情報委員会(第24回) 議事録

1.日時

令和4年3月10日(木曜日)16時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 「研究データ公開と論文のオープンアクセスに関する実態調査 2020」について
  2. 情報分野の研究開発課題及び振興方策について
  3. その他

4.出席者

委員

安浦主査、相澤委員、井上委員、奥野委員、小池委員、後藤厚宏委員、後藤吉正委員、佐古委員、田浦委員、瀧委員、塚本委員、引原委員、深澤委員、星野委員、美濃委員、八木委員、若目田委員

文部科学省

池田研究振興局長、川口参事官(情報担当)、三宅学術基盤整備室長、宅間計算科学技術推進室長、黒橋科学官、池内学術調査官、竹房学術調査官

オブザーバー

林文部科学省科学技術・学術政策研究所データ解析政策研究室長

5.議事録

【安浦主査】  それでは、定刻になりましたので、科学技術学術審議会情報委員会の第24回会合を開催いたします。遅い時間にお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日も、コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで開催することにしております。今回は報道関係者も含めまして、傍聴者の方にもウェブで参加いただいております。
 また、通信状態等に不具合が生じるなど続行できなかった場合、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
 本日は、川添委員より御欠席との御連絡をいただいております。また、オブザーバーとしまして、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の林室長に御参加いただいております。
 配付資料の確認とオンライン会議の注意事項の説明を事務局よりお願いします。

【上村専門官】  ありがとうございます。事務局の上村でございます。
 それでは、議事次第に基づきまして、配付資料を確認させていただければと思います。まず、資料1は、議題1で御発表いただく資料でございます。関連する報告書を参考資料の2としてお配りさせていただいております。それから資料2-1、2-2は、議題2の資料でございます。関連する参考資料は3と4になっておりますが、参考資料4は、これまでの情報委員会で皆様に御議論いただきました研究開発課題等に関する資料の要点をまとめたものでございます。参考資料として今回つけさせていただいています。
 それから参考資料1に関しましては、前回御審議いただいた富岳のシステム開発の事後評価結果になっております。既にダウンロードいただいているのではないかと思いますが、もし現時点でお困り事や不具合等がありましたらば、お知らせいただければと思いますが、いかがでしょうか。それでは、もし何かありましたら事務局までお電話をいただければと思います。
 引き続き、オンライン会議の注意事項を申し上げます。通信の安定のために、御発言いただく場合以外は、マイクをオフ、ビデオをオフにしていただけますでしょうか。
 主査の安浦先生は、常時マイクをオンの状態、ビデオをオンにしておいていただけますでしょうか。
 それから、発言する場合には、「手を挙げる」ボタンを押して御連絡いただければと思います。主査の安浦先生は、参加者一覧を常に開いていただきながら、手のアイコンを見ていただいて委員を指名していただければと存じます。
 議事録作成のために、速記者を入れております。速記の方のために御発言いただく際には、お名前から言っていただければと存じます。もしトラブルがありましたら、電話にて事務局に御連絡いただければと思います。
 それから、傍聴の方々はZoomで御参加いただいております。
 事務局からは以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございます。それでは、会議に入ってまいります。
 本日、審議案件は議題2として情報分野の研究開発課題及び振興方策について、最終的な御議論をいただきたいと思っております。
 審議に先立ちまして、前回の委員会におきまして活発に御議論いただきました、NISTEPの調査研究成果である「研究データ公開と論文のオープンアクセスに関する実態調査2020」につきまして、本調査を実施されました池内学術調査官より御説明をいただきまして、取りまとめの議論、あるいは今後の議論の参考とさせていただきたいと思います。
 池内先生、よろしくお願い申し上げます。

