種実類の全般に通じる主な事項は、次のとおりである。
1) この食品群に属する食品は、「らっかせい」を除いて、穀類あるいは豆類以外の種子及びその製品で、植物学的には必ずしも近縁ではない。主にナッツ、種あるいは実として市販されている。「らっかせい」は、豆類であるが、脂質含量が高いため、この食品群に分類した。
2) 加工品については、流通している市販品を試料とした。
3) 調理した食品は「ゆで」を収載し、調理する前の食品(生又は乾)と同一の試料を用いて調理し、分析した。調理方法の概要を表14に示した。
以下、各食品ごとに成分値に関する留意点について述べる。
アーモンド
-05001 乾
-05002 フライ、味付け
「アーモンド」は、バラ科の落葉果樹で黒海と地中海にはさまれた小アジア原産である。甘扁桃(かんへんとう)と苦扁桃(くへんとう)と二系統あって、甘扁桃の種子の仁が食用に供される。「乾」の成分値は、米国産のスイート(甘扁桃)の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「フライ、味付け」の成分値は、分析値及び四訂成分表成分値(「いり味付け」)に基づき決定した。
あさ<麻>
-05003 乾
「あさ」は、クワ科アサの種子である。大麻取締法の規定により大麻取扱者以外はアサを栽培することはできないので、発芽防止処理がされたものが市販されている。七味唐辛子に配合されている。成分値は、輸入品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
えごま<荏胡麻>
-05004 乾
「えごま」は、シソ科エゴマの種子である。特有の風味をもち、古来、「ごま」と同様な用途に用いられる。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
カシューナッツ
-05005 フライ、味付け
「カシューナッツ」は、ウルシ科の常緑樹で果実の仁が食用に供される。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値(「いり味付け」)に基づき決定した。
かぼちゃ<南瓜>
-05006 いり、味付け
「かぼちゃ」は、ウリ科カボチャの種子である。「いり、味付け」は、種子を焙煎(ばいせん)し、食塩を加えたものである。成分値は、中国産原料を用いた製品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
かや<榧>
-05007 いり
「かや」の実は、山地に自生するイチイ科の高木の種子で東北地方が主産地である。成分値は、焙煎(ばいせん)したものの分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
ぎんなん<銀杏>
-05008 生
-05009 ゆで
「ぎんなん」は、イチョウの種子である。成分値は、それぞれ分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
(くり類)<栗類>
-日本ぐり<日本栗>
-05010 生
-05011 ゆで
-05012 甘露煮
-中国ぐり<中国栗>
-05013 甘ぐり
(くり類)は、世界各国に分布しており、産地により、欧州栗、アメリカ栗、中国栗、日本栗等に大別される。「日本ぐり」は、山地に自生する柴栗を原種とし、栽培種はその改良種である。粒の大きさにより、大粒種(丹波栗等)、中粒種(銀寄等)及び小粒種(柴栗等)に分けられる。「生」の成分値は、日本栗(品種:国見、筑波、石槌等)の分析値に基づき決定した。「ゆで」の成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
「甘露煮」は、剥(はく)皮し、水洗、あく抜き後、湯煮又は蒸煮した栗を、砂糖を主体とするシロップに漬けたものである。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。なお、着色料としてクチナシを用いたものもある。
「甘ぐり」は、別名焼ぐりで、栗を焙煎(ばいせん)して造られる。日本産の栗では焙煎しても渋皮がきれいに剥(は)がれないため、中国から輸入された「中国ぐり」が用いられている。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
くるみ<胡桃>
-05014 いり
「くるみ」は、大粒で栽培種のペルシャぐるみ(西洋ぐるみ)と、小粒で自生種の鬼ぐるみ及び姫ぐるみがあるが、市販品はペルシャぐるみが大半である。成分値は、米国産のペルシャぐるみを試料とし、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
けし<芥子>
-05015 乾
「けし」は、ケシ科ケシの種子である。ポピーシードとも呼ばれる。微小で、焙(あぶ)ったものは芳香を放って風味があり、料理、製菓に用いられる。油分が多く、けし油は食用にもされる。あへん法の規定によりけし栽培者以外は栽培することができないので、発芽防止処理されたものが市販されている。種皮の色は変異に富み、白及び青のものが市販されている。成分値は、輸入品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
ココナッツ
-05016 ココナッツパウダー
「ココナッツパウダー」は、熱帯、亜熱帯地域に産するココヤシの成熟した果実の胚(はい)乳を乾燥したもので、洋菓子の材料に使用される。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。なお、ココナッツから抽出した「やし油」は油脂類に、「ココナッツウォーター」及び「ココナッツミルク」は果実類にそれぞれ収載した。
ごま<胡麻>
-05017 乾
-05018 いり
-05019 むき
