2.日米英の競争的研究資金制度の比較 2.米国の状況

≪競争的研究資金≫

○ 連邦政府支出の競争的研究資金は約300億ドル(3.9兆円、2001年)と研究開発経費(850億ドル、約11兆、1$=130円)の35.3%に相当する。

○ 12以上の配分機関(政府機関)から、競争的研究資金が大学、公的研究機関、民間企業等へ供給されている。

≪直接経費(人件費)≫

○ 研究費には、研究開発の実施に参画する者の人件費が含まれ、直接経費の相当部分を占める(1999年のNSF支出における人件費の占める割合は37.4%)。研究者(申請者を含む)の他、研究代表者が選定するポストドクター、大学院生や技術者等を大学が雇用できる。同時に研究開発の遂行に必要な研究実施場所等を大学から供与されるシステム(申請時には大学の責任者の許可が必要)となっている。

○ 大学が教員に支給する給与は、9~10ヶ月分に限られている場合が多い。そのため、大学教員は、競って競争的研究資金を確保し、自らの給与を補填するとともに、大学側から教員へ要請される教育等の業務と研究業務との時間配分(エフォート)の調整を図るシステムが大学に設けられている。

(注) 「エフォート」とは、研究者が当該業務に必要とする時間の配分率(%)。研究者の年間の全仕事時間を100%とする

○ 競争的研究資金等の外部資金の確保ができなければ、研究開発の遂行が困難になるため、競争的研究資金獲得のインセンティブは高い。しかし、研究者にとっては、競争的である反面、安定性を欠いているとの指摘がある。

○ 研究代表者によって選ばれた大学院生は、競争的研究資金等から生計可能な給与と授業料の支給を受けて研究開発に従事し、研究者・技術者として育成される。

○ バイドール法により、政府研究開発資金によって得られた特許は、すべて研究機関に帰属する。

≪間接経費≫

○ 間接経費比率の算定に、研究機関の財務面の実態を反映するシステムが構築されており、間接経費比率は、配分機関と研究機関の交渉によって決定される。

○ 間接経費は、大学にとって重要な収益源である。そのため、大学は競争的研究資金を獲得することができる研究者を競って雇用する傾向がある。

≪大学の研究開発環境≫

○ 連邦政府から大学への支出は、私立大学、州立大学を問わず、競争的研究資金等の研究開発に係わる経費として配分される。(教育に要する経費は、原則として連邦政府から配分されない。州立大学に対しては、州政府から教育に要する経費の一部が配分されている。私立大学においては、基金(エンダウメント)や民間寄付金等の収入がある。また、米国では、連邦政府以外の民間資金や非営利団体からの外部資金が充実している)。

○ 競争的研究資金を獲得できれば、若手研究者(アシスタント・プロフェッサー等)であっても、研究従事者と研究実施場所を確保して独自に研究開発を実施できる。

≪評価システム≫

○ 配分機関へ提出する申請書には、詳細な研究計画や実施体制を記述することが要請されている。配分機関は、それを時間と労力をかけて評価している。

○ NIH等の基礎研究の場合は、申請課題の専門分野を踏まえて、詳細な研究計画を理解し、判断できる第一線の現役研究者である者が評価者として選任される。この際、若手研究者も選任されている。

○ 優れた研究開発課題にあっては、研究開発期間終了前に、新たな事前評価を経て、改めて研究開発期間を設定し、継続できる仕組みが各制度にある。

○ 担当分野の専門知識や研究経験を持つプログラムオフィサーが、評価業務を管理し、適切なフォローアップを行っている。例えば、NSF(国立科学財団)、NIH(国立健康研究所)、DARPA(国防省国防先端研究プロジェクト局)には、それぞれ約400、1100、140人が専任で配置されている。

(注)NSF、NIH、DARPAのプログラムオフィサー1人当たりが扱う年間予算額は、それぞれ15.6億円(2002年、1$=130円)、17.6億円(2001年)、18.6億円(2001年)である。

≪競争的研究資金の運用形態≫

○ 研究者の発想を尊重した研究開発が中心となっている。また、研究代表者の責任が徹底している。

○ NSFやNIHの競争的研究資金においては、研究開発課題の実施期間内では、費目間振替、年度間繰越が自由に行える。

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研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)

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