産業競争力・研究力中核大学群に関するワーキンググループ(第2回) 議事録

1.日時

令和8年7月30日(木曜日)13時~15時

2.場所

経済産業省本館17階 国際会議室 及び オンライン

3.議題

  1. 前回議論の振り返りと産業競争力・研究力中核大学群に求める要件
  2. 有識者からのプレゼンテーション
  3. 自由討議

4.議事録

【大野座長】  それでは、これより第2回産業競争力・研究力中核大学群に関するワーキンググループを開催いたします。
 本日は、「こども霞が関見学デー」の2日目だそうで、廊下がまた違った雰囲気になっていると思いますが、委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。改めまして、本ワーキンググループの座長を務めます大野です。よろしくお願いいたします。
 議事に先立ちまして、本ワーキンググループは、文部科学省及び経済産業省それぞれの審議会の下に設置されたワーキンググループの合同開催であるということを御案内申し上げます。
 先ほどもアナウンスが事前にありましたけれども、本日のワーキンググループにつきましては、YouTubeにて会議の模様をライブ配信することとしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 早速ではございますが、議事を進行してまいります。本日は、産業競争力・研究力中核大学群に求める要件について御議論いただくことにしております。
 それでは、事務局から委員の出欠などをお願いいたします。
【宮崎室長】  本日は、委員の皆様におかれましては、会場またはオンラインより御出席いただいております。また、田中委員は御欠席となります。
 なお、本ワーキンググループでは、事務局以外に関係省庁にも御参加をいただいております。
【大野座長】  どうもありがとうございます。
 それでは、次に、配付資料の確認をお願いいたします。
【宮崎室長】  本日、資料1から5までを配付しております。不足資料があれば事務局までお知らせください。オンラインで御参加されている方々におかれましては、会議中、もし音声などに不具合がございましたら、チャットなどを用いてお知らせください。また、本日の議事について、会議資料及び会議終了後の議事録は文部科学省と経済産業省のホームページに掲載することとしております。
【大野座長】  ありがとうございました。それでは、議事を進めてまいります。
 まずは事務局より資料3「前回議論の振り返りと産業競争力・研究力中核大学群に求める要件」について御説明をお願いします。
【宮崎室長】  御説明いたします。資料3を御覧ください。
 2ページ目以降、前回のワーキンググループにおける主な御意見を整理させていただいております。
 まず「本ワーキンググループへの期待」ということで、大学の研究力を産業競争力強化につなぐ制度であるべきということ。大学だけではなく、国研、企業も一体となった連携こそが研究開発エコシステムの構築につながるということ。国家戦略に基づいて本大学群が形成されていくべきということ。こうした御意見がございました。
 1枚めくっていただきまして、「支援」につきましては、中長期の支援期間が必要であるという御意見。支援に際しては、大学の示す構想の実現可能性の精査、あるいは成果連動という視点も必要ではないかといった御意見がございました。
 また、4ページ目にございますとおり、制度の信頼性、あるいは有効性を確保するためには、評価方法や体制も重要であるという御意見がございました。
 5ページ目以降は、本大学群に対して求める要件に関する御意見でございます。2つ目の「ガバナンス・経営力」については、ガバナンス体制が実効性のあるものになっているか、実際に行われた資源配分などの実績も含めて評価していくべきではないかということ。また、適切なリスクテイクが可能な経営力や、マネジメント機能が求められるという御意見がございました。
 次のページにいきまして、「研究力・人材」につきましては、セキュリティにも留意しながら国際競争力のある研究拠点、研究コミュニティを形成していくことが重要だという御意見。評価に際しては、産業界からの評価、あるいは研究設備など、いくつかの視点が考えられるという御意見。また、産学連携に当たっては、コーディネート機能や、知財化・標準化を担う専門人材を含めて多様な人材の育成が必要であるといった御意見がございました。
 7ページを御覧ください。これは本日御議論いただきたい事項でもございますが、「経済圏への深い貢献」につきまして、産業界と大学との継続的な共創関係をつくっていくことが必要である。経済圏を支える人材を育成するとともに、大学と産業界の間で知の循環が促されることが重要である。最後、スタートアップの役割も視野に入れながらエコシステムをつくっていくことが重要である。このような御意見がございました。
 続きまして、求める要件の方向性ということで、9ページ目を御覧ください。前回もお示しいたしましたので、改めてということでございますが、現在事務局として考えている要件の総論でございます。4つ論点がございますが、前回、主に(二)と(三)について御議論いただきましたので、本日は(一)と(四)を中心に御議論いただきたく存じます。
 次のページをお願いいたします。それぞれの論点に関して求められる取組例を具体的に記載させていただいております。右側の欄には評価の観点の例ということで、いくつか定性的、定量的な観点を並べております。前回のワーキンググループでの御意見を踏まえまして、青字部分を修正してございますが、抜けている論点などありましたら、この後ぜひ御議論いただければ幸いです。
 次のページも同様に、御議論の際に御参照いただければと思います。
 12ページをお願いいたします。今回御議論いただく2つの要件につきまして、こちらも議論の御参考ということで、量子分野を例にしたイメージ図をまとめました。
 まず、産業競争力強化へのビジョンについてですが、大学には自身の強みや研究力をどのように向上させながら、国際的な産業競争力強化に貢献していくのかという姿を描くとともに、左側の四角囲いで書いてございますような政府の政策とアラインしながら、具体的な戦略を策定し、経営資源を配分していくことが求められていくのではないかということで一例書かせていただいております。
 また、経済圏への貢献という部分については、ページ右半分にございますように、大学と国研など産業界が、組織対組織の具体の連携を進めていく。さらには産業全体、サプライチェーンを視野に入れた深い関係性を構築していくといったことが、大学側の取組だけではなく、産業界などから出てくるベクトルも含めて、共に取組が進んでいくということが重要であろうと考えておりまして、こちらも取組例として記載してございます。
 次の次の14ページをお願いいたします。本日ぜひ御議論いただきたい論点といたしまして、まず1点目、繰り返しになりますが、「産業競争力強化へのビジョン」、「経済圏への深い貢献」の2つの要件について、特に評価指標や求められる取組という観点から、これには大学側だけでなく、産業界側の取組という視点も含まれてくるかもしれません。こうした点について御議論いただければと存じます。
 また、2点目として、産業競争力強化に貢献する大学の姿というのは、必ずしも画一的なものではなくて、多様な在り方が考えられるかなと思っております。日本においてはどのような姿が想定されるのか。
 最後に3点目として、本大学群が自らの研究力を強化しながら産業競争力強化に貢献するために、産業界に求められること、あるいは政府に求められる後押し、こうした点について御議論いただければ幸いです。
 事務局からの説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【大野座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、次に、本日の議論事項に関連して、有識者として産業界の2名の方にプレゼンテーションをお願いしてございます。質疑応答、意見交換の時間はまとめてとりますので、御了承ください。
 まずは経団連の小川委員よりプレゼンテーションいただきます。小川委員、よろしくお願いいたします。
【小川委員】  ありがとうございます。経団連常務理事の小川でございます。
 「産業競争力・研究力中核大学群への期待」につきまして、経済界の立場から発言いたします。
 1枚おめくりください。初めに、経団連では、本年5月に「科学技術立国戦略」を公表いたしました。そのポイントを関連あるところに絞りまして、かいつまんで御紹介したいと思います。
 我が国が再び科学技術立国として発展するためには、研究開発投資を起点として、新たな知や技術を生み出し、それを社会実装、企業の成長、そして雇用・賃金の増加、さらには次の研究開発投資へとつなげる好循環を構築していく必要がございます。その際、「科学技術」「産業・社会」、そしてその方向性を支える「思想・哲学」、この3つを一体として捉えることが重要ということを打ち出しております。
 次のページをお願いします。そのためには、科学技術立国の実現に向けて、まず経済界自身が変わらなければならないと考えております。「コストカット型」経営から「投資牽引型」経営へとマインドセットを転換し、研究開発をはじめ、中長期的な価値創造に資する投資を積極的に進めるとともに、産学連携や基礎研究にも果敢に投資をしていく必要がございます。同時に、大学に対しましても、産業界としてさらなる能力の発揮を期待していることから、大学改革の加速についても提言いたしました。
 このワーキンググループに関わることといたしましては、「この分野を研究するならこの大学」と世界から認知されるような「ビジブル」な得意領域を有する研究大学に対して、研究開発や社会実装を中長期的に支援する制度を設けるべきと主張しております。
 また、沖縄のOISTに見られるように、グローバル基準の人材・採用制度、研究の自由と責任、研究者が研究に専念できる支援体制など、成功要因をほかの大学にも横展開するという視点も重要でございます。さらに大学には、政府予算以外の財源を多様化することを通じて、より裾野の広い研究が可能となりますことから、民間資金を科学研究に循環させるための環境整備も必要と考えております。
 次のページをお願いします。これらの提言を踏まえまして、本大学群に期待する役割としては大きく3つございます。
 第1は、「価値創造人材の育成・輩出」です。分野横断的な探求力や創造性を育み、研究者・技術者の厚みと多様性を拡大するとともに、産業基盤や医療等の地域のインフラを支える人材、グローバルに活躍する人材を育成することが重要です。
 第2は、「世界に冠たる研究力の確立」です。新たな知や研究成果を持続的に生み出し、特定分野で世界トップレベルの研究拠点を形成することが必要です。
 そして、第3は、「研究成果の社会実装・産業競争力強化」です。研究成果を経済的・社会的価値へと転換し、企業との共同研究、産学官の人材流動、スタートアップ創出、事業化までを一気通貫で進めることを期待しております。この社会実装には、地域産業・社会を支える大学と企業、さらには大学内の異なる分野を横断し、事業化まで伴走する、つなぐ人材の存在が極めて重要となります。
 これらを踏まえますと、本大学群の評価に当たりましては、論文や研究成果だけでなく、人材育成、産学連携、社会実装、地域への貢献など、多様な視点を取り入れるべきと考えております。
