情報委員会(第31回) 議事録

1.日時

令和5年4月26日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 東館15階 15F1会議室 ※オンライン会議にてハイブリッド開催

3.議題

  1. 情報委員会主査代理の指名について(非公開)
  2. 情報委員会の議事運営等について
  3. 情報委員会における当面の検討事項について
  4. オープンサイエンスの推進について
  5. その他

4.出席者

委員

相澤主査、青木委員、天野委員、石田委員、尾上委員、川添委員、小林委員、長谷山委員、引原委員、星野委員、湊委員、美濃委員、盛合委員、若目田委員

文部科学省

森 研究振興局長、奥野 大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、工藤 参事官(情報担当)、河原 計算科学技術推進室長、藤澤 学術基盤整備室長、原田 科学官、竹房 学術調査官、松林 学術調査官

5.議事録

今回の議事は主査代理の指名があったため、開会から議題1までは非公開。
1.情報委員会主査代理の指名について
科学技術・学術審議会運営規則第6条第7項の規定に基づき、尾上委員が主査代理に指名された。
 
(傍聴者入室)
 
【佐々木参事官補佐】  事務局でございます。本会合は、科学技術・学術審議会情報委員会の第31回会合でございます。
 傍聴者の方が参加いただけるよう設定が完了しましたので、お知らせいたします。

【相澤主査】  ありがとうございます。
 それでは、引き続き議事を進めさせていただきます。まず、審議に先立ちまして、文部科学省の森研究振興局長より御挨拶をいただきます。

【森研究振興局長】  本日は今期の情報委員会の最初の会合でございますので、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 皆様方には、大変お忙しいところ、この委員会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。
 この情報委員会では、最先端の情報科学技術の研究開発の推進と、それから、あらゆる研究分野のデータ駆動型研究を支えます情報基盤の整備の2つの側面で御議論をいただいているものでございます。
 その中でも、現在、特にオープンサイエンスの推進につきましては、総合科学技術・イノベーション会議を中心に、5月に開催されますG7の科学技術大臣会合に向けて、我が国としての方針が検討されているというところでございます。
 文部科学省といたしましても、この方針を踏まえまして、オープンサイエンスの推進に取り組んでまいりたいと考えておりますので、本委員会におかれましても、まずはオープンサイエンスの推進について御議論をお願いできればと考えているところでございます。
 これに加えまして、情報分野については、AIをはじめとする情報科学技術研究の推進、次世代計算基盤やネットワーク・データ基盤の整備など、様々な課題があるところでございます。
 本委員会において忌憚のない御議論をいただきまして、御指導、御助言を賜りますようお願い申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【相澤主査】  ありがとうございます。
 続きまして、各委員からそれぞれ30秒程度で自己紹介をお願いいたしたいと思います。資料1も参照いただき、私が先頭となりますが、五十音順で、青木委員から順番にお願いいたします。
 まず、国立情報学研究所の相澤です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、専門としては、通信、AI、それから情報検索、自然言語処理等、幾つかトピックを経験してまいりました。ちょうど通信をやっていたときは、インターネットが始まり、情報検索をやっていたときは、Googleの検索エンジンが急激に伸び、そして今、ここ十何年間、自然言語処理に打ち込んでいるんですが、ChatGPTが現れたということで、誠に情報技術というイノベーションはすごく大きなインパクトを持つものだということで実感しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、青木委員、よろしくお願いいたします。

【青木委員】  青木でございます。東北大学の情報科学研究科の教授ですが、主に信号処理ですとか、コンピュータビジョン、バイオメトリクス認証、生体認証といいますか、こういったところを専門に研究を行っておりますが、最近は専ら大学の理事・副学長職、プロボスト職をやっておりまして、かなり多岐にわたっております。
 先ほど森局長よりちょっとお話がございましたが、仙台のG7の科学技術大臣会合のお手伝いなどもやっておりまして、最近は何の役なのか分からなくなってきていますが、どうぞよろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、天野委員、よろしくお願いいたします。

【天野委員】  慶應義塾大学の天野です。専門は、コンピュータアーキテクチャです。リコンフィギャラブルシステムや、インターコネクションネットワークの周辺、チップ開発などが専門です。最近は、ちょっと量子コンピュータ関係にも手を染めております。最近は半導体に物すごく注目が集まっているんですけども、やっぱりコンピュータアーキテクチャなどの、ある程度上位のハードウエアにももうちょっと光を当ててもらわないと、全体としてまずいのではないかなというふうに思っています。よろしくお願いします。

【相澤主査】  では、石田委員、よろしくお願いいたします。

【石田委員】  九州大学の石田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 現在、今年の1月からにはなるんですけれども、九州大学のデータ駆動イノベーション推進本部というところにおります。その中でも、私がいる部門は研究データ管理支援部門と申しまして、実際に今話題になっております研究者のデータ保存でありますとか、管理というようなものの支援をする部門におります。ですので、現在はサービスとともに、私の役割としては、研究データ管理支援を行う人材育成も担当をしております。いろいろ勉強させていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、尾上委員、よろしくお願いいたします。

【尾上主査代理】  大阪大学の尾上でございます。研究と情報推進と図書館の担当をしております理事・副学長でございます。専門は、集積システムとか組込みシステムでございます。
 コロナ禍を超えて、この情報委員会がカバーする領域というのは、非常に重要になってきて、さらにこれからが真価が問われると思いますので、頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、川添委員、よろしくお願いいたします。

【川添委員】  川添でございます。私、NTTの代表取締役副社長、CTO、CIO、CDOをしております。あわせて、今現在、電子情報通信学会の会長もやらせていただいておりまして、あと、IOWN構想というのをNTTから発表しましたが、そのIOWN構想を進めるIOWNグローバルフォーラムというものを2020年1月につくっておりまして、実は今、初めてのフェースツーフェースの臨時会合を、大阪で昨日より開催しまして、私、このグローバルフォーラムの会長をしていて、400名近いぐらいの海外からのいろいろな方々に来ていただき、まさにオープンサイエンス、オープンなディスカッションをしているというような状況でございます。よろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、小林委員、よろしくお願いいたします。

【小林委員】  東北大学の小林と申します。私の専門は、主にスーパーコンピューティングのシステム設計と、そのアプリケーション、さらには、最近ですと、クォンタムコンピューティングと古典計算の連携などにも取り組んでございます。
 文部科学省関係の委員会といたしましては、次世代計算基盤に関する調査研究のプログラムディレクターなども務めさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、長谷山委員、よろしくお願いいたします。

【長谷山委員】  北海道大学副学長、情報科学研究院長の長谷山でございます。専門は、AI、ビッグデータ、マルチメディア信号処理でございます。よろしくお願いします。

【相澤主査】  では、引原委員、よろしくお願いいたします。

【引原委員】  京都大学の引原でございます。現在、情報基盤・図書館担当の理事をさせていただいておりますが、過去10年間、図書館機構長、附属図書館長をやってきまして、ジャーナル問題、あるいはオープンアクセス、オープンデータの話に取り組んでまいりました。私の専門は電気電子工学なので、そこからはかなり離れたところにあるとは思いますけれども、この流れの中で対応させていただいております。
 現在、オープンデータに関して、学内の基盤の構築を担当しておりまして、この委員会の議論をかなり興味深く思っております。よろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、星野委員、よろしくお願いいたします。

【星野委員】  慶應義塾大学の星野と申します。専門は、統計学、データサイエンス、機械学習とその社会科学、経済系分野の応用ということでございますが、15年ほど前の若手の頃に、情報科学分野のさきがけ研究者をさせていただいて以来、相澤先生をはじめといたしまして、情報学分野の先生方に大変お世話になっております。
 また、最近ですと、内閣官房とか内閣府、総務省、経産省等のEBPM関連の各種委員の仕事もさせていただいております。
 また、ビッグデータを用いた政府統計の改善なども、総務省を中心に行わせていただいております。
 今期も引き続きまして、社会経済への情報科学技術のいわゆる情報基盤、リソースの有効活用に関する事業に、微力でも参加させていただくことを光栄に思っております。

【相澤主査】  では、湊委員、よろしくお願いいたします。

【湊委員】  京都大学の情報学研究科で教授をしております湊と申します。専門は、アルゴリズムや計算量など、その辺りの理論から応用まで幅広くやっております。
 私は、大学を出た後、NTTの研究所に14年間おりまして、その後、北大で14年間勤めまして、今、京大に戻ってきて6年目ということになります。
 今、科研費の学変Aのアルゴリズム基盤の領域代表を務めております。それから、今年度から、情報学科・専攻協議会の会長というのも引き受けております。よろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、美濃委員、よろしくお願いいたします。

【美濃委員】  理化学研究所の美濃と申します。専門は画像処理やコンピュータビジョンをやっていたんですが、京大にいた終わり頃からCIO等をやりまして、今やシステムづくりとか基盤づくりを中心にいろいろやっております。
 そして、今、理化学研究所の中で、研究データを管理する基盤を作っています。ネットワークでの大量データ転送をどうしようか、これはNTTさんと一緒にやろうとしていますが、いろいろなことをやっておりまして、全体としてオープンサイエンスを進めていくということをやっております。
 理化学研究所は生命科学が強いので、生命科学のデータを大分集めています。情報系だとあまりデータがないんですが、データを持っている研究所におりますので、その研究データが本当にオープンサイエンスで活用されるのかということを目指してやっていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、盛合委員、よろしくお願いします。

【盛合委員】  国立研究開発法人情報通信研究機構、NICTのサイバーセキュリティ研究所長を務めております盛合と申します。4月1日から執行役も拝命しております。
 私のバックグラウンドですけれども、暗号から始まりまして、情報セキュリティ、そして、最近はやはりこういう状況もございまして、サイバーセキュリティは非常にホットトピックスということで、いろいろなところからお話が入るようになりました。
 データという観点では、NICTはサイバーセキュリティ、サイバー攻撃に関する多種多様なデータを集めておりまして、それに基づくデータ駆動のサイバーセキュリティ研究ですとか、また、安全なデータ利活用を推進するためのプライバシー保護技術などの研究開発を進めております。よろしくお願いいたします。

