「日本食品標準成分表2010」について第3章の16

16)し好飲料類

  し好飲料類の全般に通じる主な事項は、次のとおりである。

1) アルコール飲料におけるエチルアルコール含量は、備考欄に記載した。なお、15 ℃における容量%も示した。

2) <アルコール飲料類>は、利用上の便宜を図り、100 gに対応するmL量及び100 mLに対応するg量をそれぞれ の備考欄に示した。

3) アルコール飲料の水分値は、乾燥減量分からアルコール分を差し引いて求めた。

4) 茶とコーヒーのカフェイン及びタンニン、ココアのテオブロミン、カフェイン及びタンニンの含有量を、備考欄に記載した。炭水化物の成分値は、水分、たんぱく質、脂質、灰分の他にこれらの成分値も差し引いて求めた。

5) 茶の浸出方法は、原則として四訂成分表に従った。

6) し好飲料類のすべての食品にエネルギー値を収載した。

 以下、各食品ごとに成分値に関する主な留意点について述べる。

<アルコール飲料類>

 アルコール飲料は、酒税法でいう「酒類」に当たるもので、同法の「アルコール分1度以上の飲料をいう」の定義に該当するものである。アルコール飲料には、種々の分類方法があるが、その製造方法によって(醸造酒類)、(蒸留酒類)及び(混成酒類)(注1)に大別した。なお、アルコール飲料は世界的に多種多様あるが、我が国で比較的多量に消費されているものを収載した。

 (醸造酒類)

 -清酒

 -16001 上撰

 -16002 純米酒

 -16003 本醸造酒

 -16004 吟醸酒

 -16005 純米吟醸酒

 -ビール

 -16006 淡色

 -16007 黒

 -16008 スタウト

 -16009 発泡酒                                                 

 (注1)

 「醸造酒類」とは、醗酵させたもろみをそのまま、あるいは濾過して製品としたもの。

 「蒸留酒類」とは、醗酵させたもろみや酒類を蒸留して得られる酒類で、酒税法では、「連続式蒸留しょうちゅう」、「単式蒸留しょうちゅう」、「ウイスキー」、「ブランデー」、「原料用アルコール」、「スピリッツ」に相当するもの。

 「混成酒類」とは、醸造酒や蒸留酒又は原料用アルコールに糖類、着色料、香料、草根木皮の浸出物、甘味料、調味料等を加えたもので、一般にリキュールや「薬味酒」と呼ばれるもの等がこれに含まれ、「スイートワイン」や「合成清酒」もここに含めている。

 -ぶどう酒

 -16010 白

 -16011 赤

 -16012 ロゼ

 -16013 紹興酒

 「清酒」の「純米酒」、「本醸造酒」及び「吟醸酒」については、「特定名称の清酒」として酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律に基づき「清酒の製法品質表示基準」(注2)が定められている。これ以外の「清酒」は、特に定めはないが、製造者自身の責任において、例えば特撰、上撰、佳撰等の格付けを行っている。成分値は、分析値に基づき決定した。なお、「清酒」のアルコール濃度は、全国調査1)に基づく値を収載した。

 「ビール」の成分値は、分析値に基づき決定した。

 「発泡酒」は、製法や香味が「ビール」と類似している。酒税法では「発泡酒」は、麦芽又は麦を原料の一部とした酒類で発泡性を有するものと定義している。「発泡酒」の成分値は、分析値に基づき決定した。なお、「ビール」の麦芽使用比率は67 %以上とされている。

 「ぶどう酒」は、その色調によって白、赤及びロゼ(バラ色)に区別される。成分値は分析値に基づき決定した。なお、アルコール濃度は最近の調査2)に基づく値を採用した。

 「紹興酒」は、もち米から造られる中国の醸造酒(黄酒)である。中国浙江省の紹興で生産されるものが有名である。長期間貯蔵熟成させたものは一般に老酒と呼ばれる。我が国にも多く輸入され、料理用や飲料として用いられている。成分値は、分析値に基づき決定した。