 次のページをお願いします。続きまして、本日の論点である要件(一)「産業競争力強化へのビジョン」についてですが、本大学群の制度については、日本成長戦略や地域未来戦略など、政府の長期的な産業政策、地域政策の中に明確に位置づける必要があります。今般取りまとめられました日本成長戦略の17分野と大学の強みを結びつけ、国際的な競争力の強化に資する取組を促すべきです。政府におかれましても、大学の努力のみに委ねるのではなく、長期的な政策としてもコミットメントを明確に示し、継続的に支援を行っていただきたいと考えております。
 次のページをお願いします。最後に、要件(四)「経済圏への深い貢献」について一言申し上げます。本大学群には、個々の企業との共同研究にとどまらず、企業、スタートアップ、国立研究開発法人、自治体、海外の研究機関などを結ぶ中核拠点となることを期待しております。大学が企業や地域のニーズを取り込み、人材、研究、設備、技術などをつなぐことで、サプライチェーンや地域経済圏全体の競争力を高めていくという視点が重要です。
 特に、研究成果を社会実装する際の死の谷を越える鍵は、人材の流動化にあると考えております。具体的には、クロスアポイントメントや兼業を進めるために、雇用契約、機密保持、知財管理などの課題を解消するとともに、大学や国研の報酬・処遇を産業界から優れた人材を呼び込める水準にまで引き上げる必要があります。
 経済界としましても、共同研究や資金提供にとどまらず、大学、国研、スタートアップの人材を積極的に受け入れ、自らの人材の多様性とイノベーション力を高めてまいりたいと考えております。本大学群が研究力を産業競争力へと転換する制度の柱となることを強く期待しております。
 以上でございます。
【大野座長】  小川委員、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、三井不動産株式会社イノベーション推進本部産学連携推進部長の湯川俊一様よりプレゼンテーションいただきます。湯川様、よろしくお願いいたします。
【湯川部長】  ただいま御紹介に預かりました、三井不動産株式会社イノベーション推進本部産学連携推進部長の湯川でございます。
 本日は、「都市の産学連携エコシステム」というタイトルで、ディベロッパーから見た産学連携の在り方、かつ日本の型をどうやってつくっていくべきなのか、そういう論点でお話をさせていただければと思っております。
 まず、簡単に三井不動産がなぜここに呼ばれているのかというところをお話ししたいと思います。もともと当社は、時代や国の要請にチャレンジする形で成長してきた会社でございまして、一番最初は、高度経済成長のときに、工業用地が足りないということで、埋立て事業へ挑戦し、その後、東京都心部の住宅課題の解決として、ウォーターフロントエリアの開発。そしてその後、不動産マーケットへの投資の呼び込みということでJ-REITの創設。そのようなことをやってまいりました。
 昨今は、国や産業界の要請を受けまして、主にライフサイエンスや宇宙、半導体産業における「コミュニティ」の形成と「場」の整備を通じて新産業創造に貢献できないか、そういう目的を持ってやらせていただいております。
 まずはこの話から入りたいと思っているのですが、世界では今、何の奪い合いが起きているのか。相変わらず食料やエネルギーの奪い合いが起きていますが、実はそれ以上に人材の奪い合いが激しくなっており、ここが一番重要なポイントだと我々は考えています。今は人材という最も重要な資源をどうやって確保するのか、国も企業も躍起になっている時代とも言えるので、そのような中、世界を見ると、人材を輩出するアカデミアを中心に、研究所や企業が集積する高度産業集積の動きが見られています。
 例えば、国立陽明交通大学、TSMC、ITRIを中心とした新竹サイエンスパーク。グルノーブル・アルプ大学、フランスの国研、世界のテクノロジー企業の集積によるグルノーブルGIANTキャンパスがその一例です。日本も例外ではなく、東北大学の青葉山キャンパスではサイエンスパーク構想が始動しており、また、熊本を中心とした九州北部エリアではTSMCの進出を契機に活気づいています。
 さて、新産業創造やイノベーションエコシステムの話をすると、とかくシリコンバレーに注目が集まりますが、これらのアメリカの西海岸、あるいは東海岸の都市は、世界トップクラスの人材や多額のリスクマネーが集まることが前提となったエコシステムを形成しています。したがって、必ずしもこのモデルが日本の多くの都市に参考になるわけではないと考えています。
 一方で、米国の西海岸、東海岸に目を奪われているうちに、かつて製造業で栄えた中西部・ラストベルトや、南部・サンベルトの中規模都市が長年にわたる産学連携の取組から勢いを増していることが分かり、むしろこのような、第2、第3都市のほうが日本への示唆が得られるのではないかと考えました。
 同様に、欧州の中規模都市でも同じような事例が出現しています。イギリス、フランス、ドイツを範囲とするブルーバナナエリアの中規模都市でも、長年にわたる産学連携による産業再生、産業集積が盛んになっています。いずれの都市も首都から一定の距離を保ち、独自の文化的土壌と世代を超えた人材育成を担う教育基盤を支えとして、新たな産業創出に一定の成果を上げていることが、日本の多くの都市にとって参考になるのではないかと考えたということです。産業領域も実に多様であり、オースティンのようにコンピュータ産業からバイオ、半導体に発展した都市もあれば、シカゴの量子コンピュータ、トリノにおける航空宇宙、eモビリティなど、いずれの都市も強みとする領域を絞って独自の発展を遂げています。
 このような動向を踏まえまして、アカデミアを中心とした都市の産学連携エコシステムにおけるキーサクセスファクターを明らかにすることを目的とし、さきに述べたような、大都市を除外した、第2、第3の地方都市に焦点を当て、2023年4月より、主に文献調査並びに関係者インタビューを広島修道大学の太田先生とともに実施してまいりました。本日はその内容をお話しさせていただくとともに、そこから得られるヒントや成功事例を基に、日本版都市の産学連携エコシステムについて考えていければと思っています。そして、先に結論を申し上げますと、それは「世代を超えた人材育成の仕組み」をどのようにつくり上げるか、そこが肝だということでございます。
 ということで、世代を超えた人材育成の仕組みについてお話しします。まず、アカデミアが中心となって地域の文化・教育基盤を整え、大学に入学する志願者、起業家を増やし、彼らが成長して成功者となる。成功者が地域に還元するために、次の世代への貢献支援、すなわち大学への寄附を行うことで、世代を超えた人材育成の好循環が生まれる。それに加えて、一旦は外部に流出した先で成功し、その後に戻ってきて支援者になるケースや、全く所縁のない者が外部から流入して成功し、その地にとどまって還元するケースも加わり、エコシステムに厚みが増してきます。この循環を繰り返していくということです。
 もちろん、エコシステムの中心は人材を育成し、かつ、研究に取り組むアカデミアですが、ポイントは次の5点だと考えています。
 1つ目は、アカデミアが中心となり、その地域の文化・教育基盤を整えて、大学に入学する志願者・起業家を増やすこと。
 2つ目は、アカデミアの強みとその都市の産業基盤を踏まえ、挑戦分野を見極めること。
 3つ目は、彼らが成長する過程で、志願者・起業家と大企業をつなぐ人、すなわちカタリストの存在があること。
 4つ目は、ハブとなるアカデミアにおける産学連携の場が確保されること。
 5つ目は、成功者、大企業が次の世代への貢献支援、すなわち寄附を行うことで、世代を超えた好循環が生まれる。
 この5つだと考えております。
 では、ここからいくつか具体的事例を紹介させていただきます。
 まず初めに、1つ目の事例として、USスチールのニュースでおなじみのペンシルベニア州のピッツバーグを取り上げます。
 ピッツバーグは、人口245万人程度の都市で、都市圏人口で比較しますと、日本で言えば、京都や福岡より少し小さく、神戸と同程度の規模でございます。写真にありますように、2つの川の水運の活用から始まったとても美しい町です。
 世界的に有名な企業で言いますと、USスチールをはじめ、130年以上の歴史を持つハインツもピッツバーグが本社です。教育機関で言うと、ピッツバーグ州立大学とカーネギーメロン大学があります。また、カーネギー財団が建設したカーネギー自然史博物館や、アンディ・ウォーホル美術館といった文化施設も多く存在するとともに、野外ライブや音楽フェスティバル、そして、地元のフットボールチームであるピッツバーグ・スティーラーズも大変人気のあるチームです。
 ピッツバーグに見られる産学連携エコシステムをひもときますと、次のようになります。まずは製鉄、食品加工業等で財をなした篤志家が中心となり、次世代の人材のために大学に教育資金を寄附します。さらに篤志家の寄附により、故郷への愛着心を育む都市の文化・教育基盤を整え、先端科学技術に興味を持つ若者をサポートするとともに、地域に人材が定着するための郷土愛を育んでいきます。
 その後、鉄工業の衰退とともに、一旦は市が財政破綻しますが、その一方で、2000年代からピッツバーグ州立大学やカーネギーメロン大学が、自らの大学の強みであるAI、メディカル分野に注力し、そこで学んだ学生の起業へのサポートや、大企業との引き合わせを行うことで、現在はAIロボティクスやライフサイエンスの新産業を生み出してきました。
 若者が大学に進みたいと思い、学び、研究し、ビジネスを起こし、それを成長させる。エコシステムの中心は、あくまで人材育成する大学ですが、ピッツバーグについては、篤志家の存在と活動が非常に大きかったという事例です。
 次は、トリノにおける都市の産学連携エコシステムを紹介させていただきます。
 トリノはミラノに次ぐイタリア第2の工業都市であり、FIATを中心とする自動車産業の拠点であります。近代にはサヴォイア家の王国が置かれたこともあり、町の至るところに王宮建築等のサヴォイア王家の影響が見られる美しい町です。
 産業としては、言わずと知れたFIATの創業の地です。近代以降はFIATとともに歩んできた町と言っても過言ではありませんが、工場の移転、縮小、閉鎖により、一時は町の産業そのものが空洞化しました。
 大学としては、QS世界大学ランキングで上位に入るトリノ工科大学。主に石油化学や機械工学、建築工学に強みがある1859年からの歴史を持つ伝統校です。
 トリノは美食の町としても知られており、地理的にフランスの影響を受けたピエモンテ料理やカフェ文化でも知られています。スポーツでは、サッカーのユベントスFCが大変有名で人気のあるチームです。皆さんの記憶に新しいところで言えば、2006年には冬季オリンピックが開催されました。
 トリノで見られた産学連携エコシステムの特徴は、行政主導であったということです。FIATの工場移転や縮小により、一旦は衰退、空洞化が進みましたが、1993年にトリノ工科大学のカステラーニ教授が市長となり、産学連携を推進するとともに、オリンピック誘致を契機とした再開発もあって、都市再生に取り組みました。また、FIAT創業家のアグネリ家、欧州最大の民間慈善団体であるサンパオロ財団による寄附により、大学の強みを生かした起業が増えていきます。さらには、FIATが閉鎖した工場跡地をトリノ工科大学に全て開放し、大学がインキュベータに場を賃貸するとともに、さらには大学がスタートアップへ人材を派遣することで、大企業からスタートアップへの出資を集めることに成功しました。
 このように、トリノでは行政が中心となって都市を再生し、それに加えてサンパオロ財団の寄附、トリノ工科大学による強みを生かした教育、研究が合わさり、さらにはFIATの工場跡地の開放による場の整備という要素が機能していきました。
