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第3部  新法人の組織体制

   新法人においては、理事長の裁量の下に事業の遂行に必要な組織体制を確立する必要があるが、新法人発足時の組織体制として以下が考えられる。 

  1. 安全確保の体制

       新法人においては、委員会報告書、一連の事故の原因究明状況等を踏まえ、現場責任の確立を基本とし、以下に述べる多面的な改善により万全な安全確保体制を確立する。 

     (1) 運転管理部門の強化 

       動燃における一連の事故に対する反省の一つとして現場の責任ある一貫した指揮命令系統の確立が課題となっていることから、新法人においては、現場責任の確立の観点から、施設を運転・管理する現場の長の安全責任を明確にするとともに、プラント等についてはセンター化し一貫した組織体制に再編する。 

     1)運転管理部門の独立 

       運転管理部門の独立的運営については、プラント内組織として分離可能なものは組織再編し、運転管理部署と研究開発の企画部署が適度な緊張関係を持ちつつ業務を遂行する体制を整備する。また、研究開発それ自体が施設の運転と密接に関連し分離不可能な部署については、運転基準を一層客観的なものにするなどして安全確保を徹底させる。 

     2)民間能力の活用 

       運転管理に民間能力を活用するため、新法人においては、質・量を考慮した民間との相当規模の積極的な人事交流を計画的に実施する。動燃においては、既に原子炉部門等で電力等から人材を受け入れているが、これらを含め、全事業所規模で人事交流を双方向性、受け入れポストの質や処遇に配慮しつつ見直し、規模の拡大を図る。 

     3)職員による責任体制の確立 

       運転管理部門における請負比率の高い部署では、責任の不在が生じる可能性があることから、新法人においては、こうした運転管理部署の職員の比率を高めるとともに、業務協力員制度を参考としつつ新たな制度の導入を図るなど、責任ある運転管理体制を確立する。 

     4)運転・保守要員等の強化 

    • 動燃の原子炉部門における運転要員の当直体制は現在5班3交替制であるが、新法人においては電力会社並みの6班3交替制の確立を目指す。また、他部門は、交替勤務の日数が比較的短いことから、運転形態や教育・訓練を考慮しつつ適切な規模の当直体制を確立する。  
    • 動燃では保守要員について体系だった技術継承のための人員配置や人材育成が必ずしも十分でないことから、新法人においては、体系的に適切な規模の人員確保と質の向上を図る。  

     (2) 安全支援部門の確立 

       施設の安全管理は現場の長が一元的に責任を負うことを基本とするが、動燃においては安全性総点検の取りまとめや一般防災への対応といった施設横断的な業務に関する担当組織が不明確であり安全確保の基盤整備が十分でないことから、新法人においては、こうした支援業務を実施する部門として、全事業所横断的な業務を担当する「安全推進本部(仮称)」と事業所ごとに施設横断的な業務を担当する安全管理部署を設置する。 

     1)安全支援部門の役割 

       安全支援部門においては、一般防災も考慮し、全事業所規模の安全性総点検の取りまとめやフォローアップ、法令に基づく技術基準への適合性の確認等安全管理に関する施設共通的な業務、安全教育の徹底、クロスチェック、安全に関するデータベースの情報管理、危機管理体制の整備等の支援業務を実施する。 

     2)一般防災、事故等に関するデータベースの構築と運用 

       各事業所の安全管理部署は、各施設管理者が整備する施設情報、技術継承等に配慮したマニュアル、事故情報等に関するデータベースとともに、自ら整備する一般安全等共通事項のデータベース等、事業所内データベースの情報を一元的に管理し広く事業所の従業員の利用に供する。また、安全推進本部は、各事業所のデータベースを連携させ全事業所規模の安全情報を一元的に管理・運用する。 

     3)危機管理体制の整備 

    • 新法人においては、現場における危機管理体制の整備を推進するため、事業所横断的な支援組織として安全推進本部に「危機管理推進室(仮称)」を設置し、対応マニュアルの整備、緊急時の動員体制の検討、緊急時の情報伝達のインフラ整備等を推進する。  
    • 各事業所において、24時間の当直制による通報連絡体制を整備するとともに、地域と協調した緊急医療体制の充実を図る。  
    • 事故時対応として、現地対策本部の設置による明確な指揮命令系統の確保等とともに、現場の事故処理が迅速かつ安全に行われるよう遠隔システムの開発等によりハード・ソフト両面から作業員に対する支援を強化する。また、想定しうる事故を現場の責任者が常に自覚し責任を持って対応できるよう、マニュアル等の整備とともに管理職の教育訓練を強化する。  

     (3) 設計管理、設計審査の強化 

       「もんじゅ」事故の教訓として、施設・設備の安全を設計段階から確保することが極めて重要であることから、新法人においては、業務品質保証活動を通じて、設計管理、設計審査等における確認行為を強化する。 

  2. 社会に開かれた体制

       新法人においては、委員会報告書にあるように情報の発信を「組織自らが存在するための条件」として捉え、地元重視を基本とし、国民及び立地地域住民と新法人との双方向の情報交流等を推進するとともに、国際性も考慮した開放性の高い研究開発体制を確立する。 

     (1) 本社移転 

     1)新法人においては、立地地元重視の観点から、本社機能を新法人の主要業務に対応して、その拠点となる東海地区と敦賀地区に移す。 

     2)主たる事務所は茨城県東海村に置く。敦賀市には敦賀本部を置き、本部長には副理事長を充て、「もんじゅ」、「ふげん」の2事業所を責任を持って統括する。また、東京地区に国会、政府等との連絡調整に当たる連絡事務所を置く。 

