産業連携・地域振興部会(第11回) 議事録

1.日時

令和7年6月4日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館15階 科学技術・学術政策局会議室1 及び オンライン(Zoom)

3.議題

  1. 産業連携・地域振興部会長の選任及び部会長代理の指名について(非公開)
  2. 産業連携・地域振興部会の運営規則及び公開の手続について(非公開)
  3. 産業連携・地域振興の現状と課題について

4.議事録

【對崎課長補佐】  定刻でございますので、最初のほうは非公開になりますけれども、開始させていただきたいと思います。
 本日、第13期の初回ということで、最初は事務局から司会進行を務めさせていただきます。
 遅れましたが、文部科学省産業連携・地域振興課の事務局をしております、對崎と申します。本日、今期もどうぞよろしくお願いいたします。
 事務的な御連絡でございますけれども、本日御出席予定の先生方のうち、千葉学長が少し遅れて入られるということと、オンラインで高橋委員と小池委員が御出席予定でしたが、御欠席ということになってございます。
 また、同じくオンラインで御出席予定の小池委員が、現在、連絡がつかないので、何とか連絡して御出席をお待ちいただく形になります。
 千葉先生、お入りになられました。小池先生もお入りになられているようです。失礼いたしました。
 では、冒頭、初回ということで、司会進行は事務局からやらせていただきます。
 本日、議題を三つ用意してございますが、(1)と(2)については、非公開のため、現在、傍聴等の入室はしておりません。
 
(非公開議題(1)・(2) 議論の概要)
○部会長は、科学技術・学術審議会令第6条第3項の規定に基づき、委員の互選により久世委員が選任された。
○部会長代理は、科学技術・学術審議会令第6条第5項の規定に基づき、久世部会長が千葉委員を指名した。
○科学技術・学術審議会産業連携・地域振興部会運営規則について、資料2に基づき事務局より説明後、原案の通り了承、決定された。
○科学技術・学術審議会産業連携・地域振興部会の公開の手続について、資料3に基づき事務局より説明後、原案の通り了承、決定された。
 
(非公開議題(1)・(2)ここまで、以降傍聴者入室し公開議題(3)へ)
 
【對崎課長補佐】  では、ここから正式な開催ということで、久世部会長に最初の進行等をお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
【久世部会長】  それでは、ここから公開にて科学技術・学術審議会産業連携・地域振興部会を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、本日もお忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 定数は14名おられまして、そのうち、現地での御参加が5名、それから、オンラインが7名ということで、合計12名。7名以上で定足数を満たしているということで、定足数を満たしていることを確認いたしました。
 まず、開会に当たりまして、部会長として一言申し上げます。
 今期、13期も部会長を拝命いたしました、久世でございます。
 この部会は、本当に産学官連携、それから、地域振興ということで、本当に日本社会、世界にとっても重要な議題を議論している部会だと認識しております。今期も委員の皆様とともに、活発な議論、それから、具体的なアクションにつなぐようなところを目指していきますので、ぜひ御支援よろしくお願いいたします。
 続きまして、千葉部会長代理からも一言お願いいたします。
【千葉部会長代理】  部会長代理に選出していただきまして、ありがとうございます。
 この地域の振興、それから、産業連携は、学術的な意義をさらに高める上でも非常に重要な位置づけになっておりますので、これまでにもいろいろやってきたと思いますけれども、それを超えた、新たな着想も含めて、大きく前進できればと思っておりますので、皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【久世部会長】  千葉部会長代理、ありがとうございました。
 続きまして、事務局を代表しまして、科学技術・学術政策局より一言お願いいたします。
【井上局長】  科学技術・学術政策局長の井上でございます。先生方、今期もまたよろしくお願いいたします。
 この部会は、本当に重要な部会でありまして、例えば、大学発スタートアップが物すごい存在感になってまいりました。数としては随分増えてきましたけれども、今や、東証グロース市場全体の時価総額のうち、十数%は大学発スタートアップということなんです。
 一方、世界の状況と比べると、創業した後の成長のところで見劣りするといった状況もあります。恐らく、我々もこれまで様々なことに取り組んでまいりましたけれども、これまでとは少し違う、一段違ったような支援の在り方が必要だと思います。
 それと、今、政府を挙げて取り組んでおります地方創生です。これは、地方創生の中で、大学の存在、アカデミアの存在というのは非常に重要であります。私も長くやっておりますけれども、産学官金連携と言われて久しいのでありますけれども、時代もどんどん変わっておりますので、少し違う在り方の連携というのも模索していかなければいけないと思っております。
 このように、本当に目まぐるしく変わっている中で、我々がどういう手を打てるのか、ぜひ先生方の御知見も頂いて、我々も考えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【久世部会長】  井上局長、ありがとうございました。
 それでは、議題に入る前に、事務局より留意事項等の連絡をお願いいたします。
【對崎課長補佐】  久世部会長、どうもありがとうございます。
 委員の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらず、本部会に御出席いただきまして、ありがとうございます。今期もどうぞよろしくお願いいたします。
 1点だけ補足でございますけれども、先ほど、久世部会長から12名の御出席と申しいただいたかと思いますけれども、急遽、小池美穂委員が直前に御欠席というお話を頂きましたので、御出席は現状11名という形でございますが、いずれにしても定足数は満たしてございます。
 また、本日は事務局として、井上局長のほかに出席している者を紹介させていただきます。
 まず、産業連携・地域振興課長の池田が出席しております。
【池田課長】  よろしくお願いします。
【對崎課長補佐】  また、拠点形成・地域振興室長の平野が出席しております。
 また、産業連携推進室長の迫田が出席しております。
【迫田室長】  よろしくお願いします。
【對崎課長補佐】  よろしくお願いいたします。
 先﨑総括官は遅参という予定でございますので、大変失礼いたします。
 それでは、会議に先立ちまして、ウェブ会議の関係で、御留意事項を申し上げたいと思います。
 オンラインで御参加の皆様におかれましては、ハウリング等をする観点から、御発言以外はマイクをミュートにしていただきますようお願い申し上げます。
 また、発言時は対面で御出席の委員の皆様は名立てで合図を頂ければと思いますし、オンラインで御出席の皆様は挙手ボタン等の合図を頂ければとおります。
 オンラインの方はカメラをオンの状態で、あらかじめお名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただければと思います。
 また、会議中、大変僣越ではございますが、各参加者の皆様のお名前をオンライン上で表示等の設定を変えさせていただく場合がございますので、御了承ください。
 オンラインで御意見、御質問の際は、Zoomの挙手ボタンを押していただければと思います。
 本日の資料でございますが、議事次第に続きまして、資料1から資料5、参考資料は1から3ということで用意してございます。
 それでは、進行は、部会長に一度お返しいたします。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日の議事ですが、議題としまして、産業連携・地域振興の現状と課題についてを予定しております。
 まず、産業連携・地域振興におけます、これまでの取組・課題について、事務局より報告いただきます。
 今、資料を配られておりますが、これは資料4です。資料4に基づきまして、事務局から御説明をお願いします。
 それに続きまして、意見交換ですけれども、論点がありまして、三つに分けて意見交換したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、對崎さん、よろしくお願いいたします。
【對崎課長補佐】  事務局でございます。今、資料4を投影してございますが、お手元等に御準備いただければと思います。
 これまでも産業連携・地域振興部会で様々な論点を議論いただきましたけれども、一応、今期は三つに絞って、現在、事務局で用意してございますが、もちろんこれに限らず、この周辺として、様々議論があるかと思いますので、そこは忌憚なき御意見を頂ければと思います。
 一つ目の論点が、大学等発スタートアップ支援について。2点目として、産業連携ということで、組織連携や知財の関係だったり、そうした産学連携のこれまでのところ。論点3といたしまして、科学技術・イノベーション政策の観点からの地方大学振興ということで用意してございます。
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 1点目の大学等発スタートアップの支援につきましては、スタートアップの基金を用意して、全国のプラットフォームで創業支援、支援体制の構築やプラットフォーム化の連携を取り組んできてございます。
 また、3年前に策定されたスタートアップ育成5か年計画に基づいて、様々支援を進めているところですけれども、特に成長ステージの資金が少ないという現状にとどまってございます。
 一方で、大学発スタートアップの件数は増えてきている状況で、基金を使いながら増えていくことが見込まれるところですけれども、1件1件の規模はそれほど大きくなく、今後は成長を見据えた取組がより必要になってくるかと思ってございます。
 また、こうした状況に鑑みて、文部科学省でも、今年度より次世代型オープンイノベーションのモデル形成事業というものを開始しまして、特に大学発のスタートアップと企業の協業を目指した成長の支援のモデル検証を実施していく予定でございます。
 また、関連してアントレプレナーシップ教育としても、スタートアップ基金を用いた全国のプラットフォームでのアントレプレナーシップ教育を推進しており、小中高生向けにはアントレプレナーシップの推進大使を文部科学大臣が任命して派遣するような事業を実施しております。
 このような形で大学生向けの教育の裾野は着実に拡大しているものの、小中高生向けには、さらに抜本的な裾野拡大が課題となってございます。
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 こちらは御参考ですけれども、大学等発スタートアップ支援という観点では、特に人材・創業・成長の観点で様々アントレプレナーシップの質・量の不足や、創業後の成長の伸び悩み、スタートアップ投資の不足といった観点が挙げられておりまして、諸外国と比較しても様々な状況が必要なところと、特に成長に関してはM&AとIPOの考え方というところが割合としては大分海外と変わっているところ、これをどうするかというところも観点としてはあるかと思います。
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 また、大学発のアントレプレナーシップ教育の実施状況は、着実に運営校数等も伸びてございますけれども、さらに全国的に支援を拡充していくためには、様々な施策が今後も必要になってくるかと思ってございます。