 3つ目は、ウィスコンシン州のマディソンです。
 マディソンは豊かな酪農文化で有名ですが、近隣のミルウォーキーで創業したハーレーダビッドソンは、ウィスコンシン州のものづくりと産業文化を象徴する存在です。近郊には、医療情報システムで世界的に知られるエピック・システムズが本社を構え、ライフサイエンスやIT産業の成長を支えています。
 中心的な教育機関であるウィスコンシン大学マディソン校は、研究・教育だけではなく、大学スポーツチームのバジャーズを通じて地域の一体感も生み出しています。また、フランク・ロイド・ライトが設計したユニテリアン教会があり、自然と調和した建築や文化的な魅力も備えています。州議会議事堂周辺では、ファーマーズマーケットが開かれ、チーズや乳製品をはじめとする地元の農産物が並び、ウィスコンシン州を代表する酪農の豊かさを身近に感じることができる、そんな町でございます。
 古くから酪農で知られるマディソンでございますが、ウィスコンシン大学マディソン校を拠点として独自のエコシステムを形成し、スタートアップだけではなく、大企業の誘致にも成功しています。1984年に、農業研究に使用しなくなった大学の広大な用地を非営利団体に売却します。以降、産学連携のための建物の開発とコミュニティ形成に着手します。さらにはマディソンの最大の特徴である、研究者と企業をつなぐカタリストが機能し、ライフサイエンスを中心とする新産業が創出されました。この図では、アーロン氏とジェシカ氏がカタリストに当たります。
 また、ウィスコンシン大学マディソン校は、ライフサイエンス分野等の研究力に加え、ビジネススクールを有しているため、研究者が起業しやすい環境が整備されていました。そのような中から、電子カルテ分野で世界一のエピック・システムズが生まれ、創業者が篤志家になるとともに、一旦外部に出て成功したシスコのCEOの再流入、また、うわさを聞きつけて外部から流入した有力企業、この中には日本の富士フイルム、コマツ、キッコーマンなども含まれます。こうした有力企業が合わさり、エコシステムが形成されました。
 では、ここから日本版の産学連携エコシステムを「文化・教育基盤」「アカデミアの強みと産業基盤」「つなぐ人(カタリスト)」「場の整備主体(産学官)」「資金」この5
つのポイントから考えたいと思います。
 1つ目のポイントである「文化・教育基盤」については、3つの観点が重要と考えます。
 1つ目は、「幼少期から科学技術に興味を持つ基盤づくり」です。例えば、オースティン校による子供たちへのキャンパスの全面開放や、ピッツバーグでのカーネギー財団による博物館や美術館の建設、地域の文化の教養レベルを底上げするような取組が非常に大切です。
 2つ目は、「生まれ育った人が郷土愛を持つ要素」です。具体的な事例としては、トリノの美しい町並みや豊かな食文化、ユベントスFCとトリノFCの熱狂的なダービーマッチなどが挙げられ、ライブミュージックの都と称されるオースティンのバーやライブハウス、屋外イベントなどの環境も郷土愛を育み、それが地域への定着や、一旦外部に流出したとしても、その後戻ってきたくなる要素としてとても重要です。
 3つ目は、「外部から人を呼び込み、定着させる魅力」です。事例としては、フランスのエクス・アン・プロヴァンスが挙げられます。核融合実験炉のITERの研究者には最先端の研究環境を提供することに加えて、特に家族のQOL向上に資する要素をとても大切にしています。例えば、南仏の気候、豊かな食文化に加えて、子女の教育のためのフランス唯一の公立インターナショナルスクールを設立しました。
 これらの事例のような研究環境の整備に加え、海外からの研究者の家族も含めたトータルな生活の質の確保が本当の意味で実現できている地域は、日本にはそうそうございませんが、まだ動きとしては限定的であるものの、沖縄のOISTがそれに少し近いかもしれません。入学者の外国人比率が8割を超えるOISTでは、研究環境のみならず、豊かな住環境や保育・託児環境の整備にも力を入れ、沖縄の豊かな自然環境の中で、研究者の家族のQOLをトータルでサポートしている参考事例だと思います。
 しかしながら、沖縄だけが特別なのではなく、日本の地方都市も実は非常にポテンシャルが高いのではないかと考えています。1つの例として、当社が一緒にサイエンスパーク実現に取り組んでいる東北大学を中心とした東北エリアに目を向けてみます。このマップに記してありますように、教育、文化、自然、スポーツ、歴史など、人々を引きつける要素が備わっています。あとは、これらをどのように有機的に結びつけていくか、そこが大切だと考えています。
 2つ目のポイントは、「アカデミアの強みと産業基盤」です。事例に挙げた3つの都市では、それぞれの地で培われてきた産業基盤があり、そこに各大学の強みがかけ合わされたことで新しい産業への転換が図られました。
 ピッツバーグでは、鉄鋼業で育てたエンジニアリングの人材や技術等を基盤に、ピッツバーグ大学における医学部、カーネギーメロン大学のコンピュータサイエンスと人工知能の強みを生かし、AIロボティクスやライフサイエンス分野で成長しました。
 トリノでは、自動車産業が育てたエンジニアリングの人材や技術等を基盤にし、FIATが工場跡地をトリノ工科大学に開放するなどの支援もあって、トリノ工科大学におけるエンジニアリングの強みを生かし、航空宇宙、eモビリティ分野での成長を遂げています。
 マディソンでは、酪農業が生物学、栄養学、微生物学等の分野に直接的に研究課題を提供し発展してきましたが、家畜や植物の成長、疾病、栄養の研究には基礎生命科学も求められ、医学・創薬等のライフサイエンス分野にも展開されています。
 そのような中で、ウィスコンシン大学マディソン校の微生物学や動植物学、農業科学が強くなり、現在ではライフサイエンス、ITの分野で成長してきました。すなわち、アカデミアの強みと産業基盤の強みが共に成長して進化していく、その分野を見極め、そこに注力して挑戦していくことが重要だということでございます。
 3つ目のポイントは、「つなぐ人」すなわちカタリストの存在です。研究者と産業界をつなぐカタリストの存在が成長の過程で重要な役割を果たします。先の事例では、ウィスコンシン大学マディソン校のジェシカ氏やアーロン氏がその役割を担っています。彼らは十分な年収を得られていることに加えて、優良なスタートアップに対してエクイティ出資も可能であるなど、個人としてインセンティブも用意された設計がなされています。
 日本にもリサーチ・アドミニストレーターをはじめとした研究開発マネジメント人材の仕組みはありますが、多くの大学では、専門知識や経験を持つ人材の登用、配置がいまだ不十分であり、URAの活動や成果を大学経営や人事制度に反映する仕組みがない場合もあり、組織内で十分な評価がなされていないケースも見受けられます。今後は業績評価に基づく昇給・昇格、給与へのインセンティブ付与等、あるいは表彰制度などを整備することが望まれます。
 一方で、三井不動産は、今後有望と考えている分野、特にライフサイエンス、宇宙、半導体において、コミュニティ形成と場の整備を通じて新産業創造に向けた人と人のつながりをサポートしています。大学内のリソースに限らず、民間企業を活用することも考えられると思います。
 4つ目のポイントは、「場の整備(産学官)」についてです。研究開発にしても、スタートアップにしても、何をやるにしても場が必要です。今回の研究対象とした諸都市に目を向けると、開発においては、大学を中心に、行政、民間企業――この場合の民間企業はディベロッパーだけではなく、共同研究企業も含みます。これらの適切な役割分担に加え、篤志家の手厚い支援も重要なファクターとなります。とりわけ、産業界と大学が共に新たな価値を創造し続けるための持続性と拡張性を備える必要があり、大学と企業の近接性の観点からも、大学キャンパス内に十分な物理的開発余地があることが重要です。
 イリノイ工科大学では、大学キャンパス内にある土地を活用し、大学が整備した施設、共同研究を進める企業が整備した施設、産学連携により整備した施設、篤志家の寄附によって整備した施設が集まり、さらにはそこにコミュニティが生まれています。
 一方で、大学が自ら企業との近接性のためにキャンパスの外に出ていくケースもあります。先ほど御紹介したトリノの事例がまさにそれでございます。企業立地がある程度成熟した日本においては、このようなアウトリーチ型も重要であると考えられます。
 最後に、5つ目のポイントは、「資金」についてです。実は、今回事例に挙げさせていただいた中堅大学でも、日本の主要大学を超えた収入規模になっています。日本では欧米のような寄附文化が根づいておらず、補助金が占める割合が高いので、企業との共同研究や不動産活用など、資金調達手法のさらなる多様化が期待されています。また、台湾や韓国を参考に、新たに契約学科の仕組みが整えられ始めており、新たな資金調達方法の1つとして、かつ、企業にとっての人材獲得の手法としても期待されています。
 新しい産業の創出に当たっては、期間の長い投資が必要とされるため、この観点においては、国からのさらなる支援、併せてスピード感と金額の規模感も重要であると思料いたします。
 以上、日本版として、産学連携エコシステムの実現に向けた5つのポイントを提起させていただきました。これで私の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
【大野座長】  湯川様、示唆に富むお話をどうもありがとうございました。
 それでは、これまでのプレゼンテーションに関する質疑応答を含めて全体ディスカッションの時間とさせていただきたいと思います。
 本日、委員の皆様に御議論いただきたい点については、資料3「前回議論の振り返りと産業競争力・研究力中核大学群に求める要件」のうち、14ページに御議論いただきたい事項がありますので、御覧いただければと思います。
 まず、委員各位から5分程度で御発言をいただきたいと思います。委員各位の御発言が終わり次第、関係省庁として御出席いただいている皆様から必要に応じて御発言をいただきたいと思います。事務局及び有識者への質問の回答は、一巡してからまとめて時間をとりたいと思います。
 それでは、御発言をよろしくお願いいたします。野口委員、お願いいたします。
【野口委員】  野口です。小川委員、湯川部長、大変示唆に富んだ御説明、ありがとうございました。
 小川委員からは、産学の人材流動化が非常に重要であるという点、また湯川部長からは、世代を超えた人材育成が肝という点を軸とした説明がありました。共通しているのは人材です。今回の新大学群についてもその点は非常に重要だと認識しております。その上で、14ページの御議論いただきたい事項に基づいて、少し言及したいと思います。
 評価というのが最初に出ておりますけれども、前回、私は評価のことについても少し触れました。評価については、単に研究成果や論文数を表すものではなく、地域や産業、大学が一体となった社会的経済価値を創出しているか否かというような、定性的な評価が一方で非常に重要だと私は思っております。そのことに基づいて、この14ページについて、産業競争力強化のビジョンは、KPIにもなるとは思うのですが、戦略分野について、大学は産業戦略の明確化や、それをどう描いていくかというのが苦手な部分もあると思いますが、それを産業界と協業しながら明確化していくことは必要だと思っています。このように、重点分野、特に地域経済圏や地域産業との整合性というのは非常に重要であるので、指標化し、評価していくことは非常に重要と思っています。
