令和6年7月1日(月曜日)13時~15時
文部科学省東館15階 科学技術・学術政策局会議室1 及び オンライン(Zoom)
【久世部会長】 それでは、ただいまから科学技術・学術審議会産業連携・地域振興部会を開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
まず、定数20名のうち、会場の御出席は6名、それからオンラインでの御参加は7名で、10名以上の定足数を満たしていることを確認いたしました。
まず、事務局より留意事項等をお願いいたします。
【對崎課長補佐】 部会長、ありがとうございます。先日、中出の後任で着任いたしました對崎と申します。前職では人材委員会の運営をさせていただいておりまして、この委員会でも顔見知りの先生方がたくさんいらっしゃって、大変心強く思っております。引き続きよろしくお願いいたします。
皆様におかれましては御多用中にもかかわらず、本部会に御出席いただきましてありがとうございます。本部会は運営規則の第5条に基づいて原則公開とさせていただいておりますので、本日も公開しております。一般傍聴者に加えて報道関係者にも公開しているところでございます。
また、本日、事務局としては産業連携・地域振興課長の池田、拠点形成・地域振興室長の廣野が参加しております。
【廣野室長】 よろしくお願いいたします。
【對崎課長補佐】 また、産業連携推進室長の迫田も参加しております。
【迫田室長】 お願いします。
【對崎課長補佐】 それでは会議に先立ちまして、ウェブ会議を円滑に行う観点から御留意事項を申し上げます。
まず、オンラインで御参加の委員の先生方におかれましては、ハウリング等を防止する観点から、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。また、御発言時は対面で御参加の委員の皆様方は名立てや合図等で合図を頂きまして、オンラインで御参加の委員の先生方は挙手ボタンを押していただいて、部会長より指名を頂きましたら、カメラをオンの状態でお名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただければと思います。
また、会議中、大変僣越ではございますが、各参加者の皆様のお名前の表示やミュート設定等を事務局が切り替えさせていただくことがありますので、御了承いただければと思います。
また、御意見、御質問の際は、先ほど申し上げたとおり、Zoomの挙手ボタンでお願いできればと思います。
資料の確認をさせていただきますけれども、本日、議事次第に加えまして、資料1として「政策文書における産業連携・地域振興関係の位置づけ」という資料、また資料2といたしまして「今後取り組むべき施策の方向性について(案)」というものと、会場のほうでは紙でセパレートでお配りしておりますが、横のポンチ絵で幾つか詳細を示したものがついております。過不足等ございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
それでは、ここからの進行は久世部会長にお返しさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【久世部会長】 對崎さん、ありがとうございます。
それでは、本日の議事については先ほど御紹介がありましたが、「今後取り組むべき施策の方向性について」ということを予定しております。資料も先ほど御紹介いただいたように2つに分かれております。2つ続けて事務局より御説明いただきます。その後、皆様から御質問、御意見をお伺いします。事務局より説明をお伺いいたします。
なお、本日はこの議題しかございませんので、早く終わった場合は、15時前に閉会する可能性もございます。
それでは、資料の説明を事務局からお願いいたします。よろしくお願いします。
【對崎課長補佐】 久世部会長、ありがとうございます。
それではまず資料1のほうでございますけれども、こちらは最近、骨太方針や新しい資本主義の実行計画が閣議決定されたので、その中の産業連携・地域振興関係の記載をざっとまとめているものでございますので、御覧いただければと思います。
まず、産学連携の観点では、この「経済財政運営と改革の基本方針」はいわゆる骨太の方針というものでございますけれども、こちらにも拠点都市におけるスタートアップのエコシステム形成や、官民ファンドの出資機能の強化や、大学や大企業に加えてスタートアップも参加したオープンイノベーションの推進といったところがしっかりと記載されております。また、下段には、ほかのページの資料もそうですけれども、文部科学省の産業連携・地域振興課の主な事業をこちらに列挙してございます。
次のページをお願いいたします。こちらは「新しい資本主義実行計画」で、いわゆる昔で言うところの成長戦略でございますけれども、こちらにも例えば官民ファンドの投資を呼び水にした海外VCからの投資の呼び込みを進めることであったり、日本の起業家の海外挑戦への支援として、スタートアップ、大学や大企業のオープンイノベーションの支援や、大学発スタートアップへの出資の充実・強化。また、スタートアップ・エコシステム拠点都市の機能強化。あるいは、スタートアップと中小企業、大学との共同研究の推進等の記載がされているところでございます。
次のページをお願いします。地域振興の観点では地域中核・特色ある大学のJ-PEAKSを始めておりますけれども、こちらに加えて、こちらを支援するとともに、その戦略的な自律経営の下で優秀な若手研究者を引きつける研究環境の整備、知財ガバナンス等の取組や産学官の共創を促進していくこと。また、新しい資本主義実行計画のほうには、地域中核・特色ある大学の振興に加えて、研究時間の確保等の研究改善や大学の変革も促していくといった記載がされております。
次のページをお願いします。人材育成の関係では、骨太の方針のほうでは、スタートアップのネットワーク構築に加えて、女性起業家の支援やアントレプレナーシップ教育の充実等の記載があるところでございます。
最後のページでございますが、人材育成の関係では、新しい資本主義実行計画のほうに、日本の起業家の海外挑戦の支援の強化、アントレ教育の質・量の充実、またスタートアップと中小企業、大学との共同研究の推進等の取組が記載されているところでございます。
続きまして資料2でございますけれども、こちらは、こうした成長戦略とか骨太方針の記載なども踏まえて、当産業連携・地域振興課として、文部科学省として取り組むべき施策の方向というところで、産学連携、地域振興、人材育成という3つの観点から主な記載を列挙しているところでございます。詳細は横のポンチ絵のほうで説明しますので、資料2は簡単にでございます。
まず1点目の産学連携に関しては、こちらは今後の施策の方向というところですけれども、特にこれまで取り組めてこなかったところ、今後取り組んでいくところとして、大企業とスタートアップの連携を特に強化していくことや、それに必要な専門人材の配置や、共同研究の支援といったこと。あるいは知財の管理・活用を行う専門人材の育成。官民ファンドによる民間投資の呼び込みや、現在形成されているスタートアップ・エコシステム拠点都市の支援の充実等と記載してございます。
また、下に関連事業も書いておりますけれども、JSTや内局事業に加えて、オープンイノベーション機構の整備がちょうど令和5年度で終了しているところなので、これの後継をどうするかといった観点もあるかと思います。
また、2ポツとして地域振興のほうでは、地域中核・特色ある研究大学の強化に加えまして、そこの下の今後の施策の方向性のところですけれども、若手研究者に特に着目して、グローバル水準の研究を行うとともに、地域振興に貢献するような人材の育成や人材の流動化を図るための拠点の形成でありましたり、地域中核・特色ある大学の機能強化。次のページをお願いします。切れてしまっていますけれども、続けて、地域におけるスタートアップの創出力のためのエコシステム拠点形成の支援の充実といったところも書いてございます。
また、3ポツとして人材育成の観点では、特にアントレプレナーシップ教育の質・量の充実というところで、アントレ推進大使というものを始めておりますけれども、こうしたものの活用や教育メニューの充実、各機関における教育の充実を図っていくところを書いてございます。
それぞれの項目の多少詳細というところで、次のページから横のポンチ絵ですが、まず大きくは4点ございまして、1点目の若手研究者の共創拠点の形成では、特に若手研究者が中心となってグローバル水準の地域課題を解決するためにどのような支援が必要かという観点で考えておりまして、こうしたことが地方に若手の人材を呼び込むための人材流動化を図っていく必要があるのではないかと考えております。
事業の目的としては、今後目指す方向の目的としては、今申し上げたとおり、地域の課題解決に寄与するグローバル水準の研究成果やイノベーションを創出する、それに必要な若手研究者を呼び込んでくるところが一つターゲットになるかと思っております。
事業内容や対象のところに書いてございますが、特に地域の大学や若手研究者を対象にして、そうした若手研究者が主体となって地域課題を解決するといった事業の方向性が考えられないかということを記載しております。
次のページをお願いします。2点目は新たなオープンイノベーション推進による成長支援です。特に大学発スタートアップの支援等も進めており、スタートアップ創出後の支援というところで、もう少しそこを支援するような観点は必要ではないか、とりわけスタートアップと大企業との共同による成長モデルをしっかりつくっていくべきではないかとご意見いただきました。そのためのプラットフォームをしっかりとつくっていくことでありましたり、そういう観点では、そこに必要な専門人材をどのように配置するか、あるいはその創業後の研究開発を大学とスタートアップが共同して経費等を使えるように支援していくべきではないかといったところを書いてございます。
次のページをお願いします。知財の活用の関係では知財ガバナンスリーダーの不足というところで、こうした知財人材の育成をしっかりとやっていくべきではないかというところで、JSTの今の知財の人材育成関係の事業もつくってございますが、そこにしっかりと知財のガバナンスリーダーを位置づけて、その育成を図っていくといった点を記載してございます。