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 こちらは大学等発スタートアップに関連して、文部科学省が現在取り組んでいる施策をマッピングしてございますけれども、左側の起業への興味喚起から、右側、起業して、成長支援という各段階に応じて、スタートアップ基金の活用や、内局事業の「次世代型オープンイノベーションモデル形成事業」と右側に書いている事業ですけれども、様々な段階に応じた施策を運営しているところです。こうした事業の充実、あるいは、その事業間の連携などが、今後、また必要になってくるかと考えてございます。
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 こうした現状の取組を鑑みて、課題と論点という形でお示ししておりますが、まず、大学等発スタートアップに関しましては、スタートアップの成長を見据えた、特に大学発のスタートアップ成長という観点で、今後の支援の在り方はどうあるべきか、今年度に開始するモデル事業をどう発展させるべきかという観点があるかと思います。
 また、基金事業で、大学等発スタートアップは増えてくるかと思いますが、こうしたスタートアップに資金供給をどうしていくか。特に、地方大学発のスタートアップ等をどのように支援していくかということも論点としてはあるかなと思ってございます。
 また、アントレプレナーシップ教育に関しては、大学生向けは裾野拡大を引き続き図る必要がありますけれども、質の充実として、例えば、博士や研究者向けの拡充、海外派遣等をどのように行っていくべきか、あるいは小中高生向けに関しては、アントレ大使派遣、教育現場への発信、プログラム開発等を行っておりますけれども、これをどのようにブラッシュアップしていくことが必要であるかといった観点があります。
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 論点の二つ目として、スタートアップも含めて産学連携という形で背景・現状をお示ししております。
 文科省の内局事業のオープンイノベーション機構の整備事業や、経産省と連携した産学連携による共同研究のガイドライン等も作成して、周知徹底を図っているところで、この5年間の中で共同研究費の受入額や件数は増加していて、左側の図でございますけれども、着実に増加してきておりますし、大型の共同研究比率というところでも、大規模なものが段階的には増えてきているという現状がございます。
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 他方で、日本の大学の研究者当たりの共同研究の受入額というのは、下に比較を載せてございますけれども、諸外国と比して少額の傾向にあるということ。文科省で内局事業を実施してまいりましたけれども、引き続き、大学や企業のトップの関与、体制整備などを行って、大規模かつ持続的な共同研究をどう増やしていくかといった観点が引き続きの課題になってくるかと思ってございます。
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 知財に関しましても、この5年間で知財権収入、特許権実施件数や収入額というのは増加傾向にございますが、1件当たりの特許の収入という観点で見ますと、下の表のところに記載がございますとおり、特に1件当たりの収入には差があるという現状がございますので、特許を取った後、それでどのように収入を得ていくかといった観点が必要になってくるかと思っております。
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 こうした現状を踏まえた課題・論点といたしましては、オープンイノベーション整備事業の成果を活用しながら、大型の共同研究の定着・普及を進めるためにはどのような取組が必要か。特に、地方大学においては、産学連携機能をどのように強化していくか、大学間の連携やプラットフォームなどをどのように活用していくべきかといった観点が課題としてございます。
 また、知財の一層の収入増に向けては、知財権の質と量を確保して、適切な対価を得るための取組が必要。研究者の意識の醸成や、企業側の視点も考慮して知財をどのように戦略的に取得して活用していくのか、ライセンス交渉していくのかといった観点があるかと思います。
 また、四つ目のポツとして、産学連携体制を一部子会社化して外部化するような動きが大学でも見られますけれども、もちろん全ての大学が同じやり方をするのではなくて、大学内外のバランスや連携を取りながら、それぞれの大学のより適切な産学連携体制の整備、推進をしていくためにはどのような点を留意すべきかという観点が挙げられます。
 次のページをお願いいたします。
 論点の三つ目といたしまして、地方大学振興の観点を科学イノベーションの観点から見るとこういう形ということで整理してございまして、背景・現状としましては、地域中核・特色ある大学振興パッケージを政府で策定して、COI-NEXTやJ-PEAKSなどの事業を実施して、大学の成果の社会実装、社会課題解決、それに伴う大学の研究力強化等を文部科学省としても推進してきているところでございます。
 下に幾つか事例をお示ししてございますけれども、例えば、大学発の技術を応用して、新製品開発につなげた例や、自治体の連携によって地域の課題解決を図ったような事例、あるいはPARKSのように大学間で産学連携の機能の一部を強化・補完するようなプラットフォームなどが事例としていろいろ出てきているところでございます。
 次のページをお願いいたします。
 こうした現状ではございますけれども、引き続き、組織対組織の連携に向けて、大学には様々な機能の充実や取組が必要となってくるわけですけれども、個別の好事例などが出てきている中で、どのようなティップスを抽出して、その横展開を進めていくべきかといった観点が、引き続きあるかと思います。
 また、一大学で多面的な支援体制を構築するのは困難で、必ずしも人材も潤沢にないという状況である場合に、個別の大学の状況に応じて産学連携機能をどのように内製化するのか、あるいは外部化するのかといった観点を丁寧に考えていく必要があるだろう。
 また、右のほうに三大都市圏と地方圏における研究資金の受入額の推移を示してございますが、このように地方と三大都市圏、東京都、名古屋付近、東海付近と関西近辺を三大都市圏とくくってございますけれども、こうした差が出てきている中で、大学シーズと地元企業のニーズのマッチングに課題がある場合に、遠隔地での連携等も模索してはどうかといった観点も論点として挙げさせていただいております。
 次のページをお願いします。
 論点1から3について、現状・背景、論点・課題と述べてまいりましたけれども、1から3に共通する論点のポイントとして、三つ挙げてございます。
 1点目が大学の体制に関することで、こちらはスタートアップでも知財でもそうなんですけれども、人員や体制、マネジメントや人事評価、産学連携に関する体制をどのように構築するのか。特に、知財に関しては、研究者にどのようなインセンティブ設計をつくって、知財収入としてどのように大学として戦略的に拡大していくかという観点。
 (2)として、大学同士、大学外との連携ということで、先ほど地方大学の論点で申し上げたような複数機関による共同の産学連携実施体制の整備や、遠隔地同士の産学連携のマッチングなどの具体的方策をどう考えるかといった観点。
 その他、大学内、大学外両方に関することとしては、国のプロジェクトが終了した後に産学官連携をどのように持続していくか、自走化していくか、価値・ノウハウを継承していくかといった具体的方策としてどのようなものを考えるか。あるいは、大学発スタートアップに関しては、創出から出口まで様々な支援を展開している中で、不足している点やミッシングピースはどのようなことがあるかといった点を挙げさせていただいております。
 事務局から説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【久世部会長】  對崎さん、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局の説明を参考にしまして、論点が三つありました。論点として御質問、御意見をお願いしたいと思います。
 ただ、最後にありました共通の課題みたいなものもあると思いますので、最後には、この三つに限らず共通の論点もあるかと思いますので、そこも最後に少し議論できればと思います。
 各30分弱ずつぐらいの目安で意見交換をしていきたいと思います。
 いつものように、この会場の方々は名札を立てていただければと思います。それから、オンラインの参加の方は挙手ボタンをよろしくお願いいたします。
 では、まず、1点目のところ、大学等発スタートアップの支援という論点のところですが、ここに関しまして、御意見、御質問がございましたら、ぜひよろしくお願いいたします。
 千葉部会長代理、よろしくお願いいたします。
【千葉部会長代理】  すみません。千葉です。
 スタートアップの支援というのは、資金を投入する人の覚悟もすごく重要で、これ自身も、例えば、VCが投資してくれたらいいなというだけではなくて、大学あるいは出資会社等が責任を持って、育成しながら資金を投入するという、要するに当事者意識を持ってやるというところがすごく大事だと思っています。
 これは、教職員の意識改革そのものにつながる話で、実は、長年進めてきてもなかなかそこが浸透しないという大きな問題もあるんですけれども、投資のシステムをどうするかというところで、一つ、ぜひとも皆さんと一緒にお考えいただきたいのは、ベンチャーキャピタル、VC環境等を大学が組成できるようなところもありますけども、なかなかまだ自由にそこが進められないところもあります。
 簡単に言いますと、例えば、大学あるいは大学出資会社がGP出資して、一定の手数料は常にそこに入ってくるということで人材を確保し、育成しながら集まった資金をベンチャーに投入するという、そのサイクルが回るようにできるというのをしっかりと日本中に広がっているようにするというのがすごく大事だと思っています。
 以上です。
【久世部会長】  千葉さん、どうもありがとうございました。
 続きまして、オンラインの荒金委員、よろしくお願いいたします。
【荒金委員】  ありがとうございます。
 私は、この分野は専門ではないので、提案という形ではないんですが、そもそも論のことについて、少し御質問させていただいて、皆さんの御意見をぜひ伺いたいなと思うんです。
 1ページ目にまとめてくださった資料の一番最初にあったと思うんですが、2ポツ目です。成長に対して10兆円の規模を目標にしているけれども、実際には0.8兆しかないという、この成長投資を呼び込めない原因や、今、千葉先生がお話しくださったような投資する側と、される側のそれぞれの要因みたいなものがあって、携わっていらっしゃる方は、かなり身を持って感じていることもたくさんあるのではないかと思うんですが、そこら辺のヒアリングや意見聴取というのは、過去、十分やられているんでしょうか。事務局にお聞きしたらいいんでしょうか。どうでしょう。
【久世部会長】  どうしましょう。質疑はその都度やるのか、少しまとめて。
【對崎課長補佐】  何名かまとめていただいてから。
【久世部会長】  分かりました。
 それでは、荒金さん、少しまとめて、5名ぐらい済んだら、そこで。
【荒金委員】  そうですね。そもそも、どこまで分かっているのかというのを、少し情報を頂ければと思います。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 それでは、会場から、高木委員、よろしくお願いいたします。
【高木委員】  御説明どうもありがとうございました。
 まず、大学発スタートアップ支援については、今年度から次世代型オープンイノベーションモデル形成事業がスタートしましたので、今後、この状況を見て、詳細な議論をさせていただきたいと思います。
 今の状況で2点ほど申し上げます。まず、1点目です。
 先ほど、井上局長から、東証グロース市場で十数%が大学発ベンチャーというお話がありました。たしか、東証グロース市場で、上場して5年後の時価総額の上場基準を上げて、今後要件が厳しくなります。
