初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第390号(令和2年6月26日)

【特別寄稿】
三砂中オンライン授業奮闘記!
~学校の先生と地域ボランティアのコラボで実現!~

〔東京都江東区立第三砂町中学校支援の会コーディネーター 潮田 邦夫〕

【江東区立第三砂町中学校支援の会(三砂中支援の会)】

 三砂中支援の会は、東京都江東区立第三砂町中学校(生徒数395名)に設置されている学校支援組織であり、2008年に地元の有志によって立ち上げられました。そして、2011年に学校支援地域本部事業へと引き継がれました。 私は、企業を退職した8年前から三砂中支援の会のボランティア活動に参加しています。
 三砂中支援の会は、2016年に文部科学大臣賞を受賞しました。活動は、毎週土曜日や長期休暇時の数学学習教室を実施するほか、各種検定試験の準備・実施をしています。さらに、生徒たちに「勉強の意義・社会で必要な能力」を生徒たちに知ってもらうために、キャリア教育を実施しています。また、地元のお祭りイベントである歩行者天国への茶道部の参加など地元の方と交流しています( 災害時の避難所の学校を想定し、生徒と大人の交流を図っています)。
 昨年度末、新型コロナウイルスが蔓延したことから、3月から学校が休校状態となりました。日々の成長が著しい生徒たちの、学習や友人との交流、部活動の機会がなくなることは、普段から学校や生徒たちに関わってきた私たち大人にとっても、大変残念なことでした。新型コロナでの休校中、私たち支援の会の活動、具体的には、土曜学習教室、考査前の勉強、さらには春休み学習教室までもが、全て中止となりました。その後も、感染症予防対策の観点から、4月、5月と長期にわたって休校となり、私たちの活動も休止せざるをえませんでした。生徒たちは、勉強する機会が失われ、また友達との交流もなくなり、辛い思いをしているだろうと思いましたが、私たちは何の支援もできず、手をこまねいているしかありませんでした。

 【オンライン授業への取り組み】

 私は、NTT、ドコモと通信関連の仕事をしていましたので、そこで培った知識や技術を使って、少しでも支援できないかと考えていました。難しいIT技術や知識がなくても、生徒たち全員、また普段ITに慣れていない先生でもできることがないかと思考していたころ、世間で使い出していたZOOMを知り、早速親しい友人と使いました。これなら誰でもが簡単に使用でき、生徒たちの現状を変えることができると確信しました。(私も某大学のオンライン講義でZOOMを用いた経験をしましたので、十分な確信を得ました)。
 早速、支援の会から、学校側に対して、「我々が支援しますので、オンライン授業をしませんか」と提案しました。私自身もオンライン授業を実体験したものですから、やれる確信をもっていました。
 学校でもオンライン授業の準備を進めていたこともあり、生徒たちのためにやってみましょうと、前向きな返答をいただきました。そこで、日ごろから面識、交流の深い、数学の先生に相談しました。
 一気に学校全体での実施は難しい。できることの確認、そして他の先生方にオンライン授業の実態を見てもらい、確認してもらうことが最善です。実際を見て確認すれば、多くの先生からの賛同が得られると思い、まず実践例を構築し、その後普及する手法を取りました。(これは会社の組織活動で、新しい活動を会社組織に普及させる方法で、企業経験の手法が役に立ちました)。
 学校では区の施策として、先駆的にITを活用した学習ソフトを導入し、活用し始めていました。学習ソフトはなかなか素晴らしいものでしたが、自分の家で自から学習しないと、なかなか進まないものです。これは私自身の経験から、自分で時間を決めて自主的にやると言うのは、なかなか大変であり、学習習慣の弱い子には難しく、そのような生徒がかなりいるのではないかと思っていました。しかし、「決まった時間に参加し、皆と一緒に学習しているとの感覚を与えるオンライン授業」と、「自学・自習できる学習ソフト」を組み合わせれば、より一層効果が出ると思い、セットでの活用を提案しました。オンライン授業で講義した場合、生徒たちの反応や理解度が把握しづらい点があると思いました。オンライン単独だけでは効果が出にくいので、 宿題とのセットで理解度を把握する。その場合、学習ソフトは宿題の提示、理解の把握に適しています。ZOOMでは多くの参加者の顔を見ることはでき、個々人と会話できるのですが、慣れないとなかなか難しい。よって、基本的な機能で、先生の授業が自宅で見られるだけにして、早く実現できるように考えました。

