初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第383号(令和2年4月24日)

[目次]

【萩生田文部科学大臣メッセージ】
□教職を一度退職された先生方へ(ご協力のお願い)

【お知らせ】
□新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について
□授業目的公衆送信補償金制度の早期施行について
□「教職員の学び応援ページ~教職員支援コンテンツ特設ページ~」の開設について
□理科映像指導事例集について
□小学校における法教育の実践状況に関する調査研究について
□令和2年3月の文部科学省選定作品(学校教育教材等)の紹介
□「学校体育施設の有効活用に関する手引き」の公開について
□高等教育の修学支援新制度の申込みについて
□令和3年度・4年度在外教育施設派遣教師、シニア派遣教師及びプレ派遣教師の募集について

【発行】
□「教育委員会月報」について
□「学校における女性の管理職登用の促進に向けて」の刊行について

【特別寄稿】
□ブラジルのオンライン授業に関する雑感 (2)
在ブラジル日本国大使館一等書記官 鈴木宏幸

【課長コラム】人生百年時代の基盤となる学びの保障・充実へ
初等中等教育局参事官(高等学校担当) 塩川 達大
 

□【萩生田文部科学大臣メッセージ】教職を一度退職された先生方へ(ご協力のお願い)

 教職を一度退職された先生方へ、萩生田大臣からメッセージです。
 https://www.mext.go.jp/content/20200421-mxt_kouhou01-000004520_2.pdf

 

□【お知らせ】新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について

  文部科学省では、新型コロナウイルス感染症関連のお知らせを随時更新しております。
 臨時休業中の学習の保障等について最新の通知等を掲載しておりますのでご確認ください。
 https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/index.html#news

 

□【お知らせ】授業目的公衆送信補償金制度の早期施行について

〔文化庁著作権課〕 

 新型コロナウイルス感染症に伴う遠隔授業等のニーズに対応するため、授業目的公衆送信補償金制度を本年4月28日から施行いたします。
 この制度により、学校の授業の過程において必要な資料のインターネット送信について、原則として個別の許諾を要せず、様々な著作物をより円滑に利用できることとなります。
 この制度は、学校の設置者が各分野の権利者団体で構成される指定管理団体に一括して補償金を支払うものですが、指定管理団体から文化庁に対し、今年度に限り、補償金額を特例的に無償とする認可申請が行われております。

※詳細はこちら
○文化庁 授業目的公衆送信補償金制度の早期施行について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/92169601.html
○一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会 SARTRAS
著作物の教育利用に関する関係者フォーラム、教育現場での著作物利用の運用指針(2020年度版)を公表
https://sartras.or.jp/archives/20200416/

(お問合せ先)
文化庁著作権課
メールアドレス:chosaku@mext.go.jp

□【お知らせ】「教職員の学び応援ページ~教職員支援コンテンツ特設ページ~」の開設について

〔総合教育政策局教育人材政策課〕

 独立行政法人教職員支援機構のウェブサイトでは、全国の教職員の方々が自宅等でも学べる「教職員の学び応援ページ~教職員支援コンテンツ特設ページ~」を開設しました。

※教職員支援機構ウェブサイト(トップページのバナーよりジャンプ)
https://www.nits.go.jp/

 テーマ別に検索できる100本以上の"20分で学べる"動画シリーズや、アクティブ・ラーニング200事例等の教材コンテンツをまとめています。ぜひ積極的にご活用ください。

(お問合せ先)
独立行政法人教職員支援機構次世代教育推進センター調査企画課
電話:03-6811-0756

(本件担当)
総合教育政策局教育人材政策課教職員研修係
電話:03-5253-4111(内線2986)

 

□【お知らせ】理科映像指導事例集について

〔国立教育政策研究所教育課程研究センター〕

 国立教育政策研究所では、平成30年度全国学力・学習状況調査の結果を踏まえ、理科の映像指導事例集を作成しました。概要は以下のとおりです。
 
○小学校・中学校それぞれ6事例ずつ、計12事例の授業映像を、動画配信サイト「YouTube」文部科学省公式チャンネルにて配信。
○1事例15分程度の映像資料。指導の工夫・ポイントをテロップで明確化。
○各事例に関する学習指導案等については、国立教育政策研究所のHPに掲載。(ダウンロード可)
○新学習指導要領にも対応する内容。
 
