スポーツ庁における行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づく開示等に関する処分に係る審査基準

平成27年10月1日
スポーツ庁次長決定
平成29年5月30日一部改正

 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号。以下「法」という。)に基づきスポーツ庁長官が行う開示等に関する処分に係る行政手続法(平成5年法律第88号)第5条第1項の規定による審査基準は、次のとおりとする。

1.保有する個人情報の開示等に関する審査基準等

 スポーツ庁長官は、法第14条の規定により保有個人情報の開示請求があったときは、当該開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合を除き、開示請求者に対し当該保有個人情報を開示しなければならないが、この際に考慮すべき事項は以下のとおりとする。

(1)開示・不開示の基本的考え方

 開示請求権制度は、個人が、行政機関が保有する自己に関する個人情報の正確性や取扱いの適正性を確認する上で重要な制度であるため、法では、不開示情報以外は開示しなければならないとの原則開示の枠組みとしている。一方で、本人や第三者、法人等の権利利益や、国の安全、公共の利益等も適切に保護する必要があり、開示することによる利益と開示しないことによる利益とを適切に比較衡量する必要がある。ここで不開示情報とする場合は、開示しないことに合理的な理由がある情報について、不開示とする理由をできる限り明確かつ合理的なものとする必要がある。
 以上を踏まえ、不開示情報が含まれていない限り、開示請求に係る保有個人情報を開示しなければならないという考え方に立って処理する必要がある。

(2)不開示情報の類型

 法第14条各号の不開示情報は、保護すべき利益に着目して分類したものであり、ある情報が各号の複数の不開示情報に該当する場合があり得る。したがって、ある保有個人情報を開示する場合は、法第14条各号の不開示情報のいずれにも該当しないことを、当該開示決定等を行う時点における状況に基づき、確認することが必要である。法第14条各号の規定の解釈として、別紙1‐1の点につき留意するものとする。

(3)部分開示

 部分開示を行う場合には法第15条の規定に基づいて行うものとし、当該規定の解釈として別紙1‐2の点に留意するものとする。

(4)個人の権利利益を保護するための裁量的開示

 個人の権利利益を保護するために裁量的開示を行う場合には、法第16条の規定に基づいて行うものとし、当該規定の解釈として別紙1‐3の点に留意するものとする。

(5)保有個人情報の存否に関する情報

 保有個人情報の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する場合には法第17条の規定に基づき行うものとし、当該規定の解釈として別紙1‐4の点に留意するものとする。

2.保有する個人情報の訂正等に関する審査基準等

 スポーツ庁長官は、法第29条の規定に基づき訂正請求があった場合において、当該訂正請求に理由があると認めるときは、当該訂正請求に係る保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内で、当該保有個人情報の訂正をしなければならないが、その判断は、当該行政機関の所掌事務、保有個人情報の利用目的及び本法の趣旨を勘案して、事実を基に客観的に行う必要がある。この際に、当該規定の解釈として別紙2の点に留意するものとする。

3.保有する個人情報の利用停止に関する審査基準等

 スポーツ庁長官は、法第38条の規定に基づく利用停止請求があった場合において、当該利用停止請求に理由があると認めるときは、当該行政機関における個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で、当該利用停止請求に係る保有個人情報の利用停止をしなければならないが、その判断は、当該行政機関の所掌事務、保有個人情報の利用目的及び本法の趣旨を勘案して、事実を基に客観的に行う必要がある。この際に当該規定の解釈として、別紙3の点に留意するものとする。

別紙1‐1 第14条各号(不開示情報)関係

1.法第14条第1号・第2号(個人に関する情報)関係

第14条

  • 一 開示請求者(第12条第2項の規定により未成年者又は成年被後見人の法定代理人が本人に代わって開示請求をする場合にあっては、当該本人をいう。次号及び第3号、次条第2項並びに第23条第1項において同じ。)の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報
  • 二 開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)若しくは個人識別符号が含まれるもの又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
     イ 法令の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報
     ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報
     ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第4項に規定する行政執行法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等の役員及び職員、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人の役員及び職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分

(1)開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報(法第14条第1号)

 法第14条第1号が適用される場合は、開示することが深刻な問題を引き起こす可能性がある場合であり、その運用に当たっては、具体的ケースに即して慎重に判断する。

(2)開示請求者以外の個人に関する情報(法第14条第2号)

1.開示請求者以外の個人に関する情報(法第14条第2号本文)

