情報委員会(第28回) 議事録

1.日時

令和4年11月21日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館17階 研究振興局会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 学術情報流通における課題への対応について (学術出版社:エルゼビア、シュプリンガー・ネイチャー、ワイリーからのヒアリング)
  2. その他

4.出席者

委員

安浦主査、相澤委員、井上委員、奥野委員、小池委員、後藤委員、佐古委員、田浦先生、瀧委員、塚本委員、中島委員、長谷山委員、引原委員、深澤委員、星野委員、美濃委員、若目田委員

文部科学省

森 研究振興局長、木村 大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、工藤参事官(情報担当)、河原 計算科学技術推進室長、藤澤 学術基盤整備室長、黒橋 科学官、竹房 学術調査官、松林 学術調査官

オブザーバー

竹内 千葉大学副学長、小泉 自然科学研究機構特任教授、林 科学技術・学術政策研究所データ解析政策研究室長
エルゼビア・ジャパン株式会社
 浦口 リージョナルディレクター
シュプリンガーネイチャー・ジャパン
 アントワーン・ブーケ 代表取締役社長
シュプリンガーネイチャー
 小島 リージョナル・セールス・ディレクター、浦上 アカデミック・エンゲージメント・ディレクター、遠藤 ビジネスディベロップメント・ディレクター
ワイリー・パブリッシング・ジャパン株式会社
 新井 代表取締役 兼 シニアディレクター・ライブラリーセールス・アジア太平洋統括、笠原 ライブラリーセールス部・セールスサポート部長、長谷川 ライブラリーセールス部・セールス部長

5.議事録

安浦主査】  それでは、定刻になりましたので、科学技術・学術審議会情報委員会の第28回会合を開催いたします。本日は、新型コロナウイルス感染症の感染防止の対策も行いつつ、現地出席とオンライン出席のハイブリッドで開催することにいたしました。
 報道関係者も含め、傍聴の方にはオンラインで参加いただいております。また、通信状態等に不具合が生じるなど、続行ができなかった場合には、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
 本日は、川添委員、八木委員が御欠席ということを伺っております。
 また、オブザーバーとしまして、ジャーナルによる研究成果の流通について、大学等における現状などに関して御知見を頂戴するために、学術情報流通に関する有識者である千葉大学の竹内先生、それから自然科学研究機構の小泉先生、そして科学技術・学術政策研究所の林先生に御参加をいただいております。また、学術出版社3社に御出席、御説明等をお願いしております。こちらは順次入室いただきます。
 事務局にも異動があったと聞いておりますので、オブザーバーの方の御紹介、配付資料の確認と、ハイブリッド開催に当たっての注意事項等を、併せて事務局より説明をお願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  事務局でございます。
 それではまず、本日オブザーバーとして御参加いただいている方を御紹介させていただきます。お名前と御所属を申し上げる形で御紹介とさせていただければと思います。
 自然科学研究機構の特任教授の小泉周様でございます。

【小泉特任教授】  よろしくお願いします。

【佐々木参事官補佐】  千葉大学副学長附属図書館長の竹内比呂也様でございます。

【竹内副学長】  竹内でございます。よろしくお願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  文部科学省の科学技術・学術政策研究所データ解析政策研究室長の林和弘様でございます。

【林室長】  林です。よろしくお願いします。

【佐々木参事官補佐】  よろしくお願いいたします。
 また、学術出版社からは、エルゼビア・ジャパン株式会社、リージョナルディレクターの浦口周二様、また、シュプリンガーネイチャー・ジャパン、代表取締役社長のアントワーン・ブーケ様、シュプリンガーネイチャーのリージョナル・セールス・ディレクター、小島陽介様、同じくアカデミック・エンゲージメント・ディレクター、浦上裕光様、ビジネスディベロップメント・ディレクター、遠藤昌克様、また、ワイリー・パブリッシング・ジャパン株式会社、代表取締役兼シニアディレクター・ライブラリーセールス・アジア太平洋統括の新井克久様、ライブラリーセールス部セールスサポート部長の笠原裕治様、ライブラリーセールス部セールス部長の長谷川智史様にお越しいただいております。
 学術出版社の皆様は、今お呼びさせていただきましたけれども、御発表時以外は別室で待機いただいておりますので、御発表時に入退室が発生することを御了承いただければと思います。
 加えて、前回8月に開催させていただきました委員会の後、事務局に異動がございましたので、ここで御紹介をさせていただきます。
 まず、研究振興局長として森が着任しております。

【森研究振興局長】  よろしくお願いします。

【佐々木参事官補佐】  続きまして、大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)として木村が着任しております。

【木村大臣官房審議官】  よろしくお願いします。

【佐々木参事官補佐】  それでは、研究振興局長の森から一言御挨拶をさせていただければと存じます。

【森研究振興局長】  皆様方におかれましては、大変お忙しいところ本日の会議に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の議題でございます学術情報流通に関する課題につきましては、ジャーナルに関しては、従来からある購読価格上昇の課題に加えまして、オープンサイエンスの進展も背景にしたAPCに対する負担感、さらには出版社との契約形態の複雑化など、様々な課題があるものと承知しております。
 情報委員会におかれましても、ジャーナル問題検討部会を設置して御検討いただきまして、昨年2月の審議まとめにおいて、大学等の研究機関や文部科学省等の主体ごとに、早急に取り組むべき課題などについて整理をいただいたところでございます。
 本日は、整理いただいた課題に対する各機関の取組状況のフォローアップ結果を御説明させていただくとともに、主要な学術出版社から各社の取組を御紹介いただく予定でございます。皆様には、これらの内容を踏まえまして、学術情報流通推進に向けた課題や検討すべき事項、対応策の御提案など、御意見を頂戴できればと思っております。
 第11期のこの委員会の期間も、残すところあと僅かではございますけれども、引き続き、御指導、御助言を賜りながら進めていきたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

【佐々木参事官補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、議事次第に基づき配付資料を確認させていただきます。現地出席でお越しいただいている方はお手元の資料を、オンライン出席の方はダウンロードいただいている資料を御確認いただければと思います。
 本日、配付資料につきましては、議事次第のほかに全部で7点ございまして、資料1、2、3、4、5と5つの資料と、参考資料1、2の2つの資料がございます。参考資料1につきましては、委員の皆様に事前にメールで御確認いただいたものを反映させていただいているところでございますが、何かお気づきの点等ございましたら、会議終了後などに事務局まで御連絡いただければと存じます。
 もし現時点でお困り事や不具合などございましたらお知らせいただければと思いますが、いかがでしょうか。もし何かありましたら、現地出席の方は手を挙げていただき、また、オンライン出席の方は事務局までお電話で御連絡いただければと存じます。
 引き続きまして、ハイブリッド開催に当たっての注意事項を申し上げさせていただきます。
 まず、発言時を除きまして、常時ミュート、マイクオフとしていただければと存じます。また、ビデオについては、ビデオ開始、ビデオオンとしていただければと思います。
 会議中に通信状況が悪化するような場合につきましては、主査を除き、常時ビデオは停止としていただければと思います。この辺りは事務局から御案内させていただきます。
 また運営の都合上、現地出席の方も含めて、発言する場合は、手を挙げるボタンを押して連絡していただければと思います。
 主査は参加者一覧を常に開いておいていただきまして、手のアイコンを表示されている委員を指名して、御発言を促していただければと存じます。
 現地出席の方が発言する場合は、こちらのマイクのみで集音しておりますので、少し大きめの声で御発言をいただければと思います。
 議事録作成のため、速記者を入れておりますので、速記者のために、発言する場合はお名前から発言いただければと思います。
 何かトラブルが発生しましたら、現地出席いただいている方は手を挙げて、オンライン出席の方はお電話で事務局まで御連絡いただければと思います。
 先ほど御案内いただきましたが、傍聴者につきましては、本日Zoomで参加いただいているところでございます。
 事務局からの御案内は以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございます。
 本日は、議題としまして、学術情報流通における課題への対応についての1件を予定しております。まず、事務局から、本日の会合の趣旨と、昨年2月のジャーナル問題検討部会の審議まとめの後の状況につきまして御説明いただいた後に、お越しいただいております出版社3社から、関連する各社のお取組について御発表をいただき、最後に総合討論を行いたいと思います。
 それでは、本日の趣旨と資料1について、事務局より説明をお願いします。

【工藤参事官】  それでは、本日の会の趣旨について御説明さしあげたいと思います。
 まず、今御紹介いただきましたように、本日の会は、昨年2月のジャーナル問題検討部会の審議のまとめに係るフォローアップ活動の一環でございます。
 そこで行われましたアンケート等によりまして、各大学等研究機関からは、学術情報流通に係る最近の事例などの情報の共有を求める声が多かったことを踏まえ、本日は、主要な学術論文の出版社の方にお越しいただき、各社の取組を御紹介いただくことといたしました。
 その際、文部科学省といたしましては、特定の会社の取組を殊さらに推奨するというものではありません。各大学等研究機関が学術情報流通に取り組むに当たっての一助になればとの考えで、本日の会を企画させていただいたということを申し上げておきます。
 それではお願いします。

