別紙2 『「「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針 報告書」の改訂について(通知)』の補足について

事務連絡
平成19年3月30日

各国立大学法人財務担当部課長 殿

文部科学省高等教育局
国立大学法人支援課

1.はじめに

1.改訂の背景と理由

 本稿は、『「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針 報告書』(平成15年7月10日 日本公認会計士協会 文部科学省)に係る平成19年3月1日改訂のうち、特に附属病院セグメントの取扱いに関し補足説明を行うものである。
 国立大学法人は、業務内容が多岐にわたる場合、説明責任担保の観点から、業務ごとのセグメントに係る財務情報を開示することとされている。特に、附属病院セグメントについて、各大学法人及び政府その他の関係者において、積極的な利活用に向け試行している状況にある。
 その中で、附属病院セグメント情報の一部について、附属病院の財務状況が的確には反映されておらず、附属病院間における比較可能性の確保がなされていないため必要十分なものとはなっていないとの指摘を受けている。
 本来、セグメント情報は、大学法人の一部の業務に関する財務状況を開示する以上の意味は有さないものであるが、そこで開示する情報は、説明責任担保のためのみに開示しさえすればよいものではなく、個別の大学法人、また、大学法人全体の運営状況の改善に資するよう利活用されるべきものであり、大きくは社会政策に係る意思決定にも活用されうる公共財としての位置付けを担うものと考えられる。
 指摘にもあるように、現在の附属病院セグメント情報やその前提の各大学法人における情報管理状況では、必要な水準の情報が得られてはいないため、当該情報やその関連情報によっては、各大学法人や文部科学省における利活用に支障をきたしている状況にある。
 こうした状況を改善するため、附属病院セグメントの取扱いを改訂した。

2.改訂の概要

 先ず、附属病院セグメント情報が附属病院の財務状況を適切に反映するよう、附属病院と一体として業務を実施している医(歯)学部に区分する。その上で、附属病院セグメント情報における物件費の開示内容を詳細化し、取扱いが区々となっていた運営費交付金収益及び帰属資産の取扱いを明確化することとした。
 加えて、平成19年度決算より人件費について取扱いを改訂し、医(歯)学部臨床系講座帰属教員等の人件費について、会計情報としての合理性を備えつつ勤務状況を的確に反映させることにより、附属病院セグメント情報において、附属病院の財務状況を適切に表示することとしている。
 なお、本稿は、各大学法人の学内組織や予算のあり方について射程距離におくものではなく、以下における概念整理等は基本的に財務情報としてのものである。

2.基本事項の整理

1.附属病院と医(歯)学部の業務範囲

 附属病院の財務状況を適切に表示するため、先ず、附属病院と医(歯)学部の業務範囲を明確化した。大学法人が税金その他の財源により運営されていることに着目すると、事業と財源とを対応させる形で表示することが説明責任を担保する観点から適切と考えられる。この考え方を敷衍すると、医(歯)学部の業務は、授業料及び運営費交付金により負担されることが適当となる。附属病院の業務は診療収入により負担されることを基礎としつつ、教育、研究その他の政策の実施に必要な経費は運営費交付金により負担されることが適当となる。
 この考え方によると、附属病院において行われている業務のうち、医(歯)学部における教育研究活動とその延長と考えられる業務については、医(歯)学部に区分することが適当と考えられる。
 よって、附属病院の業務範囲は、診療収入により負担されるべき業務を診療業務とすることを基礎に、1.診療業務、2.診療業務を基礎として行われる教育業務、3.臨床試験(治験)、病理部やプロジェクト研究等の附属病院において実施することが組織として意思決定され、組織又はプロジェクトとして実施される研究業務、及び4.附属病院における管理業務と定義することとした。
 また、医(歯)学部の業務範囲は、運営費交付金及び授業料により負担されるべき業務を基礎に、(ア)正規学生に対する正課カリキュラム等の実施、(イ)附属病院における研究以外の研究、(ウ)医(歯)学部における管理業務と定義することとした。

2.業務費用・収益等の計上範囲

 業務費用は、附属病院の業務の実施に必要な経費を計上する。当然のこととして、物件費及び人件費の計上範囲は一致することとなる。
 業務収益は、附属病院収益、特定運営費交付金収益等の業務実施に伴う固有の収益に加え、標準運営費交付金収益、附属病院運営費交付金収益、寄附金収益などの附属病院の業務の実施に必要な経費として大学法人が配分した共通財源による収益を計上する。
 帰属資産は、附属病院の業務の実施に必要となる資産の額を計上する。