最後に次のページをお願いします。アントレ教育の抜本的強化というところで、こちらは様々施策を打っているところですけれども、特に小中高向けや修士・博士向けの実践教育といったところでアントレ教育をさらに幅広く拡大していく必要があるのではないか。その観点から様々施策を講じているところですけれども、とりわけ小中高生の早い段階での醸成や、博士課程学生の実践的教育の充実をするために、現在あるプラットフォームに加えて、さらにその2つのプラットフォームにも拡大していくことや、アントレプレナーシップ推進大使という文部科学省が認定している大使の現場派遣といった取組をさらに進めていく必要があるのではないかというところを記載してございます。
説明は以上ですけれども、栗原部会長代理から本日御欠席というところで事前にコメントを頂いておりますので、そちらを簡単に紹介させていただきます。読み上げます。
今後取り組むべき施策の方向性案について異論はありません。いずれも重要と考えます。また、産学連携として大企業とスタートアップの連携推進とありますが、日本の産業の競争力強化や地域経済の担い手として中小・中堅企業も重要であり、中堅企業の層の厚さ、中小企業の競争力強化は課題となっています。そこで、スタートアップ企業の中堅・中小企業との連携推進も有意義と考えます。
また、最後3点目として、地域振興において若手研究者の地域課題解決は大変有意義であり、若手研究者がより活躍する環境となるような施策を期待します。そこで、若手研究者が地域課題を捉えるための活動を支援する方法、例えば地域でのフィールドワークなどを支援することも御検討いただくのがよいと考えます。また、若手研究者の地域課題解決研究に対して大学が組織として支援することが重要だと思いますので、国による支援の前提として、大学の支援体制・支援内容をコミットしてもらうことが若手研究者の活動を推進することになると考えます、という御意見も頂いております。
それでは、委員の皆様から御意見等お願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【久世部会長】 ありがとうございました。
ただいまの事務局からの説明について御質問、御意見がありましたら、ぜひよろしくお願いいたします。いつもの部会と同じく、会場での御参加の方は名札を立ててください。オンラインで御参加の方は挙手ボタンを押してください。御質問を頂いた後、まとめて事務局より回答および補足説明をお願いいたします。 それでは御意見、御質問をよろしくお願いいたします。
オンラインの千葉さん、よろしくお願いします。
【千葉委員】 御説明ありがとうございます。
掲げられている項目それから方向性、まさにそのとおりで、重要なことは、言葉としてはもう十数年前から出ているものばかりだという印象なんです。それでやはりこれを推進する立場のこの委員会としては、なぜ十数年たってもこういう形で進めるという議論をし続けているのかということをしっかりと考えて、その問題意識と覚悟を持って、次のステップを考え、提案し、実行すべきかなと私は思います。
何を申したいかというと、相当な改革マインドが大学には私は必要なのではないか、産業界にも必要なのではないかと思っています。やはり地域を振興するというそのものは物すごく大事なことですけれども、今までどおりの考え方でいろいろ支援しますという形ではほとんど進まないのではないか、いや、進んでこなかったのではないかと思うんですね。
ではどうするかというところで、これはいろいろ方策はあると思うんですけれども、大学も忙しくて手いっぱいだとか、お金がないとか、ネガティブな話はたくさんあるんですけれども、それを乗り越える方法は本気で考えると、私はまだまだたくさんあると思っています。
例えば、もっといわゆる経営的なマインドを重視する部隊が大学の中でしっかりと、これは教学のところも含めてしっかりと進めていって、教員の負担を軽くしていって、教員があるところに集中できるようにするとか、あとは研究に対する評価方法を抜本的に変えてしまうとか、要するに欧米追従型ではなくて、日本が独自に考えて、日本の未来のためにはこれをやるしかないというような決断をする。そこに持っていくための重要な考え方をこういう委員会から出していくと物すごく意味があるんじゃないかなと思っています。
まず、この段階では割と大きな方向性についての御意見を申し上げますけれども、もちろん個別の議論になればまたあると思いますけれども、そういう意見を持っています。
以上でございます。
【久世部会長】 千葉さん、ありがとうございました。それでは会場から林さん、よろしくお願いします。
【林委員】 林です。
今の千葉先生のお話にかなり共通する懸念を持っています。大学の中でアントレプレナーシップ教育を担当される先生方のポジション、活動をされて行かれる方々の評価軸、これらを制度上きちんとしていく必要があると思います。アカデミアで活動されている先生方の評価軸である、引用される文献数だけではカバーし切れない領域だと思います。アントレプレナーシップに関連する適切な評価軸がないとなかなか大学の中では、その方面で活動をされている方は時間に余裕がある人だとか、二流であるとか、表面に出ないもののそのような偏見を何となく感じるのが残念ながら実情かと思います。
それと人材確保に当たっては、アカデミアの世界でいらっしゃった先生方だけではなくて、企業経験者からどういうふうにこういった協力を頂けるかという制度づくりですね。この場合よくありがちなのは、企業でリタイアして行き場がないので大学でお手伝いというケース。これだと一流のアントレプレナーシップ教育にならないと思うんですね。ですから、企業の中でもある程度若手でばりばりやっていらっしゃる方が、一部こういう御協力を頂けるような仕組みづくりみたいなものがとても大事ではないかなと感じています。
具体的なところを2点申し上げました。以上です。
【久世部会長】 ありがとうございます。それでは続きましてオンラインから小池さん、よろしくお願いします。
【小池(美)委員】 私も千葉先生と同じように思っております。同じようなテーマがずっと長い間出ているということで、特に知財の件ですけれども、知財の強化は私が知るだけでも15年はたっているかと思います。
それで、今まで何が問題で、何がどうしてできなかったのかという、そういうところを見直して、今回の強化に対しての対策をしっかりやるべきだと思いました。
以上です。
【久世部会長】 ありがとうございます。続きまして会場から高木さん、よろしくお願いします。
【高木委員】 ありがとうございます。高木でございます。
全体として方向性はこれでよろしいと思います。資料2の4ページのスタートアップ支援についてですが、今、政府でいろいろな省庁がいろいろな取組をされておられます。その中で文部科学省あるいは本部会として注力する政策についてターゲットを絞ったほうがよいと思います。
スタートアップの中にはビジネスモデルで勝負する、いわゆるアントレプレナーがリードするタイプのスタートアップと、一方でこの4ページに記載のあるディープテック、先端技術をベースに起業するスタートアップなど、スタートアップの中にも性格の違いがあります。
この部会で議論するのは大学等から起業されるディープテックのスタートアップであることを明確に認識することが大事だと思います。4ページの図で「ディープテックに強みのある」というところは太字にしていただいたほうがよいと思います。スタートアップの性格によって支援の仕方が違います。
関連して、スタートアップにはよく出口戦略としてIPOかM&Aということが言われますが、大企業との関係では、もう一つ、資本関係を見る必要もあると思います。スタートアップがベンチャーキャピタルから資金を調達する場合は、大企業はLP、リミテッドパートナーとして資金を出すことになりますが、昨今はM&Aではなく直接投資も増えています。
前回申し上げたかもしれませんが、大企業の戦略の例として、某大手キャリア企業がITベンチャーに資本参加してスイングバイ上場しました。この場合は従来の産学連携に近い戦略になると思います。
逆にスタートアップ側の戦略として、東大発のAIベンチャーでは、各産業分野のトップ企業と連携することにより応用分野を広げ社会実装を進めています。
スタートアップ十把一からげではなく、どういう性格で、どういう考え方、戦略で進めているスタートアップかということを見極めて、その中でディープテックのスタートアップを支援するという、強弱をつけた取り組みが必要ではないかと思います。 以上でございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。それでは佐々木さん、よろしくお願いします。
【佐々木委員】 佐々木です。
まず、ここに書かれていることはずっと言われ続けてきたことというのは確かでありますけれども、着実に、ぶれずに進めていただければなということはまず1点目、冒頭ございます。その上で、4つ手短に申し上げたいと思います。
一つは、大企業とスタートアップとの連携を深めるということで、これは賛成いたします。VCさんとお付き合いする中でも、大企業さんもやはり大学のスタートアップに対しては非常に関心を持っておると思いますし、他方、大学のスタートアップもいきなりエグジットまで持っていくのはかなり厳しいと思いますので、ある意味でM&Aとか事業モデルを引き継いでいただくと、そういう観点で大企業にとっても非常に有意義な活動になるのかなと思います。ただしその場合、取り込まれるのではなくて、ぜひスタートアップが報われるような形で、大企業さんもそれに対する対価は大学もしくはスタートアップにお支払いいただきたいのが1点目です。
それから2点目は、アントレプレナーシップ教育が言われ続けておりますし、これは着実に進める必要は当然あると思います。ただし、コロナも明けましたので、ぜひ海外派遣、これは書かれていますし、スタートアップの本場でやはり経験を持ってもらうところはぜひ強化していただければいいかなと思います。なおかつ、そういう本場で活躍した人がまた元に戻って、もしくは日本の中で飛躍できるようなうまくエコシステムをつくっていただく、もしくはそうようなサポート体制をつくっていただくのも事業の設計の中で考えていただければありがたいと感じます。
