わが国の日本食品標準成分表は、昭和25年に公表されて以来、日本人が常用する原材料的食品の標準的な成分値が収載されてきた。一方、人は通常、原材料的食品を単独であるいは組み合わせて調理・加工を行い料理とし、それを組み合わせて食事を整え摂取している。調理・加工は、家庭および企業で行われているが、近年は、企業で作り販売されている調理加工食品類の生産量の増加が著しく、今後もさらに増加するものと推察される。
日本食品標準成分表にいわゆる料理として調理加工食品群の収載が行われたのは、昭和57年に公表された四訂日本食品標準成分表からであり、15種類、18食品が収載されている。現時点での最新の成分表である五訂増補日本食品標準成分表
(以下、五訂成分表)では、調理加工食品群に15種類、16食品が収載されている。さらに、この16食品の収載成分値は、他の食品群と異なり、マグネシウム、亜鉛、銅、マンガン、カロテン、クリプトキサンチン、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、および食物繊維(水溶性、不溶性、総量)の収載がない。さらにビタミンE(α‐トコフェロール、β‐トコフェロール、γ‐トコフェロール、δ‐トコフェロール)、脂肪酸(飽和、一価不飽和、多価不飽和)およびコレステロールの収載は、4食品だけで行われているにすぎない。
したがって、現時点で、日本人が摂取している調理・加工食品の成分値を、五訂成分表から得ることはできない。また、各料理の成分値をその料理の材料食品の成分値(五訂成分表の収載値)を用いて算出することも可能であるが、料理を構成する材料にわけ、調理損失を考慮した成分値を算出することは、栄養士・管理栄養士でなければ難しい。そこで、流通量の多い調理加工食品(料理、惣菜)を日本食品標準成分表に収載することは、利用者の便や国民の実摂取栄養量の把握のために必要と考える。
そこで、日本食品標準成分表へ収載してほしい調理加工食品(料理)について、日本食品標準成分表を最も利用するユーザーである都道府県栄養士会を対象に、アンケートを行い検討した。ついで、調理加工食品生産企業を対象に調理加工食品の生産量等を調査し、併せて主要な調理加工食品の成分分析を行った。加えて、基本的な調理加工食品とは何かを産業給食企業を対象に調査し、その基本的な調理加工食品のレシピ(材料配合割合)を収集し、レシピを用い調理損失を考慮した料理の成分量を算出し検討した。さらに、主要な調理加工食品を収集し成分分析を行い製造メーカーによる相違等を検討した。また、分析値と計算により算出した成分量とを比較検討し、料理の成分値を計算で算出する可能性を検討した。これとは別に主菜の1つである豚肉についてモデル調理を行い、調理による成分変化率を明らかにした。
各都道府県栄養士会へ日本食品標準成分表に収載してほしい調理済み食品についての調査を行った。
調査用紙(様式‐3)を依頼状といっしょに、送付し回収した。調査期間は、2009年2月~2009年3月である。回収率は、55%であった。
表2‐1‐1に、各県別の収載してほしい食品を主食、主菜、副菜、その他に分けて詳細に示した。なお、主食は、米飯類、めん類、パン類およびその他に細分し、主菜は、肉類、魚介類、卵類、豆類およびその他に細分化した。また、表2‐1‐2に学校健康教育栄養士協議会、表2‐1‐3に集団健康管理栄養士協議会、表2‐1‐4に福祉栄養士協議会、表2‐1‐5に病院栄養士協議会、表2‐1‐6に地域活動栄養士協議会、表2‐1‐7に行政栄養士協議会、表2‐1‐8に研究教育栄養士協議会の結果を示した。表2‐1‐9に全調査結果から希望の多かった食品を主食、主菜、副菜にまとめて示した。
表2‐1‐1~2‐1‐8から、成分表のヘビーユーザーである栄養士・管理栄養士が収載してほしい調理加工食品を、各協議会別に明らかにすることができた。各協議会の栄養士・管理栄養士は、主たる対象者が異なっている。各協議会の主たる対象者は、学校健康教育栄養士協議会:小学校、中学校、高等学校および特別支援学校の児童・生徒、集団健康管理栄養士協議会:健康な大人、福祉栄養士協議会:福祉施設に居住する人、病院栄養士協議会:疾病を持つ人、地域活動栄養士協議会:あらゆる世代の健常人、行政栄養士協議会および研究教育栄養士協議会:国民全般である。したがって、各協議会の収載してほしい調理加工食品は、各協議会が主として対象とする人にとって常用していると考えられる調理加工食品と推察される。
しかし、今回、調査に回答が無い県の情報は不明であるため、これら各県の栄養士会からも回答を得て、今回のデータに加えて解析することが望まれる。
表2‐1‐9に要望されている食品のうち、五訂成分表に収載されている食品に*を付した。五訂成分表の料理では、調理加工食品は、調理加工食品群だけでなく、その料理の主材料が所属する食品群に収載されている場合がある。例えば、おにぎり:主材料が飯・穀類、厚焼き玉子:主材料が卵・卵類、うどん:主材料が小麦・穀類、煮魚:主材料が魚・魚介類などである。
今回の調査で、各栄養士会が日本食品標準成分表に収載してほしい食品として要望した食品には、調理加工食品群に収載されている食品も多数みられた。このことは、五訂成分表の調理加工食品類の食品は、他の食品群に比べ収載成分項目数が少ないため、この食品群の成分値を栄養価計算に用いると栄養価の精度が低下することによると推察される。
一方、五訂成分表の穀類に収載されている「おにぎり」、「赤飯」など、豆類に収載されている「煮豆」などは、収載値があるのにもかかわらず収載を望む食品になっていたことは、日本食品標準成分表が管理栄養士・栄養士にさえも熟読されていないためと推察される。
そこで、各食品群に分散している調理加工食品を調理加工食品類(料理)に再掲し、新調理加工食品群にすることも一考であろう。また、表2‐1‐1~2‐1‐8に記載されている日本食品標準成分表への要望事項である「調理変化率一覧」、「揚げ物の吸油率」などを資料に加え、調理加工食品成分表を五訂成分表の別冊として作成することで、成分表の活用度が増し熟読する機会が増加すると推察される。
都道府県栄養士会に、1.1)の調査の際に、主要な料理のレシピがあれば送付するようにお願いした。
青森県、山形県、長野県、山梨県、岐阜県、大阪府、静岡県、兵庫県、岡山県、広島県、香川県、大分県、熊本県からレシピを収集した。表 2‐1‐10に都道府県別の調理加工食品のレシピを示した。
これらのレシピは、各県では標準となるものであるため、日本食品標準成分表に収載する料理のレシピを検討するために活用できる。しかし、13県からの収集であるため、全国の28%しか把握できていない。今後、これ以外の都道府県の栄養士会から収集し、解析することにより日本食品標準成分表に収載することが望ましい調理加工食品のレシピを検討する資料が作成できる。
生産量:調理加工食品の中で、流通量が多い冷凍食品とレトルト食品について関連団体のデータを利用して調査を行った。
販売順位:日経テレコン21(http://telecom21.nikkei.co.jp/)の販売時点情報管理(POS)情報検索から全国のスーパー、生協、コンビニエンスストア等で2008年10月~12月に販売された調理冷凍食品、レトルト食品の販売動向を調査した。
主要メーカーアンケート:POS情報による調査の結果、販売量の多かった調理冷凍食品及びレトルト食品のメーカーに対し、自社製品の栄養成分データをどのくらい保有しているかを調理冷凍食品、レトルト食品の主要メーカーそれぞれ10社に調査用紙(様式‐4及び様式‐5)を送り、アンケート調査を実施した。調査期間は、2009年2月~3月で、回答は調理冷凍食品メーカー8社、レトルト食品メーカー7社、計15社からあった。
生産量:冷凍食品の国内生産量は平成10年以降ほぼ横ばいで、平成19年では年間約150万トン(金額は約6700億円)であった。平成19年の冷凍食品全体の生産量を100とすると、調理食品の割合は約85%と冷凍食品の大部分を占めている。このうちフライ類が約24%、フライ類以外が61%であった。生産量の多い調理冷凍食品上位10品目を表2‐2‐1に示した。この中の上位5品目は最近の5年間順位の変動はなかった。
一方、調理冷凍食品の輸入量は平成9年以降年々増加し、平成19年で約30万トン輸入されている。品目ではフライ類が全体の約2/3であり、主な生産国は中国、タイであった。
