1 我が国の学術研究を支える学術情報基盤の今後の整備について

(1)最先端学術情報基盤(CSI)の構築

   最先端の学術情報基盤が、今後の科学技術・学術分野における国際協調を図る上で重要であり、国際競争の死命を制するという認識の下、世界をリードする研究を支えるために、我が国の大学等や研究機関が有しているコンピュータ等の設備、基盤的ソフトウエア、コンテンツ及びデータベース、並びに人材、研究者グループそのものを超高速ネットワークの上で共有する「最先端学術情報基盤(CSI: Cyber Science Infrastructure)」の構築が不可欠である。

(2)学術研究の高度化・多様化を背景とした学術情報基盤整備の必要性

   学術研究分野全般において、理論、実験に加えて今後有望な研究の方法論として、コンピュータ上の大規模なシミュレーションを中心とする計算科学や、大量データの即時収集などに基づき、そのデータを基に何が起こっているのかを解明するデータセントリック科学が大きく注目されつつある。こうしたことを背景として、様々な分野におけるコンピュータの利用は新たな要求、需要を生み出しつつあり、計算機資源をはじめとする学術情報基盤の整備は喫緊の課題である。

   また、学術研究の高度化や多様化を背景として、学術研究における計算機資源、グリッド、ストレージ、学術コンテンツへの要請や、学術情報ネットワーク上での全国大学共同電子認証基盤(UPKI)、仮想閉域ネットワーク機能(VPN)の活用などといった学術情報基盤に対する新たな要請も益々高まってきている。

(3)大学等におけるライフラインとしての学術情報基盤の戦略的な整備の必要性

   大学等においては、学術研究、教育活動の推進や運営等の効果的な実施のため、コンピュータやネットワークといった学術情報基盤がもはや電気やガスなどと同様にライフラインとして不可欠なものとなっている。また、大学等の学術情報基盤を相互に接続する学術情報ネットワークについても同様のことが言える。

   このため、大学等においては、教育研究の進展等を踏まえつつ、各大学等の特色や学内ニーズに即して、全学の情報システムの一元化・集中化、業務の改善・高度化の推進、人材の確保、専門家の養成及び全学的な情報セキュリティの確保等、学内の学術情報基盤整備に係る戦略を持ってコンピュータ及びネットワークの整備とそれを支える体制の整備を図っていく必要がある。

   国立情報学研究所及び情報基盤センターは、学術研究のための計算機資源や各種データベースなどの提供、学術情報ネットワークの維持・発展のために、また、情報技術に関する最先端の研究開発機関としても大きな役割を果たしてきている。さらに、国立情報学研究所及び情報基盤センターに対しては、グリッド・コンピューティングに関する研究開発の進展や学際的な計算科学の展開などにより、計算機資源の大規模化・高速化に対する更なる取組みへの期待が高まってきている。これらの機関においては、今後とも、研究開発と利用者支援とを一体化して様々な要請に対応していくことが求められている。

   また、情報処理教育・実習環境の改善、教育及び研究の多様化・情報化といった教育研究上の要請などを踏まえて大学等に設置されている情報処理センター等は、各大学等における学術情報基盤の構築に重要な役割を担っている。その整備に当たっては、各大学等における厳しい財政状況なども踏まえ、設備等の調達や学術情報基盤の共有のための大学等の枠を超えた連携方策などについても、早急に検討していく必要がある。

   一方、国立大学等の学内LANの整備及び高度化は、かつては主に補正予算の措置により行われてきた経緯がある。最近では、平成12年度から同13年度にかけてギガビット・イーサネットの導入により多くの大学等においてその更新等が図られた。この時期までに導入された学内LAN設備は、現状において老朽化し、教育研究遂行上の支障になりかねない課題となっている。こうした状況を踏まえて、各大学等においては、それぞれの特色や学内ニーズに即して策定された学術情報基盤整備に係る戦略に基づき整備を図っていく必要がある。その際、学内LAN設備の導入、保守に関する契約方法の工夫などを含む持続的な整備方策についても検討していく必要がある。

   なお、各大学等においては、セキュリティに配慮した学術情報基盤の構築が重要となっており、情報セキュリティポリシーの運用や支援等の新たな業務に対応し得る人材の確保が課題である。

これらの新たな業務を含んだ学術情報基盤を支える業務に関わる教員や技術系職員のキャリアパスなどについても検討する必要がある。

(4)学術情報基盤整備における関係機関及び国の役割

   我が国が最先端の学術研究を推進し、教育研究活動の効率的な展開を図っていくためには、それを支える学術情報基盤の整備が益々重要になってきている。こうした現状を踏まえると、国立情報学研究所及び情報基盤センターは、我が国の大学等における学術情報基盤を支えている中核として、引き続き、その役割を果たしていく必要がある。

   また、学術情報基盤整備における国の役割は不可欠であり、国は、最先端学術情報基盤(CSI)の構築に向けて、我が国の学術研究の動向を踏まえつつ、一方で国際的な情勢も踏まえつつ、戦略的にその整備・充実を図るための方策について検討していく必要がある。

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研究振興局 情報課 学術基盤整備室

(研究振興局 情報課 学術基盤整備室)