いろいろ理由があると思いますが、一つは、あまり企業数が多いと、限られた人数のアナリストでは十分分析できない、レポートを書けない。つまり、そのベンチャーの情報が投資家に十分伝わらないという問題があると思います。したがって、大学発ベンチャーの情報を十分に投資家につなげるような仕組みが重要で、ベンチャーの成長、大型化に貢献できるのではないかと思います。これが1点目です。
 それから、2点目は小中高生向けのアントレプレナーシップ教育で、これは大変重要だと思います。
 ただ、少し御留意いただきたいのは、今現場では、教員の先生方の負担が非常に重いので、なるべく先生方の負担にならないような形で進めていただければと思います。この辺は文部科学省が十分配慮されていると思います。
 問題は、その内容です。グローバル視点で見ると、やはり日本人特有の問題があります。例えば、チャレンジ精神がどうなのか。OECD加盟国の中で、日本人は失敗を恐れる国民性があるということのようです。国別統計では、一、二番目くらいの国だという調査結果もあると聞いております。
 もう一つは、米国の大学に行ったときに、米国の大学の先生が言われていたのですが、アメリカの研究者には、自分たちの研究成果を社会実装しよう、社会にインパクトを与えようという、ある意味イノベーションを進めようというモチベーションが非常にある。逆に、アメリカの先生から日本の研究者を見ると、そこが少し弱いのではないか、とのことでした。だとすれば、その辺のマインドを初等・中等教育、若いうちから醸成できればと思いますので、この小中高生向けのアントレプレナーシップ教育では、この辺も少し御配慮いただければよろしいと思っております。
 以上です。
【久世部会長】  高木委員、ありがとうございます。
 それでは、オンラインで御参加の小池委員、よろしくお願いいたします。
【小池(聡)委員】  小池でございます。ありがとうございます。
 大学発スタートアップについて、私が感じることを少し申し上げます。
 私も長くシリコンバレーでベンチャーキャピタルや日本、アジアでも投資をやってきた立場からすると、大学発スタートアップは、割と昔で言うと、経産省の大学発ベンチャー1,000社計画など、いろいろなものがあって、先生方は結構会社を持っていたりするんです。だけど、ほとんどはリビングデッドで何もしていないような会社をまだまだ持っているというケースも実は多々あります。
 もちろんアメリカも大学発スタートアップは数がすごく多いんですけれども、多産多死なんですね。やはり相当スクリーニングされて、競争があって、生き残っていけるというところは、もうバーッと伸びていますし、そうでないところは、ベンチャーキャピタルが投資するときにはきちんとマイルストーン投資をして、その状況を見ながら、途中で切ってしまうということも非常に多いんですよね。そういった意味では、最初のスタートアップをつくるところのデューデリというか、市場性その他を含めて、ちゃんとできているかということに関しては、日本の大学発スタートアップというのは、とにかく数をつくればいいということで、大学発スタートアップを国を挙げて応援するということで、最近、結構数はできてきているんですけれども、中身がどうなのかなというのがかなり見えるということがあります。
 私、今日はCOI-NEXTのサイトビジットで地方に出張していて、オンラインで参加させてもらっているんですけれども、COI、COI-NEXTでも、幾つも大学発スタートアップができましたが、その中で本当にきちんと活動が生きている会社がどれぐらいあるか。ほとんどリビングデッドのところも結構多いと思います。
 ですから、そういった意味では、きちんと競争環境を持ってコミットメントして、圧倒的に足りないのが経営人材です。ですから、その辺も見据えながらスタートアップをどう捉えて、つくって、育てていくかというのは、数だけではなく、考える必要があるかなというのが感想です。
 以上です。
【久世部会長】  小池委員、ありがとうございます。
 続きまして、オンラインの田中委員、よろしくお願いいたします。
【田中委員】  田中です。よろしくお願いします。
 私は、官民ファンドREVICの立場で地方大学ファンドの組成・運営に携わっており、これまでに6ファンドと関わってきました。弊社が携わる業務の1つとして、地域金融機関が地域経済活性化に資するファンド事業に取り組む際に、支援を行う役割を担っております。
 これまでに関わった地方大学のファンドは、鳥取・島根・徳島・高知・金沢・広島の6つあり、いずれも大都市圏というよりは各地域に根差した活動になります。私どもが地方大学の数百名の研究者の方々と事業化に関わる面談や協議を重ねた経験から、大学発ベンチャーを起こし、事業の成長や成功が期待できる研究者の方というのは、どこの地方大学にも一定程度おられます。一方で、それを支えるための金がなく人がいないという状況で、同様なご認識をお持ちの委員の先生も少なからずいらっしゃるかと思います。
 私どもの取り組みを例にあげれば、金については、政策的にベンチャー支援に取り組もうと考えている経営陣がおられる地域金融機関が存在すれば、地方大学ファンドに出資していただける可能性があります。一方で人については特殊な専門性を有する必要があり、具体的には、研究者との科学技術とビジネスに関する意見交換ができ、それを踏まえて研究をベースとした事業構想を研究者と共に発想しまとめあげることが先ずもって求められます。さらに、創業時に経営を担う人材が不在なケースが多いため、自ら描いた事業構想の実現を自らが当事者となり、研究者と一緒に共同経営する人材が必要でありながら地方においては極めて少ないのが現状です。ファンドである以上、ファンド側の支援人材は、途中で経営人材をみつけバトンタッチします。
 このような大学ファンドの取り組みは、2015年に私どもの地方大学ファンドや官民イノベーションプログラムが開始した頃から始まっています。大学発ベンチャーや大学ファンドの立場での経験を積んだ人材はうちのOB含め、経験を活かし次のチャレンジに挑む人材も少なからずおりますが、時間を要しているというのが実態のように思います。
 一方で、先ほど、小池委員が言われたとおり、経験的にも本当に成功するベンチャーは、起業した中のせいぜい1割、多くて2割程度なので、残りの8割、9割というのは、いずれ、どこかで見切らなければなりません。通常の企業が潰れてしまうのは、よくない事だと考えるのは、ある意味当然だと思います。ただ新たな科学技術ベースに0から事業を起こし大きな成功を目指す大学発ベンチャーは、簡単には成功しません。何もないところから仮説ベースで研究開発構想や事業構想を描き、いざ立ち上げてみると、大半の仮説は予想が外れ間違っており、何度も大胆なピボッティングを重ね、さらに想定外のことが起きながらも、数限られた会社のみが成功を手にする、といったイメージです。むしろ、数多くのベンチャーやファンドで失敗した研究者や経営者やキャピタリストこそが重要で、次こそは成功してやるという思いで、多くの人材が再チャレンジしています。ベンチャーでの失敗を自らの学びの機会とし、諦める事なくチャレンジを重ね、結果としてベンチャー経営やファンド運営の優秀な人材が育つ。そのような人材の層を増やし重ね、地域や国としても蓄積することによって、大学発ベンチャーの成功事例が一定の割合で生まれ、プロフェッショナルな研究人材や経営人材あるいは経営支援人材が育っていくものだと思っています。そういう意味では、先行する東大IPCなどは、東大が過去20年以上チャレンジを重ねた結果、経験や人材が蓄積され、大学発ベンチャーを下支えする様々な取り組みを手がけておられる好事例だと思っています。また、私どもが関わる地方大学ファンドは六つのうち五つがたまたま中四国地域にあり、広島大学ならびに広島大学が関わるPSIという中四国広域GAPファンドとのコラボレーションの可能性に期待しています。このように、日本の地方大学発ベンチャーは、ここまでチャレンジし頑張ってこられた人材達が、牽引し再チャレンジを重ねるという第2ステップに入りつつあり、東大IPCを含めて、全国的なグッドサイクルがようやく回り出そうとしているように感じます。
 少し時間がかかることをみんなで一生懸命取り組んでいるのであって、決して悪い方向に進んでいるのではなく、想定よりも少し時間がかかっている。そんな印象を個人的には持っております。
 以上です。
【久世部会長】  田中委員、ありがとうございます。
 まだ、会場からもお二人、御質問の手が挙がっているんですけれども、5名の委員の方々から御質問、コメントがございましたので、ここで一旦、事務局から御回答を頂ければと思います。
 それでは、事務局からよろしくお願いいたします。
【迫田室長】  事務局の産業連携推進室長の迫田から回答させていただきます。
 本当にどの御意見も鋭いといいますか、本質を突いた御質問なのかなと思います。また難易度の高い課題なのかなと思いました。
 最初の千葉先生から、今、ベンチャーキャピタルがなかなか自由に進められていないところにつきましては、徐々に規制緩和など、我々でもベンチャーキャピタル対象の拡大であったり、例えば、数年前に自分たちの国立大学だけに投資対象を決定していたところを、ほかの国大にも拡大できるようにしたり、またはVCに大学が直接出資できるようにしたり、結構出資というスキームでうまくスタートアップを支援するような仕組みをつくるということに今後も拡大していったり、今、いろいろ議論になっていますのが、様々な合弁や合資の場合はどうするとか、民間資金を活用したようなスキームについても、今後、検討事項としてしっかりと議論していく予定でございます。
 あとは、VCの担い手の育成というところは、まだまだできていないところもございますので、こういった大学のVCを使って、またはEIRみたいな仕組みを使いながら、しっかりと育成していきたいなと思っています。まだまだ道半ばなのかなと思っておりますので、しっかりとやっていきたいと思っています。
 あと、荒金委員から成長投資を呼び込めない原因は何か。この分析は、スタートアップ全体にかかることですので、結構いろいろサマリーというか、分析もなされているところなんですけれども、投資する側とされる側、二つのセクションで課題があると言われています。投資される側については、やはり投資対象になり得るビジネスモデルや、いわゆる投資に至る魅力がないというところが、結構よく指摘されるところでございます。
 こういった課題感を解決するために、今、グローバルであったり、また創業時からしっかりとビジネスモデルを詰めていくということで、先ほど、経営人材次第だという御意見もありましたけれども、優秀な経営人材をバンクというか、蓄積するような人材バンクもつくりつつあるというところでございます。
 また、投資する側も、なかなか国内のVCであると少額の投資規模であったり、投資回収期間がやや短いというきらいもございまして、このディープテック投資でありますと、10年から15年ぐらいのファンド組成になりますので、一般的なVCの方からすると、少し長いですよねという話もあります。
 ただ、海外ですと、こういった長いものも将来的なリターンが見込めれば投資しますというところもございますので、ここはしっかりと海外投資家の呼び込みもしていきたいなと思っています。
 また、イグジットの形として、今はIPOだけではなくて、途中にM&AしてVCに還元していくという形もございます。少しイグジットが増えてはきたんですけれども、まだまだ収入が少ないというところもございます。
 ただ、なかなかM&Aできない、会計基準ののれん償却の問題など、様々な周辺の課題もあるんですけれども、もう少しM&Aで大企業側も含めて、またスタートアップの意識も含めて、双方ウィン・ウィンの関係になるような形でM&Aできるようなカルチャーといったものも醸成していきたいなという思いで、今回、COIといった事業会社とスタートアップの共有を創出するようなプログラムも行っているところでございます。
 また、高木先生からは、本当に投資家に情報をつなぐ仕組みが重要というのは、まさにそのとおりかなと思っています。今、我々は、約150大学が参加する9プラットフォームをつくって、投資家に情報発信をしているんですけれども、いろいろな投資家の集まりやスタートアップのイベントに行きますと、大学でどんな動きをしているか、まだ分からないとか、つないでほしいという、まだまだ不明というか、情報発信ができていないところもございますので、待ち受け型ではなくて、攻めの営業をしていく必要があるのかなと思っています。