レトルト食品は平成19年の生産量は約31万トンで前年比102%と増加している。品目別ではカレーが全体の40%以上を占め、次にパスタソースや中華合わせソース等の料理用調味ソースの順となっている。生産量の多いレトルト食品上位10品目を表2‐2‐2に示した。
表2‐2‐1 生産量の多い調理冷凍食品(平成19年)
順位 | 品目名 | 生産量 (トン) | 構成比 (%) | 前年比 (%) |
---|---|---|---|---|
1 | コロッケ | 155,050 | 10.2 | 98.0 |
2 | うどん | 144,382 | 9.5 | 93.5 |
3 | ピラフ、炒飯 | 118,496 | 7.8 | 103.7 |
4 | カツ | 78,932 | 5.2 | 95.1 |
5 | ハンバーグ | 73,217 | 4.8 | 113.5 |
6 | ギョウザ | 41,473 | 2.7 | 102.3 |
7 | シュウマイ | 36,037 | 2.4 | 97.4 |
8 | ミートボール | 32,482 | 2.1 | 102.0 |
9 | 卵製品 | 31,649 | 2.1 | 95.6 |
10 | グラタン | 30,787 | 2.0 | 98.6 |
表2‐2‐2 生産量の多いレトルト食品(平成19年)
順位 | 品目名 | 生産量 (トン) | 構成比 (%) | 前年比 (%) |
---|---|---|---|---|
1 | カレー | 128,467 | 41.5 | 103.5 |
2 | パスタソース | 35,420 | 11.4 | 107.0 |
3 | 料理用調味ソース | 30,553 | 9.9 | 106.7 |
4 | 飯類 | 17,860 | 5.8 | 103.3 |
5 | マーボ豆腐の素 | 15,155 | 4.9 | 104.4 |
6 | かまめしの素 | 14,632 | 4.7 | 92.0 |
7 | スープ類 | 12,003 | 3.9 | 81.6 |
8 | 食肉野菜混合煮 | 11,293 | 3.7 | 101.7 |
9 | つゆ、たれ | 7,392 | 2.4 | 80.7 |
10 | ミートソース | 6,085 | 2.0 | 86.6 |
販売順位:POS情報により調理加工食品の販売動向を調査した結果、購入者1000人あたりの各調理加工食品の販売金額及び主要メーカーは表2‐2‐3に示した通りである。
表2‐2‐3 調理冷凍食品及びレトルト食品の販売金額及び主要メーカー
順位 | 調理冷凍食品 | レトルト食品 | ||
---|---|---|---|---|
品目 | 販売額 (円/千人) | 品目 | 販売額 (円/千人) | |
1 | うどん | ¥2,819 | カレー | ¥2,622 |
2 | ピラフ、炒飯 | ¥1,981 | 白飯 | ¥2,244 |
3 | グラタン | ¥1,683 | パスタソース | ¥1,437 |
4 | ハンバーグ | ¥1,147 | ハヤシ、ハッシュドビーフ | ¥288 |
5 | カツ | ¥1,122 | シチュー | ¥141 |
6 | コロッケ | ¥1,105 | スープ | ¥136 |
7 | シュウマイ | ¥948 | - | - |
8 | ギョウザ | ¥931 | - | - |
9 | ミートボール | ¥143 | - | - |
主要 メーカー |
ニチレイ、日本水産、マルハニチロ食品、味の素冷凍食品、加ト吉、日本ハム、アクリフーズ、伊藤ハム、ケイエス冷凍食品 | ハウス食品、明治製菓、大塚食品、エスビー食品、中村屋、日本ハム、あさくま、ハインツ日本、日清食品、キューピー |
主要メーカーアンケート:主要メーカーに自社製品の栄養成分に関するアンケート調査を実施した結果、栄養表示する際の必須項目であるエネルギー、一般成分、ナトリウムについてはすべてのメーカーでデータを保有していたが、その他の任意項目についてはデータをほとんど保有しておらず、多いものでもカルシウム、リンなどの無機質と食物繊維のデータを5社が保有するに留まった。調査結果の詳細を表2‐2‐4及び表2‐2‐5に示した。
市販の冷凍食品として、牛肉コロッケ1食品、コーンクリームコロッケ1食品、ハンバーグ2食品、チャーハン1食品、エビピラフ1食品、カツ1食品を試料とした。レトルト食品として、コーンスープ1食品、クラムチャウダー1食品、親子丼1食品、牛丼1食品、ミートパスタソース1食品、クリームパスタソース1食品、ビーフカレー4食品、チキンカレー2食品、ポークカレー1食品、野菜カレー2食品を試料とした。分析項目は、冷凍食品は、水分、たんぱく質、脂質、灰分およびナトリウム、レトルト食品はこれらの成分にさらにレチノール、α‐カロテン、β‐カロテン、ビタミンK、ビタミンB1およびビタミンB12を加えた。分析方法は、五訂成分表分析マニュアルに従った。
表2‐2‐6に調理済み食品の商品名、包装単位、価格、栄養表示を示した。表2‐2‐7に調理済み食品の分析結果の詳細を示した。表2‐2‐8に調理済み食品の表示と分析結果の相違率を算出し、表2‐2‐9に五訂成分表の収載値との相違率を算出し示した。なお、栄養表示基準では、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物およびナトリウムは、表示値の‐20%~+20%、ビタミンAは‐20%~+50%、ビタミンB1は‐20%~+80%を許容範囲としている。一方、文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会食品成分委員会では、成分変動係数が50%を超えることをバラツキがあると考え、日本食品ビタミンD成分表では、成分変動係数を相対標準偏差として表記し50%以上を#、100%以上を##で表記している。
商品の価格をみると、ビーフカレー4食品の価格は100~260円の幅があり最大価格は最小価格の2.6倍であった。チキンカレーおよび野菜カレーでは、2.8倍であった。
ビーフカレー4食品の分析値をみると、たんぱく質は2.79~4.93 gで変動係数29%であった。たんぱく質は分析を行った一般成分の中で最もバラツキのある成分であった。価格とたんぱく質の関係をみると、価格が100円台の2食品でたんぱく質は約3%、価格が約250円の2食品でたんぱく質は約5%であった。チキンカレーおよび野菜カレーともに、低価格のものに比べ価格が約2.5倍のカレーの方が、ビーフカレーほど相違は大きくないもののたんぱく質を多く含有していた。各種のカレーの成分値を平均値でみると、たんぱく質はビーフカレーとチキンカレーはほぼ同じ値、ついでポークカレーで、野菜カレーが最小であった。β‐カロテン、ビタミンKおよびビタミンB1は、野菜カレーが最大値を示した。
レトルト食品の分析値と表示値との間に、20~49%の相違がみられたのは、牛丼の素のエネルギーおよび脂質、ビーフカレー1食品のエネルギー、たんぱく質および脂質、野菜カレー1食品のβ‐カロテン、野菜カレー1食品の脂質で、表示値と比較して低値であった。
成分表収載値との相違をみると、冷凍食品では、成分表収載値と比較して20~49%高い値であったものは、牛肉コロッケのエネルギーと脂質、チャーハンのエネルギー、たんぱく質、灰分およびナトリウム、カツのたんぱく質および脂質、であった。50%以上高い値であったものは、チャーハンの脂質であった。20~49%低い値であったものは、ハンバーグ1食品のたんぱく質、ハンバーグ2食品の炭水化物、エビピラフの脂質およびカツの炭水化物であった。
レトルト食品の分析値と成分表収載値の相違を見ると、成分表収載値と比較して20~49%高い値であったものは、コーンスープの脂質、ビーフカレー2食品のたんぱく質、ビーフカレー1食品の炭水化物、チキンカレー1食品のたんぱく質およびナトリウム、チキンカレー2食品の灰分、野菜カレー1食品の炭水化物であった。50%以上高い値であったものは、野菜カレー1食品のビタミンB1であった。成分表の値よりも20~49%低い値であったものは、コーンスープのたんぱく質、ミートソースのエネルギーおよびたんぱく質、ビーフカレー1食品のエネルギー、ビーフカレー3食品の脂質、チキンカレー1食品のエネルギーおよび脂質およびビタミンB1、ポークカレー1食品のエネルギーおよび脂質、野菜カレー1食品のたんぱく質および脂質であった。50%以上低い値であったものは、ミートソースの脂質、ビーフカレー2食品のレチノールおよびビタミンB1、チキンカレー2食品のレチノールおよびビタミンB1、ポークカレー1食品のレチノールおよびビタミンB1、野菜カレー1食品のエネルギー、たんぱく質、ビタミンB1、野菜カレー2食品のレチノールであった。
