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2.海洋利用
1.海洋生物資源利用
(1)基本的推進方策
   海洋生物資源は世界の食料資源として特に重要な地位を占めており、世界的にみても今後ともその位置づけはますます重要になると考えられる。特に、世界の海洋生物資源の需給は、開発途上国の人口増加等に伴いひっ迫に向かうことが予想されており、将来的な安定供給の確保等を講じていく必要がある。
   海洋生物資源は、再生産可能な資源として、生態系全体の維持、環境汚染の防止等に配慮し、適切な管理・保存を行えば持続的な利用が可能であり、我が国の排他的経済水域において「資源管理型漁業」及び「つくり育てる漁業」の一層の推進を図る等、海洋生物資源の増大を図るための資源の培養・管理に関する技術の開発、漁場・漁港・漁村の整備等を積極的に推進していく。また、公海をはじめとする海域においても、関係国との積極的な協力により、海洋生物資源の適正な保存、管理、利用等を実施していく。
   我が国周辺海域は、世界の三大漁場の一つといわれるほど生産力の高い海域である。特に我が国の沿岸域は生産性が高いばかりでなく、需要の多い魚介類を多種類生産する等、重要な海域である。海洋生物資源は、複雑な生態系のなかで調和を保って維持されており、海洋開発に当たっては、水質悪化等によって海洋環境並びに海洋生物資源の保護培養の場が破壊されることのないよう慎重に対応するとともに、陸域の開発においても今後とも海洋環境への配慮を行っていくことが必要である。
   海洋生物資源の利用については、従来からの利用に加えて、近年、人体に好ましい影響等を与える機能を有する食品に加工するための利用等、水産物の付加価値を高めた利用や海洋生物の有する特殊な代謝機能や生体物質等を工業、医薬品原料に利用する新しい試みが進められてきている。海洋生物は、陸上とは異なった環境下に生息し、また、陸上生物と比べて起源が古くその種、個体数が多いことからユニークな代謝機能や生体物質等を持ったものが多い。これらの特徴を積極的に利用していくため、海洋生物に関する基礎的な理解を深める研究や利用の研究を進めるとともに幅広い研究体制の充実を図っていく。

(2)実施計画
1水産資源の持続的利用の推進
   水産基盤整備に関しては、漁村等の社会経済的調査と今後の水産基盤整備(非公共を含む)の基本方針の策定及び水産基盤整備の効果を地域経済に取組む等のフォローアップに必要な基礎調査、設計・計画技術基準の策定及び技術情報の整理・分析に必要な基準調査、積算・施工に必要な標準積算・施工基準等の検討及び施工技術の開発に必要な施工技術調査、大きな効果が期待される新しい水産基盤施設の新技術の開発に必要な調査及び実用化のための実証試験を行う新技術開発調査、水産基盤施設の生物環境への影響・効果の把握や生物の生息場を効果的に創出するために必要な生物環境等の調査、水産関係公共事業等の事業評価及び政策評価の評価手法のさらなる開発等を行う事業評価調査・沖合域基礎生産力増大と広域な受益が見込まれる海域において大規模な事業化を実施するための調査を実施し、事業化計画を策定する基本計画調査を行う。
   我が国周辺水域内の漁業資源の現状分析等の資源評価を行うための調査、沿岸・沖合域における漁海況情報の収集、分析、提供を引続き行う。
   我が国は国連海洋法条約の締約国として、我が国が設定した排他的経済水域において海洋生物資源が過度の開発によって脅かされないようにするため、特定の魚種について漁獲可能量(TAC)を決定する等の保存・管理措置をとっているが、その保存・管理措置の一環として漁獲情報及び水揚情報をとりまとめるコンピュータネットワークの開発整備等を引続き行う。
   また、自主管理協定制度の実施状況の検証と、問題点の整理・対応策の検討を引続き行うとともに、都道府県におけるTAC管理の円滑な実施に必要な漁獲報告システムの維持・運営を支援する。
   漁業者の自主的な取組みである資源管理型漁業については、水産資源の維持増大など量的な面だけでなく品質の向上や安定化など質的な面も含めた資源管理と、漁業コストの削減を一体的に捉えた多元的な展開の促進を図るとともに、漁協による漁業経営の総合的な改善の方向づけを行うための資源管理と営漁指導に関する指針策定を支援する。
   特に資源状況が悪化している魚種については、資源に対する科学的知見の集積程度や資源の悪化状況を踏まえた回復の緊急性等を考慮し、順次、全国または海域のレベルにおいて、漁獲努力量の削減、資源の積極的培養、漁場環境の保全等の資源回復のための措置を内容とする「資源回復計画」の作成を推進し、計画的に実施していく。
   さらに、資源回復計画による資源の回復をより確実なものとするため、資源回復計画対象魚種を採捕する漁業種類に漁獲努力可能量(TAE)による漁獲努力量管理をあわせて実施していく。また、TAE管理の円滑な実施に必要な漁獲努力量報告システムの開発を行う。   
   漁業調査船「開洋丸」等により、国際協力体制の下での資源量調査や資源動向に影響を及ぼす海洋環境調査を引続き行う。また、新たな漁場の開発及び既存漁場の拡大を図るとともに、混獲回避手法を導入するための企業化調査事業、資源水準に見合った漁獲量でも生産コストの削減、漁獲物の付加価値向上により、経営が成り立つ合理的な新しい漁業生産システムを構築するための実証化調査事業を引続き実施するほか、200海里体制の定着及び公海における漁業規制等の強化に対応して我が国200海里内の沖合漁場の造成と有効利用を図るため、沖合域に設置した中層型浮魚礁の有効利用方策に関する調査及び沖合漁場の再開発を図るための調査事業を引続き行う。
   平成14年度を初年度とする漁港漁場整備長期計画に基づき魚礁設置、増殖場造成、養殖場造成、漁場環境保全並びに、漁港及び漁村の整備を総合的かつ計画的に推進する。また、栽培漁業については振興施設整備及び地元への定着化を、海面養殖業についてはコスト低減、飼料対策、環境保全、省力化等の総合的な支援策を実施する。
   奄美群島水産業振興に関する調査のほか、種苗量産、放流等の栽培漁業技術の開発や放流技術等の開発への助成、種苗生産に必要な初期餌料の培養開発研究とともに、環境負荷を低減する配合餌料の開発、省力化等の海面養殖業関連の技術開発を実施する。また、さけ、ますの高品質資源造成技術開発等を引続き行うと共に、さけ・ます資源を適切に管理しつつ、効率的な放流を行う。