【藤澤学術基盤整備室長】  では、資料1に沿って御説明させていただきます。
 次のページをお願いします。先ほど局長の森のほうからも話がございましたが、「ジャーナル問題検討部会」が令和元年6月から令和3年2月にかけて行われました。設置目的・審議事項等に書かれておりますとおり、購読価格上昇の問題に加え、近年のオープンアクセス・ジャーナルの急速な普及に伴い、オープンアクセスのための出版社に支払う論文処理費用の問題が顕在化したこと等を踏まえ、科学技術・学術審議会情報委員会の下に設けさせていただいたものです。
 委員の先生方ですが、本日お越しいただいております引原先生を主査、竹内先生を主査代理として行っていただきました。
 一番下ですが、「審議のまとめ」というのがございます。ここにそれぞれ抜粋が書かれておりますが、右側のほうに早期に取り組むべき課題ということで、大学等の執行部、図書館、大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)、研究資金配分機関、文部科学省ということで、それぞれ具体的な取組として要請されたものが掲げられております。
 次のページをお願いします。ここで本論に入る前に「図書館資料費の推移」について説明させていただきます。この資料は、文部省時代から続いております学術情報基盤実態調査の結果をJUSTICEのほうで整理されたものです。こちらは、国公私立大学1大学当たりの図書館資料費の平均額です。
 ここで着目していただきたいのが、電子ジャーナルです。ここに出てきている集計は2004年からで、その頃から2020年までを見ると、緑の枠がだいぶ広がっているというのが分かるかと思います。2020年だと、8,700万円のうち電子ジャーナルが約4,000万円ということで、約半分を占めているというのが見て取れます。
 さらに、折れ線グラフを御覧いただければと思いますが、こちらは2004年から2005年にかけて、大きく下がっております。これは、対大学総経費比率というものでございます。2004年に何があったかというと、国立大学の法人化でございます。ただ、この傾向は国立大学に限ったことではなく、公私立大学も同じでした。国立大学法人化の2年目からかなり大学の中の総経費比率というのは下がっていますが、こちらは各大学の戦略に基づいて行われているものではないかと推察されます。ここに大学図書館に対する考え方が表れているのではないかと思われます。
 では、次のページです。調査に戻ります。こちらのアンケートは、国公私立の807大学を対象として行いました。期間は7月27日から9月16日まで。回答回収率は、国立大学は100%。ただ、公私立大学を含めて全体で見ると、7割弱という形になっております。
 次のページをお願いします。主な設問事項ということで大きく3つ挙げております。最初に審議のまとめの周知について、その次が大学の執行部に要請された具体的な取組について、さらに図書館に要請された具体的な取組についてです。
 次のページをお願いします。まず1つ目です。審議のまとめの周知ということで、こちらは学長等執行部含め、学内で周知されていますかという質問でございます。これを御覧いただきますと、周知されているのは、国立大学で見ても半分行かなかったのが現状です。公私立大学で見ると1割、2割ということで、調査をした時点では、まだそれほどは周知されていなかったということでございます。
 次のページをお願いします。執行部に要請された2つ目といたしまして、各自の研究戦略として最適な契約形態を定め、契約内容・経費配分の組み換えを実施しましたかという質問でございます。国立大学に関して見ると、検討しているというのを含めると85%でございます。公私立大学で見ると、検討しているものを含めても半分以下という形になっています。
 次のページをお願いします。この質問の中で、「はい」という回答のところで、具体的に何をやりましたかという質問ですが、パッケージ契約を中止したというのが大きなところです。他には、例えば、下から3番目でございますが、契約期間が例年1年だったものを3年に見直したとか、そういった工夫をされているという事例が挙がっております。細かいところは、後ほど御覧いただければと思います。
 次のページです。出版社との契約に際し、他の大学等研究機関との連携を実施していますかという質問でございます。国立大学で見ると、約2割が実施している。ただ、半分以上がそもそも検討もしていないということです。公私立大学で見ると、8割以上が検討していないということでございます。
 次に参ります。具体的に実施していますと回答した大学の取組事例です。こちらは既に報道でも流れておりますが、昨年の10月、東北大学、東京工業大学、総合研究大学院大学、東京理科大学の4大学で、ワイリー社との間で転換契約に係る検討を進め、4月1日から始めましたというのが事例としてあります。
 2つ目といたしまして、東京学芸大学が中心となり、教育系の大学でコンソーシアムを組んでやっているという事例がございます。
 3つ目です。こちらは、長岡技術科学大学が国立高等専門学校機構とコンソーシアムを形成してやっているというのがございます。
 次をお願いします。こちらも執行部に要請された具体的な取組ということで、他機関とジャーナルに関する情報を共有するために、有機的なネットワークを構築したことがありますかという質問です。国立大学だと7割、公立大学、私立大学だと9割以上が構築を検討していないという回答でした。
 次、お願いいたします。こちらは、図書館に要請された具体的な取組ということです。ここに書かれている参考資料1、2というのは、後ろのほうにあるので、後ほど御覧いただければと思いますが、例えば、コストとか、タイトル数とか、OAにした論文数とか、そういった関連データを収集、分析したことがありますかという質問です。国立大学だと9割以上が分析しているということでございます。ただ、公私立大学も含めますと、全体として約半分という形になっております。
 次のページをお願いします。分析した結果を執行部に共有したことがありますかという質問です。国立大学だと、8割ございますが、公私立大学で見ると、それぞれ約4分の1程度しか共有していないという現状でございます。
 次、お願いします。こちらはちょっと内容が変わりますが、オープンアクセスのために掲載料を支払う、APC支払いの状況を把握していますかという質問です。国立大学に関しては約4割、今実際準備しているというのを含めると、約4分の3が把握するために努力しているところでございますが、公私立大学で見ますと、約4分の3が把握していないということで、把握したり準備したりすることは、ほとんどやっていないというのが現状です。
 次、お願いします。自分たちの大学に所属する研究者等に対して、情報提供、説明を行ったことがありますかという質問ですが、これから検討しているというところも含めて、国立大学は4分の3が検討している、公立大学は半分、私立大学は4割で、全体で見ると半分以下という形になっています。
 次、お願いします。ここで整理します。大学図書館の対応状況でございますが、契約、連携、周知ということで3つに分けました。
 まず契約に関してですが、契約形態の見直しを検討するための関連データ、こちらの収集・分析、教員への希望調査を積極的に実施されている。また、それを踏まえて、パッケージ契約の解体、購読の中止、代替策を取ることで購読料を抑える大学が見受けられるということでございます。
 連携につきましては、有機的なネットワークの構築が実施できている大学は本当に僅かであるということ。その理由としては、他大学の状況が分からない、どこに相談したらよいか分からないという回答が多数ございました。こちらは自由記述のところで書かれております。
 周知につきましては、執行部、研究者等に報告はしているが、全体として学内での情報共有を行っている大学は半数を下回っているという状況です。
 まとめると、大学図書館ではそれぞれ利用実績を踏まえ、利用可能タイトル数を予算内に維持するための工夫を恒常的に実施している。一方、学術情報流通に関する情報共有がうまくできていなく、他大学との連携を含めた対応策の検討が困難であるという現状でございます。以上です。

【安浦主査】  ありがとうございました。大部の資料を手短にお話しいただきました。
 それでは、3社の出版社からお話を伺いたいと思います。
 まず、資料2に基づきまして、ワイリー・パブリッシング・ジャパン株式会社から御発表いただきます。よろしくお願いいたします。

【新井代表取締役】  ありがとうございます。私どもは長谷川のほうから御説明させていただきますので、資料に沿って御説明させていただきます。

【長谷川セールス部長】  それでは、改めまして、皆様おはようございます。ワイリー・パブリッシング・ジャパンの長谷川と申します。着席したままで発表を失礼いたしますけれども、私ども、本日はワイリーの転換契約(Transformational Agreement)についてお話をさせていただきます。
 まずは、本日このような形で皆様の前で御紹介する機会をいただきましてありがとうございます。転換契約というのは、今までジャーナルへのアクセスのために御購読契約としてお支払いいただいていた御契約金額を、オープンアクセス出版のための費用に転換していって、オープンアクセスの比率、オープンアクセスで出版される論文の数というのを飛躍的に高めていくことを目的とした契約の形態でございます。
 では、次のスライドをお願いできますでしょうか。私どもワイリーは、この転換契約を通じてオープンアクセス論文を増やしていく、推進していくというところを目的としておりますけれども、そのオープンアクセスにすることによって、論文のインパクトというのがどのように変わっているかというところを表しているのが、お手元の資料の左側のグラフになります。
 こちらは4つに色が分かれておりますけれども、一番左の水色の丸が、アクセスするのに購読が必要な状態で公開されている論文となります。
 その隣の赤紫とオレンジ色の丸が、オープンアクセスの論文という形になりますけれども、雑誌の種類によって2つに分かれているといった形になります。赤紫のほうがフルOA論文といいまして、ジャーナルがもう完全にフルオープンアクセスに移行したジャーナル、オレンジがハイブリッドOA論文となりまして、雑誌は購読が必要な雑誌なんですけれども、その中で著者の方がAPC、オープンアクセス化のための費用をお支払いいただくことで、誰でもアクセスできるオープンアクセスの論文として発表されているもの。この購読が必要な論文とオープンアクセスの論文が混じっているといいますか、混在しているという意味で、ハイブリッドOA論文という形で表現しております。
 その隣のフリーアクセス論文、こちらについては厳密に申し上げますと、オープンアクセスの論文という形ではなくて、例えば直近ですと、新型コロナウイルスのときに出版社の裁量で、一時的のものも含めてアクセスが無料になっているもの、ただしちょっとその後の再利用とかの条件を含めて、オープンアクセスとは呼べないものについての利用のされ方を表しています。
 一番左の購読が必要な論文に比べて、オープンアクセスの論文というのは、1論文当たりのフルテキストのダウンロード数であったりとか、あるいは平均被引用数、それからAltmetricというのは、その引用の関係ではなくて、例えばSNSに何回メンションされたとか、社会的なインパクトを測る指標として出しております。
 こちらはワイリーのジャーナルに掲載された論文のオープンアクセスタイプ種別ごとに、どのようなインパクトの違いがあるかというところを丸の大きさで表しておりますけれども、オープンアクセスの論文、この紫とオレンジのものを合わせた形で、ダウンロード数でいきますと3.2倍、平均被引用数でいきますと1.5倍という形で、購読が必要なオープンアクセスではない論文に比べて、その論文が発表された後の利用のされ方というのに非常に有利な結果が出ているといった形になります。
 研究者、著者の皆様がオープンアクセスで論文を発表されるには、この辺りのインパクトの改善というところを目的といいますか、目指されている部分があるかと思いますけれども、そういったところが、この上ワイリーのジャーナルの中での調査については裏づけられているのではないかというふうに思います。
 ただし、同一の論文、オープンアクセスではない状態とオープンアクセスで発表された論文とを比べることはできませんので、完全に因果関係があると申し上げるのは難しいとは思いますけれども、このような形で数字を見てみると、オープンアクセスの論文のほうが、より誰からでもアクセスできる状態で発表されていることから、利用が増える。その結果として被引用数といったような数字も改善するところが、相関関係としてはあるのではないかと考えられます。
 またこちら、被引用数などは、論文の著者の方にとっては非常に重要な指標という形になるかと思いますけれども、同時に大学様全体としても、例えば右側にTimes Higher Educationの大学ランキングの算出基準をちょっと出しておりますけれども、論文の被引用数というのは、こういった大学ランキングなどでも大きなウエートを占めておりますので、大学様全体としても、オープンアクセス化によって論文のインパクトを改善していくといったところは、メリットとして享受していただくことができるのではないかと考えております。
 次のスライドをお願いします。私どもの海外の事例をまずは御紹介したいと思いますけれども、こちらはドイツでProject DEALというコンソーシアムを通じて、ワイリーと転換契約を締結した事例になっています。このProject DEALとの転換契約を通じて、ドイツの700以上の公立・私立の学術機関、また研究機関様は、ワイリーの提供するオープンアクセスで論文を出版するオプションのある全てのジャーナルで、研究者の方は御自分でAPCを御負担いただくことなく、オープンアクセスで論文を出版していただくことができるようになります。また、この参加されている機関様全て、ワイリーの全てのジャーナルにアクセスが可能となるという、この転換契約の内容になっています。
 転換契約以前は、このオープンアクセス、特にハイブリッドオープンアクセスを選択される著者の方は、6%というような数字になっていたと。これはProject DEALのウェブサイトのところからお借りしてきた数字ですけれども、これが転換契約後は、97%の著者の方がハイブリッドオープンアクセスを選択される。御自分でAPCをお支払いいただく必要がないとなった場合は、ほぼ全てに近い研究者の方が、オープンアクセスを選択していただいたといったような形になっております。
 またジャーナルへのアクセスについても、転換契約以前は、ドイツの大学をはじめとする研究機関の大多数が、このジャーナルはアクセスできるけれどもこのジャーナルはアクセスがないといったような形で、限定されたアクセスしかない状態で、しかも50機関についてはジャーナルへのアクセスが全くなかったという転換契約以前の状態から、全ての機関がワイリーの全てのジャーナルにアクセス可能ということで、ジャーナルへのアクセスについて、各機関の間での格差といいますか、そういったものが解消されたという事例になっております。
 次のスライドをお願いいたします。こちらはワイリーに限らず、ESACという転換契約のリポジトリに登録されている数から、転換契約が、世界で全ての出版社においてどれぐらい進行しているかというところを表した地図になっております。やはり転換契約はプランSから始まったというところもあり、ヨーロッパを中心にこれまでどんどん広がりを見せているといったような状況になっておりまして、日本の状況については、今のところまだヨーロッパなどに比べるとあまり進んでいないという状況が、この地図からは見て取れるのではないかと思います。
 では、次のスライドをお願いいたします。これまでヨーロッパを中心に、転換契約を通じたオープンアクセス化が進んできたと申し上げましたけれども、2022年に入って、そのヨーロッパ以外での転換契約の広がりというのが特徴的になっているのではないかと思います。これはワイリーの転換契約の2022年に入っての事例という形で御紹介しておりますけれども、例えばアメリカでは、国単位ではないですけれども、州単位のコンソーシアムという形で転換契約が続々と締結されているといった形になります。
 先日、アメリカの科学技術政策局(OSTP)から、政府の研究助成を受けた研究については、オープンアクセスで即時発表する必要があるというような方針が発表されましたので、これからよりアメリカでもオープンアクセスの流れというのは加速していくものと、私どもとしても考えております。
 また、アジア太平洋地域でも2022年から、オーストラリアのCAULというコンソーシアムを通じて転換契約が締結されまして、オーストラリアのかなり大部分の大学様は転換契約に移行されている。こちらのオーストラリアも、大きな研究助成機関の一つであるNational Health and Medical Research Councilで、即時オープンアクセスへの方針の変更が発表されたというところは記憶に新しいところです。
 また韓国でも、National Research Council of Science & Technology(NST)を通じて転換契約が締結されるなど、これまでヨーロッパを中心としていた世界の状況ですけれども、アメリカ、それからアジア太平洋地域、またアフリカ、中東、南米など、世界で地域を問わずに、転換契約の流れというのが加速している現状となっております。
 次のスライドをお願いします。日本についてですけれども、先ほど少し言及いただきましたが、4大学様との間で、この4月に転換契約がスタートしたといった形になります。
 ワイリーとしては通常、この転換契約の締結というのは、先ほどちょっと御覧いただいたProject DEALのようなナショナルコンソーシアム、国単位であったり、あるいは州単位、コンソーシアム単位での御契約というのが基本になるんですけれども、日本でそういったコンソーシアム単位というものがなかなか進みにくいところもある中で、とはいえ、オープンアクセス化することによって論文のインパクトが向上するという数字も御紹介しましたけれども、ここまで世界でどんどんオープンアクセス化が進んでいきますと、オープンアクセス化によってインパクトが向上するというよりは、オープンアクセス化しないことによるデメリットが注目されてくるような状況に、将来的になってこないとも限らないという部分で、日本でも世界の流れに乗り遅れることなくというところを目指して、4月から転換契約をスタートした形になります。
 こちらは2023年からも、この4大学様とのパイロットプロジェクトを契機として、新たに2023年から転換契約に移行される大学様も予定されておりますので、より幅広く、この転換契約で日本でもオープンアクセス化を進めていくお手伝いができるのではないかと考えております。
 次のスライドをお願いします。また転換契約のオープンアクセス化を進める中で、APCのお支払いは現状著者の方が、御自分の御判断でされているという形になるかと思いますけれども、やはり研究資金を比較的潤沢に持たれているといいますか、余裕のある先生は、オープンアクセス化というのを選択していただくことにあまり戸惑いがないかもしれないですけれども、若い研究者の方がAPCをお支払いいただいて、オープンアクセスで御自分の論文を発表していただくという機会があまり、比較すると少なくなってしまうのではないかというところも心配されますが、転換契約を通じますと、そういった若手の研究者の方も、御自分でAPCを負担することなく、研究成果をオープンアクセスで発表していただくことができますので、こういった、今資料に出しておりますけれども、4大学様との転換契約を通じて、大学院生の方が書かれた論文が私どもの中でも高く評価をいただいているジャーナルに掲載されて、しかもそれがフロントカバーにも選ばれたというような形で、非常にいい事例ができたのは、私どもとしても大変喜ばしく思っております。
 次、お願いします。最後になりますけれども、ワイリーがこの転換契約を通じて目指すゴールとしては、日本でもこの世界の流れに乗り遅れることなく、転換契約を通じたオープンアクセス化を推進して、世界の中における日本の大学様のプレゼンスを維持する、改善していくといったところのお手伝いができればという部分と、あとは先ほども申し上げましたとおり、若手の研究者の方が、オープンアクセスで広く御自分の研究成果をアピールしていただく機会を御提供できればと考えております。
 今のところ、4大学様、それからそれに続いていただく大学様に転換契約に移行していただいておりますけれども、私どもとしては、Project DEALのような国単位といいますか、大きな形で転換契約をこれから進めていくことができれば、大変幸いに存じます。
 以上となります。どうもありがとうございました。

