産業連携・地域振興部会(第10回) 議事録

1.日時

令和7年1月27日(月曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省東館15階 科学技術・学術政策局会議室1 及び オンライン(Zoom)

3.議題

  1. 産業連携・地域振興の取組について
  2. その他

4.議事録

【久世部会長】  それでは皆さん、ただいまから科学技術・学術審議会産業連携・地域振興部会を開催いたします。本日もお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
 定数20名のうち、対面での御出席は7名、オンラインでの御参加は12名ということで、10名以上の定足数を満たしていることを確認いたしました。
 それでは、まずは事務局より留意事項等をお願いいたします。
【對崎課長補佐】  久世部会長、ありがとうございます。
 委員の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらず、本日も本部会に御出席をいただきまして、ありがとうございます。
 本部会は、運営規則第5条に基づいて原則公開とさせていただいておりますので、本日も公開となっております。一般傍聴者、報道関係者も傍聴してございます。
 本日は、事務局として産業連携・地域振興課長の池田、拠点形成・地域振興室長の平野、そして産業連携推進室の迫田が参加をしております。また、遅参になりますけれども、科学技術・学術政策局長の井上が出席予定でございます。
 それでは、会議に先立ちましてウェブ会議を円滑に行う観点から、これから申し上げる事項について御留意いただきますようお願いいたします。まず、オンラインで御参加の皆様におかれましては、ハウリング等を防止する観点から御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。また、御発言時は対面で御参加の皆様は名立てや部会長宛てにサインをいただく、また、オンラインで御参加の皆様は挙手ボタンを押していただいて、いずれも指名をいただきましたらオンラインの方はカメラをオンの状態にして名前をおっしゃっていただいた上で御発言をお願いいたします。
 また、会議中、大変僭越ではございますが、各参加者の皆様のお名前の表示や、ミュート設定等について事務局より設定を切り替えさせていただく場合がありますことを御了承いただければと思います。
 また、御質問、御意見の際はZoomボタンの挙手をお使いいただければと思います。
 それでは、部会長に進行をお返しいたします。
【久世部会長】  本日の議事ですが、議題としまして「産業連携・地域振興の取組について」を予定しております。まず、事務局から説明をいただいた後、10分程度御質問、御意見をお願いいたします。また、本日は第12期の最後の会です。本日、御出席の委員の皆様から、一人一人3分程度コメントをお願いいたします。なお、本日は議題が1つでございますので、早く終われば15時前閉会ということにします。
 それでは、資料の説明を事務局からお願いいたします。
【對崎課長補佐】  ありがとうございます。
 今投影してございますのが議事次第でございますが、今からの説明をもって資料の確認も兼ねさせていただきます。
 本日の配付資料としましては、1-1が産業連携・地域振興課の令和7年度予算案、資料1-2のシリーズが第7期科学技術・イノベーション基本計画の関連の検討状況で、文科省の資料と内閣府の資料を用意してございます。また、資料1-3としましては、J-PEAKSの令和6年度採択結果が先日公表されましたので、こちらも御報告をさせていただきます。資料1-4は“わたしとみらい、つながるサイエンス展”についてということで、大阪万博の展示出展を文科省のほうで予定しておりまして、そちらの御紹介になります。資料1-5と1-6は他省庁の資料でございますが、1-5はスタートアップ・エコシステム拠点形成に追加の公募を行っておりまして、そちらの資料の御紹介となります。また、資料1-6は地方創生2.0の「基本的な考え方」というところで、政府の動向として御紹介をいたします。
 それでは、資料の説明に入ります。まず、資料1-1でございますけれども、こちらは当課の令和7年度予算案についてでございます。
 2ページをお願いいたします。全体といたしましては、前年度同額の226億円を現在予算案として閣議決定して、国会に提出しているところでございます。内容としては、個別に以降にお話をさせていただきますけれども、2つの大きな基金を運用しつつ、個別の事業のほうも、めりはりづけをもって必要なところをしっかりとつけていきたいと思ってございます。
 3ページをお願いいたします。J-PEAKSのほうは、予算は基金事業で運営しておりますけれども、それ以外に運営を確実にするための調査研究等も計上してございまして、この後説明させていただきますが、今年度の13校の追加の採択、2次の採択が決まりまして、全25校というところで事業を運営していくところでございます。
 4ページお願いいたします。大学発新産業創出プログラムであるSTARTのほうは、拠点におけるアントレプレナーシップ教育を展開してございますけれども、下のスタートアップ・エコシステム形成拠点の中の下から2つのポツが新規のところでございます。スタートアップ・エコシステム拠点の8都市に関しては前年度までアントレプレナーシップ教育を展開していたところですけれども、そちらを加えて新たに整備した北関東と北陸のプラットフォームに関してもアントレプレナーシップ教育を拡充していきます。また、起業を目指す博士課程学生向けに、長期の海外派遣などの実践的なアントレプレナーシップ教育の開発、実施を新規で行う予定としてございます。
 5ページをお願いいたします。共創の場形成支援事業でございますが、こちらは当部会でも御議論いただきましたとおり、地域の課題の深掘りやそれを牽引する若手を呼び込んでくるというところで、ちょっと小さくて恐縮でございますが、資料の一番下にある未来協創分野【新規】にございますとおり、こちらは課題の深掘りと若手の研究費というところで、新規としては3拠点程度を想定しておりますけれども、こちらの新しい分野を展開していくということを予定しております。
 6ページをお願いいたします。A-STEPは、右下のほうですけれども、ステージ1の育成フェーズというところで、令和7年度の新規予定件数を60件程度としてございまして、例年よりも件数が多く、まずはスモールスタートをしっかり実施できるようにというところの予算を予定してございます。
 7ページお願いいたします。全国アントレプレナーシップ醸成促進事業は、こちらも部会のほうでも一部御議論いただきましたけれども、右側の赤と黄色で囲ってあるところでございますが、アントレプレナーシップ推進大使の派遣というところで、こちらは文部科学大臣が任命して全国の小中高生向けにアントレプレナーシップ大使を派遣する事業でございます。将来的な1,000名規模の派遣に向けて、新たな形で文部科学省も支援をしていくというところで予定しております。
 8ページをお願いいたします。次世代型オープンイノベーションモデルの形成は、こちらも部会のほうで御議論いただきましたけれども、大企業とスタートアップの協業、次世代技術の研究開発支援のところを重点的に行うような大学等の支援として、新規事業として2機関程度を想定してございますが、こちらも新規の事業ということでまずは開始させていただくという予定でございます。
 9ページをお願いいたします。知財活用支援事業はJSTの事業でございますけれども、こちらも知財人材の育成ということでしっかりと前年同額の予算を措置して進めていく予定でございます。
 次に資料1-2のシリーズでございます。1-2-1として7期に向けた文科省の検討というところで、こちらも部会のほうで夏までいろいろな論点を御議論いただきました。
 次のページをお願いいたします。こちらは、知の価値化(成果の社会への還元)ということで、人材、創業、成長という観点で課題を整理してございますけれども、人材に関してはアントレプレナーシップの質、量の不足に関する対応。スタートアップ等の創業に関しては、創業後の成長への支援の不足のところをどう対応していくか。また、成長に関しては、スタートアップが成長していく際の支援の必要性といったところを整理してございまして、上の四角の中にそれぞれのエッセンスを詰め込んで、また、こうした観点と併せて当然ながら技術の社会実装に向けた産学官の共創の場の醸成というところも課題感としてこちらに記載してございます。
 資料1-2-2ですけれども、こちらは政府全体の7期に向けた議論というところで、まだ始まったところではございますが、内閣府の資料をこちらに用意してございます。
 1ページをお願いいたします。社会像、全体像と科学技術、イノベーション政策の在り方として、ここに書かれているような観点がまずは方向性として議論されております。
 2ページをお願いいたします。個別のテーマというか、もう少し大きい論点、テーマとして、研究力の強化、人材育成、そしてイノベーション・エコシステムというところで、ここは当部会での一番のフォーカスになってくるところは全て含まれておると思いますけれども、こうしたイノベーション・エコシステムに関する論点、また、経済安全保障との連携、その他という形で議論が進められております。
 次に、資料1-3をお願いいたします。資料1-3は、先日、1月24日に公表されました地域中核・特色ある研究大学強化促進事業の令和6年の採択結果でございます。
 3ページをお願いいたします。令和5年度は12件の採択を既に行っておりまして、令和6年度の公募審査、採択を実施していたところで、13件の採択を今回公表させていただきました。
 次のページをお願いいたします。13の選定された大学について一覧に示しておりまして、そちらの記載のとおりの大学、あるいは連携大学が令和6年度の採択大学となっております。今後、大学への支援や伴走支援等が行われていく予定でございます。
 6ページをお願いいたします。下のところに書いてございますとおり13大学で、国立が10校、公立が1校、私立が2校となってございます。