【相澤主査】  では、若目田委員、よろしくお願いいたします。

【若目田委員】  日本総合研究所の若目田と申します。社外では、経団連のデジタルエコノミー推進委員会においてデータ戦略の担当をしております。ちょうど経団連ではデータの連携に対する課題に関する政策提言をまとめている最中でして、産学のデータ連携重要なテーマだと認識をしています。
 また、まさにデータの流通、活用促進を目的とした民間の団体であるデータ社会推進協議会の理事も務めております。
 恐らく、私がこの委員会の中で研究の現場から一番遠い人間かと思っておりますので、むしろ客観的な立場で意見を述べさせていただけたらなと思っています。よろしくお願いいたします。

【相澤主査】  どうもありがとうございました。
 では、続きまして、議事(2)の情報委員会の議事運営等についての議題に移りたいと思います。
 本日は初回の会合ですので、本委員会の議事運営等について定める必要があります。科学技術・学術審議会運営規則第6条第9項において、本委員会の運営に関し必要な事項は、主査が委員会に諮ることとされておりますので、事務局から、本委員会の位置付けと併せて説明願います。

【佐々木参事官補佐】  事務局でございます。まず、資料2-1を御覧いただければと存じます。
 まず、本委員会の位置付けでございますが、こちら、下のところに赤枠で囲わせていただいたとおり、本委員会につきましては、科学技術・学術審議会の下に設置されておりまして、調査事項として、科学技術及び学術の振興を図るため、情報科学技術や研究DX・オープンサイエンスの推進のために必要な方策等について、幅広い観点から調査検討を行う、ということを目的として設置されているところでございます。
 資料2-2につきましては構成図でございまして、こちら、後ほど御参照いただければと存じます。科学技術・学術審議会の直下に情報委員会が置かれているところでございます。
 続きまして、資料3を御覧いただければと存じます。こちら、情報委員会の運営規則の案でございまして、まず、第2条に下部組織とございます。先ほどオープンサイエンス時代の大学図書館の在り方検討部会について、冒頭、配付資料確認のところで御案内させていただきましたけれども、何か特定の事項を機動的に調査するために、この情報委員会の下に下部組織を置く、それに関する規定を第2条で定めているところでございます。
 また、第3条の議事につきましては、こちらは特に第2項のところで、情報通信機器を利用して会議に出席することができるとございます。本日もオンライン出席の方がいらしておりますけれども、こういった参加の方法について定めているところでございます。
 また、次のページでございますが、第4条におきましては、書面調査とございます。何かやむを得ない理由により、皆様の御都合が合わないなど、緊急に案件を検討しないといけない場合に、書面等の送付をすることによって調査を行うことができることを定めているところでございます。
 第5条につきましては、会議の公開ということで、原則、会議及び会議資料については公開とさせていただいているところでございます。
 第6条は議事録の公表に関するものでございまして、本会議の議事録につきましても、原則公開としております。また、各委員、御発言者の氏名についても明記して、議事録を作成させていただいているところでございます。
 第7条につきましては、こちら、先ほど構成図のところにもございましたが、科学技術・学術審議会に研究計画・評価分科会というものがございまして、そちらで、第7条にございますように、重要課題に対応するための情報科学技術に係る研究及び開発に関する計画等々について研究計画・評価分科会が議決を行うことになっておりまして、情報科学技術については本委員会で扱いますので、そういった議題について、こちらの研究計画・評価分科会に報告することになりますので、そのことを定めているのが第7条でございます。
 資料3の運営規則(案)につきましては、以上でございます。
 続きまして、資料4の公開の手続についての案について御説明させていただきます。先ほどの運営規則、こちらは案でございますけれども、その第8条に基づき、会議を公開をするということで、実際どういった手続で、傍聴の登録ですとか、どうやってアナウンスするかという手続を定めているところでございますが、3で会議の撮影、録画、録音についても定めているところでございまして、主査が禁止することが適当であると認める場合を除き、原則この会議については、撮影、録画、録音をすることができると定めております。また、これらを希望する者については、傍聴登録時に登録するといったようなところを定めさせていただいているところでございます。
 その他、一般的なところかと存じますので、御説明は割愛させていただければと存じます。
 御説明は以上でございます。

