地震及び火山噴火予知研究計画の次期計画検討にかかるアンケート調査結果(様式1)

《次期計画骨子(案)(平成19年8月9日 地震部会/火山部会合同会議検討案)について》

(「次期計画骨子(案)」の構成(大・中・小項目の区分や内容等)について、重複しているもの、漏れているもの、構成にないもの等について、ご意見があれば記入願います。また、構成全般についても、ご意見があれば記入願います。)

【構成全般】

  • ● 大・中・小項目の区分や内容において、特段の不足はない。ただし、従来の地震予知計画の延長線上に立脚した研究計画と言う色彩が濃く、火山噴火予知に関する事項について、観測から予測への流れが見えにくい。
  • ● 地震予知と噴火予知を統合したことは良いと思う。ただ、それにより、計画の目指す達成点があいまいになることは良くない。「地震予知」と「噴火予知」の目指す達成点に関しては、実施方針(?)の中では、2つに分けて各々に明確にした方が良いと思う。
  • ● 従来の地震予知計画の延長線上に立脚した研究計画として見た場合、項目立てや構成に関しては、特段の過不足はないと思います。特に、構成については、項目の先頭にモニタリングとシミュレーションを置いたことで、単なる科学研究の集合体ではなく、予知・予測を見据えた、システマティックな研究計画であるとのメッセージを伝えるものとなっており、戦略的にも妥当であると考えられます。ただ、(今更遅いのかも知れませんが)火山噴火予知計画との「統合」については、その必要性や予想される効果が計画段階では十分に見えておらず、敢えて一緒にする必要もなかったのではないかと言う懸念が残っています。
  • ● 全体の構成はバランスが取れていて好ましい。まず、本研究計画が科学研究費研究とは異なり、予知のためのタスクを持った国家プロジェクト研究であり、その任務、すなわち社会的養成に答えるべき研究の売りの部分を第1章に持ってきているのがポイントである。また、2章ではそれを実行するために基礎研究が必要であることを示し、3章でそれを実現するための道具としての技術開発が必要であること、4章でそのための実施体制をうたっている。そのため、現在2章の基礎研究部分を第1章に持ってくる考え方には強く反対である。ただし、1章のネーミングがいまいちで、上の目的に耐えうるかどうかは疑問。「モニタリング」や「予測シミュレーション」は単なるキーワードであって、以下の小項目に出てくるので章タイトルとしては不要。例えば、「地震・火山活動予測のための観測研究」ではどうか。
  • ● 大/中/小項目の区分など全体構成はこれで良いが、アイウ項目などは、具体的な研究計画が各機関からでてきた際に、中味に即した形で、修正、変更すれば良い。
  • ● 地震予知研究と火山噴火予知研究が、ひとつの建議としてまとまることになるが、共通の重要な研究テーマが見出せないのは問題である。また、地震が、シミュレーションを前面に出しているのに対し、火山ではシミュレーションについては研究の柱になりつつあるが、いまだそれほど大きなウエイトを占める段階ではない。さらに、骨子の構成が地震中心になっており、それに火山の項目がちりばめられている印象を与える。火山の水蒸気爆発に関して、明記した骨子がない。
  • ● 地震・火山の計画が統合されるのは当然のことであるが、現在の構成では統合の目玉が見えない。地震予知計画と火山噴火予知計画では目的としているものが違うので、地震予知計画と火山噴火予知計画を統合することにより、統合計画の目的とするところが不明確になることは否めないが、共同で取り組む具体的なテーマが見えない。全体としては統合されているのだが、ア、イ、ウのレベルで見るとかなり分化している。そのため、共同で取り組む研究を提案しにくくなっており、地震・火山の予知事業が統合されるメリットが必ずしも活かされていない。地震、火山両方で行う部分を分かりやすく明確にする必要がある。さらに、地震、火山両方にかかわる小項目がもっとあってもよい。たとえば「地殻内流体の挙動」など、また、地震と火山活動の相関など、現象としての地震と火山を同時に扱うことで、これらの相互関係を地球科学的に研究できるような項目も必要である。
  • ● 地震・火山の計画が共同で取り組む主な対象は、脱水やマグマ生成に関係するスラブとマントルウエッジのダイナミクス、内陸地震の準備過程や火山の深部構造に関係する地殻深部の不均質であると考えられる。現在の項目では、内陸地震と火山の深部構造、沈み込むスラブ内地震とマントルウェッジのダイナミクスが別々の大項目に分かれている。
  • ● それぞれのレビューと外部評価も考慮して、これまでの地震、火山噴火、それぞれの課題、双方が連携して取り組もうとする課題が明確に読み取れるよう(各機関から計画が上がってきた段階でもよいが)実施計画を含む建議の構成を再整理する必要がある。一緒にすることにより、これまでのそれぞれの成果や取り組むべき課題があいまいになることは避けるべきである。
  • ● 現在の案は、小項目を立てる際の考え方が地震と火山で統一が取れていない。時間的制約の中で現在の案がつくられた経緯を考えると、それも仕方がないと思われるが、今後少し時間をかけてでも、実施段階で困らないように慎重に検討する必要があろう。
  • ● 次期計画では、地震予知研究計画と火山噴火予知計画を一本化することのメリットを前面に出す必要がある。この観点からも、外部に対して説得力を持つよう構成を検討すべきと考える。
  • ● 1と2の順番がこれまでの計画とは逆になっている。新味を出すためかと思うが、1が先にくるとモニタリングとシミュレーションのシステムは出来上がっているような印象を与えないか? 2の観測が先に来て、モニタリングとシミュレーションが後という順番の方が自然ではある。
  • ● 基本的に地球物理の研究は、最初に観測し、統計処理によって何が起こっているかを知り、それを説明できる物理モデルを構築し、物理モデルに基づく予測を行う、という順序で行いますが、この骨子の構成もこれに合わせるのが自然で美しいと思います。具体的には、大項目の1と2を入れ替えるということになると思います。特に。次期計画も基本は観測研究であるという姿勢で臨むのであればなおさらのことと思います。
  • ● 大項目の1モニタリングとシミュレーションと2準備過程の観測研究の順序を変えたことは時期尚早のように思われる。
  • ● 大項目の1.と2.の関係が不明瞭で、2-(1)の内容が最も広範な内容を示しているように見えるので、これを全体の構成の中で大きく取り上げた方がいいのではないでしょうか?「観測研究の推進」がつく大項目が二つ必要な理由がよく分かりません。
  • ● いくつかの中項目では、その中の小項目の分類が細かすぎると思われる。特に(地震予知と火山噴火予知の関係者の人数の割合に比べて)火山噴火予知に関する項目が多いように思われる。
  • ● 地震関係の項目に比べて、火山関係の項目が細かすぎる印象がある。もう少し整理したほうが良い。逆に地震関係の項目の特に2(2)(2−1)は荒すぎるように思う。
  • ● 「次期計画の具体的な内容策定方針」における4つの柱の第1で地殻活動(地震活動、地殻変動、火山活動)となっており、地殻活動・火山活動との記載はおかしいのではないか。
  • ● この種の計画として止む終えないことかもしれないが、「基本的な考え方」は総花的でインパクトに欠ける。これまでの10年の研究成果に基づき今後の主たる切り込み口を明示し、研究対象とアプローチを鮮明にするという方向をもう少し打ち出したほうがよいと思われる。例えば、(2−1)地震準備過程では、プレート境界地震、内陸地震、スラブ内地震が研究対象とされ、次期計画の基本方針(2)ではそれらへのアプローチが並列で説明されている。地震現象全体に目配りし、その中で地震予知を考える姿勢は正しい。しかしそれはそれとして、これまでの10年で格段に理解が進展し、予知へのアプローチが見えてきたのがプレート境界地震であることは誰にも異存のない所であろう。そうだとすればもう少しメリハリをつけた基本方針があっていいのではないかと考える。