表2‐2‐10に調理して摂取する食品(フライ類)の商品名、包装単位、価格、栄養表示を示した。表2‐2‐11に調理して摂取する食品(フライ類)の表示と分析結果の相違率を算出し、表2‐2‐12に五訂成分表の収載値と分析結果の相違率を算出し示した。表2‐2‐13に調理して摂取する食品(フライ類)およびそれを調理した試料について、分析結果および調理変化率を算出し示した。
フライ食品の価格について、100 g当たりの価格差をみると、いかフライ2食品では3.7倍、海老フライでは1.3倍、男爵コロッケでは1.1倍であった。白身フライ3食品は100
g当たり50~158円で、最大価格は最小価格の3.2倍であった。衣率をみると、えびフライを除き高価格の食品は低価格の食品に比べ、衣率が低いことが分かった。フライ食品の分析値をみると、いか、えびおよび白身フライともに、高価格な食品は低価格な食品に比べ、たんぱく質を多く含有していた。各フライの最大値を最小値に比べると、いかで1.6倍、えびで1.1倍、白身で1.1倍、男爵で1.1倍であった。
フライ食品の調理前の分析値と表示値の相違をみると、表示値と比較し20~49%高い値であったものは見られず、50%以上高い値であったものはいか1食品の脂質であった。20~49%低い値であったものは、いか1食品のナトリウム以外の分析した成分、コロッケ1食品のナトリウム、コロッケ1食品の脂質であり、50%以上低いものはえび1食品のナトリウムであった。調理後の分析値と表示値の相違を見ると、エネルギーは表示値と比較して20~49%高い食品が1食品、50%以上高い食品が6食品、たんぱく質では表示値と比較して20~49%高い食品が2食品、20~49%低い食品が1食品、脂質は表示に比較して全食品で50%以上高く、炭水化物では1食品が20~49%の範囲で高く、ナトリウムは2食品で20~49%の範囲で低かった。
フライ食品の調理前の分析値と成分表収載値の相違をみると、成分表収載値と比較して、エネルギーは全食品で20%以下の相違であった。一般成分では、脂質の相違が最も大きく、コロッケおよび白身魚では成分表収載値と比較して約40%の値であった。ついで、灰分の相違が大きく、平均値で77%であった。レチノールは、白身魚のみの値であるが成分表収載値と比べ20%以下の値であった。調理後の分析値と成分表収載値の相違をみると、調理後のフライ類は、エネルギーでは、いか1食品およびえび1食品が20~49%範囲で高い値を示した。平均値をみると水分で約10%低く、他の一般成分は各々約10%高い値を示した。成分別にみると、脂質で20~49%高い食品が5食品で最も多かった。調理前と同様に、レチノールは白身魚のみの値であるが成分表収載値と比べ20%以下の値であった。
冷凍フライ類の調理による変化率をみると、脂質では最小166%(メンチカツ)~最大1328%(白身フライ)であり、脂質はフライの種類による相違が最も大きい成分であることがわかった。調理前の脂質は、最小1.07(白身フライ)~最大13.29 g(メンチカツ)、平均4.19 gであった。
カレー類では、ビーフ、チキンおよび野菜カレーともに価格が高価な食品は、たんぱく質量が多いことがわかった。カレーの素材食品では肉類の価格が他の食材に比べ1
g当たりで幅もあり高価でもあるため、商品の価格に反映していると推察される。野菜カレーのβ‐カロテン、ビタミンKおよびビタミンB1がカレー類の中で最大値であったことは、他のカレーに比べこれらの栄養成分を多く含む野菜類を多く使用していることに由来する。
冷凍食品では、分析した成分が許容範囲以上であった食品は、なかった。一方、成分表収載値と分析値を比較すると、分析した全成分が20%未満の相違である食品は1食品、50%以上相違のあるものは1食品あった。したがって、冷凍食品は、表示値を優先し、成分表収載値は次いで利用する値であることがわかった。また、今回分析した五訂成分表に収載されている冷凍食品の成分値は、食品としてのバラツキの範囲であると考えられる。
レトルト食品は、4食品が表示の許容範囲以上の分析値を示した。冷凍食品として分析した試料は、用いている素材数が少なく、比較的均一な食品であるが、カレーは均一に配分しにくい食品であるためと推察さられる。成分表収載値と分析値を比較すると、全成分が20%未満の相違である食品は無かった。特に、レチノールおよびビタミンB1の相違が大きく、五訂成分表収載値のビタミンの見直しが必要と考えられる。エネルギーおよび一般成分は、野菜カレー以外は、五訂成分表収載値と分析値の相違があっても、50%以下であった。したがって、今回分析したカレー類の一般成分は、成分表収載値のバラツキの範囲と考えられる。
フライ食品のいか、えびおよび白身フライでは、高価格な食品は低価格な食品に比べ、その差は異なるもののたんぱく質を多く含有していることが分かった。えび以外のフライ類で高価な食品の衣率が少なかったことは、たんぱく質の価格差がえびでほとんど無かったことと良く一致していた。このことは、衣が多ければ素材の使用量が少なくなり、商品価格が安価になるためと推察される。
フライ食品の調理前の食品について、分析値と表示値の相違をみると3食品で20~49%、3食品で50%以上相違がある成分があった。分析値と五訂成分表収載値の相違をみると、全成分で20%未満の相違がある食品はなかった。全成分の相違が20~49%範囲の食品は5食品で分析した食品の50%であった。また、脂質およびレチノールの相違が大きいことがわかった。一方、市販のフライ類は調理して摂取するので、調理前の値は栄養計算では利用できない。しかし、表示があるためそれを利用する場合がみられるので、調理後の分析値と表示値を比較すると、エネルギーは表示に比べ全食品で20%以上多く、50%以上多い食品は6食品で分析対象試料の60%であった。また、脂質は表示に比べ全食品で50%以上多く、相違率の平均は1052%であった。したがって、表示値を使用したフライの栄養価計算は事実上不可能であることがわかった。
一方、五訂成分表では、調理加工食品群では各フライの調理後の分析値を備考欄に収載している。その収載値と分析値を比較すると、エネルギー、炭水化物を除く一般成分およびナトリウムの相違は、20~49%の範囲であり栄養成分表示のバラツキの許容範囲内であることがわかった。したがって、今回分析を行ったフライ類については、五訂成分表の収載値を用いた栄養計算により、エネルギー、一般成分およびナトリウムについてはある程度実摂取量に近い値を得ることができると考えられる。しかし、無機質およびビタミン類については、五訂成分表に未収載の成分が多いため、収載値の充実が望まれる。
調理後のフライ類の分析値を五訂成分表の調理後の収載値と比較すると、エネルギーではいか1食品およびえび1食品で20%以上の高い値を示した。成分表との相違率の平均値をみると水分で約10%低く、灰分を除く成分は各々約10%高い値を示した。成分別にみると、脂質で20~49%を越えた食品が5食品で最も多かった。調理前と同様に、レチノールは白身魚のみの値であるが五訂成分表の20%以下の値であった。
冷凍フライ類の調理による変化率から、脂質がフライの種類による相違が最も大きい成分であり、フライ類の調理前の脂質は、1.42~13.29%であった。しかし、実際に摂取する「調理前100 gに対応する調理後重量」の脂質量をみると、17.04~23.36
gと食品による相違が小さいことがわかった。したがって、素材にかかわらず、フライ類の調理後の脂質は、ほぼ同じと考えられる。
日本産業給食会へ依頼し、主要な企業10社を対象に主要な惣菜(調理加工品)とその材料配合割合の調査を行った。調査票(図2‐4)を依頼状といっしょにEメールで送付し回収した。回収率は100%であった。