3点目は知財ガバナンスリーダーの育成ということで、これももちろんぜひ進めていただきたいと思うんですけれども、ちょっとこの資料だけですと、どのぐらいの人数でどのぐらいの規模感かというイメージがちょっと湧かないところもありましたので、シンボリックに何人か養成するのではなくて、やはりやるんでしたらそれなりの数は育成いただきたいなと思います。
最後の4点目でございますけれども、理想を言うと、博士研究で新しいチャレンジをして、その中で新しいシーズを生み出して、特許も発明人として取って、自分の研究を社会実装したいというところで、自分がCTOになるようなスタートアップを立ち上げて、そこにCxO人材などが経営サイドのサポートをして、それが形になっていくと。いわゆる博士とスタートアップが最終的にはやっぱりつながっていくのが理想的な姿ですし、海外の大学でかなりそういうところも進んでいると思います。なので、スタートアップとか博士の支援が今まだばらばらに進んでいるところもありますけれども、ぜひそういうところをうまく、文科省さんなので、うまく組み合わせてやるとシナジー効果が出てくると思っております。
私から4点、以上です。
【久世部会長】 ありがとうございます。對崎さん、5人の委員から御質問と御指摘がありましたが、一旦、事務局で回答いただいた方がよろしいですか。
【對崎課長補佐】 今の時点で回答させていただきます。
【久世部会長】 それではここで一旦、事務局から回答および補足説明を頂ければと思います。
【迫田室長】 大学の中でアントレ教育をしている方から立場的に学内ですごく高く評価されていることはなかなか難しいという御意見を聞いております。
我々が例えば採択するときにそういった条件づけを出すとか、地位をしっかりと確保することとか、資金配分をするときにそういったことを慫慂するようなことはしたいと考えております。
また、雰囲気づくりというか、そういった職がちゃんとありますということもアピールしていけたらと思います。アントレ教育は10年前からやっているんですけれども、これから高校生だったり小中校生に拡大してまいりますので、教育する側も増やしていかなければいけないと思います。増やしていくためにはしっかりしたポジションを確立しなければいけないので、今は過渡期ですが、なるべく地位が向上するような動きはしていきたいと思っています。
あと、人材育成の確保の問題でも、こういった起業経験者の方々が入るような仕組みといったところも、これは大学なので人事のところは介入ができないまでも、我々が支援するときに条件づけとして支援するとか、そういったことを考えたいと思います。
現役の方を派遣する、先ほどのアントレ大使の事業の人数は抜本的に拡充していきたいと考えております。現役の方々が小中高に行って教えていくのはとても刺激になるのかなと思います。
知財の人材育成をずっと行っていますが、知財の登録した後のライセンス収入がなかなか少ない状況ですので、事業化まで見据えて知財を確保できる人材、さらには知財の体制づくり、人事も含めて体制づくりをする人材をガバナンスリーダーとして捉えまして、知財ガバナンスガイドラインに基づく知財ガバナンスリーダーの育成を来年度からやっていきます。こちらの人数は15人から20人ぐらいを今想定して検討いるところでございます。
あと、スタートアップ十把一からげではなくて、強弱をつけて支援すべきではないかといった御意見でございますけれども、当然我々、ディープテックのところを支援していくところは中心に置きたいと考えております。
出口戦略としても本当にいろいろなバリエーションを、今IPOだけではなくて、様々なバリエーションを、バリューアップのための方策を支援していきたいと考えております。特にディープテックの分野ごとに癖があり、長期的な投資が必要であったりとか、またテクノロジーも専門性が高いものでございますので、まさに大学が大企業と連携しながら支援をしていける可能性があると考えております。
M&Aに関しては、スタートアップがしっかりと創業して、M&Aに向けてバリューアップした中でしっかりとリターンがあるところを狙っていく。そして、0から1が得意な創業者の方もいらっしゃいますので、そういった方には例えば10から100とか、100から1,000とか、そういったところをやっていただくのではなくてバトンタッチして、例えば大企業にM&Aをする、あるいは、経営者を替えるなどして渡していただいて、またシリアルで活躍していただきたいなという思いも込めて、このプロジェクトを進めたいと考えています。
いずれにしましても、またシリアルでスタートアップを起業するときに、原資があることが重要になってきていますので、M&A時にちゃんとバリューがあるところが重要だと考えております。海外派遣については、海外で一流のところで肌感覚として学んでいただきたいということで、アントレ教育を海外派遣も含めて強化してまいります。
基金事業の中において、CxOバンクをつくって経営がしたいという方々と、あと研究者・技術者の出会いの場をつくるような取組を開始したいと思っております。さらに未踏の横展開として、新しい研究者と経営人材の出会いの場も創造するような事業も行います。
博士人材向けのアントレ教育も行っていきたいと考えております。博士自身が起業するケースもあれば、または起業や経営者に対して例えばフレンドリーな協力をするとか、技術を供与するとか博士の方々に御理解いただくために、来年度から本格的に博士向けのアントレ教育を実施するなどアントレ教育も充実していく方針でございます。 私からは以上でございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。一点、確認させていただきたいのですが、CxOと博士人材の交流の場をつくられるということでしょうか。
【迫田室長】 CxOバンクを全国レベルでつくって、そこに起業したい研究者とマッチングして、そこにGAPファンドを支援します。 マッチングするときに結構人間関係などパーソナリティーの問題もあるので、多くの母数を確保していくべくマッチングの機会も今後充実していく方針でございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。池田さん、大変失礼しました。よろしくお願いします。
【池田課長】 冒頭、千葉先生からも御指摘のあった、地域を本気で考えるというところですけれども、我々もこれはどうすると大学なり地域の本気が引き出せるのかなということを試行錯誤を繰り返してやってきています。COIや地域エコだとか、今もうちはCOI-NEXTをやってきています。
その中で一つあるなと思っているのが、栗原先生も御指摘されていますけれども、地域に入るなら、地域の課題をきちっと捉えるのが必要だということと、それが大学のシーズでシーズプッシュみたいな形ではなく、地域の産業界なり自治体なりが痛切に問題だと思っている部分、そこをこうやって地域に入っていくことで掘り出しながら課題解決に持っていく。そういうことをやっていくべきなんだろうと思っています。
これまでも本気を出すための仕掛けをいろいろかけてはきていますが、そういった地域の本当の課題を出すために何が必要なのかということを、今回の1つ目の若手研究者の共創拠点の形成の中で、これまで幾つか試したものを活用しながら、あるいはプラスどういった条件を課すとか、どういった年齢層にターゲットを絞るとか、どういったフォーメーションを条件とするとか、そういったところの工夫をしながらやっていきたいなと思っております。
また、そういったことにしっかり取り組める環境も併せてこちらから、もちろん大学のコミットが前提ですけれども、提供できるような形が取れればいいなと思っています。当然そのコミットの中には、それに専念する研究者とか教員をきちっと処遇する、評価するといったことも併せて検討できればと思っております。ありがとうございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。 この後、高橋さん、上田さん、宝野さんから御意見、御質問が続きますが、事務局からのコメント、お答えに対して委員の皆さんから大丈夫ですかね。何かありますか。
それでは続けて御意見、御質問をお伺いします。それではオンライン、高橋さん、よろしくお願いします。
【高橋(祥)委員】 高橋祥子のほうで大丈夫でしょうか。
【久世部会長】 はい、(高橋委員は二人おられるので)高橋祥子さん、よろしくお願いします。
【高橋(祥)委員】 高橋です。
私から2点でして、まず1点目、4ページの先ほどの御説明でも特にディープテック領域のスタートアップの支援を拡充していきたいということだったんですけれども。やはりディープテック領域のスタートアップに支援するためのベンチャーキャピタリスト側のハードルが、やはり通常のスタートアップと比べて経済的価値につながるまで時間がかかるとか、経済的価値だけではなく学術的なインパクト、結果、社会的なインパクトが大きいにもかかわらず、やはり経済的価値だけで測られてしまうことがあると思っています。
投資を呼び込むための工夫をつくっていく必要があると思っていまして、最近はインパクト投資なども増えつつはあるものの、やはり経済的価値じゃないインパクトをどう測って、社会またはファンドの出資者に説明していくのかというところはこの部会から発信してもいいのかなとは思っています。もちろんどういう指標を測定するのか、測るのかは非常に難しい問題ではあるものの、何かしらのその指針を出していくのは非常に必要なことなんじゃないかと思っています。そちらが一点。
もう一つは、アントレ教育は非常に重要で、推進していただけるということでそこは非常に賛同するんですけれども、やはり教育の成果が実際社会に出てくるのは少し時間がかかると思っていまして。今やはり大学発スタートアップが日本で特にアメリカと比べて創出数が後れているのは、アカデミアと産業界の距離が遠過ぎることだと思うんですね。産業界は特に経営者や投資家というところも含め。
