初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第394号(令和2年8月14日)

[目次]

【お知らせ】
(1)国立教育政策研究所 令和2年度教育研究公開シンポジウム「高度情報技術の進展に応じた教育革新」開催
(2)“なるほど!小学校外国語”先生方の疑問にお答えします!解説動画公開中!
(3)令和2年7月の文部科学省選定作品(学校教育教材等)の紹介
(4)令和2年度中学校卒業程度認定試験の出願受付について
(5)令和2年度第2回高等学校卒業程度認定試験の出願受付について
(6)中小企業庁 令和2年度起業家教育事業 起業家による出前授業実施校の募集!
(7)「日本版O-NET」の新愛称募集が始まりました
(8)令和元年度文部科学白書について

【発行】
(1) 『文部科学広報』7月号発行
(2) 『中等教育資料』8月号について

【特別寄稿】県域で取り組むGIGAスクール構想~奈良県における関係者の声~
(奈良県立教育研究所長 大石健一、奈良県域GIGAスクール構想推進協議会事務局長 小崎誠二)

【お知らせ(1)】国立教育政策研究所 令和2年度教育研究公開シンポジウム「高度情報技術の進展に応じた教育革新 ~「学習評価」の充実による教育システムの再構築:みんなで創る「評価の三角形」~」 開催

〔国立教育政策研究所シンポジウム事務局〕

 新型コロナウイルス感染症を踏まえて、高度情報技術(AIやビッグデータ解析等)の進展に応じた教育革新をどう展望し、いかに実現していくことができるのか。本シンポジウムでは、生涯にわたり学習する基盤を培う初等中等学校教育に焦点を当て、高度情報技術の進展に応じた教育革新について議論を行います。学習支援の拡充、校務の効率化のほか、高度情報技術を活用することで得られる大きなインパクトの一つは、「学習評価」の充実です。それは、「ポストコロナ」に向けた教育システムの再構築のトリガー(起爆剤)になる可能性すら有しています。
 そこで、本シンポジウムでは、米国学術研究会議が提言し世界的にも有名な「評価の三角形」という概念枠組みを参照し、高度情報技術を活用した「学習評価」の充実によって、いかに教育システムの再構築を行うべきか議論を行います。

開催日:令和2年9月15日(火曜日)13時00分~16時30分(オンライン開催、参加無料)

※詳細及び参加申込みはこちら
https://www.nier.go.jp/06_jigyou/symposium/sympo_r02_01/
          
(お問合せ先)
国立教育政策研究所総務部研究支援課研究支援係
電話:03-6733-6813

【お知らせ(2)】“なるほど!小学校外国語”先生方の疑問にお答えします!解説動画公開中!

〔初等中等教育局情報教育・外国語教育課〕

 2020年度、小学校学習指導要領が全面実施となり、小学校3,4年生では外国語活動が、5,6年生では教科 外国語の授業がスタートしました。これまで取り組んできた授業実践等で出てきた先生方の疑問に、学習指導要領や評価に関する参考資料をもとに解説をしています。動画で使用している資料及び内容に関係する資料等については、動画説明欄にURLを掲載していますので、ぜひ研修等でご活用ください。

◇[なるほど!小学校外国語(1)] 言語活動
直山 木綿子 文部科学省初等中等教育局視学官 × 櫻木 瑶子 文部科学大臣報道官
https://youtu.be/LtCjrVFOsmg

◇[なるほど!小学校外国語(2)] 読むこと 書くこと
直山 木綿子 文部科学省初等中等教育局視学官
https://youtu.be/983p0QScfSg

◇[なるほど!小学校外国語(3)] 学習評価
直山 木綿子 文部科学省初等中等教育局視学官
https://youtu.be/O2TrA1K8E64

(お問合せ先)
初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 外国語教育推進室 事業推進係 
電話:03-5253-4111(内線 3481)

【お知らせ(3)】令和2年7月の文部科学省選定作品(学校教育教材等)の紹介

〔初等中等教育局情報教育・外国語教育課〕

 文部科学省では、映画その他の映像作品及び紙芝居について、教育上価値が高く、学校教育又は社会教育に広く利用されることが適当と認められるものを選定し、併せて教育に利用される映像作品等の質的向上に寄与するために、教育映像等審査規程(昭和29年文部省令第22号)に基づいて映像作品等の審査を行っています。
                                                     