各社が主要と考える調理加工品を、主食、主菜、副菜の区分の表記を行い、表2‐3‐1に示した。各社が収載を希望した食品は、A社9食品、B社4食品、C社4食品、D社7食品、E社7食品、F社19食品、G社20食品、H社19食品、I社17食品、J社61食品であった。
各社の希望料理を、主食、主菜および副菜に分け、重複した食品を除き集計すると、主菜73食品、副菜20食品、主食2食品であった。2社以上が主要とした料理は19食品であった。
産業給食会社から集めた95種類の料理名およびそのレシピは、現在、日本における標準的な調理加工品(惣菜)と考えられる。ここで要望されたこれらの調理加工食品について、材料配合割合、分析結果、栄養価計算結果を検討することは、成分表に調理加工食品を収載するための基礎データの作成に大きく寄与することになる。また、2社以上が主要とした料理のレシピ、栄養価などを検討することにより、各料理の現状の把握と「標準食品」の提案資料の作成が可能となる。
3.1)の調査を行った際に各社が主要と考える料理(惣菜)のレシピも収集した。それと五訂成分表、調理変化率表などを基に、調理損失を考慮した栄養価計算を行った。
各社のレシピを表2‐3‐2に、栄養価計算の詳細な結果を表2‐3‐3に示した。調理による損失を考慮した栄養価計算の結果、各社の料理の栄養価を明かにすることができた。表2‐3‐4に、2社以上のレシピが収集できた19の料理(南蛮漬けは鯵のみのグループと白身を含むグループの2つがあるので表は、20食品)について、平均、標準偏差、変動係数、最大値、最小値を示した。さらに、表2‐3‐5に、表2‐3‐4を乾物100
g当たりの値で算出し示した。
表2‐3‐4をみると、同じ料理でも栄養価計算結果に相違が見られることがわかった。料理区分別の変動係数をみると、エネルギーで変動係数50~99%の値の料理が5種類であった(表2‐3‐6)。一般成分では、たんぱく質が6種類の料理で100%以上の変動係数を示した。無機質では、カルシウムが最も変動が少ない成分であり、変動係数50~99%の料理が2種類、100%以上が1種類であった。他の無機質の変動係数は、50%以上の料理を数えると最小7種類(マグネシウム)~最大12種類(銅)であった。脂溶性ビタミンの変動係数は、50%以上の料理を数えると最小9種類(α‐トコフェロールおよびビタミンK)~最大18種類(クリプトキサンチンおよびビタミンD)であった。水溶性ビタミンの変動係数は、50%以上の料理を数えると最小2種類(葉酸)~最大14種類(ナイアシンおよびビタミンB12)であった。脂肪酸およびコレステロールの変動係数は、50%以上の料理を数えると最小10種類(飽和)~最大14種類(コレステロール)であった。食物繊維の変動係数は、50%以上の料理を数えると最小3種類(水溶性)~最大6種類(不溶性および総量)であった。食塩の変動係数は、50%以上の料理は9種類であった。
給食用の料理219食品の成分表が作成できた(表2‐3‐3)。企業によっては、同一の料理で2つのレシピがある場合があったため収集した料理数よりも、ここで作成した成分表の食品数は多くなっている。
表2‐3‐4をみると、同じ料理でも栄養価計算結果に相違が見られた。水分は最も変動しない成分であった。エネルギーは、ここで検討した試料の25%で、レシピからのエネルギー量がバラツキの範囲であることがわかった。一般成分の中ではたんぱく質が最も変動係数が大きく、60%の料理はたんぱく質量にバラツキがあるレシピであることがわかった。たんぱく質量は価格に反映するため、今後は価格も合わせて検討する必要がある。
無機質をみると、ナトリウム、リン、亜鉛および銅は、50%以上の料理でこれらの成分量にバラツキがあるレシピであることがわかった。脂溶性ビタミンでは、α‐トコフェロールおよびビタミンKを除くビタミンは、50%以上の料理でこれらの成分量にバラツキがあるレシピであることがわかった。水溶性ビタミンでは、ビタミンB1、ナイアシンおよびビタミンB12は、60%以上の料理でこれらの成分量にバラツキがあるレシピであることがわかった。脂肪酸およびコレステロールは、50%以上の料理でいずれも成分量にバラツキがあるレシピであることがわかった。
したがって、主要な惣菜は同一名でもレシピが異なり、その成分量にもバラツキがあることがわかった。特に、たんぱく質、ナトリウム、リン、亜鉛および銅、α‐トコフェロールおよびビタミンKを除く脂溶性ビタミン、ビタミンB1
、ナイアシンおよびビタミンB12、脂肪酸およびコレステロールは、50%以上の料理で成分量にバラツキがあるレシピであることがわかった。
一方、料理に含まれる水分量には煮汁がある。煮汁は料理過程で素材に全部含まれ調理後に煮汁が無い場合(煮含める)と、調理後にも煮汁がある場合がある。盛り付けされた時に煮汁がある場合は、料理の一部として食べるか食べないかは喫食者の判断による。栄養価計算による成分量の算出結果では、水分量の多少は可食部100
g当たりでの栄養価計算に大きく影響する。そこで、乾物100 g当たりの変動係数を検討した(表2‐3‐7)。エネルギーの変動係数は最大18%(牛丼の具及び金平ごぼう)で、全ての料理で乾物のエネルギー量の相違は少ないことがわかった。たんぱく質の変動係数が50%を超えた料理は45%であった。変動係数が50%を超えた料理が50%以上ある成分は、レチノール当量、α‐トコフェロール、ビタミンKを除く脂溶性ビタミン、ナイアシン、ビタミンB12およびコレステロールであった。栄養価計算の乾物値では、料理区分の変動係数が50%を超えた成分は、栄養価計算結果に比べ少ないことが判った。これらのことから、料理の栄養価計算は、レシピにより栄養価計算を行うとともに乾物計算も行う必要があることがわかった。この乾物値を、どう栄養価計算に活用するかはさらに検討する必要がある。また、栄養価計算にあたっては、できるだけ詳細なレシピを入手する必要がある。当然のことながら、レシピに記載されている以外の情報は入手できないため、このことをレシピ提供者に丁寧に伝える必要がある。
3.1)の調査を行った際に、必要に応じてレシピを収集した料理を分析用に提供していただくことをお願いした。3.2)の結果から、肉じゃが2社、筑前煮3社、きんぴらごぼう4社、ひじきの炒め煮5社の料理を収集した。各食品の分析は五訂成分表分析マニュアルに従った。
4種類の食品の分析結果、平均値、標準偏差、変動係数、最大値および最小値を表2‐3‐8に示した。4食品のエネルギー変動係数は、最大がきんぴらごぼうの21%、最小は筑前煮の12%であった。一般成分では水分の変動係数が最も小さく1%(筑前煮)~6%(きんぴらごぼう)であった。脂質の変動係数が最も大きく21%(ひじきの炒め煮)~81%(筑前煮)であった。
無機質では、亜鉛で最も変動係数が大きく、24%(ひじきの炒め煮)~64%(きんぴらごぼう)であった。マグネシウムの変動係数が最も小さく平均18%、ついでナトリウムの22%であった。
ビタミンでは、4食品の変動係数の平均値をみると、最小25%(ビタミンB6)から最大68%(α‐カロテン)であった。ひじきの炒め煮のビタミンは変動係数が100%を超える各社のバラツキが大きいことがわかった。
コレステロールは、2食品の分析を行ったが変動係数の平均値は35%であった。
ビタミンD成分表では、分析値の変動係数が50%を超える値に表記#、100%を超える値に表記##として成分表収載値にバラツキがある食品を公表している。
ここで分析した料理を、エネルギーおよび一般成分では、ひじきの炒め煮を除く3種類の料理の脂質のみが、50~100%の変動係数であった。しかし、各食品の脂質の含有量がいずれも3%以下であるので栄養成分値としては許容できる範囲と考える。
無機質では、きんぴらごぼうの亜鉛のみで50~100%の変動係数であった。ビタミンの変動係数が50~100%の範囲のものは、肉じゃがのレチノールおよびα‐カロテン、筑前煮のレチノール、α‐カロテン、β‐カロテンおよびビタミンC、きんぴらごぼうのβ‐カロテンであった。また、ひじきの炒め煮は、α‐カロテン、β‐カロテン、ビタミンB2、ナイアシンで100%以上の変動係数、ビタミンB1およびパントテン酸で50~100%の範囲であった。
したがって、代表的な料理(惣菜)を分析した結果、製造会社によりバラツキはあるものの、その変動係数は一般成分では充分許容できることがわかった。無機質でもバラツキの範囲を越えるものは、1種類の1成分値にすぎなかったことから、無機質の変動係数も許容できる範囲かもしれない。料理別のビタミン類の変動係数は、エネルギー、一般成分、無機質に比べ高い値を示した。