【池内学術調査官】  どうぞよろしくお願いいたします。資料を共有させていただきます。学術調査官の池内有為と申します。
 本日はNISTEPのデータ解析政策研究室の客員研究官として実施しております、こちらの調査について御説明させていただきます。
 まず、こちらのNISTEPの調査ですけれども、2016年から隔年で実施しております、科学技術専門家ネットワークと申します日本の産官学の研究者を対象としたウェブのアンケート調査でございます。回答者数はこちらにありますように1,300名から1,500名ぐらいのスケールでございます。
 前回の情報委員会で、海外との比較においてどうかという話がございましたので、Springer Nature社の国際調査ですとか、Nature社も関わっているState of Open Dataという調査結果を交えながら、御紹介させていただきます。
 まず、NISTEP2020年調査の回答者の概要からです。回答者の所属といたしましては、大学が7割くらい、公的機関・団体が2割弱、企業の研究者の方が1割強です。回答者の年齢層は、40代以下の方が多いのですけれども、上の方は70代の方までお答えいただいています。
 回答者の研究分野につきまして、少し御注意いただきたいことがありまして、専門家ネットワークの構成上、工学や化学、生物科学の回答者が多くなっておりまして、数学、心理学、人文学・社会科学あたりは少し人数が少なくなっております。
 調査項目としましては、研究データの公開状況をはじめとしまして、公開に関する質問を大きく分けて7つくらいと、あとは自由記述でお尋ねしています。
 それでは、早速ですけれども、研究データの公開率はどうかということで、2020年時点では44.7%の回答者の方がデータの公開経験があるとお答えになっています。対して、論文は8割ということで、論文のほうが大分多くなっています。
 論文について、経年的にお見せしますと、2016年の7割から2020年の8割まで徐々に増えております。理由といたしましては、やはり投稿したジャーナルがオープンアクセスということで、オープンアクセスジャーナルが増えておりますので、順調に増えているのではないかというところです。
 一方で、まだ公開していないという方の理由としましては、資金です。オープンにするためのAPCの資金がないからという方が、5割を超えて57.6%となっております。
 データの公開経験ですが、論文が順調に増えているのに対して、足踏み状態であり、2016年からそれほど増えてはおりません。専門家ネットワークの回答いただいている方々は3回、全て同じ方ではなく、毎年、一部入れ替わりがありますので、どうしてもこれくらいの揺れはあるのではないかというところですけれども、傾向といたしましてはあまり増えているとは言い難い状況でございます。
 分野別にデータ公開経験を見ますと、上のほうの地球科学、数学、生物科学のあたりは7割近くの方が公開経験をお持ちなのに対して、下のほうの工学、心理学、社会科学・人文学あたりは3割前後ということで、大分分野による差が大きいということが分かっております。
 参考といたしまして、Nature社の調査結果をお持ちしました。生物科学で見ますと、リポジトリでの公開経験を持っているのが16%、ジャーナルのサプルメンタリーファイルとして公開しているのが28%、両方の経験がある方が3割ということで、全部で75%くらいの方が、公開経験があるけれども、残る25%はいずれの方法でも公開していないということです。こちらの調査でもやはり分野による差があるということは明らかにされております。
 こちらは、NISTEP調査の2020年の結果を、論文とデータを分野別にマッピングしたものです。データ公開経験とOA経験というのは相関がなくて、それよりもむしろ分野の特徴が出て、ばらつきがあるという結果になっております。
 データ公開経験が高かった地球科学、数学、生物科学のあたりは、論文の公開率も高いのですけれども、やはりこのあたりの分野では成果を共有して、科学を全体として進めていくという特徴が出ていること。一方で工学のように特許ですとか商業的な利益が関わる分野では、なかなかデータの公開も論文の公開も難しいのではないかと推察されます。社会科学・人文学、医学分野になりますと、論文の公開率は相対的に高いのですけれども、データはなかなか公開ということはなく、計算機科学、コンピューターサイエンスに関しましては、データというよりは、コードでしょうか。ソフトウエアの共有はよく行われていますけれども、論文は有料のプロシーディングスに投稿し、投稿前のプレプリントをアーカイブに投稿するというような行動ではないかというふうに、そのあたりがよく出ているかと思います。
 データの公開方法についてです。従来は個人や研究室のウェブサイトでの公開というのが実は主流な手段だったのですけれども、2020年調査では、論文の補足資料がそれを抜きまして、54.1%ということで1位になっております。これはアメリカとか欧州の調査結果でも同じようになっておりまして、今は論文の補足資料がよくデータ公開を牽引しており、よく使われている手段といえるかと思います。
 続いて特定分野のリポジトリや学術機関でのリポジトリが使われており、コード共有サービス、GitHubですとかデータ共有サービスといったものは、まだパーセンテージは少ないのですけれども、2016年、18年に比べると、大分、パーセンテージ増えてきたという感じがいたします。
 公開理由についてです。2018年調査までは研究成果を広く認知してほしいということで、かなり積極的に公開されるというのが、一番の理由だったのですけれども、2020年調査では論文を投稿した雑誌のポリシーだからというのが、少し抜きまして1位になっておりました。
 所属機関のポリシーだからというのは、今のところ11.1%にとどまっているのですけれども、昨年の統合イノベーション戦略で大学等にデータポリシーの策定が求められましたので、これによって比率が高まってくるという可能性はあるかと考えられます。
 続いてデータを公開してない研究者の方にお伺いした、データを公開していない理由です。1位は、論文を投稿した雑誌のポリシーではないからということで、公開していない理由につきましては、2018年、16年は、あまりはっきりとした理由がなく、横並び状態だったのですけれども、今回の調査で初めて雑誌のポリシーではないというところが突出してまいりました。下のほうに、助成機関のポリシーではないというのが理由としてあるのですけれども、これから助成機関のデータマネジメントプランの要求が増えてくるにつれて、また、このあたりの状況も変わってくるのではないかと考えられます。
 続きましては、データの整備や公開資源の充足度についてです。こちらは、データを公開した経験をお持ちの方もお持ちでない方も、全ての方に聞いております。データの整備や公開には当然コストがかかるのですけれども、その充足度はどうかということで、2016年から継続で聞いております。青い部分がネガティブな回答、不十分とかやや不十分という回答で、オレンジ色の部分が十分とか、ほぼ十分ということで、ポジティブな回答です。やはりまだまだ青が多く、ネガティブな回答が多い状況です。特に人材、時間、資金については、不十分と考える回答者の方が多い状況です。
 下のほうにあります、保存用のストレージや、公開用のリポジトリ、研究中のストレージに関しては、2016年、18年と比べますと、やや改善してきたかなという感じはあるのですけれども、公開用のリポジトリにつきましては、そもそもよく分からないという回答が3割近くありまして、十分かどうかも分からないというのが、現状ではないかというところです。
 今度はデータ公開に関する認識、懸念についてです。こちらも公開経験がある方、ない方、両方の方に聞いております。2016年、18年と同様になるのですけれども、引用せずに公開したデータを使われてしまうとか、公開したデータを使って先に論文を出版されてしまう可能性というところが、一番強い懸念になっておりまして、これはやはり海外の調査でも同様です。やはり研究者としては、データを公開することによって無断で利用されてしまうというところを一番心配しているということが、継続的に出ております。
 こちら、「The State of Open Data 2021」の質問でも、同様の懸念事項を聞いているので御紹介させていただきます。項目が多いため上位のものだけ上から日本語で紹介させていただいているのですけれども、誤用されることを心配していたとか、2番目の適切なクレジットが得られない、引用されないとか、アクナレッジメントに書かれていないというようなものが、上位に来ております。
 研究データ公開を適切に進めていくためにインセンティブが重要というのは、よく議論のあるところですけれども、研究者としては何を重要視しているかということを知るために、インセンティブの重要性について前回の2018年から聞いております。ここでもやはり引用が上位に来ておりまして、論文の引用ですとかデータそのものを引用してほしいというところが強く重要ということで出ております。こちらもやはり海外の調査、Tenopirらによる国際調査でも、92.1%の回答者がデータを利用されたら引用されることが重要であると回答しておりました。
 こちらは前回御紹介いただいたところですけれども、「データ公開によって得られた良い結果」ということで、データ公開の経験をお持ちの方に対して、もしよろしければ記述をとお願いしたところ、2018年が24.8%、2020年が22.9%の方が自由記述として書いてくださっています。
 実際に得られたよい結果としては、共同研究の契機となったというのが一番多く、こちらは「The State of Open Data 2021」でもピックアップされて、35%の方がコラボレーションにつながったと感じられているという結果が出ておりました。
 研究データ公開の究極の目的、非常に重要な目的の一つは、その公開したデータが再利用されて、また新たな知見を生み出すとか、科学が進展していくというところかと思いますが、こちらを書いてくださった回答者の方は、2018年から10.3ポイントということで、僅かではございますが少し増えております。
 実際の自由記述をこちらに引用させていただきました。2番目、少し長いのですけれども、非常によい例なので御紹介させていただきます。タンパク質の機能に関するデータを登録したところ、問合せがあり、共同研究となった。予定していた雑誌に投稿するのをやめて、お互いの実験結果を合わせて、よりインパクトのある研究として別の雑誌に投稿して採択された、ということで、これは公開した研究者の方にとっても、それを見つけて共同研究を持ちかけられた方としても、お互いに非常によい結果になったのではないかと思われます。
 3つ目は副次的な話ですけれども、新たな共同研究にもつながり、その共同研究先の学生の教育にも、そのデータが活用されていると考えているということで、教育利用という意味でもよい結果が出ているのかなと考えます。
 再利用や二次利用につきましても、もちろんデータそのものを使って再分析するということは、幾つかあるかと思いますけれども、それを公開した方が把握して、それが、研究課題の掘り下げですとか科学的理解につながっていると考えていらっしゃるという回答も一部ではありますがございました。
 一方で、データを公開することによって、問題もやはり起きております。データ公開経験をお持ちの方に同じように聞いたところ、2018年には6.9%の、2020年には5.8%の方が、何らかの記述をされていました。研究者の方が非常に心配し、かつ、大事にしている引用について、こちらも実際に無断で使われたという事例がございました。
 1つ目ですけれども、論文に引用も謝辞も書かれていないケースが多いと。公開に際しては、doi等の番号をつけてデータといえどもきちんと引用してほしい。そのデータを取得するための労力をリスペクトする仕組みが必要ということで、これは本当に一言一句そのとおりかと思います。
 2点目に関しましては、公開したデータをほぼそっくりそのまま使われたものが御自身の査読に回ってきたということで、びっくりしたという表現を使われているのですけれども、こういったことがあると、やはり研究データ公開に対するモチベーションの低下につながってしまうのではないかと心配されるところではあります。
 続きましては、データマネジメントプラン(DMP)の作成経験についてです。海外ではDMPの要求によって研究データ公開が進んでいるということがよく議論に上りますけれども、日本においても助成機関のDMP要求が始まりまして、作成経験を持ちの方が、2018年、20年で約2割いらっしゃいました。
 実際に書かれたDMPといたしましては、JST、AMED、NEDOなどの助成機関もあれば、所属機関、個人や研究グループのためのものが幾らかございます。作成理由の1位としては、助成機関が要求しているからとありましたので、やはり助成機関のDMP要求が、その作成を牽引しているのではないかと推察いたします。
 一方で、未作成の方の中で、52%の方がDMPを知らなかったと選ばれておりまして、まだDMPを御存じない方も一定数いらっしゃるのではないかと思います。
 今度は、データ公開に対する評価です。自身というよりは自分の学生さんとかがデータを公開していることを評価されていますかという質問ですけれども、まだ「分からない」の比率も多いですし、回答者の方は評価しているとされている場合でも、コミュニティや機関においては、そうでもないといったような回答も見受けられました。
 最後に、データの整備・公開・保存の依頼意思ということで、データ公開については、資金もお金も時間も足りないということで、第三者、データキュレーターや図書館員にお願いしましょうという議論も行われますけれども、依頼したいとお答えになったのは、41.1%の方々でした。
 どのような内容をお願いしたいかということですけれども、適切なデータ形式への変換ですとか、リポジトリの選択、ライセンスの選択、データの成形など、かなり専門性の高い部分をお願いしたいということがありまして、ここはやはり専門性を持つ人材の育成が必要ではないかと考えられます。
 最後は、ここまでのまとめですので、割愛させていただきます。
 私からは以上です。ありがとうございました。

