OECD生徒の学習到達度調査(PISA)《2000年調査国際結果の要約》

※本調査の国際結果の報告書(編集:国立教育政策研究所)は、株式会社ぎょうせいより発行されています。(本体2,857円、税別)

調査の概要

  • ※ 参加国が共同して国際的に開発した学習到達度問題を15歳児を対象として実施する。
  • ※ PISA調査は、2000年に最初の本調査を実施し、以後3年ごとのサイクルで調査が実施される。
  • ※ PISA調査では、読解リテラシー(読解力)、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野を調査する。
  • ※ 各調査サイクルでは3分の2のテスト時間を費やす主要分野を重点的に調べ、他の二つの分野については概括的な状況を調べる。2000年調査は読解リテラシー(読解力)、2003年調査は数学的リテラシー、2006年調査は科学的リテラシーが主要分野である。
  • ※ 2000年調査には32か国(OECD加盟国28か国、非加盟国4か国)で約26万5,000人の15歳児が調査に参加した。(オランダの結果は学校の参加率が国際基準を満たしていないため、分析結果からは除外された。)

調査の内容

  • 2000年調査では、読解リテラシー(読解力)を中心分野とし、数学的リテラシー、科学的リテラシーをあわせた3分野を調査した。
  • PISA調査では、義務教育修了段階の15歳児の生徒が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価する。(特定の学校カリキュラムがどれだけ習得されているかをみるものではない。)
  • PISA調査では、思考プロセスの習得、概念の理解、及び様々な状況でそれらを生かす力を重視している。

調査対象

  • わが国では,15歳児に関する国際定義に従って、調査対象母集団を「高等学校本科全日制学科」の1年生、約140万人と定義し、層化二段階抽出法によって、調査を実施する標本を決定した。その結果、全国の135学科(133校)、約5,300人の生徒が調査に参加した。

調査の方法

  • PISA2000年調査はペーパーテストを用い、各生徒は2時間のテスト問題に取り組んだ。
  • PISA調査は多肢選択式の問題及び自らの解答を記述する問題から構成され、実生活で遭遇するような状況に関する課題文・図表等をもとに解答を求めた。
  • PISA2000年調査では総計7時間分の問題を使用し、生徒はそれぞれ組み合わされ九つに分けられたテスト問題群に解答した。
  • テスト問題のほか生徒自身に関する情報を収集するための生徒質問紙及び学校に関する情報を収集するための学校質問紙を実施した。
  • PISA調査ではOECD加盟国の生徒の平均得点が500点、約3分の2の生徒が400点から600点の間に入るように換算している。(OECD加盟国の平均が500点、標準偏差が100点。)
  • 国際的な調査の実施・調整はオーストラリア教育研究所(ACER)を中心とした国際コンソーシアムが行っている。日本では、国際コンソーシアムのメンバーでもある国立教育政策研究所を中心に、文部科学省及び東京工業大学教育工学開発センターと連携・協力してPISA調査を実施している。

2000年調査の結果の概要

1.読解力の結果

 読解力とは、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」である。

(1)習熟度レベル別結果

 読解力の習熟度を高い方から低い方へレベル5から1及びレベル1未満の6段階に分けて総合読解力の各レベル別生徒の割合について表1でみてみると:

  • わが国は少なくともレベル3以上の生徒が約4分の3を占めており、レベル1あるいはレベル1未満は少ない。一方、レベル5の生徒の割合はOECD平均と同程度である。
表1:総合読解力
   レベル1未満 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5
日本 2.7 7.3 18.0 33.3 28.8 9.9
オーストラリア 3.3 9.1 19.0 25.7 25.3 17.6
カナダ 2.4 7.2 18.0 28.0 27.7 16.8
フィンランド 1.7 5.2 14.3 28.7 31.6 18.5
フランス 4.2 11.0 22.0 30.6 23.7 8.5
ドイツ 9.9 12.7 22.3 26.8 19.4 8.8
アイルランド 3.1 7.9 17.9 29.7 27.1 14.2
イタリア 5.4 13.5 25.6 30.6 19.5 5.3
韓国 0.9 4.8 18.6 38.8 31.1 5.7
ニュージーランド 4.8 8.9 17.2 24.6 25.8 18.7
イギリス 3.6 9.2 19.6 27.5 24.4 15.6
アメリカ 6.4 11.5 21.0 27.4 21.5 12.2
OECD平均 6.0 11.9 21.7 28.7 22.3 9.5