(令和2年7月の文部科学省選定作品(学校教育教材等)の紹介)
※以下、文部科学省特別選定を「特別選定」、文部科学省選定を「選定」として、【作品名】/申請者/利用対象の順に記載しています。

<令和2年7月文部科学省選定作品(学校教育教材等)>
○紙芝居(選定)
 ・ 【にょろ にょろり】/株式会社童心社/幼児向き
 ・ 【キジムナーにあったサンラー】/株式会社童心社/幼稚園等幼児向き・小学校低学年児童向き・幼児向き・少年向き

○DVD(選定)
 ・ 【消費者教育DVD 考えよう 私たちの消費生活】/株式会社全教図/小学校高学年児童向き・少年向き
 ・ 【パブリック 図書館の奇跡】/有限会社 ロングライド/青年向き・成人向き

○ブルーレイ(選定)
 ・ 【もったいないキッチン】/ユナイテッドピープル株式会社/高等学校生徒向き・青年向き・成人向き

(お問合せ先)
初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 映像等審査担当
電話:03-5253-4111(内線2417)

【お知らせ(4)】令和2年度中学校卒業程度認定試験の出願受付について

〔総合教育政策局生涯学習推進課〕

 文部科学省では、病気などやむを得ない事由によって保護者が義務教育諸学校に就学させる義務を猶予又は免除された人等に対して、「中学校を卒業した人と同等以上の学力があるかどうか」を認定する試験を実施しています。
 当該試験に合格すると、高等学校の受験資格が得られます。受験を希望される方は、受験案内を御確認の上、出願の手続をお願いします。

出願受付:令和2年7月6日(月曜日)~9月4日(金曜日)消印有効
試 験 日:令和2年10月22日(木曜日)
※試験の詳細はこちら
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sotugyo/1263188.htm

(お問合せ先)
総合教育政策局 生涯学習推進課 認定試験第一係・第二係
電話:03-5253-4111(内線2024・2643)

【お知らせ(5)】令和2年度第2回高等学校卒業程度認定試験の出願受付について

〔総合教育政策局生涯学習推進課〕

 文部科学省では、様々な理由により高等学校等を卒業していない方のために、「高等学校を卒業した人と同等以上の学力があるかどうか」を認定する試験を毎年2回実施しています。
 当該試験に合格すると、大学・短期大学・専門学校の受験資格が得られるほか、就職や資格試験にも活用することができます。受験を希望される方は、受験案内を御確認の上、出願の手続をお願いします。

出願受付:令和2年7月20日(月曜日)~9月14日(月曜日)消印有効
試 験 日:令和2年11月7日(土曜日)・8日(日曜日)
※試験の詳細はこちら
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/index.htm

(お問合せ先)
総合教育政策局 生涯学習推進課 認定試験第一係・第二係
電話:03-5253-4111(内線2024・2643)

【お知らせ(6)】中小企業庁 令和2年度起業家教育事業 起業家による出前授業実施校の募集!

〔初等中等教育局教育課程課、初等中等教育局児童生徒課〕 

 中小企業庁では、これからの時代に必要な起業家マインドや起業家的資質・能力の育成を目的に、教育現場での「起業家教育」を推進しております。今年度実施する事業では、起業家教育に取組む一歩として、起業家や起業経験者を招聘した講演(起業家・経営者としての経験や体験を語っていただく出前授業)を実施する高等学校等を広く募集しております。実施校に対しては、実施までのプロセスを事務局でサポートするほか、講師への謝金の一部を負担いたします。なお、実施方法につきましては、オンラインも含めコロナ禍に対応した柔軟な方法の検討もさせていただきますのでぜひご相談ください。

1.募集数 100校程度
2.募集期間 実施希望を先着順で受付け、予定校数を満たした時点で募集を終了いたします
3.出前授業の実施内容
・実施時期 ~2021年1月下旬
・対象校 高等学校、高等専門学校、大学等
・対象授業 授業時間1コマ相当(50分程度を想定)

中小企業庁の起業家教育事業について
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyouiku/2020/200806startup.pdf

※詳細につきましては、下記(お問合せ先)までご連絡ください。

(お問合せ先)
【事業に関するご質問・お申込みについて】
「中小企業庁 令和2年度起業家教育事業」
(事務局)株式会社KADOKAWA/株式会社角川アスキー総合研究所
E-mail:entre@lab-kadokawa.com