 取組としましても、地域経済圏や地域産業との接続、今回プレゼンいただいた指摘にもありましたけれども、つまり将来像を踏まえた研究戦略の策定も非常に重要であると付け加えます。
 あと、人材につきましては、博士人材の産業界への輩出ということに言及したいと思います。前回も指摘しました契約学科の設置であるとか、今回は文部科学省の産業・科学革新人材事業、INSIGHTのような、研究開発と人材育成を一体的に実施する取組加速が重要であると思っています。
 そして、経済圏への深い貢献についても、先ほどの地域経済圏の付加価値向上への寄与というのは非常に重要で、湯川部長のお話にもありましたが、そうすることによって雇用創造や人材の定着化も見込めるような内容の評価指標も重要であると考えています。中長期的には、地域のGDPとか、地域産業の集積への寄与とか、また新たに産業クラスター計画の策定を自治体や、企業と協業しながら、策定や見直すこともとても重要だと思っています。そういった意味では、金融機関の位置付けもとても地域経済には重要であり、同機関を交えてのトップレベルの連携、戦略面に依拠した地域課題研究の推進、リカレント教育なども非常に重要になってくると思います。
 それから、2つ目の我が国においての、具体的にどのような姿が想定されるかというのは、前回のときにも指摘をしたと思うのですが、1つの画一的なモデルではなくて、それぞれの大学の強みや、地域経済圏の特性に応じた多様な姿があると思っています。なので、特定の類型には当てはめるのは困難と思っています。
 一方で、戦略分野による将来の産業を支える革新的技術の創出を1つの目的にすることは外せない内容であると考えます。共通して求められる要素としては、これも文中にありましたが、戦略的な確実な社会実装や、博士などの高度専門人材育成、私がとりわけ重要だと思っているのが、当初からの地域経済圏への波及効果を意識した実効性ある取組は極めて重要と思っています。
 最後に14ページの下にありました、産業界に求められることと政府としてどのような後押しが求められるかということについては、特に産業界には、大学を技術提供先として活用するというスタンスがベースにあると思いますが、これからは共にイノベーションを創るパートナーとしての位置づけが非常に重要だと思っています。
 そういった意味では、長期的、戦略的、つまり戦略的でしたら、社会実装まで見据えた、湯川部長も言及されていた、大型共同研究への投資や、小川委員も言及されていました双方向の人材交流です。私は人材融通という話をしましたけれども、クロスアポイントメントや兼業以外にも様々あるので、それらを推進していくことも重要です。あと、政府に期待するのは、先般、金額的な目安もお話ししましたが、長期安定的な研究基盤の財源確保は非常に重要だと思っています。加えて、成果連動型のインセンティブ配分も重要であると考えます。
 最後に、前回、私は金額のことを少し言及しましたけれども、採択後の規模感等々に全く触れていないので少しコメントします。ポテンシャルある大学には、申請時に積極的に手を挙げてもらう、いわゆる申請してもらうことを促すような、適切な規模感のある採択校数に応じた予算規模をぜひお願いしたいと思っています。概算要求の時期でもありますので、ぜひその辺は担保いただければと思いました。
 私から以上です。
【大野座長】  どうもありがとうございました。それでは、波多野委員、お願いします。
【波多野委員】  ありがとうございます。大学の立場から意見を申し上げたいと思います。
 第7期科学技術・イノベーション基本計画では基礎研究、そして新興・基盤技術領域と国家戦略領域にまたがる17の成長分野がございますが、それらの有機的な連携と融合が重要です。しかし三井不動産様の御紹介でございました、いわゆる「カタリスト」の機能が依然として不足しているためか、日本発の優れた基礎研究が産業や地域活性化に届かないという現状は共通の議題と思っています。
 この課題に対して、論点は3つと考えます。
 1点目は、サイエンスとビジネス・社会の近接化に伴い、知の創造と知の価値化の向上の両立が必要で、基礎・応用・実用化研究を同時並行で進める体制、
 2点目は、従来のディシプリン分野を超えた研究体制や人材育成、
 3点目は、共創エコシステムの形成、すなわち地域経済圏の戦略技術も含め、国内外の多様なステークホルダーと協働する基盤
です。
 経団連様の科学技術立国戦略の提言を以前より拝見しており、本日御説明いただき理解が深まりました。特に企業による積極投資を定量的に示されたこと、中央研究所再興による基礎研究の果敢な挑戦、そして価値創造人材の拡充、は重要です。海外拠点の例にもございましたように、従来型の中央研究所にとじず、大学や自治体などと一緒に新たな「コロニー型研究所」を形成し、産業競争力の強化を見据えた共創拠点と発展させるのは有効と思います。また研究大学群と連動させるというのも考えられると思います。
 また、三井不動産様の御紹介の「カタリスト」は、大学の知を価値創造につなげられる人材として重要でありますが、大学・産業界双方で不足していて、その育成が急務であると認識しています。
 求められる要件としては、厳密に一律で定義せず、大学の裁量で委ねつつも、以下の観点を例として挙げさせていただきます。
 1つ目は、大規模・複数の産学連携です。組織対組織の包括的な共同研究や、複数企業・サプライチェーン全体を巻き込んだコンソーシアム型の連携が挙げられます。
 2つ目は、それに伴う知財・ガバナンス体制の整備です。複雑化するIPの取り扱いや知財合意の形成手法、高度な情報セキュリティ体制の構築が不可欠となります。
 3つ目は、国際連携と人材の流動性です。海外の大学や企業との国際共同研究実績に加え、先ほどご指摘のあった人材流動性を高めるための、企業とのクロスアポイントメント制といった柔軟な人事制度の導入です。
 4つ目は、評価システムの再定義と人材育成です。先ほど野口委員からもお話があった通り、学術的インパクトと社会的インパクト双方を考慮した研究評価や博士課程の要件設定、特許・国際標準化の実績、さらにはRA雇用の拡充やカタリストの育成などが含まれると考えております。
 最後に、大学の改革や基礎研究をイノベーションにつなげるのに、15年以上の長い期間が必要である一方、経済成長や国際競争力を鑑みれば、中核大学群には短期的な成果も期待されていると思います。対立しがちな長期と短期の研究を同時並行、コンカレントで進める大学経営の視点が不可欠と思われます。よって部分最適化にとどまらず、各大学が建学の精神、文化、アイデンティティに立ち返り、ミッションを定義することは1つの鍵になるのではないかと感じています。
 例えば、前回申しましたように、国立大学法人の第5期の中期目標・中期計画の策定にあたり、冒頭で担うべきミッションを再定義してみるというのも1つの有益な一歩になると考えております。
 以上です。
【大野座長】  どうもありがとうございました。続いて、オンラインで千葉委員、お願いいたします。
【千葉委員】  ありがとうございます。現在議論されている大学のイメージ、世界トップレベルの研究力とか産業競争力、地域経済の波及、人材育成、こういうものを掲げられていまして、これは非常に重要だということを改めて認識しております。ただ、その評価指標が論文数とか被引用件数、大型外部資金とか特許数、共同研究件数、起業の数にあまり偏ると、過去の実績という意味合いが強くなると思います。過去が強ければ未来も強いだろうという発想ならいいのですけれども、多分違うのではないかなと思います。
 要するに、本当に必要なのは、日本の新しい強みを生み出す仕組みをつくらなければいけないということです。それを端的に申しますと、今、日本は追いかける競争をまだしていると私は思っておりまして、例えばAIではアメリカを追いかける、量子を追いかける、半導体を追いかける、創薬AIを追いかける。もちろんこの活動は必要なのですけれども、世界一になれる分野はかなり限られているのではないか。これは多くの方が認識しているのではないかと私は推察いたしますが、重要なことは、日本しか持っていない資源であるとか要素は何かということにしっかりと立ち返っていく必要があるのではないかと思います。本当に評価すべきは、世界の課題を日本の資産、広い意味での資産で解く力ではないかなと。要するに、評価軸を一段高いところに持っていくということが必要ではないかなと思っています。
 ある大学が、日本固有の資産なり資源を活用して、世界が抱える課題を解決できるのかという観点です。皆さん御存じのとおり、例えば日本には四季がある、モンスーン、世界有数の森林、海洋、島嶼、超高齢社会、精密ものづくり、食文化、微生物資源、あと災害経験。一昨日も大変不幸な震災がございましたけれども、こういう経験も価値に変換していくということがすごく大事ではないか。これは、ほかの主要国があまり持っていないものであり、日本固有の実験現場であると考えます。ですから、論文力も大事ですけれども、未来を創る創造力、社会全体を設計する力という物の見方をしたらどうかなと思います。
 研究コミュニティも、当然大学、国研、スタートアップが重要ですけれども、地域企業、金融、自治体、市民、海外研究者まで含めた知識生態系というものを日本らしく強くつくっていく。それから、経済貢献もGDPだけを測ってきたというのがこれまでの話でございますが、例えば日本型の博士の人材とか社会需要、安全保障、自然資本、これらはGDPには含まれないのですけれども、国家価値としては極めて重要です。これはやはり日本としてしっかり認識して、こういうものをベースに置いていくという考え方は大事だと思います。
 例えば、大学が自然資本を回復したとか、災害レジリエンスを向上したとか、食料危機リスクを下げたとか、人口減少リスクを抑えたとか、こういうのは日本経済においても極めて重要な大きな価値があると考えております。要するに、GDPをさらに大きく考えたナショナルレジリエンス、これは恐らく想定しているものよりも大きな経済効果も生まれてくると思いますので、ぜひ未来志向型の日本ならではのという形での評価基準、それから、みんなが同じ目標に向かっていくという流れをつくれればと思っております。
 私から以上でございます。
【大野座長】  どうもありがとうございました。それでは鮫嶋委員よろしいでしょうか。
【鮫嶋委員】  鮫嶋でございます。事務局の皆様、そして有識者の皆様、大変示唆に富んだお話、ありがとうございます。
 今回の論点であるビジョンと経済圏への貢献というところについて申し上げます。まずビジョンとして、骨太の分野といいますか、日本としての勝ち筋をしっかりと挙げるということはまず重要かと思うのですが、現場におりますと、そのビジョンをどれだけ共有できているかということが非常に重要かと思っています。これはお互いの産業界のビジョン、あるいは大学のビジョンを理解するというだけではなくて、トップがコミットして、そこの達成に向けて、悩んで、進める、時にアジャイルに動くといったことが非常に重要かと思っています。
 今回、量子の分野の例を出していただきましたけれども、やはり大学とその周辺の間が矢印でつながっている。これが矢印でつながっている間は限界があるかなと思っていまして、特に日本はすり合わせ型の産業が得意だと言われますが、双方が密にコミュニケーションをとる中で、時にはアウトリーチすることもあるでしょうし、周辺のものも集めるといった形で、その実現に向けてお互い取り組むといった仕組みが重要かと思っています。