(注:数字はパーセント。日本を含むG7の国と結果の良い国のみを示した。)

 総合読解力を三つの側面、1.情報の取り出し(テキストの中の一つあるいはそれ以上の情報の場所を指摘できる)、2.解釈(テキストの一つあるいはそれ以上の部分をもとに解釈や推論ができる)、3.熟考・評価(テキストを自分の経験、知識、考えと関係付けて熟考・評価できる)、に分けて、それぞれのレベル別生徒の割合を表2~4でみてみると:

  • いずれの側面についてもわが国の生徒は7割以上がレベル3以上であり、レベル1あるいはレベル1未満は少ない。
表2:読解力<情報の取り出し>
   レベル1未満 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5
日本 3.8 7.8 17.3 29.8 26.7 14.5
オーストラリア 3.7 8.8 17.2 24.7 24.7 20.9
カナダ 3.4 8.4 18.5 26.8 25.5 17.4
フィンランド 2.3 5.6 13.9 24.3 28.3 25.5
フランス 4.9 10.5 19.2 27.0 25.2 13.2
ドイツ 10.5 12.6 21.8 26.8 19.0 9.3
アイルランド 4.0 8.7 18.2 28.1 25.8 15.2
イタリア 7.6 13.4 23.4 28.1 19.2 8.4
韓国 1.5 6.3 18.6 32.4 29.7 11.6
ニュージーランド 5.6 8.6 15.7 22.7 25.2 22.2
イギリス 4.4 9.4 18.6 26.9 24.1 16.5
アメリカ 8.3 12.2 20.7 25.6 20.8 12.6
OECD平均 8.1 12.3 20.7 26.1 21.2 11.6

(注:数字はパーセント。日本を含むG7の国と結果の良い国のみを示した。)

表3読解力<解釈>
   レベル1未満 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5
日本 2.4 7.9 19.7 34.2 27.5 8.3
オーストラリア 3.7 9.7 19.3 25.6 24.0 17.7
カナダ 2.4 7.8 18.4 28.6 26.4 16.4
フィンランド 1.9 5.1 13.8 26.0 29.7 23.6
フランス 4.0 11.5 21.8 30.3 23.4 9.0
ドイツ 9.3 13.2 22.0 26.4 19.7 9.5
アイルランド 3.5 8.3 18.2 28.8 26.1 15.2
イタリア 4.1 13.1 26.9 32.3 18.8 4.8
韓国 0.7 4.8 19.5 38.7 30.5 5.8
ニュージーランド 5.2 9.9 17.7 23.9 23.9 19.5
イギリス 4.4 11.0 21.1 26.6 22.9 14.0
アメリカ 6.3 11.6 21.7 26.5 21.2 12.7
OECD平均 5.5 12.2 22.3 28.4 21.7 9.9

(注:数字はパーセント。日本を含むG7の国と結果の良い国のみを示した。)

表4:読解力<熟考・評価>
   レベル1未満 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5
日本 3.9 7.9 16.6 28.2 27.3 16.2
オーストラリア 3.4 9.1 19.0 26.9 25.6 15.9
カナダ 2.1 6.6 16.2 27.5 28.3 19.4
フィンランド 2.4 6.4 16.2 30.3 30.6 14.1
フランス 5.9 12.5 23.4 28.7 21.0 8.6
ドイツ 13.0 13.5 20.4 24.0 18.9 10.2
アイルランド 2.4 6.6 16.8 30.3 29.5 14.5
イタリア 8.0 14.3 24.1 28.0 19.1 6.5
韓国 1.2 5.4 19.0 36.7 29.5 8.2
ニュージーランド 4.5 8.5 17.5 25.4 25.6 18.5
イギリス 2.6 7.2 17.4 26.7 26.5 19.6
アメリカ 6.2 11.2 20.6 27.3 22.2 12.5
OECD平均 6.8 11.4 20.7 27.6 22.5 10.9

