平成29年7月 公表
○ 我が国は、これまで数多くの地震災害や火山災害に見舞われてきた。現行計画実施期間中にも、平成26年9月に御嶽山の噴火、平成28年4月に熊本地震が発生し、甚大な被害がもたらされた。今後も、不可避である地震や火山噴火の発生の基本過程を科学的に理解し、適切な防災・減災につなげていくための観測研究に対する社会的な要請は極めて強い。
○ 現行計画で推進された地震・火山研究の中には、世界の地震学・火山学をリードする研究成果も含まれており、高く評価できる。特に、地震研究では、周期的なゆっくり滑りが発生しているときに大地震が起こりやすくなる傾向を発見したこと、火山研究では、御嶽山の火山活動の活発化時に、局所応力場が広域応力場から有意にずれることを発見したこと等の成果が挙げられる。
○ 地震学・火山学の科学的理解に基づき災害発生機構を解明し、災害軽減につなげることを強く意識して関連研究分野(歴史学、考古学、防災に関連する工学、人文・社会科学)との連携を強めてきた。それぞれの研究分野への理解が十分でない状況や連携に対する考え方の違いによって必ずしも計画通りではないが、積極的に新たな挑戦を行い、災害科学の一部としての一歩を踏み出したことは評価できる。
○ 今後も、災害の軽減に資する研究を指向した方向性は堅持されるべきであるが、直ちに災害軽減に資する研究のみならず、大きなブレークスルーが期待される基礎研究を画の中に適正に位置付けるためにも、災害軽減に至る研究課題の発展フローやボトルネックを明示的に整理していくことが求められる。
○ 現行計画に対して、以下のような改善すべき点が指摘された。
・災害の軽減に貢献することを意識した研究の一層の推進
・理学、工学、人文・社会科学の研究者間のより一層の連携強化
・研究目標と目標に対する達成度の明確化
・社会や他分野の研究者が本計画に求めるニーズの把握、ニーズに合致した研究の推進
・火山の観測研究を安定して実施する体制の整備
○ 今後は、本報告書の評価結果を十分に踏まえて、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究をより一層推進していく必要がある。その際、地震調査研究推進本部との連携をより一層強めることが望まれる。本報告書の趣旨が理解され、次期観測研究計画が着実に研究成果を生み出して、社会に大きく貢献することを期待する。
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成29年12月 --