【相澤主査】  ありがとうございました。
 資料3及び4によりまして、運営規則の案と公開手続の案の説明をいただきました。以上につきまして、御質問や御意見等ございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、案のとおりということで決定いたしたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして、議事(3)の情報委員会における当面の検討事項についての審議に移りたいと思います。
 当面はオープンサイエンスの推進についての審議を行うことを予定しておりますが、今回が第12期の情報委員会の初回の会合ですので、情報委員会に関係する最近の施策の動向等を事務局から説明いただいた上で、委員の皆様に問題意識等をお伺いしたいと思います。
 それでは、資料5に基づきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【工藤参事官】  それでは、資料5につきまして、御説明さしあげたいと思います。
 2ページをお願いします。今、こちらに投影させていただいておりますのは、情報科学技術分野における文部科学省の取組の見取図になります。個別の四角の中に入っている個々のものについて、この後御説明いたしますが、まず、大枠を申し上げますと、青字のバナーで書いてあるところの枠に囲われているものは、主にハードウエア中心に組み立てられた施策が記載してございます。他方、赤側は、どちらかというと、人材育成等を含めた、人の行うソフト的な活動についての施策をまとめてございます。
 ここのバナーを見ていただければ皆様お分かりになるかと思うんですが、最初に「オープンサイエンス/研究データ基盤」、「スーパーコンピュータ」、「ネットワーク」、それから「人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ」、「Society 5.0の実現」、「人材育成」と。今ここで掲げている施策の数々は、最近話題になっております生成系AI、それから大規模モデルがある程度実現するための基盤としているものと、ほぼ同一のものであるかというふうに私としては考えております。
 ただ、現状、我が国としてそこにどう進んでいくのかは今後の議論になっておりますが、これまで文部科学省が行ってきました数々の取組、そして、ここに掲げている取組、その軌道というものは、そういう意味では、世界の潮流とかけ離れたものではないということをまずお知らせしたいと思います。
 5ページをお願いします。現状、我々のやっているものをまた違う角度から組み立て直しますと、まず、文部科学省ではなくて、個々の研究現場での施策を左上に見ますと、「データの計測・収集」として、それぞれの解析基盤、いわゆる実験機器からデータが吐き出されてきます。
 これについて、右上に「膨大な研究データの蓄積・統合」と書いておりますけども、こちらで大規模データアセット群の、いわゆる体系化、セキュア環境下での保護、知識空間の構築ということを行っております。
 さらに、左下の「世界最高性能の計算資源」では、いわゆるシミュレーション、それから、ここには今後、量子コンピュータ等の活動も入ってくると思いますけれども、ここで得られたデータにつきましても、同じくデータ基盤の方に統合されていくと。
 さらに、このデータ基盤に統合されたものが、右下の「人工知能をはじめとする数理・情報科学の結集」、こちらの取組によって、いわゆる解析基盤を提供していくような技術開発研究、こういったものを進めることによって、先ほど申し上げた全体的なデータの取扱い、そして、データの解析、さらには先ほど申し上げたような大規模モデルにどうつながっていくのかということも含めて、我々として取り組んでまいる所存でございます。
 簡単にそれぞれの施策について御紹介いたしたいと思います。1枚おめくりください。こちら、研究データ基盤の構築といたしまして、国立情報学研究所が構築しておりますResearch Data Cloud、NII-RDCの図示でございます。3つの要素によって構築されておりまして、1つは、データ管理基盤としてのGakuNin RDM、こちらは収集データの保存・共有等の管理を行うための基盤になってございます。
 他方、このピラミッド型の右側に、データ公開基盤としてJAIRO Cloudが、各大学等に設けられました機関リポジトリ、データの収容先でございますが、これらをつなげたクラウドが構築されてございます。
 さらに、三角形の頂点、データ検索基盤ですが、こちらはCiNii Researchという形で、ここで得られた各地の情報については、一括して検索できる体制を構築してございます。
 1枚おめくりください。現在、こちらのNII-RDCにつきまして、ここに掲げます7つの強化策というのがございます。こちらを強化する施策というのを行っております。これにつきまして、理化学研究所さん、東京大学さん、名古屋大学さん、大阪大学さん、それぞれにプラットフォーム連携、融合・活用開拓、ルール・ガイドライン整備、それから人材育成と、それぞれの役割について担っていただくような形の事業を行ってございます。
 2枚おめくりください。10ページをお願いします。こちらは学術情報ネットワーク、SINETでございます。こちら、日本全国の国公私立大学、公的研究機関を結ぶ超高速・大容量のネットワークでございます。NIIが民間事業者から未使用回線を借り上げることで、効率的に整備・運用をしてございます。SINETは1992年から継続してございまして、現状、昨年4月からSINET6という形で運用されてございます。全国を400Gbpsで接続してございまして、国際回線も200Gbpsに増強・整備がなされてございます。
 続きまして、12ページをお願いします。こちらは、スーパーコンピュータ「富岳」及び革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の運営でございます。御案内のとおり、スーパーコンピュータ「富岳」は、理化学研究所において開発、整備、運用されてございますが、これ以外にも、日本国内におきます大学に設置されています各地のHPC、ハイパフォーマンス・コンピューティングを接続いたしまして、それぞれ様々な課題において計算資源を提供し、そこにおけるシミュレーション等を進めていく施策でございます。
 1枚おめくりください。現状、富岳は運用開始から、具体的な開始は21年ですけれども、出来上がってから3年程度経ってございます。これから新しいコンピューティングについてどうあるべきかということ自体をここで検討してございます。
 1枚おめくりください。内容としましては、システムの在り方と、ここに天野委員の名前もございますけれども、いわゆる量子コンピューティングとコンベンショナルなスーパーコンピューティングの原理融合計算みたいなことがどうなるかという、新計算原理チームが置かれております。
 さらに、運用技術、特に電力性能が非常に大事な点になってございますので、こちらの改善等をどう行っていくかについても検証してございます。
 3枚おめくりください。続いて、AIについては様々な政府全体の取組がございます。先ほど大規模モデル、生成系AIの話がございましたけれども、現状、それにつきまして、AI戦略を改定するという話が出てきております。現在、このAI戦略そのものは、2019年度に最初につくられまして、昨年、一旦改正されてございます。
 18ページをお願いします。AI戦略2022、こちらの2022年の改正におきまして、社会実装の促進というのがうたわれております。特に危機への対処、新たな感染症や大規模災害、こちらにおけるAIのある種の実装、こういったものをより進めていこうという形での改正がなされておりますが、現状、新たに生まれました生成系AIに基づいてどのような議論を進めていくのかというのが、現在、政府部内で検討がなされてございます。
 1枚おめくりください。こちら、AIP、Advanced Integrated Intelligence Platform Projectというのがございます。こちらで、AIにつきまして、理化学研究所のAIPセンターにおいては、3つの方向性から検討を進めています。1つは、汎用基盤と申しまして、深層学習の原理の解明を中心に行うチーム、それから、目的指向、これは再生医療・モノづくり、高齢者ヘルスケア、先ほど出ました防災、こういったもの、それぞれの課題に対してAIを適用していく研究、これが目的指向となってございます。3つ目に、AIと人間の関係、社会との関係、AIが開発されていった先に今後どうなっていくのか、法制度の関係、こういったものを中心に検討する倫理社会、この3つの方向性から、10年間のプロジェクト、現状7年やってございますけれども、こういうことをやってございます。
 また、右側には、JSTの戦略的創造研究推進事業がございまして、この中で、各事業の中からAIを使って、更にこれらの研究を加速するものにつきましては、AIPセンターとのネットワークという形で、AIPネットワークラボを構築して、両者、連携して進めてございます。
 2ページおめくりください。Society 5.0実現化研究拠点支援事業につきまして、こちらは、これまでいわゆるIoT機器が様々なデータを取得してくるんですけれども、これらのデータから、ある種、個々人の行動変容を促すようなパターンの解析や、それから、データのほかのものへの二次利用、本人の同意ということが求められている環境の中で、これらを、小さな事業ではございますけれども、ある種先導してやることによって、今後実現するであろうSociety 5.0、まさにそれぞれ先ほど申し上げたIoT機器からのデータ取得が自動的になされ、それがまた解析がなされて運用されていく社会の中で、具体的な運用のテストベッドになることをこれまで進めてきてございます。
 昨年、10年間の期間の半分が過ぎまして、今年からセカンドステージという形になりまして、これまで構築してきた様々なプラットフォームにつきまして、個々の事業に当てはめて、今後、ある種社会事業に役立てていくことをテストしていくというフェーズに移ってございます。
 24ページをお願いします。こちら、統計エキスパート人材育成プロジェクトでございます。これ、人材育成のプロジェクトは非常に異色ではございますけれども、いわゆる統計科学につきまして、人材育成がなかなかうまくいかないという現状を踏まえまして、情報・システム研究機構におきます統計数理研究所、こちらに全国の参加機関が23機関ございますけれども、若手研究者を派遣していただいて、ある種、統計学の最新の知見を学んでいただき、それをまた各機関に戻って、それぞれ最新の知見を中で敷衍していただくというプロジェクトをやってございます。
 次のページをお願いします。冒頭の全体像とも非常に絡みますが、この2つの赤と青、ハードウエア的なものとソフトウエア的なもの、こうした取組が循環することによって、データ基盤を中心とするデータ駆動型科学、当然、計算科学を含めて発展することで、我々のデジタル社会に対応するような新たな研究開発を進めていく体制をつくってございます。
 この中で、オープンサイエンスの扱いなんですけれども、まさにデータを収集するという点につきまして、我々、まだ課題がいろいろあるというふうに感じております。その課題につきましては、特に日本だけというわけではございませんで、国際的にも、どうデータを収集するのか。収集するだけではなくて、そもそもデータをつくり出す上での基本的知識をまず社会で共有していく。研究者の方々が読んで入手できる状況というのを確保しなければならないというようなことを、まず問題意識として捉えてございます。
 26ページをお願いします。国際的な展開につきまして、今申し上げたオープンアクセスについては、いわゆるICTの活用によって、オープン・アンド・クローズ戦略の下で研究成果の共有・公開を進めていくということが、これまでもうたわれてございます。ここにオープンアクセスの各国の在り方をそれぞれ記載してございますけれども、現状、このような形で、各国、非常に進んできてございます。この資料の右下にありますように、G7科学技術大臣会合が来月仙台で行われます。この中でも、オープンサイエンス、オープンアクセスが一つの議題として上がってきてございます。
 また、次のページをお願いします。国際的な動向その2として、ユネスコにおきまして、一昨年、勧告が出ております。この中で、非常に新たな取組といいましょうか、定義がなされたようなところもございまして、ここのローマ数字Ⅱの中に、オープンサイエンスの定義、意義といったものに近いものがうたわれているかと思います。後で御覧になっていただければと思いますけれども、ここで言っているのは、知識を共有して、知識を組み合わせて、それによって新しい知識を生み出すということと、人々がその知識にアクセスして利用できる環境というのは非常に大事だということをうたっているんじゃないかというふうに、我々としては受け止めてございます。
 また次のページをお願いします。国際的な動向その3といたしまして、アメリカのOSTPにおきましては、即時OA、即時オープンアクセス方針というのを立ててございます。これは、連邦機関が出資します研究機関につきましては、大体、即時OAという形で、研究成果については、国民が、いわゆるジャーナル等を購入することなく読める体制を即時に構築することということをうたっております。特に助成機関の指定するリポジトリを通じて無償でアクセス可能、それからデータについても原則論文の公開と同時に公開ということをまとめてございます。
 1枚おめくりください。内閣府に総合科学技術・イノベーション会議がございまして、こちらでの公開されている検討状況でございます。今、G7の科学技術大臣会合におきまして、価値観を共有する国との連携として、国レベルのオープンアクセスに関する方針を策定したいというふうに議論を進めていると聞いております。具体的には、2025年度の新規公募分から、学術論文等の即時オープンアクセスということが念頭に置かれております。
 細かい論点は幾つかこの後また引き続き御紹介いたしますけれども、端的に申し上げると、まず最初に、公的な研究成果プラットフォームの整備・運営をちゃんとやっていくということと、学術論文の著者最終稿の掲載をグリーンOA、いわゆる機関リポジトリに載せていくことを義務付けていくこと。それから、掲載公開料を支援して、ゴールドOAも進めていくこと。さらには、これはどちらかというと、購読料の問題が中心になりますが、対出版社への交渉力を強化して、交渉体制を国として構築することによって、購読料の低減を目指すということもございます。さらに、日本の学会の発信力・プロモーション力の強化、国際的な連携、学術出版動向のモニタリング、政策連携みたいなことも想定されていると聞いております。
 現状、このように、オープンサイエンスに関する検討が始まっています。1枚おめくりください。今御説明したことは、次の議題にダイレクトに絡んできますけれども、整理いたしますと、G7科学技術大臣会合に向けまして、公的資金による学術論文等の即時オープンアクセス化、我が国としてのオープンサイエンスに関する原則が検討されていると。
 さらに、オープンサイエンスにつきましては、ここでユネスコの話も差し上げましたけれども、研究者の所属機関、専門分野、国境を越えた新たな協働やデータ駆動型研究等の高付加価値な研究を加速するために必要であること、さらに、新型コロナウイルス感染症を契機として、迅速な研究成果発信の重要性が高まっています。つまり、国民に対する説明責任や、シチズンサイエンスなど多様な主体が研究開発に参画する環境整備の観点から必要だということがうたわれております。また、先ほど申し上げたユネスコ、それから、アメリカOSTPの動向もございます。
 実際、第6期科学技術・イノベーション基本計画におきましても、2025年までに大学等のデータポリシーの策定率が100%になることを目標として定めてございます。これは、「AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業」、先ほど御紹介しましたNII-RDCの強化策でございますけれども、ここにおいても、研究データマネジメントに係る体制・ルール整備の支援というのを行ってございます。
 このような状況の中、科学技術・学術審議会におきましても、オープンサイエンスに関するこれまでの審議というものが、過去、多層な状況でやられてきてございますけれども、このような現状を踏まえて、やっぱり一度、更に取り組むべき事項を整理、御議論いただいた上で、オープンサイエンスにおける更なる推進すべき施策、意義というものを発信していただければというふうに考えた次第でございます。
 次の議題につながりますが、ここで一旦切らせていただきたいと思います。

【相澤主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局からの説明も踏まえまして、情報委員会における当面の検討事項について議論を行いたいと思います。事務局からの説明に対する御質問や御意見等がございましたら、挙手にてお知らせください。
 よろしいでしょうか。オープンサイエンスについては、これから議論の時間が十分にあるということでございますが、その他何かありましたらお願いします。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では、続きまして、議事(4)のオープンサイエンスの推進についての審議に移りたいと思います。
 資料6に基づきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