※詳細はこちら
 https://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou/rika/r01.html

 日々の授業づくりの参考として、教育委員会や学校における研修等の素材として、是非御活用ください。

(お問合せ先)
国立教育政策研究所
教育課程研究センター研究開発部学力調査課分析係
電話:03-6733-6826(内線6826)

□【お知らせ】小学校における法教育の実践状況に関する調査研究について

〔初等中等教育局教育課程課〕

 法務省では,法律専門家ではない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身に付けるための教育である法教育の普及・推進に関する取組を行っています。
 学習指導要領においては,各教科等において「法に関する教育」に係る内容が盛り込まれており,令和2年4月から実施された新学習指導要領(平成29年告示)においては,更なる充実が図られているところです。
 そこで,法務省においては,小学校における法教育の実践状況を把握し,学校現場における法教育の取組を更に支援するための施策の在り方を検討することを目的として,法教育の実践状況に関する調査研究を実施しました。
 調査対象校の皆様には,御協力いただきありがとうございました。
 本調査研究の報告書を下記ページに掲載しましたので,各学校における法教育の取組の参考として,御活用いただければ幸いです。

<学校現場における法教育の実践状況に関する調査研究について(法務省ホームページ)>
http://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/gakkou_tyousa.html

(お問合せ先)
法務省大臣官房司法法制部司法法制課
司法制度第二係
電話:03-3580-4111(内線2362)

(本件担当)
初等中等教育局教育課程課
企画調査係
電話:03-5253-4111(内線2565)

□【お知らせ】令和2年3月の文部科学省選定作品(学校教育教材等)の紹介

〔初等中等教育局情報教育・外国語教育課〕

 文部科学省では、映画その他の映像作品及び紙芝居について、教育上価値が高く、学校教育又は社会教育に広く利用されることが適当と認められるものを選定し、併せて教育に利用される映像作品等の質的向上に寄与するために、教育映像等審査規程(昭和29年文部省令第22号)に基づいて映像作品等の審査を行っています。                                                     
※以下、文部科学省特別選定を「特別選定」、文部科学省選定を「選定」として、【作品名】/申請者/利用対象の順に記載しています。

<令和2年3月文部科学省選定作品(学校教育教材等)>
○紙芝居(特別選定)
・【レレコさんと かおかきこぞう】/株式会社童心社/幼稚園等幼児向き
・幼児向き 
 
○紙芝居(選定)
・【レレコさんと かおかきこぞう】/株式会社童心社/少年向き
・【あさのおしたく これだれの?】/株式会社童心社/幼稚園等幼児向き
・幼児向き

○DVD(選定)
・【『しではら -かどま市が生んだ日本の総理-』】/劇団ARK/成人向き
・【食生活のこと、考えてみた!】/株式会社放送映画製作所/中学校生徒向き

○ブルーレイ(選定)
・【花のあとさき ムツばあさんの歩いた道】/株式会社新日本映画社
/青年向き・成人向き・家庭向き 


(お問合せ先)
初等中等教育局情報教育・外国語教育課映像等審査担当
電話:03-5253-4111(内線2417)
 

□【お知らせ】学校体育施設の有効活用に関する手引き」の公開について

〔スポーツ庁参事官(地域振興担当)付〕

 スポーツ庁では、地方公共団体が、学校体育施設を活用して、地域のスポーツ環境を充足し、スポーツ実施率の向上へと繋げるため、学校開放事業を実施する際の諸課題とその対応方針を示した「学校体育施設の有効活用に関する手引き」を令和2年3月に策定・公表しました。学校開放事業の課題としては、例えば児童生徒や一般利用者の安全・安心確保のための体制整備、開放事業に従事する教員の皆様の負担軽減に繋がる事業の実施体制の外部化などについて、先行事例を紹介しつつ対応方策を示しています。
 是非、ご一読ください。

※詳細は、こちら
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop02/list/detail/1385575_00002.htm

(お問合せ先)
スポーツ庁参事官(地域振興担当)付施設企画係
電話:03-5253-4111(内線3773)

□【お知らせ】高等教育の修学支援新制度の申込みについて

〔高等教育局学生・留学生課〕

 2020年4月から、大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専門学校に在学する学生等を対象にした「高等教育の修学支援新制度」が始まりました。
 対象となる住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生等は、授業料等の減免と給付型奨学金の2つの支援が受けられます。