【安浦主査】  ありがとうございました。
 それではただいまの御説明に対しまして、御質問等ございましたら、5分ほどお時間を取りますので、挙手をお願いします。よろしいですか。
 どうぞ、引原委員。

【引原委員】  京都大学の引原でございます。御説明ありがとうございます。
 まず最初に、理念的なことをお伺いします。先ほどプレゼンスを上げるということをかなり重視されて、あとは若手のほうの話に振られました。そのプレゼンスというのは最近の傾向であって、研究自身にとってプレゼンスが上がることがどういう意味があると考えて、今の説明をされたのか、お聞きできますか。

【新井代表取締役】  やっぱりワイリー・パブリッシング・ジャパン日本支社としましては、大きな使命の一つとしては、日本の研究者の皆様のお手伝いをするということです。そのお手伝いというのはいろんな意味があると思うんですけれども、プレゼンスとは何を指すかということにお答えしますと、やはりそれが所属している大学のランキングですとか、あるいは最もインパクトのある論文を日本人の著者の方がどれだけ執筆されたかというような、様々なところがあるんですけれども、主立ったところはそういったところでございます。

【引原委員】  ありがとうございます。お聞きした点は、そのやり方が本当に科学技術としていいのかどうかということに疑問がないまま、そのプレゼンスを上げて、何か評価指標で載っていくということを推奨するような形にしかならないのではないかということです。それ以外の転換ということはあまりお考えはないということですか。

【新井代表取締役】  そうですね。今日のようなこの機会に、様々な御意見があると思いますので。ただ、商業出版社の日本支社としましては、大変僭越ではあるんですけれども、その商業に基づいてというような形で、ウィン・ウィンな関係を築けるかというのが私の責務でございますので、そのプレゼンスを上げることが科学技術の発展につながるかどうかという御意見はさておき、私は責務がそれである以上、そのような御提案をさしあげているということでございます。

【引原委員】  ありがとうございました。

【安浦主査】  そのほかよろしいですか。では、小池委員から先にお願いします。

【小池委員】  御説明ありがとうございます。
 少し確認させていただきたいんですけれども、これはまず大学ごとの契約というタイプと、さらに国ごとの契約タイプというのがあると思います。大学から見たとき、もともとジャーナルでAPCを使いながら、論文をどれだけサブミットしているかによって、この包括契約のメリット、デメリットというのは変わってくると思いますけれど、これは今までの大学がどれだけこのジャーナルに論文をサブミットしているかによって、割と複雑な計算でプライシングなさっているのかどうかというのと、こういう契約にすることによって大学側のメリットと、あとはそうはいっても出版社も営利企業でしょうから、そちら側のメリットと、ウィン・ウィン関係にならなければいけないと思います。それは大学側の一括にする場合、国が一括にする場合、それぞれウィン・ウィンはどう考えておけばよろしいのかなと。プライスが結局上がるのか、それともトータルとしてはやはり下がるようになっているのか、どうなっているんですか。

【新井代表取締役】  そうですね、実は私どもは今回の発表には、その具体的な価格モデルについては掲載をあえてしませんでした。というのは、大学によって様々でして、その価格が下がる場合もあれば上がる場合もございますので。ただ当初は、やはりナショナルコンソーシアム、あるいはまとまった団体だけ提案するというところを、これだと日本はなかなか進まないということで、個別に進めさせていただいているというところがありまして、各大学様にはそれぞれに見合った形での御提案はさしあげております。

【小池委員】  ちなみに、これは国ごとの契約にするとすると、今、国単位で見たコスト削減にというのは、国単位でやることはあまり考えていないけれどもという意味ですか。右下3ページに、国単位で見たコスト削減というのを書いていますけど、今はこの先も大学ごとの契約を考えていて、国単位でというのはあまり考えていない。

【新井代表取締役】  そうですね、最終的には国単位というのが何を指すかということにもよるんですけれども、大きな契約母体という、ドイツのモデルがよく引き合いに出されるんですけれども、ドイツはマックス・プランクデジタルライブラリーが代表して、大学の学長が集まって交渉を重ねて、3年ごとの契約を見直すという。その研究成果のアウトプットによっても、いわゆる見通しが変わってきますので、それに合わせる交渉を重ねて今行っているというのがドイツの事例なんです。もし日本でも将来的にはそのようなモデルが確立できるのであれば、ワイリーとしては大変うれしく思っております。

【小池委員】  ありがとうございます。
 先ほど一番最初のオープンアクセスか、フルオープンアクセスか、ハイブリッドかで、フリーアクセスに行ったときよりも、比較するのはよくないのかもしれないですけれども、これはワイリーの場合はこうなるんだと思いますが、一般的に同じジャーナルだったら、フリーアクセスにしたほうがサイテーションが上がると思いますけれど、今こうしてワイリーみたいに、全部一括して皆さんがこれに入っていくと、ほぼフリーアクセスジャーナルになってきますよね。そうすると、論文のクオリティーがかえって下がってくるとか、そういうリスクはないのですか。

【新井代表取締役】  それは編集委員会のいわゆる方針などもございますので、一概にリジェクト率を下げるとかそういったことは、オープンアクセスとそのリジェクト率というのは、あまり相関関係はないというふうに考えていますので、そこはきちんとした形で精査をして、いい論文は編集委員会の判断に基づいて受理するかどうかというところがございますので、オープンアクセスにすることによって質が下がるというふうには考えておりません。