2海洋生物資源利用のための開発研究
   海洋生物資源であるキチン・キトサンの微生物生産と利用化の研究及び海洋生物によるバイオミネラリゼーションに関する研究を引続き行うとともに、海洋バイオマスの熱可塑性化による環境調和プラスチック技術開発、及び海洋微生物の生態機能を活用した有用物質抽出の研究を行う。
   海洋微生物の未利用遺伝子資源として、DHAなど、生理活性を有する高度不飽和脂肪酸の単離・利用技術を開発する。
   複合生物系研究等により得られた海洋生物資源を用い、バイオテクノロジーを利用したハンドリング技術や有用物質生産技術等について、引続き研究を行う。
   海洋から未知の微生物を分離・培養する技術を開発し、その技術を用いて未知微生物及び遺伝子(ゲノム)を収集して、遺伝子資源ライブラリーを構築することにより、微生物遺伝子資源の利用環境を整備する。
   また、深海底や地殻内という極限下の生物圏に棲息する生物の有機機能を活用することを目的として、「極限環境生物フロンティア」研究を実施し、さらに研究成果の民間活用を推進する「深海バイオベンチャーセンター」を運営する。
   未利用魚介類の有効利用・高付加価値化のための技術開発を引続き行うとともに、利用拡大に向けた中間原料の開発等加工技術の高度化に着手する。
   また、ドップラー流速計データ等の総合化による、海洋構造変動パターン解析の技術開発を引続き行う。
   省エネルギー化、低コスト化等の観点からの漁具、漁法、漁船等の漁業新技術の開発等を引続き行う。

2.海洋エネルギー・資源利用
(1)基本的推進方策
   海洋には、風力・波力・潮力・温度差・太陽等のクリーンで尽きることのない自然エネルギーが広く分布しており、循環型社会の実現に適応する新エネルギー及び再生可能エネルギー・資源の利用に取り組むことが重要である。特に島しょ等におけるローカルなエネルギー源としての観点からも、その利用が期待される。我が国としては、長期的観点から海洋エネルギー利用技術の研究開発を行っていく。実用化のためには、特に水質改善や深層水利用等との複合システムが有効と考えられ、そのようなシステムの開発を進めるとともに、海洋エネルギー利用のためにより有利な条件の多くの適地を有する開発途上国等に適合したシステムの開発を進めていく。
   また、我が国の領海、排他的経済水域、大陸棚の海底及び海底下には、多くの鉱物資源、エネルギー資源が賦存しており、これらの資源は海洋生物資源及び海洋エネルギーと並んで我が国の生活基盤を支えるために大切である。鉱物・エネルギー資源は将来国際的に不足するとの予測もあり、環境影響の極小化を図りつつ海洋鉱物エネルギー資源の継続的な開発を進める必要がある。特に大陸棚については、国連海洋法条約に基づいて我が国が200海里を超えて拡張できる可能性があり、我が国の大陸棚の限界について、周辺海域の調査を実施し、平成21年5月までに我が国の大陸棚の拡張に関する情報を同条約に基づき設置された大陸棚の限界に関する委員会に対して提出することとしている。このため、平成14年度内閣に設置された「大陸棚調査に関する関係省庁連絡会議」を中心とし、関係省庁間の緊密な連携を図りつつ、大陸棚の限界の設定に必要な調査活動を強化する。
   マンガン、コバルト、ニッケル等の鉱物資源は、日用品からハイテクノロジー分野まで広範に利用されており、かつその強硬度、強磁性等の特性から代替が困難な重要な資源である。しかしながら、我が国は、これらの鉱物資源のほとんどを輸入しており、またその多くは特定地域に偏在していること等、その供給構造は極めて脆弱である。これらの鉱物資源の中長期的安定供給体制の確立は、我が国の社会経済活動はもとより、世界全体のより一層の経済発展の基盤ともなることから、これらの鉱物資源の相当量が賦存する海洋における調査、開発等を、国連海洋法条約をはじめとする海洋の法的秩序の下で、中長期的観点から推進していくことが極めて重要である。このため、海洋鉱物資源の賦存状況調査、調査技術の開発、更には南太平洋諸島等有望な賦存海域を有する開発途上国に対する調査協力事業等を推進していく。
   石油・天然ガスは、社会経済活動の維持、発展を図る上での重要な鍵であるが、石油については将来特にアジア太平洋地域において需給のひっ迫化が予想されており、また、天然ガスについては供給形態等に制約があるものの、石油代替エネルギーの一つとして、また、地球環境への負荷が相対的に低い現実的なエネルギーとして今後その需要の増加が予想される。このような状況下において、これら資源のほぼ全量を輸入に頼る我が国としては、世界における中長期的な安定供給体制の確立が我が国の社会経済活動の安定的な発展につながるとの認識に立ち、国際協調を基本に、我が国のエネルギー政策全般と調和をとりつつ、海洋における石油・天然ガスの探鉱・開発による供給量確保、資源保有国との友好関係の維持増進、資源開発技術の開発等を積極的に推進していく。
   また、今後、海洋における石油・天然ガスの探鉱・開発活動がより環境条件の厳しい大水深海域や極地域へウェイトを移すとともに、発見される油田・ガス田の規模も中小規模化することが予想されることから、供給面の多様化に向けて長期的観点にたってこれら諸条件を克服するための不断の技術開発を行っていく。