 また、9プラットフォームは、今、パラパラと言ったら表現がおかしいんですけれども、それぞれ個々に情報発信しているところもございます。投資家からすると、別にある地域のセクション別に投資をしたいわけではなくて、それぞれVCで強みのあるAIに投資したり、キャピタリストの特徴、分野別の強みがありますので、そういった分野別に、もう少し9プラットフォームを横串で情報発信するような仕組みも、今、検討中というか準備中というところでございます。しっかりと情報を投資家や事業会社にも共有していく、また、CVCという面でも情報発信していかなければいけないなというところがございます。
 先日も尋ねてきた有名企業の方もいらっしゃいましたので、そういった方に解説すると、まだまだ我々のやっていることが伝わっていない部分もあります。そうすると、資金調達のポテンシャルは、まだまだやるべきことがあるのではないかという気もしますので、しっかりと充実していきたいなと思っております。
 小中高向けのアントレ教育に関しましては、やはりまだまだ学校現場に普及ができていない状況かなと捉えていまして、今回、アントレプレナーシップ推進大使として起業家等を大使として指名して派遣する事業も今後強化する予定でございます。
 やはり教員の負担軽減という意味からすると、外部から支援していくというモデルが現時点では望ましいのかなということで、大使という形で外部から支援していくという仕組みをとっております。
 今回、もう既に募集をかけたところ、数週間で100件以上の応募がございまして、実は、今年500件ぐらい派遣することを予定しているんですけれども、既に3週間ぐらいで大盛況だったということもございまして、ニーズはあるのではないかなと思いますので、そういったニーズに応える形でしっかりと我々も対応していきたいなと考えております。
 あと、研究者のアントレマインド醸成に関しましては、今年から博士課程のアントレ教育を実施しております。今後は、博士課程以上の研究者といったところにもアントレ教育を提供して充実を図っていきたいなと思っております。即戦力と言ったら変ですけれども、研究者の方にアントレマインドを持っていただくというのはとても重要なのかなと思っております。
 そこで重要なのが、社長になると、なかなか成功するかどうかというのは、過去の事例から、研究者が経営する必要はなくて、いろいろなプロに任せて、例えば、研究者の方はCSOなどになって貢献するやり方もあるよということも含めて、何が何でも全部研究者が社長になって起業するというわけではないですよということも含めて、皆さんが強みを生かしてチーミングして、スタートアップを立ててビジネスを展開できるような、うまいシステムの在り方も含めて、そういった形があるという事例をアントレ教育の中で見せていくことも重要なのかなと思っております。
 あと、小池先生から、リビングデッド問題で、こちらはスタートアップ全般的に、日本というのは倒産率というか、新陳代謝が進みにくいというところがございます。こと大学に関しては、そういったリビングデッドしたスタートアップを持つことによって、新しい研究成果を生み出すための時間を圧迫するという面もございますので、やはり大学はゼロイチが得意なところでございますので、こういったところも、先ほどのアントレ教育であったり、本当にプロの経営者に任せて、数から質へ向上していくこともしていきたいなと思っております。
 あと、田中先生から、まだまだ道半ばでございますけれども、9プラットフォームを去年に発足して、着実にギャップアンドを補助しておりますし、また、9プラットフォームも連携してしっかりと強化していきましょうということで、第2ステップのほうに進んでいるのかなと思っておりますので、ぜひとも、引き続き御指導いただけたらうれしく思います。
 私からは以上でございます。
【久世部会長】  迫田室長、ありがとうございます。
 それでは、議論に戻る前に、今、迫田室長から御回答、御説明がありましたけれども、5名の委員の方、今の迫田室長のコメントに関して、まだ何かある方は、大丈夫ですかね。よろしいですか。もし挙手いただければ、大丈夫ですか。
 では、高木委員、お願いします。
【高木委員】  どうもありがとうございました。ベンチャーの情報をベンチャーキャピタリストに伝えるということで、今、9プラットフォームで1対1でのいろいろな情報交換というのは大事ですけれども、先ほどアナリストと申し上げたのは、ベンチャーの情報を中立的なアナリスト、プロが客観的に分析して、それを、ある意味1対Nでベンチャーキャピタリストに情報提供する仕組みもあってもよいのではないかということで申し上げました。
 その上で、ベンチャーキャピタリストがベンチャーを絞った上で1対1で検討するというのは、次のステップになりますが、1対1の前に1対Nの取組も大事なのではないかと思いました。
 それから、初等中等教育、小中高向けというのは、もちろん大学生・大学院生での教育も大事ですが、もっと若いうちにマインドを醸成することが大切だということと、併せて、学校への負担は重くないというメッセージを応募を検討されている学校に送る意味でも、重ねて申し上げました。どうもありがとうございました。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 よろしいですかね。
 それでは、続けまして、会場から、林委員、御質問、コメントをよろしくお願いします。
【林委員】  ありがとうございます。林です。
 まず、今回、部会で論点の中に明確にスタートアップの成長時期での課題を挙げられたのは、私は非常にうれしく思います。局長が冒頭におっしゃったように、スタートアップの件数自体が非常に増えている。これは、過去数年見ても、非常にいい傾向です。
 ただ、現場を見てみると、ともすると数だけ何とか稼ぐ。どうでもいいから、とにかくスタートアップをつくれというような指示が飛んでいるようにも感じられることがあります。
 国全体がスタートアップの起業を促す方向に向いていくときに起業の経験のために数を稼ぐ必要があると思いますが、やはりそこに加えて、成長させるというところにも意識を振ってくださいという課題が出たのは健全だと思うんです。
 では、どうやるかといったときに、100件出てきたら、90件死んでしまいましたというのも許容しなければいけない現実ですけれども、残った10%がこんなに大きくなったんですと、ぜひともこれを大学ごとに評価するような何らかのメトリクス(指標)みたいなものを導入していただけると、やはり大学のほうも評価につながってきます。もちろん大学としては学長レベルでのコミットメントがあれば、多分、組織としても動けると思うんです。では、学長が本当にコミットされるということは、その大学の評価をこのようにしますというメカニズムが必要ではないかなと思いました。
 あと、成長する際にどれだけ資金を集めるかということ。これは、最初のアーリーの段階でエンジェル投資家の資金を集めるのと全く違うメカニズムがあるし、投資家目線に基づいた提案のスキルがない限り、やはり投資家は向いてきてくれない。今まで幾つかのスタートアップの方々とお話ししている経験からすると、実は、大学発ベンチャーで種となるアイデアがある。同じアイデアなのに、このように表現したり、こういうふうにプライオリティーをつけて提案すると、投資家の見方が変わってくる。ここをうまくトレーニングしてあげられるような支援の仕方が大事だと思います。
 ただ、これは言葉で説明しながら、私も感じるんですが、実際にはとても大変です。かなりハンズオンで付き合っていってあげないと身についてこない。このハンズオンでがっちりやるという体制をどのように作るかという辺りが課題になってくると思います。そうすると、大学ごとにそういった人材確保というのは、東京、あるいは関西、九州といったところはある程度人材の厚みがありますが、地方大学になればなるほど非常に薄い、難しいので、ここをどのように支援するか。ここは、中央と地方で課題が違いますよという認識を持っていただくというのが大事だと思います。
 あと、アントレプレナー教育ですが、芝浦工業大学にいたときに経験したんですが、中学・高校生のアントレ教育は意外と反応がいいです。学生さん、生徒さん、やってみようとなる。大学生も、1年生・2年生は結構積極的。卒業近くなるにつれて、そんなことはやっていられないよとなってしまうんです。ですから、これはこれで、中高からやるというのは全く私も賛成です。
 ただ、教員の問題というのは、今、メカニズムを考えていらっしゃるようですので、決して学校に全部丸投げではなくて、外からの人材で支援しますよというやり方が、現時点ではよろしいのではないかなと思いました。
 アントレプレナーシップ教育も、地方大学では、それができる教員が非常に少ないです。看板は掲げているものの、実質的には経験や実力がついてこないというのが現実だと思うんです。ですから、この部分は、地方ごとに、例えば、お互いに人材をどのように融通するか。大学ごとに考えるとうまく行かないので、プラットフォームとおっしゃいましたけれども、例えば、アントレプレナーシップ教育の専門家集団がいて、地域の大学を一貫して支援するような体制を検討されてはいかがかなと思いました。
 私からは以上です。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 宝野委員も、先ほど手を……。
【宝野委員】  同じ質問が出ましたので結構です。
【久世部会長】  それでは、仁科委員、よろしくお願いします。
【仁科委員】  初めて参加させていただいているので、今のところ、議論は大体理解しているんですけれども、少し発言しにくかったんです。今ちょうど学生のスタートアップの話が出ました。それで、愛媛大学でも、地方大学ですけれども、学生起業をやっていて、中高生も含めて呼びかけしているプレゼンや、アントレの起業の提案などをしてもらって、発表会などもしているんですが、確かに層が厚いかと言うと、決してそんなことはない。
 今日、お話を聞いていて、何か難しいなと聞いていて思ったのは、少し考えてみたのが、どうしても地方大学だとスタートアップというよりは、地域の産業の振興のほうに、例えば、言葉として表したときに、スタートアップではなくて、実際に地域にある産業の支援という話になって、そこから全く新しい産業が出てくるわけではないと思いますが、現在、だんだん人口が減ってきて、地域産業が衰退化していくところをなるべく抑えるとか、私の頭の中にあるのは、むしろほとんど地域産業に特化した、県単位で考えると私は駄目だと思っていて、県で言うと総合的な話になってしまうんですけれども、池田課長と迫田室長は一度愛媛にいらっしゃったことがあるのでお分かりだと思うんですけれども、むしろ市町と付き合ったほうがよっぽど効率がいいところがあって、市町単位になると、産業がかなり特定化されてきているので、そこに集中的に、現にうちは二つ、今度三つ目もつくりますけれども、40人規模の教員、学生がいるような拠点を県内につくっています。
 そういう形で、その産業も集中的に支援するという話になってきて、そのときにスタートアップというのが抜けてくるな、抜けているなというのは、今、改めて皆さん方の話を聞いていて思ったので、これはどうしたらいいものかなと少し悩んでいるところです。そういう地域の産業支援にも資金が集まってくればいいんですけれども、今のところ、そういうスタートアップと地域産業支援を関連づけられていないところが困ったところかなと思っているところです。
【久世部会長】  仁科委員、ありがとうございます。
 林委員、仁科委員のお話は、論点3にも関係するようなポイントかなと思いました。
 それでは、論点1に関しての御質問はここまでして、今、林委員、仁科委員の御意見、コメント、質問に関しまして、事務局から御回答、御説明、よろしくお願いいたします。
 迫田室長でよろしいですか。それでは、池田課長。
【池田課長】  すみません。先生、ありがとうございます。