先ほどCxOと研究者のマッチングをして、そこにGAPファンドで投資していくというお話があったので、そこは非常に推進していただければと思うところですけれども。研究者に起業家マインドを教育するだけではなく、企業家、経営者を大学発の技術に引き込んでいくための施策も一方で同時に必要なのかなと思っています。特にアメリカと比べるとPhDを持つ投資家が非常に少ないこともあるので、ここの距離をどう縮めていくのかという観点はもう少し入れられたほうがいいのかなとは思いました。
以上2点です。
【久世部会長】 ありがとうございます。続きまして上田さん、よろしくお願いいたします。
【上田委員】 冒頭説明いただいた内容につきまして、全体的に異論ありません。うまくまとめておられると思いますし、一部抽象的な箇所もありますが、全体的な趣旨には賛同します。 一方で、冒頭、千葉先生がおっしゃったように、やはり十数年来、同じような議論をしているのは皆さんも感じておられると思いますし、今後、この停滞感をどう打破していくかが重要になると思います。
その意味で、私からは3点お話させていただきます。1つ目はスタートアップとの連携における戦略に関するものです。島津でも過去十数年にわたって、いろいろなスタートアップと連携してきましたが、その中で2つの事例を挙げますと、一つはバイオものづくりによって、バイオエコノミー社会をつくろうという取組です。この事例では実現までに10年という長い時間がかかることが課題と考えています。一方で、欧米にはかなり後れを取っている分野でもあるので、どうやって取組を加速し、国際的な競争力を高めていくかということについては、かなりしっかりとした事業戦略を考えていく必要があると感じています。
もう一つのスタートアップとの連携事例はヘルスケアに関するもので、これは血液検査で認知症だとか鬱病などのリスクを判定することにより、従来までの問診検査を補完していこうとする取組です。問診のような感覚的な、医師に依存した検査だけでなく、血液成分の科学的な分析データで裏づけられた情報を追加することで検査結果の精度を上げていこうというものです。これは、最初の段階では非常にうまくいきそうなデータが出てくるのですが、いろんな人に展開していくとやはり個人差が出てきてます。
この状態で事業化をしようとしても、なぜそういう個人差が出るかというメカニズムが分からないため、基礎研究に立ち返らないと解決できない状況になってきます。従って、こういうスタートアップをきちんと育成していこうと思うと、事業化の側面だけではなくて、基礎研究もしっかりやっておく必要もでてくるため、スタートアップとの連携においては2つのパートナーを考える必要があるというものです。1つは研究開発パートナーで、これは大学の先生が中心になる可能性が高く、もう一つが事業戦略パートナーです。これは事業として、国際競争力を高めるための戦略を考える人がいないと、単に技術的にやるべきことをやっていくだけではなかなかスタートアップとしての事業が当初の想定通りには拡大しないというのが、長年やっていて感じる問題意識です。
ですから、研究開発パートナー、事業戦略パートナーをスタートアップとの連携においてきちんと設定することが重要ということが、我々が経験上学んだことです。
2つ目は、若手研究者の育成に関するものです。我々もこれまで多くの若手研究者と共同研究・共同開発を進めてきた経験がありますが、若手研究者とあるきっかけで接点ができた場合は共同が進んでいくのですが、優れた若手研究者の中にはポストがないため、そのような人が散在してしまい見えにくくなっている現状もあります。若手研究者の中には、自身の研究をしながら、一時的に生活費や研究費を稼ぐためにいろいろなことを副業のような形でやらざるを得ない人も少なからずいます。中には非常に優秀な研究者もおられますが、その人たちに適切にアクセスする手段が限られている現状を、もう少し改善できないかという思いがあります。
経済産業省は国際標準化に力を入れていますが、その中で「標準化人材の登録制度」をつくっています。その意味で「若手研究者の登録制度」ができると非常にありがたいと思います。どういう分野にどういう若手研究者がいるかというデータベースがあれば、有能な若手研究者へのアクセスが容易になるのではということが2つ目のポイントです。
3つ目は、各地域の中小企業支援を行っている公益財団法人や、産業技術研究所との連携も非常に重要ということです。大企業とスタートアップの連携は重要ですが、先ほど、中小企業との連携も大事ではないかという話があったように、各地域にある公益財団法人の中には中小企業支援をやっている法人もあります。そのような公益財団法人ではスタートアップ支援もやっていることが多いので、そのような法人との連携、もう一つは、それぞれの自治体にある産業技術研究所にも、各地域のいろいろな産業育成のために技術的な支援を行っている部門があるので、そういうところともうまく連携していけば、比較的早く成果が出せるようになる可能性もあります。ですから大企業や中小企業という切り口だけでなく、中小企業支援を行っている公益財団法人あるいは産業技術研究所との連携が非常に重要になるというのが3点目です。
以上、経験上、重要と考えている3点についてお話しさせていただきました。
【久世部会長】 ありがとうございます。では続きまして宝野さん、よろしくお願いします。
【宝野委員】 本日御説明いただいた産学連携、地域振興、人材育成についての施策、いずれもおおむね共感するところですが、1つだけ、地域振興については、若手を特出しにしておられるところがなかなか難しいかなと思います。
これは前回の意見交換でも述べさせていただきましたが、近年、若手振興のプログラムが様々出ています。若手というのは限られた期間に学術的な業績、だけではないかもしれませんが、もちろん、イノベーションにつながるような業績を積んで次を目指していくポストですから、その時点で例えば地域の課題解決に携わらせると、非常にテーマ的にも狭くなったり、あるいは地域の人たちのマッチングを行うために非常な労力を使ってしまうこともあるかもしれません。
それから若手の対象として地域の若手なのか都市部の若手は排除するのか 、その辺の定義がよく分かりませんし、優秀な若手人材、都市部に集まる人材を地域の大学に就かせたいのか、そういったところももう少し目的を明確にしていただければと思います。
この背景にあるのが、私が正しいかどうかは知りませんが、地域を特に特出しにしていらっしゃるのは、例えば国際卓越研究大学の対象にならないような地域の大学の振興を目的とされているのか、それとも地域の産業振興を目的とされているのか、そこら辺を明確にしていただいて、それぞれの目標に対して何を行うのが最も適切なのかということをもう少し議論していただければいいのかなと思いました。
【久世部会長】 ありがとうございます。あと4名の方が手を挙げておられますが、地域の活性化に関して幾つか議論がありましたので、ここで一旦切らせていただきます。
それでは事務局から何か御意見、コメントはございますでしょうか。
【迫田室長】 私から、よろしいでしょうか。
政府全体の方針としてインパクト投資が5か年計画にも書いております。我々ができることとしては、例えば、我々の事業で、なるべく経済価値だけではなくて、社会的インパクト、学術インパクトがあるようなものをしっかりと支援して、結果を示すことでまた投資も増えていくのかなと思っています。出た結果のところは我々のファンドでもしっかりとインパクト投資を活発にしながら、民間の投資も誘発していくようなことはしていきたいと考えております。
PhDの投資家など支援側を増やす取組につきましては、各プラットフォームで今基金事業で、EIRなど大学に入って技術を知っていただくような取組も行っております。なるべくこういった企業経営者に大学の技術であったり、そういったカルチャーに慣れていただくための施策は引き続き行っていきたいです。今後CxOバンクも行っていきますので、アカデミアと産業界の距離を縮めるようなことは不断の取組として充実していきたいと考えております。
基礎研究にやはり立ち返るシーンが結構ディープテックは多いかと思います。起業してから後はリニアに成長していって、後は生産基盤とか量産モデルだけやればいいというわけではなくて、やはりディープテックであればあるほど前代未聞のこと、誰もやったことがないことをしていますので、実際に例えば量子コンピューターですと、つくってみたら基礎研究に立ち戻ったという例もたくさんございます。そういった基礎研究に立ち返るときにしっかりと大学がサポートしていくこともしていきたいと思います。
また事業戦略パートナーについても、例えば大企業とスタートアップで連携する際に、大企業のニーズとスタートアップのシーズを結びつけられるような事業戦略のパートナーを、大学の中に置いてもいいですし、またはできなければアウトソースするとか、スタートアップをつくった後の支援を事業戦略や基礎研究の両面で支えていきたいと思っております。
スタートアップと中小企業の連携の観点については、今、政府方針にもその旨は既に書いてあって、こちらもスコープに入れようと考えております。例えば、中小企業とタイアップすれば、大変優秀な中小企業さんが多いので、そういったところとタイアップしてエンジニアリングの課題を解決するとか、そういった事例もございます。
また、中小企業自体のブランディングにもなりますし、技術力の強化にもつながっていきますので、こちらも特に地方大学であればあるほどそういったこともできやすいのかなと思います。 私からは以上でございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。廣野さん、御願いいたします。どうぞ。
【廣野室長】 続きまして拠点室、廣野でございます。
若手共創のお話がございました。まず、若手にどういうことを期待しているのかというところを申し上げますと、まずは将来的に拠点形成を牽引していける人材をしっかりと育てていく機会をしっかりと設けていく必要があろうかと思っております。
