2.日米英の競争的研究資金制度の比較 1.日本の状況

 日米英の競争的研究資金制度の主要な特徴について、「競争的研究資金」、「直接経費(人件費)」、「間接経費」、「大学の研究開発環境」、「評価システム」、「競争的研究資金の運用形態」に分けて、概観すると次のとおりである。

1.日本の状況

≪競争的研究資金≫

○ 14の配分機関に22の競争的研究資金制度があり、総予算は約3500億円(平成14年度)。政府研究開発投資の約10%に相当する。

≪直接経費(人件費)≫

○ 国立大学等の研究者が、研究費に研究者自らの給与を計上することはできない。

○ ポストドクター、大学院生、技術者等に対する人件費に制限(各種手当、ボーナス、退職金等に使用不可)があるため、役割と能力に応じた給与が支給できない。このため、研究代表者が、ポストドクターや技術者等の研究開発に必要な人材を確保することが困難であり、また大学院生に経済的安定を与えることができず、研究開発に安定して従事させることが困難である。

(注) 「ポストドクター」とは、主に博士課程修了後、研究者としての能力をさらに向上させるため、引き続き大学等の研究機関で、研究業務に従事する者。任期を付して雇用されている場合が多い。

≪間接経費≫

○ 平成13年度から間接経費(間接経費比率の目標30%)を導入し、現在、全競争的研究資金における間接経費の合計の割合は約6%である。

≪大学の研究開発環境≫

○ 国立大学等に対しては、近年拡充しつつある競争的研究資金の他に、研究開発に係わる経費として、教育研究基盤校費、その他の校費が配分されている。

○ 研究従事者や研究実施場所の配分等が、競争的研究資金の獲得に関係なく措置されている。

○ そのため、若手研究者が競争的研究資金を獲得しても、独自に研究開発を実施する研究実施体制を組むことが困難である。

○ 学校教育法における助手、講師、助教授の職務規程上の立場が教授の職務を助けることとされている。

≪評価システム≫

○ 研究開発課題の採択に当たっては、概略的な申請書を各分野の権威者が短時間で評価していると指摘されている。

○ 評価者の選任における、厳正な利害関係者の排除規定がない。

○ 評価結果や評価内容の申請者への開示が不十分である。

○ 米国の研究課題管理者(プログラムオフィサー)に相当する担当者がいない。

(注) 「米国のプログラムオフィサー」の役割は、例えば、評価プロセスの選択、評価段階においては、評価者の選任、現地調査への参加、合議審査会議等の評価プロセスの計画・実行、どの課題にどの程度の資金提供を行うかの最初の立案、また、実施されている研究開発課題の進行状況の評価等である。プログラムオフィサーの殆どが、自然科学系の博士号を有しており、担当研究分野の知識や研究経験を持ち、その研究動向についても熟知している。

≪競争的研究資金の運用形態≫

○ グループ研究が多く、責任と役割分担が不明確と指摘されている。また、研究分担者の研究費が極めて少額な場合がある。

(注)
個人研究:研究者が1人、あるいはポストドクターや大学院生らと行う研究開発の形態。研究分担者(研究者)がいない場合。
グループ研究:研究者が2名以上で行う研究開発の形態。研究代表者の他に研究分担者がいる場合。

○ 研究費の小規模な研究開発課題が多く、研究者が多数の申請書を提出せざるを得ない状況にある。その結果、膨大な数の申請書となり、評価に過重な負担をかける一因となっている。

○ 費目間振替については、制度によって異なるが、各費目額の10~30%等の制限がある。また年度間繰越については、これまで実施された例は殆どない。

○ 日本版バイドール条項の適用の徹底がなされていないため、特許の研究機関帰属は、22制度中9制度である。

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