【工藤参事官】  それでは、資料6につきまして、御説明さしあげたいと思います。
 先ほどからの資料5から引き続いてオープンサイエンスの話題になりますが、2020年度のデータなので、現状からすると若干古くなっていますけれども、今御覧いただいたとおり、研究データと論文の公開経験というのを、かつてアンケートをしたことがございまして、この細かいデータにつきましては、また後ほど御紹介したいと思いますが、こうして見ますと、論文については、当然、公開したことはございますが、データについては半数以下というような話がここだったりします。
 さらに、公開方法につきましても、オープンアクセス誌への投稿が中心。それとか、雑誌が論文をオープンアクセスにした。あとは、所属機関のリポジトリに掲載した、30%ぐらい。あと、雑誌のオープンアクセスオプションを利用したとか、公開理由につきましても、投稿した雑誌がOAという形が75%ございますし、「研究成果を広く認知していただきたい」が大体集中してございます。
 未公開理由につきましては、ここはお金が非常に問題になっている。それから、投稿した雑誌がそもそもOAではなかったというのが大きかったというふうに聞いております。
 これにつきましては、令和4年3月10日の情報委員会(第24回)におきまして、一度御紹介いただいた内容をちょっとここで再掲させていただきました。
 次のページをお願いします。機関リポジトリにつきましては、左の表に見ていただくとおり、非常に多くの機関で整備がどんどん進んできてございます。ただ、機関リポジトリに記載されているコンテンツも、約半数が紀要、既に学術雑誌論文に掲載されたものが13%、学位論文が8%、データが4%、その他が4分の1を占めると。こういう状況でございます。
 もう1枚おめくりください。さらに、オープンアクセスポリシー、研究データポリシー、この策定率、これも調査年度が古いので、少し割り引いて見なきゃいけない部分がございますけれども、オープンアクセスポリシーを策定していないのが83%、データポリシーを策定していないのが74%というような状況にございます。
 我々、先ほど来、データを収容し、データからデータ駆動型科学を行っていく、それによって新しいサイエンスを開いていくというのを、ある種の目標として、ハード・ソフト面における施策を進めてまいっているんですけれども、それを支えるデータをまず収容する、論文を収容するという点につきまして、こうして見ていただきますと、なかなか浸透しているというのはちょっと言えないのではないかというふうに考えております。
 さらに、機関リポジトリは、繰り返しになりますけども、紀要が中心であって、学術雑誌論文や研究データの登載自体はちょっとなかなか進んでいないのではないかと。
 さらに、オープンアクセスポリシー、研究データポリシーの策定率ということを見ても、機関の方針がなかなか浸透していないんじゃないかというふうに見ております。
 これで、幾つか課題については、実は先生方に、ここはあくまでも我々事務局が考えた幾つかの仮定にすぎませんので、この後の御議論の中で、こういうことではないんじゃないか、むしろこういうことがあるのではないかということをいろいろお聞かせ願えればと思うんですけれども、一応、幾つかの仮説を考えますと、例えば、累次の審議のまとめ、これは政府機関におけるいろいろなドキュメントがございます。ただ、その中で、オープンサイエンス推進の全体像というのを示しているというのがあまりなくて、なかなかそれが分かりづらい。それから、オープンサイエンスの意義も、先ほど2つほど面があるということを申し上げたところなんですけれども、なかなかそういったところが共有されていないのではないか。それから、論文のオープンアクセス化と研究データの共有等のやり方みたいな、ある種の具体的なやり方、これはデータポリシー、アクセスポリシーがあれば、当然決まることだというふうに思いますが、それがちょっと整理がうまくいっていないのではないか。また、オープンサイエンスを支える基盤が課題を抱えている可能性、すなわち機関リポジトリを含めまして、これは論文雑誌の出版社の方の問題もございますけれども、その中にまだまだ課題が多くあって、進まない要因があるのではないかというふうに考えております。
 まず仮説①として、ここから先、全てのものを見ていただく必要はないんですけれども、累次の審議のまとめで、オープンアクセス、データポリシーについて言及したものを全て集めてみました。かなり大部になっていまして、ここから11ページまであります。様々な政策ドキュメントの中にこのような記載というのが続いていますけれども、なかなかそれが体系的になっているかということについては、もう少し整理が必要かなというふうに考えております。
 仮説②、意義につきましてですが、先ほど申し上げたとおり、研究活動そのものが、やはりデータ駆動型科学に移っていく。新たな知の創出ということが、複数の多様なデータの中からくみ上げられていくという、ジェネレートするものであるんじゃないかというふうに考えていくと、それが一つの基盤として、研究の本当に共有の価値ではないかというふうに考えていますけれども、こういったものが皆さん、そこを意識していただければなというふうに思うことと、やはりコロナ禍で非常に明らかになってきたのは、最新の科学的知見というのが、防災、そういった危機的状況においては、やはり早く届けたい、早く見た方がよい。これはプレプリントサーバが、かなりコロナ禍において地位を占めた、存在感を示したという現状もあり、やはり国民が最新の知見を、雑誌を読むということではなくて、それより前に見えていくことということが一つ重要な課題なのではないかというふうに考えております。
 3つ目です。オープンアクセス化、研究データ共有のやり方につきまして、1枚おめくりください。15ページ、こちらは、引原委員のかつて出されている研究のフローの図をお借りしてきております。実際、らせん型になっておりますけども、上段が、どちらかというとデータ管理、研究データプラットフォーム中心の流れになり、下段が論文流通という、研究者の論文執筆以降の扱いになってございます。
 次のページをお願いします。論文を執筆した後どういうプロセスでオープンになっていくのかを、我々で仮説としてフローをつくってみたんですけれども、まず、研究活動・論文執筆いたしますと、ある種プライオリティの確保に使うときに、これはプレプリントサーバへアップロードすると。ここで出した段階で、ある意味グリーンOAというのを成し遂げる。いわゆる出版社に基づくお金のかかるOAではなくて、機関リポジトリを含めたオープンのプラットフォームに対するOAが進みます。
 次に、論文誌へ投稿・査読の左側の分岐を進みますと、この中で2つの雑誌がございます。これはフルオープンジャーナルの場合、いわゆる論文掲載料、APCを払って掲載を求めるタイプのジャーナルですけれども、こちらに出せばゴールドOAという形になります。
 他方、一般のまだ書籍中心の非OAジャーナルの場合につきましては、この論文掲載決定がなされた後に、これも2つの分岐になりますが、いわゆるAPCを払って、当該論文の内容をオープンにアクセスする選択、ゴールドOAにするか、出版社のおおよそ半年から1年と、幾つか選択肢がございますが、エンバーゴを経た後に、著者最終稿を、それぞれ大学に設けてございます機関リポジトリに掲載して、グリーンOAにするか、このような選択になるかというふうに考えております。
 これにつきまして、次のページをお願いします。先ほどNII-RDCのプラットフォームについて御説明いたしましたが、このほかにJSTのJ-GLOBALという、論文を検索するプラットフォームもございます。それぞれ、CiNii Researchがカバーしているのが左下の方に、J-GLOBALの方のカバーしている範囲が右の方と、このように2つに分かれた形で、今あらゆる論文を検索したいという方がいらっしゃったときに、どちらかからか必ずそれがヒットするという体制を組んでございます。
 次のページをお願いします。次は、先ほどの引原先生の図に一度戻らせていただきまして、今度はデータ管理の方になります。
 次のページをお願いします。データの方はそんなにリニアなふうに考えると難しくて、いわゆる実験・計測、それから、その後にデータ処理したものを一度保管すると考えられるというふうに思われますけれども、そのときに、判断材料としましては、ここに赤字で記してございますが、コスト面、安全面といった点で評価して、大体3つが考えられるんじゃないかと思います。1つはデスクトップかオンプレミスのサーバ、それから商用ストレージ、それから、GakuNin RDM、ある意味、ここはグリーンOAに近いと思います。このまま論文のエビデンスデータとして、論文とともに公開してしまえば、そこでこのデータは公開になります。
 他方、その後、このデータをどのように扱うかにつきましては、下の段に移りますと、さらにオープン・アンド・クローズ戦略を考えて、当然、安全性、効率性、倫理面、それから金銭的対価、科学全体の貢献、こういった観点で判断することになりますが、一つに非公開、後続研究・研究公正のための管理というのを行っていく。もしくは、共同研究者に対して共有、部分公開的な形になります。最後は、機関リポジトリにそのデータを公開する仕組みになります。これになると、右側、CiNii Researchによって、論文、データとともに、どちらも検索可能になりますし、今、CiNii Researchが進めております欧州の海外プラットフォーム、EUROPEAN OPEN SCIENCE CLOUD、EOSCとの連携という形も進んでいくような形になってございます。
 最後に、オープンサイエンスを支える基盤が抱える課題です。こちらにつきましては、次のページをお願いします。現状、オープンサイエンスにつきましては、プレプリントサーバのJxiv、それから、日本の学会電子ジャーナルのプラットフォームであるJ-STAGE、さらにそのJ-STAGE登載論文のデータをリポジトリ化しているものと、先ほど御紹介しましたNII-RDC、NII Research Data Cloud、この2つの中で、いわゆるグリーンOAのリポジトリというものを構成しておりますが、ここがまたこれから御議論していただくかと思いますけれども、これの改善点等々を今後御議論いただければと考えております。
 全体、ここまでちょっと長くなりましたけれども、以上が御説明になります。よろしくお願いいたします。

【相澤主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に基づきまして、オープンサイエンスの推進について議論を行ってまいりたいと思います。なるべく多くの方々からぜひ活発な議論をお願いいたしたいと思います。
 では、御質問、御意見等ございましたら、挙手機能を使いましてお知らせいただければと思います。
 では、川添委員、よろしくお願いいたします。

【川添委員】  御説明ありがとうございました。私から1点、お伺いしたいポイントがございます。
 オープンサイエンスを推進するというのは、本当に必要なことであり、すばらしいことだと思うんですけども、その際に、これが非常に大きな効用を呼んだ、要は成果になったということを示す上で、いわゆるKPIみたいなものをどういうふうに設定するかというところの考え方もこの中で定義しておいた方がいいんじゃないかなと思ったんですけど、いかがかということでございます。
 私が今、会長をやっております電子情報通信学会などでも、こういうことを進めることは非常に重要だと思っていますけども、例えば、学会としてのインパクトファクターを上げていくところの効果が、こういうことをやることによって高まるんじゃないか。あるいは、学会の会員数が今非常に減ってきていて、非常に問題になっているんですけども、これを増やしていく上でも、これをうまく活用できるんじゃないかと。これを使っていくことによって、具体的にどういう効用が、できれば数値化されて表せるかというKPIの設定、これについてどういう考え方があるのかということをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

【工藤参事官】  ありがとうございます。なかなか難しい御質問だというふうに理解しております。2つ方向性がありまして、オープンすることによって、どういう創発的な知が生まれてくるかということをまず評価しなければいけないかということが一つあるかと思います。これは、いわゆる科学の評価体系そのものに絡んできますので、そこをどうつくっていくかというのも1点あるかと私は理解しています。
 他方、オープンになっているか、なっていないかの在り方、つまり、オープン率のような話もありますけれども、こういったものをいわゆるモニタリングしていくかどうかということも、これが生み出す効果、モニタリングすればオープンが進む、モニタリングしなければどうであったかという介入点の評価も含めて考えていかないと、なかなかこうだと言うことは難しいかと思いますけれども、今、委員から御指摘いただいた点は非常に重要な点だと考えておりますので、今後、議論の中でまた我々の方でも考えていきたいと思っております。

【川添委員】  ありがとうございます。何となく私が捉えたのは、オープンサイエンス、オープン化というのは手段であって、目的ではないのかなと思ったんですよね。やっぱりあることを達成するためにこのオープン化をしていくわけですから、それを定義していかないと、オープン化したからそれでいいんだということでもないかなとちょっと思いました。その辺も含めて、ぜひ検討を深めていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

【工藤参事官】  ありがとうございます。
 1点だけ。ただ、そういう意味で、意義の方のことをお示ししたつもりなのは、オープンにすることによって生み出される価値というのを当然考えていかなければいけないんですけれども、オープンにしないと、国民、市民に対して、やっぱり生み出された知がきちんと伝わっていかないといけないという観点もあるかと思います。その点をどう評価するかというのが、非常にまたKPIづくりという点においては難しいのではないかなとは思っております。
 以上です。