具体的にどういう研究をやっていただくのかというところで、私どもで検討している中で描いておりますのが、着想自体は地域の課題というところがございますけれども、その直面している課題を解決する方法論を研究いただくというよりは、そこに着想を得て、そういう根源的な課題にどう取り組むのか、向かっていくのかという、そういう研究テーマを見いだしていただけないかと思っております。そういう意味では、将来的にこの研究成果、種を基に拠点ができていくのだという、もう少し先を見据えた研究をしていただけるような場が形成できないか、若手研究者にはしていただけないか、というところは考えてございます。
ですので、拠点自体の取組としては地域課題に向き合うところと、研究者自体がどういう研究を行うのかというところは、もう少し基礎も含めて将来的なものを見据えてというところを考えております。その意味で、大学が組織としてそういう研究をどう支えていくのかというところは非常に重要なところだと考えてございまして、栗原委員からもございましたけれども、大学としてのコミットをどういう形で求めていくことでそういう構想、考えがうまく回っていくのかというところは引き続き詰めて考えていきたいと思っております。
あと、どういう大学をというところがございました。なかなかどんな大学というところは申し上げることは難しいですけれども、考えとしては、地域中核・特色ある研究大学の振興というパッケージに該当するようなところが頭の中にはございます。やはり地域の中核となる大学の研究力・機能を高めていくところも、国際卓越研究大学制度と両輪として進めていくところはございますので、そういう意味で地域の大学での機能強化というところは念頭にはございますが。ただ、そういう拠点として機能を発揮できる体制をつくれる大学が大前提にはなってございますので、そこはどういう大学にするのかというところは制度設計の中で検討していく必要はあろうかと思ってございます。
また、上田委員からもございました、若手研究者のどこにどういう人材がいるのかというところにつきましては、若手対象のファンドがいろいろございますので、そういったところにあるデータもどういうふうにつなげていけるのか、担当とも話をしてみたいと思っております。
以上でございます。
【久世部会長】 池田さん、御願いします。
【池田課長】 補足しますと、この地域の施策、宝野委員から大学振興なのか産業振興なのかという御質問がありましたけれども、これは大学振興です。お金としては大学に対して出すプログラムです。ただ、大学の役割は教育、研究、社会貢献とございます。ですので、やはり地域を見ながらやらないといけないこともあって、大学振興をして研究力を伸ばした先に、やはり地域の産業への貢献があると考えております。ちょっとその辺りが同時に出てくるので、どっちなんだろうということが分かりにくいところはございますが、その辺りは注意して説明するようにいたします。
また、研究者を一覧できるものということですが、一応十分ではないんですけれども、JSTがやっているresearchmapは、ある程度大きなくくりかもしれませんけれど、こういった分野にこういった研究者がいることがわかります。そういったものも一つ参考にしながら、ただ、特に新しい分野なんかはもう境界領域ですので、なかなかresearchmap等々でカテゴライズされているものに縛られないところもありますので、そこは当たってみた上でというのはどうしても発生してしまいますが、御参考までに申し上げました。
【久世部会長】 ありがとうございます。今の御回答中に、上田さん、宝野さん、手を挙げられましたが、関係するご意見でしょうか。
【宝野委員】 先ほどの回答に関して狙いはよく分かりましたが、では、このプログラムによって、例えば優秀な若手が地方の大学に応募する、職を得るという機会が増えますかね。それが恐らく狙いじゃないかと思うんですけど。
【池田課長】 非常に難しいところで、この施策の一番チャレンジングなところの一つがそこだと思います。どうインセンティブ設計するかというところで、そこは目下検討中ではございますが、研究者へのインセンティブ、あるいは機関側のインセンティブをどうするか、やっぱり待遇という話になってくると思いますので、そこも引き続き検討を進めさせていただきたいと思っております。
【久世部会長】 ありがとうございます。 関連してコメントさせてください。池田さんの御話にありましたように、大学振興が中心でいいのですが、アプローチやテーマを考えるときに、その地域の特色ある産業や強い中小企業を巻き込むべきだと考えています。上田さんの御話にあった公益財団法人や産業総合研究所もあります。宝野さんの御指摘の地域の産業との連携が大変重要かと思います。当社は、繊維素材も製造していますが、素材だけでは事業展開に限界があるため、北陸地方の加工メーカーや染色メーカーと組んで事業をしています。歴史的に日本では、旭化成の他、東レや帝人など、同様の事業モデルを採用しています。このように、世界の中で産業を強化していくには、地域の特色ある中小系業と連携して、新しい付加価値を創出することが不可欠です。例えばバイオ由来の材料にすると開発や製造の方法も変わってくるので、基礎技術や基礎研究も必要になり、大学の参画が必須になってきます。
繊維素材も、アパレルだけではなく、半導体など工業用の用途にも、多様な可能性があります。たとえば、先ほどの北陸地方のように、特色ある中小の企業が、強力に産業を牽引している地域を、より効果的に活用して、その地域を起点に、大学が連携、発展し、そこにベンチャーは集まり、強力な人材も集まるといったアプローチもあるかと思います。最初に千葉さんがおっしゃられたように、本気で改革するには、アプローチを大胆に変えないと難しいように思います。
【池田課長】 まさにそのアプローチはやっぱり変えないといけないなと。先生方おっしゃるとおり、これまでずっと同じことを言われております。お題目は同じですが、やり方を少しずつ変えていって、冒頭の千葉先生の御指摘はそのとおりなんですけれども、本気をどうやって引っ張り出していくかが重要だと思っております。大学の本気をどうやって引き出すか、産業界の本気をどうやって引っ張り出すか、自治体の本気をどうやって引っ張り出すかというところに問題が大分収れんされてきていて、非常に難しい課題ではあるんですけど、その仕掛けづくりもこの中でトライしていきたいなと考えているところです。
ただ、過去の例の中でも、地域の本気が出てうまくいったところもあったりするので、そこを分析しながらということはまさに考えているところでございますので、大学振興か、産業振興か、2択で答えたのでかなり捨象してしまったんですが、失礼いたしました。
【久世部会長】 どうもありがとうございました。
林さん、よろしいでしょうか。
【林委員】 今おっしゃったことで、大分もう一段の深掘りをぜひともお願いしたいと思います。
【久世部会長】 ありがとうございます。
それでは、質疑とコメントのほうに戻ります。オンラインで、佐藤さん、高橋めぐみさん、西村さん、北岡さん、この順番でお願いします。
まず、佐藤さん、お願いいたします。
【佐藤委員】 佐藤です。ありがとうございます。本当に今の方針、もう一段深掘りと抜本的な改革みたいなところは必要なのかと思って聞いておりました。
私は、安心と挑戦はセットだなというふうにずっと思っており、今挑戦するところに結構支援がいっているんですけれども、その人たちが失敗したときにどういうふうなフォローができるのかというものがもうちょっとないと、単にお金をつけてチャレンジしろよって言って人を送り込んでみたいなことをやっているんですけど、結局そこでうまくいかなかったらほら見たことかみたいなことになってしまうと、全く挑戦というのは促進されないのではないかと思っています。
先ほどインセンティブ設計というお話もありましたけれども、それはインセンティブだけではなくて、その研究を大学の中でどう評価していくのかとか、チャレンジした研究者に対して、ポジションなのか、もうちょっと違う感じなのか、インセンティブ、お金だけじゃないそういうふうなものという、尊敬であるとか、そういうふうな文化みたいなところも含めてつくっていかないと、なかなかそこは出てこないのかなと思っています。
もう一点、先ほど公益財団法人との連携が出てたと思うんですけれども、私、ベンチャーキャピタルをやっている中で限界があるなと今感じているのは、ギャップファンドができました、人を結構送る仕組みもあります、ただ、いいものをつくっても、先ほど久世部会長がおっしゃっていたみたいに、その先のビジネス化のところでいくと、あまりにもお金以外のところが欠落しているなと思っております。それは人の採用と、あとはいいものをつくったら売れると皆さん思っているんですけれども、全然売れないというところでの営業と、あとやっぱり組織マネジメントが全く分からないといったところで、お金はついて基礎研究をビジネス化しそうな種まではできたんだけれども、それを社会実装する人材というのが全然いないなと思っています。
ここで一つ私がやりたいことは、今、いろいろな公益財団法人みたいな話がありましたけれども、中小企業、地域の新しい事業をつくるための人材として、中小企業もトップクラスの人材を、お金だけじゃなくて一緒に事業をつくる仲間としてジョインして2年間ぐらい丁稚奉公してもらうみたいな、育成と資金、投資というよりかは、どちらかというと、将来の幹部候補を育成する資金として、地域のそういった研究発のベンチャーとか、地域を盛り上げていくためのところに人を出してもらえないかなと考えています。大企業の人はなかなか使えないというようにベンチャー企業の人は思っているところもあるんですけれども、大企業とか中小企業のオーナー系のアセットを使えば一気に社会実装が進むという事例も出てきていますので、お金だけじゃなくて、投資というよりかは育成してもらうという感じで、優秀な人材を送るというようなことを今考えております。