 量子の例を出していただいていますけれども、例えば量子物理の優れた研究者がいらっしゃる。これはすばらしいことですが、そこと産業化の間には大変大きな壁があります。時に周辺のいろいろな技術を持ってこなければコンピュータとして成立しない、あるいはその応用として成立しないといったことになります。こうしたものをこのすり合わせの中でやっていくということが、実際に産業競争力を評価する上で非常に重要かと思いますし、特定の研究というものもありますが、こうしたことができる場としての魅力というのも産業競争力強化に資する大学としてはあるのではないかなと思います。
 こうしたことを実現するに当たりまして、1つの形としては、産業クラスターのような形がありました。湯川様のお話にありましたように、双方の形があり得ると。私どもの取組でも、大学に研究室を設けて、エンベデッドラボとして押しかけていることもございます。逆向きもまたあるかなと思いますし、そういう中で、小川委員のお話にあった人材流動化というものも自然な形で生まれていくのかなと思っています。
 最後に、こうしたものを支えるための施策として、ビジョンレベルで共有しますと、特定の研究の成功・失敗といった話ではなくて、時間的には少し中長期、あるいはテーマ的にも形を変えた取組というのが必要になってくるケースが多々あるかと思います。よくタスクからプロジェクトへ、プロジェクトからプログラムへといった言い方もしますが、そうした長期でのマネジメントスタイルといったものが、これは政府、そして産業界はもちろんですけれども、大学にも必要になってくるかなと思います。
 以上でございます。
【大野座長】  どうもありがとうございました。それでは、江戸川委員、お願いいたします。
【江戸川委員】  江戸川でございます。
 それぞれ順にコメントしていきたいのですが、まず産業競争力強化へのビジョンのところです。ここは2点ありまして、先ほどの千葉委員の御発言に少し近いところがあるのですけれども、1つ、大学を中心に主語で考えたときには、他のエンティティを巻き込んでいく力というところが非常に重要だと私は思っています。企業ももちろんですが、他の研究機関、他の大学を巻き込んでいくということです。
 それを実現するには、やはり大義が必要で、自分たちが何をやりたいという話ではなくて、世の中の課題をまず自分事化して、その解決策を示していく。そのために、それぞれのエンティティがどう対応していく必要があるのかとか、それが有益なのかということを他のエンティティに話していって、気づきを与えていくということが非常に重要ではないかと思っています。
 企業は様々ですが、特に、長期的な戦略、長期的な視野で企業の経営を進めていくというのが難しい側面もありますので、そういったところで気づきを与えていくことにより、やっと大学と大型の共同研究をやろうかとか、まだ研究段階のものに着手していこうというインセンティブが出てくるわけなので、まずこうした巻き込みをしっかりやっていく、そのためにシンクタンク機能の体制整備などどういう施策を打っていくのかという観点が重要ではないかというのが1点です。
 それから、2点目は、大学がやる取組ということで特に強調したいのですけれども、競合分析です。競合他社、競合技術がどうであるのか。それに対して、我々はどういう戦略をとっているのか。こういう観点というのは、どうしても大学の研究においてはおろそかになりがちであるということと、この取組が10年以上の長期的な取組になると考えた場合に、私の過去の経験からも、10年の間で前提としているところ、競合他社だとか競合技術の状況というのは大きく変わるわけです。
 そうした中で、その変化を適切に捉えて、それに適合した戦略を適切にその都度打っていくということできる、そういう組織である必要がある。そういうところをサポートしていかなければいけないだろうと思っているので、この競合分析、戦略の観点でどう対応していくのかという点については、しっかり評価の中にも入れていただきたいと思っております。
 続いて、「(四)経済圏への深い貢献」というところですけれども、ここでまず重要なのは、研究成果の出口の担い手が誰なのか。これが曖昧、もしくはないままに研究だけが進んでいくということがないように進めなければいけない施策だろうと思っております。特にそこで担い手として、先ほどの話にも通じますが、巻き込んでいった企業の方々が、どれぐらい本事業の事業化にコミットするのかというところも重要になってくると思います。まず前提として担い手がしっかりいることとか、その担い手が本気で取り組んでくれる者であるということが重要にはなってくるだろうと思います。
 もちろん、分野とか技術によっては、現状の企業が担い手になり得ないということで、スタートアップが担い手になる場合というのも想定されると思いますので、そうした場合は、どのようにスタートアップの立ち上げを含めて体制づくり、サポートをしていくのかという点が重要になります。この辺りの良質な支援ネットワークを最初から構築していくということは必要だろうと思っております。
 それから、もう一点ですけれども、企業としっかり組んでいく、経済圏にしっかり貢献していくという観点からは、企業側の戦略と大学群の取組がきちんと適合していなければいけないと思っております。企業の戦略は変わりますし、必ず期限があって物事を進めているということがありますので、こういう出口となる企業の戦略に合わせて柔軟に、しかも期限をしっかり守った形で実行することができる体制というのは必要だろうと思っております。
 最後に、産業界に求められることは何かという観点もありましたので、これは先ほど申し上げたところと少しかぶりますが、やはり産業界のトップマネジメントのコミットメントというのは重要だろうと思っております。研究チームが研究を継続するためとか、そこに箔をつけるために大学と組むという話ではなくて、しっかり事業化を進めていく、産業化を進めていく、そういう本気度みたいなものは求めるべきであり、その結果として適切、かつ十分な資金供給とか、場合によっては、人材や知財の面のリソース投入というところもしっかり要求していくべきではないかと思っております。
 以上でございます。
【大野座長】  どうもありがとうございました。それでは、折茂委員、久世委員、益委員の順番でお願いいたします。
【折茂委員】  ありがとうございます。折茂でございます。本日も、ほかの委員の皆様の御意見にも大変刺激を受けながらお話をお伺いしております。
 3点、議論いただきたい事項ということで書いてございますが、この2点目、1点目、3点目という順番で私から少しお話をさせていただければと思っております。
 まず、我が国において、具体的にどのような姿が想定されるのかというところでございます。先ほどの湯川部長からのお話にもございましたけれども、過去を見ても、何でもかんでもやっていって成功するというものではございませんので、これだけ非常に厳しい国際的な競争環境の中で、残念ながら日本の資源も限られつつあるというところで申し上げますと、集中と連携ということが非常に重要ではないかと考えてございます。
 まず集中というところで申し上げますと、今回17分野のお話なども出ておりますけれども、1つの大学で複数分野というよりは、1つの大学へ、特にこの分野をしっかりと極めていくというような形での集中、フォーカスというところ。
 それから、連携というところも、当然産学というような連携もありますが、もう一つ、これは後ほどの話とも関連してきますけれども、学内もきちんと連携し切る、つまり学内にあるリソースを最大限活用し切るということと、場合によっては、大学間の連携といった意味も含めた連携と申し上げてございます。
 こういったところをしつつ、当然、産、それから官、これは国もあれば、自治体もあると思いますけれども、こういったところでエコシステムをつくっていく、そういった姿が日本型のという意味では重要ではないかと考えております。
 そして、1点目に戻りますけれども、そうした中で、この「(一)産業競争力強化へのビジョン」それから「(四)経済圏への深い貢献」というところで、指標ということではないですが、評価をきちんとしたほうがいいのではないかということについて4点あるかなと思っておりまして、そちらについて1点目の論点をお話しできればと思っております。
 先ほど来、複数の委員から御指摘がございましたけれども、やはりこれだけ非常に厳しい研究環境、産業環境という中で、世界での産業競争力を高めるためには、産業構造上、一体何がポイントになってくるのかということを、これは大学のみならず、産も官も一緒になって、まずはきちんと見極めるということが重要ではないかと思います。全てどこも強いということは非常に難しい状況だと思いますので、一体どこがチョークポイントになるのか、肝になってくるのか、こういったところのポイント。
 それから、2点目ですけれども、そういったポイントを見極めた上で、日本の研究力、全体の強み、こういったところが一体どこにあるのかということ。
 3点目ですけれども、これをこの産業競争力・研究力中核大学群ということに引き戻して考えていったときに、自学の強み、それから連携先大学・企業の強み、ここが一体どこになってくるのかというところのピン留め。
 そして、4点目ですけれども、こういった強みを最大限生かしていくための取組、コミットメントというものが非常にクリアになっている。
 この4つ、1、2、3の見立てというところと、それに対して自学がこういうコミットメントをするのだということをいかにクリアに、そして本当のコミットメントを見られるかということが、指標という形ではないかもしれませんけれども、きちんと見極めていくということが必要ではないかと考えております。
 これ、3点目の話とも少し関連してきますけれども、まず大学という観点で申し上げますと、ベストオブ○○大学というものが本当に出せているのかと。組織対組織と言いつつ、非常に優秀な、外部との連携が上手な研究者の方1人、2人になっていないかと。本来であれば、産業競争力といっても、2つの産業でも非常にサプライチェーンが長うございます。先ほど御紹介いただいた量子の例を取ってみても、非常に長いサプライチェーンの中で、一大学の一研究者、2人の研究者の方だけでカバーできるものではないと思いますので、こういった中で、その大学のほかの研究領域の先生方をいかに連れてこられるのか、ほかの大学の優秀な研究者の方を取り込んでいけるのか、こういったところが1つ、大学の皆様にとって非常に大事なポイントかと思っております。先ほどカタリストというキーワードもございましたけれども、カタリストないしはコーディネーターといったお力、それをする産業界からの人材ということも重要になってくるかと考えております。
 そして、この論点の3つ目です。産業界及び政府としてどのような仕掛け、後押しが求められるのかというところになりますけれども、まず産業界に求められるものというところで申し上げますと、大学が本気で来てくださったときに、企業側も、産業界側も本気を示せるのかということかと思います。これは何となく連携しておきますということではなくて、ちょっと言葉はよろしくないかもしれませんけれども、大学をどう生かし切るのか、使い切るのか、一緒にタッグを組んで本気で連携していくのか、こういったところの戦略を本気で練っていくということかと思いますし、こうした中では、研究所任せにするのではなくて、当然のことながら、企業のトップのコミットメント、ないしはキーとなる人材は、例えば異動させないとか、そういったことも含めたトップからのコミットメントが重要ではないかと考えております。