【その他ご意見等について】
中小企業庁 創業・新事業促進課 創業促進係
電話:03-3501-1512(内線5341)

(本件担当)
初等中等教育局教育課程課企画調査係
電話:03-5253-4111(内線 2565)

初等中等教育局児童生徒課キャリア教育推進係 
電話:03-5253-4111(内線4728)

【お知らせ(7)】「日本版O-NET」の新愛称募集が始まりました

〔総合教育政策局生涯学習推進課〕

 以前、キャリア教育にとても便利な「日本版O-NET」をご紹介しました。約500の職業について、内容(動画あり)や重視されるスキル・知識などが確認できるものです。
 本サイトで皆様に親しみやすく、サイトに興味関心を持っていただけるような新愛称を募集中です。優秀作品にはささやかなお礼もあります。是非、サイトにアクセスを!

愛称募集URL:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/202007-aishou
日本版O-NET URL:https://shigoto.mhlw.go.jp/

(お問合せ先)
厚生労働省職業安定局総務課首席職業指導官室 日本版O-NET担当  
E-mail:syokugyojyoho@mhlw.go.jp

(本件担当)
総合教育政策局生涯学習推進課職業教育推進係
電話:03-5253-4111(内線3463)

【お知らせ(8)】令和元年度文部科学白書について

〔総合教育政策局政策課〕

 文部科学省では、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術にわたる文部科学省全体の施策を広く国民に紹介することを目的とし、文部科学白書を毎年刊行しています。このたび、令和元年度文部科学白書を公表しました。
 初中メルマガでは、本白書の特集の内容について、紹介していきます。今回は「教育の情報化~GIGAスクール構想の実現に向けて~」です。

○特集1 教育の情報化~GIGAスクール構想の実現に向けて~
第1節 教育の情報化を取り巻く現状
 文部科学省ではこれまで、ICT環境整備のため、先進的に取り組んでいる自治体の学校におけるICT活用事例の紹介や、市町村ごとの整備状況をわかりやすくグラフ化し地図で示すなどの取組を実施してきたところです。
 しかしながら、文部科学省が実施する「平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によれば、第3期教育基本計画に定めた学習者用コンピュータの整備目標値である3人に1台に対して、平成31年3月現在の全国平均値は5.4人に1台(前年度は5.6人に1台)にとどまっています。また、都道府県別に見ると最高で1.9人に1台、最低で7.5人に1台となっており、さらに市区町村別ではその差が拡大しているなど、自治体の取組により大きなばらつきがある状況です。
 次号このような現状に対し文部科学省が行う、教育の情報化に関する施策について紹介します。

(お問合せ先)
総合教育政策局政策課政策審議第一係
TEL:03-5253-4111(内線3458)

【発行(1)】『文部科学広報』7月号発行

〔大臣官房総務課広報室〕

『文部科学広報』は、文部科学省が発行する唯一の総合広報誌(電子book)です。

○最新号の内容○
◆特集
・令和2年版 科学技術白書 科学技術が広げる未来社会の可能性と選択肢
◆Monthly Line Up
・令和元年度大学等卒業者及び高等学校卒業者の就職状況調査について
・令和2年度「日本遺産」の認定発表について
・「 マテリアル革新力強化のための政府戦略策定に向けて(戦略準備会合取りまとめ)」を公開
・アフターコロナの時代の「新しい学びの姿」の創造に向けて ~専修学校オンラインセミナーの事例より~

※詳細はこちら → http://www.koho2.mext.go.jp/

本誌は、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化・芸術等、文部科学行政全体を網羅し、様々な重要施策や最新情報について、総合的な紹介を行っています。

(お問合せ先)
大臣官房総務課広報室事業第一係
電話:03-5253-4111(内線2171・2243)

【発行(2)】『中等教育資料』8月号について

〔初等中等教育局教育課程課〕

 『中等教育資料』は、中学校・高等学校における学習指導要領上のねらいや授業の実践、校内研究に必要不可欠な理論・実践事例を豊富に紹介している月刊誌です。

 本号の特集は、「中学校の学習指導と学習評価の工夫改善(3)<保健体育、技術・家庭、外国語>」です。
 学習評価は、学校における教育活動に関し、児童生徒の学習状況を評価するものです。生徒の学習状況を的確に捉え、教師が指導の改善を図るとともに、生徒が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、学習評価の在り方が極めて重要です。
 国立教育政策研究所教育課程研究センターは、「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料(中学校)」(令和2年3月)を公表しました。これを参考にして、指導と評価の一体化を図り、創意工夫の中で学習評価の妥当性や信頼性を高める実践が一層進むことが期待されます。
 そこで本号では、中学校の保健体育、技術・家庭及び外国語を取り上げ、学習指導と学習評価の具体的な工夫改善について考えます。

