情報委員会(第14回) 議事録

1.日時

令和2年12月17日(木曜日)14時30分~16時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. ジャーナル問題検討部会中間まとめの報告
  2. 第81回学術分科会・第13回情報委員会合同会議(書面調査)の結果の報告
  3. Society 5.0実現化研究拠点支援事業の報告
  4. 分野別戦略・計画及び分野別プログラムの策定の検討
  5. その他

4.出席者

委員

西尾主査、井上委員、上田委員、奥野委員、梶田委員、喜連川委員、鬼頭委員、栗原委員、田浦委員、瀧委員、津田委員、長谷山委員、引原委員、福田委員、八木委員、安浦委員、若目田委員

文部科学省

塩崎大臣官房審議官(研究振興局担当)、橋爪参事官(情報担当)、三宅学術基盤整備室長、黒橋科学官、竹房学術調査官、池内学術調査官

5.議事録

【西尾主査】 それでは、定刻になりましたので、科学技術・学術審議会情報委員会の第14回会合を開催いたます。
今日も、コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで開催いたします。今回の議事は全て公開とし、報道関係者も含め、傍聴者の方にもウェブ参加いただいておりますので、御承知いただければと思います。また、通信状態などに不具合が生じるなど、続行できなかった場合は、委員会を中止する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
本日は、乾委員、来住委員、佐古委員、辻委員から欠席の御連絡を頂いております。
事務局から配付資料の確認と、オンライン会議の注意事項の説明をお願いいたします。

【齊藤情報科学技術推進官】 資料の確認の前に、前回の委員会以降、事務局に異動がございましたので、御紹介させていただきます。
当付に専門官として上村が着任しております。

【上村専門官】 上村でございます。よろしくお願いいたします。

【齊藤情報科学技術推進官】 次に、議事次第に基づきまして配付資料の確認をさせていただきます。資料1、ジャーナル問題検討部会の中間まとめでございますが、枝番がついて3つに分かれております。資料1-1が中間まとめの概要、資料1-2が中間まとめ、資料1-3が開催状況等についてという資料でございます。資料2が、9月まで検討いただきました、コロナ新時代に向けた今後の学術研究及び情報科学技術の振興方策について(提言)でございます。資料3が、八木先生に御説明いただきます文部科学省Society 5.0実現化研究拠点支援事業「大阪大学ライフデザイン・イノベーション研究拠点」パーソナルデータが創る未来という資料でございます。資料4が、分野別戦略に関する取組方針について(案)という資料でございます。また、これに関わる参考資料を、参考資料1、2、3と3つつけてございます。参考資料1が研究開発・評価分科会における研究開発プログラム評価試行実施に関する議論のまとめ(案)、参考資料2が計評分科会における新たな仕組みの方向性(案)、参考資料3が第73回研究計画・評価分科会での審議・議論を踏まえ、各分野別委員会で御議論いただきたい2つの視点でございます。もし欠落等ございましたら御連絡いただければと思います。
次に、オンライン会議の注意事項を申し上げます。通信の安定のため、発言時を除き常時マイクをOFF、ビデオをOFFにしてください。主査の西尾先生におかれては、常時マイクをON、ビデオをONにしてください。
発言する場合は、「手を挙げる」ボタンを押して御連絡ください。主査は参加者一覧を常に開いていただき、手のアイコンを表示している委員を御指名ください。本日は、議事録作成のため速記者の方に入っていただいております。発言する際は、お名前から発言をお願いいたします。
トラブル発生時は電話にて事務局に御連絡いただきますようお願いいたします。また、傍聴者の方にもWebexで御参加いただいております。万一システムが不調の場合には、後日公開する議事録を御覧いただければと思います。
また、事務局より1点、御連絡がございます。委員の異動に関してでございます。9月いっぱいをもちまして、新居委員が御本人の御都合により御退任されてございますので、その点、御報告申し上げます。
以上でございます。

【西尾主査】 御説明ありがとうございました。本日は、議事次第に書いてあります4つの議題を予定しております。
それでは、まずは11月26日に行われました第8回ジャーナル問題検討部会で取りまとめられました中間まとめについて、事務局から説明願います。

