参考資料1 21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について(答申)(平成4年7月23日学術審議会)

-抜粋-

1.学術研究基盤の計画的整備

3 研究設備の整備

〔基本的方向〕

 学術研究の発展には、理論的考察と実験による発見や実証が不可欠である。特に、今日では、実験的研究は著しく高度化・精密化し、その規模も大型化しており、それとともに実験設備の重要性が著しく増大している。理論的研究面でも紙と鉛筆だけの時代は終わり、スーパーコンピュータを始めとする計算機など研究設備の利用が不可欠になっている。その結果、研究設備の有無やその性能・精度により、研究の成否や研究水準が左右される場合が多くなってきている。
 一方、大学における研究設備は、質的に陳腐化が進むと同時に量的にも不足し、その整備・充実が極めて重要な課題となっている。このため、基盤的な研究設備については、計画的な整備を進めるとともに、先導的な研究設備については、将来の発展や深化が期待される研究に重点的に整備する必要がある。また、研究設備の共同利用を積極的に推進するほか、レンタル等による研究設備の導入の促進等についても検討する必要がある。

〔必要な方策〕

(1)基盤的な研究設備の整備

 基盤的な研究設備は、分析能力の高性能化、計測の自動化、省力化が進むとともに高額化しているが、いかなる分野の研究の遂行においても必要不可欠のものである。現状ではその整備は必ずしも十分ではなく、全体的に陳腐化、不足する傾向にあり、研究の新しい発想や芽を育てるためにも計画的な整備を進める必要がある。
 このため、研究分野ごとに基盤的な研究設備の標準を策定することが適当である。

(2)先導的な研究設備の整備

 先導的な研究設備は、特に自然科学の諸分野において高性能化・大型化・高精密化・極限化が進んでおり、その整備は研究の進展に即応することが困難な状況であり、また、量的にも不足する傾向にある。このため、学術研究の進展を展望して必要となる先導的な設備を重点的に整備・充実する必要がある。
 萌芽的な研究における個人使用の色彩の強い設備については、研究者の発想を尊重し、科学研究費補助金による対応を含め、優れた研究に対して弾力的な整備が行われるよう配慮する必要がある。また、新しい発想や原理に基づいて設備を研究・開発して新しい分野を切り開く場合や、研究目的に合わせて設備を改良し、高度化するといった場合については、その重要性にかんがみ、科学研究費補助金も含めた適切な対応や、民間企業等の資金を活用しての共同開発を推進することが必要である。

(3)研究設備の共同利用

 研究設備の有効利用を図るため、設備の性格や利用頻度等に留意しながら、できるだけ多くの研究者による共同利用を積極的に推進する必要がある。基盤的な研究設備は、各研究組織に整備すべきものであるが、学内や地域内での共同利用が可能なものについては共同利用を前提に整備を図る必要がある。先導的な研究設備については、多くの研究者による共同利用に供することが適切なものは、その研究の中心となる機関に整備し、全国又は地域内の共同利用とすることが必要である。この場合、整備すべき機関は、研究業績や研究の発展性を中心に評価し、決定することが適当である。共同利用の推進を図るためには、設備の運転・維持管理への適切な対応や学内共同利用が一層推進するシステムの構築等について検討する必要がある。

(4)研究設備のレンタル等による導入の促進と維持管理の改善

 研究設備の開発速度は年々早くなっており、研究設備の実質的な耐用年数はますます短くなる傾向にあることを考慮し、また経費・保管場所の効率的な使用という観点からもレンタル等による研究設備の導入の促進について検討する必要がある。
 また、研究設備の学内及び大学間での相互の利活用に資するため、研究設備の整備・利用状況等の情報の収集・公開、相互に利用するシステムの整備、移管の促進、科学研究費補助金で購入した設備の研究期間終了後の取扱い及び設備の運転・維持管理の委託について検討することが必要である。

お問合せ先

研究振興局学術機関課

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。