情報委員会(第25回) 議事録

1.日時

令和4年5月17日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館15階 15F特別会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. AIPの進捗状況及び総合科学技術・イノベーション会議による中間評価について
  2. 情報分野において今後実施すべき取組の進め方について
  3. その他

4.出席者

委員

安浦主査、相澤委員、井上委員、川添委員、小池委員、後藤委員、佐古委員、瀧委員、塚本委員、中島委員、長谷山委員、深澤委員、星野委員、美濃委員、八木委員、若目田委員

文部科学省

池田研究振興局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、工藤参事官(情報担当)、河原計算科学技術推進室長、藤澤学術基盤整備室長、黒橋科学官、竹房学術調査官、松林学術調査官

オブザーバー

杉山 理化学研究所AIPセンター長、上田 理化学研究所AIPセンター副センター長、橋田 理化学研究所AIPセンターグループディレクター

5.議事録

【安浦主査】  それでは、時間になりましたので、科学技術・学術審議会情報委員会の第25回会合を開催したいと思います。
 本日は、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策も行いつつ、緊急事態宣言等が出ておりませんので、現地出席できる方には御出席いただいて、現地出席とオンライン出席のハイブリッドで開催することにいたしました。こういうハイブリッドを全面的にやるのは、この委員会としては初めてです。
 報道関係者の方々も含めまして、傍聴者の方々にはオンラインで参加いただいております。
 また、通信状態等に不具合が生じるなど続行ができなくなった場合、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
 本日は、星野委員が少し遅れて御出席、奥野委員、田浦委員、引原委員が御欠席と御連絡をいただいております。
 また、オブザーバーとして、理化学研究所の革新知能統合研究センター、AIPセンターから、杉山センター長に現地出席をいただいておりまして、あと、上田副センター長、橋田グループディレクターにもオンラインで御参加いただいております。
 それでは、まず事務局に異動がありまして、学術調査官にも交代があったと聞いておりますので、配付資料の確認と、ハイブリッド開催に当たっての注意事項とともに、事務局から御説明をお願いしたいと思います。

【佐々木参事官補佐】  事務局でございます。
 それでは、まず事務局を御紹介させていただきます。
 参事官(情報担当)の工藤でございます。

【工藤参事官】  工藤です。よろしくお願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  計算科学技術推進室長の河原でございます。

【河原計算科学技術推進室長】  河原です。よろしくお願いします。

【佐々木参事官補佐】  学術基盤整備室長の藤澤でございます。

【藤澤学術基盤整備室長】  藤澤でございます。よろしくお願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  参事官補佐の大鷲でございます。

【大鷲参事官補佐】  大鷲でございます。よろしくお願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  続きまして、新しい学術調査官を御紹介させていただきます。
 学術調査官の松林麻実子でございます。

【松林学術調査官】  松林でございます。よろしくお願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  ありがとうございます。
 それでは、議事次第に基づきまして配付資料を確認させていただきます。現地出席の方はお手元の配付資料を、またオンライン出席の方はダウンロードいただいている資料を御確認いただければと思います。
 議事資料にございますとおり、配付資料については、資料1-1、1-2、2-1から2-3までの5つと、参考資料が1から6まで6つございます。現地でお配りさせていただいている紙の資料につきましては、全て右肩に資料番号、日付を書かせていただいておりますので、そちらを御確認いただいて、何かございましたらお知らせいただければと思います。
 もし現時点でお困り事や不具合などがございましたらお知らせいただければと思いますが、いかがでしょうか。もし何かありましたら、現地出席の方は物理的に手を挙げていただきまして、オンライン出席の方は事務局まで、事前にお知らせさせていただいている電話番号宛て、お電話で御連絡をいただければと存じます。
 引き続き、ハイブリッド開催に当たっての注意事項を申し上げさせていただきます。
 まず、発言時を除き、常時ミュート(マイクオフ)にしていただければと存じます。これまでオンライン会議で情報委員会を開催させていただくに当たっては、ビデオもオフとさせていただいておりましたけれども、今回現地での様子、お越しいただいている顔も配信できるように、皆様、ビデオをオンにさせていただいておりますので、オンラインで御参加いただいている方につきましても、常時ビデオを開始(ビデオオン)にしていただければと存じます。
 現状特に問題はなさそうでございますけれども、もし今後会議中に通信状況が悪化するような場合には、主査、安浦先生を除いて、常時ビデオ停止(オフ)にしていただければと存じます。
 運営の都合上、大変恐縮ですけれども、現地出席の方も含めまして、何か御発言いただける場合は、タブレット端末で「手を挙げる」ボタンを押して御連絡いただければと思います。操作方法につきましては、お手元に写真を使った案内図をお配りさせていただいていますけれども、何かもし分からないなどございましたら、事務局までお知らせください。
 主査、安浦先生は、参加者一覧を常に開いておいていただきまして、手のアイコンを表示している委員を、現地、オンラインにかかわらず、随時御指名いただければと存じます。
 現地出席の方が御発言いただく場合には、この真ん中のスピーカーマイクで全て音を取っているところでございますので、大変恐縮ですけれども、向かいにいる方にも届くような大きさの声でお話しいただければ拾えるかと存じますので、少しふだんよりも大きめの声で御発言いただければと存じます。
 議事録作成のため速記者を入れておりますので、速記者のために、発言する際にはお名前から御発言いただければと存じます。
 トラブル発生時については、現地出席の方は、先ほども申し上げましたけれども、物理的に手を挙げていただければ、事務局から担当者が御用をお伺いに行かせていただきます。オンライン出席の方は電話で事務局に御連絡いただければと存じます。
 傍聴者はZoomで参加をしていただいております。
 以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございます。本格的なハイブリッド時代に突入したということでございますが、何か会議の進め方で御質問とかございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、情報委員会は4月から新しくJSTの中島委員をお迎えしておりますので、1分程度で御挨拶をいただければと思います。中島委員、よろしくお願いいたします。

【中島委員】  JSTの中島と申します。JSTでは、学術情報サービス、論文のプラットフォームのJ-STAGEですとか、研究者ディレクトリー、リサーチマップ、あと、それらの情報をつなぐ識別子のサービスの担当をして、運営しております。またその関係上、オープンアクセスを含みましたオープンサイエンス等にも携わっております。どうぞよろしくお願いいたします。

【安浦主査】  ありがとうございました。よろしくお願い申し上げます。前の後藤委員の後任ということになります。
 それでは、本日、まず報告案件としまして、AIPの進捗状況及び総合科学技術・イノベーション会議、CSTIによる中間評価についてということで、報告案件を用意しております。審議案件としましては、前回まで議論してきました、情報分野において今後実施すべき取組の進め方についてということで、後ほど御審議をお願いしたいと思います。
 それでは、初めに、AIPの進捗状況及び総合科学技術・イノベーション会議による中間評価について、資料1-1に基づきまして、事務局から御報告をお願いいたします。

