本審議会において、今後の教科書の著作・編集及び教科書検定に求められるものを「教科書改善に当たっての基本的な方向性」として、次の六つの項目に整理し、これを踏まえ、「教科書改善の具体的方策」及び「検定手続き改善の具体的方策」を提示。
◇ 教科書が、知・徳・体の調和がとれ、生涯にわたって自己実現を目指す自立した人間、公共の精神を尊び、国家・社会の形成に主体的に参画する国民、及び我が国の伝統と文化を基盤として国際社会を生きる日本人の育成を目指す教育基本法に示す教育の目標並びに学校教育法及び学習指導要領に示す目標を達成するための主たる教材であることを検定基準上明記する。
◇ 教育基本法に示す教育の目的・目標、学校教育法に示す義務教育の目標に一致していることを検定基準上明確化する。(教育基本法第1条、同法第2条、同法第5条、学校教育法第21条)
◇ 学習指導要領総則に示す教育課程編成の一般方針や、各教科の目標・内容等に一致していることを検定基準上明確化する。
◇ 検定基準の各教科共通の条件の分類について、審査の観点をわかりやすくするよう規定を整理。
☆ 上記の基準見直しに即して、検定申請時の添付書類を整備(学習指導要領との対照に加え、教育基本法等の目的・目標との対照も添付書類とする)。
◇ 「発展的な学習内容」について、個々の児童生徒の理解に応じたきめ細やかな指導が充実するよう、現行の検定基準における記述上の例外的な扱い(「本文以外の図書の内容」「分量は適切であること(義務1割程度、高校2割程度を上限)」など)を見直す。
ただし、学習指導要領の総則や各教科の目標や内容の趣旨を逸脱せず、適切な関連を有していることが必要。
◇ 「補充的な学習」「繰り返し学習」等については、例えば小学校算数の学習内容を中学校数学においても取り上げることなどにより記述内容の充実が図られるよう、「程度が低過ぎるところはないこと」「他の教科の内容と不必要に重複しているところはないこと」という、抑制的に働く側面がある規定を見直す。
◇ 他教科の関連する内容を取り入れながら、実生活・実社会と関連付けられるような記述や話題・題材の工夫・充実が図られるよう、「他の教科・内容と不必要に重複しているところはないこと」という規定を見直す。
◇ 教科書発行者の創意工夫により記述の充実が図られるよう、図書の内容について「厳選されて」いることを求める規定を見直す。
◇ 漢字の指導が充実するよう、小学校の国語科の教科書における漢字の扱いに関して「当該学年の配当漢字以外を使用できる場合について固有名詞などに限定する規定」を見直し、振り仮名を付すなど必要な配慮をした上で、当該学年の配当漢字以外も使用できるよう検定基準上明確化する。また、国語科以外の教科においても国語に準じた扱いができるよう、検定基準を見直す。
◇ 学習指導要領に示された教材選定に当たっての留意事項に基づき、国語や英語についての題材の充実が図られるよう検定基準上明確化する。
◇ 「話題や題材の選択・扱いの調和に関する規定」、「事柄や見解の取扱いに配慮等を求めた規定」について、教育基本法において示された教育の目的・目標等や学校教育法に示された義務教育の目標を達成するため、教科書記述がより一層公正・中立でバランスのとれたものとなるよう、著者の一面的な見解を断定的に記述していたり、定説とされる学説が確定していない場合に複数ある学説の中の一つの説のみを断定的に記述していたりするなどの場合に当該規定を適用する。
◇ 政治・宗教の扱いに関する現行の規定について、教育基本法第14条(政治教育)及び第15条(宗教教育)に照らし、適切かつ公正な扱いがなされるよう検定基準上明確化する。
◇ 「特定の個人・団体などの権利・利益を侵害するおそれのあるところはないことを求める規定」について、「特定の企業・商品などの宣伝・非難に関する規定」との整合性に留意し、特定の個人・団体の活動に関する記述が、政治的・宗教的な観点から公正な扱いとなるよう、規定を整備する。
◇ 「引用する資料等は信頼性のあるものが選択されることを求める規定」について、より一層公正な扱いで適切な資料等が選択されるよう検定基準を見直す。
◇ 社会科の「未確定な時事的事象を断定的に記述しているところはないことを求める規定」について、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げないことについても検定基準上明確化する。
◇ 現行の検定基準における正確性に関する規定について、客観的に明白な誤記・誤植等を区分して規定するよう見直すとともに、当該誤記・誤植等については、審議会での審議において、他の不正確な内容等にかかる審議と分けて審議を行い、専門的な審議が十分に確保できるよう検定手続きを見直す。また、客観的に明白な誤記・誤植等と判断された箇所数を検定手続き終了後、公表する。
☆ 著作・編集段階における校正体制の強化を図る観点から、校正体制・校正回数等を明示した書類を検定申請の添付書類に追加する。