一方、これらの料理は成分表に未収載であるため、栄養価計算は成分表とレシピなどを用いた計算を行うが、栄養価計算を行う人の知識や考え方などによりその結果は大きく異なる。また、五訂成分表の調理加工食品の収載数は非常に少なく、同じ料理をみて栄養価計算しても、まったく同じ栄養価になることは稀である。栄養価計算結果を実摂取量に近似させることは、国民の健康な生活につながるため、主要な料理の成分を成分表に収載することが望まれる。
収載に当たっては、個々に食品を分析し収載するのであれば、ビタミンD成分表を踏襲し、変動係数に応じて#あるいは、##を記載することが望まれる。また、コンポジットサンプルで分析を行う場合は、調理加工食品は企業によって、ビタミンに変動があることを文章に記載することが望まれる。
調理した食品の成分値を収載するために分析値だけでなく栄養価計算による値も活用できるかどうかは、本調査で行った3.2)の結果を合わせて解析することによりある程度明らかにできると考えられる。
主要な惣菜の分析結果(表2‐3‐8)と、その惣菜の栄養価計算による成分値(表2‐3‐4)を比較し検討した。栄養価計算値(表2‐3‐4)/分析値(表2‐3‐8)×100を相違率として検討した。さらに、表2‐3‐4の成分値を、表2‐3‐8の分析値の水分に合わせ水分補正した成分値を算出し、この水分補正した成分値と分析値を比較検討した。
栄養価計算による成分値と分析値を比較し表2‐3‐9に示した。水分補正した栄養価計算による成分値と分析値を比較し表2‐3‐10に示した。4種類の14食品について相違率を明らかにした。
栄養価計算による成分値と分析値の比較をみると、±50%以上の相違があったものは、エネルギー、水分及び炭水化物以外の一般成分、マグネシウムを除く無機質、分析した全ビタミンおよびコレステロールであった(表2‐3‐11)。一方、水分補正した成分値と分析値の比較をみると、50%以上の相違があったものは、マグネシウム以外の無機質、分析を行った全無機質、レチノール、α‐カロテン、ビタミンB12、ビタミンC以外の分析したビタミンであった(表2‐3‐12)。
分析値と栄養価計算値および水分補正栄養価計算値を比較した結果、水分補正栄養価計算値が、分析値に近似していることがわかった。また、分析値と栄養価計算値および水分補正栄養価計算値との相違率を比較し、100%に近い値に印を付した。水分補正栄養価計算値は、脂質、カリウム、マグネシウム、亜鉛、レチノール、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6 およびパントテン酸以外の成分およびエネルギーで、分析値に近似していたことがわかった。
このことは、調理に用いる水および料理の材料に含まれる水分は明らかであっても、「できあがり(調理後)」の水分量は不明なためである。同じ料理名でも各社で最終水分量は異なる。それを把握できなかったことが、栄養価計算の精度を低くした要因と考えられる。したがって、料理の「できあがり水分量」をできるだけ正確に把握することは、栄養価計算による成分量を算出するために必須と考えられる。
仮に、新成分表において、料理の成分量を栄養価計算により算出する場合は、できあがり水分を必ず分析することが望まれる。この水分量により、栄養価計算による成分量を分析値に近似できると考えられる。
水分補正した結果、分析値と50%以内の相違である成分は、水分補正を行う栄養価計算により成分量を推察できると考えられる。50%以上の相違がある成分については、無機質や脂溶性ビタミンであり、調理前の「生の食品」の成分であっても、変動係数の高い成分である。このことから、これらの成分については計算値が、目安になると考えられる。
なお、今後の課題として、五訂成分表の基礎データを活用し、食品別に成分の変動係数を分析することが望まれる。そのデータがあれば、今回の結果の検討を深めることが可能になる。
食事において主要な主菜の素材である豚肉を試料とした。脂質含有量が高いバラ肉と脂質含有量が少いもも肉の2種類である。2種類の肉を各々、2度挽きしてひき肉とし、全体を練り80
gに丸め分析用の試料とした。「焼く」、「ゆでる」、「蒸す」、「電子レンジ」、「素揚げ(小麦粉だけを付け揚げる)」および「フライ(小麦粉とパン粉衣をつけてあげる)」の6種類の調理を行い調理後試料とした。肉をひき肉にして練り、80
gに丸め衣をつける操作は専門家(肉店)へ依頼した。
試料来歴を表2‐4‐1に示した。調理法を表2‐4‐2に示した。各調理は、10回行い、無作為の8試料を選択し分析試料とした。この8試料をコンポジット試料とし分析を行った。分析方法は、五訂成分表分析マニュアルに従った。
もも肉およびバラ肉の調理による重量変化率の結果を表2‐4‐3に示した。もも肉の調理による重量変化率は、最小65.8%(電子レンジ)~最大85.8%(フライ)で、平均75.4%であった。一方、バラ肉の調理による重量変化は、最小58.0%(電子レンジ)~最大85.1%(フライ)で、平均は66.3%であった。また、調理方法別に重量変化率を比較すると全ての調理方法でバラ肉の重量変化率が大きく、その相違を(バラ肉の重量変化率/もも肉の重量変化率×100)で算出すると、最小76%(蒸し)~最大99%(フライ)、平均88%であった。
表2‐4‐4に、各試料の分析結果を示した。表2‐4‐5及び表2‐4‐6に調理による各成分の変化率を示した。
<エネルギー>
もも肉の調理によるエネルギー変化率は、最小91%(ゆで)~最大148%(フライ)で、平均106%であった。一方、バラ肉の調理によるエネルギー変化率は、最小54%(電子レンジ)~最大117%(フライ)で、平均は71%であった。また、2種類の肉について調理方法別にエネルギー変化率を比べると、全ての調理方法でバラ肉のエネルギー変化率が小さく、その相違を(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)で算出すると、最小57%(電子レンジ)~最大79%(フライ)、平均66%であった。
<一般成分>
[水分]
もも肉の調理による水分変化率は、最小54%(電子レンジ)~最大75%(蒸し)で、平均は64%であった。一方、バラ肉の調理による水分変化率は、最小55%(素揚げ、電子レンジ)~最大65%(フライ)で、平均は59%であった。また、調理方法別に、水分変化率を比べるとゆでおよび電子レンジを除きバラ肉の水分変化率が小さかった。ゆでおよび電子レンジでは2種類の肉とも調理による成分変化がみられなかった。2種類の肉について調理方法別に水分変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小79%(蒸し)~最大102%(電子レンジ)、平均93%であった。
[たんぱく質]
もも肉の調理によるたんぱく質変化率は、最小92%(ゆで)~最大98%(素揚げ、フライ)で、平均は96%であった。一方、バラ肉の調理によるたんぱく質変化率は、最小92%(電子レンジ)~最大99%(素揚げ)で、平均は95%であった。たんぱく質変化率を2種類の肉で比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、電子レンジで96%の相違がみられ、他の調理方法ではほとんど相違が無かった。
[脂質]
もも肉の調理による脂質変化率は、最小90%(ゆで)~最大201%(フライ)で、の平均は117%であった。一方、バラ肉の調理による脂質変化率は、最小43%(電子レンジ)~最大124%(フライ)で、平均65%であった。2種類の肉について調理方法別に脂質変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小46%(電子レンジ)~最大62%(フライ)、平均54%であった。
[灰分]
もも肉の調理による灰分変化率は、最小59%(ゆで)~最大94%(焼き、フライ)で、平均は85%であった。一方、バラ肉の調理による灰分変化率は、最小58%(ゆで)~最大94%(素揚げ、フライ)で、平均80%であった。2種類の肉について調理方法別に灰分変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小83%(蒸し)~最大103%(素揚げ)、平均94%であった。
