課題番号:1412
東京大学地震研究所
予測シミュレーションモデル高度化のための手法開発
なし
本計画では,日本列島域および特定の地域を対象に地殻活動予測シミュレーションモデルを構築する.このモデルはかなり単純なものであり,将来のより現実的なモデル構築へ向けての第一段階のモデルと位置づけられる.本研究では,現在の地殻活動予測シミュレーションでは考慮されていない物理過程をシミュレーションモデルに組み込む手法を開発し,また,現在モデルパラメター推定に用いられていないデータを利用する手法を開発して,シミュレーションモデルの高度化を目指す.
平成18年度は,GPSデータを用いてプレート境界面上のすべり過程を推定し,これとシミュレーションを組み合わせることにより摩擦パラメターを推定する.また,媒質の不均質性の影響で非平面的に進行する破壊過程についてシミュレーションにより考察する.摩擦熱による流体圧変化・岩石の溶融を考慮して,現実的な断層の動的破壊過程のシミュレーションを行う.
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図1.新しい時間依存インバージョンによる、90日間の余効すべりによる累積すべり量. |
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図2.図1の結果に基づいて得られた、せん断応力の速度依存性. |
2005年8月に発生した宮城沖地震後の余効すべりに時間依存インバージョンを適用し、すべり・すべり速度・せん断応力の時間変化を求め、摩擦パラメータを推定した。S/Nが非常に小さいことと、すべり領域が陸からかなり離れていることから、モデル分解能が限られており、プレート境界のうち、破壊領域より深い部分に関してしか議論ができない。この地震の余効すべりの特徴としては、破壊領域でも地震後にゆっくりとしたすべりが推定されたことである(Miyazaki et al., 2006a)。
また,東海のゆっくり滑りの解析からプレート境界面での摩擦特性を推定する試みも行った(Miyazaki et al., 2006b).なお,18年度に予定した、GPS時系列による摩擦パラメータの直接推定については、すでに着手したが、長期間にわたる研究課題であり、成果が出るには至っていない。
図3.1センチメートルパーイヤーで5万年間短縮変形を与えた場合のシミュレーション結果。(a)相当応力。(b)相当歪み。(c)変位の垂直成分。
加藤尚之,加藤照之,堀宗朗,山下輝夫,宮崎真一,波多野恭弘
有
九州大学 亀伸樹,東京理科大学 多田卓,建築研究所 芝崎文一郎