【小池委員】  分かりました。ありがとうございます。

【安浦主査】  あとお二方、手が挙がっていますけど、時間の都合で、次に進めさせていただきます。どうもありがとうございました。

【新井代表取締役】  ありがとうございました。

【安浦主査】  それでは続きまして、エルゼビア・ジャパン株式会社から御発表をお願いいたします。

【浦口リージョナルディレクター】  皆様、おはようございます。エルゼビア・ジャパン株式会社の浦口と申します。私は日本の大学と、それから公的研究機関にサービスを提供しております部門の責任者をしております。本日はこのような貴重な機会をいただき、本当にありがとうございます。
 次のページをお願いします。まず、こちらが本日のアジェンダになりますが、弊社としましてはこのプレゼンテーションを通じて、研究者、研究機関、それから契約機関のニーズをお聞きしながらオープンアクセス促進に取り組んでいること、それから今後も社会の要望に積極的に応えていくことを皆様に知っていただき、日本からの研究発信力を一層一緒に高めていけると感じていただけると、非常にありがたいと思っております。
 次のページをお願いします。まずはミッションのほうからですが、研究者、それから医療専門家の仕事を支援するということであり、社会の利益のために科学を進歩させていくこと、それから健康医療成果を向上させていくことが弊社のミッションとなっております。
 研究者、それから医療専門家が、コンテンツのほうに簡単にアクセスできるようにする必要がありまして、そのために、そのコンテンツを信頼できるものにしていかなければならないと考えております。そのためには、弊社としては高品質のピアレビューを促進していっているところです。新しいコンテンツをできるだけ早く利用できるようにしなければならないと考えておりまして、今回の新型コロナに関する研究は非常に多くの注目を集めましたので、そのようなときに備えて、やはりそういった体制を維持していくことが必要だというふうに考えております。
 次のページをお願いします。私どものほうでは、質の高い研究によって社会の進歩を加速していくということで、エルゼビアとしては様々な取組を行っているところです。
 研究の信頼性の確保に役立つこと、それから、知識やアイデアの交換を可能にしていくこと、それから研究の包含性、インクルージョン、ダイバーシティー、多様性を推進していくこと、研究の責任ある評価を支援していくこと、そして人々、研究者の質の高い研究へのアクセスと公開を支援することを行っておりまして、一つ一つお話しすべきことがあるかと思いますが、本日はこの真ん中にある、質の高い研究へのアクセスと公開を支援する取組として、エルゼビアのジャーナルの出版と、それからオープンアクセスの状況について、幾つか契約の事例を交えて御紹介させていただければと思います。
 このスライドにおいては、エルゼビアの投稿から出版、保存までの出版プロセスの様々な段階の概要を示しております。出版社として私どもは、プロセスの各段階で価値を付加しているところです。2,700のジャーナルを出版しておりますが、こちらを滞ることなく出版していくため、年間250万の投稿がありますので、そういったものの管理、それからエディター、編集委員、査読者の採用、ネットワークの構築と管理といったものを行っております。
 こういった中で、例えば94%の論文は編集段階で変更が加わり、49%の論文のリファレンスには内容の変更が加わっているという状況があります。そして論文作成をサポートする技術とプラットフォームの提供。2021年で言いますと、60万の論文を出版し、世界中で年間16億件以上の論文がダウンロードされているという状況になります。そういった論文が永続的に保存されていくことを、私どもとしては保証していきます。現在1,900万の論文がアーカイブされており、そういった情報を記録していくということがミッションとなっております。
 次のページをお願いします。このページでは、過去10年ほどの間に論文の投稿と、それから出版された論文がどのように増加してきたかというのを示しております。薄いオレンジが投稿数全体を表しておりまして、その中の濃いオレンジが出版数になっております。投稿数は過去10年間で約11%、平均で増加しておりますが、2020年は新型コロナの影響で大幅な増加がありました。
 濃いオレンジの出版された論文数も増加しておりますが、右肩の論文のFWCIのグラフで見ていただけるとおり、質の高い研究がジャーナルに掲載されるように、堅実な編集基準を維持していくことが必要ですので、出版数のペースというのは投稿数のペースよりも遅くなっているということになります。
 御参考までにFWCIというのは、下のほうに小さい文字で恐縮ですが、類似の論文と比較してどの程度引用されたかというのを示しておりまして、1というのがグローバルの平均になっております。
 出版プロセスについては、購読論文であってもオープンアクセスの論文であっても、全く変わりはありませんので、ここで最終的に著者の方がオープンアクセスするか、しないかの選択肢になりますので、それまでの出版プロセスというのは変わりがありません。
 次のページをお願いします。オープンアクセスの状況というところなんですが、世界有数のオープンアクセスの出版社として、現在600以上のフルオープンアクセスジャーナルを含む、2,700誌以上のジャーナルがオープンアクセス論文を提供しています。その600以上のほかのジャーナルはハイブリッドということになりますが、ほとんどのジャーナルで出版のオプションを提供しておりますので、研究者がオープンアクセスで全て出版したいということであれば、どのジャーナルからでも出版できるようになっております。
 右側のグラフにありますように、昨年だけで約12万件のオープンアクセス論文を出版しておりまして、前年比で言うと46%の増加というふうになっております。購読論文のほうも、右側の一番右肩のほうのグラフになりますが、こちらも平均4から5%の伸びとなっておりまして、引き続き著者の方が購読論文のほうも選択されているということが分かります。
 現在、エルゼビアのジャーナルのプラットフォームであるScience Directにおいては、140万のオープンアクセスの論文が利用可能になっておりまして、さらにオープンアーカイブというジャーナルのタイプとして、140のジャーナルが登載されております。これらに関しては、Cell Press、Cell等のジャーナルがオープンアーカイブとして、大体12か月を過ぎますと、前の部分においてはオープンになります。
 次のページをお願いします。こちらのスライドですけれども、EOASと書いてあります。オープンアクセスのサービスに関してなんですが、様々な契約が行われていますので、そういった各契約の実装をサポートしていくということが必要になります。
 こういったプラットフォームを開発したのですが、まずは機関の契約管理者向けとして、アグリーメントの管理、それから論文のトラッキングを支援するEOAPという、ちょっと書いていないんですけど、エルゼビアオープンアクセスプラットフォームというのを提供しておりまして、こちらで管理者の方、各研究者が論文を投稿されて、投稿されたものが受理されて、その段階でオープンアクセスにするかどうかを決められますが、そこで、例えばある大学でオープンアクセスの契約がある場合は、その契約に基づいた割引だとか、APCの利用だとか、出版枠の利用だとか、そういったものを判断するという作業が、こちらのプラットフォームで行われます。
 著者向けのワークフローについては非常にシンプルになっておりまして、著者の方が自分の所属機関をインプットされたと同時に、もし契約がある場合は、その機関と連動してオプションを提供するということになっております。また、その論文について、ハイブリッドか、それからフルオープンアクセスなのか、そういったところを判断しますので、そこで選んでいただくことができるということになっております。弊社のオープンアクセスプラットフォームは、市場で最も高く評価されているというふうに聞いております。
 次のスライドをお願いします。これも本当に皆様御存じのところだと思いますが、改めて御説明させていただきますと、オープンアクセスの契約には2つのタイプがあります。1つはゴールドオープンアクセスなんですが、こちらには2種類ありまして、まず転換契約。今議論になっているところなんですが、転換契約として、出版とそれから購読の両方を1つの料金設定で提供するというところで、料金の中にはAPCが多く含まれているということで、著者の方はこれまでのように各自お支払いいただくことなく、オープンアクセスにて出版することが可能です。
 もう一つはAPCの割引契約となっております。ここでは従来の購読型契約というのが継続された上で、割引が提供されることになります。オープンアクセスを推奨していくということで割引が提供されますので、通常より安価で出版することが可能になっております。
 右側のグリーンオープンアクセスに関してですが、こちらは通常は、受理された原稿の論文の初期のバージョンといいますか、最終バージョン、出版社バージョンではないものがプラットフォーム上で公開されることになります。これはエンバーゴ後に公開されるということになります。その論文は弊社のプラットフォームであるScience Directとか、それから非商用のリポジトリ等でホストされることがありまして、ゴールドオープンアクセスの割引で補完される、グリーンオープンアクセスと、それから割引の提案という形で補完されることがあります。
 後ほど御紹介させていただきます、日本における契約の一つでありますグリーンオープンアクセスというのは、このサブスクリプションモデルによってサポートされていることになります。
 次のページをお願いします。グローバルでのオープンアクセスの契約の概要ということですが、世界中で展開はされておりますが、やはり主にヨーロッパを中心に、非常に多くの転換契約が、それからAPC割引契約というのが行われております。ヨーロッパのほうは非常にサイズも数も大きくて、非常に複雑になっております。
 大体26か国で40のオープンアクセス契約が締結されておりまして、全体で言うと、約2,000の機関が恩恵を受けているということになります。
 大体21か国のところで23の転換契約、それから7か国で12の割引契約というのが行われております。そのうちの2つの割引契約については、サブスクリプション論文とそれからグリーンOAをサポートするという形で、日本とフランスが対象になっております。
 その日本のオープンアクセスですが、このスライドと次のページで日本とオランダの例を紹介したいと思います。まず日本の例を紹介させていただきますが、エルゼビアでは、ほかの出版社もそうですが、大学図書館コンソーシアム(JUSTICE)と日本の大学の購読の状況、それからオープンアクセスに関する聞き取りをさせていただいて、御要望、提案内容について協議をさせていただいて、2021年からの提案に合意しております。
 日本の大学は、もう御存じのとおりですが、その規模、それから研究・教育目的、オープンアクセスの方針等、様々になっておりまして、様々な御要望があるというふうに認識しております。
 もちろんゴールドオープンアクセスに対する出版、それからそういった御要望というのは増えてきておりますが、グリーンオープンアクセスに対する取組というのも、世界に誇る機関リポジトリの数を見てみることで、そういったところで積極的に行われておりますので、弊社としては、多くの大学に御選択いただけるオプションを提供できるように、ゴールドオープンアクセスとグリーンオープンアクセスの要素を含む、2つのオプションを提案させていただいております。
 まず、ゴールドオープンアクセスですが、これはAPCの割引という形になっておりまして、ハイブリッド、大体1,800タイトル、それからフルゴールドオープンアクセスは600タイトルということで、Cell Press・Lancetを含むと書いてありますが、Cell PressのCellのハイブリッド、それからLancet等は含まれておりませんが、ほぼ全てのジャーナルを含んでおりまして、こちらに論文数の上限はありません。今、現時点では4大学が選択していただいておりまして、2021年から始まっておりますが、100論文以上に割引が提供されております。
 それからグリーンオープンアクセスですが、日本の責任著者のアクセプテットマニュスクリプト、著者版というものを、エンバーゴ後に弊社のプラットフォーム上、サイト上でアクセスができるように、機関リポジトリ用に弊社から論文情報を提供しております。
 例えばPII、それから論文のリンク、出版社バージョンと、それから利用可能な最適バージョンが分かるURLをお送りしておりまして、あとはエンバーゴ後の情報や著者情報を提供しておりまして、これまで100以上の大学様で御選択いただいていて、2022年は9月までに6,000論文以上の情報を提供させていただいておりますが、まだまだこういった情報をきちんとリポジトリに入れるのが進んでいない状況ですので、弊社としてはできる限りこちらのところで進められるように、また継続してディスカッションしていきたいと思っております。
 次のページをお願いします。最後にオランダの例を御紹介しますが、オランダの例はオープンアクセスのみならず、オープンサイエンスの要素を非常に多く含むものでして、オランダ自体は非常に小さな国ですが、研究におけるプレゼンスは非常に高いものがありまして、また首尾一貫した国家レベルのオープンサイエンス計画というのを持っておりますので、オープンアクセス、それからオープンサイエンスの両方の要素を兼ね備えた提案になっているということで、オープンアクセスのほうは既に、ハイブリッドジャーナルのOAの割合は100%を達成しております。
 それからオープンサイエンスは、幾つかパイロットとして実験的な取組を行っておりまして、幾つかの例がこちらの右下に書かれておりますが、Data Monitorという形で、研究データのメタ情報を、世界中にある研究データを検索して、そういった情報を一括して大学の中の研究システムのほうに取り入れることができますし、それから資金調達データのデータベース、Grant Monitorというものを使って、誰がどのファンディングを得られているのかというのをつなげるデータが利用できます。
 それからUMC Portalというのは、これは特に病院、メディカルセンターのほうなんですが、研究を承継するポータルとして提供しているということと、それからTelescopeと言われるものは、研究のインフラ、施設、設備、機械、そういったものとアウトプットを連携させて、非常に高額な研究施設もありますので、そういったところの費用対効果というものも測るお手伝いをしております。
 もし御関心がありましたら、また改めて御説明させていただく機会があればと思います。ありがとうございます。

