課題番号:1205
東北大学大学院理学研究科
地殻活動データに基づく断層の力学的特性・状態の推定
本課題の究極の目標は、地震活動や地殻変動といった観測可能な情報から、断層やプレート境界における摩擦パラメータや破砕度を予測することである。試験機の制約などにより、限られた条件のもとでしか実験が行われていないが、平成15年度までの研究成果は、この目標が到達可能であることを示唆する。平成16年からの5ヶ年においては、実現可能な実験条件の範囲を広げるために試験機の改良を行いつつ、AE活動と断層面の摩擦特性の間に成り立つ、より一般的な関係を解明する。
連続したすべりで大変位が実現できるようにするための試験機の改造は、平成17年度までの研究によりほぼ完了した。平成18年度は、様々な条件(軸荷重、面粗さ等)で実験をおこない、結果の一般性を確認する。また、これまでは検波波形を用いて、AEの振幅に着目して解析をおこなってきたが、今年度は原波形の収録も試みる。すべりに伴うAEの中に、相似な波形を有するイベントがどのくらいあるのか、また、相似な波形を有するイベントの再来間隔は載荷条件に対してどのような関係にあるのかを検討する。この実験は、プレート境界などで観測されているrepeating earthquakeの発生機構に関する手がかりを与えるであろう。
様々な条件(軸荷重、面粗さ等)で実験をおこない、これまでに得られている結果の一般性を確認する。
AEの原波形を収録し、すべりに伴うAEの中に、相似な波形を有するイベントがどのくらいあるのか、また、相似な波形を有するイベントの再来間隔は載荷条件に対してどのような関係にあるのかを検討する。
平成17年度におこなった実験と過去の実験の若干の相違の原因を検討したところ、変位計測器の信号・雑音比が低いために、すべり速度の測定が正確になされていない可能性が高まった。そこで、対雑音性の高い変位計を取り付けて実験をおこなうこととした。変位計の取り付けは完了したが、使用していた実験室にアスベスト吹き付け材が使用されていることが判明し、その除去工事のため、12月以降、実験室の使用が禁止されたので、実験を行うには至っていない。
信号・雑音比の低い変位計を用いた実験で、AE原波形の収録を試みた。得られた波形を解析したところ、多数の相似イベントが発生していることがわかった。プレート境界で観測されているrepeating earthquakeの比較という点で、相似イベントとすべり速度の関係を検討することは興味深いが、前述のように、変位の測定精度がよくないために、両者の関係の詳細な検討はおこなっていない。
なし
矢部康男
なし