初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第381号(令和2年3月27日)

 [目次]

【萩生田文部科学大臣メッセージ】
□教職員の皆様へ

【お知らせ】
□新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について
□令和2年2月の文部科学省選定作品(学校教育教材等)の紹介

【特別寄稿】Zoomを使ったオンライン授業(1)
OECD政府代表部参事官 樫原哲哉

【地方教育行政研修生リレーエッセイ】
□初等中等教育局特別支援教育課支援第一係 坊 佳那子

【コラム】音声教材について
初等中等教育局教科書課 課長 中野 理美
 

□【萩生田文部科学大臣メッセージ】教職員の皆様へ

 教職員の皆様へ、萩生田大臣からメッセージです。
 https://www.mext.go.jp/content/20200318-mxt_kouhou02-000004520-2.pdf

 

□【お知らせ】新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について

 文部科学省では、新型コロナウイルス感染症関連のお知らせを随時更新しております。
 学校再開に向けての通知やQ&Aなど掲載しておりますのでご確認ください。
 https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/index.html

(お問合せ先)
 初等中等教育局健康教育・食育課
 TEL:03-6734-2918

 

□【お知らせ】令和2年2月の文部科学省選定作品(学校教育教材等)の紹介

〔初等中等教育局情報教育・外国語教育課〕

 文部科学省では、映画その他の映像作品及び紙芝居について、教育上価値が高く、学校教育又は社会教育に広く利用されることが適当と認められるものを選定し、併せて教育に利用される映像作品等の質的向上に寄与するために、教育映像等審査規程(昭和29年文部省令第22号)に基づいて映像作品等の審査を行っています。                                                     

※以下、文部科学省特別選定を「特別選定」、文部科学省選定を「選定」として、【作品名】/申請者/利用対象の順に記載しています。

<令和2年2月文部科学省選定作品(学校教育教材等)>
○DVD(特別選定)
・【LGBTsの子どもの命を守る学校の取組 (2) 当事者に寄り添うために~教育現場での落とし穴~】/株式会社サン・エデュケーショナル/成人向き
・【恐竜が教えてくれたこと】/株式会社 彩プロ/少年向き 
 
○紙芝居(選定)
・【とべ とべ たかく!】/株式会社童心社/幼稚園等幼児向き・幼児向き
・【ドラゴンのバラ】/株式会社童心社/小学校低学年児童向き・少年向き

○DVD(選定)
・【はじめて学ぶLGBTs (1) 男らしい色?女らしい色?<低~中学年向け>】
/株式会社サン・エデュケーショナル/小学校低学年児童向き・小学校中学年児童向き・
少年向き
・【はじめて学ぶLGBTs (2) 好きになってはいけないの?<中~高学年向け>】
/株式会社サン・エデュケーショナル/少年向き
・【LGBTsの子どもの命を守る学校の取組 (1)危機管理としての授業の必要性】
/株式会社サン・エデュケーショナル/青年向き・成人向き
・【LGBTsの子どもの命を守る学校の取組 (2)当事者に寄り添うために~教育現場での落とし穴~】/株式会社サン・エデュケーショナル/青年向き
・【みんなの情報モラル5 アプリと上手につきあうために】
/株式会社Compallet/小学校高学年児童向き・中学校生徒向き・高等学校生徒向き・少年向き・青年向き
・【恐竜が教えてくれたこと】/株式会社 彩プロ/家庭向き 

(お問合せ先)
初等中等教育局情報教育・外国語教育課映像等審査担当
TEL:03-5253-4111(内線2417)

 

□【特別寄稿】Zoomを使ったオンライン授業(1)

〔OECD政府代表部参事官 樫原哲哉〕

 コロナウイルスの影響で、フランスでも3月16日(月曜日)から新たな指示があるまでの間、全ての幼稚園から大学が休校になりました。同時に、OECD事務局や私の勤務する代表部も完全テレワークへ移行。さらに、最大3,700ユーロの罰金が課される厳格な外出制限がフランス政府により実施されています。
 
 休校措置に備え、「子供の学び応援サイト」や「学びを止めない未来の教室」の活用を考えていたところ、子供の学校から「休校中はZoomを用いたオンライン授業に移行します」との連絡あり。GIGAスクールに向けた課題を洗い出すための良い機会と前向きに考え、テレワークの傍らで様子を見守ることにしました。
(あくまでインターナショナルスクールに通う小学校低学年の一事例であり、必ずしも一般化できるものではありません。ただ、新たな発見があったり思わぬ落とし穴があったりします。一つの記録としてご笑覧ください。)