 まさに林先生が御指摘されていた成長の部分で、我々も次世代型のオープンイノベーションということで公募をかけて、モデル事業を始めているところなんですけれども、成長につなげるためのハンズオン支援をどこでやるべきか、もちろんモデル事業を公募して、これから審査していくという段階ではあるんですけれども、5ページ目の論点の1点目に入れているとおり、今後、どう発展させるべきかを考えた場合に、そういう成長支援的なところ、まさに先生がおっしゃったハンズオン支援的なところをどこが担ったらいいんだろう。それは、大学の中に抱え込んでやるべきなのか、あるいは大学の外に何かつくってやるべきなのか、もっと言うと企業のほうに入ってやるべきなのか、そこは、多分まだ解がないところかなと思っています。
 これは全くの私見で構いませんので、先生の御経験、あるいは林先生以外にも、先生方の御経験からどこに置いたほうがいいというものが何かあるのでしょうか。我々としては、大学や国研の支援を中心に考えているので、やはり大学が成長支援、特に創業直後に社会貢献の一環で、あるいは共同研究をする中で支援して、より大企業につなげていく。まさにM&Aなどにつなげていくとか、市場のニーズを捉えながら大学がスタートアップ支援していくということを考えていたりもするんですけれども、それは、先生方の目から見たときに、いや、そうではなくてというお考えなどがおありなのか。すみません。ここは本当にフラットな聞き方で恐縮なんですけれども、まさに我々が悩んでいるところで、モデル事業の提案も頂きながら、どうするといいのかなというのを模索している段階ではあるんです。もし、この場で何かあれば。
【林委員】  私の経験で、一般化した形で言うにはまだまだ足りないなと思いつつ申し上げますけれども、まず、現実に大学の中にそういった人材はいないのではないかなと。
 では、大企業、あるいは企業の中にそういった経験者がいるかと言うと、これもなかなかいない。企業というのは、既存事業としてあるものをどのように最適化するかということを一生懸命やりますので、まだ原石の状態のものをどれだけ磨くかというところが、それほど人材が厚いわけではないんです。いるとしたら、インキュベーターをやっているような投資家、あるいはアクセラレーターレベルまで行っているような投資家のところには、そういう目線の人が集まっている。そこには、起業経験者から、ある程度人を雇って運用していると思うんですよね。
 こういったところは、今、人材プールとしては一つの可能性かなと。ただ、彼らがどのくらい協力してくれるかは、また別問題なんですけれども、現実的にはそういう人材の分布ではないかなと感じています。
【久世部会長】  今、オンラインで田中委員も挙手されていますのは、今の池田課長の御質問に対してでしょうか。
【田中委員】  そうです。よろしいですか。
【久世部会長】  それでは、よろしくお願いします。
【田中委員】  人材育成の観点ですが、たまたま私ども自身が各地方大学ファンドにおいて、研究者に対する起業や経営のハンズオン支援を共同経営スタイルで取り組んでおり、プロフェッショナル人材育成は、結果的にはできていると考えています。
 弊社のチームは、理系の修士・博士を持つメンバーでバイオ・半導体など各人専門性を有する人材に加え、会計士や元銀行員やコンサル経験者で経営支援を行ってきたメンバーなど、10名弱のチームで6つの地方大学ファンドに関わっております。いずれの者も入社時は未経験ながら、業務を通じ年々経験を重ねています。
 弊社が関わる大学ファンドは、地域金融機関と地方大学と共に立ち上げ運営しますが、最終的には私どもの関与なく、地域金融機関と地方大学だけで回ることを想定していました。しかしながら、このような人材は、地方大学にも地域金融機関にもおらず、業務経験を重ね育てていくものだとあらためて思っております。では将来に向け、私たちのような人材は、果たして誰が雇用すべきか、という問題意識を持っております。
 ファンドを運営するVCの収入は、ファンドサイズの数%を掛けたお金を毎年もらうので、毎年の収支をあわせるには間接経費もかかるので10億円のファンドで1名雇える程度のイメージです。結局、地方大学ファンドを10億円程度で起こしても、プロ人材チームを抱えられず、おのずと巨大なファンドを作る官民イノベーションプログラムのようなモデル、あるいは複数大学ファンドを束ねて運営するようなモデルでないと、成立しないという話になります。さらに、人材を雇えばすぐに収入が立つかというとそうではなく、ベンチャーを起業する前の1年近い伴走支援の期間の人件費などの費用負担を賄う必要があり、さらにベンチャーのハンズオン経営支援など人件費先行型の取り組みになります。このような人件費を補助金などで賄うというのが、もう1つの手段だと思ってはいますが、永続的な仕組みではないので暫定措置でしかありません。
 いろいろと考えた末、結局のところ、大学ファンドで活躍する人材を雇えるのは、地方大学しかない、というのが今現在の私個人の思いです。大学が抱えるTLOや産連をはじめ、多様な専門人材を抱える人件費予算がある大学に、新たな分野の専門人材として加えることが現実的だと、今は思っています。大学の研究を事業につなげる支援を誰がやるのか、大学がやる、という整理とも言えます。1大学で抱え切れなければ広域で支援チームを立ち上げる、ということも1つの現実的な解決策のように今は個人的に感じています。つまるところ、大学経営においてこのような機能や人材が必要だという経営方針に至るかどうか次第と言えます。
 以上です。
【久世部会長】  田中委員、ありがとうございます。
 池田課長、よろしくお願いします。
【池田課長】  ありがとうございます。
 いろいろ今後に向けて検討していく上で参考になる御意見を頂きました。
 また、この辺り、個別にでもいろいろ教えていただければと思っております。
 あともう一つ、仁科委員からも地域振興の関係で御指摘を頂きました。こちらは次の次の論点でも御議論できればと思っております。この部分も非常に重要なポイントだと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
【久世部会長】  どうもありがとうございました。御議論いただきありがとうございます。
 論点2に移りたいんですけれども、私も最後の議論、モデル事業をどういう形でやるかは非常に重要で、やはり人材の面、それから資金の面、よくよく戦略を練る必要があるかと思います。
 あともう一点、高木委員がおっしゃられて、ほかの委員の方も言われていましたけれども、日本は失敗を恐れる文化というのはいろいろなところで聞いていまして、ここをどう変えていくのか。変わらないとしたら、これを逆手に取って、これをプラスにして、欧米流ではない、多産多死ではない形ができるのか、できないのか。結構ここも大きな課題かなと感じました。
 続きまして、論点2でございます。産学連携のところです。ここに関して、委員の皆様、いろいろな御意見、コメント、御質問あるかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、会場からは宝野委員、よろしくお願いいたします。
【宝野委員】  産学連携につきまして、事務局から興味深いデータを示していただいているんですけれども、共同研究費の日本と世界との比較です。この比較を見れば明らかなんですが、ただ、この比較というのは、世界トップ10大学、イギリスではオックスフォード、ケンブリッジ、あと残りが米国の大学で、これで差が出るのは明らかだと思います。
 それで、私、こういったデータを持っておられたら興味があるなと思っているのは、特に中国ではどうなっているのか。それから、韓国、ドイツ、フランス、最近、GDPで日本を抜いたインドなどの状況がどうか。そういったデータがあると興味深いなと思っています。
 それで、少なくともこのデータによると、世界のトップ大学に比べると、産学連携に対する研究費が低いというデータが出ていますが、最近、国際卓越研究大学を目指す大学の企業からの資金獲得額を見ているとも、倍、倍の勢いで上がっている。ですから、一旦、大学がやる気になればできるのかなという感触を持っています。
 一方で、私自身の経験から、日本の企業というのは、共同研究を行っても、大学、あるいは国研になかなか必要な資金を出していないような印象を持っています。一方で、同じ企業が海外の大学と共同研究をするときは、桁の違う額を出している。ここはなぜかなと思っているんです。なぜ日本の企業は大学にお金を出さないのか。
 一つの理由は、大学側にあって、スピード感が欠如する、あるいは実際の研究は修士の学生に頼って、学生が出てこないと遅れるといった言い訳をさんざん聞かされるという経験も持っています。
 一方で、企業文化の問題はないのかと思うんです。私が知っている業界では、大学には均一でこれぐらいしか出さないという文化もあるようですし、そこら辺、なぜ日本の企業が大学に積極的に共同研究費を出さないのかという分析をしておられたら、ぜひお聞かせいただきたいと思っています。
 以上です。
【久世部会長】  宝野委員、ありがとうございます。
 最後のところは、産業界経験の委員の方々からも御意見を頂ければと思いますが、少しまとめて、会場から高木委員、よろしくお願いします。
【高木委員】  ありがとうございます。
 意見として2点と、質問を1点させていただきたいと思います。
 まず、1点目ですが、この産学連携については、法律で大学の機能として教育・研究・社会実装が定められているうちの社会実装と捉えることに加え、大学の財務基盤強化の視点で捉えることが非常に大事だと思います。オープンイノベーション機構の整備事業の御説明がございました。この事業の期間中、文部科学省が毎年公開シンポジウムを開催され、採択した大学以外の方が、かなり多数聴講されたと聞いています。非常に関心の高い取組だったと思います。
 問題は、採択した12大学以外の大学に展開しようとしたときに、情報共有だけでいいのか、取組の紹介だけでいいのかが非常に気になります。と申しますのは、採択した大学で事業終了後の5年後に、最終的に自立的な運営ができ、プロフィットセンターになった場合でも、初年度や事業期間中は赤字です。
 そうしますと、特に中堅の大学で財務的に厳しい中で、ロールモデルの情報を得ただけで実施することは難しいと思います。やはり支援事業として多くの大学に展開していただくことが大事ではないかと思います。これが1点目です。
 2点目ですが、オープンイノベーション機構の整備事業は競争領域に踏み込んでいますので、オープンにできない情報も多くありました。公開シンポジウムで、私も令和2年と3年に講演をさせていただきましたが、個別の大学の取組はあまりお話しませんでした。公開シンポジウムの中の別のセッションでは、各大学から、公開可能と判断された取組をご紹介いただいていますが、これをまとめて、ガイドラインと事例集を組み合わせたものを作られるとよろしいと思います。
 以前まとめられました、産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン追補版では、「知」の価値付けの手法が提示されています。各大学が工夫されて、いろいろな形で実践されています。直接経費以外の間接経費に加えて、それ以外の費目でも、企業と話し合って、「知」の価値の対価を獲得する仕組みをつくっておられますので、この辺もまとめていただくとよいと思います。
 さらに、研究者へのインセンティブについても各大学が新しい制度をつくられて取り組まれています。まだ金額としては少ないようで、先生によっては、これはお小遣いだからといって、ご自身で受け取らないで若い先生にどうぞということもあると聞いております。今後は金額的に充実したインセンティブになることを目指すべきだと思います。
 このような実例を含めたガイドラインは、採択した12大学のフォローアップにもなりますので、ドキュメント化を御検討いただければというのが2点目の意見です。
 3点目は質問です。先ほど、宝野委員から企業側の問題の御指摘がありました。
