《国際共同研究の推進への取り組み》
(実施状況等レビュー結果及び外部評価結果を踏まえ、今後の考え方や取組み等についてご意見をお願いします。特に、外部評価で指摘された下記の項目について、どのように反映していくべきかなどについてご意見をお願いします。)
- ● 沈み込み帯の巨大地震・火山噴火の比較研究を積極的に進める(千島列島,カムチャッカ,アリューシャン等)。日本列島周辺域の地殻活動研究のための国際共同研究の推進(ロシア・サハリン・沿海州等)。ひずみ集中帯の北方延長部との比較研究(ロシア・サハリン)。特に、ロシアとの地震火山共同研究については両国の首脳会談で合意済み事項であり,積極的に推進することが求められている。
- ● 地震予知や火山噴火予知に適当なフィールドが世界のどこかにあれば、研究テーマを議論し、期間を決めて共同観測を行うことも考えられる。しかしながら、多くの人員を一定の期間、ある場所に集めて観測を行えば経費も多くかかることになる。国内外で精力的に地震予知や火山噴火予知研究を行っている機関で、研究者の交流を行い、他機関での研究観測を実際に体験して、共同研究を活発化させるのが現実的ではないかと考える。
- ● 組織的にアジア各国との連携を強化し、地震観測、GPS観測の観測網を強化して、観測空白地域をなくす努力が必要である。これは他国に対する援助という側面のみではなく、日本における列島規模の地殻活動、プレート運動の理解のためにも重要である。
東南アジアをはじめとして、アフリカ、南アメリカなどの発展途上国における火山観測網の整備と火山研究者の育成について、長期的計画を立てて取り組むことが、日本に期待されている国際的な役割であると考える。日本人研究者にとっても、そのような外国での火山観測研究の経験が、火山活動の多様性の理解に役立つものと信じる。
- ● 我が国の地震予知研究においては組織的な国際共同研究への取り組みが極めて遅れているといえる。大規模な地震はその発生頻度が低いので、日本列島といった狭い地域での研究を進めるだけでなく、グローバルな規模で地震の観測研究並びに予知研究を行うことによりその効率を上げることが可能と期待される。一方、我が国の地震予知研究のレベルは世界の最高にあると言って過言でなく、特にアジアを中心とする地震が多発し大きな災害を蒙ってきた発展途上国からは日本の地震予知研究から学びたいとの多くの期待が寄せられている。こうした期待にこたえることは単に地震予知コミュニティの責務と言うばかりでなく、"安心・安全な社会の構築"という観点からも日本として取り組むべき課題であると言える(cf.2005「兵庫行動枠組み」)。「地震」を「火山噴火」に置き換えれば、前記のことは火山噴火予知研究にも同じことが言える、以上の観点に立ち、次の行動計画を次期の地震予知・火山噴火予知研究計画に取り入れることを提案する。
- 1) 現予知計画において協議会の協力の下に設置された地震研究所の「国際地震・火山研究推進室」に予知研究部を敷設し、全国の予知コミュニティに対する地震・火山噴火予知に関する国際的共同研究の推進母体を創設する。
- 2) 地震予知・火山噴火予知に関する国際的な研究集会を定期的に開催する(例えば、交互に隔年実施)。
- 3) 海外との研究者の交流を促進する。このための資金を確保すると共に、地震研究所国際室における招聘研究員制度に予知枠を設ける。
- 4) 防災研究フォーラムを強化拡充し、海外における大規模・突発的な地震・火山噴火活動に迅速に対応できるような体制を整える。
- ● 留学生を積極的に受け入れる。また、科研費等の外部資金で国際共同研究を推進するよう努める。東京大学地震研究所や京都大学防災研究所のような共同利用研究所を核として、外国の火山噴火に即応できる体制を整える。JICA(ジャイカ)との連携を強め、発展途上国に対して、火山・地震に技術や知識を積極的に広める。火山学研修を強化する。地震分野に関しては、科研費にてトルコ国(北アナトリア断層)やインドネシア国(スマトラ断層)で現地研究者と協力しながら研究を進めているので、さらにそれを推進する。
- ● 大地震や火山噴火は低頻度の現象であるから、少ない機会を捉えて観測を行い、知見を蓄積することが必要不可欠である。そのために、諸外国の大地震や火山噴火が予想されるような地域において、当該国の研究機関との共同研究により観測を推進することは大変重要である。こうした取り組みは、国際貢献の側面もある。候補地としては、プレート沈み込み帯として、中南米諸国(メキシコ、コスタリカ、エクアドル、ペルー、チリ等)、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニア等が考えられる。また、JICA(ジャイカ)研修などの枠組みを利用した研修が行われているが、地震火山を教育する大学における大学院と連携して、修士等の学位を出すことができることが望ましい。
- ● 建議の柱として国際共同研究の推進があがっているが、海外における観測研究は、各研究項目のフィールドの一部として位置づけられるべきものである。このことにより従来の建議のように国際共同研究の推進という題目だけではなく、具体的なサイエンスプランの構築が可能となる。