<無機質>
[ナトリウム]
もも肉の調理によるナトリウム変化率は、最小57%(ゆで)~最大97%(フライ)で、平均は85%であった。一方、バラ肉の調理によるナトリウム変化率は、最小56%(ゆで)~最大98%(素揚げ)で、平均81%であった。2種類の肉について調理方法別にナトリウム変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小83%(蒸し)~最大101%(素揚げ)、平均95%であった。
[カリウム]
もも肉の調理によるカリウム変化率は、最小55%(ゆで)~最大97%(素揚げ)で、平均は86%であった。一方、バラ肉の調理によるカリウム変化率は、最小54%(ゆで)~最大96%(素揚げ)で、平均79%であった。2種類の肉について調理方法別にカリウム変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、79%(蒸し)~102%(素揚げ)、平均92%であった。
[マグネシウム]
もも肉の調理によるマグネシウム変化率は、最小70%(ゆで)~最大96%(焼き、素揚げ)で、平均は89%であった。一方、バラ肉の調理によるマグネシウム変化率は、最小67%(ゆで)~最大97%(フライ)で、平均83%であった。2種類の肉について調理方法別にマグネシウム変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小83%(蒸し)~最大102%(フライ)、平均94%であった。
[リン]
もも肉の調理によるリン変化率は、最小66%(ゆで)~最大96%(焼き、フライ)で、平均は88%であった。一方、バラ肉の調理によるリン変化率は、最小64%(ゆで)~最大96%(フライ)で、平均82%であった。2種類の肉について調理方法別に、リン変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小82%(蒸し)~最大99%(フライ)、平均93%であった。
[亜鉛]
もも肉の調理による亜鉛変化率は、最小87%(蒸し)~最大98%(ゆで、フライ)で、平均は95%であった。一方、バラ肉の調理による亜鉛変化率は、最小95%(素揚げ)~最大100%(ゆで)で、平均97%であった。2種類の肉について調理方法別に亜鉛変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小98%(素揚げ、フライ)~最大113%(蒸し)、平均103%であった。
<ビタミン>
[レチノール]
もも肉の調理によるレチノール変化率は、最小10%(電子レンジ)~最大48%(素揚げ)で、平均は32%であった。一方、バラ肉の調理によるレチノール変化率は、最小4%(ゆで、電子レンジ)~最大42%(フライ)で、平均16%であった。2種類の肉について調理方法別にレチノール変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小22%(ゆで)~最大92%(フライ)、平均43%であった。
[ビタミンB1]
もも肉の調理によるビタミンB1変化率は、最小59%(ゆで)~最大91%(焼き)で、平均は80%であった。一方、バラ肉の調理によるビタミンB1変化率は、最小57%(ゆで)~最大85%(フライ)で、平均71%であった。2種類の肉について調理方法別にビタミンB1変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小75%(蒸し)~最大98%(素揚げ)、平均89%であった。
[ビタミンB2]
もも肉の調理によるビタミンB2変化率は、最小84%(ゆで)~最大106%(フライ)で、平均は98%であった。一方、バラ肉の調理によるビタミンB2変化率は、最小71%(ゆで)~最大100%(素揚げ、フライ)、平均87%であった。2種類の肉について調理方法別にビタミンB2変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小83%(蒸し)~最大97%(素揚げ)、平均88%であった。
[ナイアシン]
もも肉の調理によるナイアシン変化率は、最小66%(ゆで)~最大105%(フライ)で、平均は90%であった。一方、バラ肉の調理によるナイアシン変化率は、最小70%(ゆで)~最大106%(素揚げ)、平均92%であった。2種類の肉について調理方法別にナイアシン変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小92%(フライ)~最大123%(素揚げ)、平均103%であった。
[ビタミンB6]
もも肉の調理によるビタミンB6変化率は、最小58%(ゆで、素揚げ)~最大78%(蒸し)で、平均は66%であった。一方、バラ肉の調理によるビタミンB6変化率は、最小61%(ゆで)~最大72%(電子レンジ)、平均67%であった。2種類の肉について調理方法別にビタミンB6変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と最小84%(蒸し)~最大115%(素揚げ)、平均103%であった。
[ビタミンB12]
もも肉の調理によるビタミンB12変化率は、最小95%(素揚げ)~最大137%(焼き)で、平均は119%であった。一方、バラ肉の調理によるビタミンB12変化率は、最小69%(ゆで)~最大102%(素揚げ)で、平均83%であった。2種類の肉について調理方法別にビタミンB12変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と最小57%(電子レンジ)~最大108%(素揚げ)、平均71%であった。
[パントテン酸]
もも肉の調理によるパントテン酸変化率は、最小58%(ゆで)~最大87%(焼き)で、平均は77%であった。一方、バラ肉の調理によるパントテン酸変化率は、最小61%(ゆで)~最大95%(素揚げ)、平均82%であった。2種類の肉について調理方法別に、パントテン酸変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小90%(蒸し)~最大119%(素揚げ)、平均106%であった。
<コレステロール>
もも肉の調理によるコレステロール変化率は、最小87%(フライ)~最大96%(焼き)で、平均は93%であった。一方、バラ肉の調理によるコレステロール変化率は、最小73%(素揚げ)~最大80%(焼き)、平均76%であった。2種類の肉について調理方法別に、コレステロール変化率を比べる(バラ肉の変化率/もも肉の変化率×100)と、最小78%(素揚げ)~最大89%(フライ)、平均82%であった。
豚肉をモデル調理実験の試料とした。脂質含有量が多いバラ肉と脂質含量が少ないもも肉を試料とした。肉類の主要な調理方法である「焼く」、「ゆでる」、「蒸す」、「電子レンジ」、「素揚げ(小麦粉だけを付け揚げる)」および「フライ(小麦粉とパン粉衣をつけてあげる)」を行い、生の豚肉を基準に調理による重量および成分変化率を算出した。
重量変化をみると、2種類の肉で共通して最も重量が損失する調理方法は電子レンジであり、最も重量が損失しない調理方法はフライであることがわかった。脂質が多い肉(バラ肉)とそうでない肉(もも肉)は、重量変化率が異なり脂質が多い肉で重量損失が多いことがわかった。
エネルギー変化率は、もも肉では91%以上、バラ肉は54%以上で両者のエネルギー変化率に大きな相違があり、もも肉は調理によるエネルギー損失が少なく、バラ肉はエネルギー損失が多い食品である事がわかった。このことは、重量変化率の結果と一致していた。
水分変化率は、もも肉では54~75%、バラ肉では55~65%であった。2種類の肉の水分変化率の相違は、重量およびエネルギー変化率に比べ少ないことがわかった。また、水分変化率の最小から最大値の幅も少なかった。
たんぱく質変化率の全ての調理方法の平均値は、もも肉では96%、バラ肉では95%であり、たんぱく質変化率は肉の種類に関わらず一般成分の中で最も損失しにくい成分であることがわかった。