【相澤主査】  よろしいでしょうか。オープンにすることの効用の数値化というご指摘含めてご意見頂きました。
 では、若目田委員、よろしくお願いいたします。

【若目田委員】  ありがとうございます。今の内容にも多少関連しますが、オープンサイエンスと同じような環境にあるオープンガバメント、行政機関のオープンデータの推進ですが、取り組んでいる自治体の数をKPIにすることで、自治体は公開することが目的となり、公開するが使い勝手が悪い、あるいは全く使われないという結果になりがちです。重要なことは、公開したデータがどのように使われ、どのような価値を導き出したかというところであり、それらが極力可視化されるといいのではと感じています。
 その観点でお聞きしたいのが、オープンサイエンスが進んだ結果、分野や国境を越えたデータ駆動型研究により、非常に重要な社会課題を解決したとか、新しい発見があったとか、具体的な成功事例があれば、私が知らないだけかもしれないので教えていただきたいという点が1点目。
 それと、これも質問になりますが、ユネスコにおいてもオープンサイエンスの推進が勧告されていることについての説明が非常に新鮮でしたが、「人権、国家安全保障、秘密、研究対象者のプライバシーの権利及び知的知財権の保護に基づく場合はアクセス制限が認められる」という記載もありました。社会課題の解決、地球規模の課題を解決するためには、企業秘密とされるデータや、プライバシーに関わる個人情報の活用についても何らかの筋道を立てていく工夫や努力も必要かと思いますが、オープンサイエンスのスコープから、完全にこのあたりを除外して考えているのかどうかという点が2点目の質問です。よろしくお願いします。

【工藤参事官】  後段の方から先にお答えしますと、やはりオープンサイエンスを行うに当たって、オープン・アンド・クローズ戦略ということが常にうたわれております。その中にまさに人権や秘密、企業の利益、こういったものを考えないというのはなかなかできないというのが現実としてあるかと思いますので、やはりそこはこれまで議論があったオープンアクセスポリシー、それからデータポリシーについても、どちらとしても、そこの部分は入らざるを得ないんじゃないかなというふうに思います。
 前段の方が若干分からなかったので、かみ砕いてお願いできますか。

【若目田委員】  極めてシンプルで、オープンサイエンスが進展したからこそ何か解決した課題とか、発見された研究成果みたいなもの、要は、やってどのようなメリットがあったのかというところの象徴的なケースがあれば、教えていただきたいということです。

【工藤参事官】  研究について、私の方で詳らかにこうだというのが、なかなか事例が浮かばないんですけれども、どちらかというと、シチズンサイエンス的な観点で申し上げれば、先ほどCOVID-19時の、いわゆるプレプリントサーバの隆盛というのがございました。これは、必要であればデータの方もお示しすることはできるんですが、いわゆるPubMedとかarXivにおいて、COVID-19が一体どういうものであるかということがよく分からなかった時期から、基本的に医療関係の研究成果というのは、それのある種の再現性、あるいは信頼性の問題もあって、基本は査読付論文が中心に評価されてきたという歴史があります。
 他方、ただ、それを待っていると、研究成果が出てから1年ぐらい社会に還元されないという状態があるということがあって、その研究者のいわゆるコミュニティの中から、こういった成果を早く世の中に還元、まだ正しいかどうかというのが分からない段階からどんどん出して、さらに、それが出たときに、非常に面白いのは、コミュニティが形成されているので、その中で新しい知見もお互い交換し合って、共同研究に進んでみようとか、こういう運びがあったというふうに聞いております。これによって、市民社会においてもCOVID-19に対する対策みたいなものがより進んだ面というのはある、と、ちょっと定量的に評価するものはないんですけれども、言われておりますし、また、それによって創発的な新しい研究課題というのがどんどん出てきたというのは、非常にこのオープンサイエンスの一つの理想形ではないかなと、そんなふうに受け止めております。

【若目田委員】  ありがとうございます。先ほど、「オープンにすることは手段であり、目的ではないのでは」という指摘がありましたが、今ご説明頂いたオープンサイエンスの理念の理解を深めるためには、具体的なケースや事例などが広く周知されることが重要かなと思いましたので、質問さしあげました。御回答ありがとうございました。

【相澤主査】  成功事例の蓄積ということも非常に重要であるということで、ありがとうございます。
 続きまして、引原委員、よろしくお願いいたします。

【引原委員】  ありがとうございます。工藤参事官、御説明ありがとうございます。
 先ほど川添委員の方から御意見があったんですけども、オープン化が手段になっているんじゃないかというお話だったと思います。現実に、過去のリポジトリが紀要を中心としたものにとどまっているということが、その結果だと思います。
 というのは、過去のリポジトリというのは、図書館がオープン化の対象を学内の資料にとどめてしまった。その結果、紀要が中心になったという現状があります。ですから、オープン化の手段を実現するということにとどまってきたのがこれまでのポジトリですので、ここで転換しないといけないと思います。
 それが、先ほどおっしゃったようなKPIの定義においてどのようなものがオープンになって、さらにそれが研究者を守ったとか、科学の振興につながったということを、グリーンにしても、ゴールドにしても、きちんと定義してやることが重要なんじゃないかというふうに感じました。それが図書館の関係の経験からのコメントです。

【相澤主査】  ありがとうございます。
 では、盛合委員、よろしくお願いいたします。

【盛合委員】  ここまでの議論と少し重なるところがあるんですけれども、これからオープンサイエンスを更に推進していくために、やはり成功事例、ベストプラクティスの共有というところが重要かなというふうに思います。やはり、データを取るのもただではないですし、自分たちの研究の推進の原動力になるものなので、オープンにすることで本当に自分に利益がないと、なかなか皆さん、オープン化には及び腰になるというのは想像できるところかと思うんですね。
 我々も今やっているデータ駆動の研究のところで、ベストプラクティスになればいいなということで、開始して3年目のプロジェクトがあるんですけれども、サイバーセキュリティの研究は、インシデントに遭いましたといったときに、そういうデータがなかなか出てこないということで、サイバー攻撃のデータを我々のところでたくさん集めて、活用していこうというふうに考えています。
 残念ながら、我が国のサイバーセキュリティの研究は、なかなか自給率が低いというところがございまして、データがないので、それを解析する人材がいなくて、それで研究が進まなくて、そして、いわゆるサイバーセキュリティ産業というサービス、我が国発の産業というところが出てきていないというような問題点があると思っていまして、NICTが持っているデータを公開することで、産学官の皆様にお使いいただいて、そういう人材を育成したり、そして、企業のサービスの開発に使っていただく。あるいは、例えばAIのモデルをつくったよといったら、実データでちゃんと動くかどうか検証いただくというようなことで、そういう産学官の結節点をつくるための、ネクサスをつくるためのプロジェクトというのを始めているところでございます。
 これは今、55組織ほどに御参加いただいているんですけども、こういう形で、例えばこういう結果が出ましたという事例が出てくると、そういうふうにデータをオープンにすることで、ウィン・ウィンになるような関係というのが築けるんだなというような事例がいろいろな分野で出ていけば、皆さん、いろいろな自分の分野で、こうしたらうまくいくかもしれないというアイデアにもつながると思いますし、そういうものを積み上げていくということが、オープンサイエンスを推進していく上でいい事例になるんじゃないかなというふうに思っております。質問というよりはコメントです。

【工藤参事官】  引原委員、盛合委員、ありがとうございます。力強い御指示をいただいたかと思います。
 特に引原委員がおっしゃられた、過去の経緯においてやはりなかなか進まなくなっている原因というものを、我々もう少し丁寧に拾っていって、そこを直していくことも始めなければいけないというふうに理解しておりますので、また御協力いただければと思います。
 また、盛合委員におかれましては、そういった先進的な取組があって、それが企業でどう使われて、さらに、人材はこんな感じでできたみたいな事例を、今後またトラックさせていただいて、何かの機会に御紹介いただけると、非常に我々としては心強いものと思っております。ありがとうございます。

【盛合委員】  ありがとうございます。
 1点だけ申し上げ忘れたのが、やはりオープン化するといっても、大量のデータを管理していく、そして、やはりデータ管理もただではないので、サーバの電力代もかかりますし、セキュリティアップデートという意味で、どんどん更新していく必要があるということで、完全オープン、フリーのオープンサイエンスだけではないのかなというところで、そこもぜひ議論とかの対象になるといいかなというふうに思っております。

【工藤参事官】  ありがとうございます。

【相澤主査】  ありがとうございます。リポジトリの転換が必要という御意見と、ベストプラクティスの共有が大切、フリーだけではないという点は重要だと思います。
 では、原田科学官、よろしくお願いいたします。

【原田科学官】  原田です。私の分野は、コンピュータビジョンとかマシンラーニングなんですけど、KPIとかオープン化の意義というお話が出たんですが、我々の分野は、オープンにしないと全く意味がないというのか、コードも公開します、データも全部公開するというような状況ですので、むしろそういう敷居が、データとかコードとかを公開した時点で、我々研究者のアドバンテージってゼロになるんですね。世界中の誰でもキャッチアップできてというかなり厳しい状況ではあるんですけれども、そのようなオープン化をすることによって、圧倒的な研究分野の進展がこの10年行われたということで、これによって全ての科学分野においてAIが入っていって、更に進展していくというのを、ずっとこの10年、15年、見てきたということがありますので、オープン化を続けてきた意義、一つの大きな成功例ではないだろうかというふうに今考えておりますし、KPIとか、モチベーションというような意味合いですと、特にデータアセットを公開する方が結構強いんですね。強いというのはどういう意味合いかというと、公開した論文、データアセットに関する、そのサイテーションが半端でないんです。皆さん、わっと使う。特に大規模で精度が高いデータアセットをつくると。そうすると、研究者のモチベーションもかなり上がると思います。あのデータアセットをつくった人なんだということで、やっぱり大きなデータアセット、正確なデータアセットをつくることによって、研究の方向性ががらっと変わったというのもよく見てきておりますので、それがKPI、サイテーションが上がっていくというような意味合いでもあるのではないかと思います。
 実際にGoogleのサイテーションインデックス、ジャーナルの中でどういうジャーナルが強いのかというようなものがありまして、1番が『Nature』で、2番は忘れましたけど、3番が『Science』です。4番目が何かというと、コンピュータビジョンのプロシーディングスなんですね。ジャーナルじゃないんです。
 その後ずっと行って、9番にICLRと呼ばれている、初めからオープンに、arXivで全部公開するということをやっていた、マシンラーニング系が来ているんですけれども、もともとプロシーディングスといったものは、ジャーナルの文化からいうと、何かプロシーディングスだよねというような雰囲気だったと思うんですけれども、そういう感じにはなってきていないというような形で、ある意味、KPIという意味合いでは、arXivに上がったというか、そういうところ自体もサイテーションされるというような意味合いでは、明確な数値として、指標としてはあり得るのではないかというふうに思います。
 以上です。