(2)実施計画
1再生可能エネルギー・資源利用
   波力エネルギーの有効利用のための研究開発として、平成14年度に終了した浮体式波力装置(マイティホエール)のプロトタイプモデルによる実海域実験により得られた基本特性のデータを基に、プロトタイプの有効利用を含め、波エネルギーを利用した海洋環境改善技術の開発や、他の自然エネルギーとの複合発電システム化、並びに海洋観測用プラットフォームとして活用が可能な波力装置応用技術の研究開発の検討を行う。
   波エネルギー利用型防波堤の実用化のための長期耐久性試験の成果をふまえ、現地への適用方策の検討を進める。
   洋上太陽エネルギー、風力エネルギー利用技術の可能性を検討する。
   海水揚水発電技術実証試験パイロットプラントとして沖縄本島の北部に最大出力30,000KWの発電を行う。
   また、富栄養性、清浄性、低温性という特性を持ち、エネルギーや食品、医療等の分野で利用価値の高い資源として注目されている海洋深層水についての基礎的研究開発や、海洋深層水を活用した漁場造成技術の開発及び海洋深層水利用の普及促進を図るに当たっての技術基盤への貢献等を引続き行う。さらに、水産物の衛生的な取り扱い、つくり育てる漁業の支援のため、漁港において海洋深層水供給施設の整備を行う。
   海水淡水化技術開発について、他の淡水化方式に比べ省エネルギーかつ低コスト型である「逆浸透法」技術についての普及・導入を図る。また、砂漠地域や東南アジア諸国でも水不足に悩まされており、これらの国に技術移転することも国際協力として重要である。

2海洋鉱物・エネルギー資源利用
・海洋鉱物利用
   探査専用船「第2白嶺丸」による伊豆・小笠原海域における海底熱水鉱床賦存状況調査、西部太平洋海域におけるコバルトリッチクラスト鉱床賦存状況調査及び海底鉱物資源の調査技術の開発等を行うとともに、太平洋諸島各国に対する調査協力事業を引続き行う。
   また、海水溶存リチウム採取に関しては実用化に向けた研究開発を推進する。
   海洋に存在する軽元素同位体の分離・採取技術の研究を引続き行う。

・エネルギー資源利用
   国内石油天然ガス基礎調査、海底石油生産支援システムの研究開発、大水深域における石油資源探査技術等基礎調査、極限海域における油田開発用海洋構造物に関する海洋石油開発技術調査、海底設置型の石油生産施設の技術基準策定のための調査及び天然ガスをハイドレート化して輸送するシステムや液体燃料化して洋上にて生産・貯蔵するシステムの開発研究を引続き行うとともに、メタンハイドレートの商業的産出を目指し、探査・開発・生産技術等に関する研究開発を引続き行う。   
   また、大陸棚石油・天然ガス開発に関する事業を引続き行う。

・資源利用等の基本となる知的基盤整備
   地質調査船等を使用して日本周辺海域の海洋地質調査研究を実施し、領海・大陸棚等の地質に関する基盤情報を整備するとともに、海洋地質図や各種データベースとして提供する。

・大陸棚画定調査
   国連海洋法条約に基づく我が国の大陸棚の限界を画定するために必要な屈折法及び反射法音波探査、海底ボーリング等底質調査並びに精密海底地形調査を実施する。