【学校からの連絡】
 学校から届いた最初のメールは以下のようなものでした。
 「来週から学校は閉鎖されます。自宅で子供の教育を継続するために、全ての教師は、Zoomというアプリを通じて毎日オンラインサポートを提供します。私たちは昨日と今日、45分間のトレーニングに参加しました。 できるだけスムーズにオンライン配信できるように最善を尽くします。 配信に不具合がある可能性があることに注意してください。 オンライン学習中は、保護者によるアシストが不可欠です。」
 この最後の一文こそが核心であることに、後々気づかされることになります。 

 その後、教師ごとのZoomアドレス一覧、授業で使用するワークシートのアップロード先、読書の代わりとなる児童書サイトのアカウント、オンライン授業のルールなどが、五月雨式にメールが届きます。ちなみにルールは8つ、(1)机かテーブルで勉強してください。(2)授業中ものを食べないでください。(3)質問がある時は手を上げるか、チャットでメッセージを送ってください。(4)同時に1人だけ話せます。(5)カメラとオーディオは授業中はオンにして下さい。(6)必要なものは事前に準備してください。(7)筆箱とホワイトボードを用意してください。(8)トイレは授業の前に行ってください。

【保護者による事前準備】
 使用するものは、全て自前で用意することになります。
 まず、端末はiPad(3年前に購入、9.7インチ)を使用。子供も使うことがあるので、万が一を考え、メールの送受信はできない設定にしています。子供2人を通わせている保護者からは、自分のテレワーク用パソコンがない!と嘆く声も聞きました。急遽タブレット端末を追加購入したそうです。
 ここに、Zoomというアプリをインストールします。「Zoom」は世界各国で使われるビデオ会議システムで、自分がホストせず「参加者」として使用するだけなら無料、アカウント作成も必要ありません。今回のコロナウイルスの影響で、参加予定のOECDの国際会議もオンラインに移行しましたが、このZoomが使われる予定です。
 回線については、自宅Wi-fiを使用。フランスでは、大手プロバイダーによるインターネット回線+IP電話+インターネットテレビ(+携帯電話)のセット契約が一般的です。外出制限令が発出されて以来、昼間の通信トラフィックが増大しているとのニュースも目にします。
 我が家が最も苦労したのは「紙」です。ワークシートやプレゼン資料を印刷すると、あっという間に紙が無くなります。コピー用紙はどこも売り切れで、何軒も探し回りました(そもそも外出制限令の影響で、文房具店は閉まっていることが多い)。オンライン授業のためにプリンターを購入した家もあったと聞きます。このオンライン授業では、パソコンの主目的はFace to Face のコミュニケーションであるため、Edtechの良さである「個別最適化した学び」は残念ながら活かされません(上の学年では異なるかもしれませんが)。
 もう一つの問題は「場所」です。唯一Wifiが満足に入るのがリビングであるため、小さなダイニングテーブルで、テレワーク「父」とオンライン授業「子」が共存することになりました。背景も映るので、家の中が見えない窓際、かつ逆光にならない場所を選択します。
 GIGAスクール構想が完成し、万が一今回のような閉校措置が発生した時、PCは学校からの貸出、回線も、ポケットWifiの貸与やテザリング接続した家庭への補助などで仮に解決できたとして、最後に残るのが「場所」の問題ではないか、と考えます。家庭環境から、誰にも邪魔されない場所を確保できない子供も少なくありません。背景を見られたくない家庭も多いと思います(幸い、Zoomにはバーチャル背景を映し出す機能がありますが、たまに本人も背景に隠れてしまう)。
 その他にも、長時間スクリーンに向き合うことを想定して、ブルーライトをカットする眼鏡を購入した家もあり。小売店が次々と閉鎖される中、どこも必死です。

【授業の様子】
 水曜日以外は1日4コマ、水曜日は3コマ(1コマ45分)で進んでいます。全ての授業を代替しているわけではないですが、保護者からは「これでも多すぎる」との声があるらしく、もう少し減っていく可能性はあります。
 授業は、最も順調な時は次のように進んでいきます。
 