【三宅学術基盤整備室長】 ジャーナル問題検討部会の事務局を担当しています学術基盤整備室の三宅でございます。私から、これまでの議論のまとめ、中間まとめについて御報告させていただきます。
内容に入る前に、まず資料1-3でジャーナル問題検討部会の検討状況について御説明させていただきます。
1枚目が、こちら情報委員会に置かれているジャーナル問題検討部会で、特に委員、オブザーバー等について記載させていただいております。
現在、第8回まで開催をしておりまして、今回、中間まとめがまとまりましたので、その御報告をさせていただくという内容でございます。
これまでの開催状況でございますが、2ページ以降でございます。第1回、第2回でジャーナル問題検討部会における様々な論点の整理をした後、その中で短期的な課題とさせていただきましたジャーナル講読価格の上昇及びAPCの負担等について、最初に集中的に議論させていただきました。
第3回、第4回と、それの関係のデータを用いた議論、また第5回、第6回につきましては、大学等研究機関の具体的なデータや契約内容や実績も踏まえて、非公開にて議論を行わせていただいたところでございます。
この中で、第6回において事務局より、「これまでの議論まとめ(中間まとめ)案」を出させていただきまして、御議論いただきました。
当初は事務局から提案させていただいた案は、この短期的な課題のみを記載したような内容でございましたが、その際いろいろ議論をいただきまして、中期、長期の内容も含めて、改めて整理をさせていただいた次第でございます。
第6回から第8回にかけて、中間まとめについて議論させていただきまして、第8回、11月26日に中間まとめが取りまとまったという状況でございます。
それでは、具体的な中身について御説明させていただきます。資料は1-1と1-2がございます。1-2が本体でございますが、今回は1-1の概要に基づきまして御説明させていただければと思います。
まず、「はじめに」には、この議論を始めるに至った経緯を改めて取りまとめております。
ジャーナルを取り巻く問題は、従来の講読価格上昇の常態化にとどまらないで、APCなどの負担増など、より拡大・複雑化しているという状況。また欧州では、OA2020やPlanSなどのオープンアクセス化の動きが活発化し、我が国における研究成果の発信及び学術情報へのアクセスが諸外国から取り残されてしまうのではないかという危機感の一層の高まり。また、このようなことがございまして、本検討部会において、我が国における研究成果の発信及び学術情報へのアクセスにおける目指すべき姿や、喫緊の課題としての講読価格の継続的な上昇及びAPCの負担増について検討を開始したところでございます。
2番目でございます。「学術情報流通をめぐる状況」ということで、改めてまとめさせていただいたものでございます。
大手海外商業出版社の講読ジャーナルを中心とする状況等々がありまして、諸外国では論文のオープンアクセス化を大前提として、例えば公的資金による研究データのオープン化を義務化することが戦略的に進められていることや、また特にデータ駆動型科学の興隆により、論文だけではなく研究データそのものが大きな価値を持ち、国家、企業、出版社、研究機関の次の競争の要素になっているということ。また、大手海外商業出版社による論文のオープンアクセス化に対する出版社の巨大プラットフォームを利用した雑誌購読価格と論文のAPCを一体的に取り扱うサービスの提供が本格化しているという状況。他方、粗悪学術誌を媒体として、粗悪な出版社に人的ネットワークや研究費が収奪の対象となっていることが顕在化している状況。翻って我が国の状況としては、それらの動きに対する対応の方向性が定まらないという状況がございます。
そういう様々な要素が入っているジャーナルの問題でございますが、まず「議論の方向性」として、短期的課題、中期的課題、長期的課題として整理をしました。この短期、中期、長期というのは、部会として議論するものとしての短期、中期、長期として整理をしたものでございまして、短期的課題としましては、ジャーナル講読価格上昇の状態及びAP負担増への対応、中期的課題としましては、オープンアクセス化の動きへの対応、研究成果の発表・公開の在り方、長期的課題としましては、研究成果の発信力強化の在り方、論文数や引用数のみに依存しない研究者評価の在り方を集中的に検討したところでございます。
4番目に、「対応する問題の解析と対応」でございます。
まず(1)でございますが、研究活動のサイクルにおけるジャーナル問題の位置づけということで、研究活動のサイクルを支えるサービスが出版社等でプラットフォーム化されつつあり、研究活動全体が出版社のサービスに頼らざるを得ない状況に向かいつつあるという状況。また、研究成果の公表である論文だけではなく、研究データの管理、共有、公開についても方針を決定していかなければ、出版社より提供される既存のサービスを利用し続けるよりほかなく、ジャーナル問題が、単にジャーナル講読経費の削減方策を講じる問題だけではなく、研究振興戦略そのものの問題となっているということを提起させていただいております。
この中で短期的な課題への対応でございます。現在の学術情報流通の環境下においては、ビッグディール等の講読価格とAPC経費の最適化が、我が国が対応すべき最重要課題であること。具体的な観点でございますが、これまで主として図書館が対応してきたジャーナルの講読経費と各研究者のAPC経費をひもづけし、最適な配分であるかという観点で出版社との交渉が必要であるということ。これらの経費と合わせて、各機関における研究戦略の中で、どのような最適化が図れるのかという検討に基づき、同じような規模感や契約状況の大学等研究機関がまとまり、契約主体のグループ化等を行って交渉に当たることが必要であるということ。また、機関が各自の最適な契約の形を定めた上で契約内容・経費配分を組み替えるとともに、各機関を含めて、お互いが契約しているジャーナル等の情報を共有し、足りない部分を補い合えるような有機的なネットワークを構築することが必要であること。
また、各機関において、後ほど紹介させていただく参考資料のようなデータを収集し、各機関の特色、研究戦略、学術情報基盤の整備方針等を踏まえ、最も合理的な契約形態を判断することが必要である。
併せて、セーフティーネットの構築の観点から、バックファイル等のアクセス維持やその情報の共有とともに、対応し切れない部分についてどのように補うのか、ILLの活用も含めた仕組み構築等の対応が必要であるということを指摘させていただいております。
中期的課題につきましては、現在、議論中でございますが、中間まとめにおいては、このようになっております。
現在は、研究の遂行に必要な論文を入手するという点において、オープンアクセスとなっている論文及び講読誌に掲載された論文の双方に対応しなくてはならず、そのことが大学等研究機関の負担の経費をさらに上昇していると。この状況への対応策は、中期的に達成すべき目標を見据えた検討が必要ということで、引き続き研究成果公開の在り方、オープンアクセス化の動きへの我が国の対応方針について、今後の検討を踏まえて補強する必要があるとさせていただいております。
また長期的課題の点でございますが、こちらにつきましては、学術情報流通に係る長期的な課題については、そもそも研究をどのように評価し、それを支え、新たな研究に挑戦できる環境を作れるかという観点で、研究成果の発信力強化、研究評価の関係について、今後の検討を踏まえて補強していく必要があるとさせていただいております。
以上、概要でございます。
2枚目におきましては、こちらの参考資料をつけまして、具体的に非公開で行ったヒアリングの際に、どのような観点において合理的な契約のためのデータ収集を行っていたのか……。

(音声トラブル)

【西尾主査】 そうしましたら、議題の順番を変えるので、八木先生から、文部科学省のSociety 5.0実現化研究支援事業の説明を15分間でお願いします。

【八木委員】 はい。では、早速始めさせていただきます。2018年度に採択していただきましたSociety 5.0実現化研究拠点支援事業の概要について報告させてもらいます。
この拠点が目指す未来社会はどのようなものなのかというイメージを理解していただくために、作ったムービーを御覧ください。

(動画上映)