 そして最後、政府としてという意味で、国、自治体両面からお話し申し上げたいと思いますけれども、まず国レベルというところで申し上げますと、これは対外的に公開するかどうかは別にして、この国の産業競争力の肝は一体何なのかということを複数の分析などを用いてしっかり特定するとともに、それを一体どこの大学・企業に担ってもらいたいのかというようなところの青写真は一定持っていき、それも含めてフォーカスを促進していくということが重要かと思っております。
 一方で、自治体というところで申し上げますと、そういった企業様、大学の皆様が、新しい営み、それから必要な人材もしっかりと吸引できるような産業の後押し、税制的な優遇もあるかもしれませんし、あとは優秀な研究者の方に来ていただくという意味では、研究環境面もそうですけれども、生活環境、これはお子さんの教育ですとか、こういったところも含めて自治体側がどれだけのものを御用意できるのかということも、自治体からの後押しとしてはあるのではないかと考えております。
 以上でございます。
【大野座長】  どうもありがとうございました。それでは、久世委員、お願いいたします。
【久世委員】  千葉委員のご意見にも関連しますが、本制度の評価は、最終的に世界トップレベルの競争力を持つ産業や新産業を創出できるかという観点に立つべきだと考えます。サイエンス、基礎研究、先端技術は重要ですが、それらは出口である産業競争力につながって初めて意味を持ちます。したがって、産業競争力そのものを第一の評価指標として位置付けるべきではないでしょうか。
 マテリアル戦略有識者会議では、AI for Materialsや人材育成を含め、日本としてどのような競争優位を構築するかを議論しています。その中で共通するキーワードは「プラットフォーム」であり、人材、データ、サプライチェーンを横断的につなぐ仕組みづくりが重要と考えています。
 例えば旭化成では、半導体向け層間絶縁材料の開発において、マテリアルズインフォマティクスと自動化技術を組み合わせ、開発プロセスを大幅に高速化しています。東京科学大学の博士課程学生との共同研究開発、ロボットメーカー、半導体製造装置メーカー、分析機器メーカーなどとの連携を通じて、研究開発から評価までを一体化したエコシステムを構築しています。
 この事例が示しているのは、もはや1社単独では競争力を生み出せないということです。大学、企業、サプライチェーンを含むエコシステムを形成し、その中で人材とデータを循環させることが、日本の産業競争力強化に不可欠だと考えています。
 産業界には、短期的な効率化を重視する経営から、研究開発や人材への長期投資を重視する経営への転換を期待します。また、企業内の壁、企業間の壁、大学との壁を越え、構想段階から産学が一体となって取り組む仕組みづくりが必要です。
 政府には、人材流動化を阻害している制度や運用上の制約の見直しをお願いしたいと思います。クロスアポイントメントや兼業制度は存在しますが、実際の運用では依然として制約が大きいのが現状です。大学、国研、企業の間で人材が柔軟に移動できる環境を整備しなければ、世界トップレベルの産業競争力を持つ新産業の創出は難しいと考えます。
【大野座長】  どうもありがとうございました。それでは、益委員、お願いします。
【益委員】  ありがとうございます。それでは、3つほど述べさせていただきたいと思います。
 第1点は、人材育成を、この研究大学の最も重要な評価指標の1つとして位置づけるべきだと思っています。共同研究の金額、特許、スタートアップ創出も当然重要ですが、最終的な産業競争力の源泉はやはり人材です。特に博士人材の育成は重要な指標です。その際に、どうしても理工系の博士だけに着目しているようですが、そうではなくて、将来の行政や政策形成を担う人文社会系の修士、博士を含む高度専門人材。さらには、超高齢社会を支える医療・健康分野、とりわけ医師資格を持ちながら研究をけん引する博士人材の育成も評価すべきと考えます。我が国の競争力や持続的発展は、高度な専門人材によって支えられると思います。
 第2点は、研究力中核大学、これは個々の大学の強化ではなく、研究開発エコシステムの中核として捉えるべきという点です。個人的には、選択と集中そのものには賛成です。しかし、選ばれた大学だけが強くなっても日本全体の研究力や産業競争力は強くならないと思っています。例えば、半導体、量子、AIなどの分野では、旧帝国大学とか大規模研究大学であっても、1大学だけで世界と戦うことは現実的には困難です。重要なのは、強みを持つ大学が中核となり、他大学、国研、企業、スタートアップを巻き込みながら、研究開発イノベーションエコシステムをつくるという発想が必要だと思います。研究力中核大学には自らが強くなるだけではなく、他大学の強みを取り込んで、日本全体の研究力を押し上げるハブとしての役割を期待したいと思います。
 その際の指標として、日本は実は経済複雑性指標、複雑なものを作れるという力は世界でも1位、2位を争っています。そういう経済複雑性指標を高めるとか、それを生かしているとか、そういった視点が重要かと思います。
 第3点は、国研並びに産業界にも研究開発のエコシステムの当事者としての役割を求めるという点です。先ほど来言っている量子、AI、半導体、さらにバイオの分野では科学とビジネスの距離が急速に近づいております。一方で、多くの企業では事業環境の変化もあり、企業単独で長期的な研究開発を維持することが以前より難しくなっていると理解しています。こういう時代だからこそ、大学による知の創出、国研による研究基盤の整備、技術の高度化、社会実装、さらに企業による事業化や市場創出を結びつける研究開発イノベーションエコシステムが重要になります。国研自身も研究開発イノベーションエコシステムの1つであると認識すべきと思っております。
 また、産業界はサプライチェーンの重要性をよく指摘されますが、研究から開発、人材育成、社会実装、ビジネスまでを支える研究開発エコシステムについても同様の視点が必要ではないかと思います。サプライチェーンには投資する一方で、知を生み出す側には十分な投資を行わないということであれば、長期的な競争力は維持できない。大学への投資をコストと考える企業は、長期的な競争力を失うと思います。大学への投資はコストではなく、知を生み出す研究開発エコシステムへの投資であり、自らの将来の競争力の投資だと思います。
 近年、政府は、大型の研究開発投資を行っていますが、将来の競争力の源泉への投資は政府だけが担うものではなく、産業界自身が人材育成、研究基盤整備に積極的に参加し、エコシステムの一員として長期的にコミットしていただくことを期待しています。
 繰り返しですが、産業界自身も大学を支援先ではなく、将来の競争力を共につくる投資先と位置づける発想へ転換していただきたいと思います。さらに、この制度が単に大学を選ぶという制度ではなく、日本の研究開発システムそのものを強くする制度になるということを期待しているところです。大学単独で何を達成したかではなく、大学、国研、産業界が一体となって、我が国の研究力や産業競争力をどこまで高めることができたかで評価すべきと思います。
 最後に、これ、前回も言ったと思うのですが、大学の支援プログラムは多々あります。大学にいた者としては、本当にありがたいことだと思っておりますが、残念ながらまだ部品レベルになっていて、全体のシステムを最適化するというところになっていないということは、改めて一緒になって、よいシステムをつくるということを進めるとよいかと思っているところです。
 以上です。
【大野座長】  どうもありがとうございました。小川委員は何か御発言がありますか。
【小川委員】  ありがとうございます。何名かの方々から人材の流動化のところについて御賛同いただきました。また、波多野委員から企業の中央研究所の再興というところに御共感いただきまして、ありがとうございました。
 以前は、企業の中央研究所から大学に行かれたり、また、その逆もあったりということで人材が流動して、それで企業と大学との間の距離が縮まるところがあったという御意見は、経団連でもありました。中央研究所が細ったことによって、そうした人の行き来が細くなってしまって、今なかなか死の谷を越えるところの架け橋が架けられないという問題意識から、中央研究所の再興を提案いたしましたが、これは自前主義に戻るということではなくて、まさに開かれた中央研究所という意味で書かせていただいているところでございます。
 それから、もう一つ、皆様からの御意見で共通していたのは、やはり大学への支援について、大学を選ぶのではなくて、その周りの企業、サプライチェーン、それから大学も大学の中だけではなくて、他大学も含めてのエコシステムをつくるのだというところが共通していたかと思います。
 その点で言えば、先ほども申し上げましたが、今、地域未来戦略で戦略産業クラスターという17分野ともひもづいた形でのクラスターの形成ということが進んでおります。今回の新しい大学群の候補となり得るような大学は、そうしたクラスターの中核になり得るようなところも数多く含まれるのではないかと存じます。そういった大学は、もう既に地元の経済界、産業界といろいろな連携の実績もあったり、その地域の強みのある産業としっかり連携して研究していらっしゃったりという素地があると思います。そうしたことを無視するのではなく、むしろそことも連携して、しっかりと地域から新しい競争力のある産業をつくっていくための大学として、エコシステムの中核となっていただく必要があると考えております。
 ですので、今回この大学群に関しまして、経産省と文科省がタッグを組んで、共同でやっていただいていることは非常にありがたいことですが、それにとどまらず、政府内で地域未来戦略ですとか、あと、既にスタートアップ・エコシステム拠点都市など各地に置かれていますが、そうした既存の枠組みなどともばらばらに動くのではなく、本当に競争力のあるエコシステムを生み出すというところに全ての施策を集中して、連携して総力を投じていただくということが大事であると改めて思っております。
 以上でございます。
【大野座長】  ありがとうございました。
 これで委員の皆様は御発言をいただきました。関係省庁からの御意見もいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。それでは、上山内閣府参与、お願いいたします。
【上山内閣府参与】  このWGは、新しい産業競争力に貢献するような大学群をどういう基準で選んでいくかということを議論する場だと思います。
 まず最初に、産業競争力というのは一体何なのかということを、経産省側でそのビジョンをきちんとつくるべきだと思います。産業という言葉で我々が思い浮かべるような20世紀型の産業ではない産業構造というのが明らかに生まれてきているわけで、それはとりわけ、知識集約型の産業へと転換している。では、その知識集約型の産業の競争力とは一体何なのかということをまずは定めなければ、それに資するような大学群を選ぶということは難しいだろうと思います。
 AI for Scienceとよく言われますが、AI for Industryというのもある。あるいはAI経済圏が形成されつつあると思います。Industryそのものが新しい知の基盤の中で大きく変わってきているということで言えば、一体どのような大学の知識が必要になってくるのかということが出てくると思います。グーグルが自分たちの本社をキャンパスと呼んで、数学者や哲学者をどんどん雇っているということで見ても、基礎研究から発生するような知の基盤というものが、その知識集約型の産業構造にとって極めて重要だという認識が高まっているのだと思います。
 特にAIの分野で言えば数学です。そのような基礎研究に対する支援だけではなく、それをエンカレッジしていくような方向性を考えるべきで、その意味では、産業とは一体何なのかということをまず議論しなければいけないということが1つです。