●英語(Phonics)(オンライン授業開始から7日目)
 綴りと発音の関係を学ぶPhonicsの授業は、1学級20人弱×3学級を習熟度別に編制して授業を行います。
・子供は慣れた調整でルームIDを入力。教師が"Good morning, XX, How are you?"と一人一人に声をかける。横長のiPadには、教師の顔が大きく映し出され、下の方に小さな画面が4つ、左から本人・教師・クラスメイト2人の顔が並ぶ。下の小さな画面をスライドさせると他のクラスメイトの様子が確認できる。画面を切り替えて、9分割にすることも可能。
 ・「今日は"ear"と書いて"??r"(いぁ)と発音する単語を勉強します。」"ear!" "year!" "clear!" "dear!" "spear!" 、画面は教師の顔からZoomのホワイトボードに切り替わり、生徒が答えた単語を次々に打ち込んでいきます。"beer!" 「Beer はB-E-E-Rで、Bearは"べぁ"だね。」
・「ではプリントを出してください。"ear"が入った単語を探していきましょう。XX、読んでくれる?」 "プリント持ってません。" 「アップロードしてあるので、ご両親に後で確認してもらってね。画面に同じものを映します。」   
・25分でオンライン授業は終了。残りの時間で、プリントの続きとear [??r] の単語10個と、その単語が入った文章を5個書くのが課題。終わらなければ宿題に。

●算数(オンライン授業開始から9日目)
 分数の授業の2回目。
・デジタル教科書を映しながら説明。横長のiPadに縦長のページを映すので、おのずと文字は小さく読みにくい。手元にある紙の教科書(1ページがA4)を見ながら話を聞く。
・「氷山の1/8が顔を出している時、隠れている部分はどれだけですか?」との質問に、全員が一斉に手元のホワイトボードに回答を記入。答えをカメラに見せる。「XX、正解。ボードを下げて」と一人一人確認。その後、教師がデジタル教科書に書き込みながら解説。何題かこの流れを繰り返した模様。
・最後にワークブック3ページ分の宿題を出して終わり。

 45分丸々オンライン授業をする時もあれば、最初の15分で課題を説明して、あとは全員ログアウトし、紙で課題に取り組むこともあります(数えてはいませんが、後者が多い印象。) 
 しかし、ここに至るまでは紆余曲折がありました。いくつかエピソードを紹介します。 

●全体初回の授業。開始時間を過ぎても「ホストがこのミーティングを開始するのをお待ちください。」の表示が消えない。開始時間5分後に、担任から「I am online but I can't see any of you, here the link for the meeting.」と保護者にメール。そこに書かれたルームIDが、事前リストに掲載されていたものと全く違っていた。

●フランス語の初回。教師側でmute/unmute をコントロールしているため、一度当てられた生徒はずっとミュートが解除され自由に話せるが、我が子を含めて数名がミュートのまま。何人かの保護者がミュートを外せとチャット機能で訴えるが、何の反応もなし。子供の意欲は急降下。(教師がチャットを非表示にしていた可能性が高い。)

●翌日のフランス語は、全員ミュート無しで実施。昨日の反省を踏まえたらしく、20人近い生徒1人1人に「今日の朝食は何食べた?」を尋ね、その後「今日の朝食は何飲んだ?」でもう一巡。食べ物の名前を学ぶ授業であるが、この2周で既に30分以上。
  
●チャットで他のクラスメートに話しかける生徒。チャットに大量のクジラスタンプを投稿する生徒。Zoomのホワイトボード機能の時に、勝手に落書きする生徒。先生の「止めなさい。誰が書いたか私にはわかっているわよ」との声が、今日も聞こえる…。

●子供のオンライン授業と私のオンライン会議がバッティング、思ったよりも双方の声が干渉しあう。私の方は本番に向けたテストセッション(通信状況の確認)だけだったため、パソコンを抱え部屋の隅に退避することに。 

【一保護者の視点で考えるオンライン授業】
 オンライン授業、特に授業を一方的に流すのではなく、教師と生徒が双方向のコミュニケーションを取ることができる形式での授業は、確かに魅力的であり、ありがたい存在です。
 一方、学校から最初にきたメールにある「保護者によるアシストが不可欠です。」の意味を痛感しています。
 事前準備については、最初に記したとおりです。この点は、オンライン授業に限らず発生し得ることですし、非常時ならではの問題も当然あります。
 授業中・授業後は、保護者はICT支援員の代わりです。初日の2つのトラブルだけではなく、Zoomが固まったり、共有されたホワイトボードが自動で表示されなかったりします。平日解いた紙の課題を、週末に、スキャンしてパスワードをかけ、Googledriveにアップロード、パスワードを教師にメールし、翌週使うワークシートをダウンロードする。これもそれなりに負荷がありますし、小学校低学年の子供に任せるのは難しいです。ただ、Edtechを用いた問題集など別のツールを使えばもっと解決できるかもしれません。小学校高学年や中学生になれば、子供に任せられる範囲も広がるでしょう。
 そして、否が応でも、日々授業参観状態になります。会議資料を読み込んでいる最中も、どこかで子供の一喜一憂に反応してしまいます。学校の隠れた機能は、「親の(子からの)独立」と実感しました。学校関係の皆様には本当に頭が下がります。