「ごま」は、ゴマ科ゴマの種子である。種皮の色により、黒ごま、茶ごま及び白ごまに大別され、目的によって使い分けられる。東南アジア、アフリカ等から輸入されるものが多い。煎(い)ってそのまま、あるいは擂(す)りつぶして料理に用いられる。「乾」は、市販されている洗いごま(黒ごま及び白ごま)を対象とした。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「いり」は、「乾」を焙煎(ばいせん)したものである。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「むき」は、白ごまを水に浸漬し、種皮を分離した後、水洗、乾燥したものである。成分値は、輸入品及び輸入原料を用いた市販品の分析値に基づき決定した。
しい<椎>
-05020 生
「しい」の実は、煎(い)って粉にして餅に混ぜて利用されることもあるが、生でも食べられる。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
すいか<西瓜>
-05021 いり、味付け
「すいか」は、ウリ科スイカの種子である。「いり、味付き」は、完熟した種子を焙煎(ばいせん)し、食塩を添加したものである。成分値は、中国産原料を用いた製品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
とち<栃>
-05022 蒸し
「とち」の実は、中部以北の山間地で主として採取される。苦みがあるので、灰汁(あく)に漬し、水さらしして粉にし、餅に混ぜて食べられる。とち餅等の原料である。成分値は、あく抜き、冷凍品の分析値に基づき決定した。
はす<蓮>
-05023 未熟、生
-05024 成熟、乾
「はす」は、ハス科ハスの種子である。緑色の未熟の種子を生でそのまま食べるものと、完熟して堅くなったものをゆでて食べるものとがある。中国料理、菓子等に用いられることが多い。「生」の成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「乾」の成分値は、中国からの輸入品の分析値に基づき決定した。なお、緑色の幼芽は廃棄部位とした。
ひし<菱>
-05025 生
「ひし」は、ヒシ科ヒシの種子で、2本の刺がある堅果である。菓子材料又は調理用とする。殻を外して水に漬けて灰汁(あく)を取り、含め煮やきんとんとし、また飯に炊き込む。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。トウビシ(Trapa bispinosa)の種子も市販されているが、これとは種が異なる。
ピスタチオ
-05026 いり、味付け
「ピスタチオ」は、トルコ、シリア及びイスラエルが原産のナッツで、イラン、ギリシャ、イタリア等が主産地である。煎(い)って塩味をつけたものがスナック菓子として利用される。成分値は、イラン及び米国産原料を用いた製品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
ひまわり<向日葵>
-05027 フライ、味付け
「ひまわり」は、キク科ヒマワリの種子である。食用にされるのは、中国、ロシアから輸入される大輪系のロシアヒマワリの種子である。「フライ、味付け」は、種皮を除き、オイルローストし、食塩で味付けしたものである。成分値は、輸入原料を用いた製品の分析値に基づき決定した。
ブラジルナッツ
-05028 フライ、味付け
「ブラジルナッツ」は、ブラジルを主産地とする熱帯南アメリカ産の大型ナッツで、大型の莢(さや)の中に20~30個の種子が入っている。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値(「いり」)に基づき決定した。
ヘーゼルナッツ
-05029 フライ、味付け
「ヘーゼルナッツ」は、薄茶色のハシバミ類の実で、欧米ではスペイン、イタリア、米国等が主な輸出国である。成分値は、トルコ産原料を用いた製品の分析値及び四訂成分表成分値(「いり」)に基づき決定した。
ペカン
-05030 フライ、味付け
「ペカン」は、クルミ科の高木の一種で、山梨県及び長野県で少量産するが、輸入されるものが大部分である。成分値は、米国産原料を用いた製品の分析値及び四訂成分表成分値(「いり」)に基づき決定した。
マカダミアナッツ
-05031 いり、味付け
「マカダミアナッツ」は、オーストラリア原産のマカダミアと呼ばれる木の実である。成分値は、米国産原料を用いた製品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
まつ<松>
-05032 生
-05033 いり
「まつ」は、チョウセンゴヨウマツの実であり、中国及び韓国から輸入される。新たに収載した「生」の成分値は、中国からの輸入品の分析値に基づき決定した。「いり」の成分値は、中国産原料を用いた製品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
らっかせい<落花生>
-05034 乾
-05035 いり
-05036 バターピーナッツ
-05037 ピーナッツバター
「らっかせい」は、マメ科ラッカセイの種子である。ピーナッツ、南京豆(なんきんまめ)とも呼ばれる。南米原産である。種子の大きさにより、大粒種のバージニアタイプと小粒種のスパニッシュタイプに大別される。両者の交雑に由来する品種もある。他の食用とするマメ科種子と比べると、脂質が多いため、一般には種実類に分類されている。
「乾」の成分値は、大粒種の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「いり」の成分値は、国産の大粒種の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
なお、未熟種実の「らっかせい」は、野菜類に収載した。
「バターピーナッツ」は、大粒種の種皮を除いた種子を植物油で揚げた後、食塩で味付けしたものである。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
「ピーナッツバター」は、煎(い)った種子をすりつぶし、砂糖、食塩及びショートニングを加え、練ったものである。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
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