3.沿岸空間利用
(1)基本的推進方策
   我が国における海洋空間の利用に関しては、従来から沿岸域の埋め立てによる公共施設用地、住宅用地、工業用地等の造成が図られてきているほか、石油の備蓄基地としての利用が進められている。また、漁場の整備開発や漁港の整備、港湾・航路や橋梁等の整備、廃棄物処分場の整備等も行われてきている。さらに、近年の国民の余暇需要の増大に伴い、海洋性レクリエーションのための施設の整備や海浜空間等の整備が行われてきている。また、今後は、人工島、浮体式海洋構造物、静穏な海域の創出、安全で快適な沿岸域の創出等による新たな複合的な海洋空間の創出も求められている。このように海洋空間は多くの利用分野が重複しており、特に海岸線に近い部分では物理的にも飽和状態となっている状況も見受けられる。また同時に、多様な環境下に数多くの生物が生息し、地球全体の環境にも大きな影響を及ぼしている空間でもある。
   このため海洋空間の利用を推進するに当たっては、自然環境の保全、良好な環境の創出を図るとともに、地域、海域の特性や技術の進歩を踏まえつつ、利用分野間で連携を図り多様化する利用要請に的確にこたえた秩序ある利用の推進を図っていく。また、すぐれた自然環境を有する沿岸域の保護、国土の保全、海上の安全の確保、沿岸域における津波等による災害への対応を図っていく。
   近年、海洋空間の利用は、沿岸域を中心に、地域社会の一体化と各国間の相互依存関係が深まる中で多面的な交流・連携を推進するための交流拠点の形成や、地域の社会経済の特性等に強く依存した多面的な利用要請が顕著になってきている。このため、全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン−地域の自立の促進と美しい国土の創造−」の考え方を踏まえつつ、地域や海域の特性に応じた沿岸域の利用の推進を図っていく。
   東京湾、伊勢湾、大阪湾や瀬戸内海においては、従来から高密度な海洋空間の利用が図られており、生活、産業、物流等の各方面にわたって、貴重な空間として利用されている。これらの海域については、首都圏整備計画等における沿岸域の考え方を踏まえ、多様な要請に応えるため、総合的、長期的かつ広域的視点に立ち、その秩序ある利用と保全を図っていく。特に大阪湾については、大阪湾臨海地域開発整備法の趣旨に基づき適切な整備を進めていく。また、これらの海域における新たな埋め立て地の造成については、その必要性を慎重に検討するとともに、国土の保全、海上の安全の確保を図り、環境に及ぼす影響等に充分に配慮していく。さらに、これらの海域の持つ海水交換特性等の自然浄化機能を助長し、良好な水質、底質、景観の確保等その適切な保全を図り、経済社会の進展や産業構造の変革に伴う多様な要請にこたえるため、その周辺沿岸域と機能の適切な分担を図りつつ、地域特性を生かした秩序ある利用を進めていく。
   また、海岸保全は、海岸域に集中する人命、財産及び狭あいな国土を守るとともに良好な海岸域の形成を図るものとして、その意義は重要である。このため、高潮、波浪、津波、海岸侵食等に対し必要となる安全度の確保に向けた海岸保全施設の整備やその老朽化対策を推進していく。その際、複数の施設を組合せ、砂浜による消波効果を活かした面的防護方式による整備を進める。また、海とのふれあいを求める人々のニーズに応じて緩傾斜護岸、遊歩道、魚釣り場等の水に親しめる機能を付与する等、魅力ある海岸空間の創出を図っていくとともに、海岸の良好な自然環境の保全を図る。

(2)実施計画
1環境に配慮した空間利用
・港湾
   港湾では環境と共生する港湾(エコポート)の形成を目標に、これまで失われた自然生態系を再生していくために、干潟・藻場の再生や臨海部の廃棄物処分場跡地を活用した大規模緑地の整備など、沿岸域における自然再生事業の促進や、海域の浄化を推進するための海域環境創造事業、良好な港湾景観を形成するための港湾景観形成モデル事業など、人々が水際線に自由、安全かつ快適に行き来することができたり、豊かな生態系を育むような魅力的な空間を確保するための事業を推進する。
   漁港においても自然環境の保全・創造を図りつつ、沿岸域を高度に利用するための自然調和型漁港づくり推進事業及び、都市住民等の一般来訪者との交流を促進するための、漁港交流広場整備事業を推進する。漁業集落環境整備事業及び漁港環境整備事業等による、漁村環境条件の改善に必要な施設の整備については、「農山漁村高齢者ビジョン」に基づき、高齢者にも配慮した施設整備を引続き行う。
   循環型社会の実現を図るため、港湾において既存ストックを最大限に活用することにより循環資源の収集・輸送・処理の総合的な静脈物流拠点を形成する。また、長距離大量輸送に適した海上輸送により静脈物流拠点の広域ネットワーク化を図るなど、総合的な静脈物流システムを構築する。