(注:数字はパーセント。日本を含むG7の国と結果の良い国のみを示した。)

(2)読解力得点の国際比較

 読解力得点を総合読解力及び読解力の<情報の取り出し>、<解釈>、<熟考・評価>の3つの側面に分けて表5でみてみると:

  • わが国の総合読解力の平均得点は522点で、フィンランドの546点とは統計的に有意差※ が認められるが、それ以外の上位の国とは有意差がないため読解力の総合平均得点では上位2位グループに位置するといえる。【※ :平均値間に差があるかどうかを計算し、統計的に有意差がある場合には、平均値に違いがあるが、有意差がない場合には平均値が異なってもほぼ等しいとみなす。】
  • なお、総合読解力得点を統計的な有意差を考慮しないでみてみると、フィンランド、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、アイルランド、韓国、イギリスについで平均得点では8位に位置している。
  • 読解力を1.情報の取り出し、2.解釈、3.熟考・評価の三つの側面に分けて平均得点を見てみると、わが国は、1.情報の取り出し及び2.解釈については1位のフィンランドと有意差があるがそれ以外の国とはないため2位グループに、3.熟考・評価は1位のカナダとも有意差がないため1位グループに位置するといえる。
  • なお、各側面の得点を統計的な有意差を考慮しないでみてみると、わが国は1.情報の取り出しは6位、2.解釈は8位、3.評価は5位である。
  • 日本は上位25パーセントに位置する生徒の総合読解力得点は582点(OECD平均は569点)、下位25パーセントに位置する生徒の得点が471点(OECD平均は433点)で、その差は111点(OECD平均の差は136点)で上位グループと下位グループの差が小さい。
表5:読解力の平均得点の国際比較
   総合読解力 得点 情報の取出し 得点 解 釈 得点 熟考・評価 得点
1 フィンランド 546 フィンランド 556 フィンランド 555 カナダ 542
2 カナダ 534 オーストラリア 536 カナダ 532 イギリス 539
3 ニュージーランド 529 ニュージーランド 535 オーストラリア 527 アイルランド 533
4 オーストラリア 528 カナダ 530 アイルランド 526 フィンランド 533
5 アイルランド 527 韓国 530 ニュージーランド 526 日本 530
6 韓国 525 日本 526 韓国 525 ニュージーランド 529
7 イギリス 523 アイルランド 524 スウェーデン 522 オーストラリア 526
8 日本 522 イギリス 523 日本 518 韓国 526
9 スウェーデン 516 スウェーデン 516 アイスランド 514 オーストリア 512
10 オーストリア 507 フランス 515 イギリス 514 スウェーデン 510
11 ベルギー 507 ベルギー 515 ベルギー 512 アメリカ 507
12 アイスランド 507 ノルウェー 505 オーストリア 508 ノルウェー 506
13 ノルウェー 505 オーストリア 502 フランス 506 スペイン 506
14 フランス 505 アイスランド 500 ノルウェー 505 アイスランド 501
15 アメリカ 504 アメリカ 499 アメリカ 505 デンマーク 500
16 デンマーク 497 スイス 498 チェコ 500 ベルギー 497
17 スイス 494 デンマーク 498 スイス 496 フランス 496
18 スペイン 493 リヒテンシュタイン 492 デンマーク 494 ギリシャ 495
19 チェコ 492 イタリア 488 スペイン 491 スイス 488
20 イタリア 487 スペイン 483 イタリア 489 チェコ 485
21 ドイツ 484 ドイツ 483 ドイツ 488 イタリア 483
22 リヒテンシュタイン 483 チェコ 481 リヒテンシュタイン 484 ハンガリー 481
23 ハンガリー 480 ハンガリー 478 ポーランド 482 ポルトガル 480
24 ポーランド 479 ポーランド 475 ハンガリー 480 ドイツ 478
25 ギリシャ 474 ポルトガル 455 ギリシャ 475 ポーランド 477
26 ポルトガル 470 ロシア 451 ポルトガル 473 リヒテンシュタイン 468
27 ロシア 462 ラトビア 451 ロシア 468 ラトビア 458
28 ラトビア 458 ギリシャ 450 ラトビア 459 ロシア 455
29 ルクセンブルグ゛ 441 ルクセンブルグ゛ 433 ルクセンブルグ 446 メキシコ 446
30 メキシコ 422 メキシコ 402 メキシコ 419 ルクセンブルグ 442
31 ブラジル 396 ブラジル 365 ブラジル 400 ブラジル 417
   (日本は2位グループ) (日本は2位グループ) (日本は2位グループ) (日本は1位グループ)