 資料5の57ページに産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインの追補版があります。先ほど御説明はなかったと思いますが、セクションAの大学等への処方箋に加え、セクションBで産業界への処方箋があります。
 この産業界への処方箋のフォロー状況について質問させていただければと思います。ガイドラインを策定されたときは、文部科学省の方が経団連の部会に御参加されて議論されました。もうやられているのかもしれませんが、必要であれば、産業界と処方箋の実施状況などの会話をしていただくことが大切ではないかと思います。現状につきまして質問させていただきたいと思います。
 以上でございます。
【久世部会長】  高木委員、ありがとうございます。
 まず、このお二方の委員の方からのコメント、御意見、質問があったと思うんですが、事務局から一旦ここで御回答、御説明いただけますでしょうか。
【池田課長】  ありがとうございます。
 答えられる範囲になりますけれども、宝野委員から頂いています、中国やその他の国の状況がどうなっているかですけれども、今、手元にそういった情報がないので、どういったものがあり得るのかを調べた上で、確かにおっしゃるとおり、超トップ大学とばかり比べていても仕方がないというところはあるので、その情報は収集できる範囲での収集をしてみたいと思っております。
 あと、企業など、国内外で桁違いだというお話ですけれども、それは問題意識として我々もずっと思っております。そういったこともあって、古くは10年ぐらい前から組織対組織というお話を進めております。
 ただ、現状のデータを見ていると、やはり大型のものが伸び悩んでいるというところもありますので、もう一回てこ入れをするというか、どういった形であれば、常に事業部門ではなくて、もっとハイレベルで大型のものをということで進めてはいるものの、もう一回、何がしかの手を打っていかないと、やはり大型の連携は進まないのかなと。
 一方で、これは高木先生の質問にも関係しますけれども、大学の中でもいろいろなガイドラインを定める中で、各大学の取組として、企業との連携で共同研究する際の費用の見直しはかなり行われてきているということで、間接経費もこれまで10%ぐらいしか取らなかったものが30%を超えるようなものが事例としても出てきている。そういった動きもありますので、それを横展開しながら旗振りを進めていかなければならないんだろうなと思ってございます。
 あと、OI機構関係ですけれども、ちょうど昨年度、事業の最終評価をしてきておりますので、そういったものの中から良い事例の横展開など、何よりこの中でも少し頭出しはしているんですけれども、OI機構に限らず、いろいろな拠点整備事業や体制整備事業をしてきておりますけれども、実際にその取組が終わった後に縮小している例が結構あると思っています。
 ただ、一方で、あまり縮小せずに頑張っている例もあったりしますので、その中で何が機になったのかというところを改めてヒアリングや調査をして、どこを抑えると継続しやすいのかというところは、我々としても少し調べながら、その上で次の事業なのか、あるいは制度的な展開なのかは考えてみたいなと思っております。
 まさに、OI機構を取った大学と取れなかった大学の間でも少し差が出てきているというところで、ここは確かにOI機構でこんなことをやりましたという事例紹介もいいんですけれども、その大学がどこがうまく行って、うまく行かなかったのか、そういったティップスのようなものをきちんと調べて展開する中で、地方も含めてほかの大学で展開できればなと思っています。
 この辺りはまだ考えている段階なので、具体的にこうしますと言い切れないところもありますけれども、まさにその点も含めて、この場でもいろいろと御指導いただければと思ってございます。
【久世部会長】  池田課長、ありがとうございます。
【對崎課長補佐】  1点だけ、高木委員の質問の中で、ガイドラインのお話がございました。こちらは産業界の状況というところは我々も直接は把握できていないんですけれども、まさにこのガイドラインを定期的に改定やブラッシュアップしていく議論を経産省とやっていまして、そういう中で、これがどのくらい使われて、実際どうだったかというところも当然フォローしていくところだと思いますので、このような部会でも状況をシェア、キャッチアップしていきたいと思ってございます。
【久世部会長】  そうしますと、宝野委員からの日本企業が必要な資金を出していないのではないかとか、片や、海外の大学に関しては結構な種類の資金を出している。その辺り、委員の皆様で、特に産業界関連の方々から何か御意見ないでしょうか。
 林委員。
【林委員】   私が発言しようとしていたことと今の御質問が重なるんですけれども、会社側の考え方ですと、やはり必要なものは金を出しても手に入れたい。このニーズというとすごく単純ですけれども、ここを大学側がどのように察知、あるいは認識できるかという点にあると思うんです。
 もちろん会社によっては、大学だったら100万円、200万円が限度と勝手に考えていらっしゃる企業もあるみたいですから、これはこれで意識改革していただかなければいけないんですが、例えば、私は広島のデジタルものづくり教育研究センターのお手伝いをさせていただいていますけれども、実は、ここは大学ですが、企業が欲しがるような、企業が使いたいような商業レベルの大きな機械を意図的に入れているんです。これは何でかと言うと、企業の研究開発のグループは、量産機を止めて試作などはできない、あるいはやりにくい。もしも、大学にそれと同じような試作環境があれば、大学に来て、単に機械を使うだけではなくて、大学の先生との共同研究を含めて活動できるのであれば、とても開発のための基礎研究がやりやすくなるんです。これが、企業側から見たスイートスポットであり、こういうところに目をつけられると、産学連携の規模は大きくなるような気がします。
 ただ、問題は大学側がそれをどのように可能にするか、。やはり外部人材を入れるほうがやりやすいのではないかなと思います。
【久世部会長】  なるほど。ありがとうございます。
 高木委員、お願いします。
【高木委員】  オープンイノベーション機構に5年間以上関わっておりまして、企業側も変わってきていると思います。今、池田課長からお話がありました通り、10%だった間接経費を、30%にする。これは、当然企業側も納得のうえで負担するわけです。
 さらに知の価値付けということで、まだまれなケースだと思いますが、さらに10%、20%を加算するという例も出てきています。つまり、直接経費に対して、間接経費も含めで50%ぐらいを加算するという例も出てきています。
 例えば、米国の大学ですと、60%近く取るケースもありますので、徐々に近づいてきていますので、よい方向になってきていると思います。
 ただし、もっと加速していくことが課題だと思います。
 以上です。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 ほかに、千葉委員、よろしくお願いします。
【千葉部会長代理】  少し違う観点で申し上げますと、これまでの産業の発展というのは、大学と連携したり、共同研究して、先端的な技術を磨いて、それをベースに新たな事業開発をしていく。それで収益を上げるというモデルだったと思うんですけれども、今、私、大企業を中心にお話を聞いていると、そのモデルだけでは社会というか、地球自身がもたないということで、いかに自然資本をベースにする、あるいは倫理基準をベースにした事業を生み出していくかというところが重要だということを皆さんすごく認識されているんです。
 ところが、何をやったらいいかが分からない。どこに投資したらいいかが分からないという状況なんです。
 これについては、私は、まさに大学の出番であって、単に森を守るとか、水をきれいにするだけではなくて、様々なことをやらなければいけない。今まで、単に産業を伸ばすということだけをやっていたので、ある意味負の外部性、負の要素を外に押し出してきたんですけれども、それを極力減らしていくということが、これからの新しい事業モデルだということをしっかりと社会に訴えていく。私は、これは大学人の責任だと思っています。
 しかも、一大学でできることではなくて、多くの大学の専門家が集まって、こういう事業モデルをやって、こういう評価指標でやると、こういう見通しでという数値情報を見える化して、企業がそこに資金を投入しやすいようにする。これは一つの例なんですけれども、要するに、今までの事業モデルとは違うものが起ころうとしているときに、大学はそこに先進的に手を打って、そして、大学がこういうことを見極めています。だから、こういう事業をやりませんか、ここに資金を投入しませんかということをやっていく。これが、まさに日本が世界を先導していくようなモデルにもなり得ることだと思っていますので、ぜひそういう観点も産業界と共有できればと思っています。
 以上です。
【久世部会長】  千葉委員、ありがとうございます。
 私は、今の千葉委員のところは非常に重要で、そのために産業界と大学が同じ土俵に立ってやらないと、どうも日本の場合、特に大企業は上から目線で、大学と組むときも、ベンチャーと組むときも、それだと今みたいなお互いの課題や事業モデルを変えようとしているところを、産業界もかなりオープンにして議論していかないとなかなか具体化していかないなという感じが少ししています。
 荒金委員、よろしくお願いします。
【荒金委員】  ありがとうございます。
 一応、産業界からの出身ということで、個人的に感じているところもありますが、少しお話をさせていただければと思います。
 先ほど、共同研究費は日本に対して少額でというお話も出ましたが、企業の立場から申しますと、あれはどうしても多くの大学が個別の技術開発を中心とした研究テーマ設定をされているところが多いものですから、企業サイドとしては、企業でできないことのあるパーツを大学にお願いしてやっていただくという、共同研究というのが必然的に多くなっているような気がします。
 そうしますと、先ほど先生がおっしゃられたように、1件200万円、150万円というレベルになってしまうのではないかと思うんです。もちろん企業サイドも、大学と一緒に自分たちの構想を開いていくという発想の下での共同研究を考えられていないということもありますが、はっきり申し上げれば、そもそも日本の大学サイドのいろいろな研究テーマ、体制が、社会や産業の将来、未来を考えた未来構想力を持ってそういう研究体制や研究テーマの設定ができていない。そこに、企業としては限界を感じて、つい海外のいろいろな大学やベンチャー等に目が行ってしまうのではないかなと思うので、小さいシステムの話ではなくて、そこを根本的に変えられるようなことが必要になってくるのではないかなと感じています。
 以上です。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 私もIBMを33年間で、旭化成はまだ5年なんですけれども、日本の企業と海外、米国の企業の違いを感じているんです。共創の場形成支援は、COI-NEXTのプログラムオフィサーのときの経験からすると、宝野委員がおっしゃったとおりで、我々、一拠点で10年間の資金があるんですけれども、やはり世界をリードするような拠点にするには、その数十倍からの資金を何とか集めてこなくてはならない。そのためには本当に産業界の協力が不可欠なんですけれども、皆さんがおっしゃられるように、具体的な共同研究で、もうテーマが決まっており、そういうところに数百万みたいな話はあるんですが、中長期で見たときの将来のポテンシャルに対して資金を投入するような概念というんですか、そのような仕組み、仕掛けがないように思っています。
 最近、特に日本の製造業では、社内においても、特に技術に対してそういう長期的なところに対する資金投入する目利き力というか、判断力というんですかね。そういうところも一つ企業側の課題かなと思っております。
 さらには、日本の場合、まだまだ地盤周囲というものがありまして、何とか自分たちでコア技術をつくって、それを開発に持っていき、製造して、それで販売するんだというところはまだまだありまして、これでは世界のスピードには産業がついていけないんです。そういう根本的なところ。