  • ア 「個人に関する情報」には、生存する個人に関する情報のほか、死亡した個人に関する情報も含まれる。
  • イ 「(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)」
     「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人に関する情報に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により不開示情報該当性を判断する。
  • ウ 「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの」
     「その他の記述等」とは、氏名及び生年月日以外の記述又は個人別に付された番号その他の符号等をいう。映像や音声も、それによって特定の個人を識別することができる限りにおいて「その他の記述等」に含まれる。
     「特定の個人を識別することができる」とは、当該情報の本人である特定の個人が誰であるかを識別することができることをいう。
  • エ 「(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」
    照合の対象となる「他の情報」には、その保有者が他の機関である場合のほか、公知の情報や、図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれ、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないような情報については、通例は「他の情報」に含めない。
    しかし、事案によっては、個人の権利利益を保護する観点からは、個人情報の取扱いに当たって、より慎重な判断が求められる場合があり、当該個人を識別するために実施可能と考えられる手段について、その手段を実施するものと考えられる人物が誰であるか等をも視野に入れつつ、合理的な範囲で判断する。
  • オ 「開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの」
     保有個人情報の中には、匿名の作文や、無記名の個人の著作物のように、個人の人格と密接に関連したり、開示すれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものがあることから、特定の個人を識別できない場合であっても、開示することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある場合については不開示とする。

2.「法令の規定により開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報」(法第14条第2号イ)

  • ア 「法令の規定により開示請求者が知ることができる情報」 
     「法令の規定」には、何人に対しても等しく当該情報を開示すること又は公にすることを定めている規定のほか、特定の範囲の者に限り当該情報を開示することを定めている規定が含まれる。
  • イ 「慣行として開示請求者が知ることができる情報」
     「慣行として」とは、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として知ることができ、又は知ることが予定されていることで足りる。
     ただし、当該保有個人情報と同種の情報について、本人が知ることができた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。
  • ウ 「知ることが予定されている情報」
     「知ることが予定されている」とは、実際には知らされていないが、将来的に知らされることが予定されている場合である。なお、「予定」とは、将来知らされることが具体的に決定していることは要しないが、当該情報の性質、利用目的等に照らして通例知らされるべきものである。

3.「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」(法第14条第2号ロ)

 開示請求者以外の個人に関する情報について、不開示にすることにより保護される開示請求者以外の個人の権利利益よりも、開示請求者を含む人の生命、健康等の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合には、当該情報を開示する。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
 この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討を行う。

4.公務員等の職務の遂行に関する情報(法第14条第2号ハ)

  • ア 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、独立行政法人、地方公共団体又は地方独立行政法人の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、苦情相談に対する担当職員の応答内容に関する情報などがこれに含まれる。
  • イ 「当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」
     公務員等の職及び職務の遂行に関する情報のうち、その職名と職務遂行の内容については、不開示としない。
  • ウ 公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名の取扱いについては、開示した場合、公務員等の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に値すると位置付けた上で、法第14条第2号イに該当する場合には、例外的に開示する。
     例えば、人事異動の官報への掲載その他行政機関等により職名と氏名とを公表する慣行がある場合、行政機関等により作成され、又は行政機関等が公にする意思をもって(あるいは公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名とが掲載されている場合等は、「慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている」場合に該当する。

2.法第14条第3号(法人等に関する情報)関係

第14条

  • 三 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下この号において「法人等」という。)に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報を除く。
     イ 開示することにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
     ロ 行政機関の要請を受けて、開示しないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として開示しないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの

(1)「法人その他の団体に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報」(法第14条第3号本文)

  1. 「法人その他の団体」(以下「法人等」という。)には、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人、特定非営利法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人や権利能力なき社団等の法人以外の団体も含まれる。ただし、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人は、法第14条第3号の対象から除かれており、その事務又は事業に係る情報は、同条第7号の規定に基づき判断する。
  2. 「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織及び事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等と関連性を有する情報を指す。
     なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、法第14条第2号の不開示情報に当たるかどうかも検討する必要がある。
  3. 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断する。

(2)「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」(法第14条第3号ただし書)

 当該情報を不開示にすることによって保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益と、これを開示することにより保護される人の生命、健康等の利益とを比較衡量し、後者の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合は、当該情報は法第14条第3号の不開示情報に該当しない。現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
 なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得ることに留意する。

(3)「当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」(法第14条第3号イ)