【八木委員】 何となくイメージをつかんでいただけたかと思いますが、コロナの社会の中で、我々の生活のスタイルも変わっていこうとしています。2030年、あと10年たつと、未来社会というのは大きく変貌を遂げるだろうと。それは、まさにAI技術であり、情報化技術であると確信しています。
1ページ目を御覧ください。この拠点が描く未来社会、我々がやろうとしているソリューションをいろいろと動かしているものを1つの絵の中にまとめています。
この中で我々がビジョンとして掲げているのが、いわゆるウェルネスと言われる心と体の健康、そして我々が実際に生活していく上での豊かな生活という意味でのライフスタイル、生き生きとした生活、また人は一人でいるわけではありません。社会とつながっています。人と人のつながりがあり、やはり生活していく上では、そこに楽しみ、喜びといったものも必要だと。それはまさに何かといえば、学びであり、そして楽しみとしてのエンターテインメント、それを合わせてエデュテインメントと呼んでいます。
これら未来の社会像というものを我々は実現したい。それはまさに人生のQOLの向上をデザインすることだろうというのが我々のビジョンです。
それを実現していく上でのソリューションもやりつつ、一番の本質として、ここで重要になってくるのがパーソナルデータというものになってくるわけです。そういうソリューションを作り上げていく上では、データが極めて重要になってくる。
このパーソナルデータを社会の中でいかに活用するか、我々はそのシステムを作り上げたいと考えている次第です。
もう皆様も御存じのように、社会には大量のデータがあふれています。まさに今、データ駆動型社会に変貌を遂げようとしています。
そういう社会の中で勝負は何で決まってくるか。今お見せしたような未来のビジョンや社会課題、それから生まれてくるソリューションというのは当たり前のことです。
そのソリューションを作っていく上ではドメインの知識やアルゴリズムに加え、社会がデータ駆動型になる中で、データの必要性が極めて重要です。データのあるなしが、ある意味、ソリューションの勝敗を決めると言っても過言ではないかと思います。
こういった社会の中で、世界中のデータを多く持っているのは、実は、ここに書いているような企業です。世界を代表するGAFAや、また中国のBATと呼ばれる企業等が多くのデータを集めています。こういった中で我々は、いかにして戦っていくかということが極めて重要です。
そのため、ソリューションを作っていく上ではドメインの知識やアルゴリズムに加えてデータの価値を高めていくこと、データによる差別化が社会を変える大きなポイントだろうと思っています。
その方策として、まず、大学の中にある学術研究データをうまく利用すると、最先端から革新が生まれるのではないかと考えています。いわゆる大学でやっている研究は最先端の研究であり、そこから革新につなげていく。
また、データの価値を高めるという意味では、健康データだけでなく、我々がふだん暮らす日常生活のデータを個人という単位で連結、蓄積していくことによってデータの価値を高める。
最後に、研究開発のためには、匿名化データでは全く無意味なわけで、仮名化データというものが極めて重要になると思っております。
それが、まさに5ページ目に描いている絵で、健康と日常生活、これを個人という単位で連携し、連携した個人のデータをさらにつなぎ合わせることによって、社会を現すデータが得られていくと考えている次第です。
仮名化データに関しましては、資料の6ページ目の中にあります。仮名化というのは生データではございません。また匿名加工された情報でもございません。その中間的なもので、これはまさに機械学習のアルゴリズムを作り上げていく上では必要不可欠なものだと思っています。
こういうデータを使って、先ほど言いました3つのポイントでデータの価値を高め社会の中で動かすことが、どのようなイメージなのかということについて、被験者の方々にデータを提供してもらうときの説明用のムービーがございますので、御覧ください。

(動画上映)

【八木委員】 こちらで大体のイメージをお分かりいただけたのではないかと思います。我々の拠点の中では、いろいろなソリューションを作っていますが、それ以外に、やはりパーソナルデータをしっかりと社会の中で安全に動かすためのデータ取引市場に必要な情報システム基盤から社会ルールまで全て作ろうとしております。そして、コンソーシアムを作って企業の方々にもこの中に参加いただき、マネタイズを含めて実際に企業の方々と一緒に進められるような体制作りを行っています。
全国の大学からも公募させていただきまして、大阪以外に17都道府県、44の研究プロジェクトがこの拠点に参加いただいています。
ここで扱うのが、まさに個人情報で、それも広い意味でのパーソナルデータとなります。したがいまして、個人情報保護法の範囲だけでなく、社会の中で信頼されるということが極めて重要となってくると思い、我々は全ての仕組みを作っています。
ちなみに個人情報では、ここに書かれているように、民間でデータを利用する、また目的外にデータを利用するというときには、必ず本人の再同意を取らないと利用できないというのが法律上のポイントです。
我々がやろうとしている仕組みには、ダイナミックコンセントと呼ばれる、システム上で再同意をできる仕組みが組み込まれています。そうすることによって、データの利用希望があったときに、本人の意思によってその場で再同意を行い、それによって価格合意が行われて、データの提供が行われる。この再同意というものが、まさに安心感の源になると思っております。これは、GDPRにおける「データポータビリティ権」にも準拠するものと思っている次第です。
こちらは、現在日本の中で動いている同じようなデータ利活用方式です。14ページ目を御覧ください。一番右側が、いわゆる医療情報を扱う次世代医療基盤法にのっとるもの、その横の2つが情報銀行と言われるもので、通常の情報銀行は右から2つ目です。右から3つ目が医療版の情報銀行と言われるもので、SMBC医療データバンクです。
現状見ていただいたら分かりますが、再同意を取って、医療データまで扱える仕組みとして動かそうとしているのが、このPLR基盤です。加えて、研究開発に使えるデータを仮名化という状態で動かしていこうとしています。
なお、病院のデータは現状、含まれておりませんので、また時期を見て、つなげていければと思っています。
この仕組みのデータ提供者は、現在は大阪大学のライフデザイン・イノベーション研究拠点です。本人の同意を基にデータを利用したい企業との間をつなぐ、いわゆる取引の仲介を行うのがデータビリティコンソーシアムで、この事業をスタートしたときに大阪大学の外に社団法人として作らせていただきました。
このコンソーシアムにおいて利用契約を結んで、このデータ取引の仕組みを供えた情報システム基盤を、来年の4月から本格運用を開始するべく、順調に進んでおります。
ただ、コロナの影響によってデータの収集は若干遅れているというのが現状です。
コンソーシアムは、この拠点事業がスタートして、おおむね半年後の昨年の5月に設置しました。企業はスタートした時点から、倍ぐらいに膨れ上がりまして、昨日も申込みがございましたので、現在45法人が参加いただいています。
以上です。ありがとうございました。

【西尾主査】 八木先生、どうもありがとうございました。
現在、我々情報委員会との深い連携の下で行われております拠点支援事業の内容を八木先生から御説明いただきました。御質問等がございましたら、御自由に御発言いただければと思います。喜連川先生、どうぞ。