 先ほど、私が申しました、大学、ベンチャーと付き合うときは、同じ目線に立ってやらないと、上から何か物を頼むのではなくて、一緒に新しいコア技術、基礎研究のところで社会を変えていくんだという意識、気概がないと難しいかなと思いまして、本当に産業界はかなり課題を持っているかと思います。ありがとうございました。
 宝野委員、よろしいでしょうか。
【宝野委員】  先ほど、産学連携の規模が小さい一つの理由として、そもそもテーマ設定が現実離れしているというお話がありまして、それは私も全く同感です。
 たしか、この委員会の前期、そもそもテーマ設定から考えていかないといけないという御意見もあったと思うんですけれども、それを行っていくために、例えば、組織対組織の連携を今後強化しようという取組は有効かもしれないと思っています。というのは、アカデミアには基礎研究で非常に深い知識を持っておられる研究者が山のようにおられる。彼らも、その深い知識を何とか生かしたいと思っているんですけれども、何をやっていいのか分からないというのが正直なところだと思うんです。
 我々、組織対組織研究で企業に提案したが、例えば、こういった技術課題だったら共同研究に発展する可能性があるという、幾つかの球出しをお願いして、それに対して研究者がいろいろな提案を出していくというのをやっているんです。そうすると、意外と面白いマッチングができて、企業がこんな人がいたのかといって、十分な資金も出していただけるような事例もございますから、今後、組織対組織の研究などを充実させる、あるいはファンディングのシステムを変えて、今、社会で必要とされている、かつ基礎科学として対応しなければいけないようなテーマを出していくと、より多くのやりたいと思っているけれども、どうやっていいか分からない研究者をもっと参画させることができるのではないかなと感じます。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 まだまだ可能性はあるんですけれども、なかなかそこをうまくマッチングは、まだまだ部分的にしかできていないんですよね。
【林委員】  宝野先生、それでインターフェースをするような特別なグループを組織の中にお持ちなんですか。
【宝野委員】  コーディネーターを多く雇用しています。
 あと、最近、私が提案しているのが、マッチングにもっと生成AIを活用できないか。我々も試行的にはやっているんですけれども、今、リサーチャーIDほか、研究所のデータが充実しています。特許も見られるし、全ての論文が見られる。データとして公開されている時代で、生成AIであるプラットフォームをつくれば、マッチングが非常に簡単にできると思うんです。そういったプラットフォームを各大学、小規模な大学で整えていくのは大変ですから、ぜひそういったものをプラットフォーム化していただいて、企業、あるいは各研究者が使えるようになると、かなりマッチングが効率的にできるのではないかと思います。
【久世部会長】  大変貴重な御意見ありがとうございます。私もそこは大変重要かと思います。ありがとうございました。
 まだまだ論点2に対して御意見あるかと思いますが、時間の関係もありまして、最後の論点3、科学技術イノベーション施策の観点からの地方大学振興について、地域振興のところだと思うんですけれども、ここに関しまして、委員の皆様から御意見、御質問ございますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 林委員、お願いします。
【林委員】  林です。
 この論点を見て思い出したのは、先週、ロンドンにあるアラン・チューリング研究所と話をする機会があって、面白いなと思ったことを紹介します。
 アラン・チューリング研究所は、2015年に設立された、英国のナショナルインスティテュートですから、国立の研究機関なんです。主にデータサイエンスとAI分野を中心として活動しているようですが、その機能の中に、AIやデータサイエンス分野において、英国内の大学の産学連携のハブ機能を持っている。
 産学連携や、いろいろな問合せ等に関して、そういう専門分野の先生方がどの大学にいるかも紹介とか、大学と企業をつなぐということを複数の大学を対象にナショナルインスティテュートがやっているというのはなかなか面白いなと思いました。しかも、そのコラボレーションが単に人を紹介するだけで終わるのでははなくて、コラボレーションがうまく行って、例えば、EUの競争的資金を提案できるようなところまである程度支援するという機能です。
 特にデータサイエンスやAIは、今、発展過程にあるので、それぞれ個別の大学ではなかなか全部やりきれないという意味もあって、多分、戦略的に政府が設定したんだと思うんですけれども、国立の研究機関がそういう産学連携のハブ機能を持つというのは面白い仕組みですねという話をしたら、最近の動きですとおっしゃっていました。
 先ほど、プラットフォームごとに活動されているということが実績としてあるとしたら、しかも、先ほど、キーワードが出ていたのは、地域ごとにやる意味は、逆に企業から見ても、投資家から見てもあまり意味がなくて、専門分野ごとですよねということになると思うんです。
 ですから、内部化、内製化すべきか、外部化すべきかということを少し考えつつも、そういった支援機能が中央側にあると、これは分野にもよると思うんですけれども、一つの新しい試みなのかなと思いましたので、紹介させていただきました。
【久世部会長】  林委員、ありがとうございます。
 続きまして、オンラインから上田委員、よろしくお願いします。
【上田委員】  論点3の「科学技術・イノベーション施策の観点からの地方大学振興」につきましては、地方大学振興についてだけでなく、論点1の「大学等発スタートアップ支援」も含んでいると思います。
 その意味で資料4の10枚目のスライドは、非常に分かりやすく、議論しやすい資料になっていると思います。特に、真ん中の弘前大学の事例が、今回の3つの論点の議論を進めていく上で非常に大事と感じています。
 まず、弘前大学は健康医療というテーマで、青森県の短命打開のために、弘前大学が青森県弘前市と連携したことが、最初の大きなポイントだと思います。つまり、大学の研究成果、あるいはスタートアップの持っている技術を社会実装しようとしたときに、我々の経験では、なかなかそれがうまくニーズとマッチングしないことがあって、そのマッチング先を探すのに時間がかかるということがありました。
 逆に、今、我々がやっている中でうまく行っている事例は、例えば、長崎県や宮崎県、京都府などであり、ポイントは、自治体、具体的には都道府県や市になりますが、知事や市長を中心に、地方の強みを生かして地域活性化を図るためのいろいろな戦略を考えておられるのでそれを把握することです。
 例えば、京都府でも、産業創造リーディングゾーンと称して、フードテックや半導体という今後の成長が期待できる分野で新しい産業を創造していくリーディングゾーンをつくろうとしています。そこでは、スタートアップを育成し、大学との連携を強化しながら、人材育成にもつなげるという発想で取り組んでおられます。
 このような自治体は、基本的にいくつかのニーズを持っていて、そのニーズに対してどういう施策をとっていくかということについて、いろいろなアイデアを考えておられるので複数のシーズを必要としています。このシーズ提供者として登場するのが、大学、あるいはスタートアップで、これらは研究開発の成果に基づくシーズを持っています。
 企業は三つ目の登場人物になりますが、このような取組を事業として推進していく際に、製品やサービスという形でシーズを持っています。ですから、少なくとも自治体と大学と企業がうまく連携していくことが非常に大きなポイントで、これが地方大学の振興及びスタートアップの育成支援、さらには産学官連携につながっていくと考えています。
 この三つだけではなくて、それぞれの都道府県には産業振興財団があります。これは、都道府県、あるいは市の施策を推進していくという立場で、基本的にはフットワークが軽く、いろいろな産業を興すための動きをしているのが特長です。
 もう一つ、5番目に登場するのが、それぞれの都道府県、あるいは市にある産業技術研究所で、中小企業を研究開発の視点で支援しているので、まず、この5者がうまく連携してやっていくという俯瞰図を持っていないと、大きな取組に発展しにくいというのが我々の経験です。
 個別にスタートアップとの連携で、スタートアップが持っているシーズだけを一生懸命社会実装しようとしても、なかなかマッチングがうまく行かない。その結果、スタートアップの育成もままならないというのが経験したことで、今言ったような5つのグループが連携してやっていくことが大事だと思います。
 ただ、そのときに問題になるのは、昨日も、ある会合で京都府・西脇知事の「あたたかい京都づくり」に関するいろいろな施策の講演を1時間15分にわたって聞いた時に感じたことですが、参加していた京都の企業の経営者が声をそろえて言っていたのは、「京都府がこういうことをやろうとしていることをあまりよく知らなかった」ということで、特に産業創造リーディングゾーンについては、我々は自治体と遠いのかなというのが企業から見た反省点です。
 一方、大学との連携という観点においても、自治体と企業等、京都の中の大学との連携というのは、ほかに比べると弱いかなというのが、我々がいろいろな共同を進めていて思うことです。
 ですから、この全体の俯瞰図を持つというのが、まず大事になると思います。そのときに、最初から大きなグループで始めようと思うとなかなか難しいこともあります。弘前大学の事例では、真ん中の二つ目の丸のところに「2013年には国のプロジェクトに採択され、この後の健康情報の超多項目ビッグデータを活用した予測法や予防法開発やビジネス化を推進」ということが記載されています。
 また、四つ目の丸のところにも、「認知症・生活習慣病等」というところで、「健康増進サービス・製品の開発」というものが出てきます。これが、恐らく弘前大学が取り組んでいく研究開発、あるいはスタートアップが取り組んでいく研究開発のシーズになって、それがうまく回っているのだと思います。
 三つ目の丸のところには、「39社の企業が参画」と記載されていますが、恐らく、最初は39社でなく、幾つかの企業と連携することから始まったのではないか。それが広がっていく中で、青森県の短命打開のために開始した健康医療の取組が、大学とスタートアップ、さらには企業との連携に広がっていって、結果的に地方振興に加えて地方大学の振興にもつながっている好事例ではないかと思います。
 この弘前大学の事例が、私自身の経験で非常に分かりやすい事例です。先ほど来、日本の大学には投資せず、海外の大学に投資という話がありましたが、今、企業も多様化しているので、全ての企業がそうではないと思います。重要なテーマということであれば、やはり一番やりやすいのは、日本のいろいろな大学、あるいは自治体と連携してやっていくのが分かりやすくやりやすいので、それを世界に発信していくということで海外にそれを展開していくという取組も進めています。
 一方、日本の弱みは、島国ということもあって、先ほど、どなたかもおっしゃったように、全体的に動きが遅いことも多々あります。やはり海外のほうが動きが速いテーマもあるので、海外でやるほうが適切なテーマというのも残念ながらあります。
 ですから、テーマによって、日本の大学と組むのがいいテーマなのか、あるいは海外の大学と組むのがいいテーマなのかということがあって、決してどちらかに偏っていることはなく、企業も多様化しているので、いろいろな考え方があると思います。
 いずれにしましても、この弘前大学の事例というのは、そういう意味では非常に深い意味を持っていて、非常に参考になる事例だと思いました。これは、我々が取り組んでいる中でも共感できるようなやり方だと思いますので、これが非常に重要な一つのいいモデルになると思います。
 以上です。
【久世部会長】  上田委員、ありがとうございました。
 そうしますと、この後、会場の高木委員、仁科委員、それから、オンラインの小池委員のところまでお願いしたいと思います。
 まず、高木委員、よろしくお願いします。
【高木委員】  どうもありがとうございます。
