初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第392号(令和2年7月10日)

【特別寄稿】
三砂中オンライン授業奮闘記!(続編)
~学校の先生と地域ボランティアのコラボ:さらなるITリテラシー向上を目指して!~

〔東京都江東区立第三砂町中学校支援の会コーディネーター 潮田 邦夫〕

【はじめに:さらなるリテラシー向上に向けて】

 前回6月26日のメルマガでは三砂中(江東区立第三砂町中学校)でのオンライン授業が実施されるまでを奮闘記として書かせていただきました。
大学ではオンライン授業実施事例はかなり多く、ノウハウの共有化が図られていますが、中学校での事例は少ないので、皆さんと共有させていただきたく続編として投稿しました。

 前回6月26日のメルマガのアドレスです。よろしければ、ぜひご覧ください。
 https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1422844_00024.htm

 三砂中では分散登校中の数週間で、中学校でのオンライン授業が実施できるまでのITリテラシーとノウハウを、先生方がある程度習得することができました。
分散登校という機会を活かし、全生徒が登校になるまで、さらにオンライン授業を継続して、生徒との一体感を保ちながら実施できるオンライン授業を目指しました。そして、再び3~5月のように学校が全面休校になり、全生徒が学校に登校できないときに備えるため、オンライン授業のリテラシー、ノウハウを獲得・蓄積しようと、種々チャレンジを行い、かなりの知見を獲得しましたので、その知見をご報告したいと思います。
 特に、オンライン授業は平常時の対面授業と比べ、生徒の顔の様子や生徒の反応、および生徒の学習の理解度の把握がしにくいという欠点がありますが、今回先生方と種々な工夫することで、これらの弱点をかなりの部分克服することができました。その結果、オンライン授業でも相当の効果を上げることができると実感するようになり、生徒からの反応も上々でした。
 各校でのオンライン授業を進める上での参考になりましたら幸いです。

【さらなるオンライン授業実施のリテラシー向上を目指して!】

 三砂中のオンライン授業は、分散登校において、半数の生徒が学校にて対面授業に参加し、そのほかの半数の生徒が自宅からオンラインを通じて授業に参加していました。

(1)生徒とのやり取りを増やし、双方向授業にする
 何日かオンライン授業を実施して慣れたあと、先生は2週間後以降の後半は生徒とのやりとりを積極的に増やすようにしました。
 授業は登校している生徒向けに、いつも通りに教科書と黒板を使って説明します。ある程度説明した後、先生は理解しているかどうかを確認するため生徒に質問をしたり問題を出したりします。まず先生は、最初に教室にいる生徒に質問をし、解答を求めたり生徒に問いかけたりします。その後、3人目くらいから自宅でオンライン授業を見ている生徒を確認して、自宅の生徒に問いを行いおこないます。そして指名した生徒にはミュートを外して解答してもらうようにします。その解答は教室にいる生徒にも聞こえるようにしてあります。これによって教室にいる生徒と一緒に授業しているような感覚を持ってもらうようにしています。

(2)チャットやグッドサインを使う
 次に先生は、学校に登校している生徒と自宅のオンライン授業を聞いている生徒の両方に、問題を何問かまとめて出します。そして学校の生徒には、その場で問題を解いてもらいノートに書いてもらいます。それと同時に、自宅でオンライン授業を聞いている生徒にはチャットに答えを書いてもらいます。そして先生は、まず教室で解答のやりとりを生徒と行いおこない、その後先生は自宅からのオンラインで参加している生徒のチャットを見て、答えが合っているかどうかを確認します。先生の方からチャットに「正解。すごいね!」などと書き込みをします。チャットでは解答しやすいように分数は、2/7(2スラッシュ7)で表現するようになど事前に伝えていました。同じ問題を学校の登校生徒にも、オンライン授業の自宅の生徒にも同時に出し、同時に解答してもらうよう、工夫しています。これによって同じクラスの全生徒、つまり、登校している半数の生徒と、オンライン授業で自宅にいる半数の生徒が、一体感を感じられるようにしていました。
 また、先生は、自宅からオンライン授業にて参加の生徒に対して、「分かった人はGOODマークを出すように」と問いかけ、その結果を学校の生徒に知らせています。先生は教室にいる生徒と自宅の生徒を結び付けようとファシリテーターの役を演じていました。自宅にいる生徒は、学校にいる半数の生徒と空間的には離れていますが、上記のような方法にて授業を進めることにより、先生と教室の生徒、自宅参加の半数の生徒間の一体感が醸し出されていると思いました。

(3)2台の機器、スマホとタブレットを使いこなす
 先生のこのような自宅の生徒とのやりとりをやりやすくするために2台の機器を使いました。具体的には、1台のスマホで黒板の授業を映し、それを生徒に配信します。もう1台については、先生の机の上にタブレットを置きます。タブレットですので画面が大きく、参加者の一覧をタブレット上で把握しやすくなります。これにより、従来はいちいち黒板を映している三脚上のスマホのところに行き、オンライン上での参加生徒を確認していましたが、机の上から自宅参加の生徒の確認やその生徒たちへの問いかけを行いおこないやすくなり、チャット画面を見やすくなりました。今後は、このタブレットに大型TVを接続するなどし、学校の生徒もオンライン参加の自宅にいる生徒の顔や解答を見ることができ、一体感を醸し出すことができる工夫をしていきたいと思います。

