我が国のスポーツ・インテグリティの確保のために

2018年6月15日
スポーツ

-スポーツ庁長官メッセージ-


近時,様々な競技において,ドーピング,パワーハラスメント,暴力行為などの問題事案が相次いで発生している状況は極めてゆゆしき事態です。特に,故意に他のアスリートの生命・身体の安全を脅かすような行為は断じて許されるものではありません。こうした問題の背景・要因については,勝利至上主義,行き過ぎた上意下達や集団主義,科学的合理性の軽視といった,日本のスポーツ界の悪しき体質・旧弊があるという厳しい指摘がなされています。
スポーツは,個人の心身の健全な発達,健康・体力の保持等を目的とする活動であり,国際的な競技力の競争を通じて国民に誇り,夢と感動を与え,さらには,地域・経済の活性化,共生社会や健康長寿社会の実現,国際理解の促進など幅広く社会に貢献する営みです。また,学校体育は,心身の陶冶,人格形成に資する教育的な意義をもつものです。スポーツがこれらの意義・役割を果たしていく上では,スポーツに対する国民の皆様の積極的な理解と力強い支持が不可欠です。様々な問題事案は,スポーツの価値を損ね,その振興を図る前提を崩すものです。
 日本で開催される2019年のラグビーワールドカップ,2020年のオリンピック・パラリンピックは間近に迫っています。今こそ改めて,スポーツ界全体を挙げ,旧弊を取り除き,スポーツ・インテグリティ(誠実性・健全性・高潔性)を高めていかなければなりません。
こうした危機感に立ちつつ,スポーツに携わる関係各方面,とりわけ各競技団体や大学等の関係者に対し,次の点についての真摯な取組を強くお願いします。

1 アスリートや指導者に対する教育・研修の強化
あらゆる機会・場を通じて,アスリートや指導者に対し,暴力等の根絶を始め,守るべきルールや倫理に関する理解を深めさせ,フェアプレイによってスポーツの価値を高める責務を認識させること。その際,指導者については,「グッドコーチ」たる資質能力の向上を図ること。

2 アスリートの相談体制の充実,利活用の促進
 各団体においては,アスリートからの相談窓口等の整備やスポーツ仲裁自動応諾条項の採択に努めるとともに,関係機関の相談窓口等を含め,所属するアスリートへの周知を図ること。また,当該窓口の運用に当たっては,プライバシーの保護に留意するとともに,相談者や正当な対応をした者等に不利益な取扱いが及ばないよう十分配慮すること。

3 問題事案に係る公正・迅速な調査と説明責任の履行  
 問題事案を把握した場合は,公正・迅速な事実関係の究明,再発防止策の立案・実行にあたるとともに,必要に応じて関係者への厳正な対応をとること。特に,重大な事案については,外部人材を交えた調査委員会の設置等により公正性を確保し,社会的な説明責任を果たすこと。

4 運動部活動の安全確保に向けた大学の取組の充実
 大学にあっては,運動部活動(※)について,学生を規律する包括的な管理・教育権限の範囲内において,安全確保等に係る応分の責任があることを認識した上で,ガバナンスを発揮し,上記1~3を踏まえた適切な対応をとること。また,大学の実状に応じて,適切な組織体制を整備すること(例えば,運動部活動への関与の在り方の見直し,スポーツ・アドミニストレーターの配置,スポーツ分野を統括する部局の設置等)。
※部活動は,学校の教育活動の一環として行われる課外活動として位置付けられる。
   
スポーツ庁においては,これらの取組を積極的に支援するため,大学スポーツに係る競技横断的統括組織の創設(準備委員会の発足は7月目途),公正性を担保する調査の在り方の検討を始め,様々な施策を全力で推進していく決意です。


 平成30年6月15日

スポーツ庁長官
 鈴木 大地


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スポーツ・インテグリティの確保に関するスポーツ庁の主な取組について

・グッドコーチ育成のためのモデル・コア・カリキュラムの作成(平成27年度),※公認スポーツ指導者養成講習への導入予定(平成31年度~)
・競技力向上事業助成金の配分に当たり,各競技団体のガバナンス・コンプライアンス体制などを評価する方針を策定(平成28年度~)
・大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)創設事業(平成29年度~)
・スポーツ団体の倫理・コンプライアンスに関する規程の整備状況等に係る現況調査(平成29年度)
・スポーツ団体,アスリート,指導者等が注意すべき事項等を示したガイドラインの作成(平成29年度)
・スポーツ団体の組織運営に係る統一的な評価指標の開発,試行(平成29年度)
・アスリートへのコンプライアンス教育の強化,スポーツ団体に対するモニタリング体制の構築(平成30年度~)
・アスリートやサポートスタッフ等を対象としたドーピング防止教育,フェアプレイ精神の教育の実施(平成18年度~,随時内容見直し)
・ドーピングに関するインテリジェンス活動の促進(平成26年度~)

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