  1. 「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切を含む。「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指す。また、「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含む。
  2. 「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類及び性格のものがあり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格、権利利益の内容及び性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の権利の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して判断するものとする。
     なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が必要である。

(4)「任意に提供された情報」(法第14条第3号ロ)

  1. 法人等又は事業を営む個人から開示しないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、不開示情報とする。
  2. 「行政機関の要請を受けて、開示しないとの条件で任意に提供された情報」には、行政機関の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供された情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から開示しないとの条件が提示され、行政機関が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれる。
  3. 「行政機関の要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、行政機関の長が法令に基づく報告徴収権限を有する場合でも、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。
  4. 「開示しないと」とは、本法や情報公開法に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんであるが、第三者に対して当該情報を提供しないという意味である。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件で情報の提供をうける場合も通常含まれる。
  5. 「条件」については、行政機関の側から開示しないとの条件で情報を提供してほしいと申し入れる場合も、法人等又は事業を営む個人の側から行政機関の要請があったので情報は提供するが開示しないでほしいと申し出る場合も含まれるが、いずれの場合も双方の合意により成立する。また、条件を設ける方法については、黙示的なものを排除しない。
  6. 「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等又は個人において開示しないこととしていることだけでは足りない。
  7. 開示しないとの条件を付することの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の事情の変化も考慮する。開示しないとの条件が付されていても、現に当該情報が公になっていたり、同種の情報が既に開示されているなどの事情がある場合には、法第14条第3号ロには該当しない。

3.法第14条第4号(国の安全等に関する情報)関係

第14条

  • 四 開示することにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

(1)「国の安全が害されるおそれ」

 「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれていること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれている状態等をいう。
「国の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段の有効性を阻害され、国の安全が害されるおそれがあると考えられる場合を含む。)をいう。

(2)「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」

 「他国若しくは国際機関(我が国が承認していない地域、政府機関その他これらに準ずるもの(各国の中央銀行等)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織(アジア太平洋経済協力等)の事務局等を含む。以下「他国等」という。)との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすようなおそれをいう。例えば、開示することにより、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなる、他国等の意思に一方的に反することとなる、他国等に不当に不利益を与えることとなるなど、我が国との関係に悪影響を及ぼすおそれがある情報等が該当する。

(3)「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」

 他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉において、我が国が望む交渉成果が得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下する等のおそれをいう。例えば、交渉(過去のものを含む。)に関する情報であって、開示することにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関して我が国が採ろうとしている立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、交渉上の不利益を被るおそれがある情報等が該当する。

(4)「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」

 開示することにより、国の安全が害されるおそれ、他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそれがある情報については、一般の行政運営に関する情報とは異なり、その性質上、開示・不開示の判断に高度の政策的判断を伴うこと、我が国の安全保障上又は対外関係上の将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められることから、本号の該当性の判断においては、「おそれ」を認定する前提となる事実を認定し、これを不開示情報の要件に当てはめ、これに該当すると認定(評価)する。

4.法第14条第5号(公共の安全等に関する情報)関係

第14条

  • 五 開示することにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

(1)「犯罪の予防、鎮圧又は捜査」

 「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。
 「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止し、又は犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、又は終息させることをいう。
 「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。

(2)「公訴の維持」

 「公訴の維持」とは、提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張及び立証、公判準備等の活動を指す。

(3)「刑の執行」

 「刑の執行」とは、刑法(明治40年法律第45号)第2章に規定されている刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行、監置の執行、過料、訴訟費用、費用賠償及び仮納付の各裁判の執行、恩赦についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、開示することによりこれら保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報等が該当する。

(4)「公共の安全と秩序の維持」

 「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるもの等が該当する。
 また、開示することにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムに対する不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報及び被疑者又は被告人の留置又は勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も、法第14条第5号に該当する。
 風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の、一般に開示しても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生ずるおそれのない行政警察活動に関する情報については、法第14条第7号の規定により判断する

(5)「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」

 開示することにより、犯罪の予防、鎮圧、捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報については、その性質上、開示・不開示の判断に犯罪等に関する将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められることから、本号の該当性の判断においては、「おそれ」を認定する前提となる事実を認定し、これを不開示情報の要件に当てはめ、これに該当すると認定(評価)する。