     (2) 広報・情報公開の強化 

     1)広報の組織体制の強化 

    • 新法人においては、広報、報道、情報公開、地元対応等を一元的に推進するとともに、国民からのフィードバック等双方向に配慮した「情報交流部(仮称)」を設置するとともに、技術系職員の教育・訓練と併せ人文・社会科学系人材の任用を含め、広報に関する人材の育成・強化を図る。  
    • 更に各事業所に広報担当部署を設置し、地元対応を重視した広報体制を確立する。  

     2)情報公開の徹底 

    • 法人としての各種一般情報を着実に公開し、また、経営審議会の審議結果等経営に関する情報を逐次公表するとともに、明確な情報公開指針に基づき積極的な情報公開を展開する。  
    • インターネット等の活用を中心として、情報の内容の充実・平易化、アクセス性の向上等を図り、国民一般に理解されやすい双方向の情報の交流を推進する。  

     (3) 地域社会との共生 

     1)地元住民の意見の反映 

       理事長は、地域住民等の参加による地域フォーラムを開催し、新法人の事業計画等を説明するとともに意見交換を行い、その意見を事業に反映させる。 

     2)地域社会との交流 

    • 常日頃より、懇談会の開催、戸別訪問、オピニオンリーダー等との対話等、草の根的な活動を組織的に実施し、立地地域住民の声を事業所運営等に反映させる。  
    • 地元との一体感を醸成するため、イベント等への事業所としての組織参加とともに職員の積極的参加を奨励する。  
    • 各事業所の「問い合わせ窓口」を制度化し、地域住民からの問い合わせに対する対応を強化する。  

     3)安心感の醸成 

       事業所内の環境モニタリングデータをリアルタイムで通報または表示するシステムを構築し、地域社会の安心感の醸成を図る。 

     (4) 開かれた研究開発体制 

     1)技術移転 

    • 新法人の本来的な目的である核燃料サイクル確立に向けた研究開発の成果が円滑に民間に技術移転されるよう、民間ニーズを的確に把握しコスト意識の定着に配慮しつつプロジェクトの早い段階から民間が参加する仕組みを構築するとともに、委託研究、共同研究を通じ、民間との先行的な開発成果の共有化や人材交流を図る。  
    • また、研究開発の成果については、極力早い段階から可能な範囲で成果を広く公開するとともに、具体的な技術移転計画を策定し、積極的な人的・技術的支援を行う。  

     2)大学及び他の研究開発機関との連携 

    • 核燃料サイクル研究開発の各領域に広い専門分野の人材が均衡よく配置されるべき点を考慮し、新法人においては、大学及び他の研究開発機関の研究者(海外の研究者を含む。)との共同研究、人材の受け入れ等を積極的に推進するため、任期付任用制度等を活用しつつ外部人材をチームリーダーとするプロジェクト研究体制を確立する。  
    • 新法人の所有する施設・設備を広く大学等の一般研究者、技術者に開放し、施設・設備の共用化を図る。  

     3)国際貢献・国際協力 

    • 高速増殖炉、廃炉、廃棄物等の分野における世界の中核的研究拠点化を目指し、積極的に国際協力を推進する。  
    • 国際原子力機関(IAEA)等の多国間枠組や二国間協定の枠組の下で国際共同研究等を推進するとともに、核不拡散・保障措置関連技術を活用し国際的な原子力の平和利用に貢献する。  
    • 安全管理及び危機管理に関し、情報交換、人材交流等を中心とした国際協力を推進する。  

     4)研究開発成果の展開 

       新法人が社会に開かれた事業展開を図るため、社会のニーズを的確に把握し、蓄積された研究開発成果(特許等)をデータベース化し幅広く公開するとともに、民間企業等と連携し、研究開発成果を効果的に社会に還元していくための成果展開事業を推進する。 

  3. 新法人の当面の組織

       新法人の組織については、理事長の裁量の下に、内外の情勢変化、業務の進捗状況等に応じて極力柔軟性を持って定められるべきものであるが、新法人発足時における組織編成として以下が考えられる。 

     (1) 本社機能のスリム化 

       動燃においては、本社に事業本部制を敷いている結果として、管理業務が本社に集中・肥大化しており、予算関連等の事務が煩雑となり、また、各事業所長の権限も曖昧で適切な地元対応が困難となっているなどの状況にある。新法人においては、本社機能を抜本的に見直し、事業本部制を廃止し本社現行500人体制の約4割を削減するとともに、企画調整機能を除くその他の本社機能の権限の多くを各事業所に移譲する。 

     (2) 現場責任の一元化 

       各事業所内において現場責任を明確にするため、東海再処理工場、プルトニウム燃料工場等の大型施設については、センターとして関連施設の統合を図り、センター長に運転管理、施設運営等に関する責任と裁量権を一元化する。 

     (3) 横断的調整機能 

       経営の企画調整、安全確保の水平展開、積極的な情報発信等を図るため、全事業所横断的な組織(経営企画本部、安全推進本部、情報交流部等)を設置する。 

     (4) 環境保全の強化 

       今後放射性廃棄物関連事業が益々重要となるため、これらを環境保全関連業務と位置づけて関係部局を強化する。 

     (5) 当面の定員 

       平成10年度定員については、現行動燃の定員から約50名減の約 2,730名で新法人を発足させるべく調整中であるが、内容としては、現動燃本社の管理・支援部門の人員を大幅削減し、また、整理縮小事業等の事業見直しによる人員減を図る一方で、委員会報告書の指摘に従い、安全管理及び運転管理関連業務、今後益々重要と考えられる廃棄物関連業務及び情報交流業務の増員を図るものとする。 

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