(3)読解力得点の男女差

 読解力得点を男女別にみてみると:

  • わが国の生徒の総合読解力は、男子は507点、女子は537点と女子のほうが男子よりも30点高い。(OECD平均では男子が485点、女子が514点で差が29点)。同様に、読解力の、情報の取り出しでは27点、解釈では25点、熟考・評価では42点、それぞれ女子のほうが高い。
  • 読解力については全ての参加国で女子のほうが得点が高く、これは総合読解力及び三つの各側面すべてについていえる。フィンランドは総合読解力では1位であるが、男女差は51点とOECD加盟国の中では最も差が大きい。

(4)生徒の背景と到達度

  • わが国の生徒は、「毎日趣味として読書をしているか」という質問に対し、55パーセントの生徒が趣味で読書をしないと回答しており、OECD平均の32パーセントよりも多く、参加国の中で最も高い割合を示している。しかし、趣味で読書をしないと回答をした者の総合読解力得点は514点(OECD平均は481点)で参加国の中では一番高い。
  • 「趣味で読書をすることはない」と回答した生徒と、「毎日1時間以上2時間未満読書をする」と回答した生徒の総合読解力の得点差は、わが国が27点であるのに対し、オーストラリアは92点、ドイツ84点、フィンランド79点、カナダ77点、ニュージーランド76点と、日本以外の国は、読書をする生徒とそうでない生徒の間の得点差が大きい。
  • 生徒の読書への関心の高さや態度を指標化した「読書への取り組み」指標によれば、わが国の生徒は読書に関して比較的好ましい関心や態度を持っている。

2.数学的リテラシー及び科学的リテラシーの結果

(1)数学的リテラシー

 数学的リテラシーとは、「数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、職業生活、友人や家族や親族との社会生活、建設的で関心を持った思慮深い市民としての生活において確実な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力」である。

 数学的リテラシー得点を表6でみてみると:

  • l数学的リテラシー得点は、わが国は557点と参加国中で最も高い。以下、韓国、ニュージーランド、フィンランド、オーストラリアと続いている。ただしわが国の得点と韓国、ニュージーランドの得点とには統計的な有意差はない。

 なお、以下のことがいえる:

  • 各国内での数学的リテラシー得点の分布で、その国の上位5パーセントに位置する生徒の得点が最も高い国はニュージーランドであり、わが国はニュージーランドに次いで高い。一方、上位10パーセント、上位25パーセント、下位25パーセント、下位10パーセント、下位5パーセントに位置する生徒の得点はわが国がいずれも一番高い。
  • l各国内での数学的リテラシー得点が高い生徒、低い生徒の割合については、600点以上が最も多い国はわが国であり、一方、400点より低い生徒の割合が最も少ない国はわが国と韓国とフィンランドである。
  • l数学的リテラシー得点の男女差については、31か国中14か国は統計的にも有意差があり、男子の方が女子より高い。わが国は男子が女子より8点高いが、統計的な有意差はない。
表6:数学的リテラシー及び科学的リテラシーの平均得点の国際比較
   数学的リテラシー 科学的リテラシー
1 日本 557点 韓国 552点
2 韓国 547 日本 550
3 ニュージーランド 537 フィンランド 538
4 フィンランド 536 イギリス 532
5 オーストラリア 533 カナダ 529
6 カナダ 533 ニュージーランド 528
7 スイス 529 オーストラリア 528
8 イギリス 529 オーストリア 519
9 ベルギー 520 アイルランド 513
10 フランス 517 スウェーデン 512
11 オーストリア 515 チェコ 511
12 デンマーク 514 フランス 500
13 アイスランド 514 ノルウェー 500
14 リヒテンシュタイン 514 アメリカ 499
15 スウェーデン 510 ハンガリー 496
16 アイルランド 503 アイスランド 496
17 ノルウェー 499 ベルギー 496
18 チェコ 498 スイス 496
19 アメリカ 493 スペイン 491
20 ドイツ 490 ドイツ 487
21 ハンガリー 488 ポーランド 483
22 ロシア 478 デンマーク 481
23 スペイン 476 イタリア 478
24 ポーランド 470 リヒテンシュタイン 476
25 ラトビア 463 ギリシャ 461
26 イタリア 457 ロシア 460
27 ポルトガル 454 ラトビア 460
28 ギリシャ 447 ポルトガル 459
29 ルクセンブルグ 446 ルクセンブルグ 443
30 メキシコ 387 メキシコ 422
31 ブラジル 334 ブラジル 375

