課題番号:1401
東京大学地震研究所
GPSを用いた日本列島周辺のプレート運動の精密決定
本研究課題では、研究期間の間にアムールプレートの運動を精密に推定し、日本列島の応力場への寄与について明らかにすることを目的としている。平成17年度にモンゴルでのGPS観測が開始されたことから、平成18年度は観測を継続してデータを継続して取得することが重要である。並行して、データ解析についても、より多くのデータを統合することを試み、アムールプレートの運動のより精密な推定のためのプログラムの高度化を行いたいと考えている。
平成18年度にはモンゴルでのGPS観測を継続して実施する。日本側研究者が保守のため1回モンゴルに渡航する。前年度に太陽電池が盗難に遭う被害にあっていることから、観測点の保守体制を見直し、電源の取得、観測点周囲の防護など、必要な作業を実施する。なお、モンゴルの研究協力者を別経費によって招聘し、モンゴルでのGPS観測についての協議と指導を行う予定である。また、戦略的国際科学技術協力推進事業によって日韓中の関連研究者が共同してアムールプレートの南端境界の存否と相対運動に関する予察的結果を得る計画である。
平成18年度には当初の予定通り,モンゴル国内において観測を継続した.観測点の保守体制等についてはモンゴルの共同研究者であるモンゴル科学アカデミー天文地球物理学研究センターのSharav氏によって改良が行われており,観測が進められている.また,同氏を平成18年11月から平成19年2月まで招聘し,GPS観測についての協議と指導を行った.モンゴル国内のGPS観測点について我々が導入した観測点の他,モンゴルにおいて独自に実施したGPS観測データを統一的に解析した.図1にその結果を示す.図の赤点で示したHOVD観測点を固定して表示している.モンゴル西部と中部〜東部では明らかに変位の方向が異なっていることが見て取れる.アムールプレートの西側境界はHOVDのやや東よりを通っているものと推察される.
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図1:モンゴル国内のGPSデータ解析結果.HOVD観測点を固定. |
また,GPS観測だけでは局所変形がよくわからないことから,InSARを用いた解析にも新たに着手した.まず手始めに,1998年1月10日に中国北京の北西180キロメートルのところで発生したZhangbei-Shangyi地震(マグニチュード6.2)のERSデータを用いて解析を行った.いくつかの衛星画像の組み合わせについて干渉画像を作成したところ,地震に伴うと思われる地表−衛星視線距離変化が得られた(図2).今後このような解析事例を増やし,アムールプレート内部の変形についても調査を進めたい.
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図2:JERSデータによって検出されたZhangbei-Shangyi地震(マグニチュード6.2)の地表変形(図中の四角で囲った地域). |
これらの他,中国鮮水河断層周辺のGPS観測プロジェクトが順調に進んでいるほか,日韓中科学技術協力事業によるアムールプレート南側境界の調査に関する研究も進んでおり,予察的な成果が出始めている.
加藤照之,岩国真紀子,古屋正人
有