☆ 責任ある教科書の著作・編集を求めるため、著作者・監修者の具体的な担当箇所・役割等を教科書上においても明記することを発行者に促す。
◇ 学習指導要領「解説」の活用など学習指導要領の趣旨等を適切に反映した教科書の著作・編集。
◇ 発行者がこれまで以上に自覚を持ち、徹底した校正を行うことができる体制の整備。
◇ 挿絵・イラスト・マンガ・写真等の使用に際しては、児童生徒が学習する上で効果があるか等について十分考慮。
◇ 教科書の記述内容の充実はもとより、全体的な構成、レイアウト等の教科書編集上に必要な配慮・工夫。
◇ 文部科学省において、教科書発行者の配慮・工夫を促すため、必要な改善モデル事業や調査研究を行う。
◇ 教科書採択においては、「教科書改善に当たっての基本的な方向性」で示された内容を参考にし、十分かつ綿密な調査研究の下、適切な教科書を採択する必要。また、文部科学省としても採択の一層の改善方策について、更に検討を進める必要。
<検定における審査過程の一層の公開>
◇ 現在は公開対象としていない、教科書調査官が作成する検定意見書の原案である調査意見書や、審議会に付議する判定案等の資料について、検定審査終了後に実施する検定結果の公開事業において、新たに公開対象とすることとし、規則上も明確化。
【教科書検定の流れ】
<部会、小委員会における議事の概要の作成・公表>
◇ 部会や小委員会について、開催日、出席委員、付議事項、決定事項、議事の概略を記載した議事概要を作成し、検定審査終了後に公表。
なお、静ひつな環境の下、専門的・学術的に審議を行い、自由闊達な議論を通して合意形成を図る必要があることから、個々の意見のやりとりを公表し、作成することや、会議自体を公開することは行わない。
<委員分属の公表>
◇ 公表した場合に、静ひつな環境の下、委員が自由闊達な議論を通して合意形成を図るという審議を確保する上で、支障が生じるのではないかという意見もあったが、検定に対する信頼性をより一層高める観点も考慮し、審議会の各委員が、どの部会や小委員会に属しているのか、検定審査終了後に公表。
<審査過程における申請図書等の適切な情報管理>
◇ 申請図書等の情報が検定審査終了前に流出し、調査審議に支障があると認めた場合には、運営規則(「会長は、調査審議に支障があると認めるときは、調査審議の一時停止その他必要な措置を講ずることができる。」)に従い、部会や小委員会の判断に基づき、一時停止等の措置をとることについて運用上明確化。
◇ 申請者は検定済図書の訂正申請の内容についても、他の者の知るところとならないよう、適切な情報管理を行うことを規定上明確化。
<より専門的できめ細やかな審査を行う場合の審議の方法>
◇ 特に慎重な判断を要する事項(例えば、「高度な専門性を要する新たな記述の審査」、「学説が複数ある記述に意見を付す審査」など)について、部会や小委員会の判断に基づき、専門委員の任命や、外部専門家からの意見聴取等を行うなど、より専門的できめ細やかな審議を行うよう審査の運用改善を図る。
<検定意見の伝達方法等>
◇ 検定意見の趣旨や理由、背景にある考え方等が、申請者に対しできる限り正確に伝えられるよう、特に慎重な判断を要する事項などは、必要に応じ検定意見書をさらに分かりやすく記述。
また、検定意見の通知から時間的余裕をもって補足説明の場を設けるなど、より丁寧に検定意見が伝達されるよう運用改善を図る。
<文部科学大臣と審議会の関係及び教科書調査官の役割>
◇ 文部科学大臣と審議会との関係については、審議会における教育的・学術的に公正・中立な審議の結果に基づいて、文部科学大臣が決定を行うという教科書検定制度の基本を十分認識し、引き続き以下のとおり対応。
・ 申請図書について、文部科学大臣が審議会に諮問し、審議会における調査審議を経て、審議会からの報告に基づき検定意見を付す
・ 検定意見に従った修正案について、審議会の答申に基づき検定の決定をする
◇ 審議会の調査審議における教科書調査官の具体的な役割・職務について規則上明確化。
<審議会委員の役割・選任>
◇ 審議会委員の選任については、引き続き、各年度において検定が実施される学校種なども勘案しつつ、各分野ごとのバランスにも配慮しながら、学識経験に優れた候補者の中から委員を選任。
その際、指導や教科書の使用実態に詳しい学校現場の経験豊かな人材の活用についても引き続き配慮。
<教科書調査官の選任及び職歴等の公表等>
◇ 教科書調査官の選任については、高度に専門的な学識を有することや、視野が広く初等中等教育に関し理解と見識を有すること、関係法令に精通していることなどの観点から、能力・適正を総合的に判断して、職務に見合った適切な人材を確保。
現行の「教科書調査官選考基準」について、より幅広く適材を確保する観点から必要な見直しを行う。
◇ 行政の適正・公正な遂行に対する国民の信頼を得るため、教科書調査官の氏名や職歴などの情報を公表。
電話番号:03-5253-4111(体表)(内線2396)