産業連携・地域振興部会(第1回) 議事録

1.日時

令和3年7月7日(水曜日)13時~15時

2.場所

オンライン(Webex)

3.議題

  1. 部会長の選任、運営規則について(非公開)
  2. 産学官連携の最近の動向について

4.議事録

【浅井課長補佐】 文部科学省産業連携・地域支援課の浅井と申します。それでは、定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会産業連携・地域振興部会を開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。
会議に先立ちまして,まずウェブ会議を円滑に行う観点から、今から申し上げる事項について御配慮いただきますと有り難く存じます。
マイクはハウリング等を防止する観点から、発言時以外はミュートにしていただきますようお願い申し上げます。また、御発言時においては、あらかじめお名前をおっしゃっていただきますようお願い申し上げます。大変僭越(せんえつ)ではございますが、皆様のお名前の表示やミュート設定等について、事務局より設定を切り替えさせていただく場合がありますことを、あらかじめ御了承ください。御意見、御質問を頂く場面がございますが、御意見等ございましたら、Webexの挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。
本日は、第11期における最初の会合でございますので、部会長をお選びいただくまでの間、私が事務的に進行を務めさせていただきます。また、部会長の決定等、人事案件に関する議題が終了するまでの間は、非公開で進めさせていただきます。
初めに、事務局の御紹介を申し上げます。
科学技術・学術政策局長の千原でございます。
【千原局長】 千原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【浅井課長補佐】 産業連携・地域支援課長の井上でございます。
【井上課長】 井上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【浅井課長補佐】 地域支援室長の氏原でございます。
【氏原室長】 氏原です。よろしくお願いいたします。
【浅井課長補佐】 あとは我々事務局方が何名か参加しておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、まず配付資料の確認をさせていただきます。メールでお送りさせていただきましたけれども、資料1-1から参考資料3までありますので、もしなければ再度メールをお送りいたしますので、別途メール等で御連絡いただければと思います。お急ぎの場合は携帯でも連絡いただければ対応いたしますので、よろしくお願いします。
それでは、資料1-1を御覧ください。3月18日に開催されました総会において,本部会の設置が決定されました。本部会の委員は科学技術・学術審議会令第6条第2項において、「部会に属すべき委員,臨時委員及び専門委員は、会長が指名する」と規定されており、これを受けまして、濵口会長より資料1-2のように指名されております。

○委員の紹介。
○部会長は、科学技術・学術審議会令6条第3項の規定に基づき、委員の互選により須藤部会長が選任された。
○部会長代理は、科学技術・学術審議会令第6条第5項の規定に基づき、須藤部会長が栗原委員を指名した。
○科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会運営規則について、資料1-3に基づき事務局より説明後、原案の通り了承、決定された。

【須藤部会長】 本部会議事の公開についてですが、運営規則第5条に基づき、議事は原則公開とされております。従いまして、ただいまより公開とさせていただきたいと思いますので、配信の方を開始いたします。よろしくお願いします。
【浅井課長補佐】 操作手続いたしますので少々お待ちください。
【千原局長】 千原でございます。先生方、お待たせして大変恐縮でございます。今、公開のために接続を試みているんですが、ちょっと技術的なトラブルがあるような状況でございまして、いましばらくお待ちくださいませ。最初は事務局からの資料の御説明なので、場合によってはそちらを先に始めさせていただくかもしれません。お待たせして大変申し訳ございません。
【浅井課長補佐】 事務局です。操作手続でちょっと時間がかかっておりますので、先に議事の方を進めていただいて、途中でどこかのタイミングで配信できようかと思いますので、御挨拶等は、後ほど配信開始になったという連絡が来てからということでお願いできればと思います。
【須藤部会長】 はい。じゃ、議題2について、事務局の方から資料の説明を進めてください。
【千原局長】 承りました。恐縮でございます。では、事務局の方から資料の御説明をさせていただきます。
【氏原室長】 それでは、資料2-1の準備をお願いできますでしょうか。誠に恐縮ですが、画面上の資料の準備ができるまで、お手元の資料の方を御参照いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
【浅井課長補佐】
そうしましたら、産学官連携の最近の動向について説明させていただきます。まず、1枚めくっていただいて2ページ目ですけれども、産学連携の経過ということで、1995年の科学技術基本法が成立してから、科学技術基本計画第1期から第6期まで、大まかな流れを説明させていただいております。
その上で3ページ目のところで、産学連携関係の施策の経過というのを図示させていただいておりまして、近年、プロジェクト型研究開発のところは大くくり化ということで、今、共創の場の方に大くくり化をさせていただいております。
4ページ目のところ、地域科学技術イノベーション施策の変遷ということで、第2期クラスターのスタートのところから、現在、共創の場のところに至るまでのストーリーを図示させていただいております。
2ページめくっていただいて、我が国の社会環境ということで6ページ、経済への影響というところですけれども、COVID-19によりまして、日本の実質GDPの成長率はリーマンショックと同程度のマイナス成長ということで、先日、世界銀行が発表しておりますけれども、このマイナス4.7%というところが実際起きているという状況になります。
7ページ目のところ、これを契機として社会変革ということで、未知の感染症に対する様々な対策が求められているところでありまして、最先端の科学的知見を活用して、多くの人が制約の中で、科学に依存する生活という社会をどういうふうに過ごしていくのかというのが課題になっております。
一番下にありますけれども、社会というのはますます科学技術に依存しまして、その活用がその後の社会の格差を生むと考えられるという状況になります。
8ページ、次のページですけれども、新型コロナウイルスの関係で、全体として、それぞれの社会に対する産学連携環境を伴うものということで、社会像、価値観がそもそも変わっているというところ、2番で、それによって民間研究開発投資への影響も考えられる、また、後ほど説明しますけど、ベンチャー投資への影響もあり得ると。また研究ということでも、新型コロナウイルスの関係で、特に実証や臨床も含めて、社会的ないろんなところの調査研究等の影響も考えられます。また地域でもかなりの影響が出ておりますので、それらが大きく関わってきているという状況になります。
次のページ、9ページですけれども、リーマンショックのときのことを振り返りますと、日本のみ研究開発投資の回復が遅れている状況がありました。アメリカは二、三年で回復したんですけれども、日本のみ回復まで五、六年かかったという状況になっております。
次、10ページの方ですけれども、リーマンショックと同じような影響があると、民間からの共同研究の受入額というのも、新型コロナウイルスのところで影響が考えられるという状況になります。各大学さんの話を直近で伺っておりますと、大学によって、また分野によって、共同研究の取組方によっても、影響を受けているところ、またさほど受けていないところがあって、ここは分析ができておりませんが、少なからず影響があるという話を聞いております。
次のページ、11ページですけれども、ベンチャーの方の関係では、左側のところ、リーマンショックのときにベンチャー企業設立はかなり減少したんですけれども、じゃ、右側、ベンチャー投資の金額というのを考えますと、リーマンショックのときに下がったのと同じのが来るかどうかというところなんですけれども、直近の速報値ですと、前年度比で2割程度の減少が起こっている状況にありまして、これに伴って投資が停滞してベンチャー設立数が減少するか否か、将来のベンチャー創出の分水嶺(れい)となるような状況になっているというデータが出ております。
次のページに行きまして、このような新型コロナウイルスの関係で、その影響を踏まえた今後の対応方針ということで、この審議会の、前回、第10期の部会のときには、新たな経済社会づくりの推進ということで、1番のところ、また産学共同研究の促進、またオープンイノベーションの発展に向けた体制・環境整備ということで、このような方向性を打ち出して進めてきているという状況です。
次のページ、14ページをお願いします。既に画面の方でも表示されておりますが、14ページのところは、我が国の産学連携の状況と課題を図示したものでありまして、我が国の産学連携の進展、左側の方にありますけれども、共同研究の額や受入額というのは近年増加している状況ですが、真ん中のところにありますように、日米比較とかほかの国を比較すると、まだまだ少ないという状況にあります。
ただ一方、右側にありますように、「組織」対「組織」の連携ということが進んでおりまして、右下にあるように、大型の産学連携の先進事例も幾つか生まれてきているというのが現状にあります。