5.法第14条第6号(審議、検討等に関する情報)関係

第14条

  • 六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

(1)対象となる情報の範囲

 「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院並びにこれらに属する機関を指す。これらの国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(国の機関等)について、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間における審議、検討又は協議に関する情報が本号の対象である。具体的には、国の機関等の事務及び事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程においては、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は行政機関が開催する有識者等を交えた研究会等における審議や検討、施策の実施団体の選考に係る審査や検討など、様々な審議、検討及び協議が行われており、これら各段階において行われる審議、検討又は協議に関連して作成され、又は取得された情報を指す。

(2)「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」

 開示することにより、外部からの圧力、干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合をいう。

(3)「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」

 未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報等を開示することにより、誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。

(4)「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」

 尚早な時期に、あるいは事実関係の確認が不十分なままで情報を開示することにより、不正な投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある場合をいう。

(5)「不当に」

 (2)から(4)までにおいて「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を開示することの必要性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、開示することによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断する。

(6)意思決定後の取扱い等

 審議、検討等に関する情報については、国の機関等としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられるが、当該意思決定が全体として一つの政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる等審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討を要する。
 また、審議、検討等が終了し、意思決定が行われた後であっても、当該審議、検討等に関する情報が開示されると、国民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがあれば、本号に該当する場合がある。

6.法第14条第7号(事務又は事業に関する情報)関係

第14条

  • 七 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
     イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
     ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
     ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
     ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
     ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

(1)「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(法第14条第7号本文)

  1. 「次に掲げるおそれ」として法第14条第7号イからホに掲げたものは、各機関共通的にみられる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、開示することによって、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障を挙げたものである。これらの事務又は事業の外にも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの等は、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」に該当する場合がある。
  2. 「当該事務又は事業の性質上、適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」については、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断する。
    法第14条第7号の規定は行政機関の長の恣意的判断を許容する趣旨ではなく、各規定の要件の該当性は客観的に判断される必要があり、また、事務又は事業の根拠となる規定・趣旨に照らし、個人の権利利益を保護する観点からの開示の必要性等の種々の利益を衡量した上で「適正な遂行」といえるものであることが求められる。
  3. 「支障」の程度は、名目的なものでは足りず実質的なものが必要であり、「おそれ」の程度も単なる可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性があると認められるかどうかにより判断する。

(2)「監査、検査、取締り、試験、又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(法第14条第7号イ)

  1. 「監査」(主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べること。)、「検査」(法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べること。)、「取締り」(行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態を確保すること。)、「試験」(人の知識、能力等又は物の性能等を試すこと。)及び「租税の賦課若しくは徴収」(国又は地方公共団体が、公租公課を特定の人に割り当てて負担させること又は租税その他の収入金を取ること。)に係る事務は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがある事務である。
  2. これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報、試験問題等のように、事前に開示すると、適正かつ公正な評価又は判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽をするなどのおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。また、事後であっても、例えば、監査内容等の詳細についてこれを開示すると今後の法規制を免れる方法を示唆することになるようなものは、法第14条第7号イに該当する場合がある。

(3)「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(法第14条第7号ロ)

 国の機関等が一方の当事者となる契約、交渉又は争訟に係る事務に関する情報の中には、例えば、用地取得等の交渉方針や用地買収計画案を開示することにより、適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれたり、交渉、争訟等の対処方針等を開示することにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。

(4)「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(法第14条第7号ハ)

 国の機関等が行う調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階の情報等であって、一定の期日以前に開示することにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるもの、及び試行錯誤の段階の情報で、開示することにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるものがあり、このような情報については、不開示とする。

(5)「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(法第14条第7号ニ)

 国の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分、能力等の管理に関すること。)に係る事務は、当該機関の組織としての維持の観点から行われ、一定の範囲で当該組織の自律性を有するものである。人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を開示することにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報については、不開示とする。

(6)「独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(法第14条第7号ホ)

 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関連する情報については、企業経営という事業の性質上、法第14条第3号の法人等に関する情報と同様な考え方で、企業経営上の正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものは不開示とする。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、情報の不開示の範囲は、法第14条第3号の法人等の場合とは当然異なり、より狭いものとなる場合があり得ることに留意する。

別紙1‐2 法第15条(部分開示)関係

第15条

 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合において、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。
 2 開示請求に係る保有個人情報に前条第2号の情報(開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものに限る。)が含まれている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その他の開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなる記述等及び個人識別符号の部分を除くことにより、開示しても、開示請求者以外の個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。

(1)不開示情報が含まれている場合の部分開示(法第15条第1項)