・廃棄物処理
   廃棄物については、その内陸処分の促進、減量化、再利用の徹底を前提に、港湾の適正な開発・利用・保全との整合性や海洋環境の保護及び保全に対する適切な配慮を払いつつ、廃棄物の海面処分場やフェニックス計画に基づく広域処理場の計画的な整備を引続き行う。
   ひっ迫した産業廃棄物の処理問題に的確に対応するため、中間処理により減量化・無害化された産業廃棄物を廃棄物海面処分場に受け入れる。
   民間活力を活用し、迅速かつ機動的に廃棄物埋立護岸の整備を行うため、支援措置として第3セクターが整備する廃棄物埋立護岸の整備に無利子貸付を行う。

・海岸保全
   ウミガメの産卵場所となっている砂浜の保全等を図る「エコ・コースト事業」や、水産生物の産卵、育成の場の造成と、背後の海岸の防護を一体的・効率的に行う「魚を育む海岸づくり事業」等、自然環境と調和した海岸整備を行う。また、白い砂浜と緑の松林の続く、優れた景観を有する海岸を保全するため、「自然豊かな海と森の整備対策事業(白砂青松の創出)」の推進を図る。

2効率的な空間利用
・防災
   大規模地震の発生に備え、港湾や漁港等の施設の耐震性の強化や液状化対策を引続き行うとともに、防災拠点等の整備を推進する。具体的には、首都圏全体を対象とした広域防災オペレーション、都市部での大規模なオープンスペースとして、東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備及び広域防災拠点ネットワークの形成を図る。
   また、港湾においては、港湾その他の被災地における災害応急対策支援のために広域的な対応が可能な浮体式防災基地の整備や管理運営手法を検討する。
   さらに、地震調査研究推進本部「地震に関する基盤的調査観測等の計画について」をふまえ、海域での機動的観測及び海底地震総合観測システムの整備を引続き行う。
   背後に人口・資産が集中し、津波・高潮による災害が予想される地域において、海岸保全施設整備事業、海岸環境整備事業、公有地造成護岸等整備統合補助事業等の海岸事業や災害復旧事業等を引続き行い、海岸の保全を図る。
   また、水門等の一元的な遠隔操作及び津波・高潮の情報収集・提供に資する「津波・高潮防災ステーション」の整備や津波・高潮ハザードマップの作成支援を引続き実施する。さらに、海岸保全施設の機能を維持することを目的として、「緊急大規模漂着流木等処理対策事業」を活用して、海岸への漂着流木等の処理を適切に行う。

・産業等の創生
   臨海部土地造成事業や、既存の臨海部用地の再編、岸壁、道路等の整備等により高質な産業空間の整備を引続き行う。特に、大都市地域における臨海部等の工場跡地については、都市再生においても、大きなポテンシャルを有しており、引続き、関係省庁の連携により、大規模プロジェクトの迅速かつ円滑な実施を支援する等、有効利用促進に向けた取組みを推進する。
   増養殖場及び漁業近代化施設の整備等を引続き行う。また、平成14年度を初年度とする漁港漁場整備長期計画に基づき、水産物の生産流通の効率化を図るための体制づくりのため、漁港漁場整備事業等を推進する。さらに、漁港施設災害復旧事業を引続き行う。
   多様化・高度化する流通・消費システムに的確に対応し、安全かつ高品質な水産物を安定的に供給するとともに、水産物の流通加工分野における「循環型社会」への的確な対応を推進するために必要な流通・加工施設の整備を引続き行う。
   また、離島等生活条件の不利な地域において、生産、生活や交通基盤の充実を図るため、港湾及び漁港の整備を引続き行うとともに、主要産業である水産業の持続的な発展を推進するため漁場・漁港並びに漁村の整備を総合的に推進する。さらに、旅客ターミナル等住民の足となっている生活基盤について、引続き整備を促進するとともに、旅客用乗降施設のバリアフリー化等利便性向上のための改良を実施する。
   海外から資源、エネルギーを受け入れるための岸壁、防波堤等の輸入ターミナルの整備及びそれを貯蔵するための場を提供する臨海部土地造成事業を引続き行う。

・道路、空港等の整備
   臨海部における生活基盤整備のために、道路事業や下水道事業等を引続き行う。
   道路事業調査として東京湾環状道路、伊勢湾環状道路、大阪湾環状道路等に関する調査を引続き行う。また、伊勢湾岸自動車道等の建設事業を引続き行う。
   関西国際空港については、平行滑走路等を整備する2期事業を推進するとともに、既存施設の能力増強等を行う。また、東京国際空港について沖合展開事業を推進するとともに、羽田再拡張については、新技術の採用を含めて検討し、早期事業化を図ることとしている。中部国際空港については、平成17年3月の開港を目指し、引続き用地造成・旅客ターミナルビル工事等を行い、事業を推進する。
   賑わいのあるウォーターフロントの形成のため、公園・緑地、人工海浜等の整備を引続き行うとともに、民間活力の導入により文化交流施設等の整備を引続き行う。