次、15ページをお願いします。大学発ベンチャーに関する状況、真ん中の図は先ほどお示ししましたけれども、左側、上場した大学発ベンチャーの時価総額ですが、新型コロナウイルスの前は2.5兆円ほどあったんですけれども、影響がありまして、今2兆円弱という状況になっております。とはいえ、東証マザーズにおける時価総額でも、大学発ベンチャーの影響というのは1割以上ありますので、かなりの影響を産業としては持っているという状況にあります。
一方で、真ん中の下の方にありますけれども、ユニコーンの企業数とかベンチャーの投資金額というのを各国と比較すると、日本はかなり少ない状況にありますので、ここの部分は課題があるというふうに考えられます。
次のページをお願いします。それでは詳細に日本とアメリカを比較すると、課題ということであれば、投資者ということで、ベンチャー・キャピタルやエンジェル投資家の部分、下の方にありますけれども、実際にベンチャーの設立、若しくは技術・ビジネスモデルの検証・高度化の支援のところで、日本はアメリカに比べると未成熟な状況にあるという現状となっております。
そんな中、政策の方向性を次のページから説明させていただいておりますけれども、18ページをめくっていただきまして、これが今年度4月から始まっている第6期の科学技術・イノベーション基本計画の概要になっておりまして、ここでいきますと、産学連携の部分と取り組む状況が出てきておりますけれども、全体の方向性として、国民の安全と安心を確保する持続可能な強靱(きょうじん)な社会を目指す、また一人一人が多様な幸せを実現できる社会という大きな方向性に向かって、社会変革と知・人への投資の循環を進めていくという形で、科学技術・イノベーションに向かって取り組んでいくという状況にあります。
19ページを開いていただければと思いますけれども、そもそも産学連携の関係でオープンイノベーションの本格化という形で、政府全体では、2025年までに企業から大学等への投資を3倍増することを目指すということで、先ほどの事例にもありましたけれども、「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進に取り組んでいる状況で、それに伴って20ページから22ページまで、ガイドラインのところを示しながら、我々は今取り組んでいるという状況です。
23ページの方に進んでいただきまして、一方でスタートアップの関係では、内閣府、文科省、経産省が中心となりまして、スタートアップ・エコシステム形成に向けて取り組んでいくという形で、その支援パッケージを昨年の夏に策定しております。スタートアップの創出、育成、世界とのつなぎということが大きな取組の柱になりますけれども、文部科学省としては一番左下にあるように、創出の部分、アントレプレナーシップ教育の推進と、創業期のギャップファンドの強化を注力してやっていくという形になっております。
24ページに行きまして、創出の支援体制というところに文科省は取り組んでいくところなんですけれども、大学発ベンチャーの創出支援体制、大学の方を見ますと、結構大学では整っているとは言い難(がた)い状況、またベンチャー投資も厳しいという状況もありますので、一つの大学でどうこうするものではない部分がたくさんあるということになります。
また次のページ、25ページにありますように、都市としてのスタートアップ・エコシステムというのを考えた場合に、世界では、都市を起点にエコシステムを形成することが主流になっているところで、特に東京はランキング的には15位なんですけれども、見ていただくと、接続性、要するにネットワークのところがスコアが極めて低いということがありますので、日本の中においてもスタートアップ・エコシステムを築いていくためには、接続性に注力して取り組んでいくことが必要というのが、世界的な状況から見た状況となります。
それを踏まえて、次のページ、26ページですけれども、スタートアップ・エコシステム拠点都市としては、大学・自治体・産業界のリソースを結集して、世界に伍(ご)するスタートアップの創出に取り組んでいく。これに向かって文科省としても後押しを進めていこうという形で推進しているのが現状になります。
具体的な予算事業については、その次のページからになりますけれども、28ページを見ていただければと思いますが、令和3年度の予算はこのようになっておりまして、大きな柱としては、先ほど申し上げました大学を中心としたスタートアップ・エコシステム形成の推進と、本格的な産学連携によるオープンイノベーションの推進、また地方創生に資するイノベーション・エコシステム形成の推進ということで、柱を三つ立てて今年度は取り組んでいる状況です。
個別具体的にざっくりと説明させていただきますと、29ページのところが、大学発ベンチャーの創出に向けた文科省の施策ということで、起業人材の育成から、起業、成長・発展に向けて取組をしているという大きな流れの図になっておりまして、具体は30ページ、31ページのところに、それぞれの事業の資料をつけさせていただいております。
32ページのところに、先ほど御説明した拠点都市の関係の支援ということで、令和2年度の補正予算で20億円程度の支援を行ったほか、令和3年度から4プラットフォームかける1億円程度ですけれども、アントレプレナーシップ教育やGAPファンド等の創業支援をしていきたいというふうに考えております。
33ページ以降、それぞれ事業のポンチ絵をつけておりますけど、34ページを御覧ください。34ページが、先ほど最初に、大くくり化をしているというふうに申し上げた共創の場形成支援というところのプログラムになりますけれども、知と人材が集積するエコシステムをつくっていくということがありまして、事業概要のところで左に三つのポイントを掲げさせていただいていますけれども、「人が変わる」、「大学が変わる」、「社会が変わる」をキーワードに、我々としては新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえて、SDGsに基づく未来のあるべき社会というビジョンを描いていただいて、それに伴ってバックキャストで研究開発を進めていくということを今回取り組んでいる状況になります。
右側のところに図がありますけれども、SDGsのポストコロナの社会像をちゃんと共有すること、そして企業等との共同研究をちゃんと推進すること、かつそれを自立的に運営するための仕組みと体制をつくっていただくというのを注力しながら、事業を推進しているところです。
以降、事業の資料をつけておりますけれども、時間が限られておりますので以上にさせていただければと思います。質問等については、最後の全体討論等のところでいただければと思います。私からの資料2-1の説明は以上になります。
【須藤部会長】 ありがとうございました。公開はまだつながりませんか。
【浅井課長補佐】 今確認をさせていただきます。しばらくお待ちください。
【事務局】 申し訳ございません、事務局ですけれども、ちょっとまだ公開の方は接続ができておりません。申し訳ございません。
【須藤部会長】 それでは先に進みましょうか。氏原室長の方からの資料2-2の説明を先に進めてよろしいですか。
【浅井課長補佐】 はい。よろしくお願いいたします。
【須藤部会長】 それではお願いします。
【氏原室長】 それでは私の方から、文部科学省内外の地域の中核となる大学の振興について、どういった議論がなされているか、御紹介をさせていただきたいと思います。それでは資料の共有をお願いいたします。
では1枚めくっていただけますでしょうか。まず1ページ目、その振り返りとして、大学の産出する論文の面から見た日本の大学の状況について確認をさせていただきたいと考えております。こちら、左のグラフは、NISTEPが日英独にある大学の論文数の分布について比較したものになります。こちらを御覧いただくと分かりますように、上位の大学については日本の大学の方が論文が多い、又は同程度の研究規模というものを有しておりますが、真ん中、青いところが突出しているところからも分かりますように、中間層の大学については、ドイツ、英国とも日本の大学より研究活動が盛んというような状況が見て取れます。
また右の表の方、こちらは何をお示ししているかと申し上げますと、研究の8分野につきまして、その大学の全論文数の中にどれだけトップ10%の補正論文数、質の高い論文がどれだけの割合を占めているかというものになります。これが一定以上の値を取っているということは、質の高い研究が行われている大学というものの一つの指標になるものです。こちらを御覧いただければ分かりますように、東京大学、京都大学と同じようなクオリティーの研究が行われている大学というものが、第3グループ、第4グループといった、規模の小さい大学の中にもあるのが伺えるかと思います。
次のページをお願いいたします。こういった論文数の分布等から見た日本の特徴につきまして、一つは上位に続く層の大学、10位から50位程度の論文数が両国と比べて非常に少ないという状況が見て取れます。また、それらの中には特定分野において個性、研究における強みを持つ大学というものが多数存在しているところも伺えるかと思います。これから日本の研究力の向上について検討する際には、こういった日本の大学の特徴を踏まえた施策というものが必要になるかと考えております。
また、層の厚みといった観点から申し上げますと、こういった日本の論文数の規模が中小の大学の中で特定の分野で世界と競える強みを持つ大学が多数存在することから、各大学の個性を伸ばすことで、結果的に日本の研究の多様性、上位に続く大学の層の厚みが形成されるような施策の展開というものが必要という状況が伺えます。
では、次のページをお願いいたします。そういった現状認識の下、省内で地方大学研究振興タスクフォースをつくりまして、これまで昨年度から検討を進めてまいりました。こちらは部局の枠を超えまして、科学技術・学術政策局、また研究振興局、教育部局からは高等教育局、総合教育政策局、又は文教施設企画・防災部といった大学の施設を見ているところも交えた形で、一体となって検討を進めております。こちらは当課の井上課長が筆頭となって検討を進めているところでございます。