【安浦主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対しまして、御質問等、Webexの挙手でお知らせください。林先生、どうぞ。

【林室長】  林です。
 御発表ありがとうございました。意図的だったのかもしれないですけれども、エルゼビア社さんとして、グローバルにおいて転換契約についてはどのようにお考えかということと、日本のマーケットに対して転換契約はどのように考えていらっしゃるかという、その説明がなかったので、念のため伺いたいと思います。よろしくお願いします。
【浦口リージョナルディレクター】  ありがとうございます。転換契約に関しましては、多少エルゼビアはスローなように見えるかもしれないですが、世界、国、それから研究機関の御要望も聞きつつ、かなり進めていくという姿勢でおります。日本のほうも、もともと2021年のJUSTICEに対する提案というのがありますので、そちらが今ベースになってはいますが、こちらも様々な声をお聴きしておりますので、これから転換契約のほうは進めていくと考えております。

【安浦主査】  それでは竹内先生、どうぞ。

【竹内副学長】  オブザーバーでございますが、御発言認めていただきましてありがとうございます。
 転換契約についてですけれども、転換契約の基本的な理念は、ジャーナルにかかるコストを、サブスクリプション、購読者のほうから投稿者のほうに移行するというのが大きな流れだと思うんですが、それが進んできますと、サブスクリプションのジャーナルのリスト価格というのは当然下がっていくだろうというふうに思うわけですけれども、そういった進み具合について、エルゼビア社さんとしては、現時点ではどのような見通しを今後お持ちでございますでしょうか。

【浦口リージョナルディレクター】  非常に難しい質問かと思いますが、ジャーナルが今サブスクリプション、それからオープンアクセス、両方のビジネスモデルを2つ走らせておりますが、これについては、現時点では両方伸びているということもありますので、そういった状況においては、サブスクリプションのコストを大々的にオープンアクセスのほうに移管するということは、状況次第ではあると思いますが、大きくは進まないというふうには考えております。
 ただ、論文、ジャーナル単位で見ると、オープンアクセスの論文がだんだん増えてきているジャーナルも当然出てきておりますので、そういったものがジャーナルとして増えてくるということであれば、当然サブスクリプションの論文も減ってくるというか、だんだん減ってくるというふうには考えておりますので、そういったところにおいては、当然ジャーナル単位で言うと、オープンアクセスに切り替えていくということもありますし、雑誌ごとの価格というものも下がっていくと予測はしております。
 ただそれは1回で起こるかというよりも、ジャーナル単位だとか、分野単位だとか、そういったことがあると思いますので、平均化すると、論文の購読価格というのはだんだん減ってくるというふうには考えております。ただこれはいつかと言われるとちょっとまた難しい問題ではありますが、こちらもやはり研究者の選択によりますので、そこをモニターしながら今後も進めていくということになっていると思います。

【竹内副学長】  分かりました。ありがとうございました。

【安浦主査】  私のほうから、非常に単純な質問なんですけど、このAPCを払う責任は責任著者が負うという考え方ですよね。その人の所属という概念が、今複数機関にも所属したりというのがざらにあるんですけれども、それはどのようにチェックされているんですか。

【浦口リージョナルディレクター】  APC、オープンアクセスにする、しないの選択というのはどこかの時点で行われますので、これは大抵論文が受理されたと同時に弊社のほうからお知らせしますので、そこで、通常はコレスポンディングオーサーという方がその連絡を受けられて、その方が弊社のシステムにログインをされて、そこで機関がインプットされますので、その機関をベースに、例えばオープンアクセスの契約がある場合は判断がされて、割引がある場合は割引を提供しますというような形になります。

【安浦主査】  それは本当にそこに認証はされていないんですか。

【浦口リージョナルディレクター】  認証はされます。

【安浦主査】  されているんですか。その機関にその人が所属しているかどうか。

【浦口リージョナルディレクター】  そうです。その機関に実際そのAPCの割引が例えばできるといった場合は、まずその著者の方がリクエストされて、それを今度契約機関のほうの管理者の方が認証するという形で、そこでチェック体制が取られております。

【安浦主査】  ありがとうございました。
 それでは時間になりましたので、どうもありがとうございました。

【浦口リージョナルディレクター】  ありがとうございます。

【安浦主査】  続きまして、シュプリンガーネイチャー社から御発表をいただきたいと思います。それでは御発表、お願いいたします。

【遠藤ディレクター】  よろしくお願いします。弊社シュプリンガーネイチャーのプレゼンテーションでは、「オープンサイエンスにおけるゴールドOAの利点と転換契約モデル」と題しまして、まずは、本日プレスリリースを公開しました国内10大学のパイロット転換契約について御紹介させていただきます。続いて、シュプリンガーネイチャーのオープンサイエンスの取組やゴールドOAの特徴、他国での転換契約にまつわる状況などを御説明した上で、転換契約の詳細について御案内いたします。
 次、お願いします。シュプリンガーネイチャーではこのたび、自然科学研究機構の小泉周先生をはじめ、大学図書館の皆様からも多大な御尽力をいただきまして、東北大学様、東京大学様、東京工業大学様などの10大学と、OA論文出版の促進に関する合意書に署名し、2023年1月より転換契約を開始することとなりました。
 本日午前10時に共同プレスリリースを公開いたしまして、弊社や各参加大学様のホームページなどに掲載しております。これにより、弊社が出版する約2,000誌のハイブリッドジャーナルにおいて、合計で、従来の4倍以上に相当する約900報の論文がゴールドOAで出版されることになります。
 転換契約を結ぶことにより、研究者にAPCを課金することなく論文の出版が可能になりますので、より多くの研究者にとってOA出版の機会が増えることになります。また、そうすることで、各参加大学の国際的な認知度を高め、研究成果の発信能力がさらに向上するであろうと期待しております。
 次、お願いします。

【浦上ディレクター】  シュプリンガーネイチャーの浦上と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 転換契約のモデルの話に入る前に、まずその背景に関して少し触れさせていただきます。なお本発表では、オープンアクセスはOAとさせていただきます。シュプリンガーネイチャーのミッションは「発見の扉を開く」であり、ミッション実現にはオープンサイエンスが大変重要だと考えております。
 オープンサイエンスということでは、弊社は本日のテーマ、オープンアクセス以外にも、オープンデータ、オープンコード、研究公正関連での活動など、様々な取組を行っております。これらの取組を進めるためには弊社単独では難しく、研究エコシステムに関わる様々な組織とパートナーシップを通して活動しております。
 本日のメインテーマはOAですけれども、弊社といたしましては、オープンサイエンスにはゴールドOAが大変重要だと考えております。この理由に関しては、スライド5、6で少し触れたいと思います。プレスリリースのスライドで申し上げる転換契約は、ゴールドOAの増加に大変貢献するモデルでございます。
 次のスライドでございます。既に御存じかもしれませんけれども、ゴールドOAの特徴を紹介する前に、まず3種のOA、ゴールドOA、グリーンOAとプレプリントを出版プロセスに当てはめて紹介させていただきます。
 論文投稿後、査読を通過したものが受理原稿となり、その後、組版や最終的な編集を経て、出版社版として論文が出版されます。なお、出版社版の論文は、出版後も訂正などがある場合、必要に応じてアップデートが行われます。一般的には査読前のコンテンツをプレプリント、受理原稿のOAをグリーンOAと呼び、出版社版のOAをゴールドOAと呼びます。これらの詳細、特徴やほかのOAにつきましては、Appendix 1を御参照ください。
 次に、ゴールドOAの使用につきまして、取捨の選好と引用やダウンロードの観点から紹介いたします。
 まず、下の図ですけれども、弊社が一昨年に発表した白書では、プレプリント、受理原稿、出版社版の3つの論文のバージョンの使用に関し、研究者の選好を調査いたしました。こちらの白書から分かったのは、リーディングや引用に関しては、研究者は出版社版、すなわちゴールドOAの使用を最も好んでいるということが分かりました。詳細は白書を御覧いただくのが最適ですが、その理由としては、ゴールドOAが最も信頼され、使用しやすいという点が、研究者を対象としたこちらの調査から分かりました。
 次に、シュプリンガーネイチャーのハイブリッド誌では、ゴールドOAの論文のほうが使用が高いという点を紹介させていただきます。次のスライドをお願いします。こちらで示す使用とは、引用、ダウンロードとAltmetricスコアになります。Altmetricスコアとは、論文のソーシャルメディア、報道機関での使用をスコア化したものになります。
 こちらの調査では、ハイブリッド誌でのOAと非OA論文の使用を比較いたしました。左上の図ですが、見方といたしましては、ハイブリッド誌の非OA論文を1としたときのゴールドOA論文と受理原稿やプレプリントなどがOAとして公開されている非OA論文、Early Vの引用、ダウンロード数、Altmetricスコアの比較になります。
 グローバルの平均値では、ゴールドOAのほうが非OA論文より引用数が1.6倍、ダウンロードが6倍、Altmetricスコアは4.9倍高く出ております。ゴールドOAのほうが引用、ダウンロード、Altmetricスコアが高いという傾向は、分野別の分析でも同様な傾向となっております。
 また、右上図にございますように、国内同士の論文の比較でも、グローバルと同じく、ゴールドOAのほうが非OA論文やEarly Vより、引用、ダウンロード、Altmetricのいずれも高い値となっております。
 なお、こちらの調査には留意点が2点ございます。1点目は、Early Vのダウンロードは弊社のプラットフォーム上のみでの集計のため、リポジトリなどでのダウンロードは含まれておりません。2点目は、国内論文数のサンプルの少なさにございます。分野別データと国内データの詳細はAppendix 2、3を御参照ください。
 次のスライドをお願いします。こちらが現時点でのシュプリンガーネイチャー国別論文出版数となります。
 まず左上から。こちらは購読誌の非OA論文、基本的には中国以外、比較的フラットな傾向となっており、右上ではゴールドOA誌、フルOA誌の論文数。全体的には増加傾向ということになっております。
 左下にはハイブリッドOAの論文数。講読誌のOA論文数の推移です。こちらではドイツやイギリスの増加が顕著だということが分かると思います。また、オランダやイタリアは非OA論文やゴールドOA論文というのが日本より少ないですけれども、ハイブリッドでは日本より多いという傾向になっております。これらのハイブリッド誌のオープンアクセスの論文の増加には、転換契約が大きく関わっているのではないかと考えております。
 次のスライドをお願いします。現在シュプリンガーネイチャーは、図に示されている地域と転換契約を結んでおります。導入地域では、転換契約に含まれているジャーナルへのアクセスとOA出版が可能になり、出版ということでは、ハイブリッド誌でのOA出版率の増加が確認されております。弊社におきまして、現時点ではヨーロッパでの導入が多いのですけれども、ほかの地域でも進んでおり、このたび日本も加わりました。
 次のスライドをお願いします。地図が出て、次のスライドをお願いします。転換契約の出版へのインパクトをまとめたのがこちらのスライドとなります。転換契約が導入されている地域では、人社系、メディカル・ライフサイエンス系、フィジカルサイエンス系の各領域において、ハイブリッド誌の高いOA出版率を実現しております。例として挙げられているスウェーデンでは、シュプリンガーネイチャーのハイブリッド誌においてOA出版率が91%、ドイツでは79%がOAで出版されております。
 右図にございますように、転換契約導入前のハイブリッド誌のドイツの場合、ゴールドOA出版率は10%でございました。国によってそのOA率が異なる理由というのは、契約内容やコンソーシアムのサイズなど、様々な要因がございます。ちなみにその転換契約に入っていない場合の平均のOA率は4%ほどとなっております。
 現時点でのSpringer誌においてのダウンロード数、Denial数は、Appendix 4のほうを御参照ください。
 本日は時間の都合のため、全部は説明できないですけれども、参考として転換契約を既に導入しているドイツとイタリア、それに日本のデータをまとめております。転換契約が理由とまでは申し上げませんが、ドイツ、イタリアでは、転換契約の導入時期と、その国からの論文のダウンロード数の増加と、アクセス拒否された論文数の減少に相関があるように見えます。