【安浦主査】  池内先生、非常に分かりやすい御説明ありがとうございました。
 ただいまの御説明に関しまして、御質問等がございましたら、挙手にてお知らせください。
 では、私から最初に確認させていただきたいのですけれども、論文公開やデータ公開の定義は、オープンで、かつ無償という条件であると考えてよろしいのでしょうか。

【池内学術調査官】  無償ですとか限定公開のところは特に縛りをかけておりません。少し戻らせていただくのですけれども、データ公開の方法について、11ページのいずれかの方法で公開していれば、公開経験がありということにしており、ここで、例えばログインが必要であるとか、場合によっては費用が必要な場合であっても、何らかの方法でアクセスできるのであれば、公開としております。
 論文に関しては、完全に無料ということは、そうなのですけれども。

【安浦主査】  だから論文とデータでは、公開の意味が違うわけですよね。

【池内学術調査官】  そうですね、やや意味が違います。

【安浦主査】  論文はパブリッシュした瞬間に公開ですよね。

【池内学術調査官】  はい、そうです。

【安浦主査】  データの場合はいかがでしょうか。

【池内学術調査官】  データの場合は、やはり非常にいろいろと条件がございますので、そこは不問といいますか、この方法で登録していればということにしております。

【安浦主査】  分かりました。

【池内学術調査官】  ありがとうございました。

【安浦主査】  ありがとうございます。
 美濃先生、どうぞ。

【美濃委員】  理化学研究所、美濃でございます。
 簡単な質問ですが、対象の言語について、調べると英語で書いたデータはかなり公開の率が高いのですが、日本語で書いた論文に対してデータはほとんど公開されていないという印象を持っています。そのあたりはこの調査では何か区別されたのですか。そうではなくて一緒にされたのでしょうか。