  • ● 「地震や火山噴火を理解し、適切な防災・減災対策につなげていくための研究に対する社会的な要請は極めて高い。」という認識が「基本的考え方」に述べられているが、社会的な要請に的確に応えるために取り組まなければならない今後の課題について、これまでの研究成果を踏まえた分析が実施内容骨子(案)の中に十分表現されていない。研究計画であるからには、現在の課題とそれを解決するための計画期間内に取り組むべき目標を明確に謳い、計画期間後に客観的な評価を可能にする構成にすべきである。研究の結果として国民がどのようなことを期待できるのか、アウトカムも記述すべきである。
  • ● 実施内容骨子(案)の内容全体が有機的につながっているように調整されていない。個々の研究者や研究グループが取り組みたい課題をそのまま列挙しただけとも理解できる構成で、全体の目標を達成するための優先順位付けも明らかではない。
  • ● 次期計画が、単なる学術研究計画ではないことが分かるような構成にすることが必須である。外部評価も踏まえると、建議では、1地震予知、火山噴火予知およびそのための研究の現状及び今後の進め方、考え方を明確に述べ、2次期計画における研究と社会等のかかわり、その実施内容や目標を大項目を立て明確に述べる必要がある。
  • ● 両計画統合の科学的意義を鮮明に打ち出すために、章立てを下記のように一部変更することを提案する。
    • (提案)
       2.(1):サブタイトルを「日本列島及び周辺域の地殻・マントル構造と広域応力場」に修正し、独立した1章として冒頭((案)の1.の前)に移す。
    • (理由)
       (案)の章立てでは、2つの計画を統合する科学的な必然性を読み取ることが困難である。(案)のように「1.地殻活動のモニタリング・・・」から始まると、資源の共有という経済効果が統合の主たる目的と受け取られかねない(もちろんそれも重要だが)。8月9日の合同部会で委員らが強調したように、プレート沈み込み帯における地殻・マントルのダイナミクスが両計画を結びつける主要な環であり、そのことを冒頭で明確に宣言する必要がある。哲学なき野合・・・といった言われ無き批判を浴びることがないよう、ご考慮願えれば幸いである。
  • ● 現案では、"1.地殻活動のモニタリングと予測シミュレーションのための観測研究の推進"と"2.地震発生・火山噴火に至る近く活動解明のための観測研究の推進"において観測業務に関する事項と研究課題が混在している。あるいは、観測業務に関する事項が、"観測研究"という表現の中で、どのくらいの割合のeffortsを占めるのか明瞭な表現になっていない。予算のメジャーな部分を占めるのは、観測体制の整備・保持とデータベースの構築、および"3.新たな観測・実験技術の開発"であるので、次期計画では、観測体制の整備・保持とデータベース構築に関する地震・火山の一本化が、明瞭に記述されることが重要である。このことは、"観測研究の縮小が危惧される観測・監視体制の維持への対応"に関する具体策にもつながる。
  • ● 「1.地殻活動モニタリング観測およびデータベースの構築(1)地殻活動・地震活動のモニタリングシステムの高度化;(2)地殻活動情報総合データベース」として、オリジナルで「(2)地震発生と火山噴火の予測」とある部分は「2.地震発生・火山噴火に至るプロセス解明のための研究の推進」に入れる。
  • ● 地震予知および火山噴火予知研究における、観測や人的資源の効果的集中投下の戦略の必要性について意見を述べる。従来から、地震予知研究は、1全国の概観的観測(一般プラス特定)、2異常が発見された地域での集中観測(観測強化)、3予知のための観測集中の順に、段階的に観測資源を投入する、いわゆる3段階エスカレート方式(注)で進められてきており、これが初期の建議の基本的な考え方となっている。最近は、推本によって基盤観測が整備され、観測のインフラ整備は格段に進歩したが、複雑な地震現象を理解するためには、当然ながら現状でも十分といえる状況ではない。基盤観測網が整備された現時点においても、観測資源や人的資源を効率的に振り分けることは引き続き重要であり、現時点における観測資源の振り分けに関する戦略を示すことが有効であると考える。
    • (注) 昭和43年建議での地震予知戦略(いわゆる「3段階エスカレート方式」)
      • 第0段 全国にわたる基本的測地、検潮および大、中、小地震観測
      • 第1段 4つの基準 → 特定観測地域(平時から研究観測を強化)
      • 第2段 (第0段、第1段の観測により)異常な現象が発見された地域 → 強化観測地域((予知連の協議に基づき)移動観測班等による観測強化)
      • 第3段 (第2段の観測資料を予知連において検討の結果)異常な現象が地震に関連するものと認められた地域 → 観測集中地域(移動観測班を必要数集中と高密度での従来の研究観測実施)
  • ● 地震と火山の共通する研究テーマを探ることは、次期新計画のサイエンスプランとしては重要ではある。しかし、一方、そのような境界領域については、必ずしも、地震からも火山からも最重要課題であると認識されていないよう様に思われる。すなわち、組織のためにサイエンスプランを作るという本末転倒した印象を受ける。しかしながら、地震波トモグラフィーや電磁気(MT)によって地殻・上部マントル内の不均質構造を解明することによって、地殻深部のマグマ発生、地殻内流体の分布を明らかにすることができれば、それは、内陸地震の発生場や、火山深部のマグマ供給に関して重要なテーマとなりうる。しかしながらそれは、必ずしも内陸地震発生や火山噴火の短期的な予知に直結するものではない。特に火山噴火予知ではこれまでこのようなbasicなテーマが噴火予知計画の重要課題として取り上げられていなかったので、火山噴火予知計画がよりbasicな研究にシフトした印象を受ける。
  • ● 地震予知のための研究計画が基盤観測網の全国整備が一巡してから2期目に入るにあたり、3(2)観測の技術高度化と、4体制強化とに、またがる事であるが、「地震予知のための研究用基礎震源・験測データベース」構築を他機関連携でスタートさせて貰いたい。
     次期には、オフライン処理(後でゆっくりやるものなので、処理時間や処理方法の制約がゆるい)用の高度な地震波到達時刻・振幅の自動(または半自動)読み取りソフトウェアの開発活動が活発な場合にも利用可能なもの、沖合いなど取り囲まない場合でも利用可能なものと、これまでの取りこぼしを補うために、ネットを利用して、全国にいる地震関係の学生や院生を各人は週に数時間ずつ、全体で1,000人時/週 分継続的に雇用して、これからのデータ処理補助と、これまでの十年の処理の補完チェックを実施するとを連動させて、最終的には半年遅れ程度で構わないので、業務とは別の、地震予知研究コミュニティの共有ソースとしての「地震予知のための研究用基礎震源・験測データベース」を次期の間に構築する。という提案を行いたい。
     これによって、若い人には奨学金的な資金を与え、安心して進学して貰うとともに、地震現象への一定の常識を育める。一方、活動が高まったときに明らかに人員不足が生じる現在の気象庁による一元化震源を求める処理体制の補完をし、業務超えたデータを蓄積して地震予知研究を展開するに十分な質が保証された(マグニチュード2以上で十分と思うので、処理はマグニチュード1.7ぐらい以上を狙う)研究の出発点となる。
  • ● 最近数多く発生している内陸地震への取り組みは、社会が地震に関して最も強く関心を抱いている課題である。既に大きな成果の上がっている海溝型の研究をさらに発展させることは当然であるが、一方、最近、鳥取県西部、福岡県西方沖、中越、能登半島、中越沖など被害を伴う内陸地震が相次いで発生している状況を考えると、内陸地震の防災・減災への国民への関心は極めて高い。建議としても、これに対する回答を用意する必要があるのではないか。例えば歪集中帯における集中的観測なども一案と考えるが、鳥取県西部、福岡県西方沖、能登半島は、必ずしも歪集中帯で発生しているともいえないので、現時点で歪速度が小さい場所でマグニチュード7ないしはそれよりやや小さいクラスの内陸地震が発生する仕組みを明らかにするための何らかの処方箋を示すことが必要ではないかと考える。
