものが縦割りになっておるようなところも見受けられますので、そういったところ、あるいは民間企業とかスポーツ団体、健康の関連するような団体が連携・協働するような体制整備を進めていく必要があろうかと思っております。そういったことによって、無関心層への興味・関心を喚起させるような取組であろうとか、スポーツの習慣化につながるような取組を促すことがいいのではないかと思っております。
それから、次の3ページ目へいっていただきまして、「官民連携施策を通じた働く世代のスポーツ参画」ということで、先ほども申し上げましたけれども、20代、30代のスポーツ実施率が低くてございますので、この辺りを何とか運動にいざなうということで、忙しい方々でも気楽に、気軽に運動、スポーツに取り組むようにするような施策、環境づくり、ムーブメントをやってはどうかと考えております。昨今、健康経営であるとか、そういったことも言われており、「健康経営会議」というものもありますので、そういったところとも連携をしながら、産業界、地方公共団体とも連携しながらやっていくことが1つあろうかと考えております。
続きまして、総合型地域スポーツクラブの在り方について、資料2に基づきまして御説明いたしたいと思います。
総合型地域スポーツクラブの在り方につきましては、有識者の方にお集まりいただきまして、検討会を7月15日から開いておったところでございます。先日9月26日に4回目を開きまして、提言をほぼ取りまとめられておりまして、今、最終の調整中でございます。その提言の中身を踏まえまして、今回の資料2を作っておるところでございます。
まず、総合型スポーツクラブにつきましては、平成7年から育成が始まったということで、20年以上たってございます。現在まで3,550クラブが育成されまして、会員数が131万人になってございます。市町村に1つという目標でやっておりまして、8割方の市町村にこの総合型地域スポーツクラブが設置されておるということになってございます。総合型クラブ、地域スポーツの担い手としての役割もございますし、地域コミュニティの核としての役割もあろうかと思っております。ただ、この総合型クラブが持続的に活動していくために、次の課題が指摘されておるところでございます。
1つ目が、総合型クラブの運営状況の課題でございます。総合型クラブにつきまして、自己財源の確保が、1つ課題となってございます。徐々に改善はしておりますが、自己財源率が50%以下というクラブが約4割を占めておるようなところでございます。
それから、PDCAサイクルとよく言われますが、そういったものを回してクラブの状況を把握して改善していく取組が必要になってまいりますけれども、こういったことをやっておるクラブもまだ4割弱でございます。自立的な運営をいかに支援していくかというところも課題となってございます。
総合型クラブの認知度でございますけれども、残念ながらなかなか国民には認知されていないという状況にございまして、7割の方が知らないというデータもあるところでございます。総合型クラブの活動が発展していくためにも、この認知度も課題だと思っております。
もう一つ、地域のコミュニティの核となっておるという話も先ほどさせていただきましたけれども、総合型クラブの中には、そういった核となってスポーツを通じた健康増進であるとか、子育て支援であるとか、学校運動部活動の支援であるとか、そういった地域課題に応えているクラブも出てきております。ただ、こういったことをやっているクラブはまだ2割弱でございまして、この辺り、社会的な仕組みとして定着することが1つ課題となっておるところでございます。
おめくりいただきまして、こういった課題に対しましての方向性でございます。
まず1つ目、総合型クラブが持続的に活動して住民のスポーツ参加の基盤としてやっていくために、身近な場所でスポーツに親しむ機会を提供する。そういった担い手としての重要な役割は、これからも果たしていく必要があろうと考えております。
それから、地域コミュニティの核にもなって継続していくことが必要だろうと考えておりまして、地域課題の解決に向けた取組を推進することによって、そういったコミュニティ、社会的な仕組みとして定着をこれから図っていく必要があろうと、そういった方向性でやるのがいいのではないかと考えております。
もう一つ、自立的な運営というところで、質的な充実を図っていく。それから、先ほど申し上げました地域課題の解決に向けた取組を推進していく。この2つを進めていくことが必要だろうということでございます。
具体的にはということでございますけれども、まず、総合型地域スポーツクラブ、多世代、多思考、多種目ということで進めております。こういった特徴を活かしまして、幼児のためのトレーニングであるとか、高齢者のための運動・スポーツ習慣の定着の取組を進めていく必要があろうかと思っております。
それから、多種目というところでは、子供の時代は複数のスポーツ種目を楽しむことが必要だろうということで、自分に合ったスポーツ種目を選択できるような環境づくりを進めていくことがいいのではないかということでございます。
それから、この総合型地域スポーツクラブは、地域住民が自主的に、主体的に運営しておるところでございますので、こういったところでサービスを受けるということ。それから、クラブを支える側にもなるということで、会員同士が支える体制を強化していくことが必要だろうということでございます。
2番目でございます。地域におけるスポーツクラブの活動の場の確保、施設の有効利用でございますけれども、学校開放はまだまだ進んでいないところもございますので、学校開放を進めるという観点からも、地域の実情に応じて総合型クラブが体育施設、学校開放に係る利用調整を行うであるとか、受付管理業務を行う。こういったものを担うということは、1つ望ましいのではないかということでございます。
それから、廃校施設といったところでも、総合型クラブの活動拠点として利活用する方向が望ましいのではないかということもございます。
3番目に、自立的な運営に向けて、ということでございます。まずは、先ほど申し上げましたけれども、PDCAサイクルで改善に取り組む総合型クラブの増加を図ってまいるのがいいのではないかということでございます。目標としましては、将来的には100%ということでございますけれども、5年間で7割を目標とするということでどうかと思います。
それから、総合型クラブと行政がパートナーシップを組むためにも、一定の基準を総合型クラブに設けていく必要があるのではないか。登録・認証といった制度を整備することも、方向性、具体的な施策としてあるのではないかということでございます。目標としては、47都道府県において登録・認証の制度が整備されることを目標として、こういったことをやっていくことがいいのではないかということでございます。
それから、先ほど申し上げましたけれども、やはり認知度も図っていかなければいけない、向上しなくてはいけないということで、先ほど申し上げました登録認証を受けたクラブによって区別されるようなネットワーク、連絡会議といったものも活性化していきまして、広報活動していただくことも考えておるところでございます。
それから、地域の課題に向けた取組ということで、地域包括ケアシステムへの参画をしていくであるとか、そういった制度的な取組事例を収集していく。それを情報発信でいくことも考えております。
それから、総合型クラブの支援体制ということで、今、支援のやり方がなかなか統一されていないところもございますので、中間支援組織というものを作って体制をしていくということでございます。
総合型クラブにつきまして、以上でございます。ありがとうございました。
【友添部会長】  ありがとうございました。
今、総合型クラブ、体力向上について、現状、課題、これからの施策の方向性についてお話をいただいたところであります。それぞれ各25分程度で御意見を賜れればと思います。御意見はいかがでしょうか。挙手をお願いします。
久住委員、どうぞ。
【久住委員】  お手元に参考資料を付けさせていただきましたので、お話だけさせていただきたいと思います。
「地域の立場から見たスポーツウェルネス策の方向性」ということで、整理をさせていただいたものでございます。表紙に2つマークがございまして、「スマートウェルネスシティ」と「スマートウェルネスコミュニティ」というものがございます。これは、平成21年から首長を集めて健康施策のまちづくりをしようとした左側、シティの段、現在、62の自治体がございますけれども、単純に言えば「住むだけで健康になる街」また、「歩いて暮らせる街」、こういうものを目指そうということでございます。
右のスマートウェルネスコミュニティということは、それをもっと拡大して、民間、産業界も含めて総掛かりで健康施策を世界に先導するという形の組織でございまして、今、オブザーバーでは、省庁としては厚労省がオブザーバー代表をやって6省庁が入っておられます。民間企業が54社、学術団体が9、自治体が今19、有識者が23名という形で研究を続けているものでございます。
次のページで3点だけ。そこで考えてきた経過の気付きもございますので、少しまとめてみたものでございます。
1点、スポーツと、実は初めの御挨拶のときにさせていただいたこともあるのですが、私ども健康施策はポピュレーションアプローチ、すなわち無関心層をどのように意思変革して行動変異をするかということの戦いだと申しました。スポーツと健康についても同じことなのだろうということで、いろいろな施策をしてきました。その中で大規模の社会実験ということで、健康ポイント制度にさせていただいて、唯一これで成功した例ということでありました。6市でやりました。6,500人が参加してくれるようになったのですが、何とその77%が運動無関心層、運動不十分層が初めてこの運動に参加したという経過であります。このインセンティブについても、適切なインセンティブでないと人が動かないということが顕現しました。私どもはこういうリテラシーと言いますか、今進めております。おかげでこの方針が出たので、既にこの1年間で健康ポイントをやる自治体が2倍に増えたと聞いておりますし、企業がこの健康ポイントを採用することになってきたということであります。これをもっと広げるべきだというのが1点でございます。
2つ目が、健康長寿ということで、これはメタボ、ロコモ、フレイル、認知症、この辺りが運動と大きく関わることになったというのが、明らかにエビデンスが出ておりますので、そういうものをいかに住民の皆様に常識化するかということを図っていく。これはスポーツというものを、先ほどのいろいろな施策がございますが、この観点がもっと国民全体に知らしめる、また、伝わるということを方針としているところであります。
3つ目が、これは医療とか介護とスポーツの関係ということであります。リハビリというのがこれだけ生活習慣病で多くなっておりますが、実は医療保険で、発症から90日から180日までがリハビリで保険対象になっております。それが終わった後、自宅に戻されるわけです。戻された途端にリハビリの効果がなくなっているというのは、大体分かっている。しかしながら、軽スポーツなどふさわしいスポーツをしたときに、リハビリの効果は維持できるというエビデンスははっきり出ております。だから、スポーツと健康という面では、介護・医療という形で、それを自宅に戻っても近くでそれができる環境整備、まちづくりをしていこうというのが、大きな方針の3点であります。