【相澤主査】  コンピュータビジョンとかマシンラーニング分野の状況を御紹介いただきありがとうございます。
 では、青木委員、よろしくお願いいたします。

【青木委員】  今お伺いしていて、例えば、盛合先生のセキュリティの話は、今いろいろなところで議論があり、日本が弱いところでもあり、まさにデータの議論が非常に重要だということは、本当にそのとおりだと思います。あと、原田先生のお話も、私もAIやデータ、画像だとかをやっていますと、まさにそのとおりで、もう議論の余地はないというふうに思います。
 私自身は、ちょっと議論の流れを変えてしまって申し訳ないんですが、1点だけ、施策をデザインするときの考え方として、大学の経営者として、こういったときにどういうふうなことが考えられるかということをちょっと申し述べておきたいと思います。
 やはり大学等の研究力をいかに向上できるかという観点から、今、日本の凋落は非常に著しいということで、待ったなしであるという意味でいうと、そういった、いかに向上できるかという観点からの施策の推進力を確保するということも重要ではないかと。ちょっと学者ではないような意見で大変恐縮なんですが、オープンサイエンスについては、議論や意識の醸成というのは極めて重要で必要なんですが、施策をローンチする立場としては、もはや足踏みをしている段階ではないというふうに私は思っております。
 その際に、議論がいつも大学ごととか研究者ごとに、いろいろな議論、ある種、議論はいいんですけども、無駄な作業ですとか寄り道をするケースが多くて、ある意味、研究現場の疲弊とか時間の確保という観点から、効率が悪いケースが結構多いんですね。データも日本は結構民主的にやっていくので、非常にそれが研究力をそいでいく、研究時間をなくしていくということが多いので、やはり研究DXということを打ち出すのであれば、ぜひともそういった観点をしっかり考えていただきたいということで、例えば、具体的に、せっかくですから資料5の29ページなどを御覧いただきますと、非常にいいことが書いてありまして、まだ未定稿だと思うんですが、要は、グリーンOAで行こうと。だから、公的な研究成果プラットフォームの整備と書いてあるわけですね。公的資金による学術論文の著者最終稿、いわゆるグリーンOA、オープンアクセスの義務付けを行うんだということが書いてございます。
 ということは、研究現場に非常に大きな影響が与えられるわけですが、やはりこれは書いていただいているように、DXで、プラットフォームで簡単にできるようにしないと、また大学ごとに細々とやって議論してというのではなくて、統一基盤でしっかり簡単にできるようにするということが極めて重要であろうというふうに感じるのが第1点ですね。こういったところが、ぜひとも共通基盤でやっていただくといいんではないか。
 それから、例えば、資料6の7ページあたりに書いてございますが、下の方ですね。「研究データの保管・管理は、研究データの公開を進めるための前提であり、データ管理計画を作成し計画に従った管理を行う」とあります。科研費等で当然データ管理計画、データマネジメントポリシーをつくりましょうなどと出てくるのかもしれませんけれども、こういったところも、やはり時間確保というか、研究者にこういったことを求めるだけではなくて、できるだけ統一で非常に簡単に、例えばこれをエクセルで提出するとか、よく考えられるわけですけども、そういうことじゃない、非常に利便性の高い組合せが、その後、検索等可能な格好で、非常に利便性の高いものを用意してやっていく必要があるのではないかということがあります。
 最後に、大学ということで言いますと、研究者のモビリティが、今現在、非常に高い状況になっていますので、大学ごとに何とか議論して細かくつくってというところではなくて、やはり統一的に国として準備する。さらに、世界にもどんどん動いていくわけですから、国際基準でどんどんそういったものを取り込みながらつくっていくということが大事ではないかと。ちょっと違う観点で申し訳ございませんが、そういった施策の考え方でぜひともお願いしたいということでございました。
 以上です。

【相澤主査】  ありがとうございます。

【工藤参事官】  その点について、なかなか完璧とは当然いかないんですけれども、進めている部分がございまして、先ほど資料5の、ちょっと雑駁に説明してしまったのかもしれませんが、7ページに、AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業というのをやってございます。こちらは、NII-RDC、Research Data Cloud、いわゆるグリーンOAのリポジトリの集積物に対して、今、先生がおっしゃったようなメタデータをどうつけるのかとか、それから、それをどう管理運用していくのかとか、そういうものも、ある種、セントラライズしたアイデアというものを、まず、ひな形をつくって、それを各大学に普及していこうという試みも始めております。
 この中で、特に名古屋大学さんにお願いしているルール・ガイドライン整備チームの活動であったり、それから、これは美濃先生もいらっしゃいますけど、プラットフォーム連携チームで、一つのテストベッドになるようなこともやっていただくようなこと、これを踏まえて、一つ一つの大学で今おっしゃったようなことが起こらないようにというのを含めて、こういう事業を進めておりますので、またその点についても、この委員会においてどのような進捗にあるかも御紹介させていただければと、そんなふうに思いました。
 以上です。

【青木委員】  全く私も存じ上げておりますけど、今回の課題で、共有されていないとか、いろいろなことが分かりにくいとか、そういうキーワードがあったので、一応お話をしたということです。ありがとうございます。

【工藤参事官】  ありがとうございます。

【相澤主査】  ありがとうございます。現場が疲弊しないというのは重要なことだと思います。
 それでは、美濃委員、よろしくお願いいたします。

【美濃委員】  理化学研究所の美濃です。いろいろなことをしているので、若干情報提供みたいな話になりますが、理研ではかなりデータをオープン化して、それで、先ほどのKPIの話も1年半ぐらい前からいろいろ議論しています。どういうふうにすれば進むんだという話もかなり議論させてもらって、生命科学だけですが、そろそろ中間まとめを発表しようというようなところまで来ています。
 やっぱりこの中で一番大事だというか、そもそもオープンサイエンスが進んでくると何が問題になるんだという話があるんですね。データをオープンにしたら、大学では研究室管理だというところが多いんですが、教授が異動するとなくなっちゃうということになるんですね。
 したがって、それは機関としてしっかり持たなきゃいけないということで、10年間とか15年間オープンにしましょうとやり出しました。ところが、質問とかが来る可能性があって、それにどう対処するんだという問題が出てきました。そうすると、そこへまたリンクを張っておかないといけない。どこに行かれてもちゃんと回答を出すようにしなきゃいけない。
 それで、データそのものは機関で集めるんだから、機関のものだという言い方、個人のもので、個人が持っていったら、多分責任を持てないので、研究の証拠データである以上、その研究証拠データとしてのオープンサイエンスという話になった場合は、やはりその研究をした機関がしっかり最後まで責任を持ってやらなければいけないという点があるので、これはなかなか大変な話だなという、機関としての大変重たい話だなというのを今議論しています。けれど、そうせざるを得ないという話になっているので、何とか体制をつくってやらなきゃいけない。
 それと、もう一つ問題になるのは、データが何らかの意味で間違っていたときに果たして誰が責任を取るのかという話も、オープン化が進むと今度は重要になってきて、それは個人の責任ですよという話で進んでいくのか、その辺はよく分からないんですけど、その辺の質保証みたいなことも、どこかで考えないといけないのかもしれないと。まだやっていないので分からないから、そういった話もちょっと考えないといけないんじゃないかというふうな議論をしています。
 それで、一応仕組みをつくって集めるようにしたのですが、やっぱりなかなか集まってこない。一番大事なのは、やっぱり研究者の意識改革をしないと、なかなかそういうふうにいかないんですね。理研の場合、海外から帰ってくる日本人をたくさん採るんですけど、そういう人たちはオープンにしましょうと。何でそんなモチベーションあるのか聞くと、やっぱり周りの人がみんなオープンにしているから、自分もしなきゃいけないという環境になっているんですね。日本の場合は周りの人が誰もやっていないので、結局やらないということになってしまうということで、その辺の意識改革、ある程度のクリティカルマスを目指すというときにどうするかというようなことを、ちゃんと考えないといけない。
 それから、論文そのものは比較的皆さん意識が高まっているんですが、研究データの方は、オープン化すると、メタデータをつけなさいとか、いろいろなことを要求せざるを得ない。あるいは、どんな条件で研究データを取ったのかなどという話を、説明データをかなりつけなければいけない。論文があれば、そこで分かるという話もあるんですが、取りあえずオープンにするための手間がかかる。ここをできるだけ自動化しようというので、NIIさんとのデータエコシステム構築事業の中でやっているわけですが、やっぱりできないところはいっぱいあるんですね。装置から出てきたものに対して、装置のパラメータは自動的につけられる。けれど、どんな素材を用意したか、どんな材料を用意したかというところは、どうしてもやっぱり誰かがつけなきゃいけない。だから、研究支援者がかなり要りますねというような議論をしています。
 したがって、我々の経験からいうと、理想的にはそうなんですが、かなりこれはいろいろなところで問題が出てくる可能性があるなというのを今感じているという。これは印象だけです。
 以上です。

【相澤主査】  ありがとうございます。
 幾つか御経験を御披露いただきましたが、やはり先ほど盛合委員からも御指摘いただいたとおり、ただではないというところは重要な観点かと思いました。
 それでは、星野委員、よろしくお願いいたします。