最後に、やっぱりそういうふうになったときに、大企業からとか中小企業とかから人を送るというところは大事なんですけれども、学生に対してもアントレプレナーをやってみろという教育はすばらしいと思うんですけれども、実際やったことないと起業ってできないと思いますし、うまくいかないと思います。そういうところでいくと、大学の学生さんたちが地域の中核になるようなベンチャー企業とかで働くようなところに対しての単位であるとか、もう試験を全部免除してでも2年間そこでフルコミットしてくれよとか、そういった取組というのはできないのかなと思っています。お金もついている、人も送るような仕組みもつくっている、政府も応援している、だけどなかなか変わってないといったところで、ベンチャーキャピタルをやっていた私も限界を感じておりまして、そこのつなぎ役がこれからは出てくる必要があると、こちらのほうにこれからのキャリアをシフトして、日本から世界に羽ばたくような、地域から世界に羽ばたくようなスタートアップベンチャー企業を応援していきたいなと考えているところです。
以上です。ありがとうございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。
続きまして、高橋めぐみさん、お願いします。
【高橋(め)委員】 キャンパスクリエイトの高橋です。御説明ありがとうございました。皆様おっしゃられていたとおり、私も産学連携の職業を20年やっているので、ずっと同じことを言われ続けているなという印象を受けました。
一つ私からポイントとしてお話しさせていただきたいのは、例えばオープンイノベーション推進における成長支援というところで、スタートアップと大企業を接続するような、プラットフォームを大学に担わせるというお話がありましたけれども、そもそもずっと、産学連携の場面では研究者と企業をつなげるコーディネーター、URAをアサインして活動するんだと言うと、うまくいっていたりいってなかったりというところであったりとか、あとは先ほどあった知財の専門家を育てるというところで、昔には知財流通アドバイザーというものが、TLOであったり、大学に派遣されてきたわけなんですけれども、それでも満足のいくようなライセンス収入は得られてないというような現状があったと思います。
一つには、人材像のイメージを、文科省で指針を出された先に、その指針を捉えた大学がどのように理解をするのかというところがちょっとずれているのかなと思っています。私、アメリカのTLOの活動を、この前久しぶりにお話を伺ったんですけれども、やっぱり知財の売り込みをするに当たってマーケット分析、市場分析の専門家がいらっしゃるんですね。市場をどう見て知財をつくっていくのか、もしくはどういうところに当てていくのかというところの、マーケット、営業の観点がそもそもにして大きく欠けていると思って、そういう大学において大企業とスタートアップをどう接続するのかというのはちょっと不安が残るのかなと感じました。
ただ、大学のアセットを活用してと書かれているんですけれども、大学のアセットって何だろうと考えたときに、やっぱりニュートラルな場所であるということかと思います。競合するような企業の方たちも集まれるような場所であったり、スタートアップとか中小企業と大企業さんが対等で話せる場所であったりというような、場所をいかに演出するかですとか、あとはもう一つ、実証試験がしやすいというところで、いかに研究成果とか企業の方々の開発の成果をよく見せて、きちんとつなげていくような仕組みができるかどうかというところがこれから重要なのではないかと感じました。
ありがとうございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、西村さん、よろしくお願いします。
【西村委員】 ありがとうございます。少し違う観点からになるかもしれないですけれども、十何年も同じことやっていて、私は20年前に大学発ベンチャーを起こして社長をやっていたんで、あんまり変わらないなというよりむしろ低下している可能性があるかなと思っていて、本来大学発ディープテックというのが何で出ないのかなということを考えていったら、もうこんなこと言い始めて20年ぐらいあって出てないというのは、もう根本的なことを見たほうがいいのかなと思っていて、変な話しますけれども、素材が悪いのか、調理方法が悪いのか。
料理のこと考えたら、素材のほうの本当の質が低下してないかということを見ていませんかね、見なくていいのかなということです。大学発だったら、特別な企業が、ビジネスがうまくいくというんだったら、すごいものが材料としてあったんだったらもう出ていておかしくないですよねと。でも20年出てこないというのは、調理方法が悪いわけじゃないんじゃないのかというところをもう一回考えたらどうでしょう。大学自体の質の低さなのか、もしくはその者を、能力のある人がいるのかも分からないけど、本当にその人を生かし切っているのかということです。だから、大学の研究の本当の意味の競争、プロとして何かを生み出す力が落ちているのではないのか、それから社会の進歩につながる研究が本当に大学はできているのかということも含めてもう一回考えてもいいのかなと。
むしろディープテック、こういう予算をつけるんだったら、そんなスタートアップさせるんじゃなくて、基礎研究で社会に役立つもので本当の研究をさせるということです。そのことが、ちょっと言い方は悪いけれども、プロとして低いんだったら、人材流動も含めて入替え戦するぐらいのことを大学の中でやったほうがいいんじゃないですかね。企業だったら入替え戦あるんですよ、当然稼げなかったら潰れていくわけなんで。大学教員の本当の意味でのこういう、日本発、世界を変えるような研究成果を出すようなことに本当に大学はなっていますか、その人たち研究者の、本当にその集まりになっていますかということももう一点見てもいいんじゃないでしょうか。
厳しい言い方をしましたけれども、逆にそのほうが、絶対的に研究に専念させて、本当にそれで勝負できるような社会にもう一回変えていって、大学を変えていったらどうかなと並行して見てみるのもいいのかな。そしたら出てきたものの質が高くなるから、仕上げるほうもつくり、そりゃプロフェッショナルがやれば、日本からすごいディープテックが出てくるんじゃないでしょうか。何かちょっとそこの議論がやってなかったような気もしたんで少し違う切り口から言わせていただきました。
以上です。
【久世部会長】 ありがとうございます。
それでは、北岡さん、よろしくお願いいたします。
【北岡委員】 北岡です。
西村委員の話にも通じるかもしれないんですけど、まず1点目はアントレプレナー教育についてです。アントレプレナー教育って、実は結構長い間やっているところもあって、今回文科省さんが推進大使ということで実際成功した方々を小中高に送られるということはすごくいいことだと思っています。各大学のOBやOGにもそういう方々がたくさんおられますが、意外と大学がそれを受け入れていないという現状もあると感じます。そういった意味においては、やっぱり身近にいるところで成功している方をいかに大学に取り込んでいくことに対してもっと大学側が胸襟を開くべきではないかなというのは一つ感じます。
2つ目は、どういう知的財産がお金になっているか、どういう知的財産がスタートアップになっているか、過去5から10年の間を分析すれば明らかに見えてきます。例えば、ライセンス収入の金額でいうと多分圧倒的にバイオ創薬系が多くて、逆にバイオ創薬系のない大学からのライセンス収入というのは非常に少ないと思います。アメリカの大学の場合はIT系が強いんですけど、日本はそんなに生成AIとかAIを使ってどんどん研究している先生方って少ないと思いますので、ここに対するライセンス収入というのは、日本全体として低いというのはしようがないのかなと。
あとは、最近スタートアップを介したライセンス収入というのが増えてきて、これも増やし過ぎるというのはスタートアップ支援という観点ではあまりよくないと思うんですけども、明らかにスタートアップを介したライセンス収入が増えています。それが多分、今の文科省さんや経産省の政策につながっているんだろうなと考えたときに、知的財産を扱えて、かつスタートアップの経験もあって、企業へのライセンスができる人というのは、世の中にそんなに多くはいません。今大学に戻ってこられている支援人材の大半の方は、1つの経験された方が多いのかなと思います。そういった意味において、大学の研究成果をどのように社会に活用するのかということに対して、どんな支援人材が大学に必要なのかというのも、もう一度考えるべき時期かなと感じています。
私からは以上です。
【久世部会長】 ありがとうございます。
4名の委員の方、佐藤さん、高橋さん、西村さん、北岡さんから御意見、御質問がありましたが、事務局のほうから回答御願いします。
迫田さん、お願いします。
【迫田室長】 地域の中小企業との人材交流も含めて地域の中小企業を元気にするというのはとてもいい案だなと思いました。今後、シン・オープンイノベーションの事業でメニュー化して取り組んでいきたいと考えます。また、スタートアップに学生がアントレプレナーシップ教育としてインターンシップをしていただきながら実践をしていくというのは、大学発スタートアップだからこそできることかなと思います。こういった大学発スタートアップとインターンシップも活発にしていきたいと思います。アントレプレナーシップ教育の中でこういったメニューを充実していきたいなと思いました。
市場を見据えることができる専門家の育成、特に市場を見据えて知財を設計できる人材の育成は、今大学に欠けている部分かなと思いますので、新しい事業で人材育成していくといったことをしていきたいなと考えております。
大企業とスタートアップを接続する際に、大学は、中立性や、実証の場というアセットはたくさんございます。さらには、基礎研究力や人材など重要なアセットを持っております。こういった強みを生かしながら大企業とスタートアップを接続していく。単なる接続をするのではなく、しっかりとマーケットを見据えて接続できる方を育成していくというところが重要であると考えております。
そういった人材はいるのかとか結構おっしゃる方もいらっしゃるんですが、そういった方々のコアな、例えば知財から入っても、スタートアップから入っても、共同研究から入っても、私はいいと思っています。総合的に見れる方はいらっしゃるかもしれないんですけれども、どこかの分野から入っていただいて総合的な視点を持つ人材を育成していく、あるいはチーム型でビルドアップしていくというところが重要なのかなと思っています。この新しい事業でそういった人材を確保・育成していきたいなと考えております。