下の具体的な施策を1つだけ御提案させていただきたいと思います。この無関心層がやるようになったときに、私どもは6,500人を調査しまして、どうして運動するようになったかというきっかけが、実は周りの人からの口コミであったということが分かりました。口コミがポピュレーションアプローチに一番ふさわしい政策だ、効果のある政策だということは分かりまして、これを国全体での仕組みにしようというのが、スポーツコミュニティ協議会の、今、大きな課題であります。私どもはそれを口コミで伝える人を「インフルエンサー」という形で専門用語を使っていますが、「インフルエンサー」というと表現が悪いということで、私どもはようやく「健幸アンバサダー」という名前をつけて、日本全国200万人をつくろうということで、今、進めております。二百万人の健幸アンバサダーを、官民含めてこれを広げる。そういうふうにエビデンスに求めた正しい、知ってもらいたい情報を伝えることによって、多くの人たちの意識が変わる。このような施策を今進めているところであります。これにスポーツの情報だとかを入れることによって、リテラシーが高まるということであります。そのためには、組織とか、どういう人材育成をするか。こういう形のものをやっておりますので、次と2ページは、それについての全体の育成と、その上に健康コンシェルジュをつくってという仕組みなので、これを参考までに後で見ていただきたいと思います。こういう形でスポーツと健康という面での具体的な行うべきこと、考える目標を整理させていただいたところでございます。
私からの発表は以上です。
【友添部会長】  ありがとうございました。具体的な地域におけるスポーツウェルネス政策の方向性について御提案を頂いたかと思います。
では、桑田委員、どうぞ。
【桑田委員】  ありがとうございます。桑田でございます。
総合型スポーツクラブとしての提案です。資料は2点出させていただいております。先ほどの御説明がありましたように、総合型地域スポーツクラブができて20年。なかなか期待に沿えないところに私自身も大変忸怩たる思いがございます。今回、新しく「質の充実」という視点で御指摘いただいていることについて大変頼もしく思いますし、私も非常に期待し、各クラブがより前向きにいけるのではないかということを改めてお話を伺って思いました。
本日御提案申し上げたいのは、そういう中で、質的充実というのはクラブの自立が大変重要なテーマでございます。そういう意味で、まず、提出資料の「スポーツ基本計画への提案」の中で、アンダーラインをベースにお話を申し上げます。これには具体的な話が大分入っております。その背景は、提出資料の後ろに付けました参考資料で見ていただきながら、聞いていただければと思います。クラブ運営の質的充実は、クラブが自立するためにも財源を安定的に確保していく、経済的に自立していくことが最大のテーマであります。その中で何をしたらいいかということを何点かお話し申し上げたいと思います。
この資料3番目の具体的な提言ということで、最初は活動場所でございます。場所を安定的・継続的に確保し、かつその場で収益事業ができるような構造を是非、今回の計画の施策の中に方向性として記載していただき、市区町村でも事情に合わせ検討できる示唆をして頂けたらと思います。
1つは、小中学校を含めた公共施設。総合型だけの優先確保ということではなく、地域クラブとしてある一定の基準をクリアしたクラブの優先確保。そしてそこで収益事業的を行うことができるような構造でございます。もちろん、提供ソフトに対しての適正な受益者負担が原則ですが、現状なかなか現場で適正な会費を徴収するということは非常に厳しい状況であり、地域行政の理解がないところが全国大半でございます。しかし、ある程度財源が確保できなければどうしても税金に頼らざるを得ないという一面があり、税金は税金として期待するところがありますけれども、その前に我々クラブがきちんと収益を上げていくということ、さらに企業との協働事業での協賛等が取れるような地域での環境づくりが非常に大事ではないかと思っております。極論ですけれども、運動施設が教育財産であるから収益事業を行えないなら、一般財産に変更して活用範囲を広げていただきたい。こんな大胆な発想でございます。
2つめは、企業が保有しているスポーツ施設の地域での有効活用です。これは私のクラブもある企業の体育館の運営を受託させていただき地域にとって有効活用させておりますけれども、企業が保有している施設を地域に開放いただきの運営をクラブ受託し、企業の社会貢献も含め有効的に使っていくというところで、まず場所を確保しそこで収益事業を行える環境整備をお願いしたいと考えます。それには課題として、そういう対応ができるクラブの条件整備が必要だと考えます。
2番目は、何と言っても良質な指導者の確保でございます。これは、資料1から3まで、それぞれ競技団体や理学療法士等を含めたいろいろな団体に所属している指導者や選手が大勢いらっしゃいます。民間企業にもいらっしゃいます。そういう方々を地域に定期的・組織的に派遣していただけるような制度、システムがどうしても欲しいということであります。
それとこの資料4はなかなか現実問題としては難しいと思いますが、あえて既成の枠を超えるということでの提案ですが、中高の体育の先生を地域に出していただき、その地域から学校の体育の授業(特に、小学校体育)あるいは部活動、地域のスポーツ活動に派遣をしていけるような制度があったら、より有効的、効率的になるのではないかと考えます。これも課題として、指導者の質の問題、それから、地域として雇用を前提とした収益事業の確立と人材育成という事がテーマになると思っております。
3番目は、マネジメントの部分です。マネジメントの世界は理論的には確立されておりますが、現実問題、全国津々浦々、相当な地域差やクラブ間格差があり理論だけでは難しく、地域特性を充分に理解し生かした経営技術の確立が地域クラブの発展に大変重要ではないかと考えております。また、それをコンサルできる体制の整備も必要だと考えます。
次のページでございますけれども、先ほどの御説明がありましたように、中間支援組織の強化についてふれていただきました。これは我々も長年期待していたところでございますので、クラブといたしましてもこの中間支援組織の充実を是非推進していくために、我々も現場からいろいろ提言を申し上げたいと思いますが、何と申しましても1行政はどうしても縦割りです。それを前提として行政と連携したその地域の特性に合った民間主体での横串連携できる中間支援組織の枠組みを現場として作っていきたいと思っておりますし、また、そういう視点でもって御指導いただきたいと思います。課題としては、地域でプロのコーディネーターの雇用と人材育成が大事になると考えます。
最後に5番目ですが、何といっても事業性の確立でございます。どうやって収益を上げていくかということを、スポーツクラブだけではなく、またスポーツという狭い分野だけではなくて、運動とかヘルスケアといった視点、あるいは2番目に書いてございます異業種・異分野での企業や団体との連携協働がどうしても今後不可欠になってくるのではないかということを、私も15年間やっていてものすごく実感しているところでございます。そういう意味でも課題として、その地域を理解しているプロのスポーツビジネス経営者の雇用と人材育成を大きなテーマとして御提案申し上げたいし、また、それを進めるべく議論できましたらと思います。いずれにしましても、国が提示するこの計画には、そこまでのミクロな提言は難しいと思っておりますので、せめて市区町村がこの国の方針を聞いて、そういうことを検討していいのだな、できるのだな、あるいは各地域の末端でのクラブがそういうことを行政に提案していいのだなと、思えるような視点を是非盛り込んでいただけたらと思っております。
以上でございます。
【友添部会長】  ありがとうございました。健康増進にしても地域課題にしても、地域が中核を担っていくということで、総合型の具体的な御提案を頂きました。ほかに御意見を頂けますか。
久木留委員、どうぞ。
【久木留委員】  私のところは本来、競技スポーツが専門分野だと思うのですが、お二人の意見を聞きながら、今回、資料を読んできまして、大変良くまとめていただいていると思うのですけれども、仕組みを作るというのがキーワードになっていて、ただし、仕組みを作るのはいいのですが、今までの振興基本計画や計画を見ていても、課題がいつも同じになってくるのは、仕組みは作るけれども、実施の主体がどうなっているのだというときに、最も大事な観点というのは、私はボランティア主体からフルタイム主体へ変えていくという制度を、国がどう作るのだということを明確に謳わない限り、この問題は解決できないのではないかなと思います。
本日、6つの課題がありますが、後ほど競技スポーツについてもお話をさせていただきたいと思います。一番の問題は、スポーツを通して雇用をどう生むのだというのが、明確にこの中に書かれていないと、恐らくボランティアでやっていると限界があって、今回、リオに行っていてもそうだったのですけれども、どの国もフルタイムなのです。フルタイムでやっているのと、ボランティアでやっているのとは、ものすごく違うのだと。そうしたときに、例えば、健康増進の主体を総合型にするのであれば、総合型の中にフルタイムをどうやって埋めるのだと。国家戦略としてスポーツに取り組むという基本法が謳った以上、そこのところをどう明確にするかということが書かれない限り、恐らくまた計画は計画のままで終わってしまうということを鑑みて見ていくことが大事だろう。実際に、例えば、戦略を組んでいくときに健康増進であれば、例えば、スポーツの男女別行動者率の推移というのが出ていますけれども、1986年から2011年で、男女の行動率を見ていくと、いつも男性の方が多いのです。これは2011年になっても、同じように参加率は女性の方が8%低い。そうすると、女性の参加率を上げることが健康増進につながることは間違いないわけで、女性と一緒に行けば子供も行く場合が多い。そういったところにフォーカスをしていく。雇用をどう生むかということと、戦略のフォーカスをどこにするかということを明確にしない限り、いくら計画を立てても、多分、実効率は上がっていかないのではないかというのが、今回読ませていただいた資料の感想です。
【友添部会長】  ありがとうございました。実は中学校の女子の運動実施率が二極化していて、一方の極は低いです。それが具体的にここのデータに現れてくるということと、もう一つは、自己財源を持ち、さらに収益性をどう上げていくのか、スポーツの職域拡大をどうしていくのか。こういう御提案を頂いたということであります。御意見頂ければあり難いです。いかがでしょうか。
原田委員、どうぞ。
【原田委員】  今のお話を聞いていまして、特に桑田委員のお話で、総合型をまとめていく中間支援組織の中に「スポーツコミッション」という御意見がありました。実はスポーツコミッションというのは、スポーツや観光関連の部局の中に地域にスポーツイベントの誘致を専門に行う組織として作られていますが、将来的に地域スポーツの振興に守備範囲を広げていく。そういうことが非常にいいと思いますので、何か同じベクトルを共有できるような、将来的な発展があってもいいと思います。ただ、スポーツコミッションは商標登録されていますので、その使用に少し注意を払う必要があります。