 それから、しばしば私は、City as Campusという言葉を使うのですが、今、地域貢献ということで言うと、地域の市、あるいは県でもいいですが、それ全体をキャンパスの延長線上として見ていくという形にだんだんなってきていると思います。その地方における、例えばエネルギーミックスの問題、自動運転の問題、あるいは地域全体のDX化の問題に関して言えば、それは大学に新たな知恵出しの機関を求めていくというのがキャンパスとしての都市の在り方ということで言えば、そのようなものは一つ一つに産業がくっついてくるわけですから、それは産業競争力という意味での地域の産業競争力に資する形になっていくだろうと。その上で、まず言いたいことは、産業競争力とは一体何なのかと。まずそれを定義しなければいけない。これが1点目です。
 そのようなことをちゃんと定義した上で、引き受ける大学というのはどういうものになるでしょうか。従来の高等教育行政で考えられていた大学は、教育を中心に供給する、あるいは既存の研究を供給していく側の論理です。その論理から離れて、いわばユーザー目線の、もっと踏み込んで言うならば、大学研究と人材のマーケティングです。知識のマーケティングの構造を学校の中に用意して、それを引き受けることができるような大学ということになると思います。つまり、これだけ流動化していく産業競争力で言えば、標準化された教育プログラムとか、標準化された知識の構造などというものは、新しい産業構造にはもうほとんど役に立たない時代がやってきている。ということで言えば、その標準を突破していけるような教育や研究のプログラムを自らで開発できるかということが求められていると思います。それをつくっているような大学を選ぶべきだと。これが2つ目です。
 もう一つは、大学側がこのような新しい産業構造をきちんと認識した上で、自らが持っている研究と人材のリソースをパッケージとして組み立てる能力があるかということです。つまり、知識の構造に関して、それが産業的にも意味のあるようなビジョンをまず立てるということ。そのためにはビジョナリーな人間が大学の中にいる必要があるのです。さらに言うと、様々な専門シーズを組み合わせていくような能力です。これはいくつかの研究シーズのパッケージとしてそのビジョンに合うようなものを作っていく、ある種のパッケージプログラムを作っていくことができるということ。さらに言うと、それを売っていくような、アウトリーチの仕方に関して専門知が要るということです。
 ですから、今の産業構造に資する大学ということで言えば、自らの持っているリソースをきちんと分析して、その中におけるリソースのパッケージを作っていける能力、そのために恐らくは、学内シーズのアクセラレータとか、学内シーズのインタープリタ、トランスレータみたいな、こういう人間を育てていかなければいけないということだと思います。
 そのためには、研究の能力もあると同時に、社会的な課題についての非常に鋭いビジョンを持っている必要がある。その人たちには一つ一つの研究シーズに対して、このようなパッケージの中で社会的なニーズに対応でき、それを我々は売っていけるのだというマーケティングの能力が求められる。こういうものをつくってくださいよと提案できる体制です。そういうものが現実にないとすれば、産業競争力に資する大学はなかなか選べないではないかと思います。
 そういう意味では、まずはどのような産業競争力を我が国として目指していくのかについてのきちんとしたビジョンをつくるということと、そこを前提として大学に何を求めていくのかと。さっき2つほど申し上げましたけれども、そのようなことをきちんと書いていくということが、この産業競争力に資するような大学群を選ぶときの基準になるだろうと思います。
 ですから、最初のクエスチョンのところは、経産省の役割が非常に強く求められる。経産省がそこをやるのでしょうねという産業のビジョンです。それをぜひやっていただきたいと思います。ありがとうございます。
【大野座長】  ありがとうございました。オンラインで宮園議員が挙手をされておられますので、御発言いただければと思います。
【宮園CSTI議員】  どうもありがとうございます。先ほどから皆様からの御意見をお聞きしまして、私もいろいろな点に同意するところでございます。
 今日、私は第7期の科学技術イノベーション基本計画の観点から少しコメントさせていただきたいと思います。
 第7期の基本計画では、まず大野座長が中心となってまとめられました、知の基盤としての科学の再興ということで、基礎研究を活性化しようということが出されました。新たな研究領域の創造を推進し、例えば科研費を倍増する、あるいは大学の運営費交付金を強化するといった様々な施策が出されております。一方で、日本は博士号の取得者がこの20年間横ばいであることから、これをどうやって増やすかといったことも含めて、今、様々な施策が進んでいるところであります。
 それから、もう一つ、機器の共用化です。EPOCH(先端研究基盤刷新事業)という事業の準備が進められておりますけれども、様々な高価な機器を各大学、あるいは各地方で共有するような施設をつくることで、研究環境の整備といったことを進めております。様々な指標を出しておりますけれども、これは国際卓越研究大学からJ-PEAKS等に加えて、多くの研究大学が協力することによってのみ達成できるものと考えておりますので、今回の施策については非常に心強く思っているところであります。
 基礎研究を強く推進するという一方で、そこから生まれてきた様々な研究成果を社会実装につなげるということが多くの方のコメントにもあるところですけれども、その中で第7期の基本計画の中では、波多野委員から御指摘がありましたとおり、17の分野を新興・基盤技術領域ということで選定しております。その中の国家戦略技術領域として6領域、これは基本計画の中ではAI・先端ロボット、量子、半導体・情報通信、バイオヘルスケア、フュージョンエネルギー、それから宇宙といったところを挙げています。もし可能であれば、画面共有できればありがたいのですが、できますでしょうか。これは見えておりますでしょうか。
【大野座長】  見えています。
【宮園CSTI議員】  この中で、こういう図を使っておりまして、自由な発想に基づく研究から、これを応用研究、開発研究から社会実装につなげていくと。その中で、この17の領域でどうやって実際に一気通貫の支援をしていくかということで、このような図をまとめております。先ほどから出ておりますが、人材育成の強化、研究開発投資のインセンティブ重点化、大学等の研究拠点との連携強化、スタートアップ等支援、オープン&クローズ戦略策定支援、そして国際連携の強化ということです。
 今回の大学群におきましても、もちろんこれを全て満たしていただくというわけにはいかないと思いますけれども、何かこういったところにどこか強みがないか。例えば、人材育成の強化において強みがないか。また、今回この国際戦略領域に代表されますように、研究開発税制において様々な工夫がなされております。こういったことにおいて何か貢献するところがないか。あるいは、スタートアップの支援。先ほどもスタートアップ支援で、地域のスタートアップ・エコシステム拠点都市等の話が出ましたけれども、こうした地域の強みを生かしたスタートアップ等の支援ができないか。そうした様々な形でこれらを検討しながら、各大学で自分たちの強みを出していただけるようなことをお願いできればと考えている次第です。
 第7期基本計画が出ましたけれども、これがきっかけとなって日本の研究を活性化し、産業との連携をぜひ強めたいと。正直言いまして、産業界の方は第7期基本計画をよく読んでいただいて、いろいろな御意見をいただきますけれども、逆にアカデミアのほうがまだ十分に浸透していないのではとも思います。ぜひこの機会に、皆様にこうしたことを検討していただければと思っている次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
【大野座長】  ありがとうございました。それでは股野局長、お願いいたします。
【股野局長】  外務省の股野でございます。この貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
 中身というよりも違った視点で、特に本日は三井不動産様から都市の産学連携のお話があった中で、私も仕事柄、特にアメリカを中心にいろいろな大学のキャンパスを回る機会がありますが、日本との違いで一番気がかりな点として、特に今後、国際頭脳循環や国際連携を進め、人材を引きつけていく上で、箱物、キャンパスの施設・環境の整備状況や維持管理のあり方が非常に気になっております。単にキャンパス内の建物の老朽化ということだけではなく、例えば雑草がぼうぼうと生えていてもみんな平気だと、植栽等の維持管理が十分に行き届いていないように見受けられることもあります。
 これがいわゆる「清貧」の発想で、日本は研究ができればそれでよい、必要最低限の環境で研究を回せれば、それに集中すればいいという発想があるのかもしれません。せっかく産業競争力強化ということで企業、地域と連携していくのであれば、やはり海外のスタートアップ企業や大学のキャンパスを見ていても、収益を上げることが悪いことではなく、研究成果を通じて利益が生まれ、それによってキャンパスや研究環境が充実していくことが不自然ではないという発想があります。日本もこうした発想に切り換えないと、恐らく海外の研究者が日本に来たときに、冷房が効いていない、雑草が生えているといった十分な施設・環境が整っていない中で、とにかく研究に没頭しましょうというだけでは、なかなか今後は人を引きつけていけないのではないかというのは、常に感じていることでございます。
 言うは易しではありますけれども、特に国際連携していく上では、せっかく産業界と組んで取り組むのであれば、そういうところの発想も変えていったらいいのかなという気がしたものですから、一言発言させていただきました。
【大野座長】  ありがとうございます。ほかに御発言はよろしいですか。
 まだ少し時間がありますけれども、プレゼンテーションいただいた湯川様、何か御発言はございますか。
【湯川部長】  最後にすごくいい意見を聞きました。実は日本の大学のキャンパスには、良い建築物が結構多いのです。そんなにお金がかかることではないので、少し意識して手入れを行うことで大分変わっていくのだよというのは、まさにそのとおりだと思います。そして、その様な意識が、良い研究者や学生が集まることにつながっていくと思います。
 
【大野座長】  ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。まだ少し時間はございますけれども、最後の御挨拶も含めて考えますと、そろそろ私も発言をさせていただく時間になったと思いますので、発言させていただきます。
 まずは、皆様から大変貴重なコメントをいただきまして誠にありがとうございます。日本企業が大型の共同研究の相手先として海外の大学を選んでいるということはよく知られていることだと思います。それらを全部日本の大学にということではございませんけれども、日本の大学はどうあるべきなのかということをそういうところから考えると、今既にいろいろなお話が出たことですが、共同研究というのは1つの手段であって、それで何をするかというと、産業競争力を上げるということが非常に大きな我々の共通の課題だと思います。