(2)科学的リテラシー

 科学的リテラシーとは、「自然界および人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意志決定するために、科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導きだす能力」である。

 科学的リテラシー得点を前掲の表6でみてみると:

  • 科学的リテラシー得点は、わが国は550点で、韓国の552点に次いで平均得点が高い。しかし、わが国の得点と韓国の得点とは統計的に有意差がないためトップグループであるといえる。
  • OECD平均500点以上の国は、韓国、日本、フィンランド、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、オーストリア、アイルランド、スウェーデン、チェコの11か国である。

 なお、以下のことがいえる:

  • 各国内の科学的リテラシー得点の分布で、その国の上位5パーセントに位置する者の得点が最も高い国は日本で688点である。以下、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、韓国が上位を占めている。
  • わが国は、上位10パーセント及び上位25パーセントに位置する者の得点も、最も高い。しかし、下位25パーセント、下位10パーセント、下位5パーセントに位置する者の得点は韓国に次いでいずれも第2位である。
  • 科学的リテラシー得点の男女差については、男女差の最も大きい国は韓国で、男子の方が女子より19点高い。わが国は女子が554点に対して男子が547点で、女子が7点高いが、統計的には有意差はない。

3.学習の背景

 学校質問紙、生徒質問紙及びテスト問題の結果から以下のことが明らかとなった:

  • 生徒に起因した学級雰囲気指標と教師に起因した学級雰囲気指標は、主要国の中では韓国が最も高く次いで日本である。両国の学校長は、生徒も教師も肯定的・良好な学級雰囲気をもっていると評価していることが明らかとなった。
  • 学校長の評価による教師のモラール指標でみてみると、主要国の中ではニュージーランド、アイルランドが高く次いで日本で、これらの国の教師のモラールは高いと評価されていることが明らかとなった。
  • 「家庭の物質的豊かさ」を示す指標値の高い生徒は、そうでない生徒に較べ、多くの国で高い読解力を示す傾向にあるが、わが国では、そのような傾向はみられない。
  • わが国では、生徒が良好な「国語授業の雰囲気」であると感じる頻度指標が、国際的に高い水準にある。また、「国語授業の雰囲気」が良いと感じる頻度の多い生徒は、そうでない生徒に較べて、高い読解力を示す傾向にある。
  • わが国では、生徒が国語や数学、理科について「宿題や自分の勉強をする時間」の指標値が、参加国の中で最低であり、家庭で勉強する時間が短い。なお、「宿題や自分の勉強をする時間」の指標値が高い生徒は、そうでない生徒に較べて、各国とも高い読解力を示す傾向にある。
  • 学校を欠席したり、サボったり、遅刻したりした回数の比較結果から、国際的にみればわが国の生徒の授業への出席状況は良好であることがわかる。
  • わが国では、生徒の読解力と生徒の社会経済文化的背景との関連は弱い。一方、オーストラリアやニュージーランド、アメリカ、イギリスなどでは、学校に在籍する生徒の全体的な社会経済文化的背景が、その学校の生徒の読解力の全体的な状況と密接に関連している。
  • OECDの公表している経済指標値(購買力平価PPPを元にした国民一人当たりの国内総生産GDP per capita)から生徒の学習到達度を予測した場合、経済指標値の上昇に伴ってゆるやかに学習到達度が向上する関係がみられる。ただし、国によってばらつきがあり、わが国や韓国、フィンランドなどでは、その予測値より高い学習到達度を示している。

お問合せ先

生涯学習政策局調査企画課

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