  1. 「開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合」とは、開示請求について審査した結果、開示請求に係る個人情報に、不開示情報に該当する情報が含まれている場合をいう。
    法第14条では、保有個人情報に全く不開示情報が含まれていない場合の開示義務が定められているが、法第15条第1項の規定により、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならない。
  2. 「容易に区分して除くことができるとき」
    ア 当該保有個人情報のどの部分が不開示情報に該当するかという区分けが困難な場合だけでなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も部分開示を行わない。
     「区分」とは、不開示情報に該当する部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、不開示情報に該当する部分を、当該部分の内容が分からないように墨塗り、被覆等を行うなど、加工することにより、情報の内容を消滅させることをいう。
    イ 保有個人情報に含まれる不開示情報を除くことは、当該保有個人情報が文書に記録されている場合、文書の複写物に墨を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。
     一方、録音テープ、ビデオテープ、磁気ディスク等に記録された保有個人情報については、区分して除くことの容易性が問題となる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているがそのうちの一人から開示請求があった場合や、録画されている映像中に開示請求者以外の者が映っている場合などがあり得る。このような場合には、不開示情報を容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定する。
     なお、電磁的記録に記録された保有個人情報については、紙に出力した上で、不開示情報を区分して除いて開示することも考えられる。電磁的記録をそのまま開示することを求められた場合は、不開示情報の部分のみを削除することの技術的可能性等を総合的に判断する必要がある。 既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができるとき」に該当しない。
  3. 「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない」
     不開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗り潰すかなどの方法の選択は、不開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断する。その結果、観念的には一まとまりの不開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に不開示情報が開示されたと認められないのであれば、不開示義務に反するものではない。

(2)個人識別性の除去による部分開示(法第15条第2項)

  1. 「開示請求に係る保有個人情報に前条第2号の情報(開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものに限る。)が含まれている場合」
     個人識別情報は、通例は特定の個人を識別可能とする情報と当該個人の属性情報からなる「一まとまり」の情報の集合物であり、他の不開示情報の類型が各号に定められた「おそれ」を生じさせる範囲で不開示情報の範囲を画することができるのとは、その範囲の捉え方を異にする。このため、第1項の規定だけでは、個人識別情報については全体として不開示となることから、氏名等の部分だけを削除して残りの部分を開示しても個人の権利利益保護の観点から支障が生じないときには、部分開示とする。
  2. 「当該情報のうち、氏名、生年月日その他の開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなる記述等及び個人識別符号の部分を除くことにより、開示しても、開示請求者以外の個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるとき」
     個人を識別される部分を除いた部分について、開示しても個人の権利利益を害するおそれのないものに限り、部分開示の規定を適用する。
  3. 「当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。」
     個人識別情報のうち、特定の個人を識別することができることとなる記述等以外の部分は、個人の権利利益を害するおそれがない限り、第14条第2号に規定する不開示情報ではないものとして取り扱う。このため、他の不開示情報の規定に該当しない限り、当該部分は開示する。
     また、第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合には、当該個人に関する情報は全体として不開示とする。

別紙1‐3 法第16条(裁量的開示)関係

第16条

 行政機関の長は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示することができる。
 「個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるとき」とは、法第14条各号の不開示情報に該当する情報であるが、スポーツ庁長官の高度の行政的な判断により、当該個人の権利利益を保護するために特に開示する必要があると認められる場合をいう。
 法第14条各号においても、当該規定により保護する利益と当該情報を開示することによる利益との比較衡量が行われる場合があるが、ここでは、法第14条の規定が適用され不開示となる場合であっても、なお開示する必要性があると認められる場合には、開示することができる。

別紙1‐4 法第17条(保有個人情報の存否に関する情報)関係

 第17条 開示請求に対し、当該開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。

(1)「開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」

 開示請求に係る保有個人情報が実際にあるかないかにかかわらず、開示請求された保有個人情報の存否について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合をいう。また、開示請求に含まれる情報と不開示情報該当性とが結合することにより、当該保有個人情報の存否を回答できない場合もある。例えば、本人以外の者が行った苦情相談に関する情報について、本人から開示請求があった場合等がある。

(2)「当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる」

 保有個人情報の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する決定も、申請に対する処分であることから、行政手続法(平成5年法律第88号)第8条に基づき処分の理由を示す必要がある。
 提示すべき理由の程度としては、開示請求者が拒否の理由を明確に認識し得るものであることが必要である。
 また、個別具体的な理由提示の程度については、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった保有個人情報の存否を答えることにより、どのような不開示情報を開示することになるかをできる限り具体的に提示する。
 なお、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否しなければならない。