こちらの検討の目的といたしましては、一つ大学ファンドが創設されたということで、国内のトップ研究大学を世界に伍する研究大学の水準に引き上げていくための道筋は、一定程度つき始めているというところかと思います。
しかしながら、日本全体が欧米や中国と伍していくために研究開発力を備えていくためには、こういったトップ研究大学のみならず、それ以外の大学の研究開発力を強化していくことが必要という認識に立っています。そういったトップ層に続く大学が、その規模や機能、立地に応じて期待される役割は何なのかということを明確にしながら、そのために必要な施策の在り方を示していくことをタスクフォースの目的にしております。
次のページをお願いいたします。これまで政府全体の中で、地方大学振興に係る政策文書については、いろいろな文書の中で位置づけが示されております。文部科学省では中教審の2040年に向けた高等教育のグランドデザインが出されておりますし、また内閣の方では、経済財政運営と改革の基本方針、まち・ひと・しごと創生基本方針といったような様々な政策文書が出ております。こういった中で大学について触れられておりますのが、個々の大学を取り巻く状況を踏まえながら、魅力的な特色を持つ大学づくりを目指すべきという方向性が大きく打ち出されております。
しかしながら省内を振り返りますと、こういった各大学が魅力的な特色を持つ仕組みの整備、状況というものに対して、各省庁、また省内を見ても、各局課がそれぞれの政策意図からばらばらと政策を実施しているという状況にございます。また大学の方を振り返ってみれば、なかなか地方大学の特色が出し切れている状況にはないといったところかと思います。
次のページをお願いいたします。そういった状況の中、トップ研究大学に続く層の大学、これをどのように振興すべきかというところについて、これまでのタスクフォースでの議論について御紹介させていただきます。これらの議論の中で、各大学を取り巻く状況が様々であって、それぞれの大学の状況を踏まえながら、その特徴を一層強くするという方向に促すことが必要ではないかということを議論させていただいております。
例えば研究の分野で言えば、特定の研究分野で国際的に優れた研究力を有する大学においては、その分野を更に伸ばしていただくといった方向性が考えられるかと思います。例えば長崎大学であれば、熱帯感染症の研究に強みを持っておりますので、そういったところを伸ばしていただいて、国際的に優れた研究というものを更に一層輩出していただくということがあるかと思います。
また、もう一つの方向性として、産学連携、イノベーションという観点からは、地方自治体や産業界とともに、地域社会がどのような社会を目指していくのかというあるべき姿に基づいて、地域の課題の解決や地域経済の発展に貢献するといった大学の在り方もあるかと思います。そういったことを目指す大学については、その方向性を更に加速していくという方針があり得るかと思います。
ここでは一つの例といたしまして、例えば三重大学が県内にサテライト地域連携拠点を複数設置いたしまして、地域における課題解決、産業振興といったハブの機能を果たしているといったような取組が好事例として挙げられるかと思います。ここでは、産学連携の共同研究を通じてイノベーション・エコシステムを形成するといったこと、又は地方で活躍する人材輩出を志向するような教育・人材育成といったものが考えられるかと思います。
こういったものを通じまして、それぞれの特色・方向性というものを評価いたしまして、大学が自らその特色・方向性を伸ばしていくための仕掛けが必要ではないかということで検討を進めてございます。
こちらは、政府全体の議論の中でもこういった議論を踏まえまして、昨月、6月11日の統合イノベーション戦略推進会議で、内閣府の科学技術政策担当大臣と文部科学大臣からプレゼンテーションをさせていただきました。こちらはその際の資料をつけさせていただいております。この中では、知と人材の集積拠点である多様な大学の力を最大限活用していくと。
すみません。6ページ目をお願いいたします。こちらがその統合イノベーション戦略推進会議で文部科学大臣の方から御説明させていただいた資料になります。ここではまず目的といたしまして、知と人材の集積拠点である多様な大学の力を最大限活用していくことが必要だろうということを目的にしてございます。そのためには研究大学ということを実現していくだけではなく、車の両輪といたしまして、地域振興に資するような強みや特色を持った大学の力を最大限発展させていく方向性が重要ではないかということを考えております。
そして文部科学省では中教審での答申等も踏まえながら、各大学が自らの強み・特色を意識して、それらを発揮して発展することを、各種施策を連動させ、一体となって促進していくというところがあり得るかというふうに考えております。現状ではなかなか特色ある地域の大学は限定的でございますので、地域の中核となるような大学が、その力を最大限発展できるような戦略的運営を実現するための取組を後押しするような振興パッケージというものが必要というふうに考えてございます。
次のページにそのイメージを示させていただいております。こうした大学の特色の発揮に向けて改革を進める大学について、幾つか課題があろうかと考えております。
一つは現在課題というものが非常に複雑になっているということから、単独の大学ではなかなか社会ニーズの変化には対応できないといった課題がございます。また、大学がそうした戦略的取組を進めていこうというときに、それを実現するための推進力やマネジメント力というものが足りないといった状況もあろうかと思います。また政府の方を見れば、政策目的ごとにそれぞれのメニューで細切れに支援をしていて、なかなか大学の戦略的取組全体をサポートする仕組みがないといった状況がございます。
そういったところを踏まえまして、パッケージということで対応していくことを検討してございます。単独の大学の資源では社会ニーズの変化に対応できないという点に関しましては、例えば地域連携プラットフォーム等を活用いたしまして、複数大学が連携して対応する取組を支援できるようにしていくといったことが考えられております。
また、推進力・マネジメント力不足という点に関しましては、経営層やURA等のマネジメント人材の育成・確保、また政府の方に戦略的運営に伴走支援する形で、大学の取組を支援していくという体制の構築、そして政策ごとに細切れの支援になっているということにつきましては、大学の改革を支援するような個別事業を大くくり化いたしまして、メニュー化することで、取組全体をサポートすることができるような仕組みづくりというものを考えていきたいと考えております。
こちらについては、次のページを御参照いただければと思います。こちらは統合イノベーション戦略推進会議の中で、加藤官房長官の発言についてちょっと紹介をさせていただいております。こちらは、年度内に地域の中核となる大学の持つ可能性を最大限引き出す地域の中核となる大学の振興パッケージを策定してくださいという指示を頂いております。こちらは年度内にこのタスクフォースの議論を進めながら、令和4年度の予算要求の中で、一部前倒しして進めていくということを検討してございます。
最近の大学振興についての状況は以上でございます。
【浅井課長補佐】 部会長、浅井です。配信の方なんですけれども、ちょっと技術的な設定の不備がありまして、大変申し訳ないんですけれども、皆様に一旦退席いただいて再度入っていただくという状況が必要になってしまいました。
今後の流れなんですけれども、一旦退席していただきます。皆さん、こちらで最終的には全員一度強制的に退席させていただいて、5分もかからないと思いますけれども、同じアドレスで入ってくださいということでメールを送らせていただきます。それで入っていただけると再開できるということになりますので、本当に大変申し訳ないんですけれども御協力をお願いいたします。
すみません、それでは一旦皆様退席いただきまして、その後メールで御連絡します。それでメール後に、質疑や意見を自己紹介も含めてしていただくという形になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは一旦退席をお願いいたします。
(会議中断)
【井上課長】 大変申し訳ございません。そうしましたら、須藤先生、すみません。先に進めていただければと思いますけれども、よろしいでございましょうか。
【須藤部会長】 各委員の先生方の自己紹介と質問に入ってもよろしいんですか。
【井上課長】 はい。よろしくお願い申し上げます。オンラインのオンタイムで間に合わなかった部分につきましては、議事録で公開させていただくということで、本日対応させていただければと思います。本当に申し訳ございません。
【須藤部会長】 分かりました。それでは、改めて、先ほど部会長に選任されました須藤でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、先ほどの2-1、2-2の説明に対する各委員の先生方の御意見、御指摘等を頂きたいと思います。第1回ですので、申し訳ありません、順番にこちらから指名させていただきますので、簡単な自己紹介も含めて、その後、御意見、御指摘等をお願いいたします。あと残り時間50分ですので。今日の出席は全員ですか。
【浅井課長補佐】 全員参加いただいております。
【須藤部会長】 それでは20人ですので、お一人、2分か3分程度でお願いいたします。途中で何か質問事項等ありましたら、文科省の事務局の方で答えられる範囲で答えていただきたいと思います。
それでは、栗原さん、部会長代理をお願いしていますけれども、まずお願いいたします。
【栗原部会長代理】 栗原です。前期もこの部会に参加させていただきましたけれども、引き続き参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