■受付期間
・予約採用:大学等への進学前(前年度)に申し込む
2020年4月下旬 ~ 【受付中】
※申し込みは在学する高等学校等を通じて行うため、具体的な受付期間は学校にご確認ください。
※進学後にも申し込む機会があります(在学採用)。

■支援の金額や条件について
詳しくはこちら(特設ページ)→ https://www.mext.go.jp/kyufu/index.htm

(お問合せ先)
高等教育局学生・留学生課高等教育修学支援室修学支援係
電話:03-5253-4111(内線3505,3410)
E-mail:qafutankeigen@mext.go.jp

□【お知らせ】令和3年度・4年度在外教育施設派遣教師、シニア派遣教師及びプレ派遣教師の募集について

〔総合教育政策局教育改革・国際課〕

 文部科学省では、海外で暮らす子供たちが日本国民としてふさわしい教育を受けられるよう、在外教育施設に対して、現職教師、退職教師(シニア派遣教師)、
国内での教師正規採用を目指す方(プレ派遣教師)を派遣しています。
 現在、令和3年度及び4年度に新たに在外教育施設に派遣する教師の募集を行っています。
 現職教師の方においては、本件について文部科学省から各都道府県教育委員会等に選考実施要項等を配付しておりますので、各都道府県教育委員会等にお問い合わせください。
 また、シニア派遣教師及びプレ派遣教師への応募につきましては、文部科学省において公募しておりますので、下記ホームページをご覧ください。
 日本とは異なる教育環境において、学校の中核となって教育活動を行う経験は、国内では体験できない貴重な機会となり、教師としての力量を高めることにつな
がると考えております。熱意ある方の積極的な応募をお待ちしております。
 なお、選考や派遣に当たっては、新型コロナウイルス感染症の拡大の状況を踏まえ、適切な対応を行っていく予定です。

■プレ派遣教師・シニア派遣教師募集要項:
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm

(お問合せ先)
総合教育政策局
教育改革・国際課在外教育施設教職員派遣係
電話:03-5253-4111(内線2080、2440)

□【発行】「教育委員会月報」について

〔初等中等教育局初等中等教育企画課〕

 「教育委員会月報」は、文部科学省の実施する施策の論説・解説や各都道府県・市町村教育委員会の特色ある取組等の紹介など、全国の教育関係者に有用な教育行政に関する情報を提供している月刊誌です。
 4月号の特集は、「今年度の重要施策と課題」です。

※詳細はこちら(第一法規株式会社ウェブサイト)
http://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/100408.html

(お問合せ先)
初等中等教育局初等中等教育企画課地方教育行政係
電話:03-5253-4111(内線4676)

□【発行】「学校における女性の管理職登用の促進に向けて」の刊行について

〔総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課〕

 国立女性教育会館(NWEC/ヌエック)では、平成30年に公表した「学校教員のキャリアと生活に関する調査」の結果をもとに、学校において管理職に占める女性の割合が低い背景について、教員の管理職志向に関わる意識や家庭生活の役割分担とその意識などの観点から解説し、合わせて女性の管理職を増やす意義や事例をもとにした取組のポイントをまとめたリーフレットを刊行しました。

※詳しくは、こちらを御覧ください。
→https://www.nwec.jp/about/publish/2019/ecdat60000003fon.html

(お問合せ先)
国立女性教育会館研究国際室
電話:0493-62-6437

(本件担当)
総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課
電話:03-6734-2654

□【特別寄稿】ブラジルのオンライン授業に関する雑感(2)

〔在ブラジル日本国大使館一等書記官 鈴木宏幸〕

1.はじめに
 前回は、保護者・子供目線で実施されているオンライン授業に関する個人的雑感を記載させていただきました。今回は、実際オンライン授業を実施している学校・先生側が、オンライン授業をどのようにとらえ、どのように考えているのか、兄が通うイギリス系のインターナショナルスクール(British School of Brasilia、以下「BSB」)の校長先生と妹が通うアメリカ系のインターナショナルスクール(Brasilia international School、以下、「BIS」)の校長先生に伺いました。この大変な状況かつ多忙なところ、快くご協力いただきましたTracey校長先生とSimano校長先生にはこの場をかりて御礼申し上げます。

※前回の記事はこちらをご覧ください。
 https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1422844_00015.htm