 次に、資料1-4をお願いいたします。こちらは、“わたしとみらい、つながるサイエンス展”というところで、大阪万博への出展を予定している事業のご紹介でございます。
 2ページをお願いいたします。こちらは、8月に行われる万博のほうに文部科学省として、大学等の最先端の知をコンテンツとして提供するというもので出展を予定しておりまして、4大学を中心とする一番大きな展示は既に採択を得ております。それ以外にも中展示、小展示といったところで様々な大学に御参画をしていただく予定でございます。また、8月の本番のイベントに先駆けまして、2月13日から16日にかけて東京の有楽町にございますTokyo Innovation Baseというところで、こちらの本展示に向けたプレイベントで本展示に出展するような大学さんの一部の展示をプロトタイプ的にお示しするようなイベントを用意してございます。こちらもぜひ、アナウンスいただいて御参画をいただければと思っております。今回の訴求ターゲットとしましては、中学生、高校生、国内外の企業団体というところを想定してイベントの設計を現在行っているところでございます。
 3ページをお願いいたします。次のページは、先ほど申し上げた一番大きな展示を行っていただく4大学をこちらに示してございます。
 4ページをお願いいたします。以降は、先日の報道発表資料で中展示を行う大学等も公表してございますので、御参考までに御覧いただければと思います。
 次に、資料1-5をお願いいたします。資料1-5、1-6は他省庁の資料になっておりが、資料1-5は内閣府のスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略に向けた考え方というところでございます。
 1ページお願いいたします。こちらは、既に選定されている8つの都市拠点をお示ししており、こちらについてさらに計画の改定を行うとともに、新たな拠点を数拠点採択する予定と伺っております。
 少し先まで飛ばしていただきまして、10ページをお願いいたします。現行の枠組みとしては、グローバル拠点都市と推進拠点都市というので進めていきたいところ、新しい枠組みとしてグローバル拠点都市とNEXTグローバル拠点都市という形で新たな枠組みを発展させた上で、新規の拠点をさらに選定する予定と伺っております。
 次に、資料1-6をお願いいたします。資料1の最後でございますけれども、こちらは地方創生の関係というところで、年末の推進本部の本部決定のものをお示ししてございまして、関係する部分に少しハイライトをしてございます。基本的な5つの柱というのがございまして、9ページをお願いいたします。付加価値創出型の新しい地方経済の創生という中に、地方大学と企業等が連携した地域の特徴ある産業の高付加価値化と。あるいは、一番下の丸ですけれども、地方起点で成長し、ヒト、モノ、金、情報の流れをつくるエコシステムという中に、スタートアップ・エコシステムや、産官学連携のオープンイノベーションといった施策として記載がございまして、こうしたところの動きも見つつ、文部科学省としての今後の検討を議論しているところでございます。
 ちょっと駆け足でございましたけれども、最近の動向等として御紹介を申し上げました。それでは、部会長に進行をお返しいたします。
【久世部会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局からの説明について御質問、御意見がございましたら、お願いいたします。冒頭にも説明がありましたとおり、会場で参加の方は名札を立ててください。それから、オンライン参加の方は挙手ボタンをお願いいたします。
 いかがでしょうか。コメントについては、このあとの各委員から3分間のコメントの中に含めていただいても結構です。ということで、この場では質問を中心にお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 オンラインの北岡委員、よろしくお願いいたします。
【北岡委員】  御説明ありがとうございます。
 最後のところで地方創生という言葉が出てきて、私も読ませていただいたんですけれども、今説明いただいたところは結構共通点があるのかなと思っていて、例えばスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略というものに関しましても、やはり縦と横のつながりというか、1都市だけで何かができるわけではなくて、やはり地域の連携がすごく重要で、そこで連携しながら一体何をするのかというのと政府との連携というのは非常に重要だなと認識しています。そういう中でスタート事業においても、拠点形成というのを意識しながら進めてこられたという背景があると思います。
 今回のスタートアップ・エコシステム拠点形成の見直しというところで、内閣府が始動するということにおいて、このバックアップの支援は省庁ごとにやられると思うんですけれども、正直内閣府のほうがむしろ各省庁の活動が見えていなくて、結果的にその拠点内部も見えていない感じいたします。なので、ぜひ文科省さんからもSTART事業だけではなくて、地域でどんな研究プロジェクトや施策が今動いているのかというのは、ぜひこの拠点形成の見直し及び審議のところに関して文科省さんからも強い要望をお願いできればと思います。START事業の9拠点が中心になって今地方創生を進めるということは、非常に効果的であるのではないかと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 どうしましょう。全部の質問をお受けしてからのほうがいいですか。1件ごとにお答えいただくことにしますか。
【對崎課長補佐】  多分、この後先生方の全体のコメントに入ると思いますので、今の点、ありがとうございます。今の点だけでお答えさせていただきます。
 内閣府としっかりと連携を取りつつですけれども、文科省からもしっかり発信を、働きかけをしていくべきというところで、まさにそのとおりかなと思います。我々は、ふだんスタートの事業を運営する中でも各地域の幹事校をはじめ、参画している大学ともコミュニケーションをしているところでございますので、ぜひ文科省からの発信というところで積極的に取り組んでいきたいと思ってございます。
 ありがとうございます。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 では、次に林委員、よろしくお願いいたします。
【林委員】  すみません。頂いた資料を拝見していて、少しまだ分からないことがあったので質問させてください。資料1-2-2の次期基本計画に向けた議論すべき主要な論点、これは内閣府の地域基本計画の話だと思いますが、科学技術の光と影とかテクノロジーの関連するガバナンスの議論とか、それからもう一つはそのガバナンスに関連してCSTIの在り方をどう考えるかという、これが項目に入っていますが、その背景とか、もしも議論がある程度出ているならどういう方向をもってされているのか、何か御存じであれば聞かせていただきたいです。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 事務局のほうから、お願いいたします。
【池田課長】  池田でございます。
 この辺りもCSTIとしての議論もこの資料5で第1回とありますので、まだ始まったばかりというところでございまして、今後深めていくところかなと思っています。第1回の段階ではまず論点を挙げて、これからという形であります。実際に、基本計画も来年度いっぱいまでということでちょうど動き出しているということで、この部会の中でもちょっとその状況とかも御報告させていただきながらCSTIに入れていくべきところは入れていくという形にしたいと思っております。
【林委員】  ありがとうございます。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 ほかに、御質問ございませんでしょうか。
 私のほうから一点だけ。今の質問に関係して、「科学技術の光と影」は、以前、日本学術会議でもテーマとして議論されていましたが、関係はあるのでしょうか。裏表を想起するキーワードですので、気になった次第です。このキーワードを入れられたのには何か理由があるのでしょうか。
【池田課長】  すみません。この辺りは、事務局側が何を意図しているかというところまでは私どものほうには届いてはいないんですけれども、やはりこれだけテクノロジーが伸長してきているので、当然なかなか社会がついていかない面とか、様々なあつれきというか、進歩についていけない部分で、やはり何がしかの不都合が出てきているところはあるのかなと思いますので、具体的にどれを指して言っているのか私どもだけではちょっと分からないんですけれども、考えるべきということなんだろうなと、そう推察しているところでございます。
【久世部会長】  分かりました。ありがとうございます。
 ほか、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、本日第12期最後の会ですので、出席いただきました委員の皆様に1人3分程度のコメントをお願いしたいと思います。出席者リスト、名簿順でお願いしたいと思います。最後に栗原部会長代理、それから私のほうからコメントをさせていただきます。
 それでは、今オンラインで御参加の上田委員から、よろしくお願いいたします。
【上田委員】  上田です。
今回参加させていただいて、産業連携・地域振興という視点でいろいろな人のお話を聞かせていただいたのですが、基本的には文科省の方々がどういう方向性でこの2つのテーマを考えているかということが非常によく分かりました。一方で、多様な方々が参加されている中で、我々のような企業の視点だけではなく、いろいろ参考になるお話を聞かせていただいたので、この会合自体は非常によかったと思います。
 一方で、この会議の中でも指摘がありましたけれども、やはりいろいろな取組が継続されている中で、実感として具体的な成果という観点ではなかなか分かりにくいものがあるというお話がありましたが、その観点で3つほどお話しさせていただきます。