【星野委員】  論文のオープン化は自然にそうなっていくんだと思うんですけど、データのオープン化はどうかというと、先ほども非常に手間がかかるとかということもあって、かなりやっぱりインセンティブ付けをしなくてはいけないかと。
 先ほど原田先生のおっしゃった研究者からの引用というのは、当然ながらあり得ると思いますけども、ここで、先ほど工藤参事官のお話でちょっとだけ言葉が出たシチズンサイエンスということに関してどうなのかと思います。今、例えば、データ解析をしたいデータサイエンティストなんて民間にすごくいっぱいいますし、そういった人たちが、今マーケティング系が多いと思いますが、ほかにもAIでもありますし、様々なデータを分析する能力を持つ人が結構民間にいると。そういう人たちがデータにアクセスして、何か分析をしたいとか、そういう要望というのは結構あると思うんですね。他分野だったり、自分の関心のある健康だったり、教育法だったり、いろいろなものですね。自分の業務以外のものについて勉強すると。うちの大学にも結構来ますけども、民間でそういった分析をしているけど、もっと高度に研究したいとかというと、結構大学院に来るような、リスキリングと言ったら変ですけど、そういった人も増えておりますので、そういった観点で民間の人たちがシチズンサイエンスとしてデータを分析するというのを育成するというか、そういったデータをそろえていただいた機関に対して、又は、シチズンサイエンスを行っている機関に対して資金を少し出すだとか、また、顕彰、褒めるというか、何かしらの賞を与えるだとかというようなことは文部科学省としてはお考えになったりはしていないのかなと思いまして、いろいろな意味で非常に意味があると思うんですね。
 例えば、実験なんかでは、プレレジストレーションで最初からこういった研究をしますということをやりますので、そこでプレレジストレーションされた研究に関しては、論文が出てちゃんと引用されればそれでよしなんですけど、そうじゃないようなものであっても、もしかしたらそういったシチズンサイエンスで役に立つようなデータに使っていただけるようなデータがある可能性もあるわけですね。みたいな形で、研究以外にも、日本国民に、研究費をせっかく投じて行われた、計測された、実験されたものに対して、納税者に対する説明責任にもなりますので、そんな観点で考えますと、やっぱり民間に対しても開くようなインセンティブ付けとかというのもあってもいいんじゃないかなと思います。
 実験だけでなくて、画像とか、言語データによっては、当然ながら、日本人の日本語のデータをやっぱり教師データで使ったりしたいというのは普通に会社でもありますので、何かそんな形で、民間に対してデータを開くというようなことに対して、インセンティブ付けとか、制度付けを何か文部科学省の方でしていただくような方向性ってお考えなのかどうかというのがありましたら、結構いいんじゃないかなと思いました。

【工藤参事官】  ありがとうございます。今のところまだそこまで進んでいないので、ぜひそういう事例のところをもう少し検証して、何かできるかというのを考えていければというふうに思いました。ありがとうございます。

【相澤主査】  では、天野委員、よろしくお願いいたします。

【天野委員】  ありがとうございます。僕はこの分野で長くやってきたんですけれども、プレプリントという習慣があまりなくて、今回、量子コンピュータみたいなところの分野を始めたところ、みんなプレプリントでやっていて、非常にいいなというふうに思いました。オープンアクセスというか、完全に自分たちの成果をオープンにするという点では、このプレプリントという文化を我々のところにも入れてあげるのが早いのではないかなという意見です。
 以上です。

【相澤主査】  ありがとうございます。少し声が聞こえづらく、後ほど再び御発言をお願いさせていただければと思います。
では、尾上委員、よろしくお願いいたします。

【尾上主査代理】  尾上でございます。先ほどから皆様からも出ているんですけども、やはりこれは裾野をどう拡大していくかというのが一つ大きな重要なポイントかなと思っています。ここの委員会にいらっしゃるような方々だけでなくて、やっぱりデータ駆動型の研究から遠い分野の方が、単にファンディングエージェンシーが要求するから取りあえず形上やっておこうかだけでは、本来意味がないと思いますので、やはり本質的にこういうオープンデータ、オープンサイエンスを活用して研究がちゃんと進んでいくというところまで持っていきたいという話と、URAやテクニカルプロフェッショナルな方々というのも研究データに関わってきますので、そういう研究支援者の方々への関わりというのをいかにスムーズにするかというのが重要かなと思っております。
 あともう1点は、今日あまり皆様から出ていないんですけども、こういうオープンサイエンスの流れが出てくると、研究の計算資源の整備の在り方というのも、資源の在り方、整備であるとか運用、これは国がやったり、機関がやったり、あるいは研究者御自身で確保したりというところだと思うんですけど、その辺りも若干変わってくるのかなと思っておりますので、そういうところももし可能であれば、議論できればと思います。
 以上でございます。

【相澤主査】  ありがとうございます。裾野の拡大ですとか、URA、テクニカルプロフェッショナルのような研究支援者をしっかりと見ていく、資源の整備のやり方も変わってくるという観点を含めて御意見をいただきました。

【工藤参事官】  尾上先生、すみません。1つ、最後の、資源の整備の在り方が変わってくるという点について、もう少しだけ詳しく教えていただけますか。

【尾上主査代理】  これは、やっぱりデータをうまく収集しながら活用していくというところになってくると、個々が勝手にいろいろなものを整備していったときのインターオペラビリティであるとかデータの流通性というのが変わってくるんじゃないかなと。ある程度、何かの条件というところを課すであるとか、あるいは、かなり今でいうと、ちょっとコモディティ化していっているところもありますので、統一的な考え方で整備するなんていうのもあり得るかなという意味でございます。

【工藤参事官】  まさに我々が資料6でちょっとお示ししたような、ある種のフローの中でどのプラットフォームを選ぶかみたいな話、オンプレミスにするのかとか、そこについて何らかの一定のポリシーみたいなものがないと難しいことが起こる。そういう御指摘でしょうか。

【尾上主査代理】  そうですね。データの管理公開基盤とともに、いわゆる計算する方の資源の方もだと思いますので。

【工藤参事官】  分かりました。ありがとうございます。

【相澤主査】  ありがとうございます。
 では、石田委員、よろしくお願いいたします。

【石田委員】  皆様からも同じような御指摘があったと思うんですけれども、やはり私は、自分の部門が研究データ管理の支援をやる部門ですので、そこの観点から少し意見を申し上げますと、こういう大きな委員会ですと、大きな方針とか制度をつくるということが大きな目的にはなるんだと思うんですけれども、本当に実際に例えばデータの公開とか保存というのを自主的に進めるということになりますと、ハード的な整備とか、それから制度的ルールみたいなものをつくるだけだと、実際にはうまく推進されないというような事態が、オープンアクセスのときの機関リポジトリでもあると思うので、やはりなるべく制度とかルール、ハード的な基盤整備だけではなくて、それが円滑に動くような形での、何かソフト的な支援も併せて考えていただけるといいのではないかなというふうに思っております。
 特にこれもほかの方からありましたけれども、研究者の方々に研究データ管理をお願いすると、大体もう手いっぱいで、これ以上負担は増やさないでくださいっておっしゃる方もたまにいらっしゃいますので、そういう意味では、ベストプラクティスを集めて、いい例をというようなことも重要なのかもしれませんけれども、研究者が楽になるからデータ管理を積極的にしようというように思える方向の何か施策があるといいのではないかというふうに思っております。
 それからもう一つ、これも私自身の課題として思ってはいるんですけれども、最近、国際的な共同研究をする場合に、特に研究データの作成のところでもそうなんですけれども、かなり国の間での事情、取扱いといいますか、事情が違いまして、あと、権利の問題も、帰属が違っていたりするので、そこで少しデータの公開とか保存に関しては、双方がうまく動かないというようなこと、国同士でのルールの関係で動かないということがあるので、そういったことも少し視野に入れた検討をしていただけると、より国際的な共同研究も進むのかなというふうに思いました。
 以上です。

【相澤主査】  ありがとうございます。 それでは、小林委員、よろしくお願いいたします。

【小林委員】  皆さん、いろいろな視点で御指摘されているとおりだと思いましたし、特に論文に関しましては、それぞれ既に研究者という立場からすれば、皆さんに引用してもらったり、あるいはいろいろなフィードバックがかかってくるということで、非常に高いインセンティブがあるところですけど、やっぱり研究者として思うところは、研究の成果物としてのデータを公開したときに、問合せとか、いろいろな要求が開発側に来るというのが、一番のちゅうちょしてしまうような理由かなというふうには思っておりました。
 スパコンセンターにいたときに、やっぱりプログラムのライブラリなんかの研究開発を一緒にするわけですが、いざそれをライブラリとして登録して、皆さんに使っていただくようにしようと相談すると、その瞬間、とてもやっていられないみたいな話になってしまって、維持するだけで大変で、それから新しいものを開発するまでに手が回らないということで、どうしても最終的な公開までに至らないことが多いのが現状です。
 ですので、インセンティブという話が出ていましたけど、公開することによって、レピュテーションが高くなるとか、論文であれば、評価指標などにも出てくるのでいいんですけど、公開によってそれが活用されることによって高い評価につながるような仕組みなり、あるいはやっぱり公開する人たちを支援する仕組み、例えば19ページに、リポジトリとして公開と書いてありますが、これ、単に公開するだけだと思いますので、そこをどうサポートするかというようなところが重要かなというところでしょうね。
 あとは、やっぱり成功事例を見せて、自分もちょっとやってみて、自分に対していいフィードバックがかかってくるというようなことの気づきが得られるような仕組みは必要かなというふうには思っておりました。
 以上になります。

【相澤主査】  ありがとうございます。インセンティブとしましては、石田委員からも御指摘ありましたとおり、研究者が楽になるという方向と、あと、小林委員から今御指摘を幾つかいただいたとおり、活用して高い評価を得られる、周りの人も皆公開しているというふうな環境づくり等々、について皆様から、御意見をいただきました。

【佐々木参事官補佐】  天野委員よりチャットでも少しコメントをいただいていています。

【相澤主査】  ありがとうございます。では、私の方から読み上げさせていただきます。
 天野委員より、「量子コンピュータ分野ではプレプリントが一般的で、我々の分野でもこのやり方を導入すれば、オープン化は一気に広がると思います」というコメントでございます。
 事務局から何かございますでしょうか。

【工藤参事官】  先生方からいろいろ御議論いただいて、大変有意義なコメントをいただいたところなんですけれども、今回内閣府が議論しているオープンサイエンスの中の一つの議題の中に、グリーンOAをどう進めていくかという課題もありまして、今、天野委員にいただいたようなプレプリントサーバという形であれば、一般的にそれはすぐグリーンになるだろうというのはあります。
 他方、これだとサイテーションがつかないというか、そもそもビジビリティがなかなか上がらないという点もあって、何か進んでいないというのもあります。
 あともう一つ、今日の議論の中で、データと並んで、よく研究者の先生方から難しいなというふうにおっしゃられるのが、資料6の16ページにつけております、いわゆる非OAジャーナルの場合のエンバーゴ期間後の著者最終稿をリポジトリに収載するという点なんですね。これは内閣府の即時グリーンOAといいましょうか、2025におけるオープンアクセス化の達成の中で、恐らくお金のかからない手段として残ってくるのは、先ほどのプレプリントと、この機関リポジトリにおけるグリーンOAなんですけれども、この点について、よく言われるのが、著者最終稿だとやはり意味がないんじゃないかというような御意見であったり、あとは、1年後のエンバーゴ後に、既に雑誌掲載した後なので、今さらそれを機関リポジトリに入れるのは大変だという御意見もあったりはします。
 その辺について、今日は図書館に関係する先生方も多数いらっしゃるので、実際の現場の感覚みたいなのを、もしよろしければお聞かせいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