【池内学術調査官】  はい、一緒にしております。特に日本語のデータや、英語のデータ、他言語のデータという区別は、しておりません。

【美濃委員】  そこは大変重要な点です。日本語の論文の公開、あるいは論文についているデータの公開が非常に遅れているような気がしており、現状、大変気になっている、というコメントでございます。ありがとうございました。

【池内学術調査官】  ありがとうございます。
 自由記述で教育利用というところがございましたけれども、やはり日本語のデータですとか、日本のデータを公開するということで、教育利用においては非常に重要な意味を持つと思います。今後の調査の参考にもさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

【安浦主査】  ほかに何か御質問はございますか。八木先生、どうぞ。

【八木委員】  お伺いしたいのが、利用目的について、論文はいいのですけど、データやコードに関して、特にデータに関して調査される中で、その利用対象が学術研究利用なのか、また教育利用なのか、また商業利用なのかということはお調べになられていますでしょうか。といいますのは、その利用用途によっては、いろいろな制限等もありますし、それからデータはやはり知財ですので、知財に関する観点で、調べられた中でもし情報が集まっているのであれば、お伺いしたいと思いました。

【池内学術調査官】  ありがとうございます。利用目的に関しましては、2016年の調査では少し調べまして、自分の研究に使うために利用しているとか、もしくは再分析をして、結果を確認するためとかという感じで、調査をしましたが、2020年調査に関しては、目的についてはお伺いしていません。
 ただ、自由回答の中で見られますのは、このデータが本当に使えるかどうかを少し確認した上で、例えばお金を払ったり、ダウンロードして調べたりしたいけれども、それができない場合があるため、何とかしてほしいというような回答はございました。
 このように、特に教育目的については、これまでは調べておらず、どちらかというと研究のためのデータ利用ということで調べてまいりましたけれども、大分データの利用は公開に比べて進んでおりますので、なぜそのデータを使っているのかというところは、非常に重要な論点として持ち帰らせていただければと思います。ありがとうございました。

【八木委員】  はい。

【安浦主査】  引原先生、お願いします。

【引原委員】  ありがとうございます。池内先生、丁寧な説明ありがとうございます。
 22ページで、「データを公開したことによって起きた問題」とありましたが、これは論文ではなくて勝手にデータが何かに流用されたというイメージでしょうか。

【池内学術調査官】  こちらは、データに関してお伺いしております。
 今、引原先生は論文に関してとおっしゃったのですけれども、論文に関しても同じことは起きているのではないかと思います。プレプリントを公開して、それがスクーピングされてしまうとか、論文で一旦公開したものを別のところで発表されてしまうということと、同じことがデータに関しても起きているとも捉えられるのではないかと思うのですけれども、やはりデータがメディアとして新しいだけに、よりその使われることに対する抵抗感や慣れなさのようなこともあるのではないかとは感じております。
 もちろん、だからいいという話では全くないのですけれども、学術界の中でメディアが変わっても、どうしても起こり得る問題と捉えております。

【引原委員】  もちろん、いろいろな論文誌がデータ公開を要求しているときに、CC-BYのレベルセットといいますか、レベルをどこに置くかというのは論文誌によってまちまちだったり、著者に委ねられたりしているところがあるのですけれども、ここで言われているのは何か公開してしまったら、そのままどこか使われてしまったという意味でしょうか。論文であれば査読の過程で、そういうことはチェックを受けるように思います。データの出どころが分からければ、それに対して査読者は必ず聞いてくると思います。
 ですから、ここのアンケートの意図、その回答の意味がもう一つ分からなかったというのが正直なところでした。

【池内学術調査官】  この調査とは別ですけれども、別途ジャーナルのポリシーを調査したことがございまして、そのときに見ると、データの提出は求めるけれども、査読の対象としてないという雑誌も結構ありました。

【引原委員】  そうですね。

【池内学術調査官】  そこまではもう見切れない、査読者も確認がし切れないということかと存じます。そこまでチェックするのが、今の体制では正直難しいのではないかという気もいたします。

【引原委員】  たまたま査読者がそのデータの著者、作成者だったというのは、投稿者からすると事故みたいなものだと思います。ですから、それを検証する、データの同一性をチェックするソフトといったものを何か準備しておかないといけないのだろうとも思いました。ありがとうございました。

【池内学術調査官】  ありがとうございました。

【安浦主査】  引原先生、非常に重要なポイントをありがとうございます。
 論文は、引用のチェックをかけるのは、今、大学では、特に博士論文では当たり前になってきていますけども、データも同じようなことをやらないといけないのかもしれないですね。
 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、池内先生、どうもいろいろありがとうございました。
 美濃先生からも御意見をいただきました、日本語のデータ公開に関する問題点の辺りもまた調査していただきたいと思います。

【池内学術調査官】  はい。

【安浦主査】  それから、八木先生のお話でありました、利用者側に立った調査についても、どういう目的で利用したかというのは分からないため、行っていただければと思います。

【池内学術調査官】  はい。利用も大分進んでいると思いますので、そのあたりは、ぜひ調査できればと思います。

【安浦主査】  どういう母集団に対して調査すればいいのかというのは難しいと思います。商用利用した人が論文を書くわけではないですから、いわゆる研究者宛てにアンケートを取ってもなかなかデータは取れないと思います。

【池内学術調査官】  そうですね。一方で、データを公開する意味として、研究に使われるだけではなくて、市民の方に広く使っていただくというのは、非常に大きな意義があると思いますので、ぜひそのあたりも含めて調査できればと思います。