・海岸保全
   1海岸の「防護」に加え「環境」と「利用」を目的に位置づけ、2海岸保全区域以外の国有海浜地を海岸法の対象に追加、3地域住民等の意向を反映する計画制度の創設、4海岸の日常管理を市町村がその発意に基づき実施することを可能にする制度の創設、5自動車の乗り入れの制限等、海岸環境の保全のための措置の導入、6国による直轄管理制度の創設等について改正した海岸法に基づき、平成12年5月に策定された海岸保全基本方針に沿って、防護、環境、利用の調和のとれた海岸の保全を引続き推進する。

・海洋空間利用に関する調査、技術開発
   埋立地の経済的な地盤対策工法に関する研究及び遠心力模型実験施設を利用し、地盤沈下等の影響を測定する研究等を引続き行う。また、地域海洋通信整備事業を引続き行う。さらに、港湾基盤施設の諸機能変化とライフエクステンションに関する研究や知能化材料を用いたモニタリング技術に関する研究、長周期波に関する研究及びバイラテラル操作系を用いた次世代水中作業機械システムに関する研究、波による地盤の液状化に関する研究を行うとともに、全国港湾海岸波浪情報網によるデータ取得・解析を進める。
   海岸事業に関する調査として、海岸保全対策調査、海岸侵食対策調査、海岸地盤沈下調査、海岸整備計画調査、海岸環境調査、沖ノ鳥島調査等を引続き行う。また、総合的な土砂管理対策と連携した海岸侵食対策に関する研究及び総合的な津波・高潮対策に関する研究、沿岸域に関する研究を実施する。
   海中構造物設置技術の研究開発を引続き行う。
   メガフロート(超大型浮体式海洋構造物)の利用可能期間・海域・用途の更なる拡大のため、外洋等のより厳しい条件にも対応できるメガフロートの研究開発等、メガフロート関連技術の高度化のための研究を行う。
   海洋構造物等に必要な水中溶接技術等に関する技術情報データベースの整備を行う。
   漁港や港湾において、安全性が高く親水機能を有する防波堤や護岸に関する開発研究を引続き行うとともに、情報化された施工システムの開発や新形式構造物、施工管理技術の研究開発・現地実証試験等を引続き行う。

3市民の親しめる海洋空間
・レクリエーション空間整備、普及促進
   地域の個性ある発展を目的とし、港の資産を住民・市民の立場から再評価し、この資産を活用し、市民の合意の下で活力のある港空間を形成するため、NPO、市町村、港湾管理者等が協働し自ら作り上げる「みなとまちづくりプラン(仮称)」の策定を支援する。特に、観光産業を活用したみなとまちづくりの推進にあたっては、「観光交流空間づくりモデル事業」の活用も図りつつ進める。
   海洋性レクリエーションの普及促進を図るため、ゆとりある国民生活の実現に資する海洋性レクリエーションに関する調査を行う。
   海岸部のレクリエーション施設整備等と連携した施策として、道路、公園、下水道、海岸整備を一体として行い地域づくりに資する「C.C.Z.(コースタル・コミュニティー・ゾーン)」事業や海辺における野外教育、環境教育、マリンスポーツに利用しやすい海岸づくりを行う「いきいき・海の子・浜づくり」事業、消波工等の異形ブロックを沖合施設に転用してなぎさを回復させる「なぎさリフレッシュ」事業、海辺における健康増進活動を支援するための施設整備として、高齢者や障害者が容易に利用できる海岸の整備を行う「海と緑の健康地域づくり(健康海岸事業)」を引続き行う。
   リゾート地等において、海浜の多様で高度な利用を図るため、ビーチ利用促進モデル地区においてマリーナ等とあわせた大規模・複合的な人工ビーチの整備を引続き行う。
   さらに、水産業と海洋性レクリエーションの調和を図るため、遊漁船等を漁船と分離収容する施設(フィッシャリーナ)の整備を引続き行うとともに、海岸環境整備事業、漁港環境整備事業により緑地、広場、親水施設等の整備を引続き併せて実施する。

・プレジャーボート等の適正な係留・保管の促進
   魅力あるウォーターフロント空間を創造するために、海洋性レクリエーションの中核施設であるマリーナの整備については、公共事業に加えて、民間事業者及び第三セクターが行うマリーナの整備に対して、PFI制度を含めた埠頭整備資金貸付金事業のほか、総合保養地域整備法(昭和62法71)に基づく助成措置、小型船拠点総合整備事業等を活用してその整備の支援を引続き行う。
   他方、放置艇を解消し臨海部の環境改善を図るため、公共事業による運河・水路等の既存の静穏水域を活用し、係留施設(桟橋、係留杭、係船浮標等)、駐車場、トイレ、斜路、ボートヤード等の必要最低限の設備を備えた簡易な係留施設である「ボートパーク」の整備を推進する。

・安全確保
   海洋性レクリエーション活動に伴う事故を未然に防ぐため、ポスター、パンフレットの作成、配布を行うとともに、体験乗船や港内の一部を開放して行うボート天国等の機会を通じて安全についての意識や技術の向上を図る。
   海洋性レクリエーション等の安全に資するため、インターネット等を利用して気象・海洋情報の提供のより一層の強化を行う。