     また、地域ごとの地震発生の危険度の指標として、過去には第二回の建議を受けて地震予知連が指定した特定観測や観測強化などの地域指定が、また、最近では推本が作成した地震動予測地図が、それぞれ実態として社会に受け止められてきた。しかし、予知連の地域指定の根拠は現在の地震学の水準からみて必ずしも明白ではなく、一方、地震動予測地図は最近発生した鳥取県西部、福岡県西方沖、中越、能登半島、中越沖などの内陸地震の震源で強い地震動を予測していたわけでない。したがって、社会への説明責任を果たす意味でも、最近多く発生している内陸地震について、建議がどのように考えるか、また、内陸地震に対してどのように調査研究を進めるべきかについて方向性を示すことが必要ではないかと考える。
  • ● どのような提案をすることが期待されているのか、項目名だけでは判断しにくい項目がある。たとえば「1(2)ウ.地震活動評価と発生予測」というのは、たとえば地震活動の静穏化による発生予測のようなものを指すのだろうか。また、「3(2)エ.プレート境界の固着状態のモニタリング技術の開発」というのは、おそらくアクロスプラス反射波の変化といったことを想定しているのだと思うが、GPSや小繰り返し地震である程度モニタリングできているので、それを含めないのなら「新たなモニタリング技術の開発」と明確にした方が良いように思う。項目名の変更が難しいのなら、建議の中で、誤解の生じないように説明していただく必要がある。
  • ● 重要なキーワードは、項目名レベルで見えていた方が良い。たとえば、「津波予測の高度化」、「スローイベントとアスペリティの実体解明」、「伏在断層の同定」、「地震の連動」等はこの5年の重要なキーワードであり、解決を求められている問題だと思うので、もし、今回のアンケートで上記のキーワードのどれかに関する提案がある程度の量あれば、そのような問題意識が見えるように、新たな項目を立てた方が良いと思う。
  • ● これまで地震予知に関しては「研究計画」、火山噴火に関しては「予知計画」となっていたのは、予知の実用化の観点から両者の間に大きな差があったからであると認識する。それを「地震・火山噴火予知研究計画」として統合し、構成上も区別をなくしたとき、それが特に「火山噴火予知」からの撤退と見られる恐れがある。もし撤退が意図するところでないとすれば構成上に多少の変更が必要であろう。原案のままであれば、撤退することが隠れた目的ではないかと推測する人も多いであろう。
  • ● 今の骨子案であらわに見えないが、火山の分野で、重要なキーワードを列挙すると、1「活火山の集中総合観測・構造探査」、2「火山情報の向上(噴火警戒レベル)」、3「基礎データの蓄積と活用」などである。
     キーワード1は、骨子案の1で、また、2は、骨子案の4(5)あるいは1)で提案したような追加の大項目(たとえば、5.研究成果の社会等への還元)に入れることが考えられる。キーワード3に相当する内容については、骨子案1(3)に含められるようにも見えるが、今の骨子案の内容とは異なっているようにも思える。火山観測データのデータベースは1(3)でもよいが、他の分野の研究者、教育、実務者などにも広く活用されてきた火山地質図、火山基本図、海域火山基礎情報図、火山のハザードマップ等をどのように位置づけるか?これらは地震の活断層の分布図や地震動の予測地図に相当するものであり、研究成果の還元(活用・普及)で記述するほうが、適当であると考える。
  • ● 火山についてもmultidisciplinary性が高く、活動性が高く観測研究に好適ないくつかの火山を選定して、集中的な観測を実施し、マグマの移動メカニズムを明らかにする研究が行われるべきであり、それの根拠となるオールジャパンの視野にたった観測および人的資源の効率的集中投下の戦略が示されるべきであると考える。
  • ● これまで、火山噴火予知計画は火山活動を支配する物理的・化学的素過程を明らかにし、演繹的に噴火予知を達成することを目標としてきた。これは、科学の進展させる道筋では王道といえるが、実際には、多くの困難を伴い達成ははるか先のことと思われる。
     一方、例えば「火山性地震が発生すると必ず有珠山は噴火する」等の経験則を利用した、いわば帰納的噴火予知は、経験則自体の根拠は必ずしも明らかでないものの、実践的な噴火予知において多くの実績をあげている。今後も、防災を念頭においた噴火予知の実践は、多くの場合、過去事例や類似火山の活動を参考にした帰納的推論による手法によらざるを得ないのが実態である。また、防災に有効とされるハザードマップの作成も過去の噴火履歴や他地域の類似火山の活動事例から帰納的に類推されるシナリオに立脚することが多い。
     しかしながら、現状では、火山活動を予測するシナリオの作成手法について、客観性、網羅性、自動化などの観点から十分検討されているとはいえない。噴火予知計画でもこの主題が正面から検討されてこなかったと考えられるが、防災への貢献を万全とするため、今回の計画からこれも項目として立てることを提案する。
  • ● これまで行われてきた地震予知のための新たな観測研究計画の枠の中へ火山噴火予知計画の項目を割り振って、地震と火山を同じように扱おうとする印象を持ちます。火山噴火に素過程の項目は必要無いと思います。例えば火山噴火素過程として2.(3−4)ウにマグマの発泡・結晶化・脱ガス過程の解明を挙げていますが、2.(3−2)イに含めても良いと思います。
  • ● 火山噴火には先行現象があることは自明で、それらを観測して事前避難など行っています。先行現象と噴火予測とを結ぶ「火山噴火先行現象と噴火様式、場所、規模との関連の解明」のような項目が必要かと思います。
  • ● 全体の構成を見ると、マグマが深部から上昇してスムーズに噴火する過程を研究することを前提としている印象を受ける。教科書的な火山噴火を対象とした場合には、予知計画は特に問題なく進められると思うが、現実の火山ではマグマの上昇が順調ではなく、噴火に至らないケースなども多い。また、マグマから分離した火山ガスが水蒸気爆発を発生させる場合もある。項目は変えないとしても、噴火未遂を視野に入れた研究が進められるような書き方をする必要があると思う。
  • ● 5年後の成果として、社会から求められていた「この部分が明らかになった」と言える目標が見える構成とする必要がある。現骨子案にもその意図は感じられるが、研究者サイドから見た目標という印象が強い。社会的に要望の強い内容に応える項目も必要ではないか?たとえば、内閣府、気象庁などで検討されている火山活動のレベル化と防災対応において、噴火シナリオの作成が必要とされているが、現存する資料だけでは十分ではないことが明らかになりつつある。こうした行政から明確に要望されている事項を5年後にどのような形で解決していくかが見えるような項目を入れてはどうか。
  • ● 「古地震学的調査」を追加していただきたい。その目的は、1少なくとも長期評価を実用に足る精度にまで向上させること、および2タイミングの議論だけでなく、古地震学的アプローチに依らなければ、活断層の一回地震変位量等を微分的に求めることができないからです。
  • ● 「活断層の位置形状情報の精査およびセグメンテーション検討」の追加をお願いします。「3-3 ア」に含まれているという判断もあるかもしれませんが、アスペリティの推定以前の基礎的情報の欠如は深刻です。最近、推本において、活断層の位置・形状の見直し作業をすると、抜本的に起震断層モデルを見直さざるをえない発見が続いています。最も重要な基礎情報を見直さないままに、アスペリティを推定しても無意味です。