【遠藤ディレクター】  次のスライドをお願いします。ここでは、シュプリンガーネイチャーの転換契約の概要を御説明します。シュプリンガーネイチャーの転換契約は、法人が負担するジャーナル購読料と個人研究者が負担するOA出版費用を1つにまとめて、法人として一元契約していただくモデルです。ジャーナル購読にかかる費用を縮小させて、その分、OA論文の出版費用を個人負担から法人負担に転換させることになりますので、OA出版論文数の大幅な増加を実現させると同時に、ジャーナルへの継続的かつ安定的なアクセスが保証されることになります。
 なお、シュプリンガーネイチャー内においても、転換契約の内容は各国や地域での条件などによって大きく異なります。例えば、会計監査などの財務上の要件や大学内での予算構成の違い、OA出版に対する政府からの要件など、様々な事情を考慮する必要があり、転換契約の内容を確定させるためには、通常交渉に長い時間を要します。
 さらに、出版がどれだけ普及しているかも国によって異なりますが、日本においては、転換契約の対象となる弊社の2,000誌ほどのジャーナルに関して言いますと、法人購読料金の約11%から13%に相当する金額が、個人研究者の負担によるAPCとして費やされております。転換契約を実施していない国の中では、かなり大きな割合を占めていると言えます。
 ハイブリッドジャーナルに関しては、講読モデルで出版する論文とOA出版論文の両方のタイプの論文を出版していますので、購読料とAPCを同時に課金する、いわゆる二重取りではないかという批判があることも承知しておりますが、転換契約は、ハイブリッドジャーナルのそのような誤解を払拭する上でも最適なモデルであると言えるかと思います。
 次のスライドをお願いします。こちらのスライドでは、2023年から開始する日本国内の転換契約について、少し詳しく説明していきたいと思います。
 今回シュプリンガーネイチャーでは、シュプリンガージャーナルのパッケージを既に御購読いただいている研究大学コンソーシアムのメンバーを中心とした、30大学を対象にしまして、転換契約を御提案させていただきました。2023年からは10大学に御参加いただき、年間で合計約900報のOA出版枠を御提供することになりました。3年提案のモデルですので、2024年もしくは2025年からも、30大学の中から新たに転換契約に御参加いただける大学もあるかと期待しております。
 なお、ほかの国や地域の転換契約では、コンソーシアムなどが参加大学から集めた出版費用をプールして1つにまとめられた出版基金を、研究者が先着順で利用していくというモデルが一般的なのですが、日本の場合、財務規制などの事情に適応させるため、各参加大学で異なるOA出版論文の御提供枠を設けて、個別に運用していただけるようにいたしました。
 また、大学によって予算編成上の事情も異なり、ジャーナル購読料の予算を出版費用の予算として組み直すにも、すぐに実現するのは難しいという事情もございました。そこで、従来までのジャーナル購読料に上乗せしていただく額に応じて、GOLDとSILVERという2つのランクを設け、出版論文を全てOA出版する完全転換モデルと、約50%の論文をOA出版することができる部分的転換モデルのいずれかを御選択いただけるようにいたしました。
 2023年からは東京大学様と東京工業大学様がGOLDランクの完全転換モデルを選択いただきましたが、2025年までの3年提案として、途中から完全転換モデルに移行していただくことも可能ですので、SILVERランクの部分的転換モデルは、OA論文出版に完全移行していただくための準備期間として捉えております。
 また、ジャーナル購読料は円価格、個人研究者負担のAPCはドル価格で課金しているのですが、転換契約ではまとめて円価格で御提供いたしますので、為替変動に左右されることなく安定的な御提供が可能であることも、転換契約の利点の一つと言えます。
 次のページをお願いします。こちらの図では、ピンクの部分のAPCの費用を法人として負担する、出版費用に切り替えていただくことを表していますが、このようなAPCの資金を含め、大学図書館などの関連部門が転換契約でのPublication Feeとしての予算を確保し、ジャーナル購読に費やされていた資金をOA出版費用にいかにして転換させていくかが、各参加大学においても今後の課題と言えるかと思います。
 次、お願いします。最後に本日の発表内容をまとめました。ゴールドオープンアクセスで公開される論文の出版社版、VORは、より頻繁に利用、引用される傾向にあり、また、転換契約を導入している国や地域では非常に高いOA出版率を実現しています。
 従来のジャーナル購読費用の一部をOA出版費用に転換して、法人として一元契約していただく転換契約では、OA出版論文数の著しい増加が見込まれ、また、安定的なジャーナルアクセスを実現させる意味でも有効なモデルであると言えると思いますが、今後は従来までのジャーナル購読費用の資金をOA出版費用に切り替え、転換契約でのOA出版費用をいかにして安定的に確保していくかということが課題であると言えるかと存じます。
 これで弊社シュプリンガーネイチャーの発表とさせていただきたいと思います。御清聴いただきましてありがとうございました。

【安浦主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対しまして御質問等ございましたら、挙手ボタンをお願いいたします。引原委員、どうぞ。

【引原委員】  京都大学の引原です。どうも御説明ありがとうございます。
 以前から経費の学内での処理等が難しいというのは、かなりいろんなタイミングで申し上げ、御回答があったという経験をしています。今回それを踏み切られたというのは、あとはもう大学の処理だから自分たちは関係ないよという立ち位置なのでしょうか。それとも、メニューとしてAPCの部分を本体の価格に反映させるという発想なのでしょうか。どちらなのでしょうか。

【遠藤ディレクター】  1つのプールにして御提供するのではなくて、個別の大学様で管理していただくという意味でのことでしょうか。

【引原委員】  以前から何度もお話ししたことがあるんですけれども、「それはできません」とかなり言っておられたと思います。今回実施されたということは、本体価格を下げることを意図したわけではないということですね。パッケージとしての意味ですが。

【遠藤ディレクター】  個別に御提供する場合と、またコンソーシアム全体で御提供する場合、特にAPCの価格をどうするかというところは影響はないんですが、ただ技術的な要因などもありまして、実際のところは、コンソーシアム全体で1つの資金をプールしていただくという方法がスタンダードであることは確かです。
 ただ、今回先ほど御説明しましたとおり、やはりそれぞれの大学様の事情なども踏まえて、個別にあらかじめOAでの出版枠を設けるようなモデルでないと、なかなか踏み切れないという事情もございましたので、こういった形にはさせていただきましたが、まだ、今2023年からのパイロット転換契約として、まずはこれで運用させていただいて、そこからどういった課題があるのかということも見据えていきながら、例えばですけれども、またコンソーシアム全体に御提供できるような転換契約ができるかどうかということは、これから検討していく課題だとは考えています。

【引原委員】  まだあまりよく分からないですけれども、分かりました。APCの価格を変えるわけではないし、本体も変えるわけではない。コンソーシアムのプールの中でマネージするという。だから利用者側でやりなさいということですね。

【遠藤ディレクター】  そうですね。出版費用を確保いただくのはもちろん利用者側でということになります。

【引原委員】  だからトータルな費用が変わるわけではないという意味ですね。

【遠藤ディレクター】  はい。出版費用に関してはそうです。

【引原委員】  分かりました。

【安浦主査】  中島委員、どうぞ。

【中島委員】  中島です。ありがとうございます。
 御社だけではないんですけど、これまで3社の取組を御紹介いただきまして、非常に複雑であるということがよく分かりました。従来のジャーナル問題も、各社との契約が非常に異なっていて難しいということは大きな要素だったと思うんですけれども、何か業界全体として、利用者に分かりやすく情報を提供するような取組、透明化するような取組はなされていないんでしょうか。

【遠藤ディレクター】  利用者の皆様、もしくは報道機関の皆様に、できる限り価格においても透明性を保とうというような取組はしてはおります。ただなかなか複雑な、いろいろな要因もやはりございますので、まだまだ皆様が考えていらっしゃるほどのレベルで透明性を高めるということは、実現できてはいないかもしれないんですが、今そういった活動といいますか、取組についても、弊社としては行っているところではありますので、まだ転換期といいますか、過渡期というところではあるとは思うんですけれども、取組をこれからも進めていくというところで御理解いただければと思います。

【中島委員】  各社さん個別の取組だと思いますが、何か業界での取組の動きはないんでしょうか。

【遠藤ディレクター】  そうですね。私が存じ上げている限りでは、業界で何か統一したような形では、今のところ、まだ形づくられてはいないと思います。

【中島委員】  ありがとうございます。

【安浦主査】  それでは時間になりましたので、どうもありがとうございました。
 それでは議論のほうに移りたいと思います。途中で御質問、手を挙げていただいたのに御指名できなかった皆様にはおわび申し上げます。
 ここまでの出版社3社からの御発表を踏まえまして、学術情報流通推進に向けた国全体としての課題や、それに対して検討すべき事項、対応策の御提案など、それぞれのお立場から御意見等いただければと思います。同じように挙手ボタンを押していただければと思いますが、最初に、それぞれの大学の事情をよく御存じの深澤委員、引原委員、竹内先生から、少し大学側の状況をお話しいただきたいと思います。
 深澤委員、まずよろしいでしょうか。

【深澤主査代理】  まず、今日お話をお伺いしていて、図書館関係者の方はみんなお分かりだと思いますが、そうでない方もいらっしゃるので、1点だけ補足してよろしいでしょうか。

【安浦主査】  はい。

【深澤主査代理】  まず、皆さん御存じでない方に御理解いただきたいのは、今回、転換契約というのがメインの話題になっていますが、転換契約って何なのかというところで、要は、最初のワイリーさんのときでは明確におっしゃっていたんですが、リードアンドパブリッシュモデル、つまり今までは図書館が払うお金と研究者が払うお金が重複していたのを、1つにまとめましょうねというところの問題だと思っています。
 問題は何なのかと私が思っているかといいますと、例えば早稲田の場合には、ビックディール契約を7社としていまして、約5億円くらい、要は大手出版社7社にお支払いしています。
 この5億は5億でいいのですが、問題は何かというと、多分この10年間で、2倍とは言わないまでも1.8倍とか1.7倍とか、そのくらいに増えてしまっている。そこのところをどういうふうにするのかという話で、実は転換契約にしたときにここの割合が抑えられるかどうかというのが、図書館としてキーポイントになるのではないかと思っていて、個人的にはここが抑えられない限り、どういう契約をしても値上がりをしてしまうというのはしようがないのではないかと実は思っております。
 ひとまず以上1点だけ、御指摘させていただければと思います。