素材が悪いのでないかというところについては、基礎研究力の強化も当然重要ですが、社会産業構造にアジャストした研究のマインドがちょっと少ない部分もあり得ると思っております。スタートアップや共同研究で見せることによって、大学全体の意識を産業の顕在化しているニーズまたは潜在的なニーズも含めて、そこに合致させていくというところが重要ではないかなと思っております。ここは核心のところで難しいと思いますけども、ここは基礎研究と産学連携の施策をしっかりと重視しながらやっていく、素材と調理法、どちらもやっていく必要があるのかなと思っております。
推進大使の派遣については、小中高を派遣対象の中心にしておりますけれども、今後大学のほうにも、必要に応じて、こういった推進大使の派遣や活躍の場の提供など大学にもどんどん拡大していきたいなと考えております。
知財の分析については、今後、知財のライセンス料が大変うまくいった事例など事例収集をして、皆様に役立つような、そういった事例の分析結果を提供していきたいなと考えております。
私からは以上でございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。
【廣野室長】 拠点室、廣野でございます。佐藤委員からございました若手研究者にとってチャレンジ、挑戦をできる場ということと、安心、御示唆いただきまして、非常に重要な観点だなと気づきをいただきました。人が安心してできるという場としての拠点というものを申請の際にどういった形を求めていくのか、また採択の基準とか、そういう観点をどういうふうに組み込んでいけるのか、また検討をしていければなと思っております。
以上でございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。
池田さん、よろしいですか。
【池田課長】 西村先生から非常に根本的な御指摘というか、要はそもそもの素材がみたいな話です。これはどちらかというと研究力強化みたいな話になるかなと思っています。論文指標が全てではないと思いますけれども、論文指標を見る限りでは低下しているということはもう明確に見えている。ただ、それに対して、ここ5年ぐらいいろんな施策を打ってきています。それは若手向けの研究費であるとか、あるいは若手の処遇、研究時間を増やしていくためにURAを増やしていこうとか、そういった施策は打っているところであります。それがうまく効果が出ることを期待しつつ、一方で、我々の担当しているところは産業連携・地域振興の部分でございますので研究力の向上を期待しつつ、一方で、だからといってそれを度外視して地域振興だとか産学連携をしてもしようがないので、先ほどの若手の共創でも、やはり狙う研究テーマというのは、グローバルにももっと通用するようないい研究テーマ狙うとか、あるいは若手に地方に行っていただくにしても研究に打ち込めるような環境というものを求めていくとか、そこは研究力の向上の施策と一致した方向を見つつ、ただ我々も、観点としては産業連携・地域振興なので、そこの部分を加味した形での施策を進めていかなければいけないなと思っております。
いろいろ求めるものが多過ぎてマネジメントの難しい部分があるとは思いますけれども、そういうところに挑戦していきたいなと思っております。
【久世部会長】 ありがとうございます。
佐々木さんに移る前に私からも少しコメントさせてください。西村さんのポイントには大変共感します。素材が悪いか、調理法が悪いか、この観点は本当に重要で、大学だけでなく、企業の研究所でも同様の議論が必要だと考えています。
それから、佐藤さんの御意見の、チャレンジさせるだけさせて失敗したときのケアの話も重要だと考えています。企業でも、ベンチャーを立ち上げたいという若い世代は、結構います。社内ベンチャーですと退路を絶たないので、本人の成長にもなりにくいし、どうしても会社の現業と相容れない状況も生じ、自由度が利きません。会社を辞めて、大変な苦労をしながら、ベンチャーを立ち上げ、事業を推進する若い世代も増えています。それでうまくいかなかったら、会社に戻ってきてもいいと考えていますし、そのように本人たちにも伝えています。それが一つケアみたいになっていると考えています。 それでは、お待たせしました。佐々木さん、よろしくお願いします。
【佐々木委員】 まず、西村先生の本質的な御質問、本当にありがとうございました。大変御無沙汰しております。
それで会場を見渡しますと、現役の研究者でなおかつ研究の現場にいる人が私ぐらいしかいませんので、ちょっと反論と現場のコメントという観点で発言させていただきたいと思います。
それで西村先生の問題提起で、要は素材が悪いのか、料理が悪いのかというところなんですね。ある意味で、スタートアップを支援したり、こういうような制度をつくっている場がまさにこの産地部会なので、まさに料理について一生懸命考えていただいている場なんですけども、私は個人的に西村先生の御質問に対しては、やはり一番根幹にあるのは基盤研究が日本は弱くなっていると、これが根幹の問題ではないかと私はそういう思いを持ちます。なので、本質的な解決策としては、やはり日本の研究力の足腰を強くするということと、そういうものを背負う若手の層を厚くするというところが、日本の一番の大きな課題だと思いますし、そこは少し産地部会の範疇を超えるところがあると思います。
もちろんそこで研究力を強化して若手の層を厚くするのですけれども、やはり最終的にはスタートアップ等に結びつけて、新しい産業を生み出していくというのが、日本全体としては大事になります。なので、もちろんスタートアップの支援制度はこれからも今までどおり着実に進めていただけたらと思うんですけれども、今までアカデミアで、やはり論文で終わっていたというところはかなり反省するところがありますので、いきなりスタートアップというのは難しくても、ぜひ論文を書くとともに、まず特許もちゃんと出すとか、知財を取るということが大学の現場で当たり前になるというのが初めの一歩ではないかと。そういうような知的財産という意識が増えてきますと、それをどうビジネスに持っていくかという次のステップになりますし、その先の話として、具体的に会社をつくるというスタートアップにつながるのかなと思います。なので、今、かなりスタートアップに支援は寄っているんですけれども、私はやっぱり論文の次に続くような知財をきっちり皆さん取っていただくというところが足腰を強くした後の次の施策で重要になってくるのかなと思いますし、それが最終的にはスタートアップに発展していくのかなと思います。
すいません、私からの現場からの声ということで発言させていただきました。以上です。
【久世部会長】 佐々木さん、ありがとうございます。
西村さん、オンラインで手を挙げておられますが、西村さん、お願いします。
【西村委員】 佐々木先生、ありがとうございます。こういう議論をしたかったんですよ。私は大学の教員としてもう20年近くいて、大学の先生の質が、そりゃ玉石混合ではありますよ、ただ、もともと持っている能力はそんなに落ちてないと思っているんですよ。生かし切れてない。生かし切れてないのは、一つはちょっと言い方悪いですけど、序列の中の安心感みたいなもので、競争がないから何となくここら辺でいいやというぐらいの、ちょっと落ち着きがあり過ぎるなと思っているのと、もう一つあるとしたら、やっぱり本当の意味の社会との接点がないから伸ばし切れていない。だから、もともと持っている素材を生かし切れてないところも多分あるでしょうねということです。
実は今、僕は東北大学に来ていて、文科省さんのもう一つの事業の COI-NEXT でPOをやってるんで徹底的に今議論してたんですよね。一番重要なのはこれかなと思ったんですよ。北岡先生がおっしゃっていたように、やっぱり産学連携の人材がプロじゃない可能性がある。ここがもう大学の中に入り切って、徹底的に先生たちと議論して、こんなしょぼい研究じゃ使えませんよぐらいのことを言うぐらいのことをやって、社会の動向を見据えながら先生たちを触発していったら、眠っている潜在的な力は出てきますよ。だから、中途半端に大学の先生に何でもかんでも寄りかかって、あんたたちだったら経営もできるでしょう、知財も分かるでしょうなんか言わなくて、むしろ研究に徹してプロになってくださいと。ただし、そのプロのレベルとして、このレベルでないと僕たち売れんですよぐらいのことを学内でも徹底的に日々議論できるようなパートナーがいないことですよ。これをもう一段考えてみてもいいのかなと思うので、ちょっとそういう発言をさせていただきました。
だから、僕、佐々木先生にけんかを売ったんではなくて大学生かしたいんですよ。持っているんですよ、地方大学も含めて。持っている、今までつくってきた財産を生かし切れてないのが残念なんで、そういうふうな発言させていただきました。
【林委員】 ちょっと一言よろしいでしょうか。林です。
この議論はとても重要ですし、私も興味があるんですけど、今のお話を聞いていて思うところがあります。例えば、知財として特許を出すことの意味です。せば役に立つのか、論文と同じでくずみたいな特許をいくら出してもこれは一銭もお金にならないしかえって支出がかさむ。それではどんな特許が役に立つのかを考えるには、やっぱり市場のことを分かっているかどうかが大切です。市場のことを分かっているということは、社会のことを分かっている、社会貢献できるという、ここの結びつきが大学の先生方に弱いのか、あるいは、ひょっとしたら大学教育の中に弱いのかもしれないと思います。というのは、理系、文系と分かれて、理系の人は別に市場のことは分からなくてもいいという常識みたいなものが前は随分あったように思いますから。いや、そうじゃなくて、大学たるもの社会貢献しない大学は存在価値はないでしょうというようなところまで常識が変わっていかなきゃいけないんじゃないかな、という気がするんですよね。何かそこら辺に根本的な課題があるような気がしました。 すいません、失礼しました。
【久世部会長】 ありがとうございます。どうでしょうか。
事務局のほうからよろしいですか。迫田さん、いかがですか?