確実に日本の火山噴火予知研究に役立つフィールドであれば積極的に海外のフィールドにおいて観測研究を行い、我が国の噴火予知研究にフィードバックを行うべきである。地震および噴火予知計画事業として海外もフィールドであると位置づけるなら確実にフィードバックできるフィールドを選定すべきであり、日本と同様に沈み込み帯に位置する場所は有力なフィールドである。かつてDAPHNEのようなアジア太平洋地域を対象としたプロジェクトが企画されたが予算確保ができないままにとん挫したことは残念なことである。プロジェクト間の連携を模索する必要があろう。
京都大学では、トルコ、台湾、インドネシア、タイ、チリ・メキシコ・ロシア、フィリッピン、南アフリカ等において、国際共同による観測研究を積極的に推進している。トルコ等では、プレート境界型の巨大地震の発生が迫っていると指摘された場所もある。海外での観測研究は国内に比べて困難であるが、そのような環境でも取り扱いが容易で安定して動作可能な機器の開発を進めている。これらの機器を投入することができれば、国際共同研究が一層進むものと期待される。また、干渉合成開口レーダ(InSAR)技術を用いると、現地に行くことなく、面的な地表変動を高精度で検出することができる。2006年より運用中のALOS(だいち)衛星に搭載されたPALSARレーダのデータは、条件の悪い植生の深い地域での地表変動検出にも十分使えることが証明されつつあり、基本的に世界中どこでも容易に変動が検出できる環境が整った。このメリットを生かし、京都大学では、海外の地震火山等の活動メカニズム解明を目的とする解析や、技術協力による海外の解析者の養成などを含めた、国際共同研究の立ち上げに着手している。このような取り組みにより、国際共同研究の機会が飛躍的に増えると考えられる。
- ● 地震には国境がないので、近隣諸国との共同の地震観測や学術研究について、具体的に取り上げ盛り上げていく必要があるのではないでしょうか?もう少し活発にできないかと思います。
- ● 地震予知および噴火予知研究の進展を促進するためには、より多くの事例を経験し、国内外の多様な地震・火山活動の比較研究が有効であることから、これまでの予知計画においても国際共同研究を推進することになっている。しかし、例えば火山噴火予知分野では、インドネシアと共同研究を実施している京大防災研究所を除くと、海外の火山噴火に対する組織的な国際共同研究はあまり進展しているようには思えない。今後は、米国のUSGSのように海外の地震火山噴火に即応して観測支援をしたり国際共同研究を推進する体制を国として整備することが必要である。
- ● 日米・日伊など、二国間の科学技術協力協定の枠組みを積極的に活用するとともに、ODA事業を通じた国際貢献にも取り組む。
- ● これまで同様、明瞭な科学目標に基づいて、積極的に国際共同研究を実施する。また、可能な限り相手研究機関との人的交流を図りたい。
- 国際シンポジームやワークショップを通じた連携推進や海外研究者の短期・長期受け入れ体制の整備が不可欠
- 海底観測開発では米加、欧州研究グループと連携研究を実施
- 南海トラフ地震発生帯掘削計画では、国際共同研究を実施
- ● これまでの研究協力を継続的に進めると同時に、「第三次科学技術基本計画」での国際活動の戦略的推進を踏まえ、特にアジア諸国との連携を強化するよう努める。
- ● 国際的観測研究に関する総括的な枠組みの整備
アジア太平洋地域における地震・火山に関係した観測研究に関しては、個別の領域については観測研究機関単位により相手国機関との協力が行われているものの、広域の観測網などの構築については、それらを統括するような枠組みがなく、必ずしも十分なものができていない。中長期的な構想に基づく、地震・地殻変動の広域観測網を、我が国の主導によりアジア太平洋地域各国の連携により確立するような方針を示すことが望まれる。
その一方で、国際共同研究が、日本側が一方的に負担するだけの「国際貢献」であっては国内の理解が得られない。その国際共同研究が我が国の地震予知、火山噴火予知の実現ために不可欠であり、かつ、得られた研究成果をどのように生かしていくのかといった戦略を具体的に示すことも重要であると考える。
- ● 引き続き、国際地震センター(ISC)、米国地質調査所(USGS)、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)、韓国気象庁(KMA)、大学間地震学研究連合(IRIS)等との地震観測データの交換を継続するとともに、組織的な連携・協力を行っていく。また、途上国における地震・火山の観測体制や、津波の警報体制の整備に対して技術的な支援を行っていく。
- ● 世界最先端の技術を持つ海外研究者との交流を図るよう努力しており、今後も続けていきたいと考えている。
- ● 本計画の中で、これまでの実績と実態を踏まえ、国際共同研究および国際協力の意義を再確認する必要がある。我が国の研究推進の観点と、留学生研究生等をとおして成果や技術を世界に還元するという両側面がある。地震では、4計画推進のための体制整備(6)国際協力の推進、火山では2基礎研究の中で取り上げられている。