【喜連川主査代理】 八木先生、御発表ありがとうございました。先ほどの表で見ると、私の理解では、医療系はやはり次世代医療基盤法が圧倒的に強力で、これは世界に類例を見ないような形になっているのですが、どちらかというと病院が対象になっていると思います。先生の御説明をお伺いしていると、それ以外の普通の大学の研究等で集めるデータを対象とされていて、さらにオプトインを上手にするというように感じ取られたのですが、IT的にまとめると、原則コンセントマネジメントのソフトウェアを新たにお作りになられたと理解すればよろしいでしょうか。

【八木委員】 そうですね。情報システム基盤自体の安全性やセキュリティについては、従来からやっているような仕組みが入っています。
ダイナミックコンセントの機能が組み込まれて実際に運用できる形態になっているものが必ずしもないという中で、我々は、それをまず作らせていただいて、加えて、おのおののコンソーシアムがデータを持たなくてもいいような仕組みを特許上は仕込んでいます。

【喜連川主査代理】 NIIのシンポジウムでヨーロッパのヒアリングを実施していますと、ダイナミックコンセントというよりは、ダイナミックデクラインですよね。それをぱっとやれるようにしているというのがドイツの発表で、さすがにすごいなと思ったのですけど、これを学術的にやろうと思うと結構しんどいですよね。モデルから、そのデータのディレーションをやれと言われても急にできないのではないかと思います。
そのような心配があるというのが1点と、もう一つは、プライバシーの話を前面にお出しになられたと思いますが、もう大体みんなそうだよねというコンプリケーションの意識は、かなり共有化されてきたのではないかと思います。
冒頭に先生がおっしゃられたデータ駆動型になっているというところの本質への懸念が、やはり著しく出ているような気がしていて、そこはアルゴリズムバイアスではなくて、もはやデータバイアスだと思います。
例えばアメリカの陽性者検査では、データの中に人種の情報は入れていないそうです。
我々がデータを出すときの個人情報等については、大体、合意が取れているのですが、そもそも出しているデータがどうなのかという点が今、一番、問われる時代になってきています。いろいろな評価軸があると思いますが、今どのようにとらえられているのでしょうか。

【八木委員】 それは、まず、このダイナミックコンセントの仕組みによって同意を得るということでバイアスがかかるという話もあるわけですね。研究者がデータを取る段階でのバイアスというのもありますし、それから、この仕組みの中でのバイアスもありますし、なかなか難しい問題だとは思います。

【喜連川主査代理】 難しいから大学が研究するわけですよね。

【八木委員】 もちろんそうです。

【喜連川主査代理】 どちらかというと、何か研究の比重が、そちらにシフトしているような気が個人的にしたのでお伺いさせていただいた次第です。

【八木委員】 そのような意味で言うと、このクレジットは、まずはデータを流通させるための基盤を作るというところが1つのポイントですので、先生の御指摘いただいた点は、この仕組みが動いていく中で実際に起きてくる課題から解決を考えていくことが必要だろうとは思います。

【喜連川主査代理】 しかし、あまり変なものを大学が流通させるとまずいと思います。

【八木委員】 少なくとも、まずい目的には使わない、それから、大学の目線から見たときの問題が起きないように最大限、審査を行う予定ですけれども、完全な排除というのは、なかなか現実問題として難しい部分があるとは思います。
それから、大学でスタートしますが、これは大学だけではなくて、病院データも全てリンクすることができますし、民間企業のデータもリンクしてくることが可能ですので、まずスタートポイントが学術研究データにあると御理解いただけたらと思います。

【喜連川主査代理】 頑張ってください。

【八木委員】 はい。

【西尾主査】 喜連川先生、貴重なコメントの数々、本当にありがとうございました。
御質問等がございませんか。奥野先生、どうぞ。

【奥野委員】 八木先生、大変すばらしいお話ありがとうございます。
ダイナミックコンセントの仕組みをしっかりと安全に作るというのは非常に重要だと思います。この仕組み、例えばデータを被験者、協力者の方からどんどん集めていったときに、そのデータの保有というのは法人の方でなさるような形になるのでしょうか。

【八木委員】 もともとの研究拠点が基本的に、パーソナルデータを持っていることになります。社団法人はデータを持たないというのが我々の仕組みになっています。
そのため、データは分散的に管理されています。

【奥野委員】 分散的に管理されているので、必要に応じて、その分散されているものを集約するような仕組みということでしょうか。

【八木委員】 そうですね。実質上は同じシステム基盤の部分に乗っている部分がありますけれども、それは一応、法律的には切り分けられていると思ってもらっていいと思います。

【奥野委員】 やはり、この次世代医療基盤法では、医療データも含め、データを分散して持っておくべきなのか、やはりどこかが集約をして、本当に国家の財産として集約していくのかという、そこのポイントというのは明確にはなっていないところだと思います。先生のこの取組では分散として進めていくのか、あるいはこれはスペックであって、将来的には、さらに全国からデータを統合するというようなビジョンもお持ちなのでしょうか。

【八木委員】 基本、今の仕組みの中では、大阪大学が管理するデータもあれば、他の法人が、このPLRのデータ取引に参加してきて、しっかりと安全な体制が作られれば、例えば京都大学に管理の場所ができるという形で、分散化されることにはなります。必要に応じて、コンソーシアムが、あるデータの中から利用に応じたものを提供できるような仕組みを作っているという意味では、今は分散系です。
そういうのを1か所に集めるというのは、現実的にデータ量から考えても少し厳しいような気がいたします。

【奥野委員】 ありがとうございます。大変参考になりました。

【西尾主査】 奥野先生、ありがとうございました。ほかにございますか。

【安浦委員】 安浦です。
大変すばらしい研究をされているということで、ありがとうございました。一言質問ですけれど、個人の立場から見たときに、今ですら、いろいろなデジタルのシステムで、たくさんの契約書が来て、ほとんどの人は読まずに合意したり、怖いからやめたりとしていると思います。そのような状況に対して、このやり方が画期的に個人の手間を省く何らかの方針、方式を提案されようとしているのかというのが1点。もう1点は、大学がデータを持ったときに、万が一事故が起こったときに、法的には、大学が賠償請求を受けるということになるのでしょうか。
以上です。