あと、健康づくりのお話ですが、70年代、80年代のYMCAなどで、既にこういうコミュニティベースの健康づくりのビジネスモデルは確立しています。ですから、そういった過去の遺産を使いながら、新しい事業形態を創り上げて、健康キャンペーンをやっていく必要があります。ただ、健康教室で成果が上がるというのは、何十年も前から実証されています。特に企業スポーツなどでは、必ず成果が出るのです。言葉は良くないのですが、ライザップ的な、しっかりやれば絶対結果が出るのですが、問題は内発的に動機付けられているかどうかという点で、やりたいからやる、楽しいから継続性があるということが重要になります。そのような仕組みが必要ではないかと考えています。多分、健康キャンペーンですね。カナダでやったパーティーシパクションとか、オーストラリアのライフ・ビー・イン・イットといった、国を挙げてのキャンペーンを浸透させて、楽しいアクティブライフを構築するというのが課題ではないかなと思います。
【友添部会長】  ありがとうございました。ほかにございますか。
大塚委員、どうぞ。
【大塚委員】  私もオリンピック競技スポーツ、パラリンピック競技スポーツですけれども、トライアスロンに関しては、実は参加型競技の方も我々競技団体が全て管轄しておりまして、今回、1億総スポーツ社会づくりにおきましては、前回申し上げましたように、この参加型スポーツ、参加する部分というのが非常に大きなウェイトを占めるのではないかなと思っております。スポーツ参画人口の拡大における受け入れる仕組み作りとかインフラ作りというのは、今、協議されている内容のポイントで進めて行っていただければと思うのですけれども、国が本気になってやる仕組みの1つとして、先ほどのポピュレーションアプローチのお話がありました。国がスポーツの価値を高める、又はスポーツの位置付けを明確にしていただくこの機会に、世界の中では話し合われているのですが、ふるさと納税ではありませんが、スポーツによる税制の何かの仕組み、医療控除と同じように、スポーツに参加することで税制控除に結び付けていただくような仕組みを是非ともこの機会に作れないかなと。参加型スポーツに参加するときのエントリーをするお金に領収書をもらえば、その領収書で医療控除と同じように控除ができる仕組みですとか、スポーツを観に行く、観戦チケットの切れ端が、そのまま税制控除につながるとか、そのようなスポーツをやることのきっかけ作り、スポーツを観ることのきっかけ作りにつながる国の本気度を、税制制度等に結び付けていただければ、大きな進捗が見られるのと、無関心層に対するアプローチができるのではないかなと思います。
それから、総合型地域スポーツクラブですけれども、トライアスロンに関して言えば、全国にトライアスロンだけのクラブが500あります。大会は300近くやっています。マラソン、ロードレースに至っては数千のクラブがあり、大会も行われている。総合型スポーツになる以前の個別競技、種目別競技のクラブが、全国にいっぱいあるのです。総合型スポーツクラブの参加者が131万人、笹川スポーツ財団の調査によると、マラソンの愛好者人口が300万と言われています。こういったところの連帯ですね。あと、スポーツ少年団と総合型スポーツクラブの連帯。横串を刺した大きい連帯をこの機会に作れたら、大きな飛躍に結び付くのではないかなと思っております。
【友添部会長】  ありがとうございました。税制控除の具体的な御提案を頂きました。ほかに御意見ございますか。
結城委員、どうぞ。
【結城委員】  スポーツ無実施の方々をどのように取り込むか、これが最大の課題と承ります。その中で、1つは、このスポーツ施策というのは、これまでスポーツをやってください、やらなければだめだ、やっていないあなたはだめだという考え方に基づき成り立っていたような気がいたします。ちょっとでもやったら、あなたのプラスになりましたね、良かったですね。ちょっとでもやったら、少しあなたが健康になりました、よかったですね。そういうプラス思考に変えていけるような基準の取り方が大事なのではないかという気が少しいたします。週に1度のスポーツをやったかどうか。では、その実施率が全くない、1年間に1度もスポーツをしない者をゼロに近付ける。これも大事ではございますけれども、実際に我々、若しくはスポーツ庁の方で、ここまでおっしゃっているスポーツというものの定義、非常に大きいのですよと。スポーツというのを何かテニスをするとか、野球をするとかだけではなくて、日々ご自分が勤務に行くときに、若しくは買い物に行くときに、自転車ではなくて歩く。若しくは長い距離を少しやってみる。それでいいのですよ。そういうところから出発しないと、やはり忙しい方々の心の中には入っていきにくいし、自分のためになるのだ、しかもやってみたら楽しいのだ、気持ちがいいのだ、そこを分かっていただかないと実施率は向上しないと思います。まず、基準の取り方。そして、そこを評価できるような何か。ポイント制でも結構ですけれども、そういった何か、目に見えるものがあった方が政策に反映する形にしやすいと思います。
それから、短く2点目。せっかくオリンピック・パラリンピックが参ります。総合型地域スポーツクラブというものが、例えば、オリンピック・パラリンピックの参画でこれから大号令というか、いろいろなインセンティブ、イニシアティブが出てまいりますけれども、そのネットワークの中にどんどん手を挙げて入っていっていただいて、オリンピック・パラリンピックの、ある意味でロゴエンブレムを使うような形でスポーツ、そして、それ以外の活動でも楽しいですね、こういったことをみんなで一緒にやりましょうという地域の核になっていけるような形ができると、今、7割方が御存知ないという、認知率が高まるのではないかという気がします。
最後に、IOCが若者に対して、今、非常にいろいろなおもしろい、楽しい情報提供を通じて、彼らの間でのネット空間での口コミを増やそうとしています。若者の時代からスポーツは楽しいという捉え方をしないと、学校体育で一度嫌いになった、女子中学生が嫌いになった、もう私はスポーツは一生関係ない。そういう形では絶対にその方は不幸になると私も感じます。その意味で若者たちの中で、口コミでそれが伝わっていくような面白さ、楽しさ、今につながるようなもの。こういったイニシアティブも必要かと思います。
【友添部会長】  ありがとうございました。
では、泉部会長代理、お願いします。最後です。
【泉部会長代理】  日本体育協会の立場も含めて、2点ほど御説明させていただきます。
スポーツを実施する上での阻害要因の1つとして、最近よく聞くのですが、近くにすぐ利用できる施設がないとか、あるいは自分がやりたいスポーツができる場所を知らないといった、ハード面、サービス面の課題も1つ大きく挙げられるのかなと考えております。例えば、宿泊施設の専門予約サイトのように、ワンストップでスポーツ施設を予約あるいは利用申請ができたり、あるいは総合型地域スポーツクラブをはじめとする各種スポーツクラブを検索、体験申込ができるように、こういった仕組みを作ることが、スポーツに取り組みやすい環境の整備を進めることになり、具体的に健康増進につながる施策として御検討いただければと思います。
それから、もう一点は、国として総合型地域スポーツクラブの在り方と施策を、実情を踏まえて第2期スポーツ基本計画に明確にされることは大変重要なことと考えております。特に、クラブの登録制度につきましては、これを整備することにより、総合型地域スポーツクラブに対する支援体制を再構築することになり、日本体育協会としては、組織内組織である総合型地域スポーツクラブ全国協議会あるいは都道府県体育協会と連携して協力をしてまいりたいと考えております。
ただし、日本体育協会あるいは都道府県体育協会が、期待されるような役割を果たすためには、国や地方公共団体から財源確保を含めて、安定的な支援が不可欠であると考えておりまして、特に広域スポーツセンターが担っている機能の一部を、都道府県体育協会が担う際については、是非とも都道府県行政に対する国からの働き掛けが非常に重要だと考えており、これも併せてお含みおきいただければと思います。
以上でございます。
【友添部会長】  ありがとうございます。名残惜しいのですが、次の議題に移りたいと思います。
それでは、2の「子供の体力向上」「学校における体育活動の充実」について、資料3と4に基づきまして事務局から御説明いただいた後、今のように御意見を頂くことにしたいと思います。
それでは、井上健康スポーツ課長、八木学校体育室長、お願いいたします。
【井上健康スポーツ課長】  それでは、資料3に基づきまして、「子供の体力向上」について御説明をいたします。
先ほどから何回か出ておりますけれども、積極的にスポーツをする子供と、そうでない子供が二極化しておるというところが、1つ課題としてはございます。
次のページをお開きいただきますと、図が載ってございますけれども、小学校の頃は男女そんなに差はないのですけれども、中学になりますと、女子で2割が、1週間に60分未満しか運動していないということがございます。
それから、幼児期につきましても、多様な運動の獲得の遅れ。それから、体力、運動能力の低下も指摘されておるということで、日常的に体を動かす、運動習慣の確立に向けまして、安全にスポーツや遊びを実施できる機会の確保が重要だと考えてございます。
3ページ目でございますけれども、施策の方向性でございます。子供の体力の水準が高かったのは昭和60年頃でございますので、そういった水準まで引き上げることができるように、子供のスポーツ機会の充実を図るという方向性でやってはどうかということでございます。
具体的には、これまでもやってございます全国体力・運動能力、運動習慣等調査が小学校5年生、中学校2年生の悉皆調査でございますけれども、こういった調査を引き続き実施しまして、これで各教育委員会であるとか各学校単位で分析をしていただいて、いろいろと改善をしていく。そういったことが1つあろうかと思います。
幼児期につきましては、全国の幼稚園、保育園等に既に配布してございますけれども、幼児期の運動に関する指導参考資料の活用を図るということが1つあろうかと思います。
それから、運動部活動の充実ということで、シーズン制によるような、夏はサッカーをして冬はスケートをするとか、そういったシーズン制で複数種目を実施する。あるいは、複数校による合同実施で運動部活動の機会を充実させるという取組を図ってはどうかということでございます。
学校以外に、地域においての子供たちに対する運動機会の充実も必要であろうということで、放課後につきまして、放課後子供教室といったところでも体を動かしてもらうような、例えば、宿題をやっているだけではなくて運動するような機会を整備してはどうか。
それから、総合型地域スポーツクラブあるいはスポーツ少年団といったところを活用して、子供たちにスポーツの機会を確保していくという方策はどうかということでございます。
おめくりいただきまして、もう一つが、家庭との連携でございます。家庭で果たす役割が子供のこういったスポーツの機会を確保するためには非常に重要と考えておりまして、保護者と連携して、保護者の方にもこういった体力向上、スポーツの実施といった重要性を周知することを進めてはどうかということでございます。
子供の体力向上については、以上でございます。
【八木学校体育室長】  それでは、私から学校における体育活動の充実について、資料4に基づいて説明させていただきます。
まず、現状と課題でございますけれども、現行の学習指導要領で小学校から高等学校までを通して指導の内容の系統化や明確化を図り実践しているところでございますが、現在、中教審において審議されています次期学習指導要領の改訂におきまして、保健体育の分野におきましては、まず1つが、運動が苦手な児童生徒への指導がまだ不十分ではないか。2点目としまして、障害等の特別な配慮を要する児童生徒への指導が不十分ではないかと。そして、社会の変化に伴う健康課題に対応した教育が必要である。こうしたことが挙げられるとともに、4番につきましては、保健体育のみならず全体を通じて幼稚園教育と小学校教育の接続が進んできてはいますが、まだ十分ではないということが挙げられております。そして、小学校においては体育の専科教員が6%ということで、まだまだ専門性を重視した指導が十分に実施されていないということが指摘されております。