- ● この分野はめったに起きない事象を研究対象としているのであるから、広く世界にフィールドを拡げて国際共同研究を推進することは必然的なことであり、今後も一層進めるべきである。
- ● 国際共同研究や国際協力は遅れていると思う。予知研究に関わる多種多様な発想・考えを取り込む手段のひとつが、国際共同研究や国際協力にあると思う。積極的な取り組みを期待する。個々のプロジェクトでの国際共同研究が主体になるとは思うが、そのような国際共同研究に関する情報をグループ全体で共有すること、そのような情報をもとにしながら、より組織だった国際共同研究への進展を模索することなど、考えてもよいと思う。また、国際共同研究の成果および研究計画からの成果は、もっと積極的に世界へ広報・発信してほしい。GEOSSへの日本の貢献の中で、災害に含まれている地震・火山分野での貢献が少ない、あるいは伝わっていないという印象をもつ。英語でのデータ流通や広報活動などをすすめてほしい。研究計画の成果が国内外で高く評価されることが計画へのフィードバックになると思うし、人材育成や国民の理解などに関わる問題にもつながると思う。
- ● 地震予知および噴火予知研究の進展を促進するためには、より多くの事例を経験し、国内外の多様な地震・火山活動の比較研究が有効であることから、これまでの予知計画においても国際共同研究を推進することになっている。しかし、例えば火山噴火予知分野では、インドネシアと共同研究を実施している京大防災研究所を除くと、海外の火山噴火に対する組織的な国際共同研究はあまり進展しているようには思えない。今後は、米国のUSGSのように海外の地震火山噴火に即応して観測支援をしたり国際共同研究を推進する体制を国として整備することが必要である。
- ● この分野ではわが国が世界のリーダーであることを前提にした取り組みであることが重要である。やみくもに国際シンポジウムやワークショップを数多く開いて、毎回形式的な報告書作成に追われることは避ける。発展途上国には、観測・監視体制構築に向け積極的な支援を提供する。
- ● 地震や火山噴火に関わる災害軽減のために役立つ研究であることが推進するかどうかの判断基準であるので、ことさら国内、国際の区別をすることが問題である。
- ● あらゆる場面で中国の国家戦略的進出が著しい昨今、地球科学において日本が正当なプレゼンスを示し続けることは、十分留意されなければならない。アジアとの共同研究や留学・研修制度の充実が常に留意されるべき。
また、地震保険再保険などのニーズは国際的にあり、受け皿になった外国の研究者のサポートに、日本の研究費を消費してデータを差し出すような愚がないように、法人化した大学は、データ解析においてもイニシアティブを発揮すべきである。
- ● 日米・日伊など、二国間の科学技術協力協定の枠組みを積極的に活用するとともに、ODA事業を通じた国際貢献にも取り組む。
- ● 2.で提案した「マグマ移動(開始,推移,停止)の物理・化学的機構を明らかにするため、マグマの動きが確実に発生する見通しのある火山を全国でいくつか選び、地殻変動、地震、電磁気、地球化学、岩石学等々、各分野が連携して段階的に常時観測および活動開始後の集中観測を実施する。研究資源の効率的集中投下するプロジェクト」に外国人研究者の参加を求める。
一方、「だいち」等による干渉SAR観測は、地球上の多くの火山の地殻変動を計測できる。国土地理院は、外国の多くの火山について定期的に解析を実施することを計画している。これらの結果を、世界の研究者と共有することによって、世界の火山学に貢献することが期待される。JAXA(ジャクサ)にも建議メンバーに加わってもらい、国としてより大きな取り組みを模索することも意味があると考える。
- ● 大学、各省庁、国際協力機構(JICA(ジャイカ))など地震火山関係の国際協力に多くの組織が関わっていますが、バラバラで個別に進められているため、国としての戦略は事実上存在しない状態にあり、非効率のみならず、線香花火を打ち上げるように一過性で、継続性もない。どのような機関が役割を担当するのが適当か分からないが、強力なcoordinationが出来る組織の存在が求められている。
- ● 発展途上国の地震・火山分野の留学生を積極的に増やし、地震火山研究のリンクを発展途上国に広げる必要がある。JICA(ジャイカ)の研修員制度を拡充させる必要がある。共同利用研究所や協議会において、国際共同研究のための機能を充実させる。
- ● 地震・火山研究に関しては、各大学・研究機関の独自性を生かした国際活動というスタンスでこれまで進められてきた。今後は、それに加えて、わが国としての「組織的・戦略的」な国際協力という視点も必要。そのためには、横の連携の支援をする国内ヘッドクォーター機能を持つ組織の創設を図る必要があるのではないか?また、JICA(ジャイカ)などの研修生受け入れも、国内ヘッドクォーターで調整することも必要ではないか?