【神部参事官補佐】  資料1-1に基づきまして、参事官補佐の神部より説明させていただきます。共有画面を資料1-1にしていただけますでしょうか。
 AIPプロジェクトに関しまして、3月にCSTIの中間評価を受けました。その御報告をさせていただくとともに、今後の対応について、皆様から御意見を頂戴したいと考えております。
 まず背景などを説明させていただきます。次のページを御覧ください。文部科学省のAIPプロジェクトの予算の資料をまとめたものでございます。AIPプロジェクトにつきましては、この資料にあります2つの内容でございますが、理研のAIPセンターにおける取組と、あとJSTにおける戦略創造の取組、この2つの柱で行っているところでございます。今回皆様に御説明させていただくのは、左の理研のAIPセンターの取組の内容です。こちらにつきまして、CSTIの中間評価を受けたところでございます。
 次のページをお願いします。まず理研のAIPセンターの取組ですが、令和2年の6月、文部科学省における研究及び開発に関する評価指針を踏まえて、必要性・有効性・効率性、この3つの観点で、この情報委員会で中間評価をしていただいているところでございます。また7月に研究計画・評価分科会にて、さらに評価内容決定としまして、事業は継続という形で評価をいただいているところでございます。
 またそのとき情報委員会におきましては、この資料の下のほうでございますが、新たなビジョンや戦略の構築、明確化への期待、日本全体のAI研究拠点としての発展の期待、戦略的なマネジメントへの期待など、様々な御意見をいただいたところでございます。参考資料3において、令和4年2月時点のご意見に対する取組の内容を整理しています。
 次のページを御覧いただきたいと思います。このように情報委員会において中間評価をいただいたところでございますが、CSTIにおきましても、大規模研究開発に該当するものについては事前評価を実施するとともに、その事前評価を受けたものにつきましては、中間評価を受けることとなっております。そのため令和4年2月から3月にかけて、理研AIPセンターの取組についてCSTIで中間評価を行ったところでございます。
 一方、CSTIの中間評価につきましては、令和3年12月20日のCSTI評価専門調査会にて、その運用が改訂されたところでございます。このCSTIの中間評価におきましては、実施府省の中間評価の結果等を活用して行う、つまり各省において実施した評価をCSTIにて評価する、メタ評価を行うという方法で簡略化されることになりました。今回、理研AIPセンターの取組は、この改訂された形で行われる初めての評価対象となっております。
 令和4年3月にCSTI本会議にて、その評価内容が確定されたところでございます。この3つ目のポツの太字で書いてあるところでございますが、全体として「適切な体制で評価が実施されており妥当」であるといった評価になっております。
 一方で、この評価基準に対して客観的な評価がなされているかについては、やや不明な点があるというコメントもいただいております。さらにその具体的な指摘事項とともに、今後の評価の改善に向けた対応とその報告を、またCSTIに対して行うことが求められているところでございます。
 このCSTIの指摘事項をより具体的にまとめているものが、次のページにあります。5ページ目を御覧ください。左側がCSTIにおける指摘事項となっております。大きく分けて4つございます。
 1つは、この評価というのは情報委員会における中間評価です。情報委員会における中間評価において様々な指摘がなされておりますが、その対応状況について、この情報委員会との対話を行って戦略的に取り組んでいくことが必要であるといったことが、述べられております。
 さらにその中間評価における指摘事項の中で、新たな戦略やビジョンの明確化というものが期待されておりまして、それに即して具体的な指標の策定や定量的な評価も行っていくべきであるといった御指摘もいただいております。
 また、上位施策との関係性を整理した上で、理研AIPセンター全体としての上位施策への貢献についての進捗、また日本のAI研究開発分野全体への発展への貢献など、理研AIPセンターが、AIPセンターの活動にとどまらず、日本全体にどういう貢献をしているのか、そういったところも明らかにしていくべきであるといった御指摘もいただいております。
 さらに4つ目ですが、この事前評価というのはCSTIの事前評価です。CSTIの事前評価において指摘された事項、他省庁との連携などでございますか、こちらについても改めて評価されるべき。大きく分けてこういった4つの指摘をいただいたところでございます。
 こちらにつきましてどういった対応をしていくかというところを、右側の赤字で記載しているところでございます。これはいろいろ書いておりますが、結果的にはそれぞれの指摘事項について、我々は改めて検討させていただきますということを述べるとともに、情報委員会で行った評価に対して、今回CSTIで指摘を受けておりますので、情報委員会の皆様ともしっかり議論した上で、この対応について考えていくべきであると、そういったことを回答させていただいております。
 この内容を踏まえまして、文科省としましては、CSTIの評価専門調査会に、またその対応を検討した結果を報告することが求められております。一方我々としては、CSTIへの対応、回答ももちろんそうなのですが、AIPプロジェクト自体が2025年度までと、もう後半に近づいておりますので、こういった機会を踏まえまして、皆様からも今後の取組について、どういった戦略性、目的、ビジョンを持ってやっていくべきなのかといったところの御意見いただくのは、非常に有益でないかと考えているところでございます。
 以上を踏まえまして、今日、皆様から御議論いただきたいというところを6ページ、次のページでございますが、まとめております。
 まず、論点①としまして、この後理研AIPセンターから、現状、今後のビジョンについて御説明をいただく予定となっておりますが、それを踏まえまして、AIPセンターの今後の我が国のAI研究開発の貢献への期待、さらに戦略や方向性について御意見を頂戴できればと考えております。
 また、論点②としまして、政策評価における評価指標につきまして新たに検討していくことも求められております。後ほどちょっと補足させていただきますが、事務局でも、今の評価指標に加えてこういうのが考えられるのではないか、そういった追加案も考えておりますので、それも踏まえながら、委員の皆様からも、こういった指標が考えられるのではないかといった御意見を頂戴できればと考えております。
 本日は特にこの論点①のところを、皆様から御意見をいただいた上で、指標のところももちろんアイデアなどあれば、ぜひお聞かせいただきたいと思っておりますが、ここはちょっと細かいところでもありますので、もし今日具体的なところがなければ、後日メールなどでいただくのもあり得るかというふうには考えております。
 以上が全体の内容でございますが、簡単に、今の事務局で整理しているところを少し補足させていただければと思いますので、7ページ目を御覧ください。まずAIPプロジェクトと上位施策との関係性につきましてまとめたものでございますが、まず上位にございますのは、やはり第6期科学技術・イノベーション基本計画となっております。
 その下に、この左側でございますが、まずは統合イノベーション戦略というもので、毎年度更新しているものでございますが、政府横断的に戦略を考えているところでございます。さらに、その下に基づきまして分野ごとの戦略として、AI戦略がございます。このAI戦略に基づきまして、理研AIPセンターとしても取り組んでいるといった関係性になっております。一方で右側のほうでございますが、文部科学省として、この基本計画にどういうふうに対応していくのかといった評価体系もございまして、こちらは文部科学省の独自の評価体系でも整理しているところでございます。
 大きく分けまして理研AIPセンターの取組というのは、こういった戦略に対応する取組と、あと文部科学省の政策評価体系の2つで評価を受けていますといった状況になっております。
 続きまして、8ページでございます。特にこの上位施策の中で、AI戦略は非常に関わりが強いところでございますが、理研AIPセンターは、AIに関する理論研究を中心とした革新的な基盤技術の研究開発で、特にその活躍というものが期待されているところでございます。
 それを踏まえまして、大きく真ん中でございますが、2つの柱でこのAI戦略に対しては貢献を進めているところでございます。
 1つは革新的な基盤技術の研究開発。ここに具体的なものを書いてございますが、汎用グループ、応用グループ、社会グループ、それぞれの取組で成果を出しているところでございます。
 2つ目でございまして、国際的なプレゼンスの拡大といったところで、グローバルなネットワークの形成であったり、海外研究者の招聘、連携、さらには国内に閉じない視点でのAI研究開発を進めていくこと、あとはインパクトのある成果の創出で国際的なリーダーシップを発揮していくこと、こういったことを進めているところでございます。
 また、下のほうに参考でございますが、産総研、NICTさんといった、ほかの研究機関とも連携を進めているところでございます。
 続きまして、9ページでございます。政策評価の指標について現状をまとめたものでございます。ここに書いてあるものは、現在使っている指標をまとめたものでございます。一応こちらは参考として表示させていただいているところでございます。
 次のページを御覧ください。10ページ目が、これはあくまで事務局で考えたものですが、追加で例えばこういった指標が考えられるのではないかといったものでございます。国際的なプレゼンスといったものが求められていますので、上のほうは代表的な世界トップレベルの国際会議での採択数をまとめております。
 さらにこの研究開発への貢献という意味では、人材育成というのも非常に重要になってきておりますので、そういったものも指標としては考えられるのではないかといったことでまとめているのが後半のほうでございます。
 そのほか、下のほうに書いてございますが、例えば受賞者数とかプレスリリース数とか、そういったものもあり得るのではないかとは考えております。
 以上、事務局からの補足でございますが、さきにも述べましたように、この論点①、②につきまして、本日御意見を頂戴できればと思っております。
 以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございました。このAIPの情報委員会での中間評価につきましては、途中委員の交代等もありましたので、今回初めてお聞きになる方もおありかと思います。評価はもう1年以上前にやったわけでございますので、それから随分変わっていることもあると思いますし、それからこのコロナで、特に海外との交流といった点は非常に大きな影響を受けているのではないかと推察されます。
 そういうこともございますので、今のAIPの状況につきまして、センター長の杉山先生にお越しいただきまして、杉山先生のほうから現状を少し御紹介いただいて、我々と情報共有させていただきたいということで、本日お越しいただいておりますので、杉山先生のほうから、AIPセンターの概要及び進捗状況につきまして、資料1-2に基づいて御説明をお願いしたいと思います。杉山先生、よろしくお願いします。