【八木委員】 ありがとうございます。それは、データを管理している場所がどこかによりますので、大阪大学が管理しているデータは、やはり大阪大学の部分で漏えいがあれば大阪大学の責任になります。
このPLR基盤を作る際に、安全基準を作っていかないといけないということで、4月までには全体にISMSの認証を取る方向で動いているということではあります。
では、この仕組みができたときに、個人の煩雑さが解消されるかというと、これはどちらがいいかという問題かと思いますが、個人の意思に基づいてデータを提供するという個人情報保護法の枠組みの中でやろうとすると、やはりそこで同意を取っていくことをせざるを得ない。特に民間利用の場合には、せざるを得ないというのが今の法解釈の上では正しいのかと思っております。
ただ、その同意の仕組み自体は、できるだけやりやすいように変えていこうと思っていますし、加えて、個人が被害を受けないように、ここに参画できる企業や大学がもともと集めようとしているデータですとか、このプラットフォームに乗る方々の利用目的、また団体の審査というのは厳格に行った上で運用しようと思っております。

【安浦委員】 ありがとうございました。またいろいろ教えてください。

【八木委員】 はい。

【西尾主査】 そうしましたら、まだいろいろ質問があるかと思いますが、取りあえずここまでにさせていただきます。質問がある場合は、八木先生に直接お聞きいただくことも可能ですので、よろしくお願いいたします。
八木先生、ありがとうございました。

【八木委員】 1点だけ、よろしいですか。

【西尾主査】 はい、どうぞ。

【八木委員】 1月19日に公開シンポジウムを予定していますので、また情報委員会の皆様にも案内を流させてもらいます。

【西尾主査】 はい。ありがとうございました。
それでは、次の議題は、議題4といたします。事務局より御説明をお願いいたします。

【橋爪参事官】 今回、音声の不調、大変失礼いたしました。
それでは、議題4、分野別戦略・計画及び分野別プログラムの策定の検討でございます。
参考資料2を御覧いただければと思います。これは研究計画・評価分科会から分野別の委員会に対する依頼でございます。科学技術基本計画ができますと、従来、文科省では、それぞれの分野において研究開発計画を作って取り組んでまいりました。
今回、それを担当している研究計画・評価分科会の方で、次期基本計画の実行に当たっては、一律にそれぞれの分野で研究開発計画を作るというよりは、それぞれの分野の実情に応じて戦略なり計画なりを柔軟に作っていく方向にしてはどうかという議論が進んでおります。
それを踏まえて、各分野の委員会において、来期の進め方の方針を取りまとめてほしいという依頼がありまして、今回お諮りするものでございます。
それでは、資料4を御覧いただきたいと思います。こちらが情報委員会の今後の取組方針の考え方の案でございます。
ポイントだけ紹介させていただきます。資料4の最初の丸でありますけれども、まず経緯について書かせていただいております。研究計画・評価分科会からの依頼ということでございます。
それに対しまして、情報委員会におきましては、皆様御案内のように、これまでも要所要所において、取組方針を3回にわたって取りまとめてきていただいております。
一番直近では、本年の9月に、コロナ新時代に向けた今後の学術研究及び情報科学技術の振興方策についてということで、学術分科会と合同で提言を出していただいております。
一方で、新型コロナウイルスの感染症の拡大というのはまだまだ続いていく中で、人々の生活様式、社会の在り方が激しく変化し続けているというような状況でございまして、その中で、情報の分野に対する社会の期待、あるいは、これを使わなければならない状況が、ますます大きくなってまいります。
ですので、最後の丸でございますけれども、これまでも要所要所で取組方針まとめていただいていますけれども、時代の状況の変化が激しい中で、情報分野としては、これまでの取組方針にこだわるわけではなくて、常にその状況に応じて、それを見直していくことを基本方針としてはどうかということでございます。
さらに、そういった見直しをした上で、Society 5.0時代に構築すべき社会全体の情報基盤の姿を念頭に置きながら、人材育成の観点も含めまして、ここに掲げさせていただいている3つの視点などを中心に検討を行っていくという方針を提案させていただいております。
1つ目の点としては、今後取り組むべき情報科学技術分野の研究開発課題とはいかなるものなのかという視点。2点目は、学問分野全体や教育を支える学術情報基盤の整備の在り方という視点。3点目は、社会全体への情報科学技術の知識の普及、あるいは様々な社会の分野や学問分野との連携の下で、その活用を促進していくにはどうしていったらいいのかという視点。このような視点も含めて検討を行っていくということで、今後の取組方針を事務局案として提示させていただきたいと思います。
こちらで御審議いただければと思います。
以上でございます。

【西尾主査】 ありがとうございました。今後この委員会におきまして議論していくべきことについてですが、特に情報分野は急速に変化、発展していくことを踏まえて、①、②、③については、次の期においてもしっかりと議論をしていくこととし、分野別の戦略などに関する取組方針の案が示されたところです。
何か御意見や御質問はありませんか。

【栗原委員】 栗原です。

【西尾主査】 栗原先生、どうぞ。

【栗原委員】 私は、この研究計画・評価分科会の分科会長をさせていただいているので、そちらの立場から少しコメントさせていただきたいと思います。

【西尾主査】 ぜひお願いします。

【栗原委員】 この委員会の委員として、情報分野の重要性が本当によく分かる形で、この取組方針をまとめていただきお礼申し上げます。ありがとうございます。
計評分科会の議論としては、大きくは2つあるのですが、1つは、エビデンス・ベースト・ポリシー・メーキングをより進めるべきという観点がございます。
それで、一番エビデンスデータに近い情報分野で、何か戦略やプログラムを考える上で、どういうデータがあってどう使えるのかを示すものがあれば、それは大変よい例示になるかもしれませんし、また分野の存在感も、より示していただけるものになるのではないかと、一個人として考えております。
もう1点は、個別の分野別の委員会では難しいのではないか、どう取り扱っていくべきかという観点の議論でございまして、1つは拠点形成です。拠点は、特に②の学術情報基盤の整備の在り方というところで、情報分野にとっても今後、非常に重要な観点だと思いますので、ここでは十分に議論されていくと思います。その点について、いろいろな観点を出していただいて、計評分科会にもフィードバックしていただけると、計評分科会の議論を進める上で大変役立つと思いますので、よろしくお願いできればと思います。
もう1つが、融合分野で、これも②に関係しますけれども、情報基盤が今後の学術の推進に非常に重要な基盤になっていくということで、様々な分野が融合した形の研究推進がされていくのではないかと思います。それをどう議論して、計画や戦略の中に入れていくのかは、今後進めていく上で大きな観点ではないかと思っております。
そういうことをこの間、科学技術・学術審議会で御報告したところ、ちょうどその前に西尾先生が、この振興方策についての合同提言を御報告になったこともあって、審議会長の濵口先生からは、今回コロナ対応として、学術分科会と情報委員会で行った議論の進め方は、分野の融合を検討する上で大変いい例になるのではないかという御意見を頂きましたので、紹介させていただきたいと思います。
以上です。