(蒸留酒類)

 -しょうちゅう<焼酎>

 -16014 連続式蒸留しょうちゅう

 -16015 単式蒸留しょうちゅう

 -16016 ウイスキー

 -16017 ブランデー

 -16018 ウオッカ

 -16019 ジン

 -16020 ラム

 -16021 マオタイ酒                                                  

 (注2)

 清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)において、清酒の特定名称は次のように定められてい  る。

  「吟醸酒」:精米歩合60 %以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟味して製造し た清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの

  「純米酒」:白米、米こうじ及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの

  「本醸造酒」:精米歩合70 %以下の白米、米こうじ、醸造アルコール及び水を原料として製造した清酒で、香味及  び色沢が良好な       もの

 また、白米とは農産物検査法により3等以上に格付けされた玄米(これに相当する玄米を含む。)を精米したも  の、こうじ米の使用割合(全白米重量に対するこうじ米の重量割合)は15 %以上であること、醸造アルコールの使用 量は、アルコール分95度換算の重量で白米重量の10 %を超えないこととされている。なお、吟醸酒で醸造アルコー ルを用いていないものは、「純米吟醸酒」と表示することができる。

 「しょうちゅう」は、酒税法により「連続式蒸留しょうちゅう」と「単式蒸留しょうちゅう」に区分される。平成18年の酒税法改正により、それぞれ「しょうちゅう甲類」、「しょうちゅう乙類」から名称変更された。「単式蒸留しょうちゅう」は用いる原料(さつまいも、米、麦、そば等)によってそれぞれ香気に特徴がある。アルコール濃度は、市販製品の場合、「連続式蒸留しょうちゅう」は35容量%(度)、「単式蒸留しょうちゅう」は25容量%(度)が多い。成分値は、それぞれ分析値に基づき決定した。

 「ウイスキー」及び「ブランデー」の成分値は主要なものの分析値に基づき決定した。「ウオッカ」及び「ジン」の成分値は、それぞれ代表的なアルコール度数、40容量%(度)及び47容量%(度)のものの分析値に基づき決定した。「ラム」は色調が濃く、香りの高いヘビーラム、色調及び香りが中程度のミディアムラム、色調が淡く、香りが低いライトラムに分類される。成分値は、菓子用等に比較的広く用いられる47容量%(度)のヘビーラムを試料とし、分析値に基づき決定した。 

 「マオタイ酒」(茅台酒)は、中国の代表的な蒸留酒であり、我が国にも多く輸入されている。「マオタイ酒」は、貴州省でこうりゃん(モロコシ)を主原料に固体発酵によって造られるアルコール濃度が高く芳醇で個性的な香りを有する蒸留酒である。成分値は、分析値に基づき決定した。

(混成酒類)

 -16022 梅酒

 -16023 合成清酒

 -16024 白酒

 -みりん

 -16025 本みりん

 -16026 本直し

 -16027 薬味酒

 -16028 キュラソー

 -16029 スイートワイン

 -16030 ペパーミント

 -ベルモット

 -16031 甘口タイプ

 -16032 辛口タイプ

 「梅酒」は、成分値は、分析値に基づき決定した。

 「合成清酒」の成分値は、分析値に基づき決定した。

 「白酒」は、蒸したもち米と麹(こうじ)にしょうちゅうを加え、糖化、熟成させたもろみを擂(す)り潰した酒である。成分値は、分析値に基づき決定した。

 「みりん」は、「本みりん」と「本直し」がある。前者の製法は基本的には「白酒」と同様のもろみを搾り、精製したものであり、主として調味料として使われる。後者は、「本みりん」に「しょうちゅう」又はアルコールを加えたものである。成分値は、それぞれ分析値に基づき決定した。

 「薬味酒」は種々あるが、成分値は、分析値に基づき決定した。

 「キュラソー」はビターオレンジの香味をつけたリキュールで、香りの高いホワイトキュラソーと味の豊かなオレンジキュラソーがある。成分値は、代表的なものとしてオレンジキュラソーを試料とし、分析値に基づき決定した。

