今回の事案に関わる高等学校学習指導要領「現代の国語」の規定の趣旨

○「現代の国語」の内容の〔思考力、判断力、表現力等〕では、
・報告や連絡、案内などのために、資料に基づいて必要な事柄を話したり、それらを聞いて、質問したり批評したりする活動
・論理的な文章や実用的な文章を読み、本文や資料を引用しながら、自分の意見や考えを論述する活動
・論理的な文章や実用的な文章を読み、その内容や形式について、引用や要約などをしながら論述したり批評したりする活動
といった言語活動を通じて、実社会における国語による諸活動に必要な資質・能力を育成することとしている。

○ 「読むこと」の領域においては、例えば、
・目的に応じて、文章や図表などに含まれている情報を相互に関係付けながら、内容や書き手の意図を解釈したり、文章の構成や論理の展開などについて評価したりするとともに、自分の考えを深めること
といった事項について、〔知識及び技能〕の
・主張と論拠など情報と情報との関係について理解すること
・情報の妥当性や信頼性の吟味の仕方について理解を深め使うこと
などの事項と関連させながら指導することとし、その教材は内容の取扱いにおいて、現代の社会生活に必要とされる論理的な文章及び実用的な文章とすることとしている。

○ この「論理的な文章及び実用的な文章」に関しては、高等学校学習指導要領解説国語編において、「論理的な文章も実用的な文章も、小説、物語、詩、短歌、俳句などの文学的な文章を除いた文章である」としている(別添参照)。

(別添)
○高等学校学習指導要領(平成30年告示)第2章第1節第2款(抜粋)
第1 現代の国語
3 内容の取扱い
(4) 教材については,次の事項に留意するものとする。
ア 内容の〔思考力,判断力,表現力等〕の「C読むこと」の教材は,現代の社会生活に必要とされる論理的な文章及び実用的な文章とすること。
イ 内容の〔思考力,判断力,表現力等〕の「A話すこと・聞くこと」,「B書くこと」及び「C読むこと」のそれぞれの(2)に掲げる言語活動が十分行われるよう教材を選定すること。

○高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説国語編P.106(抜粋)

 論理的な文章とは,説明文,論説文や解説文,評論文,意見文や批評文などのことである。現代の社会生活に必要とされる論理的な文章とは,これらのうち,「言語文化」で扱うような,これまで読み継がれてきた文化的な価値の高い文章ではなく,主として,現代の社会生活に関するテーマを取り上げていたり,現代の社会生活に必要な論理の展開が工夫されていたりするものなどを指している。
 一方,実用的な文章とは,一般的には,実社会において,具体的な何かの目的やねらいを達するために書かれた文章のことであり,新聞や広報誌など報道や広報の文章,案内,紹介,連絡,依頼などの文章や手紙のほか,会議や裁判などの記録,報告書,説明書,企画書,提案書などの実務的な文章,法令文,キャッチフレーズ,宣伝の文章などがある。また,インターネット上の様々な文章や電子メールの多くも,実務的な文章の一種と考えることができる。
 現代の社会生活における実用的な文章には,図表や写真などを伴う文章が多いことから,指導のねらいに応じて,これらを教材として適宜取り上げることが必要である。図表や写真などを含むものとは,異なる形式で書かれた文章が組み合わされているものや,概念図や様式図,地図,表,グラフなどの様々な種類の図表や写真を伴う文章などが挙げられる。これらの関係は,断片的な情報が互いに内容を補完し合っている場合,文章が図表などの解説になっている場合などがある。なお,取り上げる場合には,表やグラフの読み取りが学習の中心となるなど,他教科等において行うべき指導とならないよう留意する必要がある。
 論理的な文章も実用的な文章も,小説,物語,詩,短歌,俳句などの文学的な文章を除いた文章である。
読むことの教材については,単に文章や作品といった意味にとどめて読み取りに重点を置きすぎることなく,生徒自らが見通しをもって主体的に学習に取り組むことができるよう,具体的な学習の手立てや方向性も併せて示したものとして考えていくことが大切である。