【迫田室長】 本当に、素材が悪いのか、調理方法が悪いのかというところについては、いずれにしましても研究力強化をしていくとともに、ただ研究力強化だけではなくて、その研究がしっかりと社会に接続できるようにしていく。その際には、産学連携の人材がしっかりとプロフェッショナルとして対等な立場で教員の皆様と切磋琢磨連携することが重要であると思います。また、市場のことを理系の方にもしっかり理解していただくべく、アントレ教育だけじゃなくて市場経済、産業、一般の教養というか教育もしていかなければならないのかなと思いました。
しっかりと御意見を踏まえながら、人材育成や研究力強化、産業につながるような研究の社会還元など、そういったことをしていきたいなと思いました。ありがとうございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。
池田さん、お願いいたします。
【池田課長】 ありがとうございます。
先ほど申し上げたことと同じではありますけれども、やはり研究力をしっかり多分高めた上で、それを社会還元していく。そこに林先生のおっしゃる点も、何となくそうかなというところもありまして、やっぱりいい産連の人材というのを強くしていかないといけないと。いろいろ研究費などをつけておりますが、それを今度は、佐々木先生がおっしゃるとおり、生かすところの人を育成していかなきゃいけないのかなというところもあって、今回の知財の人材のところも、そこもあって出てきたというところもあります。別の事業等々でも、知財の戦略が描ける人とか事業化というのを伴走できるような人がいないと、幾らシーズがよくても、それが売れる知財にならないとか、売れるビジネスにならないというところもあるので、その辺りもうまく支援できればと思っていますし、何でもかんでも大学にお願いするというのは間違いだと私も思っているので、手を借りるべきところからしっかり借りていかないといけないというところは肝に銘じて考えていきたいと思っております。
【久世部会長】 ありがとうございます。
西村さん、久世です。質問ですが、先ほどの、研究に徹してプロになってほしいというのは、私もそのとおりだと思います。基礎研究においても、世界を相手に競争も激しいですし、スピード感、危機感も必要です。ところが、我々の研究所のメンバーも、そのあたりの問題意識が、結構少ないです。また、基礎研究のプロであっても、ある程度、事業や市場の意識を持って、産業にどれぐらいのインパクトをもたらすのかという意識を持つことも重要だと考えています。研究分野にもよるかと思いますが、その辺りどうでしょうか。
【西村委員】 僕、産業は金を稼ぐだけじゃないと思っていて、産業は社会課題を解決する、そこにニーズがあるからこそそれがビジネスとして成り立っていくとなれば、結局、研究と産業と目指すところは一緒かなと思うんです。だから、社会的インパクトですよね。社会を変えていく、社会をよくするインパクト、これがもしかしたら研究者の側から見ると、もう一段バイアスがかかって産業投資みたいに見えるから分からなくなっちゃうんですよね。だから、今、僕ちょっとやっているのは、ハンズオンで、先生方の最先端の研究成果をどうやって社会に役立つのかということを全く違う角度から議論しているんですよね。
だから、東大の先生なんかがやったのは、気象の物すごく緻密なデータを再計算してるんだけども、これはどうやって役に立つのというと、こんな精度で分かったときに、初めて産業界からできるような新しいビジネスがありますよという話をするんですよ。そこに初めて、その先生たちの価値が分かるのと、逆に言うと、まだ足りないところがはっきり見える。それを解くことが、実際にはさっき北岡さんがおっしゃったかな、もう一回基礎研究に戻るんですよ。だから、そういう意味でいうと、研究の価値というのを短絡的に産業の金に変えるんじゃなくて、社会を変えるというところで、産業界と連動させるときにどれぐらい社会的インパクトがあるかというのを先生方に理解させるという言い方です。
こういうことを議論できる人って、すいません、手前みそで言うけど、僕はこれ、今、 COI-NEXT でやらされているのでやっているんですけれども、こういう人材が足りないですよね、日本に。こういうのが確実に大学の中にたくさんいれば、日々それで議論していくだけで基礎研究力もどんどん上がっていくと思うんですよ。もともと持っている素材を生かし切れてないんですよ、先生自身が。特に研究者が。のめり込んで研究できるという環境もつくらなきゃいけないけれども、方向性をチューンナップしてあげるということも多分重要で、この鍛錬が多分日本の大学で足りなくなってきているような気がします、今。
すいません、答えなってないかも分からないけれども、そんな感じで。
【久世部会長】 ありがとうございます。そこの人材は本当に重要ですが、日本では不足しています。産業界にも必要な人材ですが、不足しています。西村さんの著書で紹介されている西村さん御自身の経験や環境が重要ですが、これは、なかなか通常の教育では身につかないように思います。いかがでしょうか。
【西村委員】 それはさっき佐藤さんがおっしゃったようにですよ。もう捨て身でどこかにチャレンジさせる。退路を断って。その代わり拾ってやるぞってやって、若いうちに経験。僕は自分で勝手に強制的に退路を断って、さんざんひどい目に遭って、もう精神曲がりそうになるぐらいやったんですよ。やっぱりその経験はいまだに生きてます。だから、人間の力を最大限伸ばすということを、せっかくだから国の金を使ってチャンスをあげたらどうですかね。骨拾ってやるぐらいでいいんじゃないですか。ただし、もう一回チャンスをやって、そこではねたときには、おまえむちゃくちゃ稼げるぞぐらいのこと言ってあげたほうがいい。そういうプライドを持たせるようなことが日本社会ってあんまり踏み切れてないですよね。これが多分さっきの人材の流動性のなさに起因するところかも分からないですね。
【久世部会長】 ありがとうございます。
それでは、ほかに御意見、御質問、どなたかおられますか。大丈夫でしょうか。
それでは、本日も活発な御議論、御意見、御質問ありがとうございました。
最後に、事務連絡ですか、今後の予定などにつきまして事務局よりお願いいたします。
【對崎課長補佐】 事務局でございます。
本日も皆様方、活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。本日の御意見などを踏まえて今後文部科学省のほうでも必要な事業の設計や概算要求等を進めてまいります。また、政府全体の中では、7期の基本計画に向けた動きなども進んでおりますので、各審の総会のほうでも議論がまたなされるとは思いますけれども、引き続き当委員会でもその状況をキャッチアップして、皆様に御議論などをいただければと思っております。
次回の開催は未定なんですけれども、また部会長等と議題等も相談させていただきますので、よろしくお願いいたします。
ここからはもう極めて事務的な連絡ですけども、議事録を本日も作成いたしまして、事務局のほうから皆様に御確認の上、文部科学省のホームページで公開をいたしますので、よろしくお願いいたします。
事務局から以上でございます。
【久世部会長】 ありがとうございます。
それでは、産業連携・地域振興部会を閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。
── 了 ──
科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課