資料4 新時代の産学官連携の構築に向けて(審議のまとめ) はじめに

今、大学等(大学共同利用機関及び高等専門学校を含む。以下同じ。)を巡る状況はこれまでになく大きく、そして急速に変化している。科学技術創造立国を目指す我が国において、産学官の有機的な連携を促進し、大学等や政府系試験研究機関(国及び地方公共団体の試験研究機関並びに試験研究に関する業務を行う独立行政法人及び特殊法人等をいう。以下同じ。)の知的創造活動の成果を社会に還元するとともに、社会のニーズを大学や政府系試験研究機関に伝達することは極めて重要である。
このような観点から、これまでにも、平成8年の科学技術基本計画、平成11年の学術審議会(当時)答申「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」、平成13年の第2期科学技術基本計画等において、産学官連携の推進の必要性が繰り返し指摘されてきた。さらに、「知」の時代と言われる21世紀に入り、「知」の拠点としての大学の重要性が一層増していくなかで、我が国経済の活性化への貢献と、個性豊かな国際競争力ある大学づくりの双方の観点から、産学官連携に対する期待はますます高まっている。
このような状況を踏まえ、科学技術・学術審議会では、大学と社会の発展のための新たな産学官連携のあり方を検討するため、平成13年5月に技術・研究基盤部会のもとに産学官連携推進委員会(以下「本委員会」という。)を設置し、21回にわたり会合を重ね、議論を行ってきた。
その過程において、本委員会では、平成14年7月には大学発の連鎖的な新産業創出を加速するために早急に講ずべき措置を中心に中間取りまとめを発表した。また、平成13年6月に文部科学省の「大学(国立大学)の構造改革の方針」において国立大学の法人化の方針が示されたことを受けて、本委員会では、特に産学官連携の推進の観点から法人化後の国立大学のあり方について集中的に議論を行い、同年12月に「国立大学法人化後の産学官連携のあり方について(審議の概要)」を取りまとめた(なお、現在国会で審議中の国立大学法人法案では、非公務員型への移行や国立大学法人からの出資の規定等につき本委員会の提言が反映されている。)。
さらに、平成14年7月の知的財産戦略大綱の策定及び同年12月の知的財産基本法の制定等「知的財産立国」づくりに向けた国全体としての取組においても、大学における知の創造と活用の推進が重要課題の一つとして指摘されている。本委員会では、平成14年5月に知的財産ワーキング・グループを設置し、大学における知的財産の機関帰属(原則)への移行や機関管理のあり方について検討を行った。同時に、利益相反ワーキング・グループを設置し、大学での教育・研究上の責務と外部連携活動に伴う利益・責務との調整・調和の問題、いわゆる利益相反・責務相反への対応についても検討し、11月に両ワーキング・グループの報告書を取りまとめた。
本委員会では、このような検討経緯や政府における産学官連携の取組の進展、国立大学法人化に関する検討の進捗状況等を踏まえつつ更に議論を行い、今般、これまでの審議結果を取りまとめた。
産学官連携の推進とは、大学・政府系試験研究機関等と企業・産業界との継続的な「対話」に他ならない。そして、今後は、この「対話」をいかに始めるかではなく、「対話」をいかに深め、相互にとって建設的な関係を根付かせるかが課題となってくる。その意味で、我が国の産学官連携は新たな段階にさしかかっていると言えよう。そのためにも、双方が互いの立場や考え方を十分に理解し尊重する必要があることは言うまでもない。この「審議のまとめ」が、新時代の産学官連携の構築に向けた相互理解と「対話」の深化・進展に資することを切に期待するものである。

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