【安浦主査】  ありがとうございます。5億円というのは、そのリードのためのお金というふうに考えていいんですね。

【深澤主査代理】  はい。リードです。

【安浦主査】  APCは入っていないということですね。

【深澤主査代理】  はい。入っていません。

【安浦主査】  分かりました。どうもありがとうございます。
 それでは、引原委員、どうぞ。

【引原委員】  引原でございます。
 今日3社の御説明がありましたけれども、今契約に至っている大学の中で京都大学が入っていないというのはお分かりだと思います。詳細に彼らが出してくる方式というのを学内の経費で評価しています。その上で、やはり本体価格が下がる形にならないと大学としては納得いかない。それから著者からすれば、APCの費用も今ではもう80万とかの例もありますけれども、それが半分以下にならないと納得できない。
 さらには、全体としてそのビジビリティーが上がるとかそういうことで、付加価値がつかなければ、これは学内の了解は取れない。さらに人社系と理系においてその偏りがないところにしなければ、なぜ理系ばかりなんだという話も出てしまう。そういうようなことを全て納得させるためには、出版社が出してきたものだけではデータが足りないというふうに私は思っています。
 ですので、京都大学としましてはかなり苦労しまして、現状1社と契約に至っていますけれども、それは出版社の協力がかなりなければ駄目で、協力してくれないところに関しては何ともしようがないという状況になっています。結論から言いますと、それに対してはグリーンで迫るという方向で我々は動いているということです。
 以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございます。
 竹内先生、お願いします。

【竹内副学長】  ありがとうございます。釈迦に説法という部分はかなりあると思いますけれども、現状としては、いわゆるサブスクリプションのコストに加えて、相当高額のAPCが支払われていて、学術コミュニケーションのためのコストというのが従来の1.3倍とか、非常に大きな数値になっているというところが、大学にとって非常に大きな負担になっているところでございます。
 Transformational Agreement、いわゆる転換契約と言われるものは、本来理念としては、支出者というのが、読者ではなくて論文を出す人、読んでほしい人が経費負担をするというモデルに全面的に転換しようというのが、モデルの考え方だと思いますけれども、現状としては、各大学の中で、先ほど言った購読の経費と、それからAPCの部分の最適化をするという、そのレベルにとどまっているのではないかというふうに思います。
 先ほど1社にだけ質問させていただきましたけれども、実際のところは、これだけヨーロッパなどで、オープンアクセス化というか、APCの支払いによるオープンアクセスが進んでいるわけですから、単純な購読料はもっと下がってもいいのではないかという素朴な疑問を持っております。ただその点について、どの出版社も明確な御説明はしてくださっておりません。ですので、これが今後本当に意味のあるものになっていくのかどうかということについては、注意深く見ていきたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございました。
 資料1の3ページ目にございます、文部科学省の事務局から出していただいた国公私立大学の1大学当たりの平均額というもの、これはあくまでもリードのためのものでございまして、APCは一切これには入っていないということを御認識の上、御議論を続けていただきたいと思います。

【竹内副学長】  この点についても1点説明させていただいてよろしいでしょうか。

【安浦主査】  はい。

【竹内副学長】  大変いいデータを出していただいたというふうに思っておりますけれども、これは日本の大学の平均値であるということでございまして、私どもの例で申し上げれば、電子ジャーナル経費は、ざっくりですけれども80%です。ですから非常に大きい部分を占めております。アメリカなどでこの問題、ジャーナルの価格の問題が議論されたときには、要はジャーナルの価格が単に上がるだけではなくて、その他の図書等の資料が買えなくなるということが非常に大きな問題でございました。同じような問題は多分、これから日本の大学でも明らかに起こってくるのではないかと思いますので、その点十分注意して見ていく必要があるのではないかと思います。
 以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、オブザーバーで御参加の小泉先生、どうぞ。

【小泉特任教授】  陪席しております小泉ですが、御発言認めていただいてありがとうございます。
 今回、シュプリンガーネイチャーもそうですが、ワイリーさん、4大学のところで、コーディネーションを実際やらせていただきました。引原先生、竹内先生が作られたこの審議のまとめを、だるまに目を入れるべく、実際の交渉の場というのをやらせていただいたところであります。もちろん引原先生が御指摘のように、転換契約の最終的な目標は、プランSもそうですけれども、全てがオープンアクセスになる、リーディングフィーがなくなる、ビッグディールもなくなる、そこに持っていくというところの転換期にあるから転換契約だと思っております。
 どのくらいリーディングフィーから転換されるかというのが問題になるわけですが、シュプリンガーネイチャーと引原委員の質疑応答を聞いていても、シュプリンガーネイチャーは的確に答えていなかったのですが、絵を見ていただけるとわかるように、転換契約によって、リーディングフィーが抑えられているのがわかると思います。転換契約に移行した大学のリーディングフィーは、かなり抑えたことになります。
 そこの転換率、リーディングフィーをどのくらい抑えてオープンアクセスに転換するかというところが、交渉の大きなポイントでした。まさに引原先生が御指摘のポイントだと思います。だからリーディングフィーを抑えていって将来的にはそれをゼロに持っていくんだと。それが転換契約の目的なので、単純に安くするとか云々ではなくて、いかにリーディングフィーを抑え、それによって完全オープンアクセスにいかに近づけるかというところが、ワイリーさんにしてもシュプリンガーネイチャーさんにしても、交渉の大きなポイントであったところです。
 ただほかの国だと、それを例えばオーストラリアのCAULとか、これももう引原先生、竹内先生を前に釈迦に説法ですけれども、国全体としてどのくらいのパーセントがいいのか、国全体で最適化を図って契約を交渉していくんですが、日本の場合最終的には、各大学がそれぞれのコストエフェクティブなポイントというのを別々に持っていてしまって、統一した意思をもって、一括して交渉というのがなかなかできない。
 この条件だと、この大学は得するけれどこの大学は得しないみたいなものがあって、そこがなかなか難しい。今回のシュプリンガーネイチャーとの転換契約も、東京大学さんは乗ってきたけれど京都大学さんは乗ってこなかったというのは、そういうこともあったのかな、と思っています。やはり各大学ごとに、どの条件がいいかというのは異なってしまうんです。
 そこが、国レベルで交渉すると、国全体としてのポイントを考えた上で最適化できるので、それを各国ではやっていることなんですが、日本だとやはり各大学ごとの判断というのがまだ残ってしまっています。JUSTICEで例えば一括して交渉しなさいよと言っても、結局JUSTICEも各大学ごとに、どうですか、どうですかと聞いて回らなきゃいけないという状況になっているのが、国レベルで交渉できない課題なのかなと思っています。
 補足とコメントでした。以上です。

【安浦主査】  どうもありがとうございました。今、この問題のある意味当事者でもあられる先生方から詳しい御説明がございました。この御説明と、先ほどの3社からの御説明を合わせながら、今後我が国としてどうしていくかということについて、自由に御意見をいただければと思います。御質問等でも構いません。
 田浦委員、どうぞ。

【田浦委員】  ありがとうございます。私は専門家ではありませんけれども、小泉先生におっしゃっていただいたようなことが、私もずっと聞きながら思っていたことで、つまり国全体としてこうまとめてやるのが、進むべき方向なのかどうかということだと思います。
 それで、日本の場合だとすぐに、この大学はああで、この大学はああで、ということになってしまうのは、何だかすごくよく聞く話だなと思っていて、だから例えばドイツみたいなすごく大きい契約をまとめてやったところでは、全体としてどういう収支になっていて、あとはもともとAPCとかの負担がそこまで大きくないような機関をどう説得したのかとか、何かその辺がそもそも全体として物すごく出版社にいいようにされているという感じで、とても全体としてはのめないという話なのか、何かその辺について御存じの方がいましたら、教えていただけないでしょうか。

【安浦主査】  どなたか。小泉先生、お願いします。

【小泉特任教授】  はい。僕よりも多分引原先生のほうが詳しいかと思うんですけれども、ドイツの場合はProject DEALで、国のほうからマックス・プランクデジタルライブラリーにまとめて交渉しなさいよという権限が与えられて、マックス・プランクデジタルライブラリーが一元的に交渉するという形を取っているのが大きなところだと思います。
 今回、11月15日に、オーストラリアのCAULという大きなコンソーシアムと、エルゼビアも転換契約に踏み切りましたけれども、それもCAULというのがグループとしてナショナル・ネゴシエーターをおき、国を背負った権限を持って交渉するということができています。一方、日本の場合だと結局JUSTICEが交渉するといっても、一つ一つの大学が権限を持っているので、一々御用聞きのように全ての大学に聞かなきゃいけないというところが違う。
 ばらばらに交渉すると、基本的にはこれは一般論として出版社有利になると思います。バラバラな交渉だと、「あの大学はこの条件でいいと言ったから、あなたの大学もこの条件で良いでしょう?」というように、我々がよく家電量販店でやるようなことを、むしろ逆に出版社側から足元をみられて買いたたかれてしまうので、まとまって交渉するということがやっぱりできるような仕組みというのが必要ではないかと思っています。

【田浦委員】  ありがとうございます。お伺いしたいのは、それはすべき方向なのかということで、要するに出版社のほうも、個別に何かばらばらよりも、国全体でまとめてやってくれたら、出版社側もこんなうれしい話はないわけで、そこに国全体として、ちゃんと権限なら権限とか財源を与えてやるほうがやっぱり正しいのか、それともそうやって出版社にいいようにされてというのは、少し言い方は悪いですけれども、あちらが望むようにそのまま進んでいくのがよくないということがあるかという辺りはいかがでしょう。

【安浦主査】  これは問題提起としてお聞きしておきたいと思います。先ほどの引原委員のお話をベースに考えると、あくまでも各大学にもう予算配分はされてしまっており、そこからスタートになるので、現状からの差分を全部帳消しにして、その分国全体で平均的な予算配分をやり直すというようなこと、これは文部科学省の仕事になってしまうと思うんですけれども、そういうことまで考えるかどうかということにまで発展しかねません。今日の議論の中であまり深く議論してしまうのは大変かと思います。一つの御提案としてお伺いしておきたいと思います。
 それでは、井上委員、どうぞ。