【安浦主査】  データの公開をしているシステムで、どういう目的でデータを使いますかといった情報は取っているところが多いのですか。

【池内学術調査官】  いろいろあるのだと思います。調査研究目的でなければダウンロードさせないとかアクセスさせないという場合もございますし、一方で、本当にオープンにしているところもあります。比率については、私のほうでは数字は持ち合わせていないのですけれども、やはりデータの性質によるのではないかと思います。

【安浦主査】  その辺も含めて、調査の仕方も難しいと思いますけど、ぜひお願いしたいと思います。

【池内学術調査官】  はい。

【安浦主査】  それから、最後のところで、図書館員ですとかデータキュレーターに依頼したいという話は、まさにデータの公開の手間がかかる部分を何とか組織側で助けないといけないということが如実に出た、そういう結果だったと思います。この辺については、引原先生や深澤先生に出ていただいている、この情報委員会の下に新しくつくった、オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会で議論されているのでしょうか。

【深澤主査代理】  深澤でございます。現時点で議論されていませんので、もしよろしければ、池内先生に、そちらの検討部会においても、今のところに焦点を絞ってお話しいただけないかとお聞きしていて思いました。

【池内学術調査官】  はい、機会がありましたら、ぜひよろしくお願いいたします。
 この点に関しましては、実は2016年と18年の調査では、もし支援をする場合に専門性が高い項目は何ですかと、お伺いしていました。専門性が比較的低いところであれば、例えば図書館でも支援がしやすいのではないかと思って聞いたのですけれども、今回2020年にやってほしいところはどこかと聞いたら、むしろ専門性の高いところを担ってほしいという回答でしたので、ここは、ひとつ腹を据えて考えなければいけないところかと認識しております。

【深澤主査代理】  そうですね、分かりました。
 図書館の方にアンケートを取ると、また違う結果が出てくるかと思います。

【池内学術調査官】  そうですね。

【安浦主査】  引原先生、どうぞ。

【引原委員】  深澤先生が今おっしゃいましたけれども、委員会の中で、図書館が今後、どういう業務を担っていくのがベストか、あるいは方向性かという議論の中で、データというのは当然出てくる話だと思います。ただ、手が足りないから図書館の人に対してデータの処理をしてねと投げ出すような形ではやはり回らないと思います。
 前にも申し上げたかもしれませんけれども、現場に近いところ、現場の物理が分かっている、技官のような方がデータ化するというのは必要ですし、変換とかそういうのはどちらかというと情報系の技術職員の方や大学院生のほうがたけているわけです。図書館は、メタデータなどのカタロギングにたけているということもありますので、やはり1つの部署に押し込めるとしてしまうと、回らなくなるのではないかなと思います。下の検討部会で、全部図書館にお願いするというのは無茶かもしれないなと思って聞いておりました。

【池内学術調査官】  おっしゃるとおりかと思います。

【安浦主査】  引原先生、深澤先生、貴重な御意見ありがとうございます。
 ぜひ下の検討部会で、どういう部分を図書館が担って、どういう部分をそれぞれの研究者の近いところ、あるいはいわゆる情報系のサービスをするセンターのようなところでやるべきかという議論も含めて、オープンデータ時代の日本の学術基盤をどうするかということについて、御議論いただければ非常にありがたいと思いますし、そのためのいろいろな調査を池内先生にしていただければ、今後、日本としても助かると思いますので、よろしくお願いいたします。

【池内学術調査官】  ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【安浦主査】  そのほか、よろしゅうございますか。
 それでは、池内先生、本当に貴重なお話をありがとうございました。また、委員の先生方、非常に大切な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 今後、本日の議論を情報委員会としてどう使っていくかについては、また、事務局と相談させていただきたいと思います。ありがとうございました。

【池内学術調査官】  ありがとうございました。失礼いたします。

【安浦主査】  失礼します。
 それでは、情報分野の研究開発課題及び振興方策についての審議に移りたいと思います。本日は、前回の委員会より引き続き、情報分野の研究開発課題案と、今年度の前期におまとめいただきました研究DXの推進方策の中間まとめとを併せまして、情報分野の振興方策の取りまとめを行いたいと考えております。
 それでは、情報分野の研究開発課題及び情報分野の振興方策の取りまとめ案につきまして、資料2-1及び資料2-2に基づきまして、事務局より説明をお願いします。