 【オンライン授業実施準備】

 すぐに学校は、オンライン授業実施を試行することにしました。

(1)オンライン授業機器
当初はすべて学校のIT機器を使って、システムを構築しようとしました。
 
 ア.先生の授業にスマホを使用(BYOD:Bring Your Own Device)
 まず先生の授業の黒板を写すのに、学校に配備されているタブレット端末を用いました。しかし、学校に配備されたタブレット端末は、セキュリティが厳しく公衆網との接続が難しく、使いこなすまで時間がかかりました。それであればと言うことで、今回は特別に先生のスマホを使うことにしました。理由としては、新しいスマホはカメラの画素数が多く、解像度が高く黒板の字が読める。また、本人の慣れたスマホなので、使い方に慣れておりスムーズに使いこなすことができました。
 
 イ.回線は学校配備のモバイルルーターを使用
 モバイルルーターとタブレットは、家庭での回線環境がない生徒に対して、学校から貸与されていました。そこで、まだ貸し出されていないモバイルルーターを活用しました。
 
 ウ.次にスマホを固定するために三脚を使用
 これは先生がご自分で持っていたものを活用しました。スマホ固定の三脚は使用性が容易で、設定も楽でした。
 
 エ.オンラインのシステムはZOOMを利用
 急遽のオンライン授業の実施でしたので、多くの人が使用しているオンラインサービスを利用することにしました。ZOOMによるオンライン学習は授業を配信 するだけです。学校からの配信でも、参加者の把握と参加許可を個別に与えられるので、セキュリティは守られます。また参加する生徒は顔を見せる必要はなく、名前で把握することにしました。
 ただし、無料なのは40分なので、45分授業では、準備時間を入れると2回接続することになります。そのため、一度中断し、再設定が必要でした。生徒には、ID番号とパスワードを知らせています。数回も実施すれば生徒も先生も慣れます。
 
(2)生徒使用のIT機器(BYOD:Bring Your Own Device)
 ア.緊急事態であり、家庭の機器で活用できるものは利用してもらいました。
 ほとんどの生徒は、自前の機器で対応可能でした。
 家庭で活用のIT機器はスマホが圧倒的で、タブレットは少数で、パソコン利用は非常に少ないというのが現状でした。
 
 イ.一部の生徒に、端末機器、回線環境がない生徒がいましたので、区から学校に配備されているタブレットとモバイルルーターを貸与しました。タブレットは 数年前から、学校に配備され、ICTを活用した授業に使用していていました。そのタブレットを家庭学習用に貸与しました。また、モバイルルーターは、新型コロナ対応で、区で導入したオンライン教材を、家庭で学習するために、Wi-Fi環境がない家庭に貸与されました。

 【オンライン授業実施】

(1)まずは実施することとし、何回も実施するので、少しずつ修正していけばとの精神で使い始めました。また、うまい具合に6月からは分散登校であり、半分の生徒が順番に通学してきます。全部の生徒に直接説明することができました。また不都合なことがあった場合には、登校時に質問すれば良いと言うことで、今回は逆に新しいことを実施するのには良いタイミング、良い環境であり、オンライン授業のリテラシーを身につけるのはこのタイミングしかないと思いました。
 
(2)スマホは画質が良く、「黒板全体」の字が見えると言うことがわかりました。 塾などのオンライン授業の映像では、一定の範囲の白板を使って説明をして白板いっぱいになったら消しており、すぐ次のことを書いていました。しかし、学校の先生方は、幅広い黒板を使って左の方から右の方に書き、説明と説明の流れがわかるような仕組みになっていました(数学の場合です)。そのため、先生方のその貴重なノウハウを生かすには、黒板全体を見えるようにするのが良く、先生は通常通りに教科書を使用して黒板を使った通常通りの授業をすればよいので、オンライン授業のために教え方を変える必要はありませんでした。黒板全体を写すためには、画質の良いカメラが必要であり、スマホで実施しました。オンラインで配信された画像を、スマホとタブレットで確認しましたが、文字までよく見分けることができ、スマホで十分オンライン授業ができることがわかりました。(対面式のアクティブラーニングができないのは、残念ですが、通常学習は十分な環境だと思います)
 