※ 詳細はこちら(学事出版ウェブサイト)
http://www.gakuji.co.jp/magazine/chutokyoiku/index.html

(お問合せ先)
初等中等教育局教育課程課教育課程第三係
電話:03‐5253‐4111(内線3706)

【特別寄稿】県域で取り組むGIGAスクール構想~奈良県における関係者の声~

〔奈良県立教育研究所長 大石健一、奈良県域GIGAスクール構想推進協議会事務局長 小崎誠二〕

 前号(初中教育ニュース第393号)の奈良県の実践紹介に続いて、今回は奈良県におけるGIGAスクール構想の関係者の声をお届けします。

◆教育の情報化「今、奈良県では」

〔奈良県立教育研究所長 大石健一〕

 長かった梅雨が明けました。教育関係職員の研修を担当する奈良県立教育研究所は、いつもなら夏期休業を利用して受講される先生方で賑わう頃です。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、また、今も授業のある先生方ができるだけ学校を空けずにすむよう、ほとんどの講座をリモート研修に切り替えたため、いつもより大きな蝉時雨に包まれています。
 当県では、デジタル社会に生きる子どもたちに必要な知識や技能を身に付けさせるため、また、ICTを活用して教育課題の解決を図るため、当研究所が中心となって教育の情報化に取り組んでまいりましたが、この春までの歩みは十分とは言えませんでした。何よりも環境整備に多額の予算を必要とすること、そして、ICT環境整備が進んでいない部分を教員が長年積み上げてきた教育実践でカバーし、環境整備が立ち遅れていることを見えにくくしていたことによると思われます。
 しかし、コロナ禍によって、家庭を離れ集団で行う、学校教育というシステムの前提が失われました。子どもたちの学びを止めないために遠隔教育が必要となり、当県では教育用クラウドを活用することを選んで、急遽、同一ドメインでのアカウントを県内国公立学校すべての児童生徒及び教職員に付与し、並行して活用方法の所内研修を行いました。システムが変わるときに付き物の様々な反応はありましたが、収束をじっと待っていても仕方がない、システムは目標を実現するための手段に過ぎないのだから、目標が何かを見失わず、今できることをやろうと、皆が前を向いてくれました。その後、教職員向けの研修をオンラインで配信したところ、4,000以上の端末でライブ視聴されました。当県の教職員数が1万人程度であること、1つの端末で複数が視聴した例もあること、都合の付かなかった方のためにWeb上にアップした動画の再生回数からも、先生方の関心の高さが分かります。現在、当県の教員研修は、付与されたアカウントを用いないと受講できません。
 県土面積の8割近くを森林が占める当県では、人口規模の小さな町村も多く、GIGAスクール構想の実現に当たり、地域や学校の実情にかかわらず、子どもたちに質の高い学習環境を整えるため、県域での共同調達に向けた準備を進めていました。今回、1人1台端末の整備を前倒しで行っていただくことになり、それまでに築かれた県内市町村教育委員会との信頼関係の下、それぞれの調達では得られなかったであろう、よりよい環境を早期に整えることができたと考えています。また、県域で共通のコンテンツも多いことから、教員研修も具体的に行え、実践例も交流しやすいなど、教室での有効な活用にもつながることが期待されます。
 家庭に本がなくても、地域に図書館がなくても、インターネット上で読んだり調べたりできる、学習の困難や言葉の壁があっても適切なサポートを受けることができるなど、ICTを用いることで、当人の責任の及ばない環境や条件による情報量の差が平準化され、子どもたちの可能性を広げることができると考えます。しかし、同じ物語でも、美しい映像とともに流れるプロの朗読と、添い寝してもらいながら聞く親の声とでは、育まれるものが異なるとも思うのです。
 これからの教育は、ねらいを見極め、整った環境を最大限生かすノウハウとともに、高度化した先端技術が損ないかねない工夫や想像力、辛抱強さや心の安定などをどう補うかも考える必要があると思います。
 やらなければならないことはたくさんあります。奈良県立教育研究所は、学校とは何か、教員とは何かを問いながら先生方を支え、子どもたちのために歩みを進めてまいります。