私自体のバックグラウンドは、長年金融におりまして、その分野を専門としていますが、現在、経済同友会の副代表幹事等で、産業とか経済界という視点で、産学連携、企業のR&D等による成果を出していくという観点で、参加をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
そこで、これまでの説明に対してのコメントと質問を簡単にさせていただきますが、この部会では地域振興の視点で、新しい時代、新しい課題に対する施策が必要ではないかと思います。
その一方で、それらの実現手法として、大学による出資ができたり、その手前の戦略としての科学技術基本法ですとかイノベーション活性化法が改正されたりしております。戦略は新しくなり、仕組みづくりもでき始めました。そこで、これからは新しい課題に対応した実践、実行、運用の姿を見せることが重要ではないかと思っております。これがコメントです。
質問に関しては、コメントと重なるのですが、2-1の資料で、一大学では難しい、都市でやっていくことが重要だというお話がありまして、私も本当にそう思います。その観点で、2-1の32ページで、スタートアップ・エコシステム拠点都市とか推進拠点都市という制度が、これは内閣府の制度かもしれないんですが、始まりました。
こういう拠点都市の指定はいいんですけれども、どういったスタートアップが生まれているのか、あるいは今までと違う動き、新しい価値が生み出されつつあるのかという成果を、是非出して見せていくことをしていただきたいと思います。これが一つ目です。
それから二つ目が、2-2の方の資料で、トップ大学は比較的世界に伍しているのですが、それ以外の大学の研究開発力アップが重要であるとの説明がありました。そうかどうかは、今の段階ではなかなか判断しにくいですけれども、ただいろいろな大学の力をアップしていくためには、こういった論文数等での評価ではなく、評価軸を変えるべきだと思っています。
かつその変えた評価軸で、その大学で、学長や、それから今ガバナンス改革で経営会議もありますけれども、こういった場で計画がどう大学としてオーソライズされ、モニタリングされ、かつそれに対してインセンティブが働くような仕組みになっているかが重要です。目標だけ掲げるのではなく、パッケージで進めていかないと、各大学で進まないのではないかと思いますので、その辺を考えて進めていく必要があると思います。よろしくお願いいたします。
【須藤部会長】 ありがとうございました。今の最後の二つは質問ですか。
【栗原部会長代理】 はい。今すぐ答えていただかなくてもいいんですけれども、コメント兼質問で、もしどなたかお答えいただける方がいらっしゃったらお願いします。
【須藤部会長】 いかがでしょう、文部科学省の方で、手短に。
【浅井課長補佐】 すみません、文科省産地課の浅井です。2-1の方ですけれども、御指摘のように拠点都市のところで、一大学ではなかなか難しいところを拠点都市としてつくっていく仕組みを文科省として構築していこうというのが、P32のところになりますので、御指摘のように都市として何が出てきて、成果をどう見せていくのかというところは、これからしっかり進めていきたいと思いますので、御指導等よろしくお願いいたします。
【氏原室長】 ありがとうございます。それでは、ちょっと2-2の方に関して出ました質問についても、簡単にお答えさせていただきたいと思います。御指摘いただいたように、各大学いろいろな活動について、その評価がなされることが必要なのかなというふうに思っております。例えば研究だけではなく、産学連携の活動においても、ではどういうことを取り組んでいくのかということをきちんと評価する、また人材育成についても、教育という観点で評価できることが望ましいのかなというふうに思っております。
大学がそういった研究や産学連携、また人材育成というものを通じて、社会にどのような地位を占めていくのかということを、きちんとビジョンを書いていただいて、それを総合的に後押しできるような仕組みというものをつくり上げていきたいというふうに考えてございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは、次に梶原委員、お願いします。
【梶原委員】 梶原でございます。私は産業界からの視点でコメントさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
私からの質問、コメントでございますけれども、先ほどのコメントと同じようなところがございますが、資料2-1につきましては、例えば23ページにあるような支援パッケージの話ですとか、スタートアップに対して集中的に支援するという形で動いているわけでございますけれども、あるいは19ページのように、産学連携についてのガイドラインの追補版というのが出されていますので、そういった施策がどのように今動いているのかだとか、どういった効果が出つつあるのか、そういうところも是非共有いただければと思います。うまくいっているのか、まだ足りない部分は何なのかと、直近の施策の効果をよく見ていきたいと思います。
それから、2-1のところで御説明がありましたけれども、コロナによって産学連携にいろいろ影響が出ています。大学によって、分野によってという説明がありましたが、コロナの影響で産業構造も変わってくるところがあり、どの分野に投資していくのかが変化したり、カーボンニュートラルということで、世の中的に環境に対する取組の姿勢が大きく変わってきたりしていますので、まとめてこういう傾向ですよというよりも、セグメントや分野ごとに、どんな動きになっているのかというところをしっかり見たいと思います。
あとは、一大学ではなかなか難しいという点は正にそのとおりだと思いますので、共通でできるよう、一大学ではなく複数の大学で、拠点という形になるかもしれませんけれども、URAの配置や、産学連携に対する取組につきましても、連携して推進できるような、取組がされていくことが望ましいと思います。
次に、資料2-2の中核大学についてですが、御説明の中で、特徴を生かしていくという話や、新陳代謝をするという表現がございました。特徴を生かすということは、企業で言うと、集中と選択とか、リソースにメリハリをつけるということになるわけですけれども、大学において、ある分野をリソースダウンできるのかというところが大きな課題だと思います。特徴を生かすために新陳代謝を促すというところで、そうした取組を積極的に評価する、特徴を評価するというのであれば、新陳代謝に対する動き方、そのものに対しても評価をしていく必要があると考えます。現状の評価と、取り組みを行った後にどうなってくるかという評価の両方を合わせて進めないと難しいのではないかと思います。
最後に、大学ファンド創設の検討がされていますが、逆に、トップ大学ではないと分類される大学に対して、例えば運営費交付金がどのようになっていくのかということも、少し長い目で見た議論が必要ではないかと考えます。ばらばらの施策をパッケージ化するということももちろん重要で、その方が政策的にも効果的ですし、大学にとっても非常に有用だと思いますけれども、一方で運営費交付金とのバランスという話が、大学ファンドとの関係の中で先々整理されていくべきではないかと思いました。
以上でございます。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、次は、荒金委員、お願いいたします。
【荒金委員】 初めまして、荒金と申します。今回初めて臨時委員ということで加えさせていただいております。私も産業界からの立場ということで参加させていただいていると思っているんですが、バックグラウンドといたしましては、化粧品メーカーの研究部門に長く勤めておりまして、その後、開発とか経営とか、そういう部門でキャリアを積んでまいりました。その研究をするプロセスの中で、いろんな大学と共同研究させていただいたりしたという経験もありますので、何かお役に立てればなというふうに思っております。
今日は、とはいえ初めて文科省の全体的な施策を知ることができまして、それぞれパーツ、パーツで存じ上げたこともあったんですけれども、あっ、こういうつながりがあったんだなというのを改めて感じているところです。昨年からは、共創の場形成支援プログラムのアドバイザーとして関わらせていただいております。
いきなり質問ということはないんですけれども、今日、感想ということでお話しさせていただければと思うんですが、大変すばらしい施策がどういう形でその成果につながっているかということは、うまくいっている事例ということで幾つかカテゴリーごとに説明いただいて、よく分かったんですけれども、多分この壮大なプログラムに全くついていけていない、特に地方の大学等も多いんではないかなという感じもしておりまして、そういうところの、どうしてこのプログラムに参加できないのかとか、ハードルとなっているところはどういうところなのかというようなところもしっかりフォローしていくことが、全体の底上げになるのかなというふうに思いました。
それと、先ほどの梶原さんの御質問とも似ているんですけれども、地方大学は役割がある中で、個性を出せ、特徴を出せというと、それはある分野なり技術に特化せざるを得なくなって、果たしてそういうことが大学でできるのかなとか、そういうような印象も持ちましたので、また後ほど御説明いただくような機会があればいいなと思います。
以上です。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
すみません、ちょっとこのままいくと、3時を大幅に超えそうなので。
【荒金委員】 とても終わらないと思うんです。
【須藤部会長】 申し訳ないんですけれども、後の方は1分程度でお願いいたします。
江戸川委員、お願いします。
【江戸川委員】 公認会計士の江戸川でございます。昨年度から引き続きよろしくお願いいたします。