2.オンライン授業の実施を通じた学校・教員側の意見・感想
(1)オンライン授業への準備に関して

ア.デバイスの準備
 ●オンライン授業をするにあたって必要なデバイス(PC、タブレット、スマートフォンなど)については、ほぼすべての家庭で何らかのデバイスを持っていると認識していた。ただし、家庭で1つしかデバイスがなく兄弟間で共有したいという意見もあり、時間割や授業内容を吟味したケースはあった(BSB)。
 ●家にデバイスがない家族があったことを知り、必要に応じてChromebookを貸出も行った。ただ、貸出の申し出はほとんどなく、この機会にデバイスを購入したところもあると聞いている(BIS)。

イ.教員の事前研修
 ●すでに、WiFiをはじめ本校はオンライン環境を整えており、日常において、本校ではカリキュラム全体で教員や生徒がlaptopやiPadを積極的に活用している。そのため、今回のオンライン授業にはやる気と熱意をもって取り組んでいると思う。やり方等のマニュアルは用意したが、事前の研修はしていない(BSB)。
 ●日本・中国・韓国と姉妹校があり、そこは3月上旬には閉校を決定していたため、情報を収集した。そこでの情報や実施している取組を踏まえ、3月6日及び3月9日にスタッフで研修を実施した。それ以外は特段の研修はしていない(BIS)。

ウ.保護者への周知・理解
 ●メールを活用して、学校の状況・見通しを随時メールで周知し、保護者の理解を図った。日ごろから保護者にはメールで周知しているので、抵抗はなかったのではないかと思われる。ただ、作動方法等について五月雨で届けることは保護者には負担感はあったかもしれないが突発的な状況なのでやむを得なかった。 
   4月17日には,保護者・生徒向けのGoogle classroomの設定の仕方をまとめたビデオ解説を配布するなど,改善を図っている(BSB)。
 ●アジア各国の動向を注視し、3月10日にオンライン授業の可能性に関する保護者向けの説明会を行った(この時点では、連邦直轄区政府の命令が出され、12日に閉校することは想定していなかった)。その後は、随時保護者にメールで必要な情報を伝えている。これは常日頃から保護者あてにメールで周知していたので問題等なかった(BIS)。

(2)オンライン授業の実施に関して
 ●オンライン授業実施前には、課題ファイル若しくはビデオ動画を送るという形での対応をしていたが、それに比べれば児童生徒の反応がリアルタイムでわかり、双方向で言葉を交わすことができる今の状況の方が教員は当然好意的である。
 ●現在、学校は閉鎖しているので、各教員に対して自宅からオンライン授業を実施している。当校からは実施に際して、適切な場所、服装・身だしなみを教員に指示はしている。校長はすべての授業に自由に参加できるようにしているため、時々各学年の授業に参加して、様子を見ている。そのため、授業ではGoogle classroomとHangouts Meetを使うよう指示しているが、多くの決まりごとは設けず、教員のやる気と自主性に委ねており、各先生は様々な工夫を施していると思う。
 ●職員間の意識の共有を図ることは必要不可欠であり,頻繁にオンラインによる会議や意見交換を実施している。
 ●オンライン授業にあたって、セキュリティの観点から個人情報の取扱いには注意している。オンラインの安全性とセキュリティは常に教員と生徒にとって重要なポイントであるため、IT教育やPSHC(Personal, Social and Health Education)の中で取り組んでいる(以上、BSB)。
 ●子供たちの様子をみれるのは非常にうれしい。顔の表情をみて元気かどうか確認することができる。
 ●学校には教員は来ることができないので、現在は教員の自宅からオンライン授業を実施している。通勤時間がかからないというメリットはあるものの、特に小さい子供がいる教員は、授業の間、自分の子供の心配もしなければならないので、なかなか大変である。勤務時間は、学校がある場合と同じで、勤務の報告をしてもらうことで勤務管理をしているし,オンラインの会議も実施している。通常の勤務時間以外にはメール等を送らないように配慮している。
 ●Google Classroom、Zoom、SEESAWの使用を許可しているが、学年によって使い分けている。一部の教員は許可されているもの以外のものも活用していると聞いている。教えるべき内容をきちんと実施できていればよいと考えている。なお、使用にあたってIDとパスワードの管理の徹底など、セキュリティには一定に配慮をお願いしている(以上、BIS)。