 1つ目は、いろいろな施策が行われている中で、どちらかというとそれぞれの地域でばらばらな取組がされていて、あまり認知されていない取組も多いと思います。初めて知るような話もあって、そういう状況の中でそれらが連携していくのはなかなか難しいのではないかと思います。さらに、その次のステップのエコシステムをつくっていくということも非常に難しいのではないかと感じました。その意味では、いろいろな取組が進む中で、いろいろな人がそれを認識して共感・共鳴し、広がっていくことが重要で、最終的に必要なステップは共創ですが、共に創っていくというような動きがまだ弱いのではないかということが課題意識として持っているものです。
 2点目は、それを解決していこうと思うと、やはり総合知が重要で、これらの取組をつなげていく必要があると思います。これについても、いろいろな先生方がおられて、いろいろなアイデアを持っておられるにもかかわらず、これが生かされてないのではということを問題意識として持っています。総合知という言葉はいろいろな局面で使われてはいるのですが、それをどうやって実装していくかというのが今後のテーマになると思いました。
 3つ目は、いろいろな取組をネットワーク化してエコシステムの形成につなげていくということについても、概念的には異論は全くないのですが、具体的にどうやっていくかという議論がまだ弱いと思います。地域中核・特色ある研究大学強化というJ-PEAKSの大学も25校が選定されましたが、中身を見るとほかの地域でもやっているような取組もあるので、そういう取組が全国の類似の取組をしている人たちとうまくつながっていくようにするには具体的にどうすれば良いかが、今後の議論になると思います。
 産業連携・地域振興という視点での具体化にあたって課題はありますが、ベースになる議論はしっかりできたと思いますので、今後これを展開していく中で協力できたらと考えています。
 以上です。どうもありがとうございました。
【久世部会長】  上田委員、ありがとうございました。
 続きまして、高橋委員、よろしくお願いいたします。
【高橋(祥)委員】  高橋祥子でございます。
 様々な取組の事業に関しては、非常に目指しているところが理解できるやるべき事業が議論できたのかなというふうに考えております。
 一方で、特にやはり教育に関するところは、例えばアントレ教育なども継続していくことが非常に重要だと思いますので、継続していったときに、先ほどの上田委員の御意見とちょっとかぶりますけれども、結局どう変わっているのかというのをきちんと定点観察していって、トライアンドエラーしていくことが非常に重要だと思います。事業をやりっ放しというよりは、その結果どういうふうに変わっていっているのかというのを今後きちんとウォッチしていきたいというところです。
 あとは、非常に重要な事業をやっているけれども、やはりそれをもうちょっと発信していくことが必要なのかなと思っていまして、文科省以外の、例えば経産省の委員会とかでもほとんど同じような議論がなされていて、こういう教育事業とかいろいろな事業をやっていくべきだという議論をいつもどこに行ってもそんな話になるんですが、こういった事業をきちんとやっているというところを発信して、きちんと成果をウォッチしていくというのが今後必要になってくるのかなというふうに思います。
 以上です。ありがとうございました。
【久世部会長】  高橋委員、ありがとうございました。
 続きまして、荒金委員、よろしくお願いいたします。
【荒金委員】  荒金でございます。ありがとうございます。
 全体的に、このカテゴリーの中で検討されている個々のテーマ、課題というか、それは大変それぞれ重要なことだということで認識をしております。ただ、やはりそこの比率というんですか、限られた予算の中でどういう比率で目標を達成していくかというところのそもそものスタートですよね。そこのところは、もう少し皆さんにいろいろな意見をいただいて深掘りしてもいいのではないかなというような印象も持っております。
 私が関係しているところは地域のところなんですけれども、とはいえ何となく縮小気味のような印象も持っているので、すごく重要なテーマにもかかわらずそれがうまくいろいろなところにアピールできていないのではないかなというような、そういう危惧も少し持っております。なので、ぜひもうちょっと多くの方にこの重要性を知っていただくための最初のスタートのところの議論というようなものにも、御参加の皆様の意見をもう少し反映した戦略みたいなものがより組めるようになるといいのではないかなというような、そういう印象も持っております。
 以上です。
【久世部会長】  荒金委員、ありがとうございました。
 江戸川委員は本日欠席ということで、続きまして北岡委員、よろしくお願いいたします。
【北岡委員】  北岡です。
 先ほどもちょっと意見を述べさせていただきましたが、私はアントレプレナー教育というところで、小中高のところにも関連させていただきまして、非常に小中高の学生さんがやはり早い段階から世界を見ながら、大学に何をしに行くのかとか、大学を出て社会でどうするのかと考える機会としては非常にいいなということで、この活動が全国に浸透したなと感じており、非常によかったなと思っています。一方で、やはり当時から意見がありましたように、教育指導要綱への反映とか、大学ができることとできないことや、活動の限界というのがあるので、そういった意味では文科省さん内で初等教育、中等教育との連携を強化しながら、日本の大学の教育の底上げというのはできないかなと思っています。やはり、我々大学でもなかなか、アントレプレナー教育を必修化しましょうといっても、既存の教育プログラムが走っている中でやはり難しさがあるので、現場でできることと国の指導によってできることというので、ぜひその辺は何か協力をしていただける時期に来ているのではないかなというのが1点です。
 もう1点は、先ほどのスタートアップ・エコシステム拠点もそうなんですけれども、昨今はグローバル化と言われて久しいですが、実際にスタートアップの現状を見ると、やはり海外のアクセラレーションプログラムを招致して、そこで賞を取って終わりというのが現状なのかなと感じています。そうしたときに、東京のような非常にグローバル化が進んだ地域でのグローバル化と、地方におけるグローバル化というのはやはり違うと思いますので、それぞれどういう形でグローバル化を進めていけばいいのかということについても東京の首都圏の視点ではなくて、やはり各地方の視点でどうあるかというのを考えたいと思います。どうすれば外貨を稼いで日本に持って帰れるのかという観点で、もう少し包括的に考えていく時期に来ているのではないかなと思います。来年度以降、ぜひそういうものを反映いただければというふうに考えております。
 私からは、以上です。
【久世部会長】  北岡委員、ありがとうございます。
 続きまして、小池聡委員、よろしくお願いいたします。
【小池(聡)委員】  小池でございます。よろしくお願いいたします。
 前回、前々回だったか、この会議の中で私は地方をという形で言うとCOI-NEXTのほうの、COAのときからなんですけれども、委員及びアドバイザーをやらせていただいています。地方の中核大学を中心に地方産学官連携をどうしていくかというところをやっている中で、やはり地域の課題を真剣に身をもって感じられるのは、地方大学も先生方も学生もその地域出身の方とは限らないこともあって、やはりもっとそれを深掘りして小中高生にその意識を持ってもらいながら参画をしてもらう。あるいは、そういう方々が大学に進んで本当に地域の課題を考えてもらうということが必要だということを申し上げさせていただきました。
 一方で、文部科学省のマイスター・ハイスクールという事業の委員もやらせていただいていまして、地方の専門高校と企業を結びつけた活性化ということを担当させていただいています。そこでも地域の高校生というのが地域の課題を考えてそれを解決していく、地方創生2.0につながるようなところに非常に戦力になるのではないかということを実感しております。
 もう一つ、これもお話をさせていただいて、そのときにも議論を、文部科学省さんのほうからもお話をいただきましたけれども、私は今渋谷区の教育の方にも多少絡んでおりまして、渋谷の商工会議所の副会長をやっておるんですけれども、渋谷区はシブヤ未来科という探求総合教育、総合学習を2倍以上に増やして、小学校が地域の企業とか商店とかに研修、体験に行ったりとか、非常にいろいろ活発にやっている地域でございます。最近、文科省から伊藤さんが教育長として来ていただいて、また、それをドライブかけようということにもなっておりまして、ますますそういう分野を深掘りして、小中高から今我々が議論している取組をもっともっと下のほうを深掘りしながらつなげていくという体制を文部科学省さんのほうもいろいろ考えていただいているんだなと実感をいたしまして、安心したところです。
 私のほうの感想、意見としては、大学だけではなく、そこに地域の課題を持ったもう少し低年齢層、それから住民もどういうふうに絡めていくのかということが課題になってくると。あるいは、それを推進していただきたいというふうに思っています。
 以上です。
【久世部会長】  小池委員、ありがとうございました。
 それでは、小池美穂委員、よろしくお願いいたします。
【小池(美)委員】  まず、今回の事業、あるいはそれ以前の文科省の取組で起業する人たちは非常に増えているというのは実感しておりますし、多種多様な政策も出て、今後も良い方向に行くのではないかな、数も増えるのではないかなと思っています。一方で、今は給与を上げることを、国が推進していますと、仙台では一番は大手企業に行きたいという気持ちが強いです。待遇の差を地方ではどう補えるのかと感じているところです。また、地方では、これは以前から思っていることですけれども、エコシステムの構築はよくなってきているとはいえ、まだまだだと思います。そこに関しましては、その原因を徹底的に追及してそこをカバーしていかないと本当に長続きする、しっかりとしたシステムができないと思います。