 以上、保護者目線から、Zoomを用いたオンライン授業の実態をご紹介させていただきました。次回は、もう少し客観的な立場からみたオンライン授業の課題と可能性をまとめます。

 残念ながら、フランスをはじめ欧州ではコロナウイルスの勢いは増すばかりです。26日現在で死亡者数は1,300人を超えました。読者の皆様におかれましては、くれぐれもご自愛ください。
(次号に続きます)

 

□【地方教育行政研修生リレーエッセイ】

〔初等中等教育局特別支援教育課支援第一係 坊 佳那子〕

 2年の研修期間のうち始まりと終わりの半年ずつ、トータル1年間を初中局でお世話になりました。出向元が国立大学なので、業務内容はもちろん、自治体とのやりとりが中心でわからないことだらけでしたが、国の施策や行政における国と地方の関係を、ごく一部ですが垣間見ることができ、貴重な経験となりました。
研修生として文科省に来る前は、東京学芸大学と国立青少年教育振興機構で勤務をしていました。当時一緒に働いていた方々に再会できたり、また新しい出会いやつながりができたりと、多くの人に恵まれた2年間だったなと思います。
 運営協力で行った式典の場に、表彰者として小学校の時の担任の先生がいらっしゃるという、驚きの偶然もありました。(驚き過ぎて声を掛けられなかったことが悔やまれます。)
 4月から出向元に戻りますが、お世話になった方々、研修の機会を与えてくださった大学に感謝し、新型コロナウイルスの終息を祈りながら、最後までできる限り業務をこなしたいと思います。

 

□【コラム】音声教材について

〔初等中等教育局教科書課 課長 中野 理美〕

 皆様「教科用特定図書」をご存知でしょうか?教科書の内容を音声化した「音声教材」は?
 先日、(独)教職員支援機構主催の教職員等中央研修で講義を担当させていただいた際に、参加者の先生方にこの質問をしてみたところ、残念ながら、挙がった手の数はそれほど多くはありませんでした。「教科用特定図書」は法律用語なのでもしかしたら馴染みが薄いかもしれません。「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(通称教科書バリアフリー法)に規定されるもので、視覚障害のある児童生徒のための拡大教科書や点字教科書等がこれにあたります。「音声教材」も教科用特定図書の一つで、通常の紙の教科書の文字や図形等を認識することが困難な児童生徒のために、教科書の内容を音声化し、パソコンやタブレット端末等を活用して学習する教材です。音声教材は、視覚障害のある児童生徒のほか、発達障害により読み書きに困難を有するディスレクシアの児童生徒にも有効です。
 文部科学省では、教科書会社から提供を受けたデジタルデータを活用して音声教材を製作する調査研究事業を実施しており、今年度は6団体に製作を委託しています。その成果物である音声教材は、読み書きに困難を有する児童生徒に無償で提供していますが、来年度の需要調査で都道府県教育委員会から上がってきた児童生徒数は小中学校合計で1万人弱です。他方、平成24年に文部科学省が通常学級の教師を対象に行ったアンケート調査によると、2、4%の児童生徒が読み書きに著しい困難を有するということでしたので、全国の小中学校で約24万人と推計されます。文部科学省では、全国5会場にて、音声教材の普及促進のための会を開催していますが、冒頭に述べた質問への答えの状況にもみられるように、まだまだ普及が十分ではないと感じ、今回のコラムで話題とさせていただきました。
 ディスレクシアの子供は、知的能力に問題があるわけではないので、音声教材の活用により、教科書の内容理解が格段に進みます。逆に、学習に遅れが見られる児童生徒の中には、読み書きの困難がその原因となっている子がいる可能性があり、音声教材の使用によって学びが開かれる可能性があります。
 読み書きの困難を認識していても、クラスの他の子が使っていない端末等を用いて音声教材を使用することを躊躇するケースがあるとお聞きします。ディスレクシアの子が音声教材を使用するのは、視力の低い子が眼鏡をかけるのと同じことですので、本人も周囲もそれを当たり前と思うべきではありますが、GIGAスクール構想により一人一台端末が実現すれば、音声教材使用のハードルもより低くなることが期待されます。これを期に、一人でも多くの必要とする児童生徒が音声教材を活用し、学びの可能性が広がっていくことを願っています。
 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/1374019.htm
 

 

 

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初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部

03-5253-4111

(初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部)