【西尾主査】 栗原先生、本当に重要な観点をありがとうございました。
最初のエビデンス・ベーストのことに関して、事務局より何か御意見ございますか。

【橋爪参事官】 ありがとうございます。これにつきましては情報委員会で、今後、①から③の観点を進めていく際に、栗原先生御指摘の、どのように進捗を把握していくのかというやり方についても、ぜひ先生方にもお知恵を頂きながら考えていければと思います。

【西尾主査】 そうしましたら、この取組方針の中に、先ほど栗原先生から御指摘いただいた1番目のことについて何か記述ができるようでしたら、さらに追記いただければと思います。よろしくお願いします。

【橋爪参事官】 はい、また追って御相談させていただきます。

【西尾主査】 では、2つ目のことで、②に関連しまして、拠点形成の重要さについて栗原先生より御指摘いただいております。情報分野における拠点形成については、先ほどの学術分科会、情報委員会双方からの提言においても、SINETの重要性、NIIの重要性について様々な観点から記述しておりますが、この取組方針の中でも、そのような学術情報基盤の整備に向けた一環としての拠点形成を、どのように進めていくのかという記述を入れることも重要かと思います。これも事務局の方で再度、御考慮いただければと思います。

【橋爪参事官】 おっしゃるとおり、そうした点も重要だと考えておりましたけれども、②の中で、御指摘を踏まえまして工夫をしたいと思います。

【西尾主査】 さらに、スーパーコンピュータに関わる情報基盤センターのことも含めて、全国の情報の拠点をどのようにネットワーク化していくのかということを議論をしていく必要があると思いますので、よろしくお願いいたします。
そして、3つ目が大切なところで、今後、分野別戦略等を情報の分野から考えるときに、多様な学術分野の、まさに扇の要的な役割、横串を刺していくような役割を情報分野が担うことが求められており、異分野融合的な研究をしていく上で情報分野が重要となってきます。今後、情報委員会だけではなくて、関連する委員会とも連携しながら議論を進めていくことによって、日本全体の学術研究、学術基盤を、より強化し、高度化するという視点からの取組の必要性を栗原先生から重要な御指摘としていただいております。その点もぜひ取組方針の中で、お考えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【栗原委員】 ありがとうございます。

【西尾主査】 栗原先生、本当に重要な観点ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。津田委員、どうぞ。

【津田委員】 いろいろな分野と連携するというところで、量子計算機もこの委員会に関係しうると思っています。例えば量子古典ハイブリッドや量子計算機のアルゴリズム等もありますので、そういうものも入ってくるのかと思いました。
以上です。

【西尾主査】 はい。その点については、事務局の方で全体を見据えながら、量子計算機との絡みを、ぜひ考えていただければと思います。

【橋爪参事官】 今回は大きな方向性をお示ししていますが、もちろん今後、スパコン等々の議論をしていくときに量子コンピューターの話も重要になってまいりますので、進める中で、頂いた御指摘も含めて考えていきたいと思います。

【西尾主査】 津田先生、ありがとうございました。
ほかにございますか。安浦先生、どうぞ。

【安浦委員】 最後の③の部分ですが、先ほどの八木先生の話も含めて、社会的なインパクトを考えると、国民一人一人がどれだけ技術を理解しているかということの重要性が、民主主義を続けていく上では必然になってまいります。それは結局、教育の問題と絡んできますので、初等中等教育あるいは高等教育の中で、ベーシックな考え方をどこまで国民共通の理解として入れておくかという議論を、この委員会でやっていいのかどうか。研究振興局の話と教育関係の局の話の違いという問題で、今までは、触れにくかったと思うのですけど、もうそのようなことを言っていられない時代ではないかと思いますので、その辺りを、ぜひ整理していただきたいと思います。

【西尾主査】 安浦先生ありがとうございました。教育の問題と絡んでくることは私も十分認識しております。小中高校も含めた情報との絡みについて、どこの委員会と合同して審議するのかということもあるかもしれませんが、この委員会として、必ず視野に入れておかなくてはならないことだと思います。事務局の方で、よろしくお願いいたします。
ほかにございますか。喜連川先生、どうぞ。

【喜連川主査代理】 今の安浦先生の御意見、私も心の底からそうだと思っています。栗原先生がおっしゃいました融合というところが、まさに研究振興局と高等局あるいは初中局かと。
先ほど、八木先生から御紹介いただいたようなことで、この情報系が今、本当に考えなくてはいけない局面に来ておりますのは、子供の健康データです。子供の健康データの利用については、一体誰の同意を取るのかという話もあります。
小学生の子をつかまえて、あなたのデータを使っていいのかという話をするというのも、訳が分からないけれども、著しく大変な個人情報です。そういう融合領域であり、かつ社会の問題であるというようなことを、研究振興局だからどうかと言うのではなくて、積極的になるべきではないかと。八木先生にも、もっと積極的に広くデータビリティを上げていただくという気持ちを情報委員会で共有しておくことは、とても重要ではないかと思いましたので、この文章そのものをお書き換えいただく必要はないと思いますけれども、発言させていただきました。
以上です。

【西尾主査】 すばらしいコメントを頂きまして、ありがとうございました。頂戴したコメントの方向に向かうことが、我々の国民生活を豊かにしていくものだと思います。
ほかにございますか。よろしいですか。
それでは、資料4に関しましては、今頂きました貴重な意見を基に事務局で改定をいただきまして、その後に委員の皆様にお知らせし、皆様との間でコンセンサスを取ってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
事務局、よろしいでしょうか。