 私がスタートアップをしながら感じているところは、グローバル化をしないと成長できませんのでやっていかなければいけない中で、以前の会議でもお話ししましたように、英語力が非常に問題となります。東京にはタレンテッドの人が多くて状況は違うかもしれないですが、地方では英語でディスカッションできるような人が少ないということと、あとはグローバル化と言いながらやはり資金調達の額が少な過ぎます。グローバル展開時には英語でのNDA、MOUなどを締結しますが、適切な弁護士にお願いすると非常に高い金額です。これだったら装置を買いたいと思うような金額です。知財のほうは支援が増えたましたが、弁護士費などの法務的なところ、これはアーリーステージ、レートアーリーステージにその資金が必要になってきますので、やはり資金をしっかり集められるような政策をお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
【久世部会長】  小池委員、ありがとうございました。
 続きまして、佐々木委員、よろしくお願いいたします。
【佐々木委員】  佐々木です。
 まず、私自身はこの産地部会を何期か務めさせていただきまして、初めに入らせていただいたときには産学官連携の在り方とか、ガイドラインとかそういう理念的な話が多かったんですけれども、それがCOIとかそういう具体的な拠点形成につながって具現化して、いろいろな大学で特徴ある取組が育ってきたと思います。これは、科政局様、特に産地課様の長年の御尽力のたまものだと思います。これに感謝を申し上げたいと思います。
 私自身も今は地方にいる、九州にいる人間ですので、今日の資料の後ろのほうにもありましたけれども、地方創生とか地方のエコシステム強化ということで、引き続き追い風になればありがたいと思っております。
 他方で、私自身はどちらかというと日が当たる分野にいるのかなと思いますけれども、昨今はやはり予算が取れるところに、目立つ、日が当たるところに結構予算が集中するようなところがあります。逆に、地方の大学さんで日が当たらないところ、地味な分野には本当に人も予算もつかずに維持すら難しいという、そういう状況にもあるというのも地方の大学の厳しい状況だと思います。特に、人事院勧告でベースアップもするとなりますと、本当に大学に予算がほとんどないのではないかというところもありまして、そういう面では大学の強いところだけではなくて、その次に続くようなところにももうちょっと大きい配慮がされてもいいのかなというのは、地方にいる人間として感じます。
 その視点では、資料の1-1の6ページ目にA-STEPのそういう予算もちゃんとつけていただいているとか、9ページ目に知財活用支援事業ということで、まさに次の芽を育てる取組がされているというのは心強いところだと思います。今、注目されている拠点もかつては地味で目立たない、日の当たらなかった分野というわけであります。なので、次の芽を育てるとか、大学は社会の苗床でありますので、そういうような次に続くようなところにも引き続き御配慮をしていただきますと地方、そして大学の全体的な総合力の底上げにもつながると思いますし、それが次の拠点の形成にもつながるのかなと思います。目立つところだけではなくて、次に続くところにも御配慮をお願いしたいと思います。
 私からは、以上です。
【久世部会長】  佐々木委員、どうもありがとうございました。
 続きまして、佐藤委員よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
 アントレプレナーシップに関しましては、スタートアップ5か年計画を含めて、本当にベンチャー企業に対する融資も研究費用もファンドも、本当に圧倒的にこの10年ぐらいで増えたなという印象を持っております。
 一方で、先ほどほかの委員もお話しされていましたけれども、やはりメジャーなところにお金が集中するということは本当にあるかなと思っていて、いい研究とか成果を出しているんだけれどもアピール下手な大学、国立大学なんかはなかなか予算を獲得することが難しく、その辺のナレッジを持っている大学と持っていない大学とか、アピールできるスタッフがいる、何かそういうのにたけているスタッフがいるところ、そうではないところみたいなところで明らかに差が出てきているような感じもしております。そこは、もうちょっと誰でもできるような、満遍なく公平に予算が行くようなこと、機会の提供というのを今後できるといいなというふうに思っています。
 私はベンチャーキャピタルもやらせていただいていて、学生に対してのアントレプレナー教育とかもやっておりますと、結構今は学生の中でも起業家マインドとかがかなり醸成されているなというような印象を受けます。また、高校とかに行ってもビジネスプランコンテストとかに出ている子供たち、多くは関東に集中しておりますけれども、出会う機会も増えまして、そういったところも文科省を含めてアントレプレナー教育の裾野が広がっているなという印象を受けております。
 一方で、これも先ほどどなたかの委員がおっしゃっていましたけれども、学校の中でやり切れることは結構もう限界があるなというふうに正直思っているところもありまして、やはり高校生たちのアントレ教育に携わっていると、やれ試験だ、やれ大学受験だなど、そういう学校行事と並列していろいろなことをやらなければいけないといった中で、アントレ教育をやって行動を起こしているんだけれども、それだけでも学校の授業とかそういった行事とかで全部寸断されて、1か月ぐらい普通に止まってしまうみたいなことがざらにあるというような感じです。
 アントレプレナー教育もそうですし、本当に起業すると1年とか2年とかの単位で事業に向き合わなければいけない中で、結構学校の中でやり続ける弊害とか、普通科でできることというのは結構少ないなというふうに思っておりますので、何か文科省の中で商業科なのかアントレプレナー科なのか、最近だと海士町の隠岐島前高校では地域創生科ではないですけれども、大学でもそういうふうな科が出てきているんですが、もっと普通科ではない新たなアントレプレナーに特化したような、商業科をもっとアップデートするみたいな、もうちょっと格好よくするとか、何かそういうふうなことというのを文科省がやらないと今の普通科のカリキュラムとかの中で、学業とアントレプレナーを実際に行動できる人を増やさなければいけないというふうな中においては、そこがかなりボトルネックになってくるのかなというふうに思っています。
 3点目、これが最後になりますけれども、正直男子と女子でいきますと男性の起業家が本当に増えているなという印象があります。女性も頑張ってはいます。ただ、圧倒的にまだまだ少ない中でいくと、今女子教育といったところに予算が本当につかなくなってきています。当然ながら大学は共学がほとんどですし、女子大はほぼ人気がなくて、どんどん廃れていっているというか、我々の時代だと東京女子大学とか津田塾とか、そういったところをすごく目指していてレベルも高かった女子大が、今はほぼ人気がなくて定員割れしています。聖心女子大学でも定員割れをしているという中において、女子のアントレプレナー教育にもうちょっと予算が行くようにしていかないと、女性起業家育成とかダイバーシティーアンドインクルージョンとかいろいろと言っていますが、これからはなかなか増えないのではないかなとちょっと思ったりしているところもありますので、より早い段階で女子のアントレプレナー教育に予算が行くような支援というのも御検討いただけないかなというふうに思っています。
 大学を卒業して3年働いて女性で起業されてという方たちが今一番ぶち当たっている壁というのは、出産、育児、結婚みたいなところと、事業、企業の両立で悩んでいます。そういうふうに考えると、より女性、女子のほうこそ私は早期のアントレ教育が必要だと思っていますので、そういったこともジェンダーではないですけれども、より強化するところに予算をつけるなどの御配慮等をいただけると、よりダイバーシティーアンドインクルージョンがアントレ教育、日本の中で推進されるというふうに考えています。
 以上です。
【久世部会長】  佐藤委員、ありがとうございました。
 中座される委員の方がお二人おられますので、ここで順番を変えさせていただきます。
 続きまして、オンラインの西村委員、よろしくお願いいたします。
【西村委員】  すみません。順番を変えていただいて、ありがとうございます。 私も最初に言いたかったことは、佐々木先生と全く同じことを感じていて、J-PEAKSとかCOI-NEXTを審査させてもらって選んでいくと、特にCOI-NEXTでは育成型でかなり鍛えても残念ながら本格型に行けないケースもあったりします。あと、J-PEAKSも2年やっていると、相当練り込んできている大学があるのに採択されない。何となく昔はマラソンのように大学群にも第1集団、第2集団みたいなものが存在していたのですけれども、それぞれがばらけて、特に第2集団が縦列になってきたなという気がしてきていて、このことが今後、恐らくボディーブローのように効いてくる。社会実装につながる研究成果の創出、もう一つが、アントレプレナーシップ教育をやろうとしても、大学に人材がいない可能性があると思います。教育する人材もいないし、研究で成果を出してくれる先生もいなくなるという可能性がかなり気になる点です。これが一つ目です。
 もう一つは、J-PEAKSに加えて、最近はスタートアップ基金もJSTのガバニングボードメンバーなっているんですけれども、出てくる球の質が悪いです。つまり、例えばディープテックと言っておきながらディープテックにつながる球(研究成果)を出せるのかというと、これはかなり厳しいなと思っています。仕方なく予算をつけて選んだ球を磨くにしても、「磨き切ってもでかくならないよね」というのが結構あります。何でだろうなと思ったら、ビジョン設定ですよ。大学の先生たちが未来を描けない、20年、30年先に何が主流になってきて、そこからのバックキャストで自分たちの基礎研究を磨き上げるというか、フォーカシングするということがほぼできていないんです。
 だから、大きなお金(研究資金など)をつけることを大学に行ったとしても、ではその大学が本当に価値のある研究成果を生み出せるのかとなると、戦略的に研究をフォーカシングして自分たちが勝ち抜くんだということを描く、そういう人材が非常に足りないのです。だから、トップ大学にお金をたくさんつけたからといって結果的に日本が勝てるか、また予算がつかずに落ちていく人たちも含めて考えると、非常に危惧するところが多いかなと思っています。ですから、これまで行ってきた施策を生かすためにも、投下したお金を生かすことに対してもう一段、来年度以降に考えていただく必要があると思います。