私は18年ぐらい、産学連携であるとか大学発ベンチャーの支援に従事しておりまして、前職はEY新日本監査法人というところにおりましたが、2年前から独立開業して、今、ベンチャー支援専門の会計事務所を運営しております。
今日は質問する時間はないと思いますので、コメントだけ3点、手短にお話をさせていただきます。まず一つ目、資料2-1の産学連携関連施策についてですけれども、ベンチャーエコシステム関連施策として行われているSTARTやSCOREといったGAPファンド、こちらについては非常に施策としてうまくいっていると思います。結果的に大学発ベンチャーの創出というのは質の高い形できちんと出てきているということで、ここは評価できると思います。一方で、立ち上がってきたベンチャーの次の課題というのは、リスクマネーの供給を受けられるかどうかとか、あとは事業会社との連携を進められるかどうか、こういうところにありますので、やはりここを進めていくために、ベンチャーキャピタルであるとか金融機関等との連携が大事になってくるということなんですが、昨今、地域のエコシステムの話がクローズアップされてきていることもあって、逆にこのVCとか金融機関等の支援者についても地域にこだわっている施策というのが多いんじゃないかということは懸念しています。この辺りは適切な先につなぐ力が大事なので、質の高いマッチングができるようなVCや金融機関等の支援者がきちんとサポートすることが、ベンチャーファーストで考えることが重要だと思いますので、地域の支援者と、全国区の支援者を両方バランスよくうまく活用するような施策の進め方をしていただければというふうに思います。
次に、先ほど産学連携ガイドラインの追補版の話も出ましたけれども、OI機構の頑張りもありまして、「組織」対「組織」の連携というのはかなり進んできているわけですが、やはり知の価値付け、対価の取り方というところについては、従来型の補助金的な取り方というのがまだまだ主流になっているので、対価の取り方の多様性というんですかね、そういったところは、実績としていい事例が出てくるといいなというふうに思っております。
最後に、資料2-2の中で、地域の中核となる大学のお話がありましたけれども、先ほどのベンチャーエコシステムの話とはまた別で、地域の課題解決のために大学が動くという観点は非常に面白いなというふうに思いましたので、そういうところで是非特徴ある大学の取り組みが出てくると面白いなということで、着目したいと思います。
以上です。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
続きまして、北岡委員、お願いします。
【北岡委員】 大阪大学の北岡です。私の方は電機メーカーで15年ほど勤めていまして、その後、大学に戻って研究をやっていたんですけれども、途中3年半ほど経産省に出向したりして、今話題に上がっております官民ファンドに当初から関与させていただいているということで、今、全学的な産学連携の支援をさせていただいております。
大学発ベンチャーとか産学連携において、企業の役割というのは当然一番重要なわけなんですけれども、普通、企業であれば特許ライセンスという考え方だと思うんですけれども、我々はやはり技術ライセンスという考え方で、特許が成立する前から、ノウハウも含めて企業様にライセンスしていくという意味で、創薬メーカーさんとか、最近の新しい異分野の連携を考えられている企業さんとはうまくいきつつあるなという中で、やはり既存の大企業さんというのは特許ライセンスでないとなかなかお付き合いいただけないというところもあって、基礎研究にとどまっている場合が多いなというふうに感じています。
そういった意味で、SBIRとか、いろいろ制度を内閣府さん、文科省さんに支援いただいている中で、やはりまだ、研究開発税制も含めて、そのお金自体が本気でベンチャーとか産学連携、実用化を目指すところにお金が回っていないなというのが正直なところで、そこに回すことができればリスクマネーの還元にもなるのかなというところで、制度はできたんだけど、実態的には人、物、金がまだ回り切っていないというのが我々今感じているところですので、そういったところを本当に成果という、見える化の観点で、人、物、金がどう回るかということについてどうすればいいかということについて、是非こういうところで御議論いただければなというふうに考えているところでございます。
以上でございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは、久世委員、お願いします。
【久世委員】 昨年6月までIBMで30年以上、研究開発を中心に技術戦略や技術経営に携わってきました。昨年7月より、旭化成に異動し、デジタル変革を担当しています。また、先ほども御紹介がありました共創の場形成支援プログラムの共創分野でプログラム・オフィサー(PO)を担当しています。荒金委員にも共創分野のアドバイザーとして活動いただいています。
共創の場プログラムには、10年間の本格型と2年間の育成型の二つのコースがあります。初年度は、それぞれ、11件と67件の応募があり、書類審査と面接審査を通して、1件と12件を採択しました。現在は、POとアドバイザーの全員で、各拠点に対して、アドバイス、メンタリング、ビジョン策定などの支援活動を積極的に展開しています。
共創の場支援形成プログラムは、社会課題から出発して、ビジョンを作ります。そのビジョンからバックキャストして、ターゲットを設定し、ターゲットから研究開発課題を決めることになっています。初年度は、これに加えて、地域特性を活用することになっていましたが、これに関しましては、今年度は、地域共創分野が新設され、そちらで、より強化されることになりました。各拠点は、研究や技術の強みを最大限に活用するとともに、不足する技術やソリューションは、他大学、研究機関、企業などと、共創することにより、世界水準の拠点を実現します。拠点確立に向けてのプロセスは単純ではなく、支援側のPO・アドバイザーチームも、前身のCOIプログラムの知見も活用し、新しい形の支援体制や仕組みを試行錯誤しながら検討及び実践しています。本日は、時間の制限もありますので、重要だと考えている課題から、幾つか御紹介します。
まずは、強力な拠点形成のためには、人材が重要になります。ところが、若い世代が、メンバーとして参画できていなかったり、彼らが自由闊達(じゆうかったつ)に活動できる環境がなかったりするケースが多くみられます。ベンチャーなどでは、若い世代が活躍している状況もありますが、日本の場合、大学や企業においては、若い世代が自由闊達に活躍している場面は少ないように思います。共創の場形成支援プログラムでも、拠点リーダーが学長であるケースもあります。大学としてのコミットメントという意味では評価できますが、その拠点での若手世代がリーダーシップを発揮できる体制や環境があるかの方が、より重要だと考えます。このプログラムは、10年から20年のスパンで、大きな社会課題を解決することを目指します。その時代をリードしている世代が、初期の段階から活躍し、人や組織のネットワークをダイナミックに構築し、プロジェクトを推進していることが、あるべき姿のひとつです。産学連携においても、若い世代の人たちに期待しています。我々世代に比べて、彼らは、より柔軟で、組織や企業の壁を超えて連携できる大きな可能性を持っています。彼らが、より活躍できるための仕組み、仕掛け、環境づくりが重要だと考えます。
次に、産学連携を加速するためには、企業や産業界側も大きく変わる必要があります。日本の企業の場合、大学やベンチャーに対する中長期的な投資や連携が、海外に比べて、必ずしもうまくできていません。共創の場プログラムも予算の観点からは、十分ではありません。世界水準の強力な拠点を10年間で確立するためには、プログラムで提供される拠点予算の数倍から数十倍の予算、人、モノの投資が必須です。そこに関しては、産業界の責任でもあり、大きなチャンスでもあります。プロジェクトの構想段階から、ビジョンやターゲットのバックキャストに参画し、企業の中長期戦略とも連携させて、企業としてコミットするというトップや経営陣の覚悟が必要です。それに近いケースもありますが、大学と1企業で、かなりクローズに運営されており、大きな連携をオープンに推進することはできていません。しかし、例えば、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど大きな社会課題や地域課題は、今や、企業にとっても大きな経営課題のひとつで、それを1企業で解決することは不可能です。正に、新しい形態の産官学地域連携が必要な時代だと考えます。
他にも、重要な課題はありますが、今後の会議で議論させていただければと思います。今後とも是非よろしくお願いいたします。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは続きまして、ベジタリア株式会社の小池委員、お願いします。
【小池(聡)委員】 小池でございます。初めての方も多いと思いますが、よろしくお願いいたします。
私のバックグラウンドとしては、ITと投資分野が長く、90年代はずっとシリコンバレーを中心に、アメリカでベンチャーキャピタリストをやっておりました。それから日本に戻って、日本、アジアで、やはりIT系が中心ですけれども、ベンチャー投資を行っておりました。特にシードアーリーステージを中心にしたインキュベーション型のVCということで、ハンズオンで中に入ってゼロイチ(0から1)をつくるということを長くやりました。自分自身でもベンチャー企業を創業して、東証マザーズに上場し、12年前までそこの社長をやっておりました。その後、健康・食・農業・環境などの分野の社会課題に対してできることはないかということで、私自身も実は大学発ベンチャーとして今の会社を創業しています。