 「スイートワイン」は酒税法上は甘味果実酒であり、混成酒類に該当する。アルコール濃度については、最近の調査結果2)に基づく値を採用した。成分値は、分析値に基づき決定した。

 「ペパーミント」ははっか香のリキュールであり、緑色のものが多いが、中には無色や青色のものもある。成分値は、代表的なものを試料とし、分析値に基づき決定した。

 「ベルモット」は、熟成した白ワインに20種以上の草根木皮を漬け込んだ酒であり、ニガヨモギ(vermouth)から酒名が付いた。濃色甘口のイタリア型の「甘口タイプ」と淡色辛口のフランス型の「辛口タイプ」があり、成分値は、それぞれ分析値に基づき決定した。

<茶類>

(緑茶類)

 -玉露

 -16033 茶

 -16034 浸出液

 -16035 抹茶

 -せん茶

 -16036 茶

 -16037 浸出液

 -かまいり茶

 -16038 浸出液

 -番茶

 -16039 浸出液

 -ほうじ茶

 -16040 浸出液

 -玄米茶

 -16041 浸出液

(発酵茶類)

 -ウーロン茶

 -16042 浸出液

 -紅茶

 -16043 茶

 -16044 浸出液

 <茶類>は、茶樹の芽葉を原料とした飲料である。製造方法の相違により、不発酵茶(緑茶)、半発酵茶(ウーロン茶、包種茶等)、発酵茶(紅茶)及び蒸製堆積発酵茶(黒茶、プーアール茶等)に大別される。

 緑茶は製造の第一段階で、茶葉を蒸気又は火熱で熱して茶葉中に存在する酵素を失活させて酸化を防ぎ、固有の緑色を保持させたものである。なお、緑茶は第一段階の加熱に蒸気を使用する蒸し製と、釜で炒(い)る釜いり製に分けられる。我が国の緑茶の大半は蒸し製で、「かまいり茶」は九州地方の一部で製造されているに過ぎないが、中国(大陸)の緑茶はほとんど「かまいり茶」である。蒸し製緑茶には、「玉露」(被覆栽培した上質の原葉を使用したもの)、「抹茶」(碾(てん)茶を臼で挽いたもの)、「せん茶」、「番茶」(硬化した芽から製造するか、又はせん茶の製造過程で粗大な部分を集めたもの)、「ほうじ茶」(番茶及びせん茶の再製で生じた頭と称する大型茶をほうじたもので、現在はせん茶や青茎を混入するなど一つの独立した茶種として扱われる。)等がある。「玄米茶」は、せん茶50 %に煎(い)ったもち米10 %と蒸して乾燥後、焙煎(ばいせん)したうるち精白米40 %を混合したものであるが、配合のばらつきは大きい。

 「ウーロン茶」は、半発酵茶であり、茶葉を日光にさらして多少しおれさせた後、釜いりして製造されるもので、緑茶と紅茶の中間の香味をもつ茶である。

 「紅茶」は、発酵茶であり、茶葉をしおれさせてよくもみ、葉中の酸化酵素により特有の香味をもたせるとともに、タンニン等の酸化を進めて製造した赤黒色の茶である。なお、発酵茶類に半発酵茶を含めて収載した。