 私はそんなふうに感じました。ありがとうございます。
【久世部会長】  西村委員、ありがとうございました。
 続きまして、長谷山委員、よろしくお願いいたします。
【長谷山委員】  長谷山です。発言順を配慮していただき、ありがとうございます。 やるべき事業を明確にまとめて仕上げていただいた資料と感じております。大学人として心から感謝します。これだけ多様なものをまとめるのは、大変難しいものであったと思います。
 一方で、あえて厳しい見方をすれば、以前の事業が様相を変えて継続されているように感じています。重要ゆえに継続されていると思いますが、結果として、各地域で個別に事業が行われ、各々のビジビリティが上がらず、本来の事業全体の目的を達成するに至っていないということかと思います。この状態では、エコシステムの形成が起こらず、次のステップである社会実装に至ることが難しいように思います。新しいものも加えられて仕上げていただいたと思いますが、多くが同じようなものであるとほかの先生も仰っていたことに共感を覚えます。J-PEAKSの25の採択大学は非常に重要なもので、今までの取組とは違った大きな基盤をつくるものというふうに思っています。ただ一方で、同じような内容が含まれているということや、中心となる大学の顔ぶれに多様性がないという意見がございました。
 アメリカのセカンドティア大学の台頭を見て、このJ-PEAKSが出来上がったと私は理解しています。
 選考、審査についても、透明性を担保しながらダイバーシティーを維持して、イノベーションに向かって前進する大きな基盤となることを信じております。
 以上です。ありがとうございました。
【久世部会長】  長谷山委員、ありがとうございました。
 続きまして、また名簿順に順番を戻します。現地のほうから高木委員、よろしくお願いいたします。
【高木委員】  ありがとうございます。高木でございます。
 産学連携等の政策は、12期の2年間だけで終わるものではなく、中期、長期になるものだと思いますので、少し長期的な視点も含め、関連して5点ほど、申し上げさせていただきます。
 まず、1点目です。産学連携の共同研究についてですが、今まで電機メーカーの個社の立場と、経団連等の経済団体の委員、そして本部会などのと文部科学省の委員として関与させていただきました。感じておりますのは、非常に一貫性を持った政策を進めていただいているということです。特に、2016年の「未来投資に向けた官民対話」では、当時の安倍総理と経団連の榊原会長、東京大学の五神総長が会談されて、産学連携を強化するということが話し合われ、その後正式な政策目標になり、ガイドラインも策定されました。さらに、例えばOPERA(産学共創プラットフォーム)あるいはオープンイノベーション機構の整備事業、これには両方とも関与させていただきましたが、これらの政策ツールで実践されました。さらに、大学ファクトブックをつくられて、大学の現状について調査され公表されています。PDCAサイクルを回されています。これは大変すばらしいと思います。よい結果が出ていますので、今後も一貫性を持って進めていただきたいと思います。
 産学連携は、まだまだポテンシャルがあると思います。日本全体の研究開発投資は約20兆円ですが、大学が3.8兆、民間が約15兆で、民間から大学等への投資は1,000億円から2,000億円のオーダーだと思います。産学連携は資金の視点からもまだまだ進める余地があると思います。
 また、一貫性を持って進めていただく中でも複数の取り組みがあり、予算の制約、そして文部科学省の人的リソースの制約も当然あります。フェーズによって重点政策は様々だと思いますので、柔軟にご対応いただければよろしいと思います。
 2点目は知財戦略です。2016年当時は、私も登壇させていただきましたが、大学の知財マネジメントに関するシンポジウムが多く開催されていたように思います。現状で、産学連携による知財の特に活用が具体的にどうなっているかということが気になっています。2016年に経団連で議論をしたときに、共同研究で民間から大学に投資される金額が、契約1件当たり200万円から300万円で少額ということが問題になりました。もう1点問題になったのは、産学官連携で得られた知財が事業化に至った割合が16%で、さらに、そのうち大型の事業につながったのが6%、つまり16%の6%ですから、1%しか大型の事業につながっていないというデータがありました。これが今どうなっているかが気になりますし、必要に応じてさらに力を入れていただきたいと思います。
 それから、3点目は人材についてです。これは表現上のことかもしれませんが、大学からは、よく「人材育成」という言葉を聞きます。産学連携、あるいはスタートアップに関する人材の場合、全てが大学で育成できるのかどうか。やはり、産業界での実務経験を持った人材に深く関わっていただく必要があるのではないかと思います。オープンイノベーション機構の整備事業は、この点に着目されて、産業界でビジネスに実績のある方を大学で雇用していただき体制を整備する事業です。その人件費を文部科学省が支援し、5年後には自立的経営の組織にしていただくという大変イノベーティブな取り組みで、成功裏に修了した事業だと思います。
 それから、4点目は大学発スタートアップです。今までは会社の設立数が注目されていましたが、今後は、大型化を目指すことが非常に大事だと思います。いろいろ政策をお考えだと思いますが、よく「エコシステム」という言葉が出てきますが、もう少し詳しくファクトファインディングをされるのがよろしいと思います。例えば、スタートアップの大型化を考えたときに、阻害要因が明確になればよいと思います。オープンイノベーション機構の整備事業のときは、文部科学省がこの事業を設計する際に、3点ほど阻害要因を分析されて定義されています。この阻害要因を解決する事業を設計してスタートされたので成功したのだと思います。スタートアップの大型化も阻害要因分析の視点も加えて進めていただければよろしいと思います。
 最後、5点目です。これは広く政策に関するコメントになりますが、いわゆる「政策の無謬性からの脱却」ということを申し上げたいと思います。多分この部会で申し上げるのは3回目になりますが、失敗を恐れずチャレンジの政策も進めていただきたいということです。CSTIの上山議員もおっしゃっておられますが、上山議員は行政府の方でおられますので、民間の立場からも申し上げたいと思います。
 以上でございます。
【久世部会長】  高木委員、ありがとうございました。
 それでは、続きまして高橋委員も2人おられますが、高橋めぐみ委員、よろしくお願いいたします。
【高橋(め)委員】  高橋です。
 皆さんの御意見、また、この委員会を過ぎてたくさんの有用な策についてお話を伺えて、大変有意義な時間でした。
 その中で、私は産学連携を企業ニーズから実践するというような活動をしている会社でおりまして、今まで延べ90校弱との産学連携ですとか、企業との連携のプロジェクトを推進してきているところです。その中で、私からも3点ほど御意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、1つには、今回議論されてこられたような様々な施策を皆さんがおっしゃられているように多くの研究者は知らないんです。特に、地方の研究者であるとか若手の研究者、時には若手ではない先生たちも、我々研究シーズを探索するという活動を日頃かなりたくさんやるんですけれども、そういった中で先生方と差しでお話をすると、いい研究であったとしても、知財に関しては全く知識がない、国プロをどうやって申請したらいいのか分からない、企業とどういうふうに出会えばいいのか分からないというような、そのような先生方がまだ数多くいらっしゃる。その中で、今日の御説明にもありましたとおり、やはり基礎研究に予算をつけるという意味で、A-STEPの予算をつけていただけることであるとか、知財活用の支援事業を取り組んでいただけるというのはとてもすてきなことだと思うんですけれども、それに加えて以前JSTさんでは地域でサテライトという組織があって、サテライトに所属されているJSTの担当の方が割と大学をまたいで有用な研究シーズをウォッチしていらっしゃって、たまにアドバイスしに来てくれるというようなことが以前はありました。そういった大学の支援人材だけでなくて、もう少し広域に見られるような方がもう少し広い目で見てシーズを発掘してくださる、また、若い研究の段階でメンタリングしていただくことで社会実装のイメージを持っていただくとか、知財戦略の骨子になるようなところの少しアドバイスを入れていただくというところがすごく重要なのではないかと思っています。
 また、2つ目はスタートアップについてなんですけれども、先ほどスタートアップと大企業さんをマッチングさせるハブに大学が活動するんだというようなお話がありましたが、ぜひここに中小企業の活動にも注目をしていただけないかと思っております。日本の中小企業は、特にものづくりなどに関しては強力な力を持っているところでありますけれども、そういった中小企業の力を取り入れることでスタートアップの社会実装をよりスピードアップさせることができたり、スムーズに実装に持っていくことができるというふうに思っています。この委員会の中でも、なかなか中小企業さんの活躍の議論はなされなかったかなと思っているんですけれども、ぜひとも注目していただけないかと思う点です。
 あと、最後に大学の地方創生のアプローチについてですけれども、大学から生まれるスタートアップをぜひ地方創生に活躍させるというようなところ、皆さんが考えていらっしゃるところだと思うんですけれども、地方の大学から生まれる有力なスタートアップをその地域で活躍させることで、その地域の新たな産業をつくるというような活動につながるのかなと思います。アメリカ等でお話を伺うと、そういった大学と州との連携した活動がかなり強力に生まれていて、産業を生み出しているというお話も伺うので、そんなところも参考になればと思いました。
 以上です。
【久世部会長】  高橋委員、ありがとうございました。
 続きまして、田中委員、よろしくお願いいたします。