私の文部科学省学との関わりとしては、先ほど御紹介もありましたCOIで、三つビジョンがありますけれども、その中の一つの責任者、ビジョナリーリーダーをやらせていただいております。そのほかに、地域イノベーション・エコシステム形成プログラムのアドバイザー、卓越大学院プログラムの委員、それから、次世代地域産業人材育成のための専門高校を活用したマイスター・ハイスクール事業の評価会議の委員もやらせていただいています。あとは、経済産業省の未来投資促進法に基づく、地域未来スペシャルアドバイザーというのを仰せつかっており、特に地域自治体、大学、産業界、それから住民を中心とした地域エコシステムの形成、イノベーションの創出による地域の活性化の活動を数多くやらせていただいております。
先ほど地方大学の話がありましたけれども、私がCOIの方の担当しておりますところでも、例えば広島大学は、感性研究の分野では世界でもトップクラスで、国際的な感性イノベーション拠点の創出を自治体、企業と連携して行っています。あるいは金沢大学は、世界に数台しかない幼児向けの脳磁計を使った自閉症スペクトラム障害児の脳機能の研究ではやはり世界トップレベルの研究を行っています。地方大学は国際的に競争力のある尖(とが)ったものを特徴づけて、より地域と一緒にどう尖らせられるかということが鍵だと思っています。
あと、先ほど評価指標として論文数というところがありましたが、論文の数だけでは社会実装はできません。例えば私がCOIで担当しています東工大ではものづくりのテーマも多く、実際その研究成果を物として出していかなければいけないということで、論文を書く必要のない研究開発人材の確保も一つのテーマにしています。ハイブリッドでやっていくことによって具体的な社会実装の成果も生まれています。あとは、久世さんの方からもお話ありましたけれども、私もキーはやっぱり若手の活用だというふうに、COI等の活動を通じて強く感じております。そういうような若手を活用した横串を通す活動、あるいは若手が自分事でどう参画できるかというようなことも、この中でいろいろ御議論させていただければとに考えております。
以上でございます。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは、マテリアル・コンセプトの小池さん、お願いします。
【小池(美)委員】 東北大学金属材料分野の技術シーズを事業化しているマテリアル・コンセプトの小池と申します。私たちは2013年に起業しました。そのときに文科省のSTARTの事業を活用させていただきました。非常にいいプログラムで、この研究費でPoCを実施することができました。START事業には、事業プロモーターという方がいらっしゃいまして、研究者や大学の先生たちの事業化に対するマインドチェンジができたという点でも大きなメリットがありましたので、START事業を更に充実していただきたいと思っております。
また、2013年の起業当時、東北ではエコシステムができておりませんでした。そのときと比較するとよい状況になってはおりますが、現在も都市部との格差を感じております。エコシステムに関わる弊社の機能は、今でも全て都心部の方にお願いしているという状況です。地方、地域に対してのエコシステムの充実。分野、フェーズ等様々な違いがありますので、大きな仕組みの中で、きめ細かな仕組みづくりが必要です。そのような施策ができればいいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
次は佐々木委員、お願いします。
【佐々木委員】 九大の佐々木です。大学では脱炭素の目玉になってしまった水素エネルギーの研究をバリバリしながら、副学長として産学官連携とエネルギー研究教育機構を担当しております。この産地部会は数年来参加させていただき、研究現場の声、そして地方の声を発言させていただいております。またよろしくお願いいたします。
私からは2点、手短にお話しさせていただきます。一つは、文科省の長年の産学連携に関する取組を改めて確認させていただきまして、本当に心より感謝申し上げたいと思います。他方、今、研究の、大学の現場は、就職が非常に良くなって、売手市場になっておりまして、イノベーション拠点ができても活躍する若手がいないという状況がかなり深刻になってきておりますので、産学連携の施策の中で是非、若い研究者が安定したポストを獲得できるような、やっぱり人というのをポイントに政策を考えていただきたいのが1点目です。
2点目は、後半の説明の中で、地域の中核となる大学の振興、これを御検討いただきまして、本当にありがとうございます。他方、資料を見ると、やはり、東京に対する地方の大学とか、あと世界と伍する研究大学に対してトップ大学でない大学という、何となく分けられてしまって、そうすると、地方にある九大とか北大とかはちょっと、いつも踏み絵を踏まされるという状況でございます。なので、地方大学という言葉を使うよりは、是非、地域中核大学という表現にしていただけると有り難いと思いますし、やはり、地域に根差して世界と伍する大学というのが、例えば旧7帝大の東大、京大以外のところは当然当てはまりますし、広大を始め、頑張っているところもありますので、地域中核大学という位置付けで、是非御議論いただければ有り難いなと感じております。
私からは以上です。
【須藤部会長】 ありがとうございました。文科省の方も聞いていると思いますので。
それでは次に、佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】 お疲れさまです。iSGSインベストメントワークスという独立系のベンチャーキャピタルのパートナーをしております佐藤真希子と申します。よろしくお願いいたします。
私の方は、サイバーエージェントという会社で9年、投資を行った後に、2016年に今のiSGSを立ち上げまして、独立系のベンチャーキャピタルにおける女性のパートナーというところでいくと、私が最初に独立したのかなという立場で、こういったところに参加させていただいております。ほかには、先ほど説明にありましたけれども、EDGE-NEXTの推進委員ということで、これもやらせていただき、あとJ-Startupの推薦委員などもやらせていただいております。
手短に私の方から1点、先ほどから結構話題に上がっています論文数という評価軸についてなんですけれども、やはり我々、ビジネス界に対して研究をどういうふうに活用していって、社会に革新的なイノベーションを起こしていくのかといったところがすごく大事だと思っていますので、論文数ではない指標というお話もありましたけれども、正に技術を活用して世の中に何を実現していくのか、そっちの方を支援していきたいなと、そちらの方を大切な指標としていきたいなというふうに思っております。
あと、ベンチャーキャピタルのお金に関しましても、コロナにおいて2割ぐらい減というふうに書かれておりましたけれども、感覚的にはそんなに、リーマンショックのときのような変化というのは、減少というのはなかったなというふうに感じています。一方で、やっぱり足りないのが技術評価のできるベンチャーキャピタル、投資家側の知識不足というところはまだまだありまして、そういったところが変わってくると、より研究者、産学連携のベンチャー企業に対する投資というのが進んでくるのかなというふうに感じております。
以上になります。ありがとうございました。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは次に、高木委員、お願いします。
【高木委員】 高木でございます。私は、事業会社、電機メーカーで10年ほど、オープンイノベーションを所掌しておりました。その間、経団連の委員も拝命しており、資料の中にもありましたが、「産学官連携による共同研究の強化に向けて」という提言の審議にも参画させていただきました。また、文部科学省、経済産業省が作成しました「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」の中でも、大学の情報管理、秘密情報管理の部分につきまして、策定に際しいろいろ意見を述べさせていただいております。この両者は2016年ですから、5年前になりますが、その後、文部科学省の御尽力もあって、産学連携は大分進んできたのではないかと思います。
1点コメントさせていただきますが、資料2-1の3ページに、体制整備・システム改革が施策の3番目の項目にあります。これは従来の研究のための資金援助ではなくて、大学改革のための取組です。もう一つの特徴は、採択重視から運用重視ということで、採択したら終わりではなく、採択後もハンズオン支援でいろいろアドバイスをするということをやっています。私もこのオープンイノベーション機構の整備の委員をさせていただいていますが、手間はかかりますが、大学改革としては非常に大事な取組だと思っています。
大学とコミュニケーションしていると、うまくいくところ、それから苦労されているところがだんだん見えてきます。このような点についてPDCAサイクルを回して政策にフィードバックしていくことが大事ではないかと思います。エビデンスベースのポリシーメーキングということにもなると思います。是非引き続き、文部科学省でも、この課題の抽出ということをお願いしたいと思います。さらに、大学改革ですので、高等教育局との連携も是非お願いしたいと思います。
私からは以上です。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
すみません、あと残り10分で、もしかしたらちょっとオーバーしそうなので、まだ発言されていない委員の先生で、どうしても3時以降、抜けなければいけない方いらっしゃいますか。いましたら先に御発言してもらおうと思うんですけれども、よろしいでしょうか。――はい。それでは順番どおりいきたいと思います。
それでは、高橋委員、お願いします。