【橋爪参事官】 はい。ありがとうございます。

【西尾主査】 それでは、議題の1と2に関しまして、予定していた時間との関連でございますが、事務局より質疑も含めて時間内に収めるようお願いいたします。

【橋爪参事官】 分かりました。ではまず資料2を簡単に御報告申し上げてから、資料1に移っていかせていただいてよろしいでしょうか。

【西尾主査】 よろしくお願いいたします。

【橋爪参事官】 はい。それでは、資料2を御覧いただければと思います。既に何度か話題に上がっておりますが、9月30日付けで、先生方に御議論いただいた内容を科学技術・学術審議会の学術分科会と情報委員会の合同の提言ということで取りまとめてございます。
これにつきましては、この資料2の16ページにございますけれども、令和2年7月からそれぞれの委員会、分科会で審議を行ってまいりまして、9月18日から9月24日まで、書面審議により、合同で審議を行って、9月30日付けで取りまとめが行われてございます。
これにつきましては、10月14日の科学技術・学術審議会の総会におきまして、西尾分科会長、情報委員会主査から御報告をいただいたという状況でございます。書面審議の結果ということで御報告させていただきました。
資料2については以上でございます。
資料1に移りまして、これにつきましては三宅室長から報告をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【三宅学術基盤整備室長】 三宅でございます。では、かいつまんで御説明をさせていただきます。
ジャーナル問題検討部会では、現状、8回まで議論を進めておりまして、第6回のほうで中間まとめ案を議論し始めまして、3回ほど議論を重ねて、まさに中間まとめがまとまりましたので、その御報告でございます。
本体は資料1-2にございますが、概要のほうで、こちらも、またかいつまんで御説明させていただきます。
1と2につきましては、従来、このジャーナル問題検討部会が立ち上がった経緯等々の論点につきまして改めてまとめさせていただいておりまして、2については、その状況について更新をさせていただいたような内容でございます。
ジャーナル問題検討部会においては、まず初期に議論の方向性を様々な論点から定めさせていただいておりまして、大きく短期的課題、中期的課題、長期的課題と整理をいたしました。これは部会として検討するスパンとしての整理でございます。
その中で短期的課題として、ジャーナルの購読料価格上昇の常態化及びAPC負担増への対応、中期的課題としてオープンアクセス化の動きへの対応、研究成果の発表、公開の在り方、長期的課題としまして、研究成果の発信力の強化の在り方、論文数や引用数のみに依存しない研究者評価の在り方、こちらの形に整理をいたしまして、集中的に検討しております。
こちらの中間まとめにおいては、特に短期的な課題につきまして集中的な議論をした結果、まとめたものでございます。
4番目に、その対応する問題の解析と対応ということで、具体的な内容につきましては、(2)番以降でございます。短期的課題につきましては、現在の学術情報流通の環境下においては、ビッグディール等の購読料価格とAPCの最適化が我が国の対応すべき最重要課題です。具体的な話をすると、これまで主として図書館が対応してきた講読経費とAPC経費、各研究所のAPC経費とをひもづけて、最適な配分であるかという観点での交渉が必要であること、また各機関の研究戦略の中でどのような最適化が図れるのかという検討に基づいて、同じような規模感や契約状況の機関がまとまり契約主体のグループ化等を行って交渉に当たることが必要であること、また大学等研究機関が各自の最適な契約の形を定めた上で契約内容・経費配分を組み替えるとともに、各機関がそろって、お互いに契約しているジャーナル等の情報を共有し、足りないものを補えるような有機的なネットワークを構築することが必要であること、また各大学等研究機関において、参考資料1に掲げているようなデータを収集し、最も合理的な契約形態を判断することが必要だとしています。こちらの参考資料につきましては、各機関へのヒアリング等を踏まえて、どんな情報が必要かというものについてまとめたものでございます。
併せて、セーフティーネットの構築の観点から、バックファイルへのアクセス維持やその情報の共有とともに、対応し切れない部分についてどのように補うのかという仕組み等の対応が必要とさせていただいております。
また中期的課題、長期的課題にも中間まとめの段階でも触れておりまして、中期的な課題に関して、現在、研究の遂行に必要な論文を入手するという点においては、オープンアクセスとなっている論文及び講読誌に掲載された論文の双方に対応しなくてはならず、そのことが機関の負担の経費をさらに上昇しているということです。このような状況への対応策については、中期的に達成する目標を見据えた検討が必要ということで、研究成果報告への在り方、オープンアクセス化の動きへの我が国の対応方針について、今後の検討を踏まえ補強していくという点、指摘があります。
また長期的課題につきましては、学術情報流通に係る長期的課題は、そもそも研究をどのように評価し、それを支え、新たな研究に挑戦できる環境を作れるかということで、研究成果の発信力強化や研究評価との関係について、今後の検討を踏まえ補強という形でまとめさせていただいております。
中間まとめ以降、引き続き意欲的に議論を進めておりまして、第9回が12月22日で、第10回において今期のまとめという形で、こちらジャーナル問題検討部会の議論をまとめる予定でございます。
以上でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 ありがとうございました。それでは、ジャーナル問題検討部会で主査として多大なる御尽力を頂いております引原先生から、補足でありますとか、何か留意すべきことがありましたら、お願いいたします。

【引原委員】 引原でございます。ありがとうございます。今、三宅様から御説明いただいたとおりでございますが、この問題自身が、ジャーナル問題ということでありながら非常に他の問題とスパゲッティ状になっているといえます。皆様方から、ありとあらゆる観点から御意見を頂きました。それらを整理して、一つ一つの課題をクリアにしていかないといけないということでございまして、このように整理させていただいたという経緯でございます。
当面、短期的課題ですけれども、これまでジャーナルの契約を数年にわたってJUSTICEというコンソーシアムが担当してきておりますけれども、そこで議論することが、それぞれの大学あるいは研究者の要求に必ずしも見合った状況にはなっていないという現状を、委員の方々もしっかり把握していただいております。
その上で、各大学として、まずどういうことを対応すべきか。議論するベースとなるエビデンスのデータを、まず早急に議論しないといけないでしょうということを申し上げております。
今まで、やはり疑心暗鬼になっておられて、読めないから読みたいということに対する要求が多いわけですけれども、それであれば、どれが契約数で、どれが読めない数なのかと聞きますと、そういうものが出てこない。それでは問題がありますので、こういう要求をするに当たっては、きちんとしたエビデンスと、それから将来の計画をきちんと出すべきだというのが、ここでまとめる一つの指針となっております。
今後にわたってについてです。ジャーナルに関しては、既に今、国際誌といいますか、海外の出版社のジャーナルの戦略には負けてしまっております。だから、それをリワインドするということは非常に難しい問題だと思います。一方で、その次のデータにまで及ばないようにしないといけませんから、そこの問題を切り分けないといけないというのが大きなところです。ジャーナルに関して言えば、先に申し上げた短期的な対策をきちんと打って、お互いにサポートできるような体制をしてオープン化をしていく。オープン化の中にはプレプリントも含まれますし、リポジトリも含まれますから、そうやって自分たちの体制を整えながら、データに関する戦略を先に打っていかないといけないという点を今後の中期以降に関するまとめの中で、きちんと書かせていただきたいと考えております。
大ざっぱに申し上げましたけれども、以上でございます。