【田中委員】  今は地域経済活性化支援機構ということで、地方大学のファンドをずっと運営していて、いろいろな意味で大学と、あるいは企業と、あるいは地方の銀行さんといろいろな活動をしていて、現場の仕事をしている感覚とこの文科省さんのいろいろな会議に参加している感覚、絶えずそれぞれ両方を見ながら自分の中で整理をしようと絶えず思っているんですけれども、一つ感じていることは多分自分がやっている大学のファンドであれ、あるいは自分が参加させていただいている協創の場のプロジェクトであれ、多分一つ一つは物すごくある意味いろいろな人が一生懸命成果をきちんと出していると思っているんですが、その一つ一つの活動が全部集まると、今は国や文科省さんや、あるいは大学が目指そうとしているところに到達するのかというと、それはちょっと自分の中であまりよく理解ができていないです。ただ、多分一つ一つの仕事はみんなちゃんとやられているんだと思っています。
 そのときに、自分が過去に歩んできたキャリアの中で絶えずヒントになるのは、産業再生機構のときのケースなんですけれども、そのとき本当に国が、いわゆる債務超過の会社がたくさんあって、それで41件やって2兆何千億使っていますけれども、最終的にはちゃんとリターンを出して国庫に戻しました。あのとき、最後に何をしたかというと、現場で仕事をした人がほぼ全員参加で1000ページくらいの本を出して、それが実際にいわゆる企業再生の現場で使われています。では、何であれが使われているかというと、企業再生の当事者の全員がある意味参加したプロジェクトで、その全員が散り散りになってそれぞれの銀行だったり、あるいは大企業だったり、あるいは自治体などに帰って行って、その本を一つのある意味のモデルとして使っている、そういうケースが多分一つの過去の事例なのかなと思っています。
 一方で、自分も地方大学、島根、鳥取、徳島、高知、あとは文科省さんの絡みで金沢と広島をちょっと触らせていただいていますけれども、今やっていることもそうなんですが、実は産業再生機構のときに自分が気づいたことをすごく雑駁に言うと、営業利益は出ているんだけれども、借金が多くて経常利益も赤字で、銀行が借金を減らすと金利分が減るんで再生します、そういう比較的分かりやすい方法論だったんですけれども、例えば今やっている競争の場であれ、あるいはこの間参加したD-Globalであれ、文科省さんの資料も全部そうなんですけれども、比較的複雑でぱっと聞いてぱっと分からないです。ちょっと私の理解力の不足もあるんでしょうけれども、そういうところの中に何か工夫の余地があるのではないのかなとちょっと思っています。
 たまたま大学ファンドをやっていると、大学の方だったり、産連の方だったり、あるいは大学の教員だったり、あるいはアントレプレナーになりたい学生さんとか、一人一人はすごくある意味いろいろとやりたいことがあるんですけれども、ではあの人たちが集まると大学からベンチャーがばんばん生まれるかというと、やはりミッシングピースがいっぱいあって、その多くは人なんですよね。それこそほぼ全員が東京にいますけれども、私たちが地方に住んで、大体みんな複数のキャリアの中で結果的にいろいろなことをやったからいろいろとサポートできている、そんな仕事だと思っています。多分、ここでやっている仕事はみんなその道のプロというか、いわゆる経験した人が次のある意味先輩として、共創の場というのは実はこういうようなことをすればこういう成功にたどり着くんだよと、それをみんなでノウハウをちゃんと伝わるような形にして、それをまた次の後継の人がちょっとレベルを上げてやっていくみたいな、その循環ができたらいいのになと絶えず思っているんですけれども、なかなかそれができていないのかなと、ちょっとそんな思いがあります。
 もう1個だけ、ずっと自分が気になっていて、これも何かヒントだと思うんですけれども、1963年に生まれているので、大阪万博のときに夢とロマンでわくわくして月の石を見に行った自分がいるんです。けれども、今回の大阪万博が何となくそのときの雰囲気に国がなっていないという気持ち悪さがあって、理由は分からないんですけれども、何か科学技術に対する国民の思いなのか、あるいは科学技術のある意味相対的な重要性なのか、位置づけが多分、知らぬ間に昔に比べると、落ち目という言葉は適切じゃないと思うんですけれども。実は、そこに一つのいろいろな人が新しい科学技術をもっと深く知ってビジネスにしたい、そこの機能が、例えばでいうと本で「ネイチャー」とかいろいろなものがありますが、みんなが楽しくやりたいなというムードをつくれるのは、何となく私は文科省なのではないかなと思っているので、ぜひ科学大好き小中高生を生み出すべく、そこはちょっと全然違うテーマなんですけれども、私は期待しているところもあります。
 すみません。ちょっと長くしゃべりました。以上です。
【久世部会長】  田中委員、ありがとうございました。
 続きまして、千葉委員、よろしくお願いいたします。
【千葉委員】  様々な施策が進んでいて、大変重要なことだと思っていますが、全体を見て感じるのが日本としてどうなるべきか、どうすべきかというところです。その構想というものを明確にしないと、要するに方法論の連続で終わってしまうような感じがしております。西村委員もビジョン設定が重要だということですけれどもそのとおりで、あとビジョンは出すだけではなくて誰が責任を持ってそれを牽引していくかというところもすごく大事なんです。その部分が抜けていると、一つ一つの方法とか技術的な話だけになってしまいます。そこを芯の通ったものにしたいというふうに思いました。
 もうちょっと分かりやすく言うと、例えば半導体とかAIとかGXとかということを今言われていますが、重要なのはその次に必要になるもので、その次は何か、日本は新しい世界でどういう役割を演じようとしているのかというところが見えていないと、一つ一つのものが今起きていることへの対応に終わってしまうので、当然事業としても大きくならないということだと思います。
 それから、産業連携というところでは、間違いなくこれからは単一の技術で何か新しい産業が起こるというものではなくて、新たな分野、新学術領域の創成とともに、全く新しい世界を作らなければいけない。ということは、かなり波及力のあるものにする。これは、当然産業界が動き出すには投資リターンの部分が明確にならなければいけないんですけれども、ここの部分が次の一歩については非常に未知の要素が強いんです。例えば、バイオで何か燃料を作っていくというときになると、多分、数十項目以上の技術要素が必要になる。それから、社会科学的なところ、地域との連携、こういうものが全部必要になるんです。これは、とても大企業としても一社で成り立つものではない。ということは、逆に言うと日本全体が連携するという非常に大きなチャンスになっているというふうに思っています。そこのゴールが明確になることが、実は学術的にも必要な新分野を見いだすチャンスであり、世界に冠たる領域をつくり出す大きなポイントになるのではないかなというふうに思っています。頭の中だけで考えて、この分野が足りないからここは日本の強みにしましょうというのではなくて、大きな構想の下で新しい学術的な分野をつくっていくというところが大事だと思っています。
 そこで絶対的に必要になるのが人材になるんですけれども、こういう観点でアントレプレナーを育成していく、あるいはその予備軍をつくっていくというところが大事で、これは単に教育だけではできない、やはり実践を伴ったところでの才能ある人を発見するというところがポイントになると思います。この才能の発見というと、教育の世界ではなかなか才能がなかったらどうなんだとか、すぐそういう話になるんですけれども、誰でもいろいろな才能を持っている。その才能をそれぞれ見いだすというような行為をするためには、実践の場がないと見つけられないと私は思っています。ですから、やはり明確な目標とその行動の中から、新しい教育とか事業をつくり上げていくというスタンスが必要であるというふうに感じております。
 以上です。
【久世部会長】  千葉委員、ありがとうございました。
 続きまして、林委員、よろしくお願いいたします。
【林委員】  林です。
 この部会では、この2年、あるいはそれより少し前からお世話になっています。政策の話をこちらで聞きながら、私はほかの仕事で広島大学のデジタルものづくり教育研究センターの仕事、これは内閣府から支援をいただいているプロジェクトになりますが、お手伝いしています。それから、芝浦工業大学でもビジコンとか講義を年に数回させていただいております。これらが、政策の実現等に関するチェックポイントになっております。
 振り返ってみますと、確かにアントレプレナー教育の必要性や実施するにあたっての課題などが実際に地方大学でも私立大学でもかなり聞かれるようになってきました。要するに、言葉が広がり、それに関心を持つ人が増えたのは事実で、これはとても成果だと思います。
 一方で、スタートアップをいろいろと考えてみようという活動も起きていますが、それが見えてくると同時にやはり提案内容や活動の質の部分と期待とのギャップ感が物すごくやはり明確になってきています。スタートアップを起こそうという提案はないよりは増えていくほうが良いですが、それが明確になってきている以上、提案の質をどう良くしていくのかが、今後の政策の中にも盛り込まれていかなければいけないと思います。
 具体的には、例えば先ほどからアントレプレナー教育とか人材育成という話題が出ていますけれども、それの本質は一体何なのかと考える必要があると思います。例えばピッチのやり方はこうする、ビジネスのモデルはこう考える、というのは座学でもいけると思いますが、何のためにスタートアップを起こし経済や社会に貢献するのか、というもっと深いところはどのように育成すればよいのか。人間の社会における価値観、ビジョン、それから経済学、投資家の役割などの基本の教育なり育成が必要だと思います。広く言えばリベラルアーツの基本をどう身につけるかですが、これは、いまの大学だけでできるものでもないと感じてしまいます。ですから、そういった施策をどういうふうにやっていくのかなというのが、これからの一つの課題になっていくのではないかなと感じています。