【高橋委員】 キャンパスクリエイトの高橋と申します。今回、このような委員を拝命したのは初めての機会で、大変興味深く御説明、聞かせていただきました。私は、電気通信大学のTLOとして設立した会社で、産学連携に携わって17年目になります。特徴としては、電気通信大学だけではなくて、広域的に活動しておりまして、日本全国の大学、の先生方と企業との共同研究のアレンジですとか、大学発ベンチャーの御支援なんかをしながら、産学連携の推進で活動している会社です。
今回の資料を拝見させていただいて、例えば私は、共創の場であるとかSCOREといった拠点づくりの事業を横からサポートさせていただく機会もあれば、いろんな分野の連携をするので、単科大学や短大の先生方、あとは地方の本当に特徴的な御研究をしていらっしゃる研究者の御支援や、私立大学様の産学連携部門の方とお話しさせていただくケースもすごく多いのですけれども、起業に興味がある、若しくは産学連携をしなければいけないという意識はあるもののどうしたらいいのか分からないというような方も多くいて、少し産学連携の格差が広がりつつあるのかなというような感覚を持っております。このような先生方が、我々のような広域で活動しているところに気軽に相談をされるような機会も増えてきています。その辺りの大学や研究者に向けたサポートが、何かなされるのかというのを、今回この機会で拝見させていただきたいと思っています。ありがとうございます。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。
それでは次に、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】 地域経済活性化支援機構の田中と申します。よろしくお願いします。地域経済活性化支援機構というところは、地域金融機関さんの支援機能として、御一緒にいろいろな活動をしており、私はファンド事業を担当しています。地域経済活性化支援機構、略称REVICとして、ファンドを地域金融機関などとこれまでに44本組成し、1,000億以上の資金を運用しています。ファンド組成に目処(めど)がついた後、現在私は大学ファンドの運営を担当しています。地域大学中心の活動となっており、島根大学、鳥取大学、あと徳島大学のファンドを運用しており、国の政策も4大学ファンドの次は地方ファンドというような流れもおきつつあります。地方において、上場に値するようなベンチャーも含め、面白い話がいろいろとあり、文科省やJSTの立場の両面で仕事をしていきたいと思います。
JST関連では、今年度より地域共創の場のアドバイザーにも選んでいただきました。一方で徳島大学は昨年度、共創の場に採択され、私は徳大側のファンド運営会社社長の立場で関わらせていただいています。政策をつくっている側の目線と、政策の下で取り組む現場側の目線の両方に関わることで、いろいろなギャップがみえてきます。私がファンドから投資をしたベンチャー側の経営陣として仕事をする際に、地方大学側の理想と現実の間のギャップがたくさんみえており、例えばTLOや、産学連携や、知財マネジメントなどには、まだまだ課題が多く残っています。文科省さんの施策しかり、ファンドの活用もしかり、異なる複数の立場から関わることで、現実に即した観点から、いろいろとフィードバックできればと思って参加しております。どうぞよろしくお願いします。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは、千葉委員、お願いいたします。
【千葉委員】 東京農工大学学長の千葉でございます。よろしくお願いします。みなさんのおっしゃること、もっともなので、重複しない部分で私の思っていることを一言述べさせていただきます。
いろいろな指標がございますけれども、重要なことは、欧米のキャッチアップという概念の殻を破るということも必要だと思っています。それに振り回されると、まだ追いつかないとか、ここが足りないという物の見方だけになってしまいます。例えば、日本の強みは何なのかということをもっと考えて、それを生かした形での産学連携であり、新しい事業の創生というような視点を持っていくと、非常に強い競争力が出るのではないかと思います。例えば、インクルーシブな社会の中で循環型社会を日本が実現するとか、自然や野生動物と共生した中で感染症対策や食料供給、あるいは健康維持を実現できる社会を日本が実証してしまうというような、世界の一つの見本になるようなものというのは、かなり私は出せると思っています。そういう観点に立たないと、なかなか世界のトップレベルということには進んでいかないと思いますので、同時にそういう観点も大事にしていくべきだというふうに思っております。
以上でございます。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、西村委員、お願いします。
【西村委員】 三重大学の西村と申します。8年ほど社会連携担当の副学長をしていたんですけれども、4月から教授として、教育の方に専念しております。
今幾つかお話があって、大学の特徴を生かすというのは確かにそうなんですけれども、地方大学、私たちのような中堅大学になると、逆に変えてはいけないところというのもあるんですね。1,000人ぐらいの学生が入って、卒業させていく、この機能は絶対動かしてはいけない。だから全体を変えるのではなくて、そういった機能を持っている本体をどういうふうに生かすのか。イメージ的には、タグボートのようなもの、大学を特徴づけ、大学本体をけん引する何かをつくり、それとの掛け算で生かしていくようなことを考えるのがいいのかなと思います。ですから、現場でずっとやってきた経験からは、大学全体を変えていくという考えを外さないと、恐らく無理かなとは思っています。
それと、共同研究も確かにすごく重要なんですけれども、教育について、特に産学連携を通した教育が、私は役に立つかなと思っています。リカレント教育に関して、私たちは、地元の経営者を教育することを通して、彼らが覚醒すると地域社会が大きく変わるというのを感じています。そういうこともあって、例えば三重大学では、三重県の中の産業界の中堅どころ、若しくは一次産業の中堅どころの経営層をいかに伸ばすかということを行政と一緒になってやっており、これに結果が出ている。それが私たちの感触です。ですから、そういうふうにどこかにフォーカスを絞るような形の、タグボートのような形で一定の機能を地方大学につけていくと、それぞれ特徴が出ていいのかなと思っています。
少し長くなりますけれども、そういう考え方を出すのに、やはり先ほどの千葉学長のお話、僕、感銘を受けているんですけれども、いずれにせよ、こういった地方大学を引っ張っていく経営層という、千葉先生のような方って少ないんですよね。ですから、こういう経営層をいかにつくるかということも今後考えていただくと、特に企業の皆さんから見たときに、「何でできないんだ」といったときに、やっぱりその辺の経営体制の在り方みたいなものについても、大学、特に地方大学の姿というのかな、現状を見ていただきながら、どうしたらいいかというのを考えていただくといいかなと思います。
以上になります。ありがとうございました。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは続きまして、長谷山委員、お願いします。
【長谷山委員】 長谷山です。北海道大学副学長を務めてございます。担務はデータサイエンス、IRです。内閣府の科学技術政策フェローを務めておりまして、人材育成、研究力分析に関わっています。研究者としての専門はAI、ビッグデータ解析です。JSTの創発的研究支援事業にも委員として参加してございまして、先ほど他の委員からもお話がありましたように、若手研究者の挑戦をどのように支援するかということが、この部会でも重要な鍵になると思っています。
皆様の御議論に含まれているものもございますが、3点について、異なる視点から意見を述べさせていただきます。
まず、1点目についてです。資料2-2の1ページに、論文数の日本とドイツ、英国との比較や、日本の大学をQ値に基づきグループに分類した表が示されています。他の委員からも、論文数だけでは不十分ではないかという指摘がありましたが、違う視点で見ると、誤解を招く危険性があると思っています。この表は、第1グループに分類された論文数が多い大学に、第2、第3、第4グループの大学が追従して、同じ研究分野で論文を出していると読み取ることができます。我が国における学術の多様性は、イノベーションの源泉を担うものと考えると、これで役割を果たすことができるのだろうかと感じます。資料では、第3グループ、第4グループが、この領域に強みを持つと説明していますが、多くの大学が同じ研究領域に取り組む状況は、10年後の新しい学術の創造や、イノベーションを生み出すことに結びつくのだろうかと言う懸念が生じます。
この委員会で議論するのであれば、本部会の目的を考えた多様な視点で、数値分析をお願いしたいと思います。また、この表の数値は、論文数は2013年から2017年の平均で、Q値は2018年末のバージョンとなっています。2年ほど古いデータとなっているのではないかと思います。分類ごととはいえ、個別大学の順位を示すのであれば、可能な限り新しいデータで、誤解を生じない分析の御説明をお願いしたいと思います。
次に、2番目の視点は、他の委員からも出ていましたが、資金運用についてのものです。企業からの投資を受けて、それを運用するガバナンスを認める仕組みを検討いただけないだろうかと思います。佐々木委員から地方の中核大学についてお話がありましたが、残念ながら、個別の大学に、50億円、70億円、100億円という額の運用できる資金はありません。地方の大学が大きな取り組みに着手できるように、地域中核大学がハブの役目を担い、複数大学が連携して、エンダウメントを持つことができるような視点も必要ではないかと思います。この連携は、地理的なものに限らず、西村先生からお話があった、尖った取り組みを行う大学が一層尖ることができるような連携や、互いの取り組みで補完する連携などがあって良いのではないかと思います。米国や英国のトップ大学に伍するための10兆円ファンドのお話がありましたが、地域の大学が、地域の多様性を捉えた取り組みを行うことを支援する、資金の運用方法を検討する必要があるのではないかと思います。