一方で、運動部活動につきましては、自主的・自発的な活動でございますけれども、現状、参加率を見ていきますと、ほぼ横ばいでありまして、中学校の男子は全体で65.7%、高校だと下がりまして約40%という形で推移しております。
部活動の課題としましては、まず顧問の方で、保健体育の先生でもなければ担当する教員経験がないという者が中学校で46%、高校でも41%と、かなりの数に上っている。そして、生徒のニーズが多様化している。あとは、少子化に伴う運動部活動の生徒数の減少に、チーム競技で支障をきたすことが生じている。こうしたものが挙げられております。
学校体育活動、体育の授業や部活動を通じての結果となりますけれども、小学校5年生と中学校2年生のスポーツや運動が「好き」「嫌い」というのでアンケート調査をしております。それを見ますと、小5において「やや嫌い」「嫌い」と答えているのが、男子で6.2%。中学校2年生になりますと10.4%に増えております。女子に関しましても、「やや嫌い」「嫌い」が12%から20.8%と増えた形になっているということでございます。
そして、体育活動中の事故というのは決してあってはならないことでございます。最近でも水泳の事故の報道がございました。これはあくまで災害共済給付の死亡見舞金のデータでございますが、左側の図で見ていただきますと、全体としましては死亡の支給件数は減ってきておりますけれども、事故は依然としてなくなっていない。今度右側のグラフを見ていただきますと、特に注目されるのが事故の発生件数でございますけれども、課外指導で最も多く、そのうちのほとんどが部活動によるものとなっております。
そして、施設面も欠かすことができません。一定の耐震化については、おおむね整備が進んでおりますが、老朽化等が課題となっておりまして、例えば、天井とか外壁とか窓ガラス、照明器具等の非構造部材の耐震化の対策が急務となっていることが挙げられます。
こうしたことを踏まえまして、施策の方向性でございます。これは先ほど御議論いただきましたスポーツを充実した健康増進の2021年までに成人の1週間のスポーツ実施率を65%と連動する形になりますけれども、究極的には生涯にわたって自主的にスポーツや運動をするという姿勢や考え方を持ってもらうのが一番大事ではないか。そうしたことから、中学校を卒業したときに自主的に運動やスポーツをしたいというアンケート調査が、全国調査でございますので、これを見ながら65%に持っていきたいと思っております。本来であればもっと高くすべきという議論もありますが、まずは65%まで持っていくことが重要ではないかと考えております。
なお、現在の27年度のデータになりますけれども、男女合計で60.1%でございますので、まだ4.9%達していないことになります。併せてこれだけの指標だけではなくて、もう一つの指標としまして、先ほど説明しました、運動嫌いを半減していきたいと思っておりまして、それぞれ1つの目標としまして、半分程度に減らすことを考えております。
具体的な施策でございますが、保健体育の充実としましては、今回の改訂を踏まえまして、運動嫌いを防止するとともに、年齢や性別、障害等の有無に関わらず、多様な関わり方が実践できるような形で取り組んでまいりたい。国、地方公共団体、大学等でそれぞれの役割を示させていただいて折るところでございます。その中で5番で、この全国体力・運動能力調査等を活用しまして、この検証改善サイクルというのを確立していきたいと思っております。
部活動につきましては、実態がなかなか分からないところもございますので、今後定期的に実態調査を行っていきたい。
また、スポーツ医科学の観点も取り入れた調査も行っていきたいと思っております。
そして、3番でございますけれども、中教審でもありましたが、部活動指導員という制度も設けまして、民間団体の協力を得ながら進めていきたい。そして、中体連や高体連等とも協力しながら整備を図っていきたいと思っております。
また、体育活動中における事故防止につきましては、とにかく限りなくゼロにしていかなければならないという認識を改めて共有できるような養成課程や研修の充実を図っていきたいと思っております。
最後でございますけれども、体育施設の整備の充実も進めていきたいと思っております。
以上でございます。
【友添部会長】  ありがとうございました。
それでは御意見を頂ければと思います。
朝原委員、どうぞ。
【朝原委員】  朝原です。よろしくお願いします。
先ほどの桑田委員の御意見の中で、企業の福利施設の利用ということで、今、私の会社の中の福利厚生施設で陸上クラブをやっていまして、そこで小学生から80歳までの会員を集めているのです。1つはそういうきっちりとしたクラブみたいなものがすごく大切だと思うのですけれども、正直言ってお金と手間がすごく掛かります。余り儲からないですし、企業が事務とかいろいろなことを手伝いながらハイブリッドでやっていく。すごくそれには意味合いがあるとは思うのですけれども、私の本音を言えば、もう少し子供たちの体力ということでは、もっとハードルが低い形であり、今のきちんとしたクラブであればあるほど、習い事のような感覚で、なかなか今の子供は忙しいですから、週に1回から2回のクラブにきっちり登録して、そこでだれかに習いながらやっていくというのは、ものすごくハードルが高いことだなと思うのです。競技スポーツをしたいというのだったらいいのですけれども、そうではない本当にゆるい形で何か運動したいという子供たちに対しては、きっちりしたクラブと、学校の放課後の利用とかもあるのですけれども、何かもう少し画期的な場所を提供するような、例えば、子供たちが安全で安心な遊べる大きな公園とか、そういうものを作って、遊び方が子供たちは分からないかもしれないので、その遊び方を教えるようなボランティア的な人がいて、その人がずっと何かを教えるというのではなくて、子供たちがそこで自然に互いに遊び合って、まずは体力を培っていって、運動する楽しさをまずは味わって、そこからいろいろな競技に興味を持ったり、スポーツに入り込んでいく形も、実際の私のトラッククラブをやっていても、やはりずっときっちり教えて、子供たちも楽しそうにはやっているのです。遊びの要素をなるべく入れてやってはいるのですけれども、どうしてもコーチの指示を待ちながら、「次は何かな」という感じでやっているので、それが本当の子供たちの体力を育てる理想の形なのかというのは、やりながら……。でも、それが一番今のところ、私のやっている中でいいかなと思いながらやらせてもらっているので、もう少し自由度の高い、子供たちがもっと自由に体を動かせるような場所とか機会が与えられたらなというのが1点目です。
あと、子供の体力ですけれども、これは昭和初期からずっと測られていて、種目もほぼ同じで、測り方もかなり先生方のやり方とかばらばらでよく分からないのですが、少なくとも科学的ではないですよね。それがずっとやってきたデータが結構たまってきていて、これはなぜこの種目でこういう体力を測っているのかということをもう少し明確にして、では何の体力が足りなかったら、将来的に、例えば、ハンドボール投げか何かボール投げがあって、多分、競技をやらないと、将来的に何に困るかなんて全然私には分からないのです。ですので、いろいろな種目があって、それに対してどんな意味があって、もっと子供のときにはこういう測定をしてこうしたら、将来的に普通に仕事をしても健康的に過ごせますよとか、競技をやる人には、もっといろいろなデータが必要なのかもしれないです。もう少しそういうものも見直すべきなのではないか。2020の東京に向けて、もう少し日本はそういう子供の体力を測定する最先端の国にいますというイメージも欲しいなと思っています。
最後に少しだけ。部活動ですが、陸上で言うと特に、中学生以上は部活動で試合もほぼ学校の登録で全日本中学とかインターハイとか出るのですけれども、クラブでやっている人と部活動でやっている人、部活動がどんどん減っている中で、クラブがどんどん増えて、サッカーなどは非常にうまくそれをやられていると思うのですけれども、交流試合であったり、いろいろな種目でそういうことができたらなと思っています。
以上です。
【友添部会長】  ありがとうございました。
それでは、福井委員。
【福井委員】  福井です。出身競技がテニスなので、テニスのことで少し体力と部活動についてお話をさせていただきます。どの競技団体でも、ジュニアの実施人口を増やすことが大きな課題になっているのですが、テニスでは、中学生、高校生、一度もテニスをしたことがない子供たちを取り込むのは、道具も使わなければいけませんので、とてもハードルが高いです。ですから、テニスとして、ターゲットを5歳から10歳に絞りました。それを3つの段階に分けて、テニスコートも通常のテニスコートの4分の1から始めて、半分、4分の3、通常のコートに戻すような段階にして、一般の大きなコートで5歳の子にテニスをやれと言っても、まずできません。そこで本当の簡単なスポンジボールで小さなラケットで、テニスを楽しんでもらって、そういうことを繰り返すことによって小学校、中学校、高校でテニスを選んでくれる子が増えるのではないか。あるいは、何かスポーツに親しんでくれる子が増えるのではないかということでターゲットを絞りました。恐らくほかの競技団体でも考えておられると思いますが、テニスはこういう本を作って、これをしっかり読んでいただいて、何回か実施していただいてその方にライセンスをお渡しして、その方が、まさにこのような場所で小さなコートを作って子供たちと一緒にテニスができる、スポーツができるということをして取り組んで、それが恐らく5年後、10年後には部活動にスポーツに子供たちの体力ということで、部活動で考えたら何か反映できるのではないかということを考えています。このプログラムは日本が考えたのではなくて、国際テニス連盟が立ち上げて、全世界に発信して、世界でやってください、そうすることによってテニスの人口が少なくならなくて済みますということで、世界的な活動にこれから広まってくると思います。始まったばかりなので。恐らくいろいろな競技団体の方が同じようなことを考えておられると思って、子供たちにもっとゲーム性を持たせた、もっとおもしろい、スポーツ、競技を体験させてあげることができれば、恐らく数年後にはまた違った世界が見えてくるのではないかという取組を始めましたので、御紹介させていただきました。
【友添部会長】  ありがとうございます。子供の身体能力と体力の発展には、種目に絞り込まない方が有効だというデータがかなり出てきていまして、ドイツなどではバルシューレというボール学校の実践をやったり、また他の国ではプレイリーダーをつくってプレイグラウンドの実践などもやったりしています。
【福井委員】  いろいろな競技ができればということですね。
【友添部会長】  そうですね。
【福井委員】  テニスに特化してお話をさせていただきましたが、いろいろな競技があれば選択肢も広がってくると思います。
【友添部会長】  そうですね。ありがとうございました。ほかに。
萩委員、どうぞ。