(3)オンライン授業の課題
 ●オンライン授業はポジティブではあるが、最大の課題は、児童生徒の理解度、進歩の程度を把握するのが非常に難しい。通常の対面式の授業では、教師がノートの記載、児童生徒の表情や仕草など様々なものを利活用しながら、生徒の授業の参加意欲や理解度を評価する。ただし、オンライン授業ではそれは簡単にはできないと思っている。小さい画面で児童生徒の様子を細かく、かつ一斉に把握することは難しい。児童生徒の理解度を把握する取組としては、定期的に行うテストを、規模を小さくして通常より頻繁に行うことを考えている。理解が十分ではないと思われる児童生徒には個別の課題を提示するような工夫をしている(BSB)。
 ●Zoomでは小グループに分けて生徒同士の話し合いをすることもでき、教師がグループに出入りするなどしてサポートすることもできるが、教員の入っていないグループの生徒の様子をつかめないという限界がある。本来であればフォローしなければいけない子供たちに対して,対面授業のように接することが難しい。オンライン授業は有意義だと改めて感じたが,人と人が交じり合う中で感じたり学んだりする必要はあるので対面の授業も必要だし、休み時間の子供同士のふれあいは重要だと思う。教員は児童生徒に会えないことを寂しがっている。
 ●オンライン授業は自宅で受けることから、評価を下すための試験を実施しても公正・公平に行われているか疑義を感じる。問題を出しても、何かを見ていたり、場合によっては親に教えてもらっていることまではわからない。自分の力で行うことを神の前で誓わせたうえで実施しているが(以上、BIS)。

3.今回のオンライン授業を通じた遠隔教育の実施に向けた関係者の皆さんへ
 前回は保護者の視点で、今回が学校・教師の視点から、自分の子供たちの受けた同時双方向のオンライン授業について記述してきました。日本では、今回取り上げた同時双方向型のオンライン授業だけではなく、オンデマンド型の授業やテレビを活用した遠隔教育を実施している事例も拝見しました。これからもその事例は増えていくと思います。遠隔教育の実施するに当たり各関係者の皆さんへ,今回のオンライン授業を通じた私見をまとめました。

(1)保護者の皆さん
  オンライン授業をはじめとした遠隔教育を実施すると保護者には、セットアップや学習のサポートなど一定の負担は生じるのはやむを得ないと思います。ただ、学びの機会を色々な手段で確保していくことは必要不可欠ですし、特に、同時双方向で教員や児童生徒と話ができる、一緒に勉強できるオンライン授業は、教員の指導・児童生徒の学習へのモチベーションともにプラスに働きます。
  今回の新型コロナウイルスの感染が広がって、社会全体が不安を抱えている中で新たな取組を進めることは並大抵のことではありません。初めてのことですから当然課題等も生じてくると思います。ただ、実施にあたって保護者が感じる負担は、これまで当たり前として学校や教員が対応してきたことです。学校や教員について理解する良い機会ととらえ、保護者側も多くを求めず,改めて学校とともに子供達を育てるという姿勢で,取組を見守り、気づいた点を学校や教員に伝えれば、より適正な遠隔教育が進められるのではないかと思います。

(2)教員の皆さん
 今回の新型コロナウイルスを巡る子供達を第一に考え取り組んでいる姿勢は本当に頭が下ります。そうした中で,オンライン授業をはじめとした遠隔教育は,教授者と学習者との時間や空間を超えることができ、学習の幅を広げることが可能となる重要な教育手段です。当然,地域や家庭の状況によって,使える選択肢は様々だと思いますが,対面授業を行うことができない今だからこそ,是非今ある学習ツールを最大限活用・組合せて,子供たちの学びを継続するための取組を進めていくことが必要であります。
(学習ツールの機能・効果・留意点については,昨年6月に文部科学省でまとめた「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」においても「先端技術の効果的な活用のための基本的考え方」として示しておりますのでご参考にしていただければと思います。https://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm
  BSBとBISの先生たちの様子を見て,「まずはいろいろやってみる,試してみる」という姿勢が強く感じました。児童生徒の反応が鈍ければ,事前に解説動画を送るようになったり,授業の進め方も講義形式から問題演習形式に変えたりしていましたし,当初はなかった体育の授業をやってみたりと試行錯誤を繰り返していました。
 また,オンライン授業をはじめとした遠隔教育を実施するに当たって,特に留意すべきと思う点は,BSB,BISの校長先生も言われておりますが「児童生徒の理解度の把握・評価」「授業内容を理解できていない児童生徒のフォローアップ」だと思います。これについては,前述したように,こまめに課題を提示し,提出を求めたり,子供の理解の進捗にあった個別課題を提示する,保護者とオンラインで面談を実施するなど工夫はしている様子はみえました。個人的には,上記取組に併せて,児童生徒(場合によっては保護者)に丁寧なフィードバックがあるともっとよかったのではないかと感じます。