【西尾主査】 引原先生、ありがとうございました。今の先生のコメントで、この中間まとめの持つ意味や取っておられる立場が理解できました。ありがとうございました。
ジャーナル問題は、本当に根深いものであり、大変な議論をしていただいておりますが、何か皆様方から御意見はございますか。
喜連川先生、どうぞ。

【喜連川主査代理】 引原先生が最後におっしゃられた、通常パブリッシュする論文領域は、覆すのがそう簡単ではない中で、ホライズンが広がっているのがデータなものですから、そこの戦略をNIIが22年からカットオーバーしますので、それと合わせながらデータ基盤をうまく作っていくべきかと思います。
もちろん先ほど御発表いただきましたような八木先生の成果等も何らか一緒にできればいいと思っています。
この議論は、情報委員会で、かなり加速してやる必要があります。内閣府でお話を伺っていますと、大学だけから聞いていますので大変だ大変だという話になりますけれども、企業に対してヒアリングをしますと、彼らは出費が増えていると言うのです。何で増えているのかといいますと、データのオプションを無理やり買わされているということなのです。
ですから、放っておくと、この問題はさらに深刻化する可能性が強く懸念されます。
以上です。

【西尾主査】 ありがとうございました。このジャーナル問題検討部会で議論されているのは、非常に注目されている議論ですし、また、喜連川先生もおっしゃいましたが、ある程度のスピード感が必要であり、後手に回らないようにすることが大事ではないかと思います。
この問題は、多分、情報委員会の今後の取組方針の中の、学術情報基盤、つまり、②に相当していると思います。そういう観点から、本当に大変な審議であることは十分理解しつつも、引原先生には今後も何卒よろしくお願いいたします。

【引原委員】 はい。最後に一言よろしいでしょうか。

【西尾主査】 はい。どうぞ。

【引原委員】 この中間まとめ、今御報告いただいたまとめをしておりますけれども、ここで強く申し上げていますのは、今まで大学の図書館が継続的な維持という観点でジャーナルを扱っていましたが、研究戦略と合わせて大学がきちんと、それぞれの戦略に合わせた講読モデルを考えていくように、ここで舵を切らないといけないということです。このことを強く主張したいと思っておりますので、国大協や他の組織と合わせて、御検討をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 ありがとうございます。梶田先生、どうぞ。

【梶田委員】 この問題は、ほかの国の大学でも同じ状態だと思いますが、どのような感じなのでしょうか。

【引原委員】 それは、今、一言で言うのはなかなか難しいのですが、まず大きな動きはネイチャー、サイエンス、シュプリンガーが、APCを120万程度に設定して、それに契約しなさい、それでやりなさいというのを強く出してきています。
ですから、彼らはもう収益モデルをオープンアクセスフィーにかなりシフトしているという状況です。
それに対して、それを払えなかったら研究できないということは全然ないわけですけれども、要するに論文評価の問題とオープンアクセスというものを絡めて、彼らが研究者と支払い母体である各機関と、それから図書館というのを分断して、全てがお金を払えと要求を出させるような戦略に出てきているというのが現実だと私は理解しております。

【梶田委員】 ありがとうございます。ほかの国の大学とか機関とも連携して、この問題に対処すべきだとは思うのですけど、いかがでしょうか。

【引原委員】 JUSTICE自身がヨーロッパのPlanS等の、OA2020との連携を当然図っているわけですけれども、その図り方のスピードと、出版社が動いているスピードが、もうマッチしていないと思います。逆に、カリフォルニア大学等は、契約しないというモデルのときに、契約しない期間があるんですけれども、その期間にわたっては、ちゃんとバックデータといいますか、ちゃんとセーフティーネットを張りながらやっています。ですから、契約、交渉する母体が、きちんとそこを確保してやっているわけですね。
一方、研究者の評価にインパクトファクターなどを使わないという「研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)」があるのですが、そこにも宣言して、そのインパクトファクターを上げるためにこうしたいという研究者の要求をきちんとそこでサポートするような形を取っているわけです。
だから、全体の話を交ぜると、そういうことになってしまうので、今回、短期的にデータをとにかく出しなさいということをすべきではないかということを申し上げているわけです。
以上でございます。

【梶田委員】 ありがとうございます。

【西尾主査】 まだ御意見はあるかと思いますが、時間が来ております。今後、最終まとめに向けてさらに議論が進むということですので、この最終まとめを楽しみにいたしております。よろしくお願いします。

【引原委員】 はい。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【西尾主査】 それでは、今日の議題は以上でございますが、1つだけお願いがございます。先ほどの資料4の分野別戦略等に関する取組方針についてですが、この件につきましては、御意見等ございましたら、事務局までメールでお寄せいただければと思います。それを踏まえて、事務局において修正案を作成いただき、主査預かりということで御一任いただけますよう御了解いただきたく、お願い申し上げます。
それでは、本日も本当に貴重な御意見の数々、また、八木先生におかれましてはプレゼンテーション、ありがとうございました。
次回の委員会の予定等を事務局からお願いいたします。

【齊藤情報科学技術推進官】 事務局でございます。本日、音声トラブル等あり申し訳ございませんでした。
追加の御意見等については、先ほどありましたように、事務局までお寄せいただければと存じます。
次回委員会の予定でございますが、第15回の委員会を2月3日水曜日の午前10時から12時に予定してございます。議題等詳細については、また御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 今日も皆さんから多くの貴重な御意見頂きましたことに、改めてお礼申し上げます。次回も何とぞよろしくお願いいたします。
これで閉会といたします。

【齊藤情報科学技術推進官】 ありがとうございます。それでは、これでミーティングルームを閉めさせていただきます。本日はありがとうございました。

―― 了 ――

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研究振興局参事官(情報担当)付

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