【萩委員】  ありがとうございます。先ほど朝原委員から出てきたところと少しかぶるのですけれども、結局運動が苦手とか、嫌いという子たちの中には、組織に入りたくない、入れない、だれかと比べられるのは嫌だというタイプが多いですよね。親もお金があって非常に興味・関心が高ければ子供をクラブに入れることはするわけですけれども、親にそういう興味・関心がなければ、そういう機会は失われるわけです。昔でしたら、空き地で遊ぶとか、近所のお兄さん、お姉さんと遊ぶ中で、様々な動きを獲得してきたと思うのですが、今、それができなくなってきている中で、そういう子どもたちがどこでどうしたらいいのかなと。学校開放事業も実は組織に入らないと利用ができないという仕組みになっています。何となく近くに体育館があって、今日空いているから行こうかなと思ってもいけない仕組みになっています。私が今、平塚市でやっているのは、大学の学生と一緒に、フラッと来てもその日は利用できますよという、自由に使える開放デーをやっております。そういう仕組みに変えないと、なかなか気楽に行くことはできないのかなと思いますので、学校開放事業というのは、できればそういう方向に持っていければなというのが1点あります。
もう一つ、小学校における体育の授業は非常に重要で、私も全国体力・運動能力、運動習慣等調査の方をやらせていただいて事例校をいろいろと訪問しているのですけれども、子供たちが嬉々としてよく動いている学校には、やはり体育の専科の先生がいらっしゃるのです。この体育の専科の先生というのは、いわゆるスポーツの専門を伝えるというだけではなくて、地域のいろいろな資源、地域にあるクラブとうまく連携したり、あるいは家庭との連携をうまくやる仕組みを考えたり、体力測定の結果を子供たちに上手にフィードバックしたり、実は見えないところでいろいろな仕事をしております。実はそういうコーディネーター的な役割を担う人がいないと、学校と地域の連携とか、家庭の連携というのは、現場の先生方が今持っていらっしゃる仕事の中ではなかなかできないのです。学校開放のマネジメントも大体副校長先生がなさっているのですけれども、非常に負荷の掛かっている大変なお仕事で、もしそういう体育の専科の先生がいらっしゃれば、そういうところのコーディネートやマネジメントもできると思いますので、できれば積極的に小学校における体育の専科の先生をおくということを推し進めるような方策もお考えいただければと思います。
以上です。
【友添部会長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。
大日方委員。
【大日方委員】  ありがとうございます。私から学校における体育活動の充実について是非1点お願いしたいと思っております。現状と課題の中の(2)で、障害等の特別な配慮を要する生徒への指導が不十分であるということが指摘されております。是非この問題を解決するための具体的な施策、そろそろ入れていただきたいと思っています。障害のある子供が運動するときの、そういう子供を指導する能力を身に付ける研修が必要であろうと考えています。どのように配慮や工夫をすれば、障害のある子供が参画できるのかといったこと。オランダでは既にそういった教科書も作っておりますので、是非日本でも、このようなルールの工夫、このような用具の工夫をすればいいのだということを学校の先生方に伝えるような形を取っていただければと思います。
以上です。
【友添部会長】  ありがとうございます。今ちょうど学校体育の学習指導要領の改訂期ですので、グッドタイミングなのかもしれないと思います。いかがでしょうか。まだ言い残したことがございましたら。
どうぞ、高橋委員。
【高橋委員】  体力テストの測定結果の活用について一点意見を申し上げたいと思います。体力テストを実施し、結果を分析し、今後の対策に活用することはもちろん、重要だと思いますが、一方で体力テストを受けた児童・学生に対し、個々人の結果をどのようにフィードバックしていくかという視点も重要であると思います。
そこで、測定結果を本人へフィードバックをする際に、本人の適性に合った競技スポーツを提案・推奨することとしたらどうでしょうか。また、競技推奨までには至らない児童・学生には、身体を動かす楽しさや、レクリエーションスポーツの種類・内容を伝えるだけでも良いと思います。
今回のリオパラリンピックで、陸上の400メートルで銅メダルを獲得した辻沙絵選手は、一般高校でハンドボールの選手としてインターハイに出場し、大学でも健常者と一緒にハンドボールをやっていました。本人は、ずっとパラリンピック選手の対象者となれることを知らなかったのですが、パラの陸上競技に転向して1年半で、持ち前の運動センスもあって銅メダルを獲得しました。こうした、一般の学校に通っている児童・学生の中に、パラリンピックに出場可能な選手が埋もれているのではないかと期待しています。
スポーツの普及促進のためにも、また、選手発掘のためにも・体力テスト測定結果の本人フィードバックの有効活用を提案したいと思います。
【友添部会長】  ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。
伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】  ありがとうございます。障害のある子供も含めた子供たちが運動していくというところで、もしかしたら大人の、先ほどの健康増進にもつながるのかもしれないですけれども、スポーツとか体育が難しくてハードルが高くて特別なことというイメージを持った子供たちが、なかなかそこのハードルを超えて、一歩そこにクラブに行くとか、部活に進むということができないということを、この間、特別支援学校でも聞きました。普通学校の子供たちもそうだと思います。全体的に学校というところだけでできることには限られているので、当然これまでもそういう取組はたくさんあると思うのですけれども、もっともっと子供たちがスポーツに進んでいく、そうするきっかけを作るために、民間や地域や産業の協力をもっともっと仰ぐような仕組みを作ったらいいと思います。例えば、1つ目にスポーツという言葉のイメージがとてもハードルが高くて、競技的な感じがするので、もっと遊びなのだよとか、エンターテイメントみたいなものだよ、ゲームみたいな感じだよというアプローチを外からしていただくこともできると思います。
2つ目に場所ですけれども、体育館とか子供だったらクラブに入るとか、シューズを買ってラケットを買うということだけではなくて、例えば、スーパーの駐車場に土日に遊びに行くと、ちょっと遊べるところがあるとか、体育施設だけではないところをスポーツで遊べる場所として子供たちに認識してもらえるような仕組みを作っていく。
3つ目は時間で、放課後の何とかということだけではなくて、もしかしてやっている学校もあるかもしれませんが、ずいぶん古いのですけれども、私が小学校のときに「業間体育」という言葉がありまして、たった10分のお休みなのですけれども、ちょっと遊びをさせてくれた。そこから何となく楽しいんだなという経験を刷り込まれていく。これは学校の中ですけれども、土日は商業施設とか、商店街とか、地域とか、例えば、習い事とか塾に行っているその合間に、何か少しおもしろいゲームをするという形で触れていく機会、きっかけというのを作っていくような取組を、学校以外でたくさんできると、何か違った形で進んでいくこともできるかもしれないなと思いました。
【友添部会長】  道路開放などもいいかも分からないですね。歩行者天国ならぬ子供天国で、日を決めて道路を開放する。
【伊藤委員】  そうですね。おもしろいと思います。
【友添部会長】  ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。
田口委員、どうぞ。
【田口委員】  家庭との連携ですけれども、いろいろな事情のある家庭もあると思います。例えば、シングルマザーもそうですし、私の場合でしたら、親にスポーツに対する関心がない。親が、自分たちは運動音痴だから子供たちも運動は無理だろうと、私はそういう家庭で育ちまして、障害を持ってからスポーツを始めて、初めて自分はこういうことができるのだというのを感じましたので、やはり親御さんとの連携というのはすごく必要です。ただ、先に申し上げたとおり、今、子供も忙しいですけれども、親も共働きなどで忙しいと思いますので、そういう意味では、気軽に学校の後に、今、伊藤さんがおっしゃったように、すぐにパッと行けるところとか、先生とか、具体的な方策は思い浮かばなかったのですが、私たちの時代とは違って、子供たちも塾とかいろいろなものがありますので、地域、親、みんなが連携することが必要かなと思います。いろいろな事情があって関わってくるので、それこそ経済的事情とか、いろいろなものがあるので簡単にはできないことだと思うのですけれども、ただ単に家庭との連携だけでは親の負担も大きいと思いますので、具体的には思い浮かばなかったのですが、いろいろな人が見守るというか、安全でかつ子供がスポーツをできる環境を根本的に作っていかないと、その場だけだと1つだけの政策で終わってしまうのではないのかなと思います。
【友添部会長】  ありがとうございました。貴重な御意見かと思います。
久住委員、どうぞ。
【久住委員】  子供の体力向上についてということで、特に幼児期の運動に関する普及・啓発と書かれておりますが、私も5年ぐらい前、見附市の体育テストをして、かなり全国的に低かったのですね。そのときにある先生から、運動能力は6歳までで決まるという御指摘を頂いて、それで男性保育士を研修に行かせて、あらゆる保育園でその運動の仕組みを入れる形になり、今現在はその子供たちは5年ぐらいたっていますが、幸い体力年齢は全国のある一定レベルになっているということでございます。もしも、この6歳までが、基本的に正しければ、もっと幼児教育の中で、例えば、保育園、幼稚園の中に体力を向上するカリキュラムを入れてもらうというところまで入り込むというのが、これから小学校、中学校、その基礎のところになるので、ここがまだ調査研究を行うということでは具体的には弱いのではないかと、もっと調べられてそれがもう既にできていれば、それを具体的に採り入れるという形でしてもらうというのが緊急に必要なのではないかと思います。
【友添部会長】  ありがとうございました。
泉委員、どうぞ。
【泉部会長代理】  ただいまの発言に対してのことでございますが、以前、スポーツ審議会の中でも少し御紹介をしましたが、既に日本体育協会で、アクティブ・チャイルド・プログラムを文部科学省の委託事業で開発しているのです。そこから今は、幼児期におけるアクティブ・チャイルド・プログラムも開発しておりまして、体協を中心に、各地方を含めて、いろいろなところに普及させているところでございます。本日の配布資料ペーパーの中にも、これから新しいプログラムを開発するという文言もございますが、もう既にそういったものは開発されておりますので、これをいかに有効に普及させていくかというレベルにあるのかなと思っております。とりあえず現況だけ御報告させていただきます。
以上です。
【友添部会長】  済みません、時間が参りました。
続きまして、3つ目の議題であります「国際競技力の向上、スポーツ人材の育成・確保」について、資料5、6に基づきまして、事務局から御説明を頂いた後、これまでと同様、御意見を頂くことにしたいと思います。
それでは、先崎スポーツ課長、由良参事官、よろしくお願いします。
【先崎競技スポーツ課長】  まず、資料5を御覧ください。「国際競技力の向上について」ということですが、盛りだくさんでございますので、1の現状と課題につきましては、後ろに付けさせていただいた資料で説明に代えたいと思います。