(3)教育委員会・学校管理職の皆さん
 BSB、BISについても、校長先生はオンライン授業の実施について、必要最低限のことしか指示を出していません。それぞれの先生の取組を尊重することで、スピード感をもって指導の充実を図ることを最優先にしています。並行して,各先生の取組を支援するために,使用するデバイス・学習ツールやセキュリティポリシーをはじめとした様々な運用の見直しなど必要な後押ししてあげることが肝要かと思います。
 その一方で,職員間の意識共有・目標の共有は必要不可欠となりますので,まずは,出勤者の削減のためにテレワークや在宅勤務が進んでいく中でBSB・BISが行っているように職員間のオンライン会議を積極的に実施してはいかがと思います。オンライン授業を実施するよりはハードルが低くく,これを機に教育現場でもICTを積極的に活用していくきっかけになるのではないでしょうか(BSBの話からもわかりますように,常日頃からICTを使うということが,今回の様々な取組を迅速に実施する素地になっていることは明らかです)。

4.最後に
 今回の休校に伴うオンライン授業は,子供たち・教員にとっても非常にポジティブなものであると記載しました。ただ、BSB・BISの教員も、私の子供たちも学校の再開を強く待ち望んでいます。
 オンライン授業は確かに先生や子供たちの様子をお互い画面を通じて見て,発表や意見交換を可能にするという点では,私も傍らで拝見していて様々な可能性を感じましたので,(新型コロナウイルスが沈静化した後も)躊躇せずに進めていくべきだと思います。ただ,子供や教員は,一人一人によりきめ細やかな指導が受けながら,「画面」という限られた視野以外に広がる世界(学校・教室)で生じる熱量や様々な出来事(他の子が自分の意見にかぶせてくる声や子供同士の雑談の声など)を感じながら学び合うことができるという,オンライン授業にない対面授業の良さを長期間の休校を経て,今改めて求めているのだと思います。
 また,息子は学校に行って休み時間に友達とサッカーをしたり、友達と雑談をしたりしたいと言っています。BISの校長先生も述べていますが,学校は「授業だけを行う場」ではなく,休み時間など授業以外の様々な活動を通じて,先生と子供同士の関わり(時には問題や悩みを抱え,解決する)の中で友情を育んだり,人間的な成長につながっている場であることを改めて認識した次第です。
 そのためにも,新型コロナウイルスの状況が早く沈静化に向い,日本とブラジルをはじめ世界各国において安心して学校が再開される日が早く来ることを願ってやみません。

※ 以上の内容は,全て個人の見解であり,所属組織の見解を示すものではありません。

 

□【コラム】人生百年時代の基盤となる学びの保障・充実へ

〔初等中等教育局参事官(高等学校担当) 塩川 達大〕

 本メルマガをご覧の学校の教職員の皆様、教育委員会等行政の皆様、学校法人の皆様、学校教育活動にご参画頂いている保護者、地域、産業界の皆様等、全ての学校の関係者におかれましては、今この瞬間も、子どもの安全の確保、学びの確保・充実に大変なご尽力を頂いていること、心より御礼申し上げます。
 年度末、様々な学校教育活動の仕上げの時期、終業式や卒業式をどうするのか。新年度の指導計画の策定等の様々な諸準備。入学式等の在り方、さらには、通常と異なる学校・子どもの教育をどうしていくか。オンライン、テレビ放送も含め、様々な教材を活用した家庭学習の充実、日々の学び、教科の学習内容の保障。教科書の受け渡し、生活のリズム、心身の健康の保持増進も含めた生活指導・生徒指導のケア。修学旅行等の学校行事についての日程や内容の変更等。進路指導をどうするか。緊急事態宣言も踏まえて、こうした取組をさらにどう進めていくか。文部科学省に対しても様々なご意見をお持ちの方もいらっしゃると思います。そうした中ですが、学校、地方公共団体、学校法人、国等、働く場は様々の中、皆様同様に、子どもの学習の保障・充実を担う職のひとりとして、深謝する次第です。本当にありがとうございます。