【杉山センター長】  皆さん、こんにちは。ただいま御紹介いただきました杉山です。本日はこのような機会を持てることを大変うれしく思っております。オンラインでは1,000人の前で講演することはよくありますが、対面で10人以上の前で講演するのは2年ぶりじゃないかというような感じがしています。
 まず最初に私のほうから、AIPセンター全体の御紹介をざっとさせていただきます。今、神部さんからも大分紹介いただきましたので、一部省略しながらいきたいと思います。今、既に御紹介いただきましたように、我々理研のAIPセンターとJSTのAIPネットワークラボと一体的にプロジェクトを運営するということでやっておりまして、例えば去年の12月にAIPネットワークラボと合同でイベントをやったりということもしておりますし、当然研究者同士では、かなり密につながってやらせていただいています。
 それに加えまして、内閣府のAI戦略2022におけるAI関連中核センターの一つということで、産総研の人工知能研究センターでNICTのUCRIとCiNetと連携してやっていくということで、これも去年の秋にイベントで、みんなで講演するといったことをしたりとか、あと、今後人材育成とかも一緒にぜひできればなと思っています。当然ながら研究者同士はやっぱりつながって、ボトムアップで研究はさせていただいています。
 AIPセンターそのものでございますが、機械学習の技術を軸足に、基礎から応用・社会まで一気通貫の研究体制を敷いて、産学官で連携し、研究成果を国際的に発信しています。そして国際的な高度AI人材の登竜門となるようなセンターを目指すということで活動しております。
 AIPセンターの研究ビジョンでございますが、今、AIPは常設の研究グループが3つございまして、この後3グループそれぞれ説明させていただきますが、汎用基盤技術研究グループ、目的指向基盤技術研究グループ、社会における人工知能研究グループの3つがございます。
 現在常勤の研究員が130名おりまして、3割強が外国人、2割強が女性ということで、かなり多様性が高まっております。客員研究員が200名強、学生が100名程度、海外のインターン生が、コロナの間はちょっと止まっていますが、これまで累計で142名受け入れております。共同研究、会社が46社、海外の連携が48組織ということで、いろんなネットワークをつくって活動しております。
 このセンターの研究の運営ビジョンなんですが、歴史的には1990年頃、いわゆる統計的学習の技術が大きく花開きました。そして2000年代に入りまして、いわゆるGAFAといった企業が、そういった機械学習の技術を使って大きく世界的に活躍するという状況になりました。その後、皆さん御存じのように2010年代に入りまして、いわゆるディープラーニングの時代がやってきまして、技術的に大きなブレークスルーがございました。
 AIPがスタートしたのは2016年度でございましたので、そのときの技術を軸足に、目的グループ、社会グループと、あと参加していただいた企業と連携しながら、Society 5.0の実現に向けて、ビッグデータを活用したビジネスサイエンスを実現していこうということで、最初のゴールを目指して活動しております。
 それに加えまして、近い将来を見据えて、情報があまり取れないような場面でも活用できるような限定情報の機械学習の技術を近未来につくっていって、それを基に、未来のAI社会をデザインしていこうということで、AIPセンター全員でこういった活動に取り組んでおります。
 組織図としては、3つのグループにいろいろチームがくっついておりますが、最近少し変わったのが、一番左の汎用グループのチーム数がちょっと減っているんですが、これはテーマがいろいろと皆さん拡大していって、オーバーラップも出てきたということで、少し再編しまして、正確には合併して、少しチーム数を減らして運営の効率を上げるということをしております。
 3グループの連携として、例えば3つの柱を考えたときに、信頼性の高い次世代のAI基盤技術の理論構築から社会実装までを行うということで、柱1の部分は青い部分、汎用グループが技術を開発して、そしてそれを基に、目的グループが中心となって社会課題の応用に即した技術をつくっていき、そして最後、社会グループが中心となって、説明可能なAIの評価、あるいはAI利活用の指針の提言といったことを行っていくという形で、理研のほかのセンターとも連携しながら、さらには先ほどの産総研やNICTなど、ほかの大学とも連携しながらやっていくということで活動しております。
 海外でも幅広く共同研究を行ったり、イベントを行ったりしているんですが、この2年間、フィジカルにコンタクトを取ることがなかなか難しくなりましたので、オンラインベースでコミュニケーションを取っているケースが多いんですが、研究そのものはオンラインでも遠隔でもできることが多いですので、続いてはいるんですが、なかなか新しい若手メンバーを発掘したりというような活動が、この2年間止まってしまっておりまして、今年度何とかそれを再開しようということで、取りあえず、今年の9月に何かできないかということで、幾つか準備はしているんですが、ちょっとまだ物理的に人をたくさん呼んでやるのは難しいかなということで、それはまた来年3月ぐらいに先延ばしながら、今年の夏はオンラインでまたイベントをやっていこうということで計画しております。
 AIPの研究を進めるために、RAIDENというディープラーニング用のGPUのクラスターをつくっておりますが、昨年度も少し予算を頂いてアップグレードしまして、現在半精度で72ペタフロップスの性能を誇っております。ふだんこのマシンは稼働率が80%になるように調整していまして、残り20%は、突然新しいアイデアを思いついて研究したいという若手研究者がたくさんいますので、そういった人たちが急に使えるようにということで、20%残したまま運用していくということで、安定して稼働できております。
 オンラインのセミナーを今活発にやっておりまして、ほぼ全ての講演動画をYouTubeで公開しています。例えば2020年後半から、AIPの全チームが1回1日2時間ずつぐらいで、全43回、1年近くかけてオンラインセミナーをやったんですが、毎回毎回、国際的に100名以上の参加者に来ていただきまして、全チームのビデオがYouTubeに上がっております。
 また、EPFLが今新しい機械学習、AIのグループができていまして、たくさん優秀な研究者がいらっしゃるんですが、そこともともとはMOUを結んで合同でイベントをやって、人材交流を深めていこうということで、コロナ前に準備していたんですが、それがストップしてしまったので、何とかしようということで、まずオンラインでセミナーを始めようということで、去年の秋から毎月1回、2回ぐらいのペースで続けていまして、今もう15回ぐらい、ちょうど先週やったところですが、今年の夏までそれを続けて、本当は夏にみんなでスイスに行ってイベントをやろうと思っていたんですが、ちょっとそれも今凍結状態ですので、9月にはオンラインでまたイベントをやろうということで、若手研究者の交流の会を今考えております。
 あと、AIPのほうでは若手の研究員が中心となって、信頼できる機械学習に関する、本当に最先端の研究をしているドクターの学生とか、ポスドクぐらいの人をどんどん呼んで講演してもらおうということで、今年の1月から始めたばかりなんですが、既にもう30人ぐらいの研究者に毎週のように講演してもらっていまして、これらもネットで全て公開していまして、毎回毎回、結構100人近くの参加者が集まっております。
 業績を9ページにまとめましたが、先ほど既に示していただきましたが、AIPが始まる以前、この人工知能分野は、広い意味で日本から主要国際会議の論文は1桁ぐらいという状況で、オーラル発表など高いグレードのものはほとんどないというのが2015年以前でございましたが、近年を見ますと、左下にありますように、CVPR9件とか、ICLRもオーラルが1件あったり、NeurIPSのspotlightが1件あったり、ACLはlongが4件あったりと、いろんな主要な会議で、数も増えましたし、そういう高いグレードではアクセプトされる数も増えてきていますので、そういった意味では、数字ではありますが、実力としても自力がついてきたかなというふうに感じています。
 右側に受賞もいろいろ書かせていただきましたが、国内でもいろんな賞をいただいていますが、トップレベルの国際会議でのベストペーパー、あるいはOutstanding Paper Honorable Mentionといったものが幾つか取れるようになってきましたので、かなり優秀な研究者が何名か育ってきたというふうに考えております。
 今後の展望でございますが、各グループのそれぞれの研究を深めていくというのは、引き続きやっていかないといけないと思いますので、ここに書いてあるようなことを続けていきたいと思っております。
 それに加えまして、これからは各グループの発展だけではなくて、3グループをしっかり融合していこうということで、今年度から、また実は新しく内部のセミナーをこれから始めるところなんですが、新しい機械学習技術に基づいた社会応用であったりとか、あるいは社会的要請を考慮した機械学習の理論であったり、社会応用であったりといったものを検討していく活動を深めていこうと思っております。
 あとは新学問分野を創出するということで、英語で専門書を出したりとか、国際的なチュートリアルをしたりといった形で、我々がこの分野をリードしているんだということを国際的にアピールしていこうという活動も、これからさらにやっていきたいと思います。
 あと、人材育成がやっぱり非常に世界中で今難しくなっているところなんですが、例えば国際ワークショップを我々が主催して、若手研究者を集めてうまく議論してもらうというようなことをやることによって、我々が研究拠点として主要な位置にいるので、ぜひ皆さん来てくださいということで、登竜門となれるような活動をしていきたいと思っております。
 ちょっと駆け足になりましたが、全体のオーバービューは以上のような状況でして、ここから3グループのもうちょっと具体的な研究についてお話しさせていただきたいと思います。
 まず一番最初、汎用基盤技術研究グループは私がグループディレクターを兼ねていますので、引き続き私のほうから汎用グループの研究について御紹介させていただきます。
 汎用グループは、基礎の理論研究、アルゴリズム開発をしておりますが、この分野で国際的なイニシアチブを取っていこうということで、ただ単に論文を書くだけではなくて、学問分野をつくって、国際的なリーダーを目指していこうということで、野心的に活動しております。
 メンバーとしましては、基礎の数理をやっているメンバーと、学習・最適化の理論構築をしているメンバーと、あとは具体的なアルゴリズムを開発するメンバーが主に所属していまして、この3つが入り組みながら研究を進めております。
 具体的な課題としましてはいろいろございますが、高信頼学習とか、因果推論とか、仮説検定、類似検索、深層学習の理論、非凸最適化の理論、それから最適輸送や構造データの基礎理論、こういったものに主に取り組んでおります。今日はこの中で幾つか主要なものをざっと御紹介できればと思います。
 まず一番最初、深層学習の理論でございますが、申し上げるまでもなく、いろんなところで深層学習がうまくいっているということが報告されていますが、理論的に本当になぜうまくいくのかというのは、まだよく分かっていないところがたくさんございます。
 特に2016年の段階では、まだほとんど分かっていなかったというところですが、それから5年、6年理論研究を積み上げていまして、この分野は業界でも一番ある意味ホットな分野で、すごくたくさん論文が集まっているところなんですが、そこでICLRというトップの会議で、Outstanding Paperというベストペーパー賞をもらえるような成果が得られまして、この論文では、深層学習の汎化能力を理論的に解析すると、浅い学習、層が2層以下のモデルを使う場合よりも、本当に性能が優れるということを理論的に保証しました。ですので、ある意味安心してディープラーニングが使えるということをちゃんと証明した、非常に重要な結果となっております。
 あるいは、今までの浅い学習ですと、入力の次元が上がると次元の呪いにかかるというような言い方をしましたが、次元が上がっていくと学習の難しさが指数関数的に上がっていってしまうので、高次元のデータからはほぼ学習できないと思われていたんですが、実はディープラーニングは次元の呪いを受けないという驚きの結果を理論的に証明しました。これもNeurIPSのspotlightに選ばれておりまして、あと、こういう話は皆さんも御存じかもしれませんが、非凸最適化で、谷がたくさんあるような最適化問題で一番深い谷を見つけるのは、一般には簡単ではないわけなんですが、ディープラーニングではそういうことを実はやっていることになっているんですが、これが本当にできているということを、高い確率でという言い方が正しいのか、証明しました。
 実際には勾配法、アルゴリズム上は離散時間で実装するんですが、数学的には連続時間のモデル、微分方程式と設定いたしまして、あと、勾配に雑音を乗せるというのが実は重要なんですが、雑音を乗せてプロセスを解析してやると、高い確率で一番深い谷にちゃんと収束するということが理論的に保証できました。こういった大変興味深い結果が得られております。
 次、最適化の理論です。右側にちょっと最適化問題を書いたんですが、これはある上位の最適化問題を解いて、その答えを使って下位の最適化問題を解くというようなことをすることが、機械学習の分野、あるいはいろんなオペレーションリサーチの分野等でございます。機械学習では、いわゆるハイパーパラメータのチューニングであったりとか、あるいは最近機械学習のシステムを攻撃してくる人がいて、そこからどう守るかという議論があったりしますが、設計者と攻撃者と操業者の3人、3レベルの最適化問題になったりとかもあります。
 この多レベルの最適化を解析というのは、実は歴史的に難問として知られていまして、オペレーションリサーチの面で、40年ぐらいずっと未解決の問題だったんですが、今回初めて微分不可能な2レベルの最適化問題をちゃんと解ける、理論保証を持って解けるアルゴリズムを開発することに成功しました。これは歴史的な難問に初めてポジティブな答えを与えたという、非常に大きな成果になっております。
 また一般の多レベル、3レベル以上の多レベルの最適化に関しても、漸近的ではあるんですが、理論保証つきの解法を初めてつくったということで、これもこの分野で大きく注目される成果を上げることができました。
 続きまして、ロバストな学習法ということで、雑音を含んだデータからの学習という話を、昔からあらゆる方が研究されているテーマだと思うんですが、皆さんがイメージするような、雑音の乗った情報で直線をフィットするような、こういう問題ですと、雑音があってもたくさんデータがあれば大丈夫ということが理論保証できるんですが、実は分類問題ではそうはいかないんですね。
 右側に分類問題の絵を描いているんですが、クラスのラベルが反転するような問題では、実は幾らデータを増やしても正しく学習できないということが証明できますので、ちゃんと明示的に雑音を除去する機構が必要となります。
 今までいろんな研究があったんですが、ちゃんと保証できるものはなかったんですが、今回ある意味きちんと理論保証をもって、雑音に対処できる新しい方法論、学術体系、理論体系をつくることができまして、これはどんどん今発展していまして、さらに入力点の場所によって雑音の在り方が変わるような非常に現実的な問題に対しても、実用的な解を与えることに成功していまして、いろんな論文が出ているところです。
 これは最後、私のところなんですが、弱い教師情報から学習するという話をずっとやってきておりまして、今のディープラーニングで一番の弱点は、ちゃんと正しいラベル、教師情報がついたデータ、ビッグデータを集める必要があるということですが、医療の問題であったりとか、自然災害の問題であったりといったところでは、なかなか教師情報は簡単に取れないということで、何とか容易に収集できる弱い教師情報を活用しようということで、理論構築をずっと行ってまいりました。
 いろいろな弱教師つきの2クラスの問題とか多クラスの問題に対する解法を考えてきまして、それらをある意味統一する汎用的な学習理論を遂につくることができまして、これをまとめた専門書、英語で書いたんですが、300ページ以上あるんですが、これが本当は去年の秋ぐらいに出ているはずだったんですが、ちょっとコロナで印刷が遅れていまして、今年の夏ぐらいにどうやらなるようなんですが、もう1年前に完成はしていまして、これから世に出ることになっていますので、一応この分野で一つ足跡を残すことができたと考えております。
 その他、仮説検定、因果推論、無限次元の関数空間の理論、さらには継続学習といったところでも、今新しい成果が表れつつありますので、また次回、皆さんの前でもしお話しする機会をいただけるときがありましたら、この辺の最新の成果をぜひ御紹介できればと思います。
 最後になりますが、今後としまして、これまでどおり、やっぱり機械学習の理論、最適化の理論に関しては、もっともっと深めていきたいと思っております。そしてそこで得られた知見を生かして、ロバストな学習、弱教師付き学習、継続学習、因果推論、こういった分野に革新的な技術をつくっていくという研究をしたいと思っております。
 これをちゃんと、ただ論文を書くだけではなくて、チュートリアルを実施したり、本を書いたりということで、学問分野としてきっちり完成させるというところを、一つのマイルストーンとしたいと思っております。
 さらに分野でリーダーシップを発揮するために、国際的なワークショップを主催したり、あるいは拠点として人材育成、リーダーシップを持った活動を行うことによって、いい学生が我々のところに来て、研究して巣立っていく、そういう循環ができるようなセンターに育てていきたいというふうに思っております。
 以上、汎用グループの説明はここで終了しまして、次、目的グループのグループディレクターをしております上田より御説明させていただきます。上田さん、大丈夫ですか。お願いします。