【1. 地殻活動のモニタリングと予測シミュレーションのための観測研究の推進】

  • ● 全体の構成については特に異議はないが、計画が単なる学術計画ではなく、社会的要請の強い地震予知、火山噴火予知の実現のための研究計画であることが明瞭にアピールできるような工夫が必要ではないだろうか。
  • ● 地殻活動・火山活動のモニタリングを中心に据え、そのための技術開発と基礎研究を行うという基本方針は手堅く、良いと思う。
  • ● 我々は「シミュレーション」と「予測システム」は別物であると認識すべきと考えます。「予測システム」は、「観測(観測モデルを含む)」と「物理モデル」とが弁証法的に止揚(結合)したもので、どちらの要素を持ちつつも、どちらでもないものです。この大項目でやるのは「シミュレーション」だけではなく、ましてや「観測」だけでもありません。「予測システム」も取り扱うため、「予測シミュレーション」とか「観測研究」という言葉をやめて(個人的にはここには強いこだわりがあります)、たとえば「地殻活動のモニタリングと予測システム(あるいは予測モデル)に関する研究の推進」などのようにするのが良いと思います。
  • ● 1では、「モニタリング」と「シミュレーション」が並列して書かれているが、その内容を見ると、「シミュレーション」についての位置づけが弱い。少なくとも、現計画と同様に、「予測シミュレーションモデルの高度化」を、計画案に入れる必要がある。
  • ● 1.に関して、シミュレーション、モニタリング、データベースの3項目が密接に連携してシミュレーションの高度化を目指すという精神が見えてこない。
  • ● 大項目1.が前にあるので、こちらがより根本的な地殻活動を取り扱うのか考えると、1-(1)には地震活動の言葉はあるものの、地殻活動の根本であるプレート運動などの言葉が出てきません。そもそも「地殻活動」という言葉が計画で使われるのは、地震の発生を理解するためには、地震以外も含めた地殻の変動現象を理解することが必要だからでしょうが、結局地震活動しかモニターしないのなら、地殻活動を使う意味合いはほとんどなくなっているように見えます。
  • ● 重複しているとは言えないですが、モニタリング{1−(1)}を行った結果をまとめたものは即地殻活動データベース{1−(3)}の内容となるでしょうから、これらの項目は互いに密接な連携を必要とします。次期計画で大枠として分けてしまうことで連携の不足や、モニタリングとデータベースの内容がそれぞれ別の方向を指向したりすることになると、全体の体系化する上で機能が不全となる可能性があります。このような事態をさけるためにあらかじめ強い連携を持たせたり、相互の連絡を密にするような工夫が必要だと思います。
  • ● 1の内容はモデリングの高度化と予測のためのシミュレーションの実施、であると思われるが、タイトル「地殻活動のモニタリングと予測シミュレーションのための観測研究の推進」は全く内容を表わしていない。2次の計画でも同様であったが、「地殻活動予測シミュレーション」と「モニタリングのための観測研究とも読めたので、おかしい点が目立たなかった。今回シミュレーションとモニタリングの順番を逆にしたので、その点が明らかとなった。
  • ● 連携を意識するあまり、連携することによって成果の上がる課題、個別に取り組むことによって成果の上がる課題があいまいになることは避けるべきである。各機関から計画が出そろい、起草する段階で、骨子(案)の再構成も必要であろう。
  • ● 地方のテレビ局ではあるが、本年10月から開始される緊急地震速報を地震予知の成功として報道した。震源に近い被災地では地震予知の成功とは誰一人として言わないと思うが、多くの国民にとって足下の揺れることが事前に分かれば、やはり地震予知成功となろう。時代とともに予知のレベルは進歩するが、国民は現状における実用的な地震予知および火山噴火予知、平たく言えば「役に立つ予知」を望んでいるように思える。私ごとになるが、1988年十勝岳の噴火の際に、地元行政機関の防災担当者にハッキリと「役に立たない学問はいらない」と言われた経験がある。30年余りに渡って推進された予知研究が、今まで以上の理解を得るためにも、骨子(案)にある課題が実用的な予知にどのように結びつくのか、また、次の5年間で実用化にどこまでせまるのか、研究の到達点を示す必要があろう。
  • ● 中、小項目の個々の課題を見ると、予知研究との関連性にかなりのばらつきがあるように思う。特に基礎研究では、予知研究と関係が無いとはいえないが指し当たっての関連性が明確でなく、予知研究の予算ではなく科研費でやるべき課題と思われるものも多くある。予知研究の予算を有効に使うためには、予知研究に対するできるだけ明確なビジョン(作業仮説)のもとに、細部まで十分に計画が練られている必要があると思う。そして、重点的に推進すべき項目があれば、予算を集中させるのが良いと思う。
  • ● 現計画と次期計画(案)の相関図の中で、地震予知計画の方は、ほぼ1対1の対応がついていますが、火山噴火予知計画の方は、1項目が、2重から4重に対応づけられていて、不明瞭だと思います。例えば、(3−4)地震発生・火山噴火素過程の(ウ)のマグマの発泡・結晶化・脱ガスは、(3−2)火山噴火過程と噴火様式の(イ)のマグマ発泡に伴う諸現象の解明とほぼ同等の内容だと思われます。また、火山噴火の素過程の中に、マグマの上昇等の移動に関することが抜けていると思います。
  • ● 従来の火山噴火予知計画に比べて項目が細分化されているが、特に小項目の名前や順序は、相互の論理的な関係が明確になるようにすべきである。例えば、2.(2−2)イ.「噴火サイクルの解明」とウ.「噴火ポテンシャルの評価」は、どのような時間スケールの噴火ポテンシャルの評価を対象とするかで、論理的順序が入れ替わる。研究計画アンケート結果を踏まえ、建議起草の初期段階で明確にしてほしい。
  • ● 骨子(案)で所用されている地殻活動という用語に違和感を覚える。火山噴火や火山活動の本質はマグマなど火山性流体の移動が本質であると考えている。この移動は地殻の影響を受け、逆に地殻に影響を与える。この観点から火山活動は地殻活動とも言えなくはないが、噴火予測や活動予測は地殻を通して火山性流体の移動をとらえることであり、地殻活動という用語で一括されると火山活動の本質が見失われる恐れを感じる。また、地殻活動という用語は一般にあまりなじみが無く、受け取り方にも幅があるようにも思え、言い古されてはいるが概念の明確な地震活動および火山活動(火山噴火)という用語を用いるのが望ましいと思う。その上で地震と火山活動が関連した現象であるということを示す必要があるならば地震活動と火山活動の相互作用というような課題を設けるのも良いだろう。
  • ● 1−(1)モニタリング、1−(2)予測、データ同化、1−(3)データベースという順番が不自然に見えます。(1)モニタリング、(2)データベース、(3)予測、データ同化の順番の方が自然ではないでしょうか?
  • ● 大項目 1
    1の名称:地殻活動予測統合システムの構築
    • (1)地殻活動モニタリングシステムの高度化
      小項目として
       プレート境界固着すべり状態モニタリングの高度化
    • (2)地震発生と火山噴火予測システム
      中項目を2つに分ける
      • (2−1)物理モデルにもとづくプレート境界地震発生予測システムの構築
        • ア.予測システムを用いた長期評価
        • イ.データ同化手法の高度化
        • ウ.地殻活動予測シミュレーションモデルの高度化
      • (2−2)統計モデルにもとづく予測システム
        • ア.地震活動・履歴評価と発生予測(?)
        • イ.火山活動評価と噴火予測(?)
    • (3)地殻活動予測を目的とした観測情報の集積と統合化
      小項目として
      • プレート境界地震発生予測システムのためのデータベース開発
      • あるいはプレート境界固着すべり状態データベースの開発
      • 「日本列島の地殻構造:地殻媒質モデルの構築」を追加
      • 理由:地殻活動情報を理解するためには、構造:媒質モデルの構築が不可欠

     (1)と(3)に追加する小項目は、(2−1)物理モデルにもとづく予測に直接関係してくる部分で、独立して扱った方がいいと思われる。

     また、1.の(1)のイで「東海地域、東南海・南海地域の地震・火山活動」となっているが、これは「東海地域、東南海・南海地域の地殻・上部マントル活動」と修正。理由:上記地域で火山活動は少し違和感がある。

【1.(1)地殻活動・火山活動のモニタリングシステムの高度化】

  • ● 1.(1)「地殻活動・火山活動のモニタリングシステムの高度化」は、「地震・火山活動のモニタリングシステムの高度化」とした方が良い。
  • ● 1.(1)のモニタリングは2の項目のいずれかに該当するため、区分の判断が困難である(1と2の違いが不明確)。例えば、海底地殻変動観測は2(1)にも該当する。
  • ● 1.(1)において「東海地域、東南海・南海地域」と「地震発生・火山噴火の可能性の高い地域」との関係をすっきりと書けないでしょうか。
  • ● 1.(1)のア、イ、ウのうち、「モニタリングの高度化」という句が「ウ」にしかないが、大学は「高度化」することが研究の中心となっているため、列島規模のモニタリングの高度化について「ア」とは書きにくい。1(1)で「高度化」が入っているのでアとイでは省略したのかもしれないが、そうであれば、ウも省略すべきだろう。たとえば「ア.日本列島域の地震・火山活動のモニタリング」、「イ.東南海・南海、東海地域の地震・火山活動のモニタリング」、「ウ.地震発生・火山噴火の可能性の高い地域のモニタリング」ではいかがか。
  • ● 第1章において、噴火予知に関する項目が分断されてしまい、噴火予知の戦略が見えにくくなっている。噴火予知の戦略に関わる項目は、噴火予知の章として、一括りの章にした方が、意図が明確になるのではないか。