【相澤主査】  では、まず、天野委員からのチャットでのコメントを、私が代わりに読み上げさせていただきます。
 「引用は可能です。量子コンピューティング分野では、興味深い論文はネット上で議論になるため、ビジビリティはとてもいいです」ということで、プレプリントであってもビジビリティは十分確保できるという御意見でございます。
 ほかに御関係の先生方、ぜひいかがでございましょうか。
 引原委員、よろしくお願いいたします。

【引原委員】  引原です。図書館関係者というのは、私とあと数人ぐらいだと思うんですけれども、私自身、京都大学でずっとグリーンOAの戦略を続けています。図書館機構長になってから10年間ぐらいずっとその戦略ですが、なかなかやはり研究者の方々に伝わらない理由は、オープンアクセスのポリシーを策定した後でも、やはりおっしゃるように、エンバーゴ期間の後に登録するのが面倒だとか、そういう要するに手間の問題というのが出てきます。それは皆さんおっしゃるとおりです。
 ですので、図書館側から、要するにリポジトリを管理運営している側として、自動的に時期が来たら先生方にここにアップロードしてくださいという作業だけで良いようにしているんですが、やはり著者版を作るのが面倒だという話が出てきます。ですから、ある程度、著者版に相当するものを最初から作ってしまっていただくことが必要なんじゃないかなと考えています。
 私は2年間ぐらいarXivのボードメンバーとして、それに相当すること、その在り方を、海外の研究者というか、ボードメンバーで議論したんですが、ドイツでは、マックスプランク研究所ですけども、投稿するときに、著者版をスタイルファイルで同じように作ってしまって、それをキープしておくというようなことをやっているということを聞いています。
 ですので、最初からプロセスの中にプレプリント、それから、ゴールドOAはあってもいいですけども、グリーンOAという流れを一つのプロセスの中に入れ込むということが、研究者にとってはありがたいんじゃないかなと思います。STEMに、特に理科系というか、自然科学系というのは、そういうふうにやっていけると思っています。
 以上、コメントです。

【相澤主査】  ありがとうございます。ちょうどプロセスの図が出ておりますが、この中にしっかりとそのパスを入れておくということも重要なご指摘だと思います。
 では、湊委員、よろしくお願いいたします。

【湊委員】  先ほど天野先生からも御意見がありましたけども、プレプリントサーバは、特にarXivとかは非常にビジビリティが高いと思いますが、でも、査読されていないので、それだけだと信用してもらえないというところがあるので、よくやるのは、まずプレプリントでビジビリティを確保した上で、国際会議だとか、ちゃんとしたジャーナルに投稿して、後からここに投稿されましたというのをプレプリントサーバにも表示するというような形が結構最近多いんじゃないかなと思います。
 なので、先ほど引原先生のやり方もありだとは思うんですが、まずarXivの方に出してしまうと、最後に著者版を出すというモチベーションはかなりなくなってしまうかなという感じはします。
 それと、私は3年ぐらい前に、情報処理学会の論文誌担当の理事や、英文誌の編集長とかをやっていて、出版社じゃなくて、学会が普通にサーバを立てて、電子ジャーナルを出しているわけですけども、原価を計算しても、結局、10ページぐらいの論文を出そうとすると、1本10万円ぐらいかかってしまうというような状態で、何がそんなに高いかというと、まず、査読システムの維持費が高い。査読はボランティアなんですけども、ボランティアの方に不便をかけられないので、ボランティアの方は、これ使いにくい、これ使いにくいとかって言ってくるんですけれども、査読システムのアップデートは物すごくお金がかかるので、やりたくてもできなくて、ずっと不便なままでやっているというような状態です。
 あと、電子ジャーナル化するときにも、一応、出版社を通して、フォーマットを再度きちんとして出しているというのがあって、そこを全部、著者に任せて、プレプリントサーバみたいにしてしまえば、そこは少し削れるんですけども、やっぱりどうしても品質が、著者に任せると、フォーマットのクオリティが保てないとか、めちゃくちゃになるので、そういうところはどうしても出版社を通した方がいいだろうということで、そこの人件費がかかっているというようなことで、電子ジャーナルでも、紙も使っていないのに、やっぱりどうしても1本当たり10万ぐらいかかってしまっていると。それをもう少し品質を落とせば半額ぐらいになるかもしれないですが、やっぱりどうしてもちゃんとしたものをきちんと永久に残そうとすると、それだけコストがかかります。今後もどんどんどんどんサーバには出版物が増えていくと思うので、そういうのをコストをあまりかけずに、ずっと持続可能にしていくような、そういう方法を考えないと、どんどんどんどんお金がかかるようになってしまうんじゃないかなという危惧はあります。

【相澤主査】  ありがとうございます。
 では、原田科学官、よろしくお願いいたします。

【原田科学官】  arXivですけど、やっぱり私の分野はビジビリティが非常に高いということです。クオリティの担保という話ですけれども、基本的にarXivに出した時点で、コードもデータもオープンにしてしまうので、そうすると、全世界の人が、arXivに上げたやつの手法を全て再現できるという形になるわけですよね。そうなると、後でジャーナルで査読者が3人、4人つくのではなくて、ありとあらゆる世界中の人がその方法論自体を試して使えるかどうかというのは、そこで検証されてしまうわけですよね。
 そうすると、むしろ査読でやるよりも、そっちの方が早く検証されて、みんなにも使われてというようなことで、アドバンテージを取るというような意味合いでは、かなり強力な、本当にいいのかどうかというのは別ですけれども、ツールというんですかね。戦略という言い方もおかしいですけど、そこで話題になったら、その後のジャーナルなり、カンファレンスなどでの採択率も、これもう有名だし、もう取らざるを得ないみたいな、そんな雰囲気づくりができて、採択されるというような形になっています。
 あと、同じジャーナルや、同じカンファレンスの時期に、全く同じ方法論が採択されたとしても、先にarXivに上げたところの方が先に有名になっているので、大きなアドバンテージになるわけですね。同時期に出たとしても、先にarXivを出した方が、学会の中での著名度、知名度というのも上がるというような状況で、オープン化の効果というんですかね。そういうところで表れているというような状況ではあります。
 以上です。

【相澤主査】  ありがとうございます。
 では、石田委員、よろしくお願いいたします。

【石田委員】  一応、図書館系ですので、コメントという形でさせていただきたいと思いますけれども、プレプリントを進めるというのは、方策としてはあるのではないかというふうには考えています。
 ただ、今、先ほど先生方もおっしゃったように、プレプリントで先に出しておいて、それを国際会議とかで改めて投稿して出版するという流れはあるんですけれども、必ずしもそれを認めているところばかりではなくて、プレプリント含めて、どこも出しちゃいけない、出していないものを投稿するようにというように定めている雑誌とかもありますので、何かそこの辺りのルールを確認するのか、それとも、プレプリントの扱い自体を非出版という形で認識させていくのかとか、その辺りが少し議論を進めていく必要があるかなというふうに思いました。
 それから、著者最終稿の話に関しては、例えば、九州大学などは、たしか毎年、自分の研究成果を登録するところに、ちゃんと機関リポジトリに送るボタンみたいなものがついていて、出せるようになっているんですね。多分、ほかの大学でもそういったシステムがあるんですが、実際にあまりそれが有効活用されているかというと、ちゃんと調べたわけではないですけれども、積極的に使われているような感じはあまりしていません。間違いでしたらうちの大学に申し訳ないんですけれども。
 ちょっとそのときにほかの方ともお話をしていて思ったのは、要は、投稿者自身が、エンバーゴがどれぐらい期間があるのかとか、それから、著者最終稿を出していいものかどうかというのを知らないし、また、調べるのが面倒くさいので、結局やらないという方向になってしまって、実は図書館とかに聞けば教えてくれて、手続もしてくれるんですけれども、そこを面倒くさがってやらないというところがあるので、本当に積極的に進めるのであれば、半強制的にするなり何なりするという方向のシステムをつくるしかないのかなというふうには思います。
 あと、もう一つちょっと気になりましたのは、雑誌の場合は、校正というか、編集が入るので、プルーフリードの段階で、著者最終稿と出版社に出したデータが違っていたり、内容が違っているという修正が入ることがあるので、そのときに、著者最終稿に間違いがある場合というのがあるので、そういったときに著者最終稿をそれで出していいのか。最初に正誤表をつけるということにはなるんだと思うんですけれども、何かその辺りは、手続としては、結構、実際にやってみると複雑なのかなというふうに思いました。
 コメントのような形で恐縮ですが、以上です。

【相澤主査】  それでは、ほかに御意見等ございますでしょうか。
 では、引原委員、よろしくお願いいたします。

【引原委員】  すみません。何度も申し訳ございません。先ほどプレプリントは出版社が認めていない場合があるという話ですけども、arXivも、当初はかなりの多くの学会が認めていませんでした。それを地道に交渉して、認めるようにさせてきていますので、その結果として現状があると思ってください。
 その上で、Jxivというのが、日本でやる場合であるならば、Jxiv自身が出版社とちゃんと交渉して、ここへ載せたものに対しては大丈夫だよということを確保していけば、その存在価値が出てくると思います。
 ですので、現状で受け身で全てやっている限りは、新しいところにはなくて、現状の中で動くだけだと思います。戦略的にどういうふうなプロセスを確保していくかというのはデザインする必要があるんじゃないかなと思いました。
 以上、コメントです。

【相澤主査】  貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
 それでは、ちょうど時間となりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。まだまだ言い足りないという委員の先生方もいらっしゃることと思いますので、本会議終了後に御意見等、ぜひ事務局までメールにて御連絡をいただければと思います。
 それでは、最後に事務局から事務連絡があれば、お願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  事務局でございます。
 次回委員会の予定については、また追って御連絡をさせていただきます。
 また、追加の御意見提出については、通常1週間後としておりますが、連休もございますので、5月10日水曜の18時頃までにお送りいただけますと大変ありがたく存じます。
 以上でございます。

【相澤主査】  それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。


―― 了 ――

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