3枚目を御覧ください。ロンドン大会とリオ大会の日本メダル獲得競技比較数が出ております。御案内のように、ロンドン大会では38個のメダル、13競技、6位だったわけですけれども、2016年ではリオ大会で41、過去最多のメダル。総メダル数ランキングも7位ということでしたけれども、競技数自体は10競技ということで減っております。ロンドンの方、赤い字で書かせていただいたものが、残念ながらリオでメダルが取れなかった分。リオ大会の方でカヌー、テニスが青字になっておりますが、この部分はロンドンでは取れなかったけれども、リオでメダルが取れたものということでございます。入賞数もロンドンが80で、リオが88、過去最多でございますけれども、実は競技数という部分に着目すると、まだまだ課題があるということでございます。
パラリンピックの方も同じように見ていきますと、メダル獲得数は16から24と1.5倍増、ランキングも23から16位ということでございますけれども、金メダルは残念ながら手が届かなかったという課題があるわけでございます。
もう一枚めくっていただいて、これはリオ大会におけるオリとパラの国別のメダル獲得競技に着目したものでございます。メダルの数については既に報道等で御案内のとおりですが、競技数のランキングというものを私どもはいつも用いております。オリンピックでは、イギリスで14競技で金メダル。18競技、これは14を含む数ですけれども、総メダルということで、実は総メダル獲得数のアメリカよりも、競技数という観点からいけば、イギリスが上位にくるという状況にございます。日本は5(10)ということで、もし日本がこれ以上メダルウィンを伸ばしていこうということになれば、この競技数を増やしていかなければならないということになります。パラリンピックにおきましても同様でございます。
さらにもう一枚めくっていただきまして、北京、ロンドン、リオの3競技大会で連続して金メダル、連続してメダルを獲るという、つまり息の長い、ある意味サスティナブルなメダル獲得において成功している競技というものを各国で比較したものでありますけれども、当然どの国も競技数は減少いたしますが、オリで見れば日本よりも上位国は、やはりメダルのウィングは長い。これはパラにおいても同様でございます。
このように、メダル数を更に伸ばしていくということをJOC、JPCいずれも2020の目標と掲げておりますし、日本国政府も閣議決定において過去最多の金メダルを獲るなど、優秀な成績を修めるように国等が支援することが閣議決定されております。昨年の11月でございます。そう考えますと、強力で持続可能な選手力強化、また、国等による支援を考えていく必要があるということが、現状として1つ課題が浮かび上がるかと思います。
では、最初の資料に戻っていただいて、2ページ、3の具体的施策のところを御覧いただきたいと思います。「競技力強化・支援」というところで、4つの丸がございます。どのようにしてステークホルダー、つまりNF、そしてそのNFを傘下団体に持つJOC、JPC、そして国等であります国、スポーツ庁とJCが関係を結ぶかということについて書かれておりますが、最初の丸は、NFにおいて、先ほど見ていただいたように中長期的な強化戦略を定めて、それは例えば、オリンピックであれば4年、夏季で言えばオリンピアード、ワン・オリンピアードではなくて、もっと長い、ツー・オリンピアードあるいはそれ以上の強化戦略。これは当然、ジュニアの発掘や育成ということとも絡んできますけれども、そういった計画を総合的、計画的に進めていくことが必要になる。
2つ目の丸、JOC、JPC、JCは、当然それを支援する立場にありますので、緊密に連携を取って、資金配分はスポーツ庁、JCになりますけれども、連絡を密に取って、NFの強化戦略についてのPDCAサイクルごとに様々なコンサルテーションやモニタリングを行っていく必要がある。
3つ目の丸は、最終的に国はそれに対して資金的な支援をするわけですけれども、そのためのターゲットスポーツの指定でありますとか、資金配分ということJC等と一緒になって進めていくといった形が必要になってくる。
4つ目の丸は、象徴的に書いておりますけれども、現在、私どもの競技力強化・支援の柱であります、競技力向上事業の基盤的選手強化について書かれたものでございます。
次が、次世代アスリートの発掘・育成で、マスコミ等でも報道されておりますように、今回のオリ・パラの大きな課題の1つとして、アスリート層を厚くする、選手の発掘・育成をいかに図るかということにあるわけでございます。1つ目の丸の2行目、アスリートの発掘を種目転向ということも含めて徹底的に行っていくための支援が必要になってきて、2つ目の丸は、海外派遣支援、これは選手の育成の方ですけれども、武者修行ですね。選手を外に出すだけではなくて、そのスタッフも合せて外に出すことも考えていかなければならない。
3つ目の丸は、国体ですけれども、国体のオリンピック競技とのマッチングというものを今、急激に図っております。例えば、今年、もうすぐ岩手国体が始まりますが、7つの競技において、新規の種別種目、階級が導入されておりますが、いずれも女子であります。女子についての国レベルの競技が非常に少ないということで、こういうものを導入することによる改革も必要です。女性のトップアスリートですが、もう時間がないので恐縮ですけれども、また資料に戻っていただいて、後ろから2ページ目になりますが、夏季オリンピック、夏季パラリンピックにおける女性と男性のメダルの獲得率について書いてあります。1996年から見ておりますが、1996年から2012年まで4大会連続で、オリは、実は女性の方が、メダル獲得率が高かったということが分かっております。2016年も女子は検討したのですけれども、男子がそれ以上に頑張ったということが、41個のメダル獲得の原動力になっております。パラリンピックにおきましても、やはり女子の方が高かった時期があるということでして、今、どこの国も女子に対する投資、あるいは発掘強化ということを行っていますけれども、日本もそれに負けておれないということが1つの課題として挙がります。
恐縮ですが、先ほどの2ページに戻っていただいて、最後でございます。女子トップアスリートの支援についても、国として、また女性特有の課題なども踏まえながら支援をしていく必要があるということでございます。
最後の3ページ、トップレベルのコーチ等の育成ということです。先ほども委員の中からお話がありましたが、1964年東京オリンピックのために、1959年から5か年計画で当時の日本体育協会オリンピック部が、コーチの計画的な育成を行いました。多分、初めてだったと思いますけれども、ここにおけるコーチというのは、非常に短期なものでした。それ以降、約半世紀をかけて我が国では各NFでコーチの中長期的な育成に取り組んできたわけですけれども、更にこれをパーマネントなものに高めていくためには、一体トップレベルのコーチというのはどのような資質が必要なのかということについて、関係者と議論を深め、その資質を持った人がワールドクラスのコーチになったり、あるいは競技力強化のガバナンスにも対応できるような、そういったものを育成していく必要があるということがございます。
スポーツの医科学情報ですけれども、また資料に戻って恐縮ですが、最後のペーパーの一番下です。3つのセンター、スポーツインテリジェンス、アスリートデータ、スポーツ技術開発というこの3つは、箱物ではなくて機能でございます。こういったものを踏まえることによって、各NFに対する、より戦略的な、積極的な支援を行っていく必要がありますし、また、オリンピック、パラリンピックで活躍をいたしましたマルチサポートハウスなどについても、今後も充実をしていく必要がある。
最後、拠点の活用・強化でございますけれども、この部分は、資料はお手間ですので、後で御覧いただければと思います。NTCの拡充整備ということを今取り組んでいるところでございます。東京オリンピック・パラリンピックの、少なくとも1年前には開所できるように、様々な関係者との御意見を頂きながら、今整備を進めているところでございます。このようにして、強力で持続可能な選手強化を図っていきたいと考えております。
【由良参事官】  資料の6番に基づきまして、スポーツ人材についての論点を御説明させていただきます。スポーツ人材という言葉を広く捉えております。上の四角囲いのところに「プレイヤー」と2行目に書いてありますが、もちろん、「プレイヤー」もスポーツ人材でございますが、べん図的に言いますと、その周辺に指導者、専門スタッフ、審判員、ボランティア、競技だったり、選手の活動あるいは日常的なトレーニング等を支える、選手だけではなくて日常的な運動する人たちのサポーターの人たち。そういった層がいます。更にべん図的に言いますと、周りにいると御理解いただくといいかと思いますが、スポーツ団体、チームの経営を担う人材。スポーツ政策の人材、民間事業者、こういった全ての方がスポーツ人材という定義に当たるだろうと考えてございます。ただ、この3枚の資料6で全てを論ずるのは難しゅうございますので、ここではそれぞれの分野に分担をしていただいている人材については、そちらにまずはお任せを、別の資料でそれぞれについて議論いただく。例えば、民間事業者とか、スポーツ政策、スポーツ経営、そういったものについては、別の機会に、主に次回の議論で御議論いただくことにいたしまして、ここではアスリートと指導者を中心に御説明したいと考えております。
1ページ目から2ページ目の上のところにかけて、そういった分け方で一応資料を整理しております。プレイヤーの部分については、「育成とアスリートキャリア形成」と書いてございますが、育成のところは今、先崎課長の強化のところに委ねておりますので、こちらではアスリートのキャリア形成のところだけ議論しております。と言いますのも、人材については、基本的には育成とキャリア形成の2つだろうと考えておりまして、そのうちの残っている部分として、キャリア形成、アスリートキャリアについては特に、なかなか難しいセカンドキャリアの部分の議論がございますので、そこについて論じてございます。中身については、少し後で御説明をします。
2つ目の、指導者、専門スタッフ、審判員についても、基本的には育成とキャリア形成の2つの視点で論じていかないといけないだろうと考えております。それぞれの分野によって論点が異なってまいりますが、基本的な研修、育成の仕組みは全て共通でございます。指導者については、それに加えてキャリア形成が大変大事だろうと考えておりまして、2つ目の項目で書いておりますけれども、指導者の資格について考えていく、それをキャリア形成につなげていくという論点を整理していきたいと考えております。その2つがこの資料の論点でございます。
データで1つだけ見ていただきますと、1つ目のプレイヤーのところでは、参考データと書いてありますところに、アスリートキャリアについては、強化指定選手の約半数、47.4%が引退後の就職に不安を抱えている。ここのところを、対策を講じていきたいということでございます。
それから、指導者のところにつきましては、参考データのところの1つ目、「スポーツ指導者の養成」が34.9%で、スポーツ振興について国や地方公共団体へ要望する声があるということで、スポーツ指導者の養成が求められているということでございます。
2ページ目に参りまして、施策の方向性のところを見ていただきますと、(1)「プレイヤー」については、3行目のところ、「アスリートの引退後も含めたキャリア形成支援に取り組む」というところでございます。