国立大学法人法の一部が改正され、資金運用について可能な事項が増えましたが、指定国という特定の大学に限定される議論もあり、それ以外の大学で検討さえ躊躇(ためら)われる現状があります。階層が良いこともあると理解しますが、地域の活性化のために、産業連携と新しい社会創造に大学が取り組むために、この資金運用について必要な視点として加えていただきたいと思います。
そして、3番目、最後でございます。若手研究者の活躍支援の視点です。これはこの部会の議論だけで可能となるものではないと思いますが、無体財産権の価値が日本は大変低いと思います。私は財産権の専門ではありませんので、御専門の江戸川委員や北岡委員の御意見をお聞きしなければならないと思いますが、残念ながら日本の技術者や技術に対する価値の評価が極めて低いと感じます。このような現状で、若者が何かにチャレンジしようとしたときに、この価値の低さが挑戦を鈍らせると感じています。先に、資料2-2の1ページの表について、特定の領域に集中する研究が行われていると申し上げましたが、その集中の背景が、新しいものを生み出すことへの価値の低さにあるかもしれません。
このような話をしますと必ず出る議論が、他国の学生のスキルレベルと日本の比較です。例えばアメリカのスキルの評価基準を持ってきて、日本の大学生の評価が低いと主張されることがあります。これも先ほどの1番目の視点と同じで、誤解を招くものと思います。各国が指標を設定して質向上に努めているものを、指標だけを持って来て質を測るのは用いる方法が違うと思います。我々の国として技術者の評価の仕方も含めて、無体財産の評価を世界レベルにしていただくよう、他省庁への働きかけも含めて、この委員会から発信できればと思います。
以上3点です。ありがとうございました。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。
ちょっと3時過ぎていますけれども、もし委員の先生方で3時以降、予定がある方は退出していただいて結構だと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、林委員、お願いします。
【林委員】 林です。須藤さん、久しぶりです。いつもお世話になっています。また、委員の皆様、多くの方々には今まで委員会活動などで一緒にやらせていただきました。その節はお世話になりました。また今期もよろしくお願いいたします。
私は長く材料メーカーである米国デュポン社に勤めておりました。その後グローバル企業の視点を変えて、今は巴川製紙所という、中堅の材料開発の会社に事業責任者として勤めております。一方で、2017年から、地域イノベーション・エコシステム形成プログラムで数か所のアドバイザーと、福岡地域担当の事業プロデューサーで担当させていただきまして、大変勉強させていただきました。今は広島大学のデジタルものづくり教育研究センターの方でお手伝いをしています。こういった地域の方々との活動を通して、また今回スライド類いろいろ見せていただいて、やはりスタートアップの活動を活発に行っていくことに関してはまだまだ弱いところがあるかなと思います。地域による差はあるとは思いますが、この領域に関してはしっかりやっていく方針は正しいと感じています。
地域イノベーション・エコシステム形成プログラムを各地域見てみますと、地域の事業プロデュース能力はまだまだこれからかなと思います。エコシステム形成プログラムの良い点は、最初の1年、2年かなり苦労しながらも、事業プロデューサーやそれをサポートされる大学の産学連携の方々、地方自治体の方々がだんだん実力をつけていくという過程を拝見することができました。事業創出や起業という活動は座学だけでは学べるものではなく、やはりオン・ザ・ジョブでトレーニングしていくことがものすごく大事なことだと思っています。地域を支援する活動として、アントレプレナーシップの教育を地域の拠点大学できちんとできるようにすると同時に、座学を少しやった後は実地経験をとうして実力をつけられるようなきめ細かなサポートが必要でしょう。こういったことが地域の活性化にはつながっていくのではないかなというふうに考えております。
他の委員の方々から出ていた指標についての課題とか、地域で資金調達ができるような仕組みとか、若手社会人育成の重要性等につきましては、私もほぼ同意見でございます、またよろしくお願いいたします。
以上です。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは、宝野委員、お願いします。
【宝野委員】 物質・材料研究機構研究担当理事の宝野でございます。よろしくお願いします。昨年に引き続き臨時委員を務めさせていただきますが、この部会での議論は、私ども国立研究開発法人における産業連携の在り方について非常に参考となる意見が多く、ここでの議論を私どものスタートアップ支援の制度設計に反映させていただいているところです。
本日の資料、2-2の2ページ目のデータで示されておりましたが、私も常々、アメリカと比べると、日本では研究大学の数が少ないのではないかと感じておりました。日本ではトップ大学に人、物、金が集中しているためと思いますので、今回、地方で特色ある研究を行っている大学を支援することによって、我が国の大学の研究力向上につながる施策を目指しておられること、大いに期待しております。年度内に提案するというハードなスケジュールのようですが、予算規模とか採択件数がどのようになるのか関心を持っています。予算や人材は限られていますので、研究設備や人材のネットワーク化も必要になるかと思います。
簡単ですが、以上です。
【須藤部会長】 ありがとうございました。
それでは、最後ですけれども、山本委員、お願いいたします。
【山本委員】 山本です。こういうときに山本という名前は不利だなというふうに感じています。
よく御存じの方もいっぱいいらっしゃいますが、私は、今の役職は東京大学の副理事と、東京大学TLOという100%子会社の社長とを、こちらは21年、社長をやっています。あと東京大学エクステンションという会社の社長を、これも100%子会社ですが、去年の1月からやっていまして、東京大学、入学も卒業もしたことないんですが、ずっともう20年以上、東京大学に通い続けております。産学連携は、TLOができる前から、今のTLOのようなことをやっていたので、96年から、前職のときからやっていたので、もう25年間産学連携をやっていますので、多分私が貢献できるのは、現場のことは誰よりも詳しいということだと思います。もちろん海外のことも詳しく知っております。
申し上げたいのは、海外を見習わなくてもいいんですが、いいところは学べばよいと思っていて、ヨーロッパの大学は、今、テックトランスファーからナレッジトランスファーというふうに移行しています。ナレッジトランスファーと言われているものは、実はこれ、ナレッジトランスファーとテックトランスファーと何が違うのかと聞いたら、何ということはない、もう日本の大学の大半がやっているようなことを彼らはナレッジトランスファーと言っています。要するに、ライセンスだけではなくて、共同研究のアレンジだとかNDAだとか、いろんなことをやると。ただ、ノウハウの提供だとか、そういう部分は日本より実は進んでいるようなところもあるので、そういうところは学べばよいのかなということを一つ感じています。
あとは、江戸川さんもおっしゃっていましたけど、やっぱり地域活性化というのは、いかにスタートアップ、大学発ベンチャーをつくっていけるような環境をつくるのかと。これもいろんな大学がもう、面白い試みを始めていますので、そこで提案できることもあろうかと思っています。私は、実は沖縄県だとか富山県とかのアドバイザーもやっているんですが、沖縄県は県でもGAPファンドをやっていたりするんですが、琉球大学だとか沖縄高専の技術でどんどん事業化が実現してきていたりするんですね。
というようなことを考えると、地域でも随分可能性があるということは感じていますので、もう今日、私の話で終わりだと思っていますし、実は私、3時から会議があったのをちょっと待たせているので、コメントしたら言いっ放しで去ってしまいますが、これからの会議で皆様とそのディテールの部分はお話しさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【須藤部会長】 どうもありがとうございました。思ったよりも延びないで済んだような気がします。皆さんの御協力ありがとうございました。
今日いろいろな意見が出ましたけれども、これは次回のこの部会までに、事務局の方できちんと整理してまとめてもらえると思っています。是非事務局の方、うまく整理して、検討していただきたいと思います。
それでは、最後になりますけれども、今後の予定について事務局の方からお願いいたします。
【浅井課長補佐】 事務局です。御指摘のとおり、いろんな先生方の御意見を踏まえて検討を進めたいと思いますので、次回のときにもそれはまとめたいと思います。
次回ですけれども、7月30日を予定しております。
また、本日、本当に事務的な部分で不備がありまして、いろいろお手間取らせて申し訳ありませんでした。議事録を皆様にお送りさせていただいて、その後公開という形にさせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【須藤部会長】 それでは、これで本日の産業連携・地域振興部会を閉会したいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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