◆教職員研修「ピンチからの第一歩」

〔奈良県立教育研究所教育経営部研修企画係長 濱田ひろ子〕

 新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のため、年度当初より研修講座を集合研修で実施することが困難になり、一部中止を決定しました。初任者研修などの法定研修については、課題や既存の動画コンテンツの視聴等による代替研修を実施していましたが、アカウントの付与が早期に進んだ県立学校や学校事務職員を皮切りに、6月より教育用クラウドシステムを用いた遠隔研修を試行的に導入しました。また、市町村教育委員会へのアカウント付与により、夏に実施する初任者研修や中堅教諭等資質向上研修、免許状更新講習等については遠隔研修により実施することとしました。各学校のICT環境の整備状況に大きな差がある中、7月1日より研修講座毎に事前研修を行い、できるだけ当日の混乱を避けるよう準備を進めました。
 実際に遠隔研修を始めると、個別のトラブル対応に日々追われ、運営方法等について問題点や反省点がどんどん出てきている状況ですが、中止にしてしまえば失われてしまう学びの機会を、遠隔研修の実施により可能な限りカバーすることが大切だと考えました。
 新たな形での学びの保障を、県域で統一されたアカウント、県域で共有できるコンテンツを受講者として体験いただいた教職員が、児童生徒とともに教育用クラウドを活用する際に各校の中心となって進めていただければと願っています。来年度以降の研修講座については、従来の集合型研修講座のメリットと遠隔研修のメリットをバランスよく取り入れ、全体計画を進めていきたいと思います。

◆県内市教育委員会から「答えのない時代に、学校を後押しできるように」

〔奈良市教育委員会学校教育課情報教育係長 谷正友〕

 私の役割は、「奈良県域GIGAスクール構想推進協議会」の調整部会の会長です。調整部会というのは、GIGAスクール構想における各市町村の意向や文部科学省をはじめとするGIGAスクール構想に関連した国の施策や補助事業の趣旨や概要をわかりやすく伝達し、県域でどのように取り組むかを検討する部会になります。
  奈良県の場合は、前号で紹介されているように、これから数年間にわたって教育の情報化が浸透するまでの組織として協議会を立ち上げています。ここでは、各市町村の事務負担を省力化しながらも、規模のメリットが得られたり、悩みを共有できたり、今後さらに求められるデータ活用などについても大きな枠組みで検討が可能となります。
 GIGAスクール構想の取組は、これまで全国各地で見られた研究校やモデル校といった、特別な地域の、選ばれた学校の、対象の学年や学級の取組から、すべての子どもたちに1人1台の端末を届け、ICTを子どもたちの生活のインフラとして根付かせ、新しい時代にふさわしい教育を創り出していく取組だと考えています。まずは、確実にしっかりとICTを根付かせること。そして、そのインフラで取り組む様々な教育活動が生み出す教育実践をシェアしながら、どんどん新しい実践を積み重ねること。そうすることで、おのずと新しい時代にふさわしい教育につながると考えます。
 教育委員会や学校がほんの少しの勇気をもって踏み出すことができれば、これまで以上に学習指導要領で示される「未知の状況にも対応できる、思考力、判断力、表現力等の育成」につながるのではないでしょうか。