それから、2ポツの(2)指導者について、2行目でございますけれども、「能力に見合った処遇による活躍を推進することにより、スポーツ指導者を『職』としての確立を図る」ということでございます。
3ポツ、具体的な施策でございますけれども、(2)のところに、アスリートキャリアについて、これまで(1)ということで、デュアルキャリアの形成支援をこのスポーツ基本計画第一期では取り組んでまいりました。若い人に自分の将来像についても考えてもらうということをやってきておりますが、(2)として、それに加えてセカンドキャリアの選択肢の充実を第二期では取り組んでいきたいということで考えておりまして、3行目、「教育関連制度の充実や運動指導に関する産業育成など」というところを取り組んでいきたい。あるいは、最後の行でございますが、引退後の学び直し支援などの取組を進めたいと考えてございます。
それから、指導者でございますけれども、(1)から(5)まで分けておりますが、(1)コーチング内容の充実ということで、「モデル・コア・カリキュラム」を作成してきております。個人の経験に依らないコーチングの普及ということで、「モデル・コア・カリキュラム」を作ってきておりますので、これを共通科目として広めていきたいということが1つ目でございます。
(2)として、指導者制度については、更に体系的な充実を図っていきたいということで、各論を並べて書いてございます。
それから、3番目、指導者の活躍の場の拡大ということで、指導者の方がボランティアで仕事をしている場合が多いということを課題としては大変大きく捉えていかなければいけないと考えておりまして、議論が出ておりました総合型、学校の部活、各競技団体での指導といったこと、あるいは大学の部活指導についてもボランティアで取り組んでおられる指導者が多いということ。そういったことについて、それぞれの分野で団体の運営基盤の強化とともに、指導者に対するフルタイムでの活動を支援するということを取り組んでいきたい。当然ながら、民間の企業でもそういった取組を進めていただくことを強化していきたいと考えております。
(4)専門スタッフの養成・配置の充実について、2つ目の丸にありますように、大学等とも連携して取組を進めたいと思っております。
(5)とスポーツボランティアの育成・確保でございまして、特にオリンピック・パラリンピックを契機として、ボランティアへの関心・拡大、それから、障害者スポーツを含めたスポーツボランティアの数の拡大に取り組みたいと考えております。
以上でございます。
【友添部会長】  ありがとうございました。国際競技力とスポーツ人材です。御意見を頂ければと思います。
境田委員、どうぞ。
【境田委員】  境田でございます。
まず、競技力の強化のところで、今回、先崎課長から御説明があったとおり、スポーツ医科学情報を活用した支援というのが非常に重要であると考えています。今までこういった情報を十分に使いこなせていなかったのではないかという仮定に立って考えますと、恐らく今後、スポーツ科学を発展させていくには5つのカテゴリーの情報が必要なのではないかと思っています。
1つは、いろいろなバイタルデータです。生体情報。一人一人の体力測定データだったり、筋電情報だったり、骨密度だったり、いろいろなデータがありますね。そういった個人個人のバイタルデータ。
2つ目は、技術に関する、スキルに関するデータです。バスケットであれば、どういう形で動作、手首の動きとか、ジャンプとか、角度とか、そういった動作解析とか、あとは瞬発力とか、そのときの神経の動きとかメカニズム。そういった技術に関するデータ。
3つ目が、戦術に関するデータです。自分のチームはどういう戦術でやっているのか。そこにどこに欠点があるのか。あとは相手チームの情報などを、戦術をきちんと理解する。
4つ目が、メンタル、心理です。メンタルがいかに重要かというのは皆さんお分かりかと思います。
5つ目が、栄養です。食べ物、栄養に関するデータ。
こういったデータを恐らくバラバラに研究者が管理していたのではだめで、これを今後、一元管理していくということです。食べ物によって個々の選手の体力がつくし、それによってスキルが上がるとか、そのような相関関係があるわけですので、そういったデータを一元管理していくことが重要だろうと思っています。
加えて、この分野は今、東京大学のスポーツセンター学研究拠点を設置して4か月がたちましたけれども、このデータ測定の技術も、ウェアラブルとか、センシングとか、日本にはいろいろな世界最先端の技術がありますよね。それから、例えば、さっき心理と申し上げましたが、声で精神状態とか心理の状態とか、うそをついているかとか、人工知能で分かるという研究も相当進んでいますし、栄養に関しても、スマホで食べ物のデータを取ると、何を食べたのか、カロリーなどまで人工知能、ディープラーニングで分かるという研究も進んでいるのです。だから、そういった日本最先端のテクノロジーを使ってデータを集めていくということが非常に重要です。
加えて、そのデータも宝の持ち腐れではだめで、それを有効活用しなければいけないわけですよね。その有効活用をするということも、これもまた1つのしっかりした体制を組まないといけないのだろう。これは誤って使われると、元も子もないのです。そこで得られたデータをPDCAサイクルできちんと仮説・検証して、より精緻なものにしていくというプロセスも必要なのだろうと思います。
あと、今、例えば、がんの研究では、実際にどういった診断が行われているかというと、人工知能にがんの2,000万の論文を読ませる。それから、その個人個人の遺伝情報も読み込ませる。それを人工知能で計算させると、最適な薬だとか、治療方法が分かるという時代なのです。それをこのスポーツに適用すると、今言ったような5つの分野のいろいろなビッグデータが取れますよね。加えて、日本には筑波大学、早稲田大学、東京大学など、いろいろな研究機関にそういったスポーツ科学に関する論文がありますよね。そういった論文をきちんと人工知能に読み込ませる。それから、個人個人のデータをきちんと読み込ませれば、個人個人に応じた一番いい解が出てくるのではないかと思うのです。ですから、そういった日本のテクノロジーを最大限有効活用して、スポーツ科学を現場に提供していくことが非常に良いのではないかと思っております。
加えて、今回、トップアスリート1,600人のデータを一元管理するという方針ですけれども、これはトップアスリートだけのデータを取るのではだめで、例えば、大学の運動会の選手もデータを同じように1,600人取る。それで比較対照していくことが重要なのです。だから、トップアスリートのすごい人のデータだけを取るのではなくて、普通の一般人のデータも取りながら、同じようなトレーニングを課したら、こちらではこういうデータが出た。でも、トップアスリートは違うデータが出た。そういった研究もしていくことも重要なので、そういったデータを取ることもお考えいただければなと思います。実際、こういったシステムがきちんと機能していくと、今までの誤った指導ではだめだということで、指導者もきちんとそういったものを学んでもらうというプロセスも必要ですし、あとは競技団体が核になりますから、競技団体の担当者がそういったことをきちんと協力して、理解して実践してくれる。競技団体を巻き込むことも今後需要なことになります。当然のことながら、そこで活かされた知見は、地域型スポーツとか、民間のスポーツとか、学校体育にみんな適用できる話ですよね。ですから、そういったところも今後進めていく。こういったことが日本のスポーツ界にとって大きな課題なのではないかと思いますし、是非推進していただければと思います。
以上です。
【友添部会長】  ありがとうございました。広義のスポーツインテリジェンスの御提案だとお伺いをしておりました。御意見いかがでしょうか。
久木留委員、どうぞ。
【久木留委員】  資料、大変良くまとめていただいて、参考になるなと思いました。私からは、5つ。
1つは、今回、オリンピック・パラリンピック両方に行って、約19の競技団体、NOCもしくは統括団体とミーティングをしました。その中で、オリンピック・パラリンピックの活用の仕方という点で、「エビデンスベース」という話が出てきたり、情報をうまく活用するということを考えたときに、二百前後の国が来るわけですから、この場を使ってミーティングをしたり、いろいろな情報を収集する。つまり、比較対象を持たないとだめだなというのは改めて思いました。これが1点目です。
2点目は、その中で特にUKスポーツと、カナダのオウン・ザ・ポディウムというところのCEO2人と、女性ですけれども、話をしました。その中で共通していたのは、やはりエビデンスベース。特にカナダに関しては、女性スポーツが強いのですけれども、Low-hanging foodといって、要は「低いところの食べ物をとる」ということわざがあるそうです。それは、どこにそれがあるかということを徹底してカナダは見ている。女性が勝てるところというところで、800メートルリレーで今回銅メダルを獲ったのですけれども、戦略がしっかり整っている。それはエビデンスベースだというのがございました。そういう点で、システムをデザインしていくことはすごく大事だと。そのシステムの中で、本日の報告にもありましたけれども、やはり4年、8年プランというのが、どの国も当たりまえのように置いている。そうしたら、日本としてはどうするのだということが大事になると思います。最も大事なのは、その中で実行体制をどうしていくのだというところで、日本にはたくさんの組織がありますので、信頼関係の下にスポーツ庁が役割と責任を明確にして、どういう責任の下で、どういう役割なのだということを統一していく必要があるだろうと思いました。
3点目ですが、システムを変えられるチャンスだと。これはよく言われていますし、ここでも議論されましたが、多くの国を見ていると、3つございます。大失敗したときと、オリンピック招致をしたときと、強烈なリーダーが出てきたとき。この3つがそろっていたのがUKなのです。強烈なリーダーというのでは、バロネス・スー・キャンベルという、ものすごいリーダーがいました。そしてオリンピック招致が成功しました。96年のアトランタで失敗しました。ここでシステムを変えました。そうしたときに日本は、オリンピック招致があって、鈴木長官という、金メダリストでありながら、アカデミックな部分でドクターを持っている。こういう方が出てきている。私の大学のボスの佐藤満さんも同じように、金メダリストでドクターを持っている。室伏さんも同じようにそういう経歴です。本日来ている田邉さんも同じです。つまり、大学の教員になりながら、後進を指導して、なおかつトップスポーツに関わり続けているけれども、アカデミックなバックボーンもある。こういう人が出てきたときがチャンスですから、東京というのはそのシステムを変える絶好の機会だというのをいろいろな方から言われました。
4点目、具体的な策の話になるのですが、出向制度を入れていく必要があるだろう。今、4年前ですけれども、恐らく直前や2年前になったら、強化委員長は出してくれという声は出てきます。特に4つの競技、オリンピックで言えば、恐らく強化委員長というか、ヘッドコーチになっていく井上康生さん。競泳の上野さんや平井さん。レスリングの栄さんや松本さん。そして、体操の水鳥さん。パラで言えば、強化委員長ですけれども、大槻さんという方がいらっしゃいます。この方全員、大学所属なのです。そうすると、4年前から、今すぐでなくても結構ですけれども、出向ができる制度を国として考えておけば、少なくとも2年前、少なくとも1年前から出向に出て、その競技に専念できるという策は、日本独自の策としてもっていく必要があると思います。私の場合、あいにくというか、たまたまクロスアポイントメント制度で5年間出してもらいました。大学との交渉は、長期的なものが必要ですから、これはスポーツ庁主導でやっていただく必要があるでしょう。