 論点3の地方大学振興ですが、これは地域振興も含めていると思います。国立大学には、「卓越した教育研究」型、「専門分野の優れた教育研究」型、そして、「地域貢献」型の3類型がありますが、昨今、大型の産学連携を志向する方針があると思います。オープンイノベーション機構の整備事業もその方針でしたが、採択した12大学のうち、「地域振興」型の大学が非常に苦労されました。地域の企業と連携する場合は、小規模にならざるを得ないことが多いです。そうしますと、大型連携を目指すオープンイノベーション機構の整備事業の方向とは相反することになりますので、少しお気の毒だったと思っております。
 一方、地方大学は非常に危機感を持っておられて、財務的には苦労されていると思いますが、人事制度などでは柔軟なお取組をされておられると思います。例えば、URAの方を教授職に任命したり、職種間でのローテーションするなどのお取組をされておられるので、社会課題を解決する取組や、ハブ機能などの人材を育成しやすい、活用しやすい状況ではないかと思います。
 弘前大学の例が出ましたが、この取組は、第1回の内閣府の日本オープンイノベーション大賞の内閣総理大臣賞を受賞されておられます。実は、私も審査に多少関わらせていただいておりましたので表彰式に参加しておりましたが、受賞された大学の先生の中には行政や民間企業のご経験がある方もおられます。地方の大学というのは、多様な人材、イノベーション人材を教育、活用するという点では、大規模な大学よりも有利な面もあるのではないかと思いますので、その辺も少し議論を深められればよいと思います。
 以上でございます。
【久世部会長】  高木委員、ありがとうございます。
 続きまして、仁科委員、よろしくお願いいたします。
【仁科委員】  ありがとうございます。
 先ほど、上田委員からの御意見に私はほとんど賛同いたします。それと、今、発言された高木委員からの御意見もかなり賛同するところです。
 うちも地方の大学長として感じるところは、まず一つは、多分、ものづくりと情報のような産業というのは、多分少し違う要素があると思っていて、情報などは世界全て、例えば、全国のどこかでプラットフォームをつくるというのは意味があると思うんですけれども、ものづくりになってくると、やはり物なので、その地域性というのは必ず必要になってくるんだろうと思っています。
 あと、うちの大学も県内20市町あるんですけれども、全てと連携協定を結んでいますし、首長さんが判断するとすぐ動くというのは、非常にメリットがあります。
 それで、結局、地域の産業を支援することは何になるかと言うと、一つは研究のイノベーション的な話と、人材を育成することを同時にやることは非常にメリットがあって、私たちのところでは、大学院をセンターに併設している形になります。先ほど、少し言いましたけれども、人数的に40人ぐらいがそういう地域に常駐している、住んでいるということになるのはそういう意味なんですけれども、そこで簡単に言うと、産学連携と人づくりと、もっと言えばまちづくり的なところも関わることができる。本当にお祭りに参加したりしている場合もありますので、そういうことも含めて、結局、うちもJ-PEAKSに応募させていただきましたけれども、採択されていないのは、やはり一番悩むところが、経済規模のゼロの数がどうしても多くならないというところが非常に悩みで、羅針盤がありましたけれども、どこで応募したらいいんだという感じが非常に悩みとしてあったところです。
 その辺を、地域は地域である程度その地場産業と密接に関連させて、その地域を守るような人材の育成もできるということを、全国的な視点とは少し違った視点で考えていただくと非常にいいなと思います。
 以上です。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 続きまして、オンラインの小池委員、よろしくお願いいたします。
【小池(聡)委員】  小池でございます。ありがとうございます。
 上田委員から弘前の事例が出ておりまして、ほかの先生方からも、こちらにすごく言及がありました。
 私は、前のCOIでプログラムオフィサーをやっておりまして、この弘前にも多く関わっておりました経験から、一言実態を言わせていただきますと、最近、産学官金労言と言いますけれども、ここの一つの成功の秘訣というのは、ここに産学官に民、住民が入っていたということなんです。
 これは、御承知のように、非常に分かりやすい、短命県日本一を返上しようという声に住民が賛同して、岩木地区の住民、1,000人ぐらいしかいないんですけれども、そこが口内細菌から、便から何から全部、2,000項目以上の健康データを2005年ぐらいからずっとためて、これだけの健康ビッグデータは、世界を探してもずっと定点でやっているものはないということで、まず一つは、そのビッグデータが触れるということで、日本中の医学中心にしたAIの専門家やビッグデータの解析の人たちが、こんなデータを触れるんだったらと集まってきたんです。
 あとは、住民が本当に毎年健診データ、健康増進プロジェクトのデータを自ら提供して取りに行くということをずっと続けてきた。だから、民の参加、それから、このビジョンにみんなが賛同するというのをすごく聞いていて、これがマグネットなっていろいろな研究者や企業などが集まってくる好循環がつくれたんです。
 これは、大学のコミットメント、中路先生がずっと長年こつこつやっていたものがCOIである程度発掘されて実を結んだという一つの事例で、松田先生が非常に努力されたんですけれども、これを大学、自治体、それから、住民が中心になって盛り上げて、そこに研究者、企業がマグネットのように集まってきてという好循環を産んだ。
 一つ、私も地方の大学振興という意味で言うと、中核大学が官民と一緒になってやったという成功事例だと思います。
 ただ、弘前は非常にうまく行ったんですけれども、私がほかの地域を見ていますと、やはり自治体のコミットメントをすごく熱心にやっていた方が人事異動で移ってしまうと、そこでせっかくやっていたことが途切れてしまうというケースが非常にあるんです。首長のコミットメントが一番重要なんですけれども、それも代わったりすることがあるので、やはり住民の声を行政が取り入れていくことからすると、民を味方に取り入れる、産学官に民がきちんと入るというのが成功の秘訣ではないかなと考えています。
 以上です。
【久世部会長】  小池委員、ありがとうございました。
 それでは、一旦ここで切りまして、事務局から御回答、御見解などありましたら、よろしくお願いいたします。
【平野室長】  ありがとうございます。拠点室長の平野でございます。
 各先生から御指摘いただいたこと、これから非常に参考にさせていただきたいと思っておりますけれども、やはり住民や産業振興財団のような多様なプレーヤーというのをどう俯瞰的な視点で巻き込んでいくのかということが極めて重要でありますし、各プロジェクトを大学が組成していく上でも、そのような視点をしっかり確保することが重要だろうということを改めて認識したところでございます。
 一方で、従来からガイドラインなども含めて、こういった産学官連携本部機能の強化をはじめとしたものに取り組んでいるところでありますし、各大学も進んできている部分もあるわけでございますけれども、特に人材の不足感も含めて課題があると承知しております。その意味で、地方の大学、また、地方がどうしても小規模になっていくところがある中で、どの機能をどこに置くのか、それは大学がいいのか、大学から少しスクリーンアウトしたところがいいのか、それは個別の大学単位で見るのがいいのか、各大学が連携したプラットフォームでいいのか。こういった求められる機能をどこにどう配置していくのかというところをものづくり、IT、また、地域性というところも踏まえて、よく整理していく必要があるんだろうと思っております。
 また、こういった機会を捉えまして、お話をお伺いしながら、幾つかのパターンをこれから考えていくための情報収集などもしっかりと進めてまいりたいと思います。ありがとうございました。
【久世部会長】  平野室長、ありがとうございました。
 コメント、質問された委員の皆様から何か追加でありますか。今、平野室長の御回答もありましたけれども、よろしいでしょうか。
 仁科委員、どうぞ。
【仁科委員】  先ほど、小池委員から首長さんが代わると方針がというのは全くないとは言えないと思うんですけれども、その地域の産業のことを考えると、私は今まで首長さんがそれほど大胆に方向転換した記憶はないです。
 あともう一つは、その地元の産業の昔からある組合的なところ、クラスター構造になっていれば一番いいんですけれども、そういうところはそんなにぶれないので、私は大丈夫なのかなとは思っています。
 それと、所々にいろいろ遠隔地の話が割とぽろぽろ書いてあるんですけれども、遠隔地で連携するのが本当に大丈夫なのかな。先ほど言われたように、ものづくりではない情報やAIのような分野というのは遠隔地で全く問題ないんですけれども、ものづくり的な産業に近いところというのは、やはり遠隔地は大変だと思います。地元で距離が近い、移動距離も1時間でできるというのはすごくアドバンテージがあると思うので、何でも遠隔地で、どこかの大学でぴったり合うテーマがあるというのはなかなかないのではないかなと思いましているところがあります。
【久世部会長】  ありがとうございます。
 よろしいですか。
 私も今の仁科委員のものづくりと情報系とは研究のやり方も少し違って、やはり物理的に距離が近いのは重要だという話を、実は、事務局との事前打合せでもお話しさせていただいて、あと、仁科委員がおっしゃられていました県単位で考えると、市や町単位で課題が違いまして、例えば、具体例で言いますと、我々、今、宮崎県とはデジタル人材の育成で組んでやっています。これは、旭化成、宮崎銀行、かなり人も入れてやっているんです。それは、デジタルの人材育成教育なので全体に波及できます。
 片や、我々のものづくりの中心の延岡市というのは宮崎県にあるんですけれども、宮崎大学から2時間ぐらい離れているんです。それで、50以上の工場があり、いろいろなものをつくっています。その中で100年続いているベンベルグ、キュプラという人工の繊維があるんです。コットンリンターという廃棄物から作るので、そこはエコなんですけれども、これをアンモニアで溶かして、セルロースを出して糸を作るんです。そうすると、そこに関する熱やエネルギーがすごくて、カーボンニュートラルを考えると、本当にこのマテリアルレベルの基礎研究が必要で、本来は、私、宮崎大学の延岡に何とかセンターというものがあって、カーボンニュートラルスマートファクトリーに研究者がいてくれて、世界中からも集めて、建物などは我々が資金を出せるので、何かそういうものがないと、物理的に近くにいないとできないような基礎研究は必ずあるような気がしますので、そこもぜひ御協力いただければと思います。ありがとうございます。
 すみません。また私の不手際で時間が少し超過しておりますが、まだまだ御意見あるかと思いますが、一旦、本日はここで議論、意見交換を締めさせていただきます。
 それでは、最後に事務連絡としまして、今後の予定等、事務局よりよろしくお願いいたします。
【對崎課長補佐】  事務局でございます。
 本日も委員の皆様、御多忙の中、御参画いただきまして、どうもありがとうございます。
 本日の議事録ですけれども、毎度のことでございますが、我々で作成したものを皆様に確認いただいた上で文部科学省のウェブサイトに公表させていただく予定でございます。
 また、次回の部会、第12回でございますけれども、こちらは日程調整の上で、7月23日の水曜日の同じ10時から12時という時間で予定しておりますので、引き続き、今日の議論の続きもあるかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【久世部会長】  ありがとうございました。
 よろしいですか。
 本日も、皆さん、御協力ありがとうございました。これで閉会させていただきます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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