 その点で、もう既に何人かの方々が触れられましたけれども、産学が将来像を共有するということ。人材育成についても、保護された環境の中だけで育てるということではなく、実際の研究開発や事業化の現場に身を置き、その厳しさを知る中で育つということが大事だと思います。そこから事業化、標準化、さらにはサプライチェーンの形成までを視野に入れて、我が国の新たな産業競争力の在り方そのものを共に構想し、つくり上げることができる仕組みになるべきだと思います。
 そういう意味では、研究力、共同研究実績などは持っていることが重要だとは思いますけれども、今回の対象となるのは、産業界とともに日本を成長軌道に乗せるという意思と構想を持って、そのために自らが変わり、資源を再配分し、適切なリスクを負って行動できるということを示していただく必要があろうかと思います。その具体的な姿は多様であり、1つの形に入れ込むべきではないと思います。今回のお題の経済圏への深い貢献についても、地域経済圏は非常に重要なので、それはもちろんのことですけれども、地域経済圏に加えて、全国的・国際的な産業やサプライチェーンによって形成される経済圏も含まれると私は理解しています。
 何人かの委員の方々がおっしゃっておられましたけれども、こういう大学を選ぶに当たって、これは大学だけに努力を求める制度であってはいけないと思います。産業界にも経営層が将来像の策定に参画し、人材、資金、事業化を含めて大学と同様にリスクを取ってコミットするということが求められると思います。
 長期に支援すべきだという御意見がありました。企業にとって長期にコミットするということはリスクそのものなわけですが、経営環境が変わったときにも、大学と企業がエコシステムとして柔軟に対応していくことが求められるということかと思います。ある意味、これは経団連が主張しているような産学融合の具体的な場となるのだと思います。
 政府も研究及び産学連携を効率よく進められるように、制度と規制を見直す必要があります。これは本制度だけに関わる話ではなく、今、説明責任を果たすための管理や手続きに膨大な時間を使っています。真綿で首を絞められるような状況で、動きたくても動けない、研究する時間、あるいは実際に何か活動する時間がなくなるのではないかと思われるぐらいの状況だと言われる方もいらっしゃいます。これは我が国の競争力をそいでいることは明らかであります。
 産学の共創を実質的なものにしていくには、必要な説明責任を確保しつつ、管理や手続き、評価を簡素化し、成果と価値創出が中心であるという仕組みに国全体が転換する必要があります。具体的には、今日も出ましたけれども、クロスアポイントメント
の手続きであったり、あるいはWTOの関係で、国立大学が寄附を受けて建物を建てようとすると、民間で建てるときに比べると時間が倍かかる。民間が1年でできる場合は、国立大学は2倍かかる。国研もそうですけれども。時は金なりです。制度を変えるのはなかなか難しいという話はたくさん聞きますけれども、そろそろ何とかしなければいけないのではないかと思っています。
 どなたかも御発言されましたけれども、両省におかれましては、これから概算要求に取り組まれることになります。本施策が我が国の研究力と産業競争力を一体として高め、これから日本が成長するために必須の重要な施策であるということをぜひ関係方面に十分に御説明いただいて、施策の実現に向けて取り組んでいただきたいと思います。
 日本の産業競争力を本制度の下でつくるという視座を、大学・国研はもちろんのこと、産業界、政府の3者が共有することが極めて重要だと考えております。それぞれの役割をそれぞれのエンティティが果たし、共に日本の成長をつくる制度として具体化できるよう皆様のお力をいただきながら、引き続き議論を進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは以上でございまして、最後、繰り返しになりますけれども、本日は皆様から貴重な御意見をいただきました。改めて御礼を申し上げます。皆様からいただいた意見等を踏まえて、第3回以降のワーキンググループでは、さらに深い議論ができればと思います。
 それでは、閉会に当たりまして、文部科学省科学技術・学術政策局の西條局長に御挨拶をいただきます。
【西條局長】  文部科学省科学技術・学術政策局長の西條でございます。
 本日、非常に活発な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。今回は産業競争力強化へのビジョン、また、経済圏への深い貢献、こういったものを中心にではございましたけれども、かなり広い御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
 我々もいろいろ構想はしているものの、我々だけでやっているとなかなか詰めが甘いところもありまして、今日ももちろん人材育成の重要性というところから始まって、それからまた、いわゆる集中と連携という言葉がありましたけれども、巻き込んでいく力、この巻き込みというのは、いわゆる基礎研究から社会実装、それだけではなく、ビジネスも含めて、さらに今日はエコシステムという形でお話もいただきましたが、そういったところをどうつくっていくのか。これが将来的には日本の研究開発システム改革にしっかりつなげていくというところにつながっていくということの重要性というところも御示唆いただきました。
 私も2000年度に省庁を再編した直後に、まず産業連携課の補佐をしまして、そのときから皆様とお付き合いさせていただいているところもあるのですけれども、その後、産業連携課長というのを15年後にやって、今このポストにいるという形なのです。
 ずっと産学連携とは言ってきているのですけれども、その形にだんだん近づいてきているというところもあり、今日も産学融合というお話もありましたが、大学と産業界はしっかりとしたパートナーとして、何となく今日も支援という形ではなくて、投資なのか、もう一つは、本当に一緒に働くというような環境をつくっていくためのこの場になるようにというところは、本日も強く感じたところでございます。今回いただいた御意見を踏まえまして、もちろんこれ、我々の仕事としては、しっかり制度に落としていかなければいけないというところでございますので、そこをしっかりと検討していきますし、また、その段階でいろいろ御意見をいただきたいと思います。
 まずは、これから予算要求という我々にとって非常に大きな仕事が待っておりますので、そういう意味では、そこに向けてこれがしっかりと回っていくような予算規模のものもしっかり確保できるように、まずは要求というところから始まり、年末に向けては、それを我々のほうでも確保していくことで、しっかりと進めていきたいと思っています。
 股野局長から施設が古いというのがありましたけれども、確かにそれは、金を稼いで悪いというマインドから、みんなが楽しく集まれる、楽しいだけでは駄目なのでしょうけれども、そういった場をつくっていくというマインドを変えていくというところも非常に重要だなと。今日もプレゼンいただいたような、海外では、地方の都市でもそういったことが起こっているというところもございますので、そういったものをどこまで我々ができるかというところはございますが、これはやらなければいかんと思っております。ぜひとも引き続き、御指導、御協力を賜ればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
【大野座長】  どうもありがとうございました。それでは、続きまして経産省のイノベーション・環境局、今村審議官から御挨拶をいただきたいと思います。
【今村審議官】  イノベーション・環境局審議官の今村でございます。
 本日、局長の菊川がこの議論を非常に楽しみにしていたのですけれども、地震の関係で、経産省の対応チームの陣頭指揮を執っておりますところ、参加できなかったということでございまして、この議論はしっかりと報告をさせていただきたいと思っております。
 本日、御発表いただきました経団連の小川委員、三井不動産の湯川様におかれましては、本当に重要な論点、それから諸外国の具体的な取組事例を御紹介いただきました。本当にありがとうございます。
 本日の議論を聞いておりまして、やはり何点かキーワードみたいなものがあったのかなと思います。例えば、カタリスト人材の不足、必要性について、評価が過去の成果ではなくて、未来志向であるべきこと、企業の中央研究所の廃止であったり先細り、こういったところが人材流動化に影響を与えていること。
 それから、上山先生から、そもそも産業競争力というのは何かというところをしっかり定義しないと、大学にどういうことをやってもらいたいのか、どういう大学になってほしいのかというところを示していくことが非常に難しいのではないかということもありまして、我々としても、どういうビジョンにするのか、そもそも産業競争力とは何かといったところからしっかりと検討していかないといけないなと思いました。
 また、まさに先ほども西條局長と股野局長からもありましたが、キャンパスが汚いというところについて、魅力の中の非常に大きな割合を占めるところかなと思っていまして、やはり中身も大事ですが、外見も大事ということで、両方そろってこそ魅力あるシステム、大学というのができていくのかなと思いますので、ぜひこういったところも課題として、この産業競争力・研究力中核大学群の中では実現していければなと思っております。
 それから、大野座長から、こういった実現に向けては、大学の取組だけではなくて、産業界のコミットが必要だということもありました。加えて、政府の制度、政策面の後押しというのが必要だということがあるかと思いますので、この辺り、皆さんの御意見を踏まえて、しっかりと検討していきたいと思っております。
 局長の菊川が到着しましたので、最後に。
【大野座長】  陣頭指揮、御苦労さまです。議論を全然聞かれていないのですけれども、御挨拶をお願いします。
【菊川局長】  本日は皆様、御多忙のところ貴重な御議論をいただきまして、本当にありがとうございます。災害対応の関係で冒頭から出席することがかないませんでしたので、後ほど議事録をしっかりと確認し、今後の議論にも尽力してまいります。また、各省の皆様におかれましても、御協力いただきまして本当にありがとうございます。省内でもしっかりと検討を続けたいと思います。
現在、政府を挙げて災害対応に取り組んでいるところですが、本日の議論も非常に重要なものであります。経済産業省としてもしっかりと取り組んでまいりますので、委員等の皆様におかれましても、引き続きよろしくお願いいたします。
【大野座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、最後に事務局から連絡事項について御案内をしていただきたいと思います。
【宮崎室長】  本日は、改めましてどうもありがとうございました。本日の議事録につきましては、事務局で作成させていただき、関係者の皆様に御確認いただく予定でございます。次回以降については、9月に第3回の開催を予定しておりますので、皆様、どうぞ御参加いただけますと幸いです。
【大野座長】  どうもありがとうございました。本日は小川委員、そして湯川様、発表をありがとうございました。また、委員の皆様、関係省庁の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございました。
 本日は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。
 
                                 ――了――
 

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