3.個別事項の補足

1.物件費

(1)附属病院における物件費

 附属病院における診療について、臨床研究として実施される場合や、研修医を伴う回診など教育研究診療が一体として実施されているが、教育研究診療の実施割合を客観的に把握することが困難であるため、診療報酬の獲得が予定されるか否かにより先取りする形で診療を定義し、その残余について、教育・研究等として定義する取扱いとした。この定義は、あくまで財務情報としての区分であることをご理解いただきたい。
 診療経費は、診療報酬の獲得が予定される行為に要する経費とする。
 教育経費は、診療報酬の獲得が予定される行為に要する経費以外の経費のうち、学生(対価として授業料を負担する者)以外に対し行われる教育に要する経費とする。例えば、卒後臨床研修、専門医研修及び附属病院において企画立案管理される公開講座である。一般診療機関において通常行われる職員研修(常勤看護師を対象とした研修会等)は、附属病院収益により負担されるべき業務とも考えられるため、ここでいう教育経費の対象とはせず、診療経費に区分する。
 研究経費は、診療報酬の獲得が予定される行為に要する経費以外の経費のうち、組織又はプロジェクトとして実施される研究に要する経費とする。例えば、学内予算により病理部への帰属教員に配分した研究費が病理部で使用される場合は研究経費となる。
 一般管理費は、附属病院の管理業務を行う医事課・管理課・総務課等のうち、診療等の特定の目的に直接関係する業務を行なう医事課等を除くもの(管理課・総務課等)に要する経費、並びに附属病院の業務経費のうち、教育、研究又は診療以外の業務に要する経費とする。共用部分の維持管理等に要する経費は、他学部等の取扱いと同様となる。

附属病院に計上する物件費の区分(例)
  • 教育経費
    • 卒後臨床研修
    • 専門医研修
    • 公開講座(附属病院が主催者であるもの)
    • 看護、薬学、理学・作業療法士等(資格取得予定者を含む)に対する研修(自大学の附属学校所属学生、OJTを除く)で、受託事業以外のもの
    • 特別教育研究経費(教育)
  • 研究経費
    • 病理部における臨床研究
    • 特別教育研究経費(研究)
    • 学用患者(診療報酬の獲得が予定される行為に要する経費を除く)
    • 高度先端医療の研究・開発経費
    • 治験センターやプロジェクト研究等附属病院において組織的に意思決定された研究
  • 一般管理費
    • 管理課及び総務課で行われている管理業務経費
    • 病院運営会議の運営に要する経費
    • 看護師等確保経費
    • 院内保育事業費

(2)医(歯)学部における物件費

 教育経費は、正規学生に対する正課カリキュラム等の実施に要する経費とする。
 研究経費は、附属病院における研究以外の研究に要する経費する。
 一般管理費は、医(歯)学部の管理業務等に要する経費とする。

(3)具体的な取扱い

 物件費は、基本的に、附属病院と医(歯)学部の業務範囲と学内予算を対応させて計上する(別紙1)。その際、通常、附属病院において行われる教育研究活動に要する経費が医(歯)学部に予算計上されている場合は附属病院へ計上替えするなど、必要に応じて決算において補正を行なう。

2.運営費交付金収益

(1)事業活動と財源の整理

 運営費交付金収益の取扱いに先立って、外部資金を除く財源面から基本的な考え方を整理すると、附属病院の業務は診療収入により負担されることを基礎としつつ、教育、研究その他の政策の実施に必要な経費は運営費交付金により負担される財源構造とされているが、例えば、学部等に箇所付けられた運営費交付金を附属病院の財源不足の補てんに充て、大学法人として必要な事業活動が行えない状況にないかなどを確認する必要があると考えられる。
 この考えによると、特定運営費交付金で附属病院に箇所付けられたものなど、附属病院において使用されると考えられるものを計上し、そのうえで、附属病院運営費交付金、及び標準運営費交付金については、学内予算において人件費や学内プロジェクト等として附属病院に箇所付けられた相当額を計上することとなる。

(2)具体的な取扱い

 学内予算において附属病院に箇所付けられた運営費交付金の収益化額を計上する。当該運営費交付金が、下表「附属病院において使用されると考えられる運営費交付金」と異なる場合は、その差異の理由及び金額について注記することにより、附属病院間の比較可能性を担保する。
 原則として第3四半期までの補正予算によることとするが、人件費相当額についてはこの限りではない。
 なお、平成18年度については、人件費を帰属主義にて計上することから、附属病院以外に帰属する人件費相当の運営費交付金については、附属病院には計上せず、注記の対象とならないことにご留意いただきたい。

附属病院において使用されると考えられる運営費交付金(標準例)
  • 附属病院運営費交付金
  • 教育研究診療経費(特定運営費交付金)
  • 特別教育研究経費(特定運営費交付金)
    • 人件費(卒後臨床研修必修化に伴う研修経費、小児医療等特別支援経費、専門医研修対応経費)
    • 設備費(医療機械設備関係)
    • その他(「研究推進」等のうち、病院主体事業)
  • 特殊要因経費(特定運営費交付金)
    • 人件費(附属病院における承継職員に対する退職手当)
    • その他(移転費、建物新営設備費のうちの病院建物関連)
  • 標準運営費交付金(人件費相当額)
注記(例)