 先ほど西村委員や千葉委員がおっしゃったように、私たちは社会として一体何を目指していくのかと。こういった視座がないなかで、こういう課題があるんですということだけに目をつけていると非常に近視眼的になって、そこだけの小さなスタートアップにしかならないと思います。何でスタートアップをやりたいのか、やはり社会を変えたい、大きな意味で変えたいのであれば、そういった世界感が必要だと思います。これは、誰が教えられるんですかというと、日本の国の中でもその機会が限られるのではないかと思います。ただ、このチャレンジなしにやはり日本のユニークさは出していきにくいかなと感じています。一つの例ですが、最近は生成AIとか、世界を変えてしまうような技術の進歩がいくつもあって、世界中で議論が進んでいます。先ほど、ガバナンスについて質問させていただいたのも、ドイツは生成AIに関するガバナンスをどうするんだという課題を真剣に考えているようです。一方でそのガバナンスによってイノベーションがかなり阻害されるリスクも認識されている中で、中国とかアメリカにどうやって競争していくかを真剣に議論しています。
 では、日本はどうなのか。ただ、欧州の規制ばかりに目を向けていればいいのかというとそうではなくて、日本としてどうしたいか。世界観とは何なんだとか、といった議論ができる人が日本でもっと増えていかなければいけない、という問題意識も感じるところです。難しいことかもしれませんけれども、ほかの国ではできていることです。ですから、生成AIとかAGIの話が出てくる時代にビジョンをもってスタートアップにチャレンジしていく人材を育成していくのか、教育にも関わるし、企業経営の本質にも関わる課題であり、こういう議論の場が絶対必要になってくるかなと感じています。
 以上です。ありがとうございました。
【久世部会長】  林委員、ありがとうございます。
 続きまして、宝野委員、よろしくお願いいたします。
【宝野委員】  産業連携地域振興の施策と次年度予算計画を紹介いただきまして、ありがとうございます。この中でも、私はJ-PEAKSを通した地域中核・特色のある大学の強化は、国立大学の貧困が伝えられている中で非常に重要な施策だと思います。常々、人口比で米国に比べると日本の研究大学の数が日本は少ないと思っていますから、こういった特色を出せる大学にはぜひ頑張っていただきたいと思います。
 また、この中で先ほどの採択機関を見ていると、連携機関がやたらと多いような提案があるようですが、あまりにも大きくなると希薄化されて実効性に欠けてきますから、公募においてはあまり大きな連携を期待する書き方をしないようなことが必要かなと感じました。
 アントレプレナー教育については、最近、大学におけるアントレ教育が非常に機能しているように私は感じています。なぜかというと、過去にはなかったことですが、近年、若手の職員の採用をするときに将来スタートアップを目指したいと明言する方が増えてきています。ですから、スタートアップを支援する体制があるかどうかが若い研究者がその組織を選択するひとつの基準になる可能性があると感じています。
 それから、知財活用支援事業についてですが、我々の悩みでもありますが、知財特許は大量に出ていきますが、我々を含め大学等ではそれを売り込むノウハウというのは十分ではなく、その知財を十分に活用できていないと常々感じているところです。以前、西村委員からもコメントがありましたが、大学等で教員や研究者が基礎研究課題を設定する段階で、将来必要とされている科学技術からのバックキャストで、基礎研究課題を設定させるよう誘導するような仕組みがあってもいいのかなと感じています。例えば、A-STEP、特に育成ステージというのは、基礎研究の成果を企業連携の足がかりにつかませようとするプログラムですから、こういったプログラムを充実させることによって大学等でのテーマ設定時の教員の考え方を変えることができるかもしれないと感じています。
 スタートアップ・エコシステムに関しましては、近年、外国を含めたベンチャーキャピタルからのコンタクトが非常に増えています。ですから、スタートアップによるイノベーション創出への期待が随分と高まっているなと感じています。一方で、大学等でノウハウが十分ではありませんから、スタートアップ・エコシステムを通して、専門家による企業支援を一層充実させていただければいいなと感じています。NIMSでも昨年10月にスタートアップ支援室を遅ればせながら設けたところですが、スタートアップ・エコシステムを通して人材育成とノウハウを学んでいきたいと思っているところです。 引き続き、よろしくお願いいたします。
【久世部会長】  宝野委員、ありがとうございました。
 それでは、オンラインから山本委員、よろしくお願いいたします。
【山本委員】  まず、私はこの会議を欠席しがちで、ほとんど出られなかったことをおわび申し上げます。よくまとめていただいたので誤解なきように言いますと、直してくださいということではありません。これでいいんだと思うんですが、ちょっと感想だけお話しさせていただきたいのと、次につながるということをこの報告書の中でも書いておられるので、それに向けてお話をさせていただきます。
 やはり、ちょっと総花的な感じがするんです。役所が書くので、これもあれもと全部やらざるを得ないのは理解できますので仕方がないと思っているんですが、産学連携でできることは3つなんです。共同研究か、スタートアップをつくるか、ライセンスをするかということ。それ以外にも、技術指導とかMTAとか細かいことはいっぱいありますが、その3つが一番大きくて、いかにアカデミアで生まれた知を事業化するか。企業側でブラッシュアップをすれば商品化、あるいはサービス化できるものはライセンスをすればいいし、まだプレマチュアだったら共同研究をやりながらどうやってゴールに向けてより精度の高いものにしていくかとか、あるいは今のマーケットではせいぜい10億、20億しか見込めないから大手はライセンスを受けないなと、ただ、もしかすると化けるかもしれないのはスタートアップから始めるとか、そういうようなこともあると思うので、共同研究、ライセンス、スタートアップというところで、それぞれステークホルダーがいるわけです。例えば、スタートアップであればベンチャーキャピタルとか企業のCVCとかアクセラレーターとか、そういう人たちがいるわけで、そこの役割の人たちとどうコラボレーションしていくのか、政府は誰に何を支援するのかみたいな文脈でまとめるともっとすっきりするのかなと思います。
 あとは、別の観点で言えば、今の石破政権の中では地方再生というのは、大変大きな役割になっているわけです。それと、もう一方で、先ほど来ほかの委員の方からも出ている日本の中だけで考えるなと、シンクグローバルだと、グローバルアイが必要だということでいうと、例えばですけれどもどこでもいいです、岡山県のスタートアップが欧米のマーケットにアクセスしようとしたら、誰が何をどう支援してくれるのか、どこに聞けばどんな支援策があるのかみたいなことがもしかすると観点表なのかもしれませんが、この制度が使えますよとか、こういう人たちが支援者として利用可能ですよというようなものが、早見表みたいなものかもしれませんが、これがつくとこの制度というのが生きた制度なんだと分かります。それぞれ1個1個が全然悪い制度ではないんですけれど、どう自分に関係するのかが見えないと、役所だからいろいろなことを、ありそうなことをずらずら書いているのではないかというふうに思われがちな点があるので、そういうようなものをつけていただくと、より生きた制度になるのかなというのがあります。
 あと、もう1個別の観点でお話しすると、やはりSociety5.0とどう連動するのかと。さっきの技術のプラス面、マイナス面みたいな世界がありましたけれども、例えば長野で愉快犯なのかどうか分かりませんが、知らない人を3人殺傷した人がいて逮捕されましたけれども、あれが中国だったら監視社会なので、監視カメラでその日に捕まります。今、中国だと朝5時に誰も通っていなくても信号をみんな守ります。なぜかというと、信号違反をしたらすぐその人の携帯に、あなたは信号違反したので罰金を払ってくださいと、その罰金もすごく払いやすくてWeChatですぐにその場でPayPayでお金を払うように払えます。何かというと、ああいう事件があったときに監視社会のほうがいいのではないかというような風潮が出てこないとも限らない。ただ、Society5.0はそうではない世界をつくりましょうと言っているわけですよね。だとすると、産学連携で何をゴールにするか、先ほど来西村委員やいろいろな方が言っている、何をゴールにするのかというような部分が単に技術を事業化しましょう、設けましょうみたいな話ではなくて、どういう社会を描くのかというようなことの骨組み、骨子というのも必要ではないかなというふうに私は思っています。
 私のほうは、以上です。
【久世部会長】  山本委員、ありがとうございました。
 それでは、栗原部会長代理、よろしくお願いいたします。
【栗原部会長代理】  ありがとうございます。12期の最後ということですので、この期を振り返って感じることを申し上げたいと思います。
 この部会は、産業連携・地域振興ということで、科学技術・学術審議会の部会の中でも、見方が独特だと思うんです。私も産業の立場で参加させていただきましたけれども、様々なプロジェクトが大学を中心に議論されていることを感じました。大学と地域、大学と産業がどう結びつくかという視点で、改めて様々なプロジェクトを見ていくこともこの部会として非常に有効なのではないかと感じました。
 例えば、企業側の参画状況、企業や産業へのインパクト、そういうところをプロジェクトの成果として見せていくことであるとか、それから大学名だけでなく、例えば参画した企業名とか、地域名、こういうところを開示して、こうした企業や地域も大学のプロジェクトに参画していますよという点にも、光を当てると良いと思います。各大学が大学の中で閉じていないということが見えていくのではないかと思います。そういう違う側面を発信するようにするといいのではないかと思いました。これが1点目です。
 それから2点目に、我々はこの部会で、個別のプロジェクトについて、プログラムの進捗状況としてマクロ的に見ているんですが、実は採択された個別のプロジェクトをある場でお聞きして全然違う印象を持ちました。それは、環境や脱炭素に資するプロジェクトをある大学が取り組んでいて、企業と大学が連携するすばらしいプロジェクトだなと聞いていたら、これはA-STEPのプロジェクトであるということをその場で知りまして、こんなプロジェクトが入っているんだということを改めて認識しました。ですから、採択案件の良さとか特徴が実感できるような形で、この部会でも共有できるといいなと思います。