【佐々木専門職】  ありがとうございます。事務局でございます。
 それでは、資料2-1と2-2に基づき、御説明させていただきます。1枚おめくりいただきまして、スライドの2でございます。今回の資料のスライド2とスライド3におきましては、前回の委員会において、研究計画・評価分科会で安浦先生に御発表いただいた内容ですとか、事務局より御提示しました振興方策の取りまとめ案について、御意見をいろいろといただきましたので、そういった内容をまとめさせていただいております。スライド2、スライド3、それぞれ振興方策の1章、2章のそれぞれの構成の形に合わせて整理させていただいております。
 まずスライド2でございますが、研究DXを支える研究開発デジタル基盤の構築に関する御意見ということで、1.1の「研究DXによる研究プロセスの変革とそれを支える研究データ基盤の重要性」、1.2の「研究データ等管理・共有・利活用のシステム・ツール」、1.3の「研究データ等管理・共有・利活用のための制度・ルール」と、この3つのところでいただいた御意見を整理させていただいております。簡単に幾つか御紹介させていただきますと、研究の進め方、研究システムが大きく変わる中で、それに基づいたサポートが重要であるといった御意見ですとか、行政や民間でも同じ課題を持たれておりますので、連携して取り組んでいくことが必要であるといった御意見をいただいております。
 また、研究データの公開・共有において、そのネガティブな影響をどうケアするのかが必要であるといった御意見ですとか、社会受容性を考慮することも必要である。また、その研究データについて適切に管理することが重要であり、研究者自身もそのような取扱いを認識しておくことが必要だという御意見もいただいております。
 さらに研究データのグローバルな共有、流通に関する御意見もいただいております。これらにつきましては、昨年9月にまとめていただいた議論の中間まとめを基に、今、振興方策の取りまとめ案の1章でまとめさせていただいている内容で、既に書かせていただいている内容が改めて重要であるといった御意見だったと考えております。
 おめくりいただきまして、スライド3でございますが、こちらは情報分野の研究開発課題に関する御意見をまとめさせていただいています。研究開発課題を3つほど、前回挙げさせていただいておりますが、2つ目の「Society 5.0の社会実装に向けた信頼基盤の構築」に関しては、制度面を重視した印象があるといった御意見ですとか、社会受容性のように一般市民がどのように受け止めるかということが重要であるといった御意見をいただいております。
 3つ目として挙げておりました、「カーボンニュートラルを中心とする社会課題解決を支える情報科学技術の開発」につきましては、環境問題解決だけではなくて、その他の社会課題解決も含めるのかどうか、明確にするべきであるといった御意見をいただいておりました。
 委員会後、メールで瀧委員より御意見をいただいたので、御紹介させていただくと、マイクロプラスチック問題の解消など、情報技術以外も含まれるように読めるため、表現を見直すべきであるといった御意見もいただいているところでございます。
 ここまでは研究開発課題の内容に対する御意見でございまして、前回の委員会では、研究開発課題を今後どう深掘りしていくか、その検討の手段について御意見をいただいており、それをその下でまとめさせていただいております。
 まず、検討内容についてということで、研究開発課題の深掘りの方法について御意見をお伺いしたのですけれども、研究開発課題の検討を深めてどうまとめていくかのプロトタイプを示すべきということで、何を深掘りするのかということを、まず示すべきではないかといった御意見をいただいていると考えております。それに関しましては、どこまでができていて、何か未解決であるとか、日本の強みや弱み、グローバルに見たときの研究開発の価値といったものが分かると良いといったような御意見をいただいているところでございます。
 検討手段につきましては、JSTの創発的研究支援事業や、次世代研究者挑戦的研究プログラムなどの事業と連携するということですとか、市民や2030年、2050年に中核として活躍する高校生などの世代から意見を聞くといった御意見をいただいております。
 前回の委員会では、塚本委員より2050年に中核として活躍する高校生から御意見をいただいたらどうかという御意見をいただいておりましたが、その後メールで、具体的にジュニアドクターですとかグローバルサイエンスキャンパス、SSHなど文部科学省において取り組んでいるプログラムに参加している世代から意見を聞くといいのではないかと追加で御意見いただいておりますので、ここで御紹介させていただきました。
 おめくりいただきまして、スライド4でございます。これは前回お示しした内容から、今、御紹介しました御意見を踏まえまして、少し変えさせていただいた情報分野の研究開発課題の案でございます。赤字の部分が、変えさせていただいた部分でございまして、2つ目の「Society 5.0の社会実装に向けた信頼確保のための基盤の構築」ということで、制度面のみを重視しているような印象を与えるといった御意見もいただいておりましたので、情報科学技術自身の創出を目指すことについても研究対象であるということを明示させていただくとか、制度だけではなくて社会受容性といった制度とは言い切れないものについても含めるような研究をしていくべきといった御意見を踏まえて、修正をさせていただいております。
 3つ目につきましては、環境問題解決だけではなくて、その他の社会課題解決を支える情報科学技術を開発するということが目的であるということを明示させていただいております。
 この3つの研究開発課題について、案としてお示しさせていただいておりますが、これで決定していいかどうかといったことについて御審議をいただければと考えております。
 おめくりいただきまして、スライド5でございますが、深堀りの方法について前回お示ししたものからいただいた御意見を踏まえて、少し拡充させていただいたものでございます。実際にその「研究開発課題に関する今後の検討内容」の例として挙げさせていただいておりますのが、深掘りする内容として考えているものでございまして、実現を目指す将来の社会像であるとか、実施すべき研究テーマ、国内外での科学的インパクトですとか研究動向、あるいは日本の強み、弱みといったところについて深掘りできればと考えております。
 深掘りする方法につきましては、若手研究者へのヒアリングだけではなくて、高校生などの世代も含めた一般市民との意見交換ですとか、学会だけではなくて、学術会議、産業界やJSTの事業と連携したイベントを企画するといったことが考えられると、御意見をいただいて、書かせていただいておりまして、こういったところの中から、今後、研究開発課題として決めていただいたものの深堀りをしていきたいと考えているところでございます。
 資料2-2を見ていただければと思いますが、こちらについても前回より変更したところについて御紹介させていただきます。基本的には、今、御説明しました情報分野の研究開発課題について、変えた内容を反映させていただいているところでございますけれど、それ以外に2か所大きく追加させていただいているところがございます。研究開発課題3つともに出ている要素ではございますけれど、情報科学技術が他の分野と連携しまして、連携する中で情報科学技術自身が発展していくといった方向性がありまして、それを明示的に書きたいと考え、追加させていただいています。
 具体的には、今画面に映させていただいておりますが、1ページ目の3パラグラフ目のところ、「また」から始まるところで、「あらゆる分野でAIやデータの活用が進んでいることから、情報科学技術の活用は今日の科学研究における基本的アプローチとしてその重要性を高めていると考えられる。様々な分野との連携をさらに進め、各分野での新たな価値の創造に貢献するとともに、それにより情報科学技術自身も更なる発展を遂げるとの再認識が重要である」と追記させていただいております。
 ページを送らせていただきまして、4ページ目の2章、2.1の「人間理解に基づく情報科学の新潮流の探求」の少し上の部分、このパラグラフの一番最後の一文、「さらに」から始まる一文についても、同じ趣旨で追加をさせていただいておりまして、「情報科学技術が、様々な科学技術分野での新しい研究手法において中核的役割を果たすとともに、情報科学技術自身も異分野融合の中で新たな発展につながることに留意して多角的な議論を継続するべきである」と追記し、先ほどお話ししました趣旨とともに、その議論を今後も継続していくべきであるということを明示させていただいているところでございます。
 説明は以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございました。
 それでは、審議に移ります。ただいまの御説明に対しまして、御質問、御意見、またこれが今年度最後のまとめにしたいと思っておりますので、全体御覧になって御意見等ございましたら、お願いしたいと思います。
 瀧先生、どうぞ。