- ● 根室半島沖地震や北海道東方沖地震などの震源域では、隣国との関係上、海底調査を行えていない。国際共同研究への推進の一つとして取り上げるような簡単な問題とは考えてはいないが、この海域における調査が進むように、なんらかの方策を模索する必要があると考える。
- ● 国際シンポジームやワークショップを通じた連携推進や海外研究者の短期・長期受け入れ体制の整備が不可欠。海底観測開発では米加、欧州研究グループと連携研究を実施。南海トラフ地震発生帯掘削計画では、国際共同研究を実施。
- ● 特に、地理的に近く、同様なテクトニクスを有するアジア諸国との連携を深める(例えばアジア・大洋州地球科学学会(Asia Oceania Geosciences Society: 略称 AOGS)への積極的な支援など)。
- ● 小規模な研究科(あるいは学部)附置のセンター施設では、国際共同研究と言っても、組織対組織というよりは、研究者同士の個人ベースのものが多いように思います。予算的にも科研費頼りだと2年から3年計画にならざるをえません。相手機関と協定を締結した形の国際共同研究を増やして行くことが理想で、そのためには協議会が相手機関と協定を締結し、協議会傘下の大学研究者はそのパイプで共同研究をスムーズに行なえる体制が良いと思います。ただ、実際には研究者同士の良好な協力関係なしには国際共同研究の精巧は望めません。ただし、国内の観測研究ですら、定員削減のあおりを食らって、なかなか充分時間をとってやれない現実がありますから、その影響は国際共同研究にも及びます。この点からも定員削減に対抗する措置を考える必要があります。
- ● 特にアジアと環太平洋地域の国々との共同研究は、日本列島のテクトニクスを理解する上でも極めて重要であり、また留学生の受け入れも、お互いの国にとってメリットがあり、今後さらに推進していく必要がある。
- ● 国際共同研究は、大学院において学位を取得させ人づくりから協力していくことによって円滑に進めていくことが可能となる。国費留学として留学生を支援する枠組みは存在するが、遠隔地の観測施設で留学生を受け入れて指導する体制を整えることも必要と思う。また、海外での観測研究は、国内では実現できない観測を行うために必要である。課題を明確にして実施することが重要と思う。
- ● どのような単位での国際共同研究を推進するのかをまず最初に決めるべきである。大学や研究所単位では既に共同研究は進められているので、予知計画の一環として進める場合、公募方式で行うのか、特定の機関を中心に進めるのか決める必要がある。公募方式を採用する場合、予算を配分することによって、研究ポテンシャルの増加が見込める。
- ● 国際共同研究は、多様な火山現象の理解を早めることと、途上国の火山噴火予知技術の発展のために極めて重要である。このため、これまでのような一大学やイベント対応の共同研究に代わって、予知計画として国際対応に専従する体制を整備し、これにあたる研究者グループを確保する。また、共同研究の成果を踏まえて更なる研究の進展のための定期的なシンポジュームを開催する。
- ● 多様な火山噴火を短期間で経験し、噴火予知を実現するための実力を高めるためにも国際共同研究の推進が必要である。このためには、まず火山噴火予知研究グループにとって負担になっている火山体構造探査などをアウトソーシングすることによって研究者の負担を軽減し、積極的に国際共同研究をすすめることができる余裕を作り出すことが必要。
また、若手研究者・大学院生を積極的に国際研究集会・海外火山観測に派遣する制度をつくり、将来的に国際共同研究を促進するための素地を作る。
- ● 背弧地域の地殻活動について、物理探査、地形変化、構造力学、物質科学の面から日本がリーダーシップをとって国際研究をする計画があってもといと思います。新潟では2004年、2007年と大きな地震にみまわれており、県民が地震予知に大きな関心をもっています。兵庫、金沢、島根なども同じような状況にあろうかと思いますが、このような時期に、国をあげて予知に向けた取り組みを行い、また日本がリーダーシップをとって研究するという決断をするかどうかが、観測・予知研究の継続、活性化にとっての分かれ道ではないでしょうか?