【上田副センター長】  それでは説明させていただきます。
 目的指向基盤技術研究グループの目標としましては、AI技術によってサイエンスを加速すること、そしてAI技術によって社会的課題を解決することとしております。
 目的指向グループでは、論文を書くというようなアカデミアの貢献も重要ですけれども、それにとどまらず、社会実装を最終アウトカムとするということで、目標を再設定しております。
 次、お願いします。中間評価の際、チームが20ぐらいあったときに、ややオムニバスで焦点が弱いというような御指摘も受けまして、チームは17に減らし、さらに分野を、この掲載しています5つの分野に今後4年間で重点化いたします。サイエンスの加速に関しては、医療診断、新材料発見で、これは我が国が得意とする分野であって、これからますます増強しなければいけない分野でありますので、そこをAIで強化するということ、社会課題解決に関しては、防災・減災、それから高齢者福祉、教育、こういう分野に関して重点化するように、チーム全体をまとめております。
 次、お願いします。まず順番に説明いたしますけれども、最初、これはiPS細胞研究所との連携でございまして、認知症の大半を占めるアルツハイマー病で重要なのは、脳内のアミロイドβが蓄積するのか、しないのかということを、まだ発症する前に予測することで、今回その予測技術を開発しました。そして昨年この技術をベースとしたベンチャー企業を立ち上げました。詳しいことは時間の関係上、今日は省略しますけれども、内容だけを御説明します。
 これはある病院との連携での研究です。実はエキスパートでも心臓というのは動いていますので、動いている状態で3次元CT画像から血管を検出してアノテーションしていく作業は30分以上かかるそうです。それに対して、AIPで開発したコンピュータービジョンの技術を援用して、3次元の動いているCT画像から、血管の検出とリスク部位、この図の赤い部分が閉塞している血管だということを自動的に判定するシステムを開発しています。これも当該病院で実用化に向けて検討中でございます。
 右にあるのは、これはNature Communicationsでかなりサイテーションのあった成果で、前立腺がんの術後再発診断技術です。中間評価でも御報告しましたけれども、今後この技術を膵がんの早期診断に応用する予定です。膵がんというのは御存じのように、発見したときにはほとんど末期ですので、5年生存率は数%程度しかないということで、早期診断が非常に重要になります。本研究は、ムーンショットのプロジェクトで展開しております。
 それからこれは内視鏡での大腸がんの自動診断技術です。これも某企業を通して実運用に向けて検討中です。本技術は、特定の内視鏡ハードウェアに依存しないソフトウエアなので、いろんなシステムに利用可能というのが特長です。
 それから、昨今コロナ禍ということもあって、鬱病の患者さんが増大しているようですが、鬱病は残念ながら現在では客観的な診断ができないという状況です。それに対して、この研究はATRとの連携でございますけれども、MRIの画像から脳内の状況を解析して、鬱病の客観的診断をする脳回路マーカーの研究です。本成果は論文発表しております。
 次、お願いします。これは認知症に関し、境界領域にある認知症の方を健全に戻すというような取組で、共想法に立脚した、この図のような会話支援システムを構築しております。これは何かといいますと、対話ロボットがMCになって、それぞれの人たちが持ち合わせたトピックに対して参加者の会話を促します。
 もちろんある人ばかりがしゃべって、ある人が全然しゃべれないという状況はよくないので、このMCはその辺をうまく調整します。共想法での司会は本来は人間がするのですが、人間が司会をすると人間関係に支障が出たりするので、ロボットの会話技術を使っています。
 実際にこれは、コロナ以前には倫理審査等を実施し、施設でシステムを構築して、実験を検証していました。ところがコロナになってそれができなくなったので、急遽在宅でもできるようなシステムも構築しました。
 次、お願いします。さらにそれが本当に認知度改善に効いているのかというようなことの論文を発表しているんですけれども、これはどういう観点でそういう評価をしたかといいますと、しゃべるだけでは本当に認知症が改善できたかどうか分からない。つまり同じような言葉、同じような単語ばかりを発していたのでは意味がないので、どれだけ語彙が増えているのか、語彙流暢性ということで、実際に脳の部位の活動度だとか、その語彙の流暢性がコントロール群に対して有意かどうかを実験データ上で検証して、その結果を論文発表しているというような状況でございます。
 次、お願いします。次は防災・減災というところですけれども、一番左の上、これは理研のRCCS、それから東大の地震研との連携でございますが、富岳のコンピューターを使って、大都市の地震動のシミュレーションに関する研究でございます。地震シミュレーションそのものは以前からありますが、ここでは、シミュレーションするだけではなくて、シミュレーション結果を学習データにして、効率的な学習をするような新しいアプローチです。。
 地震動に関してはほかにもいろいろありますけれども、本日は時間の関係で省略します。
 これは防災科研が、1996年の6月に開始した、全国で1,000か所以上ある観測点での地震動を計測しているデータベースで、K-NETと呼ばれています。防災科研では、このデータベースをさらに充実させて新しい強振動予測モデルを構築しています。その一環で、我々はAI技術に基づく様々な要素技術を提供しています。これに関しても多数技術がありますけど、本日は説明を省略させていただきます。
 もう一つは気象庁との連携です。現在の天気予報は、気象庁が保有するスーパーコンピューターで3つの時空間解像度の異なるモデルであるGSM、MSM、LFMの予測結果の単純平均で天気予報がなされます。それに対して3つの数値モデルの統合法を検討し、現在の気象庁の推計統計データ結果よりもよい精度の結果が出ており、実運用に向けてさらに精度改善中です。
 もう一つは台風の激化予測です。現在、気象庁では、欧米が開発したSHIPSという回帰モデルを改良した技術を運用しています。我々の方では特殊なニューラルネットワークを考案し、SHIPSの特徴量も使いながら、さらに精度を上げる技術を開発しています。これに関しても、現在気象庁の方で実運用に向けて検討中でございます。
 もう一つは高精細な高速圧縮のスペクトルイメージングで、これは何に使うかといいますと、災害が起こったときに大事なことは、早い段階で被害状況を把握することですが、実際災害現場は非常に危険ですので、人間が現地に行くということはなかなか難しいので、衛星画像から観測することで、どこがどういうような被害を受けているのか、山崩れでは、どのあたりがどれくらいの被害か、津波ではどの程度浸水しているのかということを高速に観測できるような装置も開発しております。
 次、お願いします。最後、教育ですけれども、教育も日本においては、特に小学校、中学校で、このITを使った教育というのが非常に重要視されております。この研究は、一言で言えばAI版の赤ペン先生をつくることです。つまり教育というのは最終的には、今で言ういわゆるレアな、非常に飛び抜けた人、個性のある人、そういう人たちを育てるというのが、人口の少ない日本における教育の在り方なんですけれども、現実には、例えば記述式の問題だとか、レポートを提出したときに、先生がそれらの採点に非常に負荷がかかって、本来やるべき教育というものができない状況にあると伺っています。
 それに対して、このAI技術はレポートなどを自動採点することができます。しかも重要なことは、単に点数をつけるだけだったらあまり意味がなく、なぜその点になったかということを説明できるような自動採点システムです。これは実際には代々木ゼミナールから問題集という形で実用化しています。今年度はそれをさらに利用拡大すると聞いていますし、他企業でも本技術の導入を協議していただいております。
 また、文科省のMEXCBTでの導入もコンソーシアムでいろいろ議論しているところでありまして、この教育に関してもAI技術開発に積極的に取り込むべく、革新的な要素技術を検討、研究しているところでございます。
 次、お願いします。記述的問題の自動採点をもう少し説明しますと、このグラフに示すように、本技術の精度は、学習データを増やすことで、人手による採点とほぼ同等ぐらいのレベルになっています。繰り返しになりますけど大事なことは、その採点の根拠です。こうこうこういうところが抜けているから減点ですよというところまで、きちんと人間が分かる形で提示していくような技術になっております。
 次、お願いします。ちょっと時間の関係上駆け足になっておりますけれども、以上まとめますと、サイエンスの加速に関して、医療診断、新材料発見。本日は時間の関係で、新材料発見に関しては御説明を省略いたしましたけれども、これもNIMSが持っていますいろんな新材料のデータベースを自然言語処理技術を援用して、より有効なツールにするための研究開発を行っています。
 社会課題解決に関しては御案内のとおり、防災・減災、高齢者福祉というところに重点化するというようなことで、繰り返しになりますけれども、最終的には、最終年度には社会実装が実現できるよう研究開発を進めてまいるところでございます。
 以上でございます。