 それから、3点目が何人かの委員の先生からもありましたけれども、各施策の関連性というところが分かる方には分かるんでしょうけれども、一方で例えば企業から見た場合とか、あるいは大学の中でも関係ない方から見ると関連性がよく分からない場合があるのではないでしょうか。より分かるようになると、さらに利用しやすくなるし、他の方々にも意義が伝わるのではないかと思いますので、ぜひ各施策を総合した形での見せ方、それから成果の見せ方があると、各プログラムの特徴が分かり易くなるのではないかと思います。
 4点目ですけれども、個別のプロジェクトについてなんですが、私もJ-PEAKSのプロジェクトには大変期待しておりまして、卓越大学と地域中核・特色ある研究大学、この2つは両輪だと思っています。今回迄に25か所が選ばれましたが、選ばれたことで、大学のプレゼンスがどこまで上がっているのかなと思いまして、ぜひこれに採択された実施していくことで大学のプレゼンスが上がるよう、プロジェクト自体の発信等もしていただき、そういうプロジェクトに発展していただくことを期待しています。
 あと、最後が企業との連携ですが、大手企業だけでなく中小企業との連携も焦点にというお話がありました。それから、今日本では中堅企業という概念が出てきまして、ここが一番地域の雇用、それから生産性のアップに寄与していることから、そこを厚くして産業・地域の成長を加速しようとしています。ですから、今後考えていただくときには、ぜひ中堅企業とのタイアップについても一つ加えていただけると良いと思います。
 以上でございます。
【久世部会長】  栗原部会長代理、どうもありがとうございました。
 皆さん、ありがとうございました。それでは、ここで部会長としてコメントさせていただきます。
 この12期は、委員の皆様に御協力いただきまて、誠にありがとうございました。部会長として不慣れなところもあり、時間オーバーも多々あり御迷惑をかけたと思います。大変申し訳ございませんでした。
 皆様から多岐にわたるいろいろな視点の御意見をいただきまして、私自身、本当に勉強になりましたし、田町での特別セッションでも、率直な情報交換、意見交換ができたと思います。以前、共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)のプログラムオフィサーをしておりましたが、共通の課題が多いと思います。産業連携・地域振興ということで、登場するステークホルダーが多岐にわたります。地域もいろいろな特色があります。それに加えて、大学、スタートアップということで、今回のテーマの難しさの一因になっているかと思います。
 まず、産業界は、産学連携や地域連携に対する本気度が大きな課題のひとつです。産学官連携に本気で取り組まない状況が続くと日本が益々厳しくなると危惧しております。企業のロジックで短期的な視点になりがちです。より中期、長期の視点、また、日本全体の視点として捉えるように経営層も含めて意識を変えていかなくてはならないと思います。
 高橋委員のコメントにもありましたが、中小企業の参画や連携も大切です。日本の産業界を支えるのは、大多数の中小企業です。大企業だけでは、日本の強い産業は成り立ちません。中小企業との連携の仕方や仕組みもこれから進化させる必要があります。
地域や地方も、いろいろなパターンがあります。例えば、川崎市は、トップのリーダーシップが強く、関連企業を巻き込み、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルを強力に推進しています。地方自治体のトップのリーダーシップは必須です。そのような地域が中心の活動に、大学が効果的に参画できるかは、課題となります。COI-NEXTでは、関連する大学拠点と川崎市の連携を、いろいろと試みましたが、残念ながら期待通りの連携はできませんでした。
企業ですと、研究開発や製造の拠点を設置している地域との連携が、まず、起点になります。例えば、旭化成は、延岡、富士、水島、鈴鹿、守山などに研究開発や製造拠点があります。ただ、各拠点とも、大学とは物理的に距離があり、地域を軸足にした連携は必ずしも活発化できていません。地元の高専、高校、中学などとの連携は推進しています。
 スタートアップについは、CVCを持つ企業も少なくありませんが、これまで、国内より海外に対する投資が先行していました。強力な技術を持つスタートアップでも、それをスケールアップして、製品レベルの製造につなげるようなところに課題を持っている場合も少なくありません。これに対して、日本の企業が持つ生産技術、品質技術、ものづくりのノウハウなどを組み合わせて、価値を上げるケースも出てきており、スタートアップと企業連携のひとつのひな型になると考えています。スタートアップと企業の連携に、大学がどうかかわるかは、まだまだ、工夫が必要です。
 最後に本日も皆さんがおっしゃられたように、人のところが重要です。産学連携や地域振興をリードできる人材をどうやって育成していくのかの検討が必要です。千葉委員と西村委員が言われたように、基礎研究のビジョンを作れたり、大きなロードマップを書けたりできる人材も必須です。このような人材は、教育だけでは育たないかもしれません。現場で厳しい業務を経験したとか、大きなチャレンジに取り組んだなど、多様な経験がないと、このような人材は育たないかもしれません。企業でも、このような人材の育成には困っています。
 強力なリーダー育成にもつながる試みとして、企業が30社ぐらい集まって、研究開発とマーケティングの連携をどう進めるかのワークショップを、現場メンバーから経営層も参加して、3か月間実施しています。企業の枠を超えて、経験とか職務も超えて議論し、具体的にアクションを作り出すところまでワークしてもらいます。例えば、こういう活動に、大学やスタートアップに参画してもらうのも、お互いに効果があると思われます。日本は企業間、組織間の壁ができやすく、業界、組織、地域、職種、世代を超えたオープンな議論や活動が進みません。この状況を抜本的に崩すような仕掛け、仕組み、政策を考えることが重要だと考えております。
 長くなりましたが、以上です。12期の議論にあたり、皆様の積極的な御参画、ありがとうございました。
 それでは、司会を事務局に戻したいと思います。お願いいたします。
【對崎課長補佐】  どうもありがとうございます。
 では、事務局と代表を申し上げて、科学技術・学術政策局長の井上のほうから、閉会に当たりまして、一言お願いできればと思います。
【井上局長】  委員の先生におかれましては、本日も活発な御議論をありがとうございます。私も、この部会は非常に重要だと認識しておりながらなかなかフルに出ることができず、今日も遅れてまいりまして、大変申し訳ございませんでした。今日が今期の最後ということでありますので、一言だけ御挨拶を申し上げます。
 まずは、この議論をお誘いいただきました久世部会長、栗原部会長代理をはじめ、委員の皆様におかれましては、改めましてこの場をお借りして感謝を申し上げます。今期も、特に産学連携、地域振興、人材育成など、多岐にわたり御議論をいただいたわけでございます。今日も、先生方から御議論ございましたけれども、やはりこの部会で取り扱う内容はいろいろな視点から見ることができるといいましょうか、いろいろな観点がございます。大学の側から見たら大学で生み出した知をどう社会で価値化していくかということでございますが、そういったことがまた地方創生の観点や人材育成、産学連携、そういったところでいろいろと絡んでくるわけでございます。
 そういった中で、久世部会長からも先ほどお話がありましたけれども、いろいろなプレーヤー、企業においても、スタートアップもありますが、中小企業、大企業がございます。また、地方自治体、大学がどういったタイミングでどう入っていくのか、これはいろいろなプレーヤーが様々な考えを持って動いている中、私たちもそれぞれの皆さんといろいろなお話をする機会があるのですが、一つ言えるのは皆さん熱い心を持っていらっしゃるんです。私ども、文部科学省の公務員が何のために存在しているのかということにも関わるのですが、我々はやはりそのようないろいろな現場でいろいろな熱い心を持って頑張ろうとしていらっしゃる方を、全体を見ながら適切にまずはつなげることができなければいけない。私どもは、先生方のこの場での御議論なども参考にして、できるだけ私どもが行う政策をよいものにしていきたいと思っておりますし、その際にできるだけ私どもがいろいろな心ある皆さんをいかにつなぐことができるのか、そういったことで汗をかいていきたいと思っております。
 今期はこれで終了ということですが、これからは第7期の科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けた検討も本格化してまいります。今期の御議論もきっちりと引き継がせていただいて、また次期以降も先生方のお力をお借りしたいと思っております。また、いろいろな形でお力添えを賜ればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。今期は、どうもありがとうございました。
【對崎課長補佐】  では、最後に事務連絡を1点だけです。議事録についてでございますが、本日の議事録を、事務局から委員の皆様にまたメールで御確認をいただいた後に、文部科学省のホームページに公開いたしますので、よろしくお願いいたします。
 では、部会長、最後にお願いいたします。
【久世部会長】  それでは、これにて産業連携・地域振興部会を閉会といたします。本日もどうもありがとうございました。

── 了 ──
 

お問合せ先

科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課

 

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(科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課)