人材の育成では、本日泉さんがいらっしゃいますけれども、体協がすごく尽力しています。JOCは、ナショナルコーチアカデミーは行っています。大学はそれぞれ各自のシステムがあります。パラも始めています。そうしたときに、トータルでだれがどうデザインをして、ベースの部分はこれだけよと、パラだからここは絶対必要ねと、でも、オリでも各競技違うよねと。そのトータルデザインが描かれないと、恐らく人材の育成はできないですし、これはデュアルキャリアも同じだと思います。全体でやらないと、どこどこだけが得るというのではなくて、国が主導して、いいとこどりをして日本独自のシステムを取ることをしないとだめなのかなと。これは東京オリンピック、パラリンピックがきた今しかできないのではないかなと考えています。
以上です。
【友添部会長】  朝原委員、どうぞ。
【朝原委員】  先ほどのお話と少し重複するかもしれないのですけれども、国際競技力の向上で、同じぐらいの総メダル数を獲っている国と比べてみても、日本の競技種目数が少ないのですよね。2020というターゲットに絞って、メダルが獲れそうなところに特化するという意味では、本当に獲れそうなところにお金をかけてやるというのが、すごく簡単だと思うのですけれども、ただ、日本の国のスポーツを考えるという意味で、果たしてそれがいいのかどうかということだと思うのです。いろいろな競技に対して、まんべんなく特化し、あらゆる競技を強くするという意味では、多分、2020にとってはものすごく難しい。強化が薄まると思いますので、その辺を、日本のスポーツをどういう方向にしていくのか、東京までは本当にメダルに特化してやっていくのかという話が、セカンドキャリアとか、指導者の育成にもこれが関係してくると思うのです。幅広くいろいろな競技が強くなれば、それだけやってきた選手たちも、その後活躍できますし、指導者も増えるということで、将来的なことを考えて、今、この東京に向けて幅広く強化をしていく体制を整えていくのか、若しくは本当に絞った上で、先ほどの話ではないですけれども、トップのコーチの指導者に特化して強化をしていくか。その辺の国の考え方みたいなものも、これから考えていかないといけないのではないかと思いました。
以上です。
【友添部会長】  ありがとうございました。
福井委員、どうぞ。
【福井委員】  指導者の人材の確保というところでお話をさせていただこうと思ったら、さきほど久木留委員が出向制度の話をされて、その話と同じ話をしようと思ったのです。それに付け加えて、私、東京2020の戦略特別専門部会JOCの担当をしているのですけれども、事務に聞くと、大学の先生だけではなくて、競技によっては民間企業に勤めている優秀な指導者の方がおられる。その方たちに教えてもらいたい、重要なポジションに就いていただきたいのだけれども、その方たちの休みを利用してしかできない。その方たちに来てもらうと、その方たちが会社に戻ったとき、スポーツに携わった期間が空白の期間になってしまう。それが一番の問題なのです。ですから、そのスポーツに携わって、その競技を盛り上げてくださったことが、何かしら会社に、社会的な貢献ですとか、何か自分のキャリアにつながるようなことがあって、胸を張ってまた会社に戻れる。もっといい立場でと言いますか、会社に戻れるような、そういうことを考えていただけると、恵まれていない競技によっては、もっともっと指導者を確保することができるのです。それも是非機会があったらお話ししてくださいと言われましたので、先程の大学の先生とプラスして、民間の方たちもということでお話をさせていただきました。
【友添部会長】  休職してハンディになるようでは、もう話にならないということかと思います。
大塚委員、どうぞ。
【大塚委員】  国際競技力向上に関しての部分におきましては、NF、中央競技団体の立場から、今回の資料の中に中長期的な強化戦略に基づくということを非常に強調していただいております。これは、2020東京に限らず、その次の2024オリンピックを永久的に日本としてメダルを獲得し、3位を維持していく。いわばメダル上昇国としていくことが明確に打ち出されていると判断させていただきたいと思っております。そのことが非常に大きいポイントであり、もう一つは、今、久木留委員もおっしゃったように、国とJSCまたJOC及びJOCと一体化しているNFの役割の明確化をもう少し具体的に記載していかないと、国民一人一人の目に映っていくところの流れを、私としてはもっともっとそれぞれの立場が明確に分かるようにできればいいなと思っています。特にこれから、ハイパフォーマンスセンター、ハイパフォーマンスという言葉の中に入っていく中で、若いアスリートたちが、どうすれば自分たちはオリンピアンになれるのか、パラリンピアンになれるのかという道の見え方がもう少し分かりやすくできたらいいなと思っています。中央競技団体に帰属した選手たちが、JOC、JSC、そして国とともに、スポーツ庁とともに世界に向かっていく姿を想像できるような仕組みが必要ではないかなと思います。
最後に、この施策を進めていく中で、昨日もJOCコーチ会議が行われ、300人近い全国のコーチ、競技団体コーチが集まりました。いろいろなお話がその中であり、今の雇用関係のお話もあるのですが、もう一つは規制緩和です。この部分の御支援を頂きたいというところで、大きく言うと、2019年、2020年においては、自国開催のオリンピックに対する各種スポーツイベントのカレンダーの調整ですね。インターハイ、国体といったものと東京オリンピックとの兼ね合いです。こういった部分における大きな舵取りを是非とも国にお願いできればと思っています。
それから、海外から外国人コーチを迎え入れるときのビザの関係。また、日本人の選手が長期的に海外にいる場合、カヌーのチームは234日間の海外拠点での生活を行ったそうですが、ここの海外にいる間の長期ビザの獲得の問題。こういった規制緩和につながる部分を、何とかこの機会に国際競技力向上の中に組み込んでいただければと思っています。
また、スポーツ人材の育成と確保に関しまして、これもNFの立場から申し上げますと、「指導者専門スタッフ、審判員など」という部分を今回入れていただいているのですが、この「指導者専門スタッフ、審判員など」の部分を是非とも具体的なポジショニングのネーミングを入れていただきたいと思っています。分かりやすいここのスタッフの名前も、これから確立していく上では必要になってくるのではないかなと思っています。
さらに、2020組織委員会の方が、2020に向けた人材を雇用し始めております。各競技団体からスポーツマネージャー、それから、スポーツアシスタントマネージャー、今後、ベニューマネージャー及びアドミニストレーションスタッフ等の雇用が始まってきます。こことの連動は、2020に向けては必要な項目になってくると思いますし、人材を育成する大きな活動の場になると思いますので、その2020との連携を是非お願いしたいと思っております。
以上です。
【友添部会長】  貴重な御提案ありがとうございました。
桑田委員、最後になります。
【桑田委員】  ありがとうございます。一言だけ本日いろいろなお話を伺いまして、2020東京後のレガシーとしても逆に地域での受け皿の充実ということがなお一層大事だなということを改めて実感させていただきました。そして、日本のスポーツ界においては、本日の資料の人材の提案の中で、「職」という概念を入れていただける。これは大変あり難い話でして、地域スポーツでのボランティアは否定しませんが、大半の国民がやっている地域スポーツで意欲のあるクラブが指導者、選手等の雇用の場として、トップアスリートのセカンドキャリアとしての生活の場として24時間専門家が専任体制でやれるような構造を作り、これが今後の競技団体を支えていくという意味でも、地域の在り方が非常に重要ではないかなと思いました。そういう意味で、地域スポーツにおけるスポーツビジネスとか、あるいはソーシャルビジネスの中の1コンテンツとしてのスポーツの在り方とか、そういうことを是非今回の計画の中に触れていただけたらうれしく思います。
以上です。
【友添部会長】  ありがとうございました。貴重な御意見、本当にありがとうございます。本来ならもう少しやりたいところですけれども、時間が参りました。本日頂いた御意見については、今後の検討に活かしてまいりたいと思っています。
これで本日予定しております議題は、以上で終了になります。ここで鈴木長官から所管についていろいろお考えのところをお願いします。
【鈴木スポーツ庁長官】  本日は大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。また、オリンピック・パラリンピックに関係された皆さん、組織関係者の皆さん、心から敬意を表したいと思います。ありがとうございました。
前回と今回、このスポーツ強化について、いろいろと御意見を賜ってきたわけですけれども、私自身もリオに参りまして、オリンピック関係者、パラリンピック関係者の皆さんと意見交換等をさせていただきました。本日頂いた意見あるいは、私がリオで感じたところを今後いろいろな形で盛り込んでいくわけですけれども、きょう頂いた、まず2020年対策。これも非常に大事です。そして、また、2020年以降の対策も反映させて、今後の強化策を作ってまいりたいと思っておりまして、この強化策につきましては、近々皆さんにもお示ししたいと思っております。いずれにしましても、この2020年大会が一過性のものではなく、これを機にレガシーとして強化策も継続していけるような、そういった強化策にしてまいりたいと思っております。これに関しましては、関係者の皆様、JOC、JPC、JSCそして各競技団体の皆様と今後も意見を共有しながら進めてまいりたいと思います。本日はありがとうございました。(拍手)
【友添部会長】  次回の日程につきましては、事務局からお願いします。
【澤川政策課長】  失礼いたします。次回のスポーツ基本計画部会第6回になりますが、10月14日金曜日の午前10時から開会いたします。場所は、文部科学省の東館、旧庁舎のレンガ造りの建物の6階の第二講堂にて行います。
議事でございますが、本日と同様に、次期計画における主要課題について御議論いただく予定でございます。今回同様、タイトな審議になるかもしれません。本日、時間等がなくて十分御発言できなかったという委員におかれましては、事務局に何かお気づきの点等お寄せいただければ共有させていただきたいと思っております。
次回のテーマでございますが、参考の1に書いてございますが、「国際交流・協力、インテグリティ、障害者スポーツ、地域活性、スポーツビジネス、スポーツ施設、大学スポーツ」となっておりまして、その点でもし、本日も委員から資料を頂いておりますが、あらかじめ御発言したいということがありましたら、関連資料等お寄せいただければ、第6回の会議で配付させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
【友添部会長】  ありがとうございます。
それでは、急ぎましたけれども、本日はこれで散会とします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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