【橋田グループディレクター】  では、社会における人工知能研究グループの御紹介をいたします。グループディレクターの橋田です。
 うちのグループはこの3つぐらいのクラスターから成っておりまして、セキュリティとかプライバシーとかいうことをやるところと、それから倫理とかガバナンスとかコンプライアンスとかいうところと、社会の分析と社会実装という3つぐらいで、私はその全部に関わっているという感じです。グループのミッションは、AIそのものの研究開発も少しやりますけれども、それよりはむしろAIと社会との関係を解明する、改善するという話とか、AIの開発・導入・運用のための社会基盤をつくるというようなあたりです。
 研究テーマは先ほどの3つのクラスターに対応しておりまして、倫理とガバナンス、それから安全性とかプライバシーとかというところ、それと社会の分析と社会実装という3つの柱があります。
 具体的な成果を少しピックアップして御紹介します。これは私のところですけれども、この絵のようなPLRというソフトウエアライブラリーを開発しております。個人のアプリとか事業所のアプリに組み込まれて使われます。これによってパーソナルデータを本人が名寄せしてフル活用することができます。フル活用というのは、自分に専属のパーソナルAIで自分のために自分のデータを使うということもありますし、機械学習などのために人がデータを集めるときに提供する、2次利用に協力するという意味でもフル活用できるということです。
 PLRクラウドの各領域はそれぞれのユーザーが管理しますので、アプリとかサービスの提供事業者にはクラウドの運営経費はかかりません。したがって、この仕組み全体は数十億人の利用者に簡単にスケールするという、非常に安価でスケーラブルな仕組みです。
 それから、グーグルドライブとかワンドライブのようなパブリッククラウドを使いますので、1秒間に可能なAPIコールが2回ちょっとぐらいとかいう制限がありますけれども、1秒間に1往復のやり取りができれば、人間の共同作業のほとんど、つまり業務システムとかSNSのようなユースケースはこの上に全部乗せることができるわけです。ということで、非常に一般的な情報インフラになり得るというものです。既に実用化しているユースケースもありますし、幾つか実証実験にかかるものもあります。
 実用化しているのは、埼玉県の教育局と連携して電子調査書をやっています。おととしの秋から運用していますけれども、県立高校の生徒が、PLRのアプリで自分の課外活動、つまり部活とか生徒会とか、甲子園で2回戦行きましたみたいな記録をつくって、それを自分で管理して、県が運用するこのシステムと連携して、担任の先生が調査書つまり内申書とか推薦状をつくるときにそのデータを使うという運用が既になされています。
 今実証実験を控えている案件は主に2つありまして、兵庫の市立伊丹病院で、電子母子手帳を運用したいということで、産科のデータと小児科のデータを母親、保護者のPLRのアプリに提供して、それを看護師による健康相談とか、あるいは予防接種の通知に使うということを考えています。
 熊本県の荒尾市で、乳幼児健診のデータのスキーマに合わせて、こういう入力インターフェースが自動生成できていまして、それを来月あたりから実証実験にかかって実運用に移ろうということを考えています。
 このデータのスキーマは全国共通ですので、うまくいけばこれは全国展開できると考えています。
 これは別のチームですけれども、科学技術と社会ということで、2つここに御紹介していますが、上はISOの国際標準化で、AIを含むいろんなソフトウエアの利用時の品質に関する標準をつくるという一連の活動に大きく貢献して、経済産業大臣賞をいただいています。直接のユーザーだけではなくて、ユーザーが事業者だとすれば、その顧客とか、あるいは関連する社会全体に対する影響を全部包括的に考えて、利用時の品質をモデル化しようという、最近四、五年ぐらいのトレンドを定式化したものです。
 下の話は、日本の浮世絵とかをいろいろ見てみると、母子が同じ第三者を見ているという図柄が多いわけです。ロボットとの関係も、人間とロボットが何か同じ第三者を見ているというものが多いんですけど、西洋の母子像とかロボットと人間の写真とかを見ると、そうではなくて、両方ともこっちを見るとかてんでんばらばらだとか、あるいは向き合っているという感じになっていて、日本の母子の関係とロボットと人間の関係は、ともに第三者に対するようなコンパニオンというか、友達のような位置づけになっているという観点をさらに分析すると、ロボット、AIの活用に関して、日本から発信できることがあるのではないかという研究を進めています。
 これは日本公認会計士協会との共同研究で、AIと職業、特に公認会計士の職業がAIによってどういう影響を受けるかということを分析した話ですけれども、FreyとOsborneの研究で、AIによって仕事がなくなるという話が出ていますが、特に公認会計士みたいなのがやり玉に上がっているので、それを見た人たちが公認会計士試験を受けなくなっていて、結構人手不足になっちゃっているということがありまして、これはまずいということで、ちゃんと真面目に調べたという話です。
 会計主査と補助者の業務を10種類に分けて、それぞれのAIによる代替可能性を評定する。さらにそれぞれの業務の昇進等における評価について調べてみると、30年後もほとんどの職務の代替可能性は、Freyたちの予想よりもはるかに低いということが分かりました。代替可能性の低い業務ほど評価が高くて、それはクライアントとの調整を含むような業務であるわけですが、そういう仕事はちゃんと残ります。ほかの仕事もAIの導入によって生産性が高まるというわけですので、どんどん公認会計士を受験して大丈夫ですよという話になるわけです。
 これはもう少し技術的な研究で、画像分類の結果をAI自身が発見した記号的な概念で説明することができますよという話です。この例題ですと、このEという文字がどうしてEなのかということです。もし下に線がなければFなんだけど、あるからEだと。中に線がなければCなんだけど、あるからEだと。右側に線があればBなんだけど、ないのでEだというふうに記号的に説明できるという技術です。
 これを今、悪性リンパ腫の病理診断に応用しようとして、センター内のほかのチーム、それから久留米大学の医学部などと研究を進めているところで、この図のような幾つかのユースケースが予測される成果ということで、進行中の話です。
 幾つか具体的な研究テーマの話をしましたが、将来のグループ全体の方向性として今考えておりますのは、パーソナルAIです。これは各個人に専属するAIで、本人のパーソナルデータを原則としては他者に開示せずにフル活用する。そういう意味でパーソナルデータの分散管理をするということです。
 それによって、本人に深くきめ細かく介入して人生を最適化するというもので、したがって、集中管理型の従来のAIよりも付加価値がはるかに高いということです。これまでサービス提供者がn個いて、F1からFnというAIの機能を集中管理型AIとして使って、顧客に介入してきたわけですけれども、ある日やり方を変えまして、このP1からPnまでが、新たな顧客接点として各顧客のパーソナルAIを使うということになったとすると、パーソナルAIはこのF1からFnというAIの機能を組み込むわけです。
 しかもこのPAⅠは、P1からPnがアクセスできたD1からDnという種類のパーソナルデータを、名寄せして活用することができます。今まではP1からPnまでが合わせてn個のサービスを提供してきたわけですけれども、PAIによっていろんな組合せが可能になりますので、最大n+1の2乗種類のサービスが提供できる。例えば採寸データを使った健康管理とか、業務のデータを使った健康管理とか、生活習慣のデータを使って学習指導するということになりますので、はるかに大きな価値が生み出される。したがって、サービス提供者、事業者ももうかるというわけです。
 そのパーソナルAIを広めていくのが、世の中全体としては望ましいだろうと考えていて、それによって分散管理が広まるわけですが、分散管理というのは本人が自分のデータを自由に使えるということですので、自分のために使うだけではなくて、2次利用のために提供することも可能になります。そうすると市民とか、政府とか、研究機関とか、企業、NPOなどが、それぞれたくさんの個人から直接パーソナルデータを収集して分析することができる。
 それをパーソナルAIの開発とガバナンス、つまりパーソナルAIって考えようによっては危ないので、ちゃんとお行儀よく、本人とか、あるいは社会のために働いているかということをチェックすることにも使えますし、人間と社会に関するいろんな研究にも使えますし、個人向け商品・サービスの開発、政策の立案と検証ということにも使えます。それに加えて、この分析者、検証者たちがお互いの分析結果をチェックし合うという、分権的、民主的なガバナンス、分散的なガバナンスを確立することができます。
 というふうに考えると、こういうパーソナルデータ、あるいは企業秘密を含むようなデータも含めて、そういうプライベートなデータを分散管理することによって、こういうやり方で経済パフォーマンスを高めることと民主主義が密接につながる世の中にできるのではないかと期待しています。
 これから冷戦のようなことが10年、20年続くような気配ですけれども、その中で、やはり民主主義によって経済パフォーマンスが高まるということを、もっともっと強化する必要があると考えております。もともと民主的な国は経済パフォーマンスが高いという研究結果はありますが、特に中国の沿海部などとの対抗を考えると、もっと明確にこういうやり方で、民主主義と経済パフォーマンスが互いを高め合うような世の中をつくる必要があるだろうと思います。
 以上です。御清聴ありがとうございます。

【安浦主査】  杉山先生、上田先生、橋田先生、どうもありがとうございました。
 今、事務局及びAIPセンターからのお話がございましたけど、技術的なことで委員のほうからいろいろ御質問もあるかとは思いますが、時間の関係もございまして、今回のテーマは、あくまでも資料1-1、CSTIからの中間評価に対して、情報委員会として今後どういうふうに対応していくかという視点で、委員の皆様から御意見をいただきたいと思っております。
 1-1の資料の6ページ、論点1、論点2と事務局のほうでまとめていただいておりますけど、AIPセンターの今後の我が国のAI研究開発の貢献への期待、あるいは戦略・方向性に関する御意見、それから、もしございましたら、世界におけるAI研究開発の新たな潮流の創出についての定量的な指標みたいなもの、そういった視点で、ちょっと大所高所からの御意見をいただきたいと思います。またAIPの中間評価のときから比べますと、随分研究の中身も進んでおられるようですけど、そういう技術的な中身については、別途お時間を取って進めさせていただきたいと思いますので、今日は、資料1-1の6ページにある論点1、論点2について、委員の皆様方から、実際AIPでどういう研究が進んでいるかという御説明も踏まえまして御意見をいただければと思います。
 御意見のある委員は、挙手ボタンを押していただければと思います。瀧先生、どうぞ。

【瀧委員】  論点の両方に絡んでくると思います。まず、その資料の9ページを見て、気がついたんですが、この9ページのところで、非常にこれだけ頑張っておられるけれども、ゼロが並んでいるところがある。
 これに関して、今後どういうふうにしていったらいいのかというのと、それから新しい潮流というのは実は関係しているんじゃないかなと思っております。従来から新しい学問分野ができて、そこからどんどん新しいものが派生してくるときには、従来なかった概念、言葉、今まで皆さんが使っていない言葉が出てきて、それが別の分野となるというのが多いわけですけれども、そういうものが出てくると、それこそ次世代の新たな人工知能基盤の技術になってくると思いますし、それから新しい潮流にもなってくると思います。世の中、社会というのは、新しい言葉で動くものです。ですから、そういった観点での発展はないのかというふうに思います。
 具体的に新しい概念を出せといってもすぐ出るものじゃないんですが、それが出るような仕組みをうまくつくっていっていただくと、評価のほうも、それから今後の発展についてもいろいろ出てくると思いますので、その辺を御検討いただければと思います。

【安浦主査】  ありがとうございます。今日はちょっとお時間がないので、杉山先生、いろいろ御意見もあるかと思いますけど、意見を聞くだけでちょっと進めさせていただきたいと思います。
 ほかの委員の方々から、何かそういう視点で御意見ございますでしょうか。遠隔で入られている委員の方でも結構です。相澤先生、どうぞ。

【相澤委員】  では、定量的指標に関するコメント1件です。オープンソフトウエアですとかライブラリーの公開といったものは、評価指標の中に具体的に取り込まれていないように思います。重要なものだと思いますので、今後機会があれば御検討されてはどうかと思いました。
 以上です。

【安浦主査】  ありがとうございます。なかなか情報分野特有の話というのがいろいろありますので、こういう意見を主流にしていって、日本の学術界の考え方を少しずつ我々は変えていく、そういう使命もこの委員会にはあると思いますので、非常に貴重な意見だと思います。
 川添委員、どうぞ。

【川添委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私からは、まさに要は目指しているところは、我が国のAI研究開発に対する貢献という意味で言ったときに、例えば先ほどの資料の10ページを見てみると、海外の国際会議の数などを挙げていらっしゃいますけれども、ところで日本の学会との関係というのはどう考えていらっしゃるんでしょうかということを。やっぱりちょっとその辺の連携をどういった形で。日本が中心となって海外に発信していく。当然ながら国内に閉じるという意味ではなくて、まさに日本の競争の強化というところに貢献していくという意味で、その辺の視点がどうなのかなということを思いました。
 NTTの川添というよりは、次期電気情報通信学会の会長として、ちょっとその辺の意見を言わせていただいたんですけれども、ぜひその辺も含めて入っているといいかなと思いました。
 以上です。

