はじめに

○ 本年2月28日、文部科学大臣から、本審議会に対して、「教科書検定手続きの改善方策」及び「新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善方策」の二つの事項について、審議要請があった。

○ 教科書検定手続きについては、これまでも、適時、見直しを図ってきたところであるが、平成18年度の高等学校日本史教科書の検定の一連の過程において、いわゆる沖縄戦に係る記述に関し、審議の透明性の向上や専門的見地からのきめ細やかな審議の必要性など、様々な事項が指摘された。
  審議要請に当たって文部科学大臣から、「教科書検定は、静かな環境の下で、専門家である委員の知見によって、公平中立に、専門的・学術的な審議を経て申請図書の合否の決定がなされることが重要である一方で、教科書検定の信頼性を高めるためには、検定手続きの透明性を可能な限り向上させることが求められる」という考えが示された。教科書検定の在り方に疑念や不信を抱かれないよう、教科書検定手続きについて、一層の透明化や専門的で質の高い審議の確保など、様々な角度から改善方策を検討することが求められる。

○ 新しい教育課程の実施に関しては、平成18年12月、教育基本法が制定から60年ぶりに改正され、新しい時代の教育の基本理念が明示された。また、平成19年6月には、この教育基本法改正を受けて学校教育法が改正され、新たに義務教育の目標が規定されるとともに、各学校段階の目的・目標規定についても改正が行われた。さらに、平成20年3月には、これらの法改正等を踏まえ、基礎的・基本的な知識・技能の習得を基盤とした、思考力・判断力・表現力等の育成、学習意欲の向上や学習習慣の確立、豊かな心や健やかな体を育成するための指導の充実等を基本的な考え方として、小・中学校の学習指導要領が改訂され、小学校では平成23年度から、中学校では平成24年度から新しい教育課程が実施される。

○ 教育基本法等に示される教育の理念・目標や学習指導要領の内容等は、教科書に記述されることによって、初めて目に見える形で実現されるものである。新しい教育課程の実現のため、教育基本法の改正や新しい学習指導要領を的確に反映し、新しい教科書観に立った、内容豊かで読み応えのある、質・量ともに格段に充実した教科書に向けて改善方策の検討が求められる。

○ 本審議会においては審議要請を受け、総括部会の下に各審議要請事項ごとにワーキンググループを設置し、両ワーキンググループとも12月11日までに10回の会議を開催し、検討を行ってきた。その間、社団法人教科書協会、全国連合小学校長会、全日本中学校長協会、社団法人日本PTA全国協議会等の関係団体からヒアリングや文書による意見聴取を行い、その際示された意見等も参考にしたところである。

○ 二つのワーキンググループでは、それぞれ、教科書検定手続きの改善方策と新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善方策について検討し、共通に扱うべき事項は二つのワーキンググループ合同で検討してきた。二つのワーキンググループにおいて検討を行うに当たって、まず、新しい教育課程の実施に向けた教科書の著作・編集や教科書検定が行われていく中で、新たな教科書がより一層児童生徒にとって理解しやすく、教師にとって教えやすいものとなるようにという観点から、今後の教科書に求められる「教科書改善に当たっての基本的な方向性」を整理した。
 その上で、前述の「基本的な方向性」を踏まえた、著作・編集、検定等の各段階における具体的な改善方策について、
・ 教科書改善の具体的方策(教科書検定審査の基準である教科用図書検定基準等の改善や教科書発行者における著作・編集の在り方の改善等)、
・ 教科書検定手続き改善の具体的方策
に分けて、提言を行うこととした。

○ この度、その検討結果が、「教科書の改善について~教科書の質・量両面での充実と教科書検定手続きの透明化~」としてまとまったので、文部科学大臣に対して報告を行うものである。

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