    (代替案)

    • 第1−1章 地殻活動のモニタリングと予測シミュレーションのための観測研究
      • (1)地殻活動のモニタリングシステムの高度化
        • ア 日本列島域の地震観測
        • イ 東海地域・東南海・南海道地域の地震活動
        • ウ 地震発生の可能性の高い地域でのモニタリング
      • (2)地震発生の予測
        • ア、イ、ウは原案通り、エは次章に。
    • 第1−2章 火山噴火予知のための観測とモデリング
      • ア 火山活動監視のための観測強化
      • イ 火山活動把握のための観測の高度化
      • ウ 火山活動のモデル化と活動評価・予測
    • 第1−3章 地殻活動情報総合データベース
      • ア、イとも原案通り
  • ● 1.(1)ア.の「日本列島域」と「全国」は意識して使い分けているのか?
  • ● 1.(1)ア.火山に付設された気象庁の地震観測点は不十分である。御嶽山・焼岳の二つの火山で気象庁の地震観測点はわずか御嶽山に1点だけである。大学の観測施設の維持が非常に困難な情勢であり、気象庁の地震観測点の拡充を図るべきである。
  • ● 1.(1)ア 「日本列島域の地震および全国の火山活動」について、地震と火山の範囲が「日本列島域」と「全国」では、整理ができていないのではないか。「地震活動」と「火山活動」と「地殻活動」が混同して使用されているように見受けられる。「地震活動」と表現すると、地殻変動が含まれていないように解釈される場合が一般的であり、「地震活動」ではなく「地殻活動」の方が適切である。
  • ● 1.(1)ア 「日本列島域の地震及び全国の火山活動」の項目名は、「日本列島域の地震及び火山活動」が適切と思料する。(理由)日本列島域と全国の違いが不明瞭であり、あえて区別する必要がないと考えられる。
  • ● 1.(1)モニタリングシステムの高度化のアで、「全国の地震」活動とうたわれていますが、イで太平洋側の巨大地震が特記されているのに対して、近年頻発している日本海東縁および神戸−新潟のひずみ集中帯の地震のモニタリングや予知研究がおざなりにされている感があります。災害の大きさと頻度を考えると、これを大きな項目として取り上げないのはいかがなものかと思います。
  • ● 1.(1)イのタイトルの「東海地域、東南海・南海地域の地震・火山活動」を「東海地域、東南海・南海地域の地殻活動」に変更する。(理由)地殻変動のモニタリングが読めない。
  • ● 1.(1)イ.に「火山活動」が入るのは違和感を覚える。
  • ● 1.(1)イ.「東海地域、東南海・南海地域の地震・火山活動」は、東南海・南海の火山活動を研究するように見え、違和感をおぼえる。東海地域が後にきた方が抵抗が少ない。たとえば「東南海・南海地域および東海地域の地震・火山活動」ではいかがか。
  • ● 1.(1)イの「東海地域、東南海・南海地域の地震・火山活動」では地震活動・火山活動といった場合、東南海・南海地域には地震・火山噴火予知計画で取り扱うような火山活動はないのではないか?
  • ● 1.(1)イ 「東海地域、東南海・南海地域の地震・火山活動」は、「東海地域、東南海・南海地域の地震活動」にすべき。
  • ● 1.(1)イ 「東海地域、東南海・南海地域の地震・火山活動」という地域設定は、地震を対象とした場合と、火山を対象とした場合とで必ずしも重要な領域が一致しない。例えば、「地震予知のための新たな観測研究計画」では、伊豆半島域や伊豆諸島は東海地域としては分類されていないが、火山については伊豆半島・伊豆諸島域は同程度に観測を強化すべき対象である。火山を含める際は、例えば「東海・伊豆地域の地震・火山活動、東南海・南海地域の地震活動」とでもすることも検討すべきではないか。
  • ● 1.(1)イ 東海地域、東南海・南海地域が特別扱いとなっています。「東海」については、大震法で、「東南海・南海」については、東南海・南海地震特措法で観測の強化が述べられているところですが、同様に「日本海溝・千島海溝」についても、日本海溝・千島海溝特措法で観測の強化が述べられています。日本海溝・千島海溝についても、一項目上げておく必要はないでしょうか。
  • ● 依然として「東海,東南海・南海」という表現が使われている。これは、旧来の計画の流れにそったものであり、「東海」のみを特別扱いするのは、科学的というよりはむしろ政治的な配慮と思われる。しかし、地震・火山噴火予知計画は、科学的に政治・行政を引っ張るという立場にあるべきだと考える。この観点に立つとこの表題は「南海トラフの巨大地震」とあるべきであり、南海トラフ全体を俯瞰した上で、科学的最先端の研究を進めるのだ、という気概を示すべきである。
  • ● 1(1)ウ 概してGPS観測点は火山噴火口から離れたところに設置してあり、詳細で効果的な火山活動のモニターに十分ではない。GPS観測に限定することなく、他の観測手法も導入することが必要である。

【1.(2)地震発生と火山噴火の予測】

  • ● 1.(2)はモデル化を行ってシミュレーションという順番になると思うが、モデル化が表に出てはいない。陽に見えるようにする必要はないか?
  • ● 1.(2)については、「予測システム」だけではなく「物理モデルの構築(平たくいえば予測に直接は関係のないシミュレーション)」も入ってきますので、それを明示するために、たとえば「地震・火山現象に関する物理モデルと予測システムの構築」などのようにするのが良いと思います。なお、この項目で対象にするのは主として地震破壊現象、地震サイクル、噴火プロセスになると思いますので、そのことをはっきり明示するために、抽象的で何を表しているのかわかりにくい「地殻活動」の代わりに、「地震・火山現象」という言葉を用いています。
  • ● 1.(2)のアとイに関してはやることは全く同じで、アのモデルの一部分を精査するのがイということになるかと思います。そうするとわざわざここで分けてしまうと逆に研究を分断する恐れもあります。そこで、アとイとを結合して、「地震・火山現象に関する(データの整備と)予測システムの構築」などとするのが良いと思います。(データの整備に関しては、データベース関連の研究者が積極的に応募できるよう配慮するために必要であれば入れる)
  • ● 「直接予測に関係しないシミュレーション」のための項目(項目名は、たとえば「地震・火山現象の理解のための物理モデルの拡充(高度化)」など)を、1.(2)アの一つ上に置くべきと考えます。つまり、予測システムの構築はおそらくは非常に単純化された系で研究を進めていくことになると思いますが、実際の現象の様々な過程をきちんと理解することは本質的に重要で、将来、現実的な予測システムを構築する上で必要不可欠な要素でもあります。
  • ● シミュレーションに関する個所は、1の(2)のアとイに表れているが、いずれも「日本列島域」や「特定の地域」というように、対象地域を限定したものである。これは、「基本的プロセスは、すでに理解ができており、モデルパラメタを決めれば、地震現象のシミュレーションは、すでに可能」との印象を与える。しかし、周知のとおり、地震現象の基本的理解への道のりは遠い。地域性を理解するためにも、地域性を包括する一般的モデルの構築とシミュレーション手法の開発が必須である。地震現象は、多様性と単純性を併せ持つということから、非線形性の発現に他ならないと考える研究者は多い。このような現象の基本的理解のためには、高度な数学的定式化とシミュレーションの実施が不可欠であり、シミュレーションの高度化が果たす役割は大きい。
  • ● 次期計画の地震予知に関する部分では,地殻活動予測の取り組みを進めることが中心的な課題になると考えられる。そのためには、数値シミュレーションとモニタリングシステムをデータ同化によって有機的に結合することが必要不可欠であるが、このデータ同化システムは開発途上であり、それに特化した課題が必要である。また、予測システムにおいてはモニタリング、データベースと数値シミュレーションの密接な連携が大変重要であるが、現在の骨子案では、そうした連携の仕組みが見えていない。また、現時点においては、日本列島規模と特定地域を項目として分ける意義は感じられない。そこで、1の(2)を以下のように修正することを提案する。