4.海上輸送
(1)基本的推進方策
   四方を海に囲まれた我が国にとって、海上輸送は人流・物流の両面から欠くことのできない輸送手段であり、この効率性や安全性を確保することは、国民生活や産業を支えるために必要不可欠である。
   近年、内航海運は環境負荷の減少や交通混雑の緩和等の観点から脚光を浴びており、トラック等の長距離幹線輸送から海上輸送へのモーダルシフトを推進することが重要となってきている。このため、海上輸送と陸上輸送が円滑に結びついた複合一環輸送に対応したターミナルの整備など、国内海上交通基盤の整備を図る必要がある。
   また、港湾の重要性は、経済のグローバル化、ボーダレス化の進展等を背景にますます増大しており、港湾がその機能を適切に発揮し、海上輸送の安定的な確保を図るとともに、輸送コストの削減を図ることが国民生活にも寄与することとなる。コンテナ船の大型に対応した港湾の大水深化や海上輸送サービスのソフト面での向上等を行い、アジアの主要港湾に比較して高い国際的な競争力を獲得していくことが重要である。

(2)実施計画
・港湾整備
   生活雑貨、製品等輸送のための国際海上コンテナターミナル、産業競争力強化に直結する多目的国際ターミナル及び海陸輸送モード間の結節機能を強化する幹線臨港道路等の重点的整備、旅客船ターミナルの整備等を港湾整備事業等により推進する。特に、港湾の国際競争力を維持・強化する観点から、ハード面の整備に加え、ソフト面の規制改革を先導的・実験的に展開することで、アジアの主要港を凌ぐ高品質なコンテナサービスを実現するための国際海上コンテナ輸送における構造改革モデル港湾「スーパー中枢港湾」の育成に向けた取組みを行う。
   また、これら公共事業の整備と連携を図りつつ、民間活力を活用して、輸入の促進に資する総合輸入ターミナル、多機能な旅客ターミナル施設等の整備を引続き行う。さらに海陸のシームレスな接続を可能とし、かつ、地球環境にやさしいモーダルシフトの推進に資する複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備を引続き行う。なお、震災時の緊急物資等の海上輸送の確保、震災後も一定の幹線貨物輸送を確保するため、国際海上コンテナターミナルを中心とした耐震強化岸壁の整備を推進する。
   また、国際海上コンテナターミナルの効率的利用や大型船舶の円滑な執行を可能にするため、開発保全航路の整備を推進する。具体的には、東京湾口部等の主要港湾にアクセスする航路や関門海峡等の国際船が多数航行する航路を中心に整備を推進する。
   インターモーダルな物流の効率化、コスト縮減を実現するため、海陸一貫物流情報システムの開発を進める。
   これらの港湾関連事業等を円滑に推進するため港湾事業調査等を引続き行う。
   港湾ネットワークを活用した地域連携を促進するため、瀬戸内・海の路事業等の推進を図る。

・海上交通のための情報提供
   航路・港湾等の測量、海図・航海用電子海図等各種水路図誌の刊行及び電子海図システムの整備を引続き行う。
   航海の安全確保と能率的運航を図るため、水路通報、航行警報業務等を引続き行う。
   海上気象・海況及び津波の観測・予報等の業務の強化に関して、気象資料伝送網及び地震津波監視システムの更新整備を引続き行う。また、船舶海象情報データベースの充実を図る。海上交通の安全確保のため、インターネット等を通じた気象・海洋情報の提供強化を行う。
   沿岸の海上交通安全のため高潮・高波関連施設の改良更新や沿岸・外洋の波浪予報等を引続き行う。

・船舶技術の研究開発
   ディーゼルエンジンに比べ、NOxの排出量が格段に低い環境低負荷型舶用推進プラントの実用化に向けた研究開発を行う。新開発の高効率ガスタービンエンジンを甲板上に搭載し、水面下の船型をドラスティックに最適化すること等により、環境負荷の低減(NOx 1/10, SOx 2/5, CO2 3/4)、輸送効率の向上(総合効率約10%向上、積載量約20%増大)等を実現する次世代の内航船(スーパーエコシップ)を平成17年度までに開発する。また、新形式超高速船(テクノスーパーライナー)について、平成17年春に第1船の運航を開始するべく、必要な支援措置を講ずる。
   オホーツク海等氷海域の安全航行のため、氷海船舶等の研究開発を引続き行う。
   また、バラスト水問題対策技術の開発と外航船からの排出ガス抑制技術の開発からなる低環境負荷型外航船の研究開発を行う。この内、バラスト水対策としてはノンバラスト船の開発及び生物処理装置の開発を行う。排出ガス抑制技術の開発としては、新形式複合帆等、帆装システムの研究開発を実施する。また、民間船主の協力を得て、実証航海実験を通して開発技術の検証、改良を行う。