 あわせて、恐縮ですが、この場を借りて、皆様にお願いをさせて頂きたいと思います。まず、ご自身の健康にお気遣い頂くこと、それを大前提に、今般の感染症対策の徹底をお願いいたします。今回のような中では、先生方の言動は子どもにとって、とりわけ影響力が大きいと思います。だからこそ、より一層心身の健康にお気をつけ頂きたいと思いますし、そのうえで、初等中等教育の後の進路先となる高等教育機関や企業等の就労先の関係の方も含めまして、是非とも、将来への出発・成長段階の子どもの学びファーストでの、できうる限りの対応をお願いいたします。

 さらに、個人的な思いを付言しますと、今般、さらには普遍的な子どもの学びの保障・充実については、人生百年時代を生きる子どもの未来をご考慮の上で御対応を頂けますと幸甚です。
 先生のあの授業でのあの言葉が、今、大人として人生を歩む基盤となっている、というように、子どもが成長してから、子ども当時の学びを肯定的に振り返ることができるアウトプットにつなげることが、初等中等教育段階の学校の崇高さではないでしょうか。言い換えれば、教師のプロフェッショナルたる所以は、子どもが人生を開拓する基盤となる資質・能力の育成に関して、未来から信託を受けている専門性と考えております。
 多様な子どもたちが、学びのプロフェッショナルである教師をはじめとするチーム学校が構築し運営する学びの場で、さらには、学校と一緒にこうした学びの場を支援するグローカルな産官学等の関係者と多種多様に織りなす網の目のような協働こそ、初等中等教育の最も大事な要素と思っております。

 「僕は子どものころ、自分は文系だと思っていたのに、エレクトロニクスが好きになってしまった。その後、「文系と理系の交差点に立てる人こそ大きな価値がある」と、僕のヒーローの一人、ポラロイド社のエドウィン・ランドが語った話を読んで、そういう人間になろうと思ったんだ」(「スティーブ・ジョブズ I(講談社)」より)。
 このジョブズの言葉を借りると、「多種多様なひと・ものが交わる」交差点(原書はintersection)の場が持つ教育効果を、子どもに最大限に提供する役割を担うのが学校であり、その機能の中核たる専門家こそが教師・先生であり、そのことは過去も今も、そして未来も同様、もっとも、科学の進展等により、そのツールは絶えず変わっていく、そのように思っております。
 自身の人生、周囲の人々、社会を大事にし、より良くしていくという在り方生き方のロールモデルとして先生が、子どもと関わり、さらに、子どもが持つ、自分の未来を豊かにしたいという姿勢から、先生もまた、前向きな姿勢を保ち続けることの大事さを学ぶ、こうした先生と子どもの協働の好循環に向けて、現下の厳しい制約の中でも、かなう限り取り組んで頂けるとありがたく思います。
 
 新型コロナウイルス感染症への対策は、全人類にとって経験のない取組ですが、今の子どもが大人として生きる人生百年時代の未来もまた、人口減少時代、Society5.0時代といった言葉が象徴するように、我が国の大人が未経験のものです。既に、英語やICTプログラミング等もできることが強みの時代から、できないことが弱みの時代に突入しているとも言えます。
 今般の対策と同様に、こうした未知の時代を主体的に生きる資質・能力育成の処方箋は、我々大人の経験知だけでは作りえません。処方箋づくりには、不易と流行という言葉を、変化や、前例にないことをしない言い訳にすることなく、真に大事なことは何かを考えて、変化すべきこと、変わらず行うべきこと、どちらも勇気をもって行動することが必要であり、また、我々子どもの未来に関わる全ての大人に求められていることではないか、自戒を込めて、そのように思います。
 こうした姿勢を有し、子どもの未来を預かるプロフェッショナルである先生をはじめとする皆様の取組に感謝申し上げ、今後ともそうした取組をお願いし、そのためにも御自愛もお願い申し上げ、個人的な思いを情緒的でとりまとまりなく申し上げたことをお詫びしつつ、本稿を終えたいと思います。

 

お問合せ先

初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部

03-5253-4111

(初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部)