【瀧委員】  瀧です。今、追加されたところについてコメントです。他分野との協調によって、両方とも伸びようという表現だと思うのですけれども、情報処理が実際に他分野と組んでいろいろな活動を行うときに、一つは、その分野を非常に重要視して、情報処理技術というのをツールとして使うという場面が、今、非常に多いと思います。それを超えて、情報処理技術もさらに発展させようと思うと、一工夫要るのではないかなと思います。
 そういうときには、例えば一緒に組む分野が一つだけではなくて、同時に複数分野の方と一緒に情報処理技術を使うことで、一方向だけの使い方ではなくて、複数方向の使い方を見ながら、情報処理技術が発展していくのではないかと思いました。
 以上、コメントだけです。

【安浦主査】  どうもありがとうございました。
 まさに、この文書の前半の1番はあくまでツールに徹して、情報基盤を提供しますということを言っていて、2番目は、先ほど説明がありましたように、3つの柱を立てておりますけど、これもカーボンニュートラルですとか、そういう地球環境の幅広いいろいろな専門分野との融合の中で、新しい情報科学が発展するのではないかという気持ちも込めた修正になっていると御理解をいただければと思います。
 先生のおっしゃること、まさにそのとおりだと思います。どうもありがとうございます。

【瀧委員】  ありがとうございます。

【安浦主査】  ほかに何かございますか。
 田浦先生、どうぞ。

【田浦委員】  文言の話で恐縮ですが、最後の5ページ目についてです。
 この括弧、例えば、「気候変動シミュレーションを行うためにデータセンターからのCO2排出量が増加」となっていて、私はこの気候変動シミュレーションをやり玉に上げて、それが電気を使うからCO2を排出するというような書き方はやめたほうがいいのではないかと思います。カーボンニュートラルの話は、節電の話に矮小化されてはならないというところが重要で、エネルギーのソースの転換というところが本質だと思います。発電以外のところもかなり大きいコンポーネントですので、書くにしても表現を考えたほうがいいのではないかと個人的には思います。

【安浦主査】  どうもありがとうございます。一番大きな部分は、コンピュテーション自身がエネルギーを食うというイメージをあまり出さないようにという認識でよろしいですか。

【田浦委員】  エネルギーは食うのですけれども、取り立ててこの気候変動シミュレーションを皮肉交じりに取り上げることです。世の中全体としてのこの電気の消費量ということであれば、まだ分かりますけれども、というような趣旨です。

【安浦主査】  分かりました。その辺は工夫させていただきます。頭の隅に富岳やポスト富岳がどれぐらい食うかというようなことはあると思います。今の原発の原子炉1基分ぐらいの電力を食うという話が頭の隅にあったのかもしれ
ません。この辺はまた事務局と相談させていただきます。

【田浦委員】  世の中のエネルギー源の転換というところにフォーカスをするべきかと思います。

【安浦主査】  まさにそうですね。
 それと、柔軟な再生可能エネルギーの不安定性をしっかり安定化させるのに情報技術が使えるというあたりを強調するということですね。分かりました。どうもありがとうございます。
 井上先生、どうぞ。

【井上委員】  井上でございます。何点か申し上げたいと思います。
 最初に、3ページの1.3、「研究データ等管理・共有・利活用のための制度・ルール」のところの、3番目でございます。「自然現象に由来するデータ、個人のデータそれぞれの性質を踏まえ」とございますが、この個人データの話はすぐ後に出てくる個人情報保護法の関係で、特出しをされているのだと思いますが、自然現象に由来するデータを特に挙げている理由が文章を読んでいて分かりづらいと思いました。実験データですとかシミュレーションデータですとか、そういうものも全て含めてデータの管理の仕組みや制度を考えていくという文脈ですので、そこを教えていただきたいというのが一つ。
 関連しまして、今の丸のところでございますけれども、個人情報保護との関係だけについて特に指摘をしているわけですが、考えてみますと、データの帰属の問題ですとか、知的財産の問題、こういったものも検討しないと利活用が進まないということがございます。特に産学連携を念頭に置いた場合です。ですので、今からでも間に合うようであれば、例えばデータの帰属、知財の問題などもこの丸の中に入れていただくといいのではないかと思いました。それが1点目です。
 2点目は、4ページ、2.1の「人間理解に基づく情報科学の新潮流の探求」というところの、3番目の丸、なお書きのところです。「情報科学技術の開発に伴い生ずる社会問題解消に向けたバイ・デザインでの取組にも留意することが必要である」と書いてあるのですが、具体的な例示がないため、どういう問題にバイ・デザイン、最初からよく考えた上で研究の設計をすべきだということなのかが、読んでいて分かりづらかったため、教えていただきたいというのがございました。
 あと2点ほどございますが、このページの2.3の、先ほども御指摘ありましたカーボンニュートラルの関係のところですが、これはカーボンニュートラルだけではなくて社会課題もということで、前回発言させていただいたのですけれども、これでも全く問題ないのですが、社会課題というと幅広過ぎるというような感じもいたしまた。ここで多分言おうとしているのは、SDGs、持続可能な開発目標のようなものを念頭に置いた社会課題だと思いますので、SDGsですとか、あるいは持続可能な社会ですとか、そういったキーワードを入れたほうが、より分かりやすくなるといいますか、現在の社会状況で求められている課題の解決をしていくということが明確になるのではないかと思いました。
 あと、5ページの最後の丸でございますけれども、DFFTですとか経済安全保障も非常に問題だと思うのですけれども、ここの、2.3に書くべきことなのか、先ほど申し上げていた、3ページの、「研究データ等管理・共有・利活用のための制度・ルール」のところで書くべきことなのかと。データの制度的な基盤、制度・ルールのほうで書いたほうがいいのではないかなという気がしたのですが、ここに入れるべきなのかどうか、御検討いただければと思いました。
 以上でございます。