    • (2)地震発生と火山噴火の予測
      • (2−1)物理モデルにもとづく予測システムの構築
        • ア.予測シミュレーションと連携したデータ同化実験
        • イ.データ同化手法の高度化
        • ウ.地殻活動予測シミュレーションの高度化
      • (2−2)統計的手法による予測の高度化
        • ア.地震活動評価と発生予測
        • イ.火山活動評価と噴火予測

     また、モニタリング、データベースとの連携については、建議の文案を作成する際に、十分考慮されるように希望する。

  • ● 1.(2)のシミュレーションにおいて、手法の高度化を図る部分がない。現在の構成では、既存の手法のみで進めるという風に読める。
  • ● 従来のモニタリングとデータベースの研究課題のうち直接的にシミュレーションの高度化に資する可能性のある課題については、シミュレーションの項目の中で受け入れ可能であることが読みとれるような表現も盛り込むべきである。
  • ● 1.(2)地震発生と火山噴火の予測、というのも内容をあらわしていないように思われる。予測に向けた研究というものであろうか。さらに火山においても大規模な数値計算はなくとも、よそくのためのモデリングは行っているので、その点を考慮した小項目のタイトルが望まれる。
  • ● 1.(2)イの[特定の地域]は漠然としており、どのような理由で[特定]なのか分かるようにする方が良いと思われます。

【1.(3)地殻活動情報総合データベース】

  • ● 1.(3)「地殻活動情報総合データベース」については小項目のア、イに「データベース」が記載されているが、観測データ、解析結果の共有化の手段としてのデータベースと考えた場合、中項目については「データ流通」や「データ共有」を項目名とすることを検討すべきではないか。
  • ● 1.(3)「地殻活動情報総合データベース」に関して、国土地理院では、現建議の地震2.(3)ア.及び火山3(3)に基づき都市圏活断層図、火山基本図及び火山土地条件図の整備を行っている。現計画と時期計画の相関図(統合案)では1.(3)ア.に統合される。従って、1.(3)の項目名を「地殻活動・火山活動情報総合データベース」とし、1.(1)の「地殻活動・火山活動のモニタリングシステムの高度化」との整合を図るべきではないか。また、1.(3)イ.についても同様と考える。よって、以下の考え方も検討してはどうか。
    • 1.(3)「地殻変動情報総合データベース」 → 「地殻活動・火山活動情報総合データベース」に変更
    • 1.(3)ア.「日本列島地殻変動情報総合データベースの構築」 → 「日本地殻活動・火山活動情報総合データベースの構築」に変更
  • ● 1.(3)イ.は「情報発信」?
  • ● 1.(3)に「地殻活動情報総合データベース」とあるが、1章でのこの位置づけがよく分かるように、(1)−(3)を並べ替え、タイトルがより好ましいように変えるのが良いと思う。(2)から(1)から(3)あるいは(1)から(3)から(2)

【2. 地震発生・火山噴火に至る地殻活動解明のための観測研究の推進】

  • ● 以下の項目の想定されている研究の違いが明確でない(よくわからない)。
    • 2.(2−2)イ.噴火サイクルの解明、2.(2−2)ウ.噴火ポテンシャルの評価、2.(3−2)エ.噴火の推移と多様性の把握
      および
    • 2.(3−2)ア.噴火直前過程、噴火機構の解明、2.(3−2)イ.マグマ発泡に伴う諸現象の解明
  • ● 2.(2)、2.(3)地震については余効変動に関する小項目、火山に関しては噴火活動の収束に関する小項目を設けることも検討すべきではないか。例えば、2.(2)の「地震・火山噴火に至る地殻活動」あるいは、2.(3)の「地震・火山噴火の直前過程と地震破壊・噴火過程」に含めるか、別途項目を立てる必要がある。
  • ● 大項目 2.
    • 2.(1)のアに「海域のリアルタイム精密地殻活動」を追加
    • 2.(3)のウの「先行現象と地震の切迫をつなぐメカニズムの解明」は
      • 「先行現象の高精度観測とその発生モデルの構築」、
      • 「先行現象と地震発生過程の関連性評価」
      の2項目に分ける。

     現計画にあった「地震発生サイクル」が次期計画案では消えている。履歴にもとづく予測にとっては地震発生サイクルは最重要研究課題であり、特に超巨大地震や連動型地震の研究で超サイクルを考える必要性が明らかになるなど、次期計画でも重要な位置付けにすべきと思われる。

     2.(3−1)について、先行現象というと、どちらかというとパッシブな観測によってとらえられる現象を対象としているように思える。破壊切迫度の評価に有効なアクティブソースがないかを調べる研究も必要と思われる。

     素過程は(3−4)ではなく(4)にすべき

【2.(1)日本列島及び周辺域の長期広域地殻活動】

  • ● 近年の宮城県北部、鳥取県西部、福岡県西方沖、新潟県中越、新潟県中越沖などの地震の教訓は、地表に現れる痕跡の少ないマグニチュード7未満程度の将来の大地震の震源域を推定する手法の開発が急務ということであったはずだが、この案だと2(2)(2−1)の膨大な計画の中に埋もれてしまう。この問題については重要であるため、別途、項目立てた方が良いのではないか(下記の「活断層グループからの提案」も参照されたい)。

    (活断層グループからは、下記の意見が寄せられている。)
     項目についての意見です。提案では活断層・古地震学的研究に対応する項目がありません。しかし、同研究は地震予知研究の中で内陸地震の発生場所・規模予測・長期評価にとって、極めて重要な成果をあげてきました。さらに、次期計画においても同研究の重要性は大きいと考えます。
     活断層・古地震学についての研究は、内陸直下型および海溝型地震の発生様式を明らかにし、将来予測を実現していく上で基礎的かつ重要な項目です。こうした背景のもとに実施された第二次新地震予知計画では、西南・東北日本の津波堆積物の研究や海岸隆起イベントを元に、通常の海溝型地震の発生サイクルを超える低頻度の連動型巨大地震が発生したことが明らかになるなど、極めて重要かつ興味深い研究成果が得られつつあります。このように過去の内陸直下型・海溝型地震の発生メカニズムは複雑であり、その発生様式を本質的に理解するためには、地球物理学的な方法で測定される時間スケールで越えた、地質学的時間スケールでの研究を推進・蓄積していくことが必要です。また,地震の発生規模を特定するためには、地表から地下構造を統一的に理解する3次元的な活断層の分布・形状を明らかにすることが必要です。2007年中越沖地震などの内陸地震は、これまで見逃されてきた海陸境界域の伏在断層による地震であり、海岸隆起地形や沈降イベントなどを手がかりとした間接的手法により震源断層を特定する必要性が高まっています。
     このように、活断層・古地震学的研究は地震予知研究の中で未解明かつ重要な数多くの課題を解決することに貢献でき、継続的な調査研究が必要であると考えます。こうした背景から、新しい項目として、「地震サイクルと長期地殻ひずみ」という項目を、新たに追加いただくようお願いいたします。この項目は、全体の構成から判断して、2.地震発生・火山噴火に至る地殻活動解明のための観測研究の推進(1)日本列島および周辺行きの長期広域地殻活動 エ. 「地震発生サイクルと長期地殻ひずみ」として、追加して頂くことを提案したいと思います。(複数大学等の活断層研究者が賛同)
  • ● 「2(1)日本列島及び周辺域の長期広域地殻活動」というのは、長期かつ広域の現象をここに分類することは問題がないが、長期かつ局所域の現象について、ここに入れて良いものかどうか迷ってしまう。たとえば特定の火山や活断層の深部構造はここに入らないと思うのだが、そうであれば、「長期」というのは削除した方が良いように思う。逆にこれらをここに入れるのであれば、「広域」は削除した方が良い。「2(1)イ.列島規模の地殻構造と火山深部構造」も、この「火山深部構造」というのが、どの程度の空間スケールをイメージしているのかが掴みにくい。「列島規模の火山深部構造」という意味だとすると、具体的イメージが良く分からないし、逆に特定の火山の深部構造を指すのであれば、「列島規模の地殻構造」との差が在り過ぎる。列島規模の構造の推定が必要なのは、その中の異常域を特定するためであり、そのような観点から、たとえば「列島規模の地殻構造と火山深部構造異常」ならば、違和感は無い。
  • ● 火山の深部マグマ溜りを解明する研究は重要だと思うが、特定の火山(たとえば岩手山)のマグマ溜りを研究する場合、「2(1)イ.列島規模の地殻構造と火山深部構造」と「2(2)(2−2)ア.マグマ蓄積過程の解明」のどちらに入れるのかが不明確である。2(1)イの「火山深部構造」というのは、たとえば、列島規模で火山深部に共通に見られる構造の推定だけを指すのか。それとも特定の火山であっても深部構造の推定であればここに分類されるのか。混乱が生じないような項目名にしてほしい。もし、後者であるなら,「列島規模の地殻構造」と併記すべきではないと考える。
  • ● 2.(1)イ、列島規模の地殻下線部ここから・マントル下線部ここまで構造と火山深部構造 下線部を追加。ウでマントルウェッジのダイナミクスを挙げているが、ダイナミクスの把握にも、また火山深部構造という観点からも、「地殻・マントル構造」とすべき。