【安浦主査】  ありがとうございます。ぜひ次期会長として、そういう分野を高めて、世界に発信できる学会にしていただきたいというふうに思います。ありがとうございます。
 ほかに何か御意見ございますでしょうか。よろしいですか。若目田委員、どうぞ。

【若目田委員】  御説明ありがとうございます。私は情報委員会において、理研AIPの研究成果を伺う時間が好きで、いつもわくわくして聴いています。
評価指標について、事務局が案として掲げたプレスリリースの件数や、先ほど杉山先生に紹介いただいたようなYouTubeでの公開数や視聴者数なども重要な指標ではないかと思い賛同します。企業においても、お客様に自社取り組みを理解いただくためこれらを重視しています。
特に一般には理解していただきにくいAI理論研究について、様々な相手に対しいかに分かりやすく情報発信するかは、とても重要な取り組みで指標化の意義があると思います。例えば、本日紹介いただいた「弱教師付き学習理論」が、大量データ集収に苦戦している我が国において、非常に重要な基礎技術となることをもっと多くの人に知ってもらうべきで、その意味でもこの指標に賛成いたします。
 また近年民間企業では、顧客満足度に加えて、従業員満足度という指標を重視しています。事務局案では、インターンの受入れ人数とか採用数といった数の指標はありますが、研究者がどれだけモチベーションを持って働いているか、自分の評価に関して納得しているかなど、研究者の満足度についても指標化を考えてもよいのではないでしょうか。
 以上です。

【安浦主査】  どうもありがとうございます。特に杉山先生がやられている基礎の分野というのは、一般の人に説明するのはなかなか難しい分野ではあるんですけど、逆に上田先生が御説明いただいた部分とか、橋田先生が御説明いただいた部分というのは、非常に社会の一般の人が興味を持っていただく部分がたくさん入っていますので、そういった部分とうまく結びつけながら国民の理解を深めていただかないと、なかなか今、政治主導でいろんな予算が動く側面がございますので、そういった配慮も多分に。CSTIのこの評価自身がそういう側面を持っているんではないかと思いますので、ぜひ我々も一緒に考えていきたいと思います。
 長谷山先生、どうぞ。

【長谷山委員】  長谷山です。他の委員の御発言に賛同致しますが、本日は、CSTIによる中間評価についての報告と、今後の対応について、どのようにするのが良いか方向性を議論しているのだと思います。
 先ほど文科省からご説明があったように、CSTIがメタ評価を行う、つまり、評価の方法を評価するということを始めたわけで、資料1-1の5ページ目にCSTIの指摘が書かれています。一番分かりやすい指摘は上から3つ目かと思います。上位施策との関係性を整理の上で、上位施策への貢献の進捗、研究力発展への貢献、また、どのように新たな潮流を生み出そうとしているのかという視点で主張されれば、文科省の評価方法をCSTIが評価し、メタ評価が行われることになるのだと思います。
ここで、こういう評価指標も良いのではないかとか、こういうふうにしたら良いのではないかとか、専門的な議論を行いKPIを組み込むことは、AIPの実施体の負担が増え、組み込む内容によっては、上位施策への貢献として、行うべき研究力発展や新たな潮流を生み出すための時間が損なわれてしまう可能性があると思います。メタ評価の定義から、CSTIがそれを希望しているわけではございませんので、その点を考えて、取りまとめていただきたいというのが、この委員会の委員としての私の意見です。
 以上です。

【安浦主査】  ありがとうございます。今、長谷山先生はCSTI側のお立場でもあるんですか。

【長谷山委員】  はい。ここでは委員会の構成員として発言させていただきました。

【安浦主査】  ということでCSTIのお立場としては、今、長谷山先生が、その裏はこういうことですということをおっしゃっていただいていますので、今後本委員会としては、今日、杉山先生のほうから御説明いただいた現状、これをどういうふうに情報学全体として国民に見せていけばいいかということを考えながら、CSTIに対する答えというものを検討していくことが重要かと思います。
 天文学でも、この間銀河の中心のブラックホールが見えたという、ああいう話1つだけで、アルマから何から、非常に大きな予算をポジティブに見せちゃうわけですよね。実は物すごく原理的な、難しい専門的な研究を、その裏でたくさんの方がやられているわけですけど、そこはなかなか新聞の記事にはならないわけで、我々のほうもやはり戦略的に考えることと、それから情報委員会の中では、それとは別に専門的な立場からAIの研究について、今後いろいろな立場からの御意見をいただいてAIPと議論をさせていただくという、その二重構造でやっていかないと、限られた予算の中でしっかりとした、この政策に合った研究をやっていますよということを、国民の目に見える形にはやりにくいんではないかと思いますので、今日こういう御意見をいただいたということで、今後はいろいろと今日の御説明も含めて、AIPと情報委員会で議論を続けさせていただきたいと思います。
 杉山先生、最後に一言御感想があれば。言いたいことはたくさんあると思いますけど、一言。

【杉山センター長】  本日は皆さん、いろいろ御意見くださいましてありがとうございます。AIPセンターとしては、今までのところは、ある指標を改善するためにいろいろやろうとかとあまり小細工はせずに、純粋に研究を進めるということでやってまいりました。
 一方、10年の終わりが見えてきたところですので、一応それなりの落としどころも見つけないといけないということで、未来もちょっといろいろ考えながらという状況ではあるんですが、今まさにおっしゃっていただいたように、やっぱり情報分野としてどうアピールするのが、本当の技術の底上げにもなるし、国民の理解にもつながるしと、両方ちゃんと取れるような落としどころを見つけないといけないということで、これに関しては本当に皆さんからアドバイスが全てという状況ですので、引き続きいろいろ御相談させていただければと思います。どうもありがとうございました。

【安浦主査】  どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

【坂本大臣官房審議官】  1つ、先生よろしいでしょうか。すみません、ちょっと事務方で、今、安浦主査から国民の理解というお話がありまして、また長谷山委員のほうからKPIの設定ですね。これはやはり有効性というか、価値とか、そういったものをしっかりと。これはAIPにとってもそうですし、それからあとその成果のユーザーにとってもそうですし、そこをしっかりと慎重に見極めながらというところは非常にありがたい。覚えていただいています。
 1つだけ、今の議論をするとき欠かせないのは、政策的な文脈で、今このAIPがどう置かれるか、これだけちょっと御説明さしあげたいと思います。今このAIの世界というのは、もうここにおられる先生方には釈迦に説法の話ですけど、今やAIに閉じなくて、我々は例えば研究DX(デジタルトランスフォーメーション)という政策を打ち出そうとしていますけれども、AIとビッグデータ解析と、それからあとスーパーコンピューターのような高度計算基盤、解析基盤、こういったものを一体化させたプラットフォーム、これは新しいサイエンス、あるいは新しいイノベーションを生み出すという、そのプラットフォームとして構築をするということです。これを大きな政策として打ち出すべきだと。これはこれからどんどん出てまいります。
 そういったときにAIの世界も、これは多層構造を持つ巨大な産学連携活動に多分なるだろうと。それはどういう意味かというと、個別の共同研究だけにとどまらず、それを超えて、もう多層構造を持つ産学連携活動になる。したがって、先ほど上田先生からお話があったように、アプリケーションのレベルで共同研究をどんどん進めていただくこと、これはもちろんなんですけれども、例えばスーパーコンピューターのようなインフラの世界、こういった開発を、このAIあるいはビッグデータ解析と一体として考える。ここは産業界の皆様ともしっかりと、共通目標、価値目標を持ってやっていくということが非常に重要になってくると思います。
 そうすると、先ほどから御議論いただいているようなユースケースというのが非常に重要になる。この価値目標というのはやはりユースケースという形で表現されると。安浦主査のほうからお話のありました、杉山先生から御発表のあった、この14ページからの深層学習理論のような、いかにこれが強力なツールか。サイエンスあるいはイノベーションの仮説の立て方を根本的に変えるような、極めて強力なツールであるというところを示していくのか。これは我々にとっても非常に重要な政策課題であるというふうに考えております。
 それを上田先生が御発表になったような、この22ページに書いてあるようなサイエンスの加速であるとか社会課題の解決、このテーマはいずれも非常に重要であると。出口分野といかに接続して、このユースケースというものを、杉山先生が開発されたような新しいサイエンスから成長させるかというところが、次のフェーズになるのかなというふうに考えています。今そういう形でDXは動いていると。
 そうすると、先ほど川添委員がおっしゃいました、その学会の関係とかというのは、多分電子情報通信学会だけじゃなくて、隣接する学会を、もうどんどん巻き込む必要があると思うんですけど、例えばAI×医療診断のところで出てきていますけれども、鬱病診断のための脳回路マーカー。これははっきり言うと、脳科学の世界とどんどん結びついていく、そして神経医学の世界、医療サービスと結びついていくということは、必然的に出てまいります。
 これは理化学研究所で十分できることで、脳科学センターもありますから。こういった新しいコミュニティを形成していく、あるいは新しい組織構造を生み出していくというぐらいの議論、それにつながるような評価、指標というものを御議論いただくと、今後の政策にとっても、そしてAIPセンターの発展にとっても非常に有益になるんじゃないかというふうに考えてございます。ぜひ先生方、御指導をお願いしたいと思います。
 以上です。

【安浦主査】  坂本審議官、ありがとうございました。そういう議論をやる時間が十分取れればよかったんですけど、今日はなかなかそういう時間も取れませんでしたので、今日のところは今、各委員からいただいた御意見をベースに、今後AIPも一緒になって情報委員会と事務局とで、今後のこのAIPの活動をどういう指針で国民に見せていくか、そういう形をこの委員会でも検討していきたいと思いますので、委員の先生方、よろしくお願い申し上げます。
 杉山先生、どうもありがとうございました。

【杉山センター長】  ありがとうございました。

【安浦主査】  それでは、次の審議事項に移りたいと思います。
 情報分野において今後実施すべき取組の進め方の審議でございます。資料2-1から2-3まで用意しておりますので、事務局のほうでこれについてまず簡単に御説明いただいて、委員の皆様方で意見交換をさせていただきたいと思います。それではよろしくお願いします。

【佐々木参事官補佐】  事務局でございます。情報分野において今後実施すべき取組の進め方について御審議いただくに当たりまして、本日参考資料1としてお配りしております、3月に6期の基本計画を踏まえた情報分野の振興方策をお取りまとめいただいておりますけれども、ここでいろいろなトピックが挙がってございまして、どういったトピックが今後検討すべきこととしてあるかを挙げたものとして、資料2-3を作成しているところでございます。
 ここに取り上げている項目に関連する事業で、現在公募を行っているものが2件ございますので、まずその御紹介を担当からさせていただきたいと存じます。
 まず資料2-1について、大鷲補佐から御説明をお願いいたします。