(3)ZOOM利用時にはいくつかの注意事項がありました。
 ア.オンライン授業で行うと、自宅での参加者が遅れて参加する場合があります。そのため、時々招待操作を行う必要があります。
 イ.無料で行う場合は40分の時間制限があります。事前準備を入れると途中で再度ZOOM発信が必要なため、時間管理しながらこの操作も行いました。
 ウ.生徒がみんなで聞いているため、誰かの音が出るとハウリングにより、聞きづらくなってしまいます。そのため、先生の方から強制的に生徒の音声をミュートにします。(慣れてくれば、生徒個人に質問しての質疑ができるようになると思います)
 
(4)活用できるようになるには、協力者が必要
 遠隔で聞いている生徒の身になって受信して、利用状況を確認する必要があります。 ちゃんと聞こえているか、ちゃんと見えているか、参加者は何人いるかなど、確認する人がいると、講義している先生は安心し、講義に神経を集中できます。そのため、忙しい先生以外の支援の会の我々も少しは役に立ったかと思います。このように何回か実施していくうちに、だんだんスムーズに実施できるようになりました。 

【オンライン授業を実施して】

(1)せっかくの実施でしたので、先生が生徒からアンケートをとりました。
・ ほとんどの生徒は、ZOOMを使って家で見ることができました。
・ 休校により学習時間が少なくなった生徒たち、特に3年生は、これで学習をスムーズに進めることができると喜び 、ぜひ継続してほしいと言う要望がたくさんありました。
・ いつも教わっている先生からいつものように黒板を使っての授業でしたので、生徒からは普段の授業と変わらないと言う意見もありました。オンライン授業は普段の授業とそんなに違和感がないことも生徒に受け入れやすいと感じました。
・ 先生の授業を学校登校時とオンラインで2回聞くことができる、また録画することができるので、先生の授業の理解が高まることも出てきました。
・ 慣れてくれば、オンラインで見る授業と、学校登校等を組み合わせることで、平常時と同じように、学習する時間を確保できるのではないかと思いました。(今は、先生は分散登校のため、生徒が半数ずつ登校してくるので先生は同じ内容を2回教えています)
 
(2)第二波が来た場合には、ZOOMのオンライン授業で、かなり対応できると確信を得ました。先生や生徒にとって、不安が少しは解消したと思います。授業の理解ができない生徒や質問したい生徒は、別途ZOOMで個別に実施することも可能です。
 
(3)生徒の自宅の機器は、スマホがほとんどで、タブレットは少数でした。パソコンは自宅にはあるようですが、保護者が利用しており、まだ学習にパソコンや大きい画面のタブレットを使用するまでにはなっていないようです。 今後、IT機器を学習で活用する機会が増えれば、タブレット端末、ノートパソコン利用が増えると思われます。
 
(4)オンライン授業では先生の説明に集中できる
・先生は黒板に書きながら説明していますが、オンライン授業だと黒板の画面をスクリーンショットで写すことができます。生徒はあとでゆっくり確認しながらノートに書き写すことができます。以前は書き写すことも覚えることだと思っていましたが、黒板の字を書き写すのに神経がいって説明を聞くのがおろそかになるよりは良いかなと感じました。(今の大学生はスマホで黒板を写すと聞いています) 

【オンライン授業拡大】

 これまで、少数の先生でオンライン授業実施しましたが、相当の効果が得られること、そして、新型コロナウイルスの第二波・第三波が来ないとは限りませんので、生徒たちの学習機会を守る、保障する仕組みを作っておく必要があります。
 
(1)機器は学校のものを活用する
 使用機器としては、すでに配備されている学校のタブレット、モバイルルーター、そして無料で使えるZOOMで対応できると思います。さらに、学習確認できる宿題の出し方や、学習ソフトを併用して活用すれば、万一今年の3月から5月のような状態になっても、かなり対応できると思います。
 