【井上委員】  井上でございます。
 2点、申し上げたいことがございます。1つは価格透明性の問題、もう一つは国の戦略の問題です。私はこの分野は詳細な情報を知っているわけでなく、少し的外れなこともあるかもしれませんがお許しください。
 欧州が打ち出したプランSでは、価格透明性フレームワークというようなものがあって、出版社側から情報を出させる仕組みになっているとのことですが、今日のお話では、例えばシュプリンガーネイチャーの転換契約は、国や地域、あるいは大学によって内容は違っており、リーディングフィーとパブリッシングフィーの割合などについても明確でないような印象を受けました。この点について、透明性確保に向けた動きというのはどうなっているのか。価格の透明性についてより詳細な状況を教えていただきたいということが1点目です。
 もう一つは国の戦略です。個別の大学ごとに検討する、最適化を探るということになりますと、研究中心の大学では、研究者、教員が多くのジャーナルに投稿するということになるでしょうから、パブリッシングフィーの割合が大きくなってくると思うんですけれども、そうでない中堅、あるいは小さめの大学の場合ですと、投稿する研究者の数も少ないということになりますので、事情は変わってきます。
 研究中心でない大学に所属する研究者にとって、オープンアクセスができないというような状況になるのは、国の戦略として問題があるのではないか。特に若手の研究者などは、もちろん分野によって違うのだと思いますけれども、まず小さめの大学にポジションを得て、そこからさらに研究を進めて、研究中心の大学に移っていくというようなキャリアパスもあると思いますので、若手のうちに劣後した条件で戦わなければいけなくなるのだとしたら問題があると思います。的外れでしたら御指摘いただきたいのですけれども。そういったことを考えると、個々の大学レベルではなくて、国全体の研究振興戦略として考えていく必要が大きいのではないかという気がいたしております。
 シュプリンガーネイチャーの転換契約の御説明のスライドの中で、転換契約の内容が国によって違う事情として、財務、税制上の要件、利害関係者と予算の関係、政府による要件といったようなものがあるからだというお話がありました。日本の研究戦略としてどういう方向にいくべきかを考えた上で、例えば財務、税制上の要件ですとか、大学への予算配分ですとか、政府から出版社に向けて、事実上こういう条件にせよというようなことを戦略的に、トップダウンでやっていく必要があるんじゃないかなとも思いました。この点についてどういうふうに考えればよいか、教えていただければと思います。

【安浦主査】  どうもありがとうございました。今2点、価格透明性の話と中小の大学も含めた国全体の方針の話がございました。まず価格透明性について、これはほとんどオープンにはならないんでしょうね。小泉先生、お願いいたしします。

【小泉特任教授】  結局これはワイリーもそうですし、シュプリンガーネイチャーもそうですが、各大学の契約に落としています。となると、各大学がどのように契約して、先ほど来引原先生もおっしゃっている、リーディングフィーの転換率がどのくらいになったかというのは開示されません。それは、本当に交渉する側としては非常にやりにくい。この大学はこのくらいの転換率でこれで交渉しているんだというのが分からないので。やはりそこが各大学ごとの意思決定をしているというところで、なかなか透明性が担保できていない理由になっていると思っているところです。
 まさに井上先生がおっしゃったように、これは結局、今の形で転換契約をどんどん進めていっても、これでできる大学とできない大学の格差が広がっていくと思います。自分でやっておきながら自分でやっていることに文句を言うと。できる大学はどんどん転換していって、この契約おいしかったねと。でも転換率を誰も言わないという感じで、できる大学はどんどん進んでいくと思うのですが、できない大学にいる研究者は、この恩恵を受けないことになってしまうので、これは国全体としてやはり考えていただく必要があるのかなと。まさに井上先生がおっしゃるとおりだと思っています。
 以上です。

【安浦主査】  引原委員、何か追加があればお願いします。

【引原委員】  井上委員、御指摘ありがとうございます。御指摘いただいたことのかなりの部分を前回の委員会で議論させていただきました。中小の大学等がアクセスできなくなるという意見として、パッケージ契約をやめてしまうと契約したもの以外のものも読めなくなるということが現実にあります。そのためのライフラインをきちんとつくりましょうというのは、前回の委員会でお話ししていたことです。ですので、議論の中でアーカイブ部分を分けて考えますと、研究者の方々が契約をやめたら読めなくなるという不安は解消できると思います。
 問題は、カレントが今の契約とAPCが合体しているという形になっていることです。彼らも商売ですから、一番もうかるところを選ぶというのは、彼らの最適点で当たり前のことなんですけれども、そのときに国としてそれでいいかという話になります。日本の場合、グリーンというのをかなり強く主張してきた部分もありますので、そことのトレードオフをどこに見るかということは、やはり真面目に数値で考えないといけないだろうと思います。
 実際に研究中心の大学であれば、例えばシュプリンガーネイチャーに対しても、これ以上の論文を出さないと負担に合わないということは計算しています。合わせて、学内の論文の数、あるいは購読の数、いろんな数値を使ってやって評価しているわけです。だから何となく感覚的にあるいは感情的にやるのは、これは戦略としてはよくないだろうと思います。
 そういう意味で言いますと、学内の誰がどういう論文にアクセスしているかという点では、エルゼビアから2,000を超える論文誌があるという主張がありましたけれども、我々の大学で、年間論文を出版しているとか、アクセス、ダウンロードしているとかを見ますと、主要雑誌は200ちょっとで終わってしまいます。それが実はその本体の価格になっている。彼らもいいところに抑えているわけです。だから本当にどれだけ論文が読めないといけないのか、出版するためにOA費用が必要なのかという数値に基づいた評価をきちんとこちらが持たない限りは、何も戦えないというのが正直なところです。補足でした。

【安浦主査】  井上委員、後半部分は先ほどの田浦委員と同じ、今後この委員会等でも議論していくべきことだと思います。透明性については今は公開されていないということでございます。どうも貴重な御質問ありがとうございました。
 それでは最後、後藤委員、お願いします。

【後藤委員】  ありがとうございます。私の大学も小規模かつ私立大学でございますので、今の議論をぜひ期待しております。
 もう1点、この議論の対象範囲になっていないのかもしれませんが、いわゆる学会との関係の議論はどうなっているのかに興味があります。実際日本の学会等は出版に依存して予算を組んでいたものが、このオープンアクセスの流れで破綻しかけているというのは、既に皆さん御存じだと思います。
 一方、大規模な国際学会などは、自らオープンアクセスにしていると。そういった中で、研究活動全体としては学会という場があり、そこで例えば国際会議があり、発表もするという、学会参加費や国際会議参加費も含めた研究活動費は、普通大学研究者は意識していると思います。それとこの出版と図書館の購読はどういう範囲で議論されるかがポイントと思います。特に国全体でという場合には、学会の在り方をどう考えるのか、学会のほうのオープンアクセスをどう考えるのかということも含めて、議論いただければというお願いでございます。
 以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございます。学会、これは分野によってもかなり姿勢が違いますし、体力も違う、そういう問題も同時にございます。本日お時間がなくなってしまいましたので、ここも今後の検討課題にしていきたいと思います。引原委員のジャーナル問題検討部会での報告も、その辺も全て配慮した記述になっていると感じておりますけれども、今後この議論を国全体でしっかりとやっていかないといけないと思います。
 ただ日本の研究力は統計上落ちた、落ちたと騒いでいるだけでは、なかなかそれを盛り返すことにはつながりませんし、本当に研究者にとっていい環境というのは何なのか、国全体としての支出をどう考えるのか、そういう問題として、この問題は引き続き議論していきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 まだ、御意見等あるかもしれませんけど、時間になりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきます。もし御意見等言い足りなかったことがあれば、会議後に事務局までメール等で御意見をいただければ幸いでございます。
 最後に、情報分野の各施策の状況につきまして、事務局から簡単に説明をお願いしております。資料5でございます。事務局からお願いいたします。

【神部参事官補佐】   令和5年度概算要求及び令和4年度の補正予算の案につきまして、ポイントのみ簡単に御説明をさせていただければと思います。
 次のページをお願いいたします。情報分野の全体像でございますが、データの利活用の促進という大きな方向性の下、先端的な情報科学技術の研究開発及びデジタル基盤の構築・運用、この2本柱で進めているところでございます。この2本柱の中の具体的な施策について、簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず1つ、デジタル基盤につきましては、AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業、こちらが令和4年度よりスタートしているところでございます。NIIのデータ基盤がございますが、これを高度化していくといった事業でございます。
 内容は下のほう「必要な取組」を御覧いただければと思いますが、主に2つございまして、全国的な研究データ基盤の構築・高度化・実装及び研究データ基盤の構築・活用に係る環境の整備を走らせております。
 その中で令和5年度におきましては、①の3つ目を御覧いただければと思いますが、各分野のデータプラットフォームとの連携を促進していくための費用を、まず拡充させたいと考えています。
 続きまして②の2つ目でございます、大学における研究データマネジメントに係る体制・ルールの整備の支援、こちらを新規で要求しております。データ基盤の高度化はもちろん進めていくのですが、そこに収納していくデータは、やはり各大学がしっかり整備していかなければいけないので、各大学がしっかりとマネジメントできるような支援をこの事業の中でも行っていきたいと考えているところでございます。
 3つ目が、そのデータが集まったときに新しい研究ができるような、そういう研究開発手法の開拓も拡充していきたいというふうに考えております。
 次のページをお願いします。研究デジタル基盤に係るところのSINETでございますが、SINETにつきましては、引き続き学術フロンティアの予算の中で計上させていただいているところでございます。
 次のページをお願いします。続きまして、インフラのところでございますが、「富岳」、HPCIの運用につきましては、どちらも例年どおり継続的な運用をしていくというのが基本的な方向性でございます。
 その中で増額の用途につきましては、下の「2.HPCIの運営」を御覧いただければと思います。まず、「2-1.HPCIの運営等」につきましては、継続的な運用とともに、ストレージなどの施設設備の高度化などを進めていく予算を計上させていただいております。こちらは補正予算の案にも組み込ませていただいておりますので、後ほど詳細を御説明させていただければと思います。
 「2-2.次世代計算基盤に係る調査研究」でございますが、こちらは本年度よりスタートしておりまして、2年間の調査研究期間となっております。2年目につきましては、1年目の成果を基に必要な要素技術の研究開発を進めていくために、増額の要求とさせていただいているところでございます。
 次のページをお願いいたします。先ほど申しましたHPCIの施設設備の高度化につきましては、令和4年の補正予算案に計上させていただいているところでございます。
 1つはHPCIのストレージの高度化と、もう一つは、富岳のコジェネレーションシステムの点検及び中央監視システムの更新となっております。
 次のページをお願いいたします。HPCI関係でございますが、こちらは「富岳」、HPCIのみならず、国立研究開発法人等の研究活動を継続するために、物価高騰等の影響を回避するための予算として計上しているところでございます。
 次のページをお願いいたします。最後、AIPでございますが、こちらも引き続き継続して行っていきたいと思っております。特に左下を御覧いただければと思いますが、理研AIPにおける今後の取組としまして、AI戦略等の重要戦略への対応を強化するための取組として、AIPセンター全体での一気通貫プログラムを形成するための予算を増額要求とさせていただいているところでございます。
 お時間がないところ、ポイントのみでございますが、以上となります。

【安浦主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議論はここまでとさせていただきます。第11期も残すところあと僅かな日数となりましたけれども、下部組織の検討結果の報告などのために、今期中に、要するに2月の半ばでしょうか、それまでにあと1回開催したいと思っております。
 事務局のほうから、事務連絡等があればお願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  ありがとうございます。今御案内いただきましたように、今期中にあと1回開催できればと考えております。また後日、日程調整の御連絡をさせていただきますので、御協力よろしくお願いいたします。
 また、先ほど安浦主査からありましたように、本日の議論について追加で御意見をいただけるようでありましたら、来週、28日月曜日の18時までにお送りいただけますとありがたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【安浦主査】  それでは、これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。次回もよろしくお願い申し上げます。
 
―― 了 ――

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