【大鷲参事官補佐】  参事官補佐の大鷲でございます。それでは資料2-1を御覧いただけたらと思います。
 本事業につきましては、今年度新たに創設した事業でございますけれども、今年度予算額といたしましては9.9億円措置されているところでございます。
 背景のところにございますけれども、御承知のとおり、近年、世界的に社会のデジタル変革が一気に進展し、研究の在り方そのものに大きな変革期が到来している中におきまして、研究DXにより生産性を飛躍的に向上させるためには、膨大な量の高品質な研究データの利活用を推進していくことがポイントであろうというところでございます。
 一方で、未解決の課題といたしまして、1つ目、各分野におけるデータプラットフォーム等が進められているところでございますが、その分野等を超えてデータを共有・利活用するための全国的研究データ基盤の実装が未実施であること、それから、研究データの取扱いに当たり、研究者に求められる負担が増大している中において、その対応が必要であろうということ、このほか、3つ目にはデータマネジメント人材の不足、それから4つ目にはAI・データ駆動型研究の進展が不十分というところもあろうかと思います。
 それらを踏まえて、実施内容といたしまして、1つは全国的研究基盤の構築・高度化・実装ということで、研究データの管理・蓄積・利活用・流通といった点で、適切かつ実用的な機能を確保した全国的な研究データ基盤を整備するとともに、AI・データ駆動型研究の推進に資することも取り組んでいこうというところでございます。
 このほか2つ目には、ルール・ガイドライン整備、それからデータマネジメント人材育成支援など、研究データ基盤を最大限に活用するための環境整備も行っていこうという事業でございます。
 実施体制といたしましては、中核機関群という形で構成していただき、文部科学省から補助金を支援するというスキームになっているところでございます。
 そして、事業期間としては今年度から令和8年度ということで、5年間を予定させていただいているところでございます。
 次のページでございますけれども、具体的な取組のイメージがございますが、現在公募中でございますけれども、事業内容が多岐にわたるというところもございますので、公募に当たりましては5つのチームをお示しし、それぞれミッションを御提示させていただいているところでございます。
 1つ目は、研究データ基盤高度化チームということで、研究データの取扱い、メタデータの付与等でございますけれども、その研究データの取扱いの支援機能というもの。それから研究データの出どころや修正履歴等を管理し、その真正性を説明可能とするような機能。3つ目でございますけれども、研究データの利用状況や公開後の再利用の状況をモニタリングし、研究者にフィードバックするような機能。それから4つ目には、再現性の検証や再利用可能な形でパッケージ化し、公開することを支援する機能。そして5つ目には、秘匿すべき情報が含まれる研究データにつきまして、これらのデータを秘匿したまま安全に解析可能とするための環境構築を支援する機能といったことを掲げさせていただいているものでございます。
 2つ目はプラットフォーム連携チームということで、分野のデータプラットフォーム等における研究データの連携・接続を進め、統合的なメタデータ検索の実現を図っていこうということ。
 それから、3つ目には融合・活用開拓チーム。こちらは実装を見据えたものでございますけれども、異なる分野間でのデータ連携を前提としたAI・データ駆動型研究のシーズ・ユースケースの創出というものを掲げさせていただいているものでございます。なお、ここでは産学共同研究によるものを含むことを推奨させていただいているところでございます。
 4つ目には、研究データについての取扱いに関するルール・ガイドラインの整備。
 それから、5つ目には人材育成チームということで、必要なスキルセット等の要件の整理ですとか、教材開発やコンテンツ整備等を掲げさせていただいているところでございます。
 4月21日に公募を開始してございまして、今月末に締切りの予定でございます。その後、審査を経て、事業開始は8月上旬頃を予定させていただいているものでございます。
 最後にイメージといたしまして、実施体制のイメージを用意させていただいているところでございます。次のページでございますけれども、各チームに、二重丸にありますとおり、リーダーとなる機関を配置いたしまして、それから司令塔機能を有する運営委員会を設置するなど、中核機関を中心といたしまして各機関で有機的に連携していただき、ばらばらではなく、まさに中核機関群としての活動成果を創出していただこうということで考えているところでございます。
 そして文部科学省におきましては、外部有識者で構成する事業推進委員会を立ち上げ、ここで今年度審査を行うほか、毎年度フォローアップを行いまして、取組状況を把握した上で、必要な指導、助言等を行っていこうというところでございます。
 資料2-1の説明は以上でございます。

【安浦主査】  大鷲補佐、ありがとうございました。
 続きまして、資料2-2を御説明お願いします。

【上村専門官】  ありがとうございます。事務局の上村でございます。
 令和4年度の戦略目標「文理融合による社会変革に向けた人・社会解析基盤の創出」に関して、御説明、御報告をさせていただければと思っております。昨年度、情報委員会の皆様には研究開発課題の御議論をいただきましたが、今年度の戦略目標、この後少し御説明しますけれども、実際はさきがけという形で動いていきますが、これに関しては昨年度のうちに文部科学省の中で決定、公開といたしましたので、そちらの御紹介、御報告をさせていただければと考えているところでございます。
 1枚おめくりいただけますでしょうか。皆様御存じのことと思いますが、簡単に、このJSTで行っております戦略的創造研究推進事業、こちらがこの戦略目標がつながっていくところでございますが、こちらと日本学術振興会の科学研究費助成事業、科研費とを対比して、御紹介をまずはさせていただければと思っております。科研費が研究者の皆様の自由な発想に基づく研究提案であるボトムアップ型であるのに対して、こちらの戦略的創造研究推進事業というのは、トップダウン型で進めていくようなものになっているところでございます。
 次のスライドでございますが、文部科学省で戦略目標を策定しまして、それでJSTでCRESTとかさきがけとか、こういったものにつながっていくというような仕組みになっているものでございます。
 次のスライドでございます。こちらはここ数年の戦略目標を一覧にしたものでございますが、令和4年度は戦略目標としては6つできております。そのうち情報分野がメインで関わっているところが、この赤枠をつけておりますが、文理融合による社会変革に向けた人・社会解析基盤の創出となっているところでございます。
 次のスライドをお願いします。その6つの戦略目標が3つの柱で示されておりますが、その中で「総合知」の活用による社会課題の解決という中に、この文理融合によるというのは位置づけているところでございます。
 具体的な中身が、その次のスライドになります。まず概要としまして左上にお示ししておりますが、人文学や社会科学と自然科学の融合というのを、一番初めに掲げておりますが、これにより、個人やコミュニティ、社会といったマルチスケールでの様々なデータから人や社会を理解して、その人や社会の理解に基づき政策シナリオ等をシミュレーションで導出し、行動変容につなげて、社会変革を目指すといったものになっているところでございます。
 達成目標と研究例というところに少し具体的な内容を記しておりますが、1つ目が、個人、コミュニティ、社会からのデータ収集、分析、モデル化による人や社会の理解でございます。SNS等ウェブ上のデータをはじめとした人や社会の様々なデータから、行動特性や嗜好、行動判断をもたらす要因を導出する研究、それから、必ずしもデータ分析に基づくものとは限りませんが、人文学や社会科学の知見から行動特性や嗜好、行動判断の要因等、こういったもののモデル化・数値化ができるような研究を行っていくことを想定しているところでございます。
 2つ目は、政策シナリオ等を導出するための社会シミュレーション技術の創出でありまして、社会シミュレーションというのは、昨今新型コロナウイルスの感染者数予測等で関心が高まっているところでございますが、人文学や社会科学の知見やデータから、人や社会の特性をモデル化・数値化してシミュレーションに入れていく、そういった研究を想定しているところでございます。
 3つ目が、社会プロセス革新につながる手法の確立でございまして、政策シナリオ等が効果的で社会受容性が高くなるような、人々の行動変容につながるような、そういった方法論の研究というものを想定しているところでございます。
 右側に、災害時の例としてお示ししているところでございますが、左下のふだんの行動、例えば経路検索とかSNSとか、そういったウェブを使っているようなデータを活用しまして、人や社会の新しい理論を導き出せるか、と書いておりますけれども、いわゆる人と人のつながりみたいなものを解析するとか、そういった属性に基づいて、効果的な政策立案、それから呼びかけみたいなことを解析していくことで、災害時の対応につなげていく。例えば右下の図で申し上げますと、メッセージAというところは、小さいですけれども、例えば長年住み慣れたところにい続けたいというような方に対して、避難時に御家族が御心配されるんじゃないですかというメッセージを投げかけるとか、一方で積極的に行動される方には別なメッセージをかけるとか、そういったことを例として、この図の中で表現しているところでございます。
 次のスライドをお願いします。こちら7ページですが、この戦略目標を基に、JSTからさきがけが公募となっております。研究総括は慶應義塾大学の栗原先生です。
 次のスライドをお願いします。次のスライドがアドバイザーの先生方のリストとなっております。
 最後、9ページ目、次のスライドですが、このさきがけの締切りが5月31日正午となっているところでございます。戦略目標の詳細は参考資料5としてお配りしておりますが、ここに掲げておりますJSTのホームページ、それから文部科学省のホームページ、ツイッターも含めて記載しておりますので、こちらも御参照いただけるとありがたいと思っております。
 説明は以上でございます。

【安浦主査】  では引き続きまして、2-3の資料について御説明お願いします。

【佐々木参事官補佐】  事務局でございます。どうもありがとうございます。資料2-3について御説明させていただきます。
 こちらは参考資料1としてお取りまとめいただいている6期基本計画を踏まえた情報分野の振興方策についてということで、今後どういったことを進めていくべきかついては、お取りまとめいただいているところでございますけれども、それを踏まえまして、情報委員会のほうでどういったことを議論していくかというトピックとして、こういったものがあるのではないかと挙げさせていただいているところでございます。
 その後、御議論の時間において、特に今期の情報委員会は残り1年を切っているところでございますので、どういったところから御議論、御意見をいただくのがよいのかと考えておりまして、まずその前提で御説明させていただければと思います。
 1、2と振興方策のつくりに合わせまして書かせていただいておりまして、1の一番最初の2つ、次世代計算基盤に関する検討、あるいは大学図書館に関する検討については、既に下部組織での検討を進めているところでございますけれども、トピックとして挙げさせていただいております。
 次の3つ目、研究データ等管理・共有・利活用のための制度・ルール・人材に関する検討につきましては、振興方策で書かせていただいておりますけれども、米書きで下のほうに書かせていただいておりますとおり、管理・共有・利活用のフェーズ、あるいは人材の育成、確保ごとに整理していくことが必要ではないかということを書かせていただいております。
 また、最後のほうで振興方策のほうに付け加えさせていただいた、ほかの分野とも連携して、あるいは引っ張っていくような形で進めていくべきではないかという御意見をいただいておりまして、社会サービスのDXの動向を踏まえた教育その他の分野との連携、あるいは研究DXの方向性を明確にして、各学術分野や研究機関での共有を進めていくということもあるのではないかと思われます。
 次の3つについては、先ほど担当から御説明させていただいた、研究データエコシステム構築事業ですとか、SINET6の運営、セキュリティの確保、あるいは富岳、HPCIの運営といったものですとか、2の研究開発の推進につきましても、本日、議題1のほうで御説明、あるいは御議論いただきましたAIPですとか、Society 5.0実現化研究拠点支援事業の推進ということで、これは既存事業について、先ほどの議題1のようなイメージではございますけれども、現在の状況を御説明させていただいた上で御議論いただくこともあるのではないかと考えております。
 最後に情報分野の研究開発課題の検討としまして、3つ、昨年度お取りまとめいただいて、本日参考資料2で概要資料をつけさせていただいておりますけれども、そういったものを事務局で深掘りするというふうにお示しさせていただいているところでございますが、これも今後のトピックとしては考えられるのではないかと思っているところでございます。
 次のページにつきましては、これまで情報分野の全体像として、視覚的に1枚のスライドでまとめさせていただいたものに、今お話ししたような内容で少し追記をさせていただいたものですので、参考として御確認いただければと思います。
 資料2-3について説明は以上でございます。

