令和三年 年頭の所感

令和3年1月

令和3年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。

昨年10月に2代目スポーツ庁長官として、鈴木大地初代長官からバトンを引き受け、早3ヶ月が経過しました。依然として新型コロナウイルス感染症の拡大により、不安な日常を送ることを余儀なくされていますが、新年を迎え、このような時こそ、少しでもスポーツが社会に貢献できるよう真摯に向き合い、乗り越えてゆけるよう取り組んでまいりたいと思います。

今もなお、新型コロナウィルス感染拡大による活動の自粛・制限が長期化し、運動不足による様々な健康二次被害への影響が懸念されています。我々は生きてゆく上で身体の健康はもちろん、心も健康でなくてはなりません。
運動やスポーツをすることは、身体的には、生活習慣病などの疾患リスクの軽減や改善、筋力やバランス能力、また、免疫力を向上されることが知られておりますが、メンタルヘルスの改善やストレスや不安に対する抵抗力を高める効果もあります。感染症対策をしっかり行い、正しく恐れながら様々な身体活動を取り入れ、新しい日常での心身の健康増進を推進してまいります。

スポーツには、人々に勇気や感動、一体感を与える力があります。私自身も、これまで多くの方々に支えていただきながら活動を続けて参りました。
特に印象に残っているのは、東日本大震災で被災を受けた東北の子供たちと交流させていただいた時のことです。家は流され、親や友達を失い、悲しみを背負った子供たちの顔を見ると、かける言葉はありませんでした。しかし、アスリートとのスポーツ活動(リレー)を通して子供たちが、自然と笑顔になっていく様子を目の当たりにしました。“頑張れ!もっと速く!バトンパス慎重に!”と、皆が自分のチームを大声で応援し興奮状態となり、最後には敵味方無く笑顔で讃えあっている姿を見ることができました。スポーツには私がこれまで信じてきた以上に、困難を乗り越える力があると実感した瞬間でした。
そして、36歳という年齢でメダルを獲得するような奇跡的な事を達成しなければ、眼の前で目を輝かせている、悲しみと辛さを背負った子供たちを更に元気付ける事はできないと感じ、“世界陸上選手権で必ずメダルを持ち帰ってくるから、君たちも頑張ってね!”と約束してしまったのです。私にとってメダルを獲得する事はあくまでも目標に過ぎず、被災した子供たちを元気付けるという目的に対しての手段に他ならなかったのです。結果、世界陸上選手権では金メダル、翌年のオリンピックでは銅メダルを獲得し、子供たちの喜んだ顔は今でも忘れられません。

さて、本年は東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控えておりますが、まず、アスリートがトレーニングに打ち込める環境整備に力を入れ、安心・安全にスポーツができるよう、関係団体と一丸となって取り組んでまいります。世界各国のアスリートがこの困難を乗り越え競技をする姿は、日本国民だけではなく、全世界の人々の希望となり、「スポーツの力」を体現するものとなるに違いありません。世界中を感動の渦に巻き込んだ、2019年ラグビーワールドカップの日本代表の活躍はまだ記憶に新しいかと思いますが、本大会もこの不安に囲まれる時代に、一筋の希望の明かりを抱かせ、生活に張り合いや活気を与えてくれる事でしょう。 そして、東京大会を一過性のものとして終わらせることなく、共生社会の実現、地域・経済の活性化、国際交流など大会のレガシーを創出し、「感動していただけるスポーツ界」を目指して全力を尽くしてまいります。

最後に、本年は第3期スポーツ基本計画の策定に向けた検討を開始します。全ての人がスポーツをする・みる・ささえる機会を確保し、スポーツ立国の実現を目指した第2期スポーツ基本計画を検証し、スポーツの価値を国民の皆様にわかりやすく伝えていくことが重要と考えています。
特に、東京大会以降のスポーツの5年、10年先を見据えた軌道を描き、スポーツが様々な社会課題の解決につなげることが重要です。そのためにも、スポーツと他分野との協力による取組を推進し、更にスポーツの幅を広げて参りたいと思います。

スポーツ庁は関係省庁の中核となり、関係団体、地方公共団体、企業などスポーツを推進する仲間とともに、「スポーツの力」で乗り越え、明るく元気に前進してまいりたいと思います。
本年も、皆様の一層のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

 

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