- ● 国際共同研究の必要性/有効性の高い課題を選定し、推進することが重要。
- ● 国際共同研究には本研究計画の推進と、留学生や研究生等をとおして成果や技術を世界に還元するという側面がある。これまでの実績と実態をみると、観測研究の成果を上げるためには、相手国との息の長い取り組みが必要になっている。したがって短期的な共同研究で成果のあがる課題と中長期的に取り組むべき課題に区分し、国の支援のもとに共同研究を進める必要があろう。
- ● これまで同様、明瞭な科学目標に基づいて、積極的に国際共同研究を実施する。また、可能な限り相手研究機関との人的交流を図りたい。
- ● 少なくとも、火山噴火予知に関する日本の観測研究の外国への情報発信と外国観測研究の情報導入が極めて消極的である現状がある。国内の少ない頻度の現象を迎え撃つだけではなく、外国で進行中の多種多様な研究対象(地震や火山噴火)を持つことが、本来の目的の基礎研究を完成させる上ではより重要である。日本の地震・火山噴火予知能力の向上のための研究には外国の地震や火山噴火を対象にすることが重要であることを、研究従事者だけでなく国や国民にも納得させる必要がある。
外国での地震や火山噴火の発災時に日本の研究者が観測で出かけやすく、かつ、国内の発災時には外国研究者が来やすい仕組みを作ることが重要である。例えば、国内の観測研究にのみ研究経費を使いやすい体制を止め、研究者が外国の観測研究に行きやすい環境を今以上に作る努力をする。研究費申請の審査員や参考者として外国の研究者を導入することも一つの方法である。しかし、日本だけが一方的にこのようなシステムをとっても意味がなく、外国の地震や火山噴火の研究には、それぞれの国で申請される研究組織に、日本人が含まれるような体制を個人レベルだけでなく国としてバックアップする体制を作る必要がある。その第一歩として、全国共同利用研究所に国際的な共同研究を推進する機能を持たせ、相互の観測研究の橋渡しになるよう努力することも必要である。そのためには、地震火山国際室や防災研究フォーラムで国レベルのそのような体制作りを検討することが必要であろう。
一方で、自前の定常観測網がないと外国での観測研究が困難であるとする考え方もある。しかし、外国の研究拠点との共同観測の下地をつくることによって解決されたり、研究目的を限れば、臨時観測だけでも十分な観測研究が可能になる場合がある。そのためにも外国からの観測研究者の受け入れを日頃から心がけるべきである。
- ● 国内での顕著な火山噴火は数年に1回程度でしかなく、噴火予知に関する経験法則の発見や理論モデルの検証にはデータを十分に揃えるには時間がかかる。また、日本国内では最近100年ほど、規模の大きな噴火が起きていないこともあり、我々は限られた火山噴火現象にのみ対応してきたというのが現実である。しかし、世界を見れば、頻繁に噴火している火山は多く、十分な観測が行われていない火山も少なくない。また、プリニー式噴火など日本では近年あまり起きていない噴火も起きている。そのため、今後は、噴火頻度の高い国外の火山においても、予知研究計画の事業として観測研究を実施し、貴重なデータを取得していくことが、火山防災や早期の高度な噴火予知実現に向けて必要不可欠である。国外での臨時観測は、いくつかの機関ですでに十分実績をあげており、次期計画から国外での継続的な観測研究を積極的に実施することも現実的に可能であろう。
このような国外での観測とそのデータ解析をしっかり行っていけば、現地の研究者との共同研究は進む。また、国際貢献ともなる。さらに、多量・高品質のデータを日本の研究者が解析し研究成果を出すことによって、自ずと国際的な共同研究が推進されると考えられる。また、国外での火山観測を日本だけで行うのではなく、他国と連携することができれば、研究者の実質的な交流も深まり、国際共同研究が具体的に推進されるだろう。