 <茶類>は一般的に、上級品と下級品の品質格差が大きく含有成分もかなり異なっているが、分析に当たっては主として中級品を用いた。

 「玉露」の「茶」の成分値は、分析値及び四訂成分表値に基づき決定した。「浸出液」の成分値は、10 gの茶を60 ℃の湯60 mLで2.5分間浸出させたものの分析値に基づき決定した。「抹茶」の成分値は、粉末のものの分析値及び四訂成分表値に基づき決定した。「せん茶」の「茶」の成分値は、分析値及び四訂成分表値に基づき決定した。「せん茶」及び「かまいり茶」の「浸出液」の成分値は、10 gの茶を90 ℃の湯430 mLで1分間浸出させたものの分析値及び四訂成分表値に基づき決定した。「番茶」、「ほうじ茶」、「玄米茶」及び「ウーロン茶」の「浸出液」の成分値は、15 gの茶を90 ℃の湯650 mLで0.5分間浸出させたもののいずれも分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「紅茶」の「茶」の成分値は、セイロンディンブラを試料とし、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「紅茶」の「浸出液」は、セイロンディンブラ、ダージリン、アッサム、ウバ、ルフナ及びケニヤを対象とし、いずれも茶5 gを熱湯360 mL、それぞれ、2.5分、4分及び1.5分で浸出したものを試料とした。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

<コーヒー・ココア類>

コーヒー

 -16045 浸出液

 -16046 インスタントコーヒー

 -16047 コーヒー飲料

ココア

 -16048 ピュアココア

 -16049 ミルクココア

 「コーヒー」は、コーヒー樹の果実から外皮、果肉等を除去したものである。生豆を適当な温度で焙煎(ばいせん)したものが炒り豆である。この炒り豆を適当な大きさに破砕したものがレギュラーコーヒーで、熱湯で浸出して飲用する。一方、粗砕コーヒー炒り豆を熱水で抽出し、噴霧または凍結乾燥法等により、粉末又は顆(か)粒状にしたものが「インスタントコーヒー」である。なお、「コーヒー」の「浸出液」を調味したものが「コーヒー飲料」で、缶詰めにした缶入りコーヒー飲料が市販されている。

 「コーヒー」の「浸出液」の成分値は、ドリップ式で10 gの中びきレギュラーコーヒーを150 mLの熱湯で浸出したものの分析値、四訂成分表成分値及び資料3)に基づき決定した。

 「インスタントコーヒー」の成分値は、市販品を試料とし、分析値、四訂成分表成分値及び資料3) に基づき決定した。

 「コーヒー飲料」の成分値は、缶入りコーヒー飲料を試料とし、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「ココア」(ココアパウダー)は、その脂質含量によりブレックファストココア(脂肪分22 %以上)、低脂肪ココア(同10 %以下)及びその中間の中脂肪ココアに大別されるが、通常で飲用されるものの大半は、ブレックファストココアと中脂肪ココアである。また、ココアには、粉乳、砂糖等を混ぜていない「ピュアココア」と、これらを混和し、懸濁(けんだく)しやすいよう加工した「ミルクココア」(インスタントココア)がある。「ピュアココア」と「ミルクココア」の成分値は、それぞれの市販品を試料とし、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

<その他>

 -16050 甘酒

 -16051 昆布茶

 「甘酒」は、通常、米麹(こうじ)、米飯、水とを混和し、50~60 ℃で、12~24時間保温、糖化させて造られる日本古来の飲料である。なお、甘酒はアルコール分をほとんど含まない。成分値は、分析値に基づき決定した。

 「昆布茶」の成分値は、市販加工品(粉末)を試料とし、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

(炭酸飲料類)

 -16052 果実色飲料

 -16053 コーラ

 -16054 サイダー

 (炭酸飲料類)は、アルコールを含まない飲料のうち、二酸化炭素を含有するもので、果実色飲料、コーラ、サイダー等がある。

 「果実色飲料」、「コーラ」及び「サイダー」の成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

麦茶

 -16055 浸出液

 「麦茶」の「浸出液」の成分値は、水1.5 Lと麦茶50 gを入れて加熱(強火)し、沸騰後火を止めて5分間放置後濾(ろ)過した浸出液(又は商品記載の方法に従って得た浸出液)の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

文献

 1)  平成10年度全国市販酒類調査解析結果.国税庁課税部鑑定企画官室(平成11年7月)
 2)  第36回洋酒・果実酒鑑評会出品酒の分析値.醸造研究所報告,第171号(1999)
 3)  (社)全日本コーヒー協会:資料(未公表)

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科学技術・学術政策局政策課資源室

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