脂質変化率の全ての調理方法の平均値は、もも肉117%、バラ肉65%であり、エネルギー変化率に良く似た傾向を示した。これらのことから、脂質を多く含有する肉では、脂質の損失が大きくその結果、エネルギーを低下させていることがわかった。調理した肉類のエネルギー量に最も影響を与える成分は脂質であることもわかった。これらのことから、栄養価計算において、部位別の調理後の成分値を用いれば実摂取栄養量に近い栄養価計算をある程度可能にしていることがわかった。
一方、五訂成分表の肉類の収載食品は、調理前については部位別に細分化され収載されている。しかし、肉類の調理後の食品数は、2種類の調理方法で限られた食品数である。例えば、豚肉では「ロース脂身つき」および「もも」の「ゆで」と「焼き」4食品のみである。したがって、成分表の肉類については、さらに調理した食品を収載することが望まれる。
灰分変化率の全ての調理方法の平均値は、もも肉では85%、バラ肉では80%で、2種類の値は近似していた。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リンおよび亜鉛の調理による変化率の変動係数は、バラ肉のナトリウム21%およびカリウム22%を除き、もも肉およびバラ肉ともに、全部の調理方法を平均すると20%以下であった。したがって、分析を行った無機質では、調理方法の相違による調理損失の相違は少ないことがわかった。また、調理方法別に2種類の肉の調理変化を比較すると、その相違は10%以内であったことから、脂質量の相違が無機質の調理変化に及ぼす影響は少ないと考えられる。また、もも肉およびバラ肉のナトリウム、カリウムは、エネルギーやたんぱく質を除く一般成分に比べ調理変化は少ないことがわかった。
脂溶性ビタミンのレチノール調理変化率の平均値をみると、もも肉で32%、バラ肉で16%であった。レチノールは、分析を行った成分中もっとも損失が大きい成分であり、その挙動は2種類の肉でよく似た傾向であるが脂質量の多いバラ肉で損失が多いことがわかった。
ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12 およびパントテン酸の調理による成分変化率では、もも肉およびバラ肉ともに、全ての調理方法についての変動係数が20%以下であったことから、無機質と同様に調理方法の相違による調理損失の相違は少ないことがわかった。しかし、調理方法別に2種類の肉の調理変化を比較すると、その相違が10%以内であった成分は、ナイアシン、ビタミンB6、およびパントテン酸であった。したがって、肉の脂質量がこの3つビタミンに及ぼす影響は少ないことがわかった。ビタミンB12の調理変化率をみると、もも肉とバラ肉の相違は36%であり、ビタミンB12の調理変化率は肉の脂質量に影響されることがわかった。
コレステロールの調理変化率は、もも肉およびバラ肉ともに全ての調理方法を平均すると変動係数が20%以下であったことから、調理方法の相違による調理損失の相違は少ないことがわかった。一方、2種類の肉のコレステロールの調理変化率の相違は約20%であり、肉の脂質量はコレステロールの調理変化率に影響することがわかった。
ここで得た、これらの結果は、成分表の調理した食品である肉類および肉類を用いた調理加工食品の収載値を決定するための基礎データとして活用できる。また、今後は、魚類、卵類、野菜類などの代表的な基本調理食品について、同様に検討し基礎データを作成することが望まれる。
成分表に収載されている食品は、料理を行う前の素材である「生の食品」が主である。しかし、実際に摂取する食品は、調理加工品(惣菜、料理)であるが、成分表への収載は、少数である。調理した食品を成分表に収載することについてアンケート調査および分析調査などを行い検討した。
成分表のヘビーユーザーである栄養士会(栄養士・管理栄養士)を対象に成分表に収載して欲しい料理およびレシピを調査した。その結果、収載が望まれている主要な料理をある程度明らかにすることができたが、今回協力を得られかった各県栄養士会のデータも収集し合わせて検討することが望まれる。また、各栄養士会が収載を要望した食品は、調理加工食品群に収載されている食品も多数みられた。これは五訂成分表の調理加工食品類の食品では、他の食品群に比べ収載成分項目数が少なく栄養価計算に活用しにくいためである。また、五訂成分表に収載されている食品(おにぎり、たまご卵焼きなど)があったことは、成分表が管理栄養士・栄養士にさえも熟読されていないためと推察される。
そこで、現在五訂成分表の各食品群に分散している調理加工食品を、調理加工食品類(料理)に再掲し、新調理加工食品群にすること、あるいは、成分表への要望事項である「調理変化率一覧」などを成分表の資料に加え、調理加工食品成分表を日本食品標準成分表の別冊として作成することも一考である。
一方、食事の外注が進んでいることから産業給食会社にも成分表に収載を望む食品について調査を行い95種類の料理名およびそのレシピを収集できた。さらに、全食品の栄養価計算による成分値の算出および代表的な調理食品の主要成分の分析も行った。これらのデータは、成分表に調理加工食品を収載するための基礎データとして大きく寄与できる。栄養士会と産業給食会の要望を合わせると、成分表に収載が望まれる調理食品をある程度明らかにできた。また、調理加工食品メーカーの調査から料理の流通量がわかったので、これも合わせて、今後はさらに解析し検討することが望まれる。また、このような調査は定期的に実施し、時代によって変わる要望を把握していくことが望まれる。
95種類のレシピから、2社以上が主要と考える料理を料理別に収集し、栄養価計算による成分値の平均値、変動係数などを検討した。レシピから栄養価計算に成分値を算出し、さらに乾物100
g当たりの栄養価を算出し、料理の水分量が各社で異なることを明らかにし、惣菜を検討する場合は、乾物での検討が適切であることを明らかにした。
また、この中から主要な惣菜14食品について分析を行い栄養価計算による成分量と合わせて検討した。分析した水分量で栄養価計算による成分量を補正すると分析値に近似することがわかった。したがって、仮に料理の成分を栄養価計算で算出する場合は、その料理の水分は分析することが必要である。
市販の調理加工品の分析値と表示値はほぼ等しかった。五訂成分表の値は表示値ほど合致しないが、一般成分についてはバラツキの範囲であることがわかった。カレーおよびフライ類は、価格が高価なものほどたんぱく質量が多く材料費が価格に反映しているものと考えられる。市販加工品のフライは、表示は調理前の値であるため、調理後に摂取する時には、大きく異なる値となる。しかし、五訂成分表では、フライの備考欄に「調理後のエネルギー、水分、たんぱく室、脂質、炭水化物」が収載され、この値を活用できることが確認できた。しかし、この収載値は備考欄であるため活用されにくい現状にある。
脂質含有量が多いバラ肉と脂質含量が少ないもも肉を試料とし主要な調理方法(「焼く」、「ゆでる」、「蒸す」、「電子レンジ」、「素揚げ」および「フライ」)を行い、生の豚肉を基準に調理による重量および成分変化率を算出した。
2種類の肉で共通して最も重量が損失する調理方法は電子レンジ、最も重量が損失しない調理方法はフライであった。脂質が多い肉(バラ肉)とそうでない肉(もも肉)は、脂質が多い肉で重量損失、エネルギー変化率、脂質変化率が多いことがわかった。調理した肉類のエネルギー量に最も影響を与える成分は、脂質であることもわかった。
2種類の肉の水分変化率及びたんぱく質変化率の相違は、特にたんぱく質変化率の相違は少ないことがわかった。分析を行った無機質、ナイアシン、ビタミンB6、およびパントテン酸は、調理方法の相違による調理損失の相違は少なく、肉の脂質量の影響が少ないことがわかった。レチノールおよびとビタミンB12の調理変化率は2種類の肉でよく似た傾向であったが脂質量の多いバラ肉で損失が多く、2つの成分は脂質量に影響されると推察される。コレステロールは、調理方法の相違による調理損失の相違は少なかった。また、コレステロールは脂質量が調理変化率に影響することがわかった。したがって、栄養価計算において、部位別の調理後の成分値を用いれば実摂取栄養量に近い栄養価計算をある程度可能にできることがわかった。しかし、五訂成分表の肉類の「調理後(料理)」の食品数は、2種類の調理方法のみで限られた食品数である。肉類については、その食品の摂取重量の多いことを考えるとさらに調理した食品を収載することが望まれる。