(2)重要なポイントは、ITリテラシー
 機器整備は何とかなりそうですが、重要なポイントは、なによりも整備されたIT機器を使いこなし、効果を十分発揮できる「ITリテラシー」です。
 三砂中では、すべての先生がZOOMのITリテラシーを獲得すべく、朝の学活の時間に、全校生徒に向けてクラス単位でZOOMを使うことにしています。分散登校ですので半数の生徒は学校の先生から直接話を聞き、半数の生徒は自宅のオンラインで先生の映像を見て参加します、先生は二人一組になって操作します。これらにより学校の先生全員がZOOMを使ってオンライン授業ができるノウハウ、ITリテラシーを身に付けることができます。 

【アフター新型コロナ:オンライン授業リテラシーの活用】

 オンライン授業で得たITリテラシーを習得しておけば、インフルエンザなどで登校できなかった生徒に活用できます。さらに、不登校気味で、学校になかなか行きにくい生徒には、オンライン授業で学習することもできます。新型コロナウイルスの時でなくとも、他の課題にも役に立つと考えられます。
 ZOOMを活用すれば、他校や外国などとも交流できます。チャンスがあれば外国人と顔を見ながら生きた英語で会話をすることができます。さらには修学旅行などで行った見学先を、東京の保護者の方たちが見ることもできるようになります。
 支援の会でも、ZOOM機能を活用し、遠隔のボランティア講師からの学習を考えています。さらに複数生徒のオンライン討論会、面接練習なども実施予定です。さらにボランティア講師で海外赴任した人には、外国から参加してもらうことも実施しようと思っています。今回は支援の会のボランティアたちも、オンライン授業やZOOMのリテラシーを身につけました。 

【終わりに】

 このように、企業でITシステムを活用した経験のある支援の会のメンバーが協力し、何人かの先生と協働しながら、経験や知見を組み合わせることによって、オンライン授業が実現しました。支援の会の経験とパワーが、少しでも学校や先生の支援そして生徒の学習環境支援ができたことを、私たちは嬉しく思っております。
 先生の仕事は、忙しい仕事でもあり、さらに今回の新型コロナウイルス対策で、いろいろな新しい事象がでており、大変な思いをしていると思います、少しでも社会企業で経験したことがお役に立てられればと思います。令和2年度からは、学校支援地域本部事業が地域学校協働本部事業となりましたが、学校と一体になった生徒の育成にさらに協力していきたいと思います。
 世界で猛威をふるっている新型コロナウイルスですが、日本人の知見と行動力により、世界と比べれば感染者数死亡者数が圧倒的に少ない状況になりました。日本の教育の高さや、日本の文化度が現れたのではないかと思います。このような日本の良さを継続し、未来ある生徒の学習が継続され、成長してくれることを願っています。
 さらにこのような災いの機会を逆に利用し、これからますます必要なITリテラシーアップや、学び方の向上に繋げていってほしいと思います。災いは、なかなか避けることはできませんが、少しでもこの災いを次の時代の向上につなげられたらと思います。
 私たちとしては、先生と一緒に構築したオンライン学習のやり方を、ほかの学校やほかの地域に、少しでも参考になればと思います。 そして、このように先生や地域の人が協力して、オンライン学習ができたというようなことも、子どもたちは見ていると思います。これも一つの教育かなと感じているところです。 早く新型コロナウイルスが制圧され、平常な日常生活に戻れることを願っています。
 以上、学校支援する立場のメンバーから気が付いた点を書いてみました。かなり偏った面があると思いますが、このような視点からの見方もあるとご理解いただければ幸いです。この新型コロナ禍の中で前向きにこどもたちのために頑張っている先生方に敬意と感謝を申し上げたいと思います。
 
(追記)
 オンライン授業が、何とかスムーズに行えるようになり、夕方先生と反省会をオンライン会議にて実施しました。さらなるZOOMの利用ノウハウを得るために!そして、数学の先生に質問しました。
 数学は 1+1=2ですが、
 今回の 1(人の知) +1 (人の知) は 2(の知)ですか? 3(の知)ですか?

お問合せ先

初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部

03-5253-4111 (内線3749)

(初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部)