【安浦主査】  どうもありがとうございます。
 今の資料2-3の裏面、これは昨年度、我々の議論で最終的に、先端的な情報科学技術の研究開発をやることで、それをベースにしたデータ基盤、ネットワーク基盤、計算基盤、こういったものをきちんとつくることで、全ての分野の科学技術のデータ駆動型の研究を支えていく、そういう基盤を構築し、かつ運用していくという、単に情報の研究をやるだけではなくて、全ての学問分野に対する学術情報基盤を提供するということで、先ほど坂本審議官のほうからお話がありましたように、新しい情報科学のAIを含む研究がベースとなって、あらゆる研究分野に対して日本が非常に強い部分を持っていく、そういう仕組みをつくっていくのが、この委員会の役割であるということを、昨年1年かけてまとめたものでございます。本日は今年度の最初ということもございますので、特にこの右側の次世代の社会を切り開く先端的な情報科学技術、これはAIPはもう杉山先生のほうでしっかり進めていただいておりますけれども、今後どういうところを伸ばせばいいか、そういった部分、それから、先ほどの坂本審議官のお話にもありました、世の中がDXという言葉で、急にある意味で今までなかった方向に動き出している、そういうことを踏まえて、少しお時間をいただいて、情報科学としてどういうことを考えたらいいかというような御意見をいただければと思います。
 何か御発言ございますでしょうか。瀧先生、どうぞ。

【瀧委員】  いろんな分野を巻き込んで動かしていこうという形ですね。それをやっていこうと思いますと、我々は情報の技術の面から見ていますが社会のほうは自分たちの活動の面から見ています。世の中がいろんな方向で皆さん見ているのを、これを併せ持たないといけませんので、そのときにはイメージをつかむというのが多分大事だと思います。そのイメージを情報委員会からも発信していくというのが多分大事です。一般の人は情報技術の細かいことは分かりませんし、それをどういうふうに活用すれば、自分自身の社会、あるいは自分の生活に役に立つかということが分かるように発信する、そういう議論を今後やっていただければ良いと思いました。

【安浦主査】  ありがとうございます。世の中、経済的には、GAFAを中心とした巨大IT産業が方向づける形で動いている面もございますけれども、そういうものだけに流されるんではなくて、我が国独自のこの学術情報基盤を構築する技術、あるいはその上のいろいろな研究活動をさらに高度化していくための情報技術、それから情報科学自身がまだ発達途中の学問分野ですので、そこに新しい芽を若い方が開拓していってほしいというのが我々年寄りの願いでもありますが、その辺についてでも皆様方からの御意見を、あまり時間はございませんけどいただければと思います。今後のこの委員会の進め方の参考にさせていただきたいと思っておりますので、どうぞどなたでも御発言お願いしたいと思います。
 中島委員、どうぞ。

【中島委員】  中島です。こちらで取組の進め方についてで示していただいているものの中に、研究データ等管理・共有・利活用のための制度・ルール・人材に関する検討とありまして、その各フェーズで整理が必要ということを注記されていて、それはそのとおりだと思います。で、重要なことだと思うのですが、この取りまとめにもありますように、研究者が研究を行う際の研究サイクルの中で大きな負荷がかかることなく進むような取組が必要とされているとおり、やはりその研究、ワークフローの中で、無理なく行えるような仕組みづくりというのが必要だと思いますので、各項目について検討するときには、やはり同時にその研究ワークフローの中でどのように使われていくのかということを認識しながら進めないと、なかなか実施といいますか、適用するところが進まないのではないかと思いますので、議論をされる際に、その観点からの、どういった関係者をどのようにつなぐと、そういったワークフローの中のプラットフォーム、仕組みづくりができるのかということを議論できればというふうに思いました。
 以上です。

【安浦主査】  ありがとうございます。非常に重要なポイントでございまして、これは別の予算になりますけど、SINET6のプロジェクトの中で、単にネットワーク基盤だけではなくて、その上にデータ基盤をきちっと構築していく計画となっています。研究途中までは研究データは秘匿しておいて、研究成果が出たときには、今度は逆に公開の義務が発生するということで、その秘匿と公開をスムーズに、各分野の研究者が負担を感じない形で、自然に研究していっていたら、ここで公開となれば、その公開のボタンを押せば公開にぱっと持っていける、そういう仕掛けをつくる。
 そういうプロジェクトが、これはフロンティア事業のほうで動いておりまして、その話と、今回資料2-1で御紹介しました、AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業、こちらもそれと多分協働しながらやっていかないとうまく動かないと思いますので、その辺は、この事業をやるところがどこになるかはまだ決まっておりませんけど、決まってしまえば、そことそのNIIのSINET6の事業とをうまく融合させながらやっていくということになるんだと思います。
 多分JST側のJ-GLOBALとか、いろいろデータベースの事業もございますので、こちらは中島委員の御担当の部分もあると思いますけれども、そういうものともうまく連携して、我が国の研究者が、どの分野の研究者であってもデータをすごく自由に使いこなして、しかも異分野のデータを使いたいと思ったときに、同じようなインターフェースで使って、それを組み合わせることで新しい研究分野が生まれていく。そういう基本をつくっていくというのが、これは情報委員会としてはかなり責任重大な部分であるというふうに認識しております。
 言うは易く行うは難しという部分はたくさんございますけど、その中で、従来いわゆる紙ベースのデータを中心に動いてきた図書館の在り方、これも変えていかないといけないと思いますし、特に大学においては、図書館の職員と、それから情報系を担っているいろいろな技術を持った職員の間のスキルをどういうふうに変えていくか。そういった大学の構造改革の問題まで含めて考えていかないと、先生に頑張ってくれと言うだけでは、教員の負荷が増えるだけでなかなかうまく動かないと思いますので、そういったことも含めて、今後幅広く本委員会でも議論をしていただきたいと思っておりますし、実際に事例を挙げて御紹介いただいて、検討していきたいというふうに考えておりますので、その辺り、また事務局と相談させていただきたいと思います。
 何か工藤参事官ございますか。

【工藤参事官】  ありがとうございます。今、中島委員と、それから安浦主査からいただいたお話にもございまして、やはり情報科学におきましては、あらゆる学問分野に適用可能であるということが一つの特性であり、これとどのように合わせていくかというのが長年のずっと課題であって、そのときにやっぱり評価のモダリティーの問題が今回CSTIの評価にもありまして、長谷山委員からもいただきましたけれども、それをどういうふうに構築するかによって、やはり個別の学問分野にどう入っていくかというのが出てくると思います。
 もう一つありまして、ワークフローの問題です。これも一つのモダリティーの問題と私は理解していますけれども、個別の学問分野がこれまでやってきたワークフローに対してデータ駆動科学に移っていくために、ワークフローを変えていただかないと、恐らく今安浦主査がおっしゃったような、他の分野でも同じようなことをやれて、それを比較することで新しいことが生まれるという基盤を構築するのは、なかなか難しいと理解しております。
 ただ我々としましても、そこは、これから進めていく事業の中で、いかにして情報科学がもたらしてきたモダリティーが個別の学問分野において展開できるようになるか、この辺を中心に考えることによって、先ほど坂本審議官のほうからも申し上げさせていただいたような、DXが、AI、データ駆動のテクノロジーが、各分野において花開いていく、まさにデータ駆動型の科学というのが実現するのではないかと考えております。
 今後この委員会におきまして、先ほど申し上げた、恐らく評価のモダリティーの問題、それからワークフローをどう構築するかの問題、当然その構築の中に、安浦主査からまた御示唆いただいたように、人員をどうするといった具体的なトランスフォーメーションの問題もございますので、この辺のことを今後御議論いただければ、我々としても幸甚だと存じております。ありがとうございました。

【安浦主査】  どうもありがとうございます。
 ほかに委員の先生方から何か御発言ございますか。ちょっと進行の不手際で時間がなくなってまいりましたけど、よろしいでしょうか。
 今後具体的な、この2-3の資料に書いてあるテーマで、委員の先生方から、15分とか20分御専門のお話をしていただく、あるいはそういうお話をしていただく方を御紹介いただくことをお願いすることがあると思いますので、ぜひ日本のこの情報分野、それから全ての学問を支える学術情報基盤、これをどうつくっていくかという視点で、本委員会、今年1年、またよろしくお願いしたいと思いますので、御協力のほどお願い申し上げます。
 それでは、ちょっと議論の時間がなくて、皆様方に御意見をいただく時間がございませんでしたけど、今後の進め方につきましては事務局と相談させていただきながら進めていきたいと思います。また、今日ちょっと言いたかったけど、時間がなかったので言えなかったというような御意見がございましたら、ぜひ事務局宛てにメール等で御意見をいただければ幸いでございます。
 今後の進め方については主査預かりとして御一任いただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございます。
 それでは、本日の議論はここまでとさせていただきます。事務局から事務連絡がございましたらお願いいたします。

【佐々木参事官補佐】  事務局でございます。今、安浦先生から御案内いただきました、この会議の後の御意見提出につきましては、また後ほどメールで御案内させていただきますけれども、1週間後、24日の火曜までということでお願いさせていただくつもりでございますので、よろしくお願いいたします。
 そこでいただいた御意見も踏まえまして、今後の進め方を安浦主査とも御相談させていただければと思いまして、次回委員会の予定については、まだ調整させていただけておりませんけれども、またそちらの調整にも御協力いただければと思います。
 以上でございます。

【安浦主査】  それでは、これで本日の情報委員会は終了させていただきます。次回の日程等はまた調整させていただきますのでよろしくお願いいたします。本日はどうもお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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