これらの結果は、調理した食品である肉類および肉類を用いた調理加工食品の成分表収載値を決定するための基礎データとして活用できる。また、今後は、魚類(白身魚、赤身魚)、卵類、野菜類などの代表的な基本調理食品について、同様に検討し基礎データを作成することが望まれる。
今後は、本調査で行ったすべての調査を総合的に検討し、日本食品標準成分表の調理加工食品について、収載が望ましい食品の順位や、収載方法、収載値を決定する方法(計算で収載すること等)の提案および日本食品標準成分表の基礎データの解析による成分変動の検討などが必要と考えられる。
参考文献
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8) 渡邊智子、鈴木亜夕帆、荻原清和、見目明継:調理による成分変化を考慮した栄養価計算のための成分表、日本栄養・食糧学会誌、55‐3、165‐176、2002
9) 渡邊智子、鈴木亜夕帆、熊谷昌士、見目明継、竹内晶昭、西牟田守、荻原清和:植物性食品に含まれる栄養素の調理による変化率の算定と適用、栄養学雑誌、62‐3、171‐182、2004
10) 渡邊智子、鈴木亜夕帆、山口美穂子、熊谷昌士、見目明継、竹内晶昭、荻原清和:動物性食品に含まれる栄養素の調理による変化率の算定と適用、日本調理科学会誌、38‐1、6‐2、20、2005
11) 山下光雄、西牟田守、渡邊智子編:100kcal/100g日本食品標準成分表[第2版]、324‐325、建帛社、2005
様式‐3 都道府県栄養士会への調査用紙
調査2.成分表に収載してほしい調理済み食品についての調査
お願い
日本食品標準成分表をより良い成分表にするための調査です。
食品成分表に収載してほしい調理済み料理(例えば、肉じゃが、切干大根の煮物、ひじきの煮物など)についてご教示くださいますようお願いいたします。
主食、主菜、副菜、その他にわけて、料理名およびレシピ(材料、分量、作り方など)、を収載を希望する順番にいくつでもご教示ください。なお、回答用紙には、料理名をお答えください。レシピについては、回答用紙を送付しておりません。特別な様式がないので自由な様式でお願いいたします。電子媒体を用いて、回答していただければ大変助かります。
その場合は、同封したFDに入れてのご返却,またはメールでの送付をお願いいたします。
ご提供頂いたレシピを基に調理によるロスなどを考慮した栄養価計算を行い,本調査終了後にご提供する予定です
都道府県名:
協議会名:
回答者名(問い合わせ先):
回答年月日:2008年 月 日
質問1.成分表に収載してほしい、調理済み食品の料理名を記載ください。
1.主食では、何ですか。
2.主菜では、何ですか。
3.副菜では、何ですか。
4.主食、主菜および副菜以外では、何ですか。
質問2. その他ご意見があればお書きください。
様式‐4 メーカーへの調査用紙
調理冷凍食品についてのアンケート回答用紙(様式‐1)
ご所属:
お名前:
ご連絡先:
回答年月日: 年 月 日
生産量が多いなど主要な調理冷凍食品について下記の例を参考に可能な範囲で結構ですので,ご記入をお願い致します。
食品の栄養成分群の欄には成分値の保有の程度により(○,△,×)と成分値が計算値または分析値の区別のため(計,分)を入れて下さい。成分値をお持ちの場合は様式‐2(食品成分表掲載項目)に是非成分値をご記入下さい(別紙など別様式も構いません)。
品目※ | 商品名※ | 基礎成分※ , 5 成分 | 無機質 ,Na など 9 成分 | ビタミン , 12 成分 | 脂肪酸 | コレステロール | 食物繊維 | 備考;主要な原材料など |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コロッケ | えび入りコロッケ・市販(例) | ○分 | △分 | △分 | × | ○分 | × | ジャガイモ,えび,…………(フライ用) |
※ 品目はJASまたは「冷凍食品に関する諸統計(社団法人日本冷凍食品協会)」などの区分を参考に記入して下さい。
※ 商品数は10点程度を目安にできるだけ多くの記載をお願いします。また,市販用,業務用の区別が明確な場合にはこれもご記入下さい。
※ 成分値の保有の程度 ○;ほとんど保有,△;半分程度保有,×;無し,または殆ど保有せず(様式‐2の栄養成分項目をご参照下さい)
※ 基礎成分;たんぱく質,脂質,炭水化物などエネルギー算出に必要な成分値
※ 備考には主要な原材料など参考となる情報などをご記入下さい。
様式‐5 メーカーへの調査用紙
様式‐2
食品成分表項目(100 g当りの成分値)
商品名 | えび入りコロッケ(例) | ||||
---|---|---|---|---|---|
水分(g) | 63.5 | ||||
たんぱく質(g) | 4.6 | ||||
脂質(g) | 4.9 | ||||
炭水化物(g) | 25.3 | ||||
灰分(g) | 1.7 | ||||
ナトリウム(mg) | 290 | ||||
カリウム(mg) | 300 | ||||
カルシウム(mg) | 20 | ||||
マグネシウム(mg) | - | ||||
リン(mg) | - | ||||
鉄(mg) | 0.7 | ||||
亜鉛(mg) | - | ||||
銅(mg) | - | ||||
マンガン(mg) | - | ||||
ビタミン A ※(μg) | 69 | ||||
β - カロテン当量(μg) | 27 | ||||
ビタミン D(μg) | - | ||||
ビタミン E(mg) | - | ||||
ビタミン K(μg) | - | ||||
ビタミン B1(mg) | 0.09 | ||||
ビタミン B2(mg) | 0.06 | ||||
ナイアシン(mg) | 1.1 | ||||
ビタミン B6(mg) | - | ||||
ビタミン B12(mg) | - | ||||
葉酸(μg) | - | ||||
パントテン酸(mg) | - | ||||
ビタミン C(mg) | - | ||||
脂肪酸・飽和(g) | - | ||||
脂肪酸・一価不飽和(g) | - | ||||
脂肪酸・多価不飽和(g) | - | ||||
コレステロール(mg) | 10 | ||||
食物繊維・総量(g) | - | ||||
食物繊維・水溶性(g) | - | ||||
食物繊維・不溶性(g) | - |
様式‐6 産業給食企業への調査用紙
調査および回答用紙
ご所属:
お名前:
回答年月日: 年 月 日
ご連絡先:
質問1
貴社の主菜について質問します
1.生産している主菜の品目の総数はどの程度ですか(約 品目/月)
2.1.のうちよく出荷する品目(10種類程度)をご記入下さい。
3.2.の品目のうち調理済の冷凍調理品等を温めるあるいはフライする程度の調理内容を現場で行うものがあれば,上の品目名に○印をつけて下さい。
質問2
貴社の副菜について質問します
1.生産している副菜の品目の総数はどの程度ですか(約 品目/月)
2.1.のうちよく出される品目(10種類程度)をご記入下さい。
3. 2.の品目のうち調理済の冷凍調理品等を温めるあるいはフライする程度の調理内容を現場で行うものがあれば,上の品目名に○印をつけて下さい。
質問3
質問1および質問2の2.で挙げられた副食のレシピ(材料,分量,作り方など)の提供は可能でしょうか(はい いいえ)
「はい」とお答え頂いた方は,別紙(様式は自由です)での御提供をお願いします。ご提供頂いたレシピを基に調理によるロスなどを考慮した栄養価計算を行い,本調査終了後にご提供いたします。
質問4
質問3でレシピを提供可能な場合で,出されている副食を栄養成分分析用に提供可能でしょうか(はい いいえ)
★「はい」とお答え頂いた方には,本調査の実施にあたり一部の副食についてのご提供をお願いすることがありますので,ご協力をお願いします
。ご協力頂いた場合には分析値とともに分析値を基にした栄養価計算をお知らせします。
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科学技術・学術政策局政策課資源室
-- 登録:平成21年以前 --