【安浦主査】  井上先生、どうも貴重な御意見ありがとうございます。
 最初の個人情報保護のところにデータの帰属ですとか、いわゆる広い意味での著作権ですとか、知財とかの問題、そこはやはり非常に重要なポイントになってまいりますので、何らかの形で先生のおっしゃるところに入れるのがいいのではないかと思います。
 それから、バイ・デザインのところでございますけど、ここは、もう少し具体例があったほうがいいという、そういう御意見と承ってよろしいですか。

【井上委員】  そうですね。何かいろいろ議論されたときに出てきたような話だったと思うのですけれども。

【安浦主査】  若手の方たちから出た、前回、前々回で議論していた話ですとか、今日のスライドにも少しありましたけど、例えばロボットと共生する社会で新しい問題が起こってくるという話も当然出てきますので、そういうことがある程度、念頭にあるということかと思います。

【井上委員】  分かりました。
 もしかしたら私が発言したのではないかと思うのですけども、読んでいるとき、具体例が何か一つでも入ったら、分かりやすくなるのではないかと思いました。

【安浦主査】  事務局と相談させていただきます。
 そしてSDGsや持続可能性とかいう言葉を入れたほうがいいというのは、まさに先生のおっしゃるとおりだと思います。ESGという言葉もよく言われますよね。Environment、Social、Governance。それは、今はどちらが主流なのですか。

【井上委員】  SDGsは多分その到達すべきゴールといいますか目標に着目していると思うのですけれども。

【安浦主査】  はい、ゴールですね。

【井上委員】  ESGはEとSはそれだと思うのですけど、Gはガバナンスですので、またさらに別のものも加わっているという気がしますので、SDGsのほうがいいのではないかという感じがいたします。

【安浦主査】  社会や地球の持続可能性というような書き方のほうがいいということですね。

【井上委員】  そうですね。

【安浦主査】  分かりました。その辺も議論させていただきたいと思います。
 最後のところも確かにこういう書き方をしていると、要するに社会問題との関係性の部分ですから、2の主題は情報のピュアな話ですので、1に持っていったほうがいいかもしれません。どこに置くかは事務局と相談させていただきたいと思います。どうも貴重な御意見ありがとうございました。

【井上委員】  よろしくお願いいたします。

【安浦主査】  ほかに何か。事務局、何か御意見ありますか。

【上村専門官】  ありがとうございます。事務局の上村でございます。
 まず、今おっしゃっていただいたところです。ここは、安浦主査と御相談させていただければと思いますが、ここは研究開発課題として取り組んでいくことを挙げているところでございまして、その中で、井上先生も先ほどおっしゃっていただいたようにSDGsに代表される社会的課題、それをSociety 5.0といってもいいのですけども、そういった社会課題に対しての取組、その中で政府政策としても言われていることも含めて考えていくというような感じで最後締めているところではありますので、研究開発課題として取り組むという観点では、ここであってもいいのではないかと、今伺っていて思っていたところです。ここはまた主査と御相談させていただければと思っております。
 また、先ほどおっしゃっていただいた、1.3のところにどういったことを書き込んだほうがいいかというところに関しては、先ほど安浦主査がおっしゃっていただいた観点で相談させていただきながら、書き方を検討させていただけるといいのではないかと思ったところでございます。
 それから、最初におっしゃっていただいた、自然現象に由来するデータは、個人データに対比した表現として挙げたような表現でございまして、これは前のときにも御議論いただきましたけれども、先ほど井上先生がおっしゃっていただいたように、いわゆる研究データやシミュレーションデータといった一般的なものを想定しているところではあるのですけれども、個人データをここの後ろで特出しするときに、それに対比する表現として、自然現象に由来するデータと挙げたところであります。その御議論のときには研究データの全体を網羅したような形になるかと御議論いただいていたかと思うのですけれども、もし、それでは今見返していただいたときに、今、御説明させていただいた言い方ですと何か不十分ですとか、もしくは重複感のようなものがあるようだったらば、御意見いただければと思いますが、御説明させていただくと、そのような経緯だったところでございます。
 以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございます。
 井上先生の御意見もいただいたので、事務局と相談させていただきたいと思います。井上先生、どうもありがとうございました。
 そのほか、委員の皆様方、よろしゅうございますか。
 それでは、今いただいた御意見で、主査と事務局で預からせていただいて、最終版を作ります。委員の皆様方には最終版をお送りしますけど、議論としては、これで主査預かりにさせていただきたいと思いますけど、よろしゅうございますか。
 特に御異議ないようですので、そのようにさせていただきたいと思います。どうも長々と御議論に付き合っていただきまして、ありがとうございます。
 情報分野というのが、日本の科学技術の根幹をやはり支えないといけないわけで、ここのところはいろいろな分野の先生方のお知恵を集めて少し時間をかけて御議論させていただきました。これで今年度の本委員会の一つのまとめとして、次年度はこれをベースにより具体的な問題への議論に展開していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
 本日の議論はここまでとしたいと思いますけど、事務局から事務連絡がございましたらお願いします。

【上村専門官】  ありがとうございます。事務局の上村でございます。
 たくさんの御議論をいただき誠にありがとうございました。安浦主査におっしゃっていただいたように、今後の議論、検討に進めていければと、私どもも考えております。
 事務連絡でございますが、次回の情報委員会は、年度が明けてからになるかと思いますが、4月か5月あたりを目途に開催できればと想定しており、後日、皆様の御都合を伺わせていただければと考えているところでございます。
 事務局からは以上でございます。

【安浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、これで本日の情報委員会、閉会とさせていただきます。どうも熱心な御議論ありがとうございました。次回からも、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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研究振興局参事官(情報担当)付

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