別紙2 法第29条(保有個人情報の訂正義務)関係

第29条

 行政機関の長は、訂正請求があった場合において、当該訂正請求に理由があると認めるときは、当該訂正請求に係る保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内で、当該保有個人情報の訂正をしなければならない。

(1)「訂正請求に理由があると認めるとき」

 「訂正請求に理由がある」とは、行政機関による調査等の結果、請求どおり保有個人情報が事実でないことが判明したときをいう。
 ただし、訂正は、保有個人情報の「内容が事実でない」場合に行われるものであり、本条に基づく訂正請求の対象は「事実」であって、評価・判断には及ばない。このため、評価・判断の内容そのものについての訂正請求があった場合には、訂正をしない旨の決定をする。法における訂正請求権制度のねらいは、保有個人情報の内容の正確性を向上させることにより、誤った個人情報の利用に基づき誤った評価・判断が行われることを防止しようとするものであるが、評価・判断は個人情報の内容だけでなく、様々な要素を勘案してなされるものであるから、訂正請求は行政機関等の判断を直接的に是正することにまで及ぶものではない。ただし、評価した行為の有無、評価に用いられたデータ等は事実に当たる。

(2)「利用目的の達成に必要な範囲内で、訂正をしなければならない」

 訂正請求に係る保有個人情報の利用目的に照らして、訂正の必要がないときは、訂正する義務はない。
 請求内容に理由があるかどうかを判断するために行う調査は、保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲で行う。
 また、訂正をすることが利用目的の達成に必要でないことが明らかな場合は、特段の調査を行わない。具体例としては、過去の事実を記録することが利用目的であるものについて現在の事実に基づいて訂正することを請求するような場合は、訂正する必要がない。
 適切な調査等を行ったにもかかわらず、事実関係が明らかにならなかった場合には、当該請求に理由があると確認ができないこととなるから、訂正決定を行わない。

別紙3 法第38条(保有個人情報の利用停止義務)関係

第38条

 行政機関の長は、利用停止請求があった場合において、当該利用停止請求に理由があると認めるときは、当該行政機関における個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で、当該利用停止請求に係る保有個人情報の利用停止をしなければならない。ただし、当該保有個人情報の利用停止をすることにより、当該保有個人情報の利用目的に係る事務の性質上、当該事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、この限りでない。

(1)「利用停止請求に理由があると認めるとき」

 「利用停止請求に理由がある」とは、法第36条第1項第1号又は第2号に該当する違反の事実があると認めるときである。

【法36条第1項第1号に掲げる事項】

  • ア 「適法に取得されたものでないとき」
     例えば、暴行、脅迫等の手段により取得した場合や、個人情報の取得について定めた個別法規に違反して取得した場合等をいう。
  • イ 「法第3条第2項の規定に違反して保有されているとき」
     いったん特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を保有している場合をいう。
  • ウ 「法第8条第1項及び第2項の規定に違反して利用されているとき」
     本法が許容する限度を超えて利用目的以外の目的で保有個人情報を利用している場合をいう。

【法第36条第1項第2号に掲げる事項】

 「法第8条第1項及び第2項の規定に違反して提供されているとき」
 本法が許容する限度を超えて利用目的以外の目的で保有個人情報を提供している場合をいう。

(2)「当該行政機関における個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で」

 「個人情報の適正な取扱いを確保する」とは、第36条第1項第1号又は第2号に該当する違反状態を是正する意味である。
 「必要な限度」とは、例えば、利用停止請求に係る保有個人情報について、そのすべての利用が違反していればすべての利用停止を、一部の利用が違反していれば一部の利用停止を行う必要があることをいう。
 また、例えば、利用目的外の利用を理由として、本人から保有個人情報の消去を求められた場合には、個人情報の適正な取扱いを確保する観点から、当該利用目的外の利用を停止すれば足りる。

(3)「当該保有個人情報の利用停止をすることにより、当該保有個人情報の利用目的に係る事務の性質上、当該事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、この限りでない」

 利用停止請求に理由があることが判明した場合であっても、利用停止を行うことにより保護される本人の権利利益と損なわれる公共の利益との比較衡量を行った結果、後者が優るような場合にまで利用停止を行う義務を課すことは、公共の利益の観点からみて適当でない。このため、「当該保有個人情報の利用停止をすることにより、当該保有個人情報の利用目的に係る事務の性質上、当該事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるとき」は、利用停止をする義務を負わない。