◆県内町村教育委員会から「つながりを育てる教育環境を創る」

〔川西町教育委員会事務局長補佐 高塲慎太郎〕

 昨年12月にGIGAスクール構想が示されたそのとき、今振り返りますと、これから子どもたちの学びはどう変わっていくのか、どう変えていくべきなのか、事務局としてどう取り組めばよいのか、そういった漠然とした不安とともに、これまでと異なる学びへのアプローチができるのではという期待を抱いたことが思い起こされます。
 当時、本町では、学校への児童生徒用タブレットの整備は手つかずのまま、計画でも、3年後には3人に1台、リプレース時にはBYODで1人1台になれば、という青写真を描いていました。これが、GIGAスクール構想の計画の前倒しで、一気に加速することとなり、果たして8年後に思い描いた景色が目の前に現れようとしています。
 当然、国の施策があってこそですが、本町のような小中各1校、社会教育部門含めて1課(局)の人的体力では成し得るものではなかったことです。これが形になろうとしているのは、共同調達を県域で取り組むことができたからこそと感じています。まだまだ解決すべきことが多いことに、議論の中で気付かされることばかりですが、恐らく単独や地域だけでは気付けないこともあったろうと感じています。
 コロナ禍の中、慣れないオンライン会議が続いていますが、県域での推進協議会の一員として議論に加わることで気付かされたのが、つながることの重要性です。話を受けるだけでは疎外感が強く、発するだけでは孤独を感じます。それには、対面での交流ができない分、普段より積極的な発信と、限られた情報をしっかりと受け止める受信感度が求められると感じています。
 子どもたちには、どんな環境であれ自身を表現する力、思いを受け止める力、人とつながる力を身に付けてほしいと願っています。
 そして、教員には、先般の学校休業といった中でも、子どもたちとつながり続け、学びを止めない教育実践に取り組めるよう、環境整備を進めていきたいと考えています。

◆保護者から「期待と不安」

〔小学校2年生の保護者〕
 新年度を迎え、4月以降も休校が続くと知ったときは、「子どもたちの日々の生活、学習はどうなるの?」と大変不安に感じました。そんな中、5月に、学校から子ども一人一人にアカウントが届き、インターネットを使った朝の会も始まりました。初回のログインは、親子で一緒にやり、ログインの仕方やアプリの立ち上げ方を何度か練習をしたことで、私が仕事で不在の時も、自分一人でログインをして朝の会に参加できていました。
 先生からメッセージが届くことを、娘はとても喜んでいました。動画を見ながら課題に取り組むこともでき、担任の先生の顔を見ながら学べることで、家で孤独に勉強する寂しさが少し払拭されたようで、とてもありがたかったです。
 6月になって学校が再開し、行事などが削減されたり自由に行動できなかったりする中でも、娘は「やっぱり学校が良い。」と張り切って登校しています。保護者としては、今後、また感染の広がりによっては休校があるのではないかとハラハラしながら過ごしていますが、みんなで端末が利用できる環境があることが安心につながっています。これから学校の普段の授業の中でもどんどん使っていくことで、もし再度休校になっても大丈夫な取組をスムーズにしていただけるのではないかと期待しています。
 一方で、子どもがアカウントや端末を持つことに対し、インターネット上で怖い目に遭ったり、知らないうちに事件に巻き込まれたり、加害者になってしまったりすることがないか、心配もしています。プログラミング教育やICTを活用した教育など、親が経験したことのない今どきの学びかたについて、家庭でどのようにサポートしていけば良いのか分からない点も多くあります。そういったことについて、学校と家庭で連携して子どもを支えていけるような仕組みがあれば、保護者としては大変ありがたいと思っています。

〔中学校2年生の保護者〕
 現在中学2年生の娘に、彼女専用のタブレットを与えたのは小学1年生のことでした。当時はどんなことに、どんな風に使うのか、親として見ていることが楽しくて、子どもから相談されない限り使い方は娘に任せていました。
 すると、絵本を描いたり、絵日記や作文を書いたりし始めました。でき上がったものは、文字ではなく音声が流れる絵本、写真や動画を貼り付けた絵日記、印象的な場面を生き生きと描いた作文。親の想像をはるかに超えた、ユニークなものばかりでした。
 ただひとつ、問題がありました。それは、この素晴らしい自らの表現や作品を、先生やお友だちと共有したいと思ってもできないことです。学校でもそのような場面はなく、娘はとてもがっかりしておりました。
 今年度になって、奈良県全域で、先生と子どもたちに共有アカウントが発行されました。秋には、1人1台のデバイスが配布され、学習にも活用することが決定しているそうです。娘は、今から「オンラインでのリアルタイム双方向のコミュニケーションを活用して、他の子や他校の子と問題を共有したり、解決策を考えたりしてみたい。他の学校の取り組みや、いろんな先生の授業を受けてみたい」と話しています。娘が、小学1年生のときに夢みていた、自分で作ったデジタルコンテンツの発表の場としても活用できるのでは?と期待しています。
 パソコンが今までのパソコンとしてではなく、新しい形の文具のひとつとして、子どもたちが自由にどんどん活用して、時間や場所に縛られずに新しいことに挑戦して、大人を驚かせる時代がすぐそこまできていると感じています。

お問合せ先

初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部

03-5253-4111

(初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部)