 附属病院セグメントにおける運営費交付金収益は、附属病院に関し国が予算積算した運営費交付金を収益化した場合の相当額と○○(まるまる)千円差額がありますが、これは、国の予算積算額に加えて、学長裁量経費により附属病院における○○(まるまる)研究プロジェクト経費○○(まるまる)千円、及び前事業年度より繰越して使用する附属病院における承継職員に対する退職手当○○(まるまる)千円を計上したことによるものです。
 附属病院に関し国が予算積算した運営費交付金○○(まるまる)千円のうち、収益化額は○○(まるまる)千円、○○(まるまる)千円は資産の取得であり、その他退職手当の相当額等として次年度へ繰越す額は○○(まるまる)千円です。

3.帰属資産(現金預金)

 現金預金に関する帰属資産の取扱いは、原則、法人共通に計上することとなる。例外的に、附属病院が、本部から独立した予算決算を求められている場合等で、一切の管理責任が附属病院にあると認められる場合は、附属病院に計上することができる取扱いとする。なお、この取扱いは、企業会計原則における取扱いと同一である。

4.人件費

1.人件費の適正管理の必要性と対応方針

 附属病院が将来にわたって教育研究診療活動を必要十分に実施できるよう、業務の持続可能性を担保する必要がある。そのためには、附属病院セグメントにおける所要の経費を把握する必要があり、物件費同様、人件費についても適切に把握する必要がある。
 人件費の把握にあたっては、特に教員の勤務状況を的確に把握したうえで、附属病院と医(歯)学部に区分する必要がある。
 そのためには、客観性等の会計情報としての合理性の確保が必要となることから、その取扱いの考え方について整理する。
 なお、平成18年度については、必要なデータの蓄積が無いため、平成19年度からの適用とする。

2.教員の勤務状況の把握

(1)基本的な考え方

 附属病院セグメントに計上する人件費は勤務状況を反映し、同時に、客観性や検証可能性等の会計情報としての合理性を備えている必要がある。
 したがって、基本的には個人毎に勤務状況を把握することとなるが、客観性等の会計情報としての合理性が確保される範囲内で、より簡便な方法によることも可能である。

(2)把握手段(例)4

 会計情報の基礎データとしての勤務状況の把握にあたっては、総労働時間の概ね7割以上について把握する必要があると考えられる。
 以下に、一般的な把握手段を示す。

タイムレコード

 業務従事時間を記録した各種書類・データに基づく方法(別紙2)。
 各種書類・データ記載の勤務時間が、総労働時間の概ね7割以上に達しない場合、その他の方法により補完する必要が生じる。データ相互間の整合性の確保に留意が必要である。
 なお、医(歯)学部において行われる診療に係るカンファレンス等は、附属病院として区分できるよう、会議等の目的についても可能な範囲で把握しておく必要がある。

タイムレポート

 業務内訳報告書に基づく方法。
 基本的に、自己申告に基づくものであるため、客観性の確保の観点から、その他の書類等との整合性について確認が必要である。
 なお、総労働時間及び帰属と異なるセグメントに係る業務への従事時間の報告により勤務状況を把握することも想定される(別紙3)。

タイムスタディ

 業務従事割合の申告に基づく方法。
 当該申告の合理性が疎明されない限り、会計情報として取扱うことは困難である。

3.具体的な取扱い

 帰属が勤務状況を反映している場合、帰属により計上し、必要に応じ補正するなどの取扱いとなる。
 以下、取扱いの一例を示すが、その他の方法によっても、客観性等の会計情報としての合理性が担保される方法であれば認容される。

具体的な把握方法(例)

  1. 教員人件費
     病院帰属教員のうち、医(歯)学部における勤務がある者については、医(歯)学部の正課カリキュラム、教授会等の会議出席時間等に相当する人件費を医(歯)学部に計上する。医(歯)学部基礎系講座・研究所等帰属教員のうち、病院における勤務がある者は、その時間に相当する人件費を附属病院に計上する。医(歯)学部臨床系講座帰属教員は、教育、診療、研究又は一般管理の区分毎に適宜の手段で把握し、それぞれ附属病院と医(歯)学部に計上する。総労働時間から、把握した時間を除く把握不能時間は、基本的に医(歯)学部に研究として計上する。

    (参考)教員の帰属
    (参考)教員の帰属 医(歯)学部(参考)教員の帰属 附属病院(参考)教員の帰属 その他研究所等
  2. 職員人件費
    帰属が勤務状況を反映している場合、帰属により計上し、必要に応じ補正する。補正を行う場合は、係単位等で行うこととする。
  3. コ・メディカル人件費・看護師人件費
     帰属により計上し、必要に応じ補正する。勤務状況を反映している場合、病院セグメントに全額計上し、医(歯)学部のカリキュラム等により外形的に附属病院の業務以外の業務を実施することが明らかである者について、必要に応じ補正する。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課

財務経営専門官 菅原、財務分析係 山崎、安部田、木谷
電話番号:03-6734-3767(直通)

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。

(高等教育局国立大学法人支援課)