・ITを活用した次世代海上交通システムの構築
   我が国の輸出入量の99.8%を担うなど国民生活・経済活動を支える海上交通を、ITの活用によりインテリジェント化し、安全性の飛躍的向上や物流の効率化等を図る次世代海上交通システムを構築するため、衝突・座礁回避システム、高度船舶安全管理システム等の要素技術の研究開発を推進し、2004年度に総合実証実験を行い、2005年度からの実用化を目指す。また、次世代海上交通システム構築において重要な役割を担う海上通信技術の高度化のための調査研究並びに要素技術の研究開発を引続き行う。

・海上ハイウェイネットワークの構築
   ITを活用した航行規制の効率化等のソフト施策と国際幹線航路の整備等のハード施策を有機的に組み合わせることにより、船舶航行の安全性と海上輸送の効率性を両立させた海上交通環境として、海上ハイウェイネットワークの構築を推進する。

・海賊対策
   海賊対策に関して東アジア地域の各国の連携を強化するため、「アジア海賊対策チャレンジ2000」に基づき、東アジア各国との相互協力及び連携の推進・強化等を進める。具体的には、東アジア地域へ巡視船・航空機を派遣し、公海上のしょう戒を実施するとともに、連携訓練等を通じ寄港国の海上警備機関との連携強化を図る等の施策を引き続き実施する。あわせて、「アジア海賊対策地域協力協定」(ASEAN各国、中国、韓国、インド、スリランカ、バングラデシュ、日本が交渉に参加)の早期作成を目指す。

5.海洋総合利用
(1)基本的推進方策
   我が国は国土が狭く、しかも平野部が海沿いに集中していることから、これまで、国土の延長として海洋の利用が図られてきており、沿岸域を中心とした開発計画は増加の一途をたどっている。また海洋性レクリエーションの場としての利用の拡大が予想されるほか、漁業等既存の産業においても、つくり育てる漁業等新たな展開が図られる方向にあり、今後、沿岸域を中心に多面的な利用要請がより顕著になるものと考えられる。一方、近年の日本周辺や世界的な海洋汚染を考えると、海洋の持続的かつ健全な利用を図っていくためには、海洋環境の保全の視点が不可欠である。このように、海洋利用のための施策を推進していくためには、「総合的管理」と「海洋保全の調和」を図っていくことが重要である。さらに、沿岸域の利用は各々の地域の社会経済の特性等に強く依存するものであり、沿岸域の多面的利用可能性を積極的に引出し、その総合的・広域的利用により限られた空間である沿岸域を魅力あるものにしていくためには、地域の独自性を重視して、地域を中心とした自立的な海洋管理を推進することが重要である。
   このため、地方公共団体が主体となり、地域計画等と整合を図りつつ沿岸域の総合的な利用計画を策定し、国は、基本理念、沿岸域の区分、計画事項等を内容とする計画策定のための指針を明らかにするほか、国の諸事業の活用、民間活力の誘導等により、計画の実現に向けて地方公共団体を支援していくことが適当である。総合的な利用の推進に当たっては、沿岸域の地域特性、利用特性に照らしつつ、沿岸域の環境保全、国土保全や安全性の確保を図るとともに、既存産業の健全な発展との調和等に配慮する必要がある。また、複数の地方公共団体に関係した利用計画や、より沖合の海域の利用計画の策定のあり方について検討を行っていく必要がある。

(2)実施計画
・総合的管理の促進
   沿岸域圏の総合的な管理に主体的に取組む地方公共団体や様々な民間主体が沿岸域圏総合管理計画を策定・推進する際の基本的な方向を示す「沿岸域圏総合管理計画策定のための指針」(平成12年2月「21世紀の国土のグランドデザイン」推進連絡会議決定)の普及・啓発及び地方公共団体等への必要な支援を行う。
   従来より、都道府県は、各種調査に基づき、沿岸域保全利用指針や海岸保全施設の整備基本計画を策定してきたが、これらを踏まえつつ、平成11年4月に改正された海岸法及びこれに基づいて策定された海岸保全基本方針に添って、沿岸毎に海岸保全基本計画を策定する。
   水産業を核とする沿岸・沖合域の総合的な整備開発構想である新マリノベーション構想の下で親しまれる漁港・漁村づくりを行うためのふれあい漁港漁村整備事業を引続き行う。また、農山漁村を一体的に豊かで潤いのある生産・生活の場としていくため、生産基盤、生活環境の整備と併せて、緑や水を生かした美しい景観や環境保全等に配慮した整備を引続き行う。

・総合的利用に関する調査・技術開発
   東京湾、大阪湾及び伊勢湾等大都市圏沿岸域の総合的な利用と保全に関する調査を引続き行う。
   沿岸海洋問題への適切な対応、沿岸域の開発および地域への海洋科学技術の普及を推進するために地域と協力して沿岸環境利用の研究開発を実施する。
   海域の多目的利用のための海洋構造物(メガフロート等)関連技術の高度化のための研究を引続き行う。
   沿岸域の複合的利用に資する施設整備促進のため、所要の沖合人工島整備を引続き行う。
   また、臨海部地域の低利用地、埋立地等を活用した新しい拠点の形成を図る開発プロジェクトの早期実現を図るための港湾整備事業等を引続き行う。







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