(4)オンライン授業を自宅で継続的に参加している生徒
 オンライン授業を自宅で受けている生徒は、今回のオンライン授業中かなりのメンバーが継続的に参加していました。
 オンライン授業の当初は、生徒の自宅にてオンライン授業が受けられることを確認する目的で、オンライン授業が行われておりました。同じ内容の講義を分散登校の学校で授業を受けられるので、学校側としてはオンライン授業は慣れたらやめるつもりでしたが、オンライン授業に対する生徒の参加率が高いため、継続することにしました。生徒は、午前中授業を聞き、午後オンライン授業に参加することになり、生徒はオンライン授業を通じて対面授業で学んだことの復習をしています。逆に、午前中オンライン授業で、午後学校へ登校する生徒は、午前中のオンライン授業が予習として機能することになります。
 このように分散登校時でもオンライン授業はとても有効であり、特につまずきやすい数学の予習復習になります。生徒たちは、登校時の授業と帰宅した後のオンライン授業の内容が同じ授業であったとしても授業に参加するメリットを感じていることから、同じ内容であっても継続してオンライン授業を聞いているものと考えています。
 また、オンライン参加の生徒に対しても、先生が積極的に問いかけを行い、自宅にいながら質問を受けることにより、オンライン参加も孤独感を感じることなく、学習への動機づけを得て、学びに取り組んでいたことと思います。生徒自身も、登校時の授業においてオンライン上で参加している仲間の生徒と先生とのやり取りを直に見ていましたので、自宅からの学校の様子が想像しやすかったと思われます。

【中学校においてもオンライン授業は十分な効果がある:ポイントは先生の生徒への問いかけ】

 このように、オンライン授業の実施の仕方を先生が身に付けていけば、新型コロナウイルスの第二波、第三波の到来により、学校が全面休業、つまり学校に全生徒が登校できない状態になったとしても、オンライン授業で学習が十分できることを意味します。さらにオンライン授業において、先生が生徒の参加を確認し、問いかけを行いながら、生徒から音声やチャットにて答えを出すことにより、先生と生徒間のつながり、及び生徒同士のつながりも実感しながら、学習に取り組むことができるのではないかと思います。
 そして、宿題の出し方、宿題の答えをチャットで送るなど工夫をすると、オンライン授業でもかなりの効用を発揮することが分かりました。大学生は受験等含めて自学自習などの自律的な学習能力を身に付けていますのでオンライン授業をかなり迅速に受け入れることができ、それなりの成果を上げていると思います。また大学の先生方は、日常的にパソコンで自ら説明資料や解説資料を作っているため、オンライン授業での資料共有もしやすく、学生にも理解されやすいと思います。大学では、オンライン授業の事例研究、共有が盛んに行われており、今後大学ではオンライン授業の定着化や、より効果的な授業が行われるものと思います。
しかし多くの中学生は、まだ学び方の学習途中 であり、先生からの教わりが大事であり必要です。現状の授業は、教科書を主体にして教科書に沿って説明をしていきます。中学生段階では、まだまだ自律的に学習を進めていく力を持った生徒が少なく、身につけていない生徒の方が多いと思われます。自習用の学習ソフトを主体的に活用できる生徒は、そこまで多くはないでしょう。
 そのため中学生にとって、新型コロナウイルス感染防止などにより、学校への登校ができない場合には、オンライン授業を用い、「決まった時間で、かつ、みんなで一緒にやっているという一体感の雰囲気を醸し出す」ことが必要となり、このような遠隔であっても一体感を感じさせる仕組みにより、学習習慣をつけさせることが、とても重要となるでしょう。そのためには、学校の先生方にオンライン授業の体験、リテラシー、ノウハウをぜひ身につけていただきたいと切望してします。同様に、生徒にもオンライン授業の受け方の体験、リテラシー、ノウハウをつけるべきと確信しました。
 本メルマガが、少しでも皆さんのヒント、お役に立てれば幸いです。

【終わりに】

 7月からは、ほとんどの学校において、全生徒が登校することのできる状況となりました 。学校では授業が実施され、皆さんほっとしていることかと思います。しかしながら、新型コロナウイルスの第二波、第三波が来ないとは限りませんので、万全な備えをしておく必要があります。3~5月のように、全生徒が休校になり学習機会を失うようなことは、何としても避けなければなりません。分散登校であってもオンライン授業はかなり効用があります。
 そのためには学校にオンライン授業のICT設備を揃えるとともに、先生方にオンライン授業のリテラシーを、また生徒にはオンライン授業の受け方のリテラシーを身に付ける必要があると思います。そのためには、何回かオンライン授業を実施したり、夏休みにオンライン模擬授業を実施したりして、先生も生徒もオンライン授業の体験をしておく必要があると思います(夏休みには出かけていてもオンラインの模擬授業は外出先で見ることはできます)。
 未体験の新型コロナウイルスに種々立ち向かっている先生方に敬意と感謝を申し上げるとともに、先生方に少しでも協力できたこと嬉しく思います。
 前回のメルマガにも書きましたが、このオンライン授業のノウハウは、欠席中の生徒や不登校気味の生徒への学習機会の保障、さらに他校との交流など、いろいろ活用することができます。このオンライン授業実施のリテラシーは、これからのICT時代に向かう先生と生徒の必須なリテラシーだと思います。

 今の中学生が大学生になったとき、すべての大学はオンライン授業を取り入れ、外国とのオンライン授業が当たり前になっていると思います!

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(初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部)