資料8 公益財団法人日本体育施設協会 資料

平成28年7月25日
公益財団法人日本体育施設協会

「安全でより快適なスポーツ施設」を目指して

我が国のスポーツ施設は、1964年オリンピック後に建てられた施設が多く、既存施設は経年による老朽化が進み、新築・大規模改修時期を迎えている。しかし人口減少・集中、年齢構成の変化、財政事情等により従来の施設をそのまま再生させることは困難であり実態と異なる。人々の健康維持、安全で快適なスポーツ環境への関心も高く、そのためスポーツ施設を含め公共施設を社会共通の資産と捉え、全体として有効活用を図り、「規模の拡大・維持」から「選択と集約」へと転換していく必要がある。具体的には、(1)複数の所管に分かれている公共資産を一元的に管理(2)施設の現状と管理運営経費の把握(3)地域住民との幅広い議論が必要である。
 地域スポーツ施設の充実を図るため、地域にある学校、公園、河川敷等のスポーツ施設を一体的に活用できるよう、各省庁間の総合的な連絡調整を行いつつ、自治体が「選択と集約」を実施できるように支援することが必要である。
また、誰でもが身近にスポーツが楽しめる環境整備には安全を確保することも重要課題である。各種スポーツ指導者の充実も大切であるが、スポーツをする場を安全で快適な場所として提供できる施設管理者も劣らずに大切である。施設設備の状況、スポーツ用器具の機能・安全に問題はないか。また、スポーツ指導者、施設管理者共に万一、事故・傷病者が発生した場合に適切な初期対応ができるのか。一案として以下のことを提案する。

1 スポーツ施設管理者の養成
・スポーツ施設は用途により多種類の施設がある。その施設の維持・管理には、施設特性に応じた、一定の知識と経験を持つ施設管理者が必要である。
・スポーツ施設管理者は、傷病者に対応する頻度が一般人より高く、その対応も求められる。
・施設利用者、競技者、観客の安全とより良いスポーツ環境の整備に必要な、質の高いスポーツ施設管理者の養成を推進する必要がある。

2 安全基準の確立
・競技者、施設利用者が安心してスポーツを行うためには、スポーツ施設設備・用器具・その素材等の安全、衛生の確保は重要な課題である。
・スポーツ中に起こった事故の原因は何処にあるのか。使用する者側なのか、施設設備、用器具、製品、素材の瑕疵あるいは整備・管理上の問題なのか。複合的なことなのか。
・現在、スポーツ事故について、どの様な事故が、何時、何処で起こったのか。原因は何で有ったのか。メディアでの露出以外なかなか把握できていないのが現状である。
・事故情報を集約・明らかにし、どのような状況でどのような事故が起こったのかを全国的に情報共有できる体制を整備し、同じような事故を起こさないようすべきである。
・次に、スポーツ設備・用器具、素材等について、各競技団体、関係団体、関係企業等と協議を進め安全基準を確立する必要がある。

3 ユニバーサルデザイン
・障がいの有無に関わらず、全ての人々にとって安全で快適に、使いやすいスポーツ施設を目指すことは当然のことである。
・大規模な施設改修だけではなく、小さな工夫でもできることから始めること。その際に必要なことは、施設を管理運営する者がユニバーサルデザインについての理解と柔軟な姿勢もって運用するこ     とである。
・ユニバーサルデザインの施設・設備の事例、軽微な費用でできる事例、運用でできる事例などを収集し、情報提供する体制とその普及啓発活動に更に注力する必要がある。

4 公共スポーツ施設と学校体育施設
・地域コミュニティーの中核拠点として公共スポーツ施設、学校体育施設も重要な施設である。
・学校施設の共同利用を更に進めると共に、学校施設・設備の高機能化、利用者の拡大、効果的な活用に繋がる管理運営手法の検討など、様々な手法を講じて地域活性化の拠点の一つとなるよう活用していく必要がある。
・管理・運営については様々検討できる。地域住民が参加している総合型地域スポーツクラブの活用の他、指定管理者制度により民間事業者の創意工夫も考えられる。
・専門の施設管理者に管理・運営部分を任せることにより、学校関係者の体育施設管理負担を軽減し、授業・指導に専念でき、児童・生徒の安全確保も向上させることができる。

5 スポーツ施設と防災対応施設
・災害発生時には公共スポーツ施設、学校施設の区別なく避難所等の防災対応施設として使用される。防災対応施設の整備が求められる中、スポーツ施設も学校施設もそれへの対応ができるよう建設・管理運営を行う必要がある。
・ここ数十年間の地震、土砂災害、河川の氾濫等に対応した経験・知識から、防災対応施設として必要な設備・機能は明らかになっているが、その蓄積は一部の地域、一部の行政機関に留まっているのではないか。
・全国で蓄積されている有効に活用できる情報を集約し、自治体がスポーツ施設の「選択と集約」を進める中で、個々の施設に必要な設備・機能を整備する指針を提供する必要がある。
・スポーツ施設(学校体育施設を含む)を、スポーツ施設と防災対応施設として両面の設備・機能を持ち、地域の安全・安心に繋げる必要がある。

6 大型イベントスタジアム・アリーナと地域スポーツ施設
・観るスポーツをより充実するための大規模スポーツイベントやスポーツ以外の大型イベントが開催できる「スタジアム・アリーナ」の充実を図る必要がある。
・地域住民がスポーツを身近に楽しめる、地域のスポーツコミュニティの拠点である地域スポーツ施設と「スタジアム・アリーナ」は、区分し並列に検討整備する必要がある。
・特に、地域スポーツ施設との利用目的、運営方法の違いを明確にし、収益性のある整備方策を十分に検討すること。また、観客のためのホスピタリティの徹底を行い、集客のための周辺環境整備、交通インフラの整備等も必要に応じて包括的に検討すべき。

7スポーツ施設の国際規格
・日本においては、2020年東京オリ・パラを含めて多くの国際競技大会が開催予定である。新国立競技場を初めとして国際的な競技規格を備えた施設が建設される。
・例えば、新国立競技場はオリンピック開催競技場として国際陸上競技連盟から認定を受けなければならない。日本には国際陸連公認の検査機関がないため、海外にある国際陸連公認の検査機関に依頼することになる。
・現在、アジア地域には国際陸連の公認検査機関はなく、日本に設置できれば国際陸連との連携も密になり、世界の情報も得やすく、特に近隣のアジア諸国へ日本の存在感を示し、リーダーシップを発揮できる良い機会となる。
・日本のスポーツ施設の施工技術、完成度及び使われている走路面素材・製品等については、世界標準に勝るとも劣ることはなく、検査機関の設置に技術的な課題はないと思われる。
・2019年新国立競技場の完成までに、日本国内に国際陸連公認の検査機関を設置し、新国立競技場の認定は日本で行い、また、将来的には他競技の公認検査機関としても活動できる可能性もある。日本のスポーツ施設の安全・安心に必要な機関と考えられる。


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