【2.(2)地震・火山噴火に至る地殻活動】

  • ● 地震と火山の観測データのシームレス化を実現し、地震・火山噴火をマルチスケールな現象としてとらえて観測研究を推進する計画を立案している。具体的には、内陸地震と活動的火山が同居する地域での地殻活動の解明に基づく内陸地震・マグマ供給モデルの高度化を目指しているが、次期計画骨子(案)には、このような地震と火山とにまたがって実施するような項目が含まれていないため、以下のような項目を提案する.
     2.(2)地震・火山噴火に至る地殻活動(2−0)内陸地震と活動的火山が集中する地域での総合観測研究(新規)
  • ● 2(2)(2−1)は極めて重要であるにもかかわらず、分類が大雑把であり、内容をつかみにくい。現計画の「1(2)イ 内陸地震発生域の不均質構造と歪・応力集中機構」のようにもう少し計画内容をつかめる項目名を考えてはいかがか。また、2(2)(2−1)はもう少し細分化するか重要な項目を追加する方が良いように思う。
  • ● 2(2−2)火山噴火予知研究では、1年単位で活動的な火山において多項目観測による集中観測を実施してきた。これにより火山活動の総合的な理解などの成果が上がってきた。しかし、火山活動は時間的にも大きく変化し、継続的な取り組みが必要である。そこで、3〜5年という期間でもって集中観測を一つか二つの火山について継続実施することにより、火山噴火準備過程の理解や噴火ポテンシャルの評価ガ大きく前進すると考える。
  • ● 2.(2−2)火山噴火準備過程と噴火ポテンシャル(火山)の小項目ア〜ウはお互いに密接に関連しており、あえて分ける必要があるかどうか疑問である。(2−1)地震準備過程(地震)のア〜ウにおいて発生する場所で分けられているように、噴火様式によって「ア マグマ性噴火」、「イ 水蒸気爆発」としてはどうか。その場合、(2−2)は「火山噴火準備過程」となる。小項目ウの噴火ポテンシャルというキーワードを残すべきであれば、地震予知のシミュレーションに対応させ、1.(2)エ.火山活動評価と噴火予測を「1.(2)エ.噴火ポテンシャルの評価と噴火シナリオ」としてはどうか。
  • ● 噴火準備過程としてのマグマ溜まり内におけるマグマの進化(温度、組成)に関する研究に該当する項目がないため、2(2−2)「ア.マグマ蓄積過程の解明」に加え、「マグマ溜まり進化過程の解明」もしくは「マグマ溜まりにおける噴火準備過程の解明」などの小項目の追加を希望する。
  • ● 2.(2)地震、火山噴火に至る地殻活動において、(2−1)地震と(2−2)火山の小項目の項目建の性格が異る。火山の方を整合的にしてはどうか。またポテンシャル評価等言葉は7次地震予知計画では用いられていたが、そのご準備段階とされている。これも統一された方が良いように思われる。
  • ● 2.(2−2)の中に「マグマと熱水系の相互作用の理解」、あるいは「水蒸気爆発の準備過程」という小項目を含めておく方が良いと思う。

【2.(3)地震・火山噴火の直前過程と地震破壊・噴火過程】

  • ● 2.(3)地震の直前過程が重要であることは分かるが、火山噴火の場合には直前過程だけでなく、噴火開始後の過程を理解することが重要であり、それが噴火様式や噴火継続期間の予測につながる。したがって、タイトルは「地震の直前・破壊過程と火山噴火過程」というような並びとなる。
  • ● 2.(3)ア.イ.ウ.の各項目は、前回(第2次)に比べて、格段に現実の地震予知研究に近い項目になっており、高く評価します。一つだけ、イとウの「先行現象」を「異常現象」に修正していただけたらと思います。(3)(3−1)には「直前過程」、「先行過程」という言葉が使われています。「直前」も「先行」も、そのあとに「過程」と続いていますので誤解はないと思いますが、「先行」のあとに「現象」が続くと、いわゆる「前兆現象」と同じ印象を受けます。「先行現象」にしても「前兆現象」も、来るべき地震が分かっている場合に使われる用語で、来るべき地震が分からない段階(予知ができない段階)では、見えている現象は、それまでとは異なるという意味の「異常現象」です。ア.で「異常抽出・・・」とありますから、イ.ウ.でも「異常現象の・・・解析」、「異常現象の・・・解明」とした方がすっきり、かつ誤解もないと思います。
  • ● 地震と火山との観測データのシームレス化を実現し、地震発生・火山噴火の可能性の高い地域でのモニタリング能力の高度化を推進する計画を立案している。地震と火山噴火とは、その発生物理は異なったものであるが、特に力学的現象(地震・地殻変動)に関しては統一的にモデル化し解釈することが可能であると考えられる。具体的には、地震の初期波形を用いた地震の大きさの予測およびリアルタイム津波予測や、火山噴火直前の地殻変動波形を用いた爆発性・非爆発性噴火の予測・噴火推移予測などを、統一的な力学的視点で行う技術の開発を目指しているが、次期計画骨子(案)にはこれにあたるような項目が含まれていないため、以下のような項目を提案する。
     2.(3)地震・火山噴火の直前過程と地震破壊・噴火過程(3−0)地震・火山噴火の初期過程と推移予測(新規)
  • ● 2.(3−1)地震発生先行過程の部分は名称、内容共、昔の地震予知計画を思い出させるものであり、極めて違和感が大きい。こちらではむしろ(3−2)火山噴火過程と噴火様式にならった項目名、項目内容にすべきだと考える。
  • ● 2.(3−1)ウの表現がしっくりこない。「先行現象のメカニズム解明と地震の切迫性の評価」もしくは「先行現象と地震の切迫の関係の解明」のような表現ではどうだろうか?
  • ● 2.(3−2)はアからオの5項目が挙げられているが、それぞれが火山噴火プロセスの1局面に対応した分類になっており、他の項目分類とは異なったものになっている。これについては半分程度に整理しても良いと思う。
  • ● 2.(3−3)長期確率的地震動予測を行う上で、現状の応力場がその断層を駆動しやすいのか議論するという立場がかけているように思います。
  • ● 2.(3−3)ウにある、強震動予測手法の高度化、は推本の調査研究施策と重複しているので、項目の題名を「強震動・津波発生過程の理解」とした方がよい。
  • ● 2.(3−3)ウ今回新たに「津波」というキーワードが入ったが、予知計画では、「津波発生」というところまで、との整理がよいと思われる。津波の伝播ということまで考えると、予知計画の範囲を超えていると思われるため。(ここでは、"津波発生予測"と記されているので、伝播までは含まない考え方であると思われるが)
  • ● なぜ、素過程が2.直下ではなく、2.(3)の下になったのだろうか?マントル、下部地殻のレオロジー、物性といったものも素過程の研究課題で、これらは2.(1)や2.(2)に対する貢献である。
  • ● 2.(3−4)ア.の摩擦破壊現象は限定がきつすぎる。流動則的なバルクのレオロジーも、断層深部延長等に必要。
  • ● 2.(3−4)の素過程の研究は、必ずしも観測研究に立脚してはおらず、モデル実験や数値計算などの重要性を示すことになるかと思います。新計画の名称を仮称のように「地震・火山噴火予知研究計画」と「観測」の文言を外すなら、2のタイトルからも「観測」をとって「地震発生・火山噴火に至る地殻活動解明のための研究の推進」としたら如何でしょうか。
  • ● 2.(3−4)マグマの発泡・結晶化・脱ガス → マグマの分化・発泡・脱ガス 結晶化でも良いが、より包括的な用語として「分化」を提案。また順序として、分化(結晶化)→発泡→脱ガスのほうが自然。

【3. 新たな観測・実験技術の開発】

  • ● 3 新たな観測・実験技術の開発については、観測、実験から実際に起こっている現象を推測するために解析手法の重要性について言及されていない点が、研究面を軽視しているように受け取られる点が、気にかかる。
  • ● 3.新たな観測・実験技術の開発ですが、中項目及び小項目を見ても、どのような実験技術の開発が入っているのか分からない。実験技術という言葉の範囲をどう捉えるかによるかもしれないが、最終的な建議の内容に応じては、大項目の名称を変える必要があるのではないか。
  • ● 「3.新たな観測・実験技術の開発」の項目は、地震にかかるもの、火山にかかるもの、両方に関係するものが項目立てからは分かり難いので、分かり易くするとすれば、地震に関するもの、火山に関するもの、両方に関係するものという形の項目立てもあり得るかなと思います。

【3.(1)極限環境下における新たな観測技術の確立】

  • ● 3.(1)ア 「高深度ボアホールにおける計測技術の開発」とあるが、高深度という用語はおかしい。大深度又は超深度の方が適切ではないのか。
  • ● 3.(1)イ 超深海用の海底地震計の開発等は、極限環境下といえると思いますが、海底諸観測の技術開発は、浅い海の沿岸から深海底までを対象として陸域における観測項目を海域でも実施可能にするための技技術開発です。極限環境下というひとくくりにするのではなく、これまでの小項目から中項目に引き上げるくらいに重要な課題と思います。統合計画ということを意識した項目立てとは思いますが、強い違和感のある項目立てです。各機関の計画もにらみながら、項目立てについては、ご検討願いたいと思います。
  • ● 3.(1)ウ 「噴火活動近傍における観測技術の開発」よりも「近傍域」との記載が良いのではないのか。
  • ● 3.(1)ウ に「噴火活動域近傍」と「域」の文字を入れる必要はないか?

【3.(2)観測技術の高度化】

  • ● 3.(2)イ.は「多項目センサー」と「ネットワーク」の高度化か、「多項目センサー」の「ネットワーク」の高度化か?後者であるなら「多項目観測ネットワーク」とした方が分かりやすい。
  • ● 3.(2)ウ.「宇宙線等による構造探査技術の高度化」は、他の項目に比較して狭い範囲の特定の技術に特化しており、異質な感じがする。挙げるのであれば、もっと一般的な題目の方が良いと思う。おそらく「構造探査技術の高度化」では、通常の手法の改良も含まれてしまうという事を危惧されたのだと思うが、そうであれば、たとえば「新たな構造探査技術の開発」ではいかがか。なお、3のタイトルが「新たな観測・実験技術の開発」となっているのに、3(2)が「観測技術の高度化」ではバランスが取れないように思う。たとえば3(2)を「観測技術の高度化と新規開発」としてはいかがか。
  • ● 「津波」という名称が2(3)(3−3)ウの「強震動予測手法の高度化、強震動・津波発生予測シミュレーション」のところにしか出てこないが、津波予測の高度化は急務であり、「3(2)観測技術の高度化」に、津波予測システムの高度化を加えることを提案する。

【3.(3)宇宙技術等の利用の高度化】

(特に意見なし)

【4. 計画推進のための体制の強化】

【4.(1)地震・火山噴火予知研究計画を推進する体制の整備】

  • ● 4.(1)「地震・火山噴火予知研究計画を推進する体制の整備」について、「ア.地震調査研究推進本部との連携強化」があるものの、現建議のレビューで述べられた火山に関する「推本」相当機関の設置について触れられていない。「エ.火山噴火予知連絡会の機能の充実」とは別の項目として立てることを検討すべきではないか。
  • ● 4.(1)地震予知連だけが、「情報交換等の場としての」という修飾語がついているのは並びが悪い。これを削除して「ウ.地震予知連絡会の充実」とするか、他の項目についても「まるまるとしての観測研究推進委員会の充実」「まるまるとしての火山噴火予知連絡会の充実」とすべきではないか。
  • ● 4.(1)ア 地震予知計画は地震調査研究推進本部の施策の一部である(推本が平成11年に策定した「地震調査研究の推進について」において地震予知のための観測研究を当面推進すべき施策のひとつとして位置付けた)ということを考えると、連携を強化することを項目とするのは奇異である。むしろ推本調査研究における地震予知計画の独自性を明確にした方が良いのではないか。
  • ● 4.(1)ウとエ 地震予知連絡会と火山噴火予知連絡会を必ずしも統合する必要はないかもしれないが、積極的に連携した連絡会があっても良いと思うので、個々の項目にしないで1つにしてはどうか。

【4.(2)地震・火山噴火予知基礎研究体制の強化】

(特に意見なし)

【4.(3)人材の養成と確保】

  • ● 4.(3)本計画を推進するためには、研究者をはじめ地震や火山噴火予知関連の観測研究に従事する人材の養成・確保はますます重要である。大学等は人材の養成に一層努力する必要があるが、大学では博士課程修了後の展望が開かれないことから、博士課程への進学者が急激に減少している。一方、気象庁などでは、地震火山等の部門に多くの人員が配置されているが、必ずしも大学で地震や火山を専攻した職員ではない。このような状況に鑑み、気象庁等の担当者を大学の博士課程が社会人入学で受け入れることを検討すべきである。
  • ● 4.(3)「人材の養成と確保」について、今後の建議の中でどこまで踏み込んで記述するかを検討する必要があるものの、大学・大学院等の高等教育機関における地震・火山分野を専攻する学生の確保と、それらの専門課程を修了した若手研究者の働く場の確保とは、小項目を分けて論ずるべきではないか。前者は教育政策に関わることであり、後者は雇用・労働政策に関わるものとなり、提言する相手が異なるものと考える。

【4.(4)国際協力の推進】

  • ● 4.(4)地震や火山噴火予知研究を推進する上で、諸外国と協力して共同研究の推進を図る必要がある。さらに、観測データ交換、シンポジウム、研究交流、共同研究、人材養成の協力等、多面的な国際協力を行うことが重要であり、一層の推進を図る必要がある。また、国際協力は国際貢献という側面もあり、その場合国内の横の連携や情報交換が不可欠である。国際協力のための「かなめ」となる組織が必要である。
  • ● 4.(4)「国際協力の推進」について、小項目が設けられていないが、観測に関わる協力(国際的な観測網の展開・データ交換等)と、研究に関わる協力を個別の小項目として取り上げることを検討すべきではないか。

【4.(5)研究成果の社会への効果的伝達】

  • ● 4.(5)予知研究計画の成果を社会に還元し,災害の軽減に貢献するため、火山活動に関する情報の質的向上を進め,正確かつ分かりやすい情報の迅速な提供を図る必要がある。地方自治体では大規模合併により、防災担当者が合理化され、隅々まで目が行き届かなくなったり、自治体設置の震度計が減少するなど、地方自治体では防災にまで手が回らない状況を見受けられる。
  • ● 4